理数学習支援

2012.11.28 update

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updated 2012.11.26

佐藤は、JST理数教育支援センターのサイエンスパートナーシップにも協力した。
このページは、理数教育活動の一端の記録である。

サイエンスパートナーシッププロジェクト(SPP)

東大付属中高 高2物理Ⅰ特別授業

シラバス

講義題目「暮らしのなかの物理:光を知って光を使う」
講師佐藤勝昭(東京農工大学名誉教授)
担当加藤竜一(東京大学教育学部附属中等学校教諭)
対象東京大学教育学部附属中等学校5年生(高等学校2年生120名のうち物理Ⅰ受講者23名
講義内容照明・光通信・光記録・ディスプレイ・光電池・光センサ多くの光を用いたしかけ(光デバイス)が暮らしのなかで用いられています。これらの光デバイスには光に関わる物理や化学が活かされています。このレクチャーでは、暮らしのなかの光デバイスの仕組みに光のもつどのような性質が使われているのか、今学習している物理や化学とどのように結びついているのかについて、先生と一緒に考え、理解を深めましょう。
授業内容
  1. 照明の物理:白熱電球・蛍光ランプ・LEDランプの仕組みと光スペクトル
    実験:直視分光器で、白熱電球・蛍光ランプ・LEDを観察しよう
  2. 光通信の物理:フレッツ光など光ファイバー通信の仕組みと原理を知ろう
    実験:光ファイバーにレーザーポインターの光を通す、全反射を学ぶ
  3. 光電池の物理:太陽光のパワーを知り、光のエネルギーを電気に変えるしかけを知ろう
    実験:小型ソーラーパネルで太陽電池の原理を学ぼう。
  4. 光センサの物理:暗くなると電気が灯るしかけの原理、光リモコンの原理を知ろう
    実験:電子ホタル、赤外線障害物感知装置
  5. 光記録の物理と化学:CD, DVD, BDの記録・再生の原理とプレイヤーの仕組みを知ろう
    実験:CDドライブ・BDドライブを分解する
  6. ディスプレイの物理と化学:液晶って何?液晶でカラーテレビが映るわけを知ろう。
    実験:偏光板を組み合わせて光の透過の様子を知ろう
すすめかた
  1. 第1回(10/24)照明デバイス・光ファイバーの原理や仕組みについての授業。
    そのあと、4つのグループに分かれて実験を行う。
    各グループ毎に相談し、発表者を決めて発表内容をまとめる。
  2. 第2回(11/07)4つのグループから発表を行う。
    そのあと、光記録(CD, DVD, BD)および液晶ディスプレイについて授業。
    各グループで自由に、実験装置を使って、光のおもしろさを学ぶ。
授業のパワポ
  1. :第1回のパワーポイント(pdf)ダウンロード
  2. :第2回のパワーポイント(pdf)ダウンロード

報告書

(pdfダウンロード)

JSTサイエンスパートナーシッププロジェクト報告 東京大学教育学部付属中等学校の授業を担当して
佐藤勝昭 (東京農工大学名誉教授)

 JSTの理数教育支援センターが主催するサイエンスパートナーシッププロジェクト(SPP)の講師として東京大学教育学部附属中等教育学校の高等学校2年生の物理Ⅰの授業を2012年10月24日(水)および11月7日(水)の13:10-15:00に行った。受け入れ側の担当は加藤竜一教諭である。この高校は受験教育をしない教育実験校で、双子の受け入れでも有名である。プロジェクト申請当初は、電気通信大学の教員を講師にし予定したが都合が悪くなり、急遽、代わりの講師を応用物理学会に相談、応用物理教育分科会の推薦で、私が指名された。 加藤教諭の希望は、光センサーの原理がわかる実験指導ということであったが、話し合いの結果、暮らしの中の光について講義するとともに、実験指導することとした。受講生は、各クラスの物理Ⅰ選択者23名である。


第1回(10月24日)では、休憩までの45分で「照明」と「光通信」について、パワーポイントで講義。とくに、白熱電球、蛍光灯、白色LED電球について、その発光原理の違いに重点をおいて説明した。授業では、波をまだ学んでいないので光の波長、そして人間が色を感じる仕組みなどの基礎知識を対話型で講義した。



休憩後の45分間では、全体を4班に分けて、白熱電球、蛍光灯、白色LED電球の実験セットを用いて、直視分光器でスペクトルを観察し、各人の学んだことをポストイットに記入して、模造紙に貼り付けるよう指示した。



第2回(11月7日)では、はじめに、第1回で学んだことや各班で話し合ったことを、各班の代表にプレゼンテーションをしてもらった。中には立ち往生してピンチヒッターの助けを借りる生徒もいた。



