流体の膜孔透過

・細い管を水が通過する場合には,それに伴うパイプコンダクタンスが効くのですが,この場合には薄い板にあけた孔とみなせそうですので,前者は無視します.半径Rの孔のあいた膜の両側が粘性率μの流体で満たされており,膜の両側に圧力差δpがあるとすると,膜を通り過ぎる流体の体積(流量Q)はと計算されます.

 この場合には,流体は連続体とみなしていますので,どんなに小さな孔でも流体は流れます.もちろん孔の半径が小さければ流量は非常にわずかになります.

 

膜の片側だけに流体があり,圧力差δpがかかっている場合を考えてみます.

もし,流体が孔を通り抜けないとすると,流れを止める何らかの圧力差,たとえば表面張力や化学ポテンシャルの差など,があるはずです.

 孔の付近を拡大すると,おそらく下の図のようになっていると思われます.たとえば,水の界面が孔の直径と同じ程度の球面状に膨らんでいると仮定すると,表面張力γによる圧力は程度です.この圧力差が静水圧とつり合って流体の流れを留めていると考えると となります.たとえば,

   常温で水深が10cmのとき

    

   水深1mの場合には14μm程度

よりも小さい孔であれば水が漏れないことになりそうです.

 なお,水の表面張力はかなり大きく,エチルアルコールでは23[dyne/cm]と約1/4に下がってしまいます.また,温度や接する気体の種類によっても異なりますので,御注意下さい.

(注)小さな孔を明けた容器を水没させた場合には,下の図の上下を逆にして下さい.その場合の水深は水の表面から,孔の位置までの深さになります.