H1,2コース 光物性工学 佐藤勝昭教官1997.5.13.日配布資料

第3回の授業の内容:光の反射・屈折・偏光・光学活性


光の反射:マクスウェル方程式を反射面における境界条件で解くことによって求まる。
斜め入射のとき:入射角に依存、
 p偏光(入射面内で電界が振動する)の反射率とs偏光(入射面に垂直に振動)の反射率が異なる。
垂直入射のとき: R={(n-1)2 + κ2}/{(n+1)2 + κ2}
この式は分布定数回路のインピーダンス整合の考えを使っても導ける。
光学活性:旋光性←右円偏光と左円偏光の位相の差;円二色性←右円偏光と左円偏光の振幅の差
 自然活性(しょ糖、酒石酸、水晶、方解石)、電気光学効果、磁気光学効果→実用光デバイス


第3回の問題回答

問題1:比誘電率4+8iの物質に空気中から垂直入射したときの反射率は何%か
解答: R=32.3%
相沢、飯島、井出、井上、高宮、中村克、淵上、阿部、石谷、岡本悟、清田、佐藤、高橋、角田、Wong、 Ting、中村聡が数字まで合っていました。短い時間に正解を出された努力に敬意を表します。

質問への回答 Q1.偏光にはp偏光とs偏光しかないのか。それともすべての偏光はp偏光とs偏光の合成で表されるのか(H1渡辺)Good Question→A.すべての直線偏光はp偏光とs偏光の合成で表すことができます。また、合成の際に位相差まで考慮すると円偏光や楕円偏光まで表すことができます。
Q2.半導体の屈折率はキャリアの数によって金属的になったり絶縁体的になったりするのか。再結合の時に屈折率は変化するか(H2小島)Good question→A.キャリア数が多いと自由キャリアの集団運動によるプラズマ周波数が高くなり、Drude則(p158)によって近赤外域の誘電率が変化し、反射率が高くなります。確かに再結合がおきれば、キャリアはなくなるのですが、通常は、電流が流れているときには次から次へと補充されますから、変化しないのです。
Q3.複素数の角度とは? (P佐藤)→A.角度が(+i(で表されるとしましょう。虚数部は、位相が90゜異なっていることを表します。電界に対して90゜位相が異なる電束密度の成分は損失項に対応します。減衰する波は、伝搬する波とは別の方向に屈折すると考えてもよいでしょう。
Q4.鮫がなぜ電流のたくさん流れるケーブルを食うのか(H2篠原)→A.電流の作る磁界を感じるのではないかと言われています。
Q5.偏光とはどういう現象をいうのか( H2原嶌)→A.ちゃんと説明しないでごめんなさい。太陽の光、電球から出る光は、電界の振動方向が、時間的・空間的にランダムに揺らいでおります。直線偏光とは、電界の振動方向が特定の面内にあるものを言います。このような自然光をガラス板で反射させたり、ニコルプリズム、ポーラロイド板(偏光サングラス)などを通すと、電界ベクトルの方向がある特定の方向に偏ります。これを直線偏光というのです。電界ベクトルが光の進行方向を軸として時間とともに回転するような場合を円偏光と言います。
Q6.レーザの中に電子とホールを閉じこめてどうするのか (H1松川) →A:電子物性工学Uで話したように、レーザというのは、熱平衡からずれた「反転分布」の状態を作る必要があります。伝導電子と価電子帯ホールが熱平衡で許される以上に狭い空間に存在すると、反転分布が作られるのです。詳しくは、光物性工学でもお話しする予定です。
Q7.光ファイバーの中で全反射によって実数部と虚数部の位相差はカバーできるのか (H2淵上) →A.全反射では、光は界面から外に出ないので、反射の際、位相のシフトを受けないで伝わると考えられています。
Q8.どうして日本では5月に紫外線が最も強いのか(H2WongHuey Sheong)→A.5月が一番空気が澄んでいるからではないでしょうか。
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