このあと、前半の残り時間を使って、パワーポイントで「さまざまな光ディスク」について講義した。光ディスク装置については、今後の授業で加藤先生が装置の分解の演示を行うので、その前座として光ディスクの読み出しおよび記録の原理について、なるべくわかりやすく説明した。


休憩後、はじめに偏光板を配って、直交させたときに透過光が弱くなることを確認させたあと、液晶ディスプレイの原理についてパワーポイントで講義した。


このあとは、応用物理学会応用物理教育分科会の岡島茂樹先生(中部大学教授)からお借りした、赤外線障害検出装置、サーミスタを使った火災報知器などの実験セットや、偏光板などを使って自由研究をしてもらった。最後に、科学技術がブラックボックス化している現在、みんなには好奇心をもってブラックボックスをいつでも開けて見るような人になってもらいたいと締めくくった。


レポートのまとめ

授業終了後、A4判1枚程度のレポートを、1週間以内に担当教諭まで提出するよう要請。受講者全員から提出があった。それを整理してまとめた結果を下記に記す。

記述された講義・実験項目授業で気づいたこと
照明光記録波長と色光の物理液晶センサー光ファイバー太陽電池実験でわかったまなび日常の物理日本の技術光利用
19151265221107655

表のように、記述が最も多かったのは白熱電灯、蛍光灯、白色LEDの実験でわかったことの記述で、次いで、CD, DVD, BDなどの光記録、ついで、光の波長と色の順であった。また、授業を通じて気づいたり、学んだりしたこととして、実験をやって理解が深まったという回答が最も多く、次いで、学びの姿勢の問題、日常のなかの物理という順であり、本授業の目的が達成されたと考えられる。

全回答の感想部分の抜粋

  1. 3光源とも仕組みが違うのは知っていたが、スペクトルを見比べてわかった。
  2. 先生のお話を4時間聞いて思ったのは身の回りで起きている事象はすごくおもしろいのだということです。物理はむずかしい数字の出てくる教科だと思っていたが、根底にあるのは人間が興味を抱いたことを調べるために必要なのだということです。だから物理IIをとりたいと思います。
  3. 講義を2時間聴くだけでなく、ところどころに実験をはさむ、紙の上での勉強だけでなく、具体的な例を学びながらの授業だった。単語もたくさん出てきてわからないところも多数あったが、自分なりに解釈して、なんとなくは理解することができた。
  4. 説明を聞いてもよくわからないが、実験をするとわかった
  5. 事前に波の授業を学校で学んでから、大学の先生の話を聞けばよかったと感じた。
  6. 光については私の叔父が東大で何らかの研究をしていて小さい頃は研究室にも行っていたので非常に興味があり、講義中興味深く聞いておりました。BDの記録方法に質問があります。
  7. 先生の授業は少し難しいことも含まれていたけれど、とても興味深い生活に密着した内容で、わかりやすく解説していただけたのでとても楽しかったです。目の前で起きている現象について深く考える機会になりました。また、授業に来てくれるとうれしいです。
  8. 言葉で説明されると難しい話だったが、実験をしたことで身近に感じた。
  9. この講義で僕は「光」の応用による未来の世界について考えさせられた。現在「光」は生活はもちろん研究の際にも用いられている。(中略)「光」についての新たな発見が未来の世界を作る機動力になる。今後僕たちが「光」を最大限に利用している未来に期待したい。
  10. 私は卒業研究で照明関係をやっているので今回光源の仕組みやそれに関連するおもしろい話が聞けてよかった。
  11. 青色LEDを発明したのが日本人だということを知ってよかったです。これからは、発明を活かすことが重要だとわかりました。とてもいい授業でよかったです。
  12. 東大附属という学校上、大学の先生の講義を聴く機会が多いのだが、2回に分けての講義は初めてで、その間に理解する時間が持てたので、とてもわかりやすかったし、楽しかった。・・今回はどうもありがとうございました。
  13. 今回佐藤先生の授業を受けて最も驚いたのは「光1つとっただけで、こんなにも様々な用法があるのか。」ということだった。光ファイバーや光ディスクなどといった形で「光が活かされている」という漠然としたイメージは持っていたが、それの何がすごいのか、光の性質がどのように生きているのかという具体的な部分をつかめていなかった。今考えてみると、なぜそれを知ろう、追求しようと思わなかったのか悔やまれるほどだ。
  14. 光について学ぶことはこれが初めてではない。前期課程で光の反射についての授業を受けていた。この2回の授業ではそこでやったことが常識として下地になっていて、さらに奥深くまで掘り起こすような内容で、半分ほども理解できたとはいえない。だが、身近なものにそれほど複雑な技術が用いられていることを知っただけで自分の世界が広がることを実感できた。
  15. 白熱電球、蛍光灯、白色LEDの内部の理論について100%理解できたなどと虚勢を張るつもりはない。しかし、多少の理解と、スペクトルを利用した「自分で考えて発見をまとめていく実験」などにより、それらの発する光の違いを自分なりに納得し解釈するまでに至ったとは思う。そのぼんやりとまとまった解釈を班内で意見を交わして発表までしたことも、より深く考える上で刺激になると同時に、非常に助けになった。(中略)最後になってしまいましたが、このようなまだ数多くが中途半端な状態にある自分たちのためにわざわざ講義をしていただき、本当にありがとうございました。
  16. 最近よくあるタッチパネルの仕組みを知りたい。
  17. 日常で気にとめていなかったことの仕組みや、不思議に思っていた問題が解決した。たとえば、繰り返しデータを書き込みできるCDには結晶とアモルファスを利用していることや、モルフォ蝶の羽は溝で特定の色を出していること、さらには虹の配色など、気にもしていなかったところとにとてもおもしろいことが隠れているのを知って興奮した。
  18. 合計4時間の授業で得たものは大きかった。実験は実に興味深かった。物理の実験はつまらないイメージだったが、今回実際にやった実験は想像を絶するものばかりだった。実験をしている途中に気づいたのだが、物理と化学は深くむすびついて関係しているのだ。進路は化学だが、物理をもっと勉強して現象や生活をミクロでさまざまな視点から見れる人間になりたいと考えた。今回の授業で自分の価値観を変えることができた。ありがとうございました。
  19. 説明を受けているときはよくわからなかったが、自分たちで実験したらわりとわかった気がした。周波数というのは音波的な何かかと思っていたけれど実際は光の速さを光の波長で割ったもので、今まで思っていたことと違って少しショックだった。
  20. 佐藤さんに言われて印象的だったのは、光は重さがなく粒であったり波だったりすることです。ぶっちゃけ重さがないというだけでよくわからなかったし、さらにそれが粒になったり波になったりするということも想像しがたかったです。
  21. 普段生活中に触ることのない分光器やプリズムを使い、光やライトの仕組みを詳しく実験することができ楽しかった。佐藤先生の授業は科学の視点から日常にあるものについて触れている内容が多く、興味をもって接することができた。
  22. 私にとってこの講義は「芸術鑑賞」のようなものである。この講義から疑問が多く浮かんできたり、それをわからないままにするのではなく、調べてみたりするということの重要性がわかったように思う。今の技術は疑問の解決から生まれたものであるというのが、この講義で得られたものの1つとしてこれからも活かしたい。佐藤先生、ありがとうございました。
  23. 私は美術部に属していることもあり、色や光について興味がありました。授業を聞いて、光に関してこれほどまでに科学的にアプローチする方法を知り、とても勉強になり、楽しかったです。

サイエンス・ウィンドウ(Science Window)

佐藤は、JST理数教育支援センターの理科教員向け季刊誌「サイエンスウィンドウ」にアドバイザーとして協力している。
このページは、「サイエンスウィンドウ」活動の一端の記録である。

サイエンスアゴラ・サイエンスウィンドウ読者の集い

どうつくる・使う?家庭や学校で役立つ科学誌

佐藤編集長

2012年11月11日、日本科学未来館で開催されたサイエンスアゴラの中で、Science Window 読者のつどいが科学未来館7Fの会議室2で開かれた。
佐藤年緒編集長の司会で、ワークショップは進められた。
理科ハウスメモ
理科ハウス学芸員
理科ハウスメンバー
理科ハウスメンバー

神奈川県逗子市にある理科ハウスは日本で一番小さな科学館。そこでSWは大人の一般人が書棚から取り出して見てくれるという.
逗子市の池子小の大谷教諭は、学校でSWは教員間で回覧されている。理科の授業だけでなく、国語や算数の授業でも使っている。

府中第2中メモ
府中第2中
赤木先生
SW編集委員赤木久美子先生

府中市第2中の赤木先生はSWの編集委員でもある。中1・中3にSWを読ませてアンケートした。
知っていますか:YES1年 5%, 3年 7%、内容はわかりやすい?:YES 1年 85% 3年 39%、有用性は?:YES 1年 85% 3年 40% ・・ 3年生に「わからない」の回答が多い

日大芸術学部メモ
日大芸術学部木村先生
木村先生
日大芸術学部木村先生

日大芸術学部のデザイン科の木村教授。サイエンスコミュニケーション論、サイエンスコミュニケーションデザインの講義にサイエンスウィンドウをタネにしているという。 「ゼロ」をテーマにした学生のデザイン。空間の使い方が大切という。

以上の体験談を受けて、会場の読者とのディスカッションが行われました。

磯山さん 討論風景 討論風景
永山先生

最後にスタッフの紹介がありました。

サイエンスウィンドウ編集協力

2011年夏号の「太陽電池はどういう仕組みなんだろう?」に協力しました。
下の図をクリックすると別ページでpdfが開きます。



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