光物性工学(H1,2コース),物性物理学(Pコース),佐藤勝昭教官1998.5.26配布資料

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第4回(98.5.19)の授業の要点

教科書p.154-156 (磁気光学効果については、佐藤勝昭著「光と磁気」、佐藤他著「光磁気ディスク材料」、川西編「光マイクロ波磁気光学」などを参照して下さい)

 

第4回の問題回答

問題 ブドウ糖・しょ糖などの自然旋光性と磁性体のファラデー回転の違いで最も重要なことは何か

 解答 自然旋光性の場合、偏光の回転は光の進行方向に対して右・左と定義されているから、糖類の水溶液を透過したとき、鏡で反射させると、往きで受けた旋光と丁度逆の旋光を帰りの時に受けて、もとの直線偏光に戻るが、ファラデー回転の場合は、回転方向が磁化の向きに対して決められるので、往きも帰りも同じ方向の回転を受け、2倍の回転角となる。自然旋光性は相反であるが、磁気光学効果は非相反であるという。

(今回の問題についてはPの正解率が高く(10/13)、H1が半分(15/32)、H2はヒドイ(20/49)。)

 

質問への回答

講義内容に関係する質問

Q.楕円偏光というものが、頭で想像できない(H1石川、小田島)→A.電界のx成分とy成分の振幅と位相が異なっていると楕円偏光になります。オシロスコープの実験のときのリサージュ図形を思い出して下さい。

Q.等方性物質とは何か (H1小田島)→A.物理的性質(例えば屈折率)が方向によらないとき等方性であるといいます。反対に、光の入射方向によって屈折率が違うような場合を異方性物質と言います。

Q.ファラデー回転というのは旋光性と円二色性をもち、その関係はθF=iηFで決まるというのが今日やったことか(H1登守)→A.全然違います。ΘFとηFの間にはクラマースクローニヒの関係が成立しますが、θF=iηFということはありません。

Q.糖類は円二色性を持たないか(H1登守)→A.旋光性と円二色性にはクラマースクローニヒの関係が成立します。円二色性も持ちます。

Q.直線偏光を右と左に分けたが、それは計算する上で出てきた考えか (H1登守)→A.直線偏光を左右円偏光に分けるのだけ見れば仮想的なものと考えられますが、直線偏光も楕円偏光の特別の場合、すなわち短軸の長さが0の場合、であると考えるならば、決して仮想的とは言えません。。


Q.今日の話は、結果はよくわかるが、途中(マクスウェル方程式の解法)はわからなかった。途中は必要か(H2辻本)最後の部分が本当にわからなかった。(H2細谷)→A.確かに、内容的には大学院レベルに近いものなので、3年生には難しいかも知れません。この方面に進まない方は、結果だけ知っていて下さい。ただ、誘電率テンソルが非対角成分をもつ場合のマクスウェル方程式の解法そのものは、やる気さえあれば農工大生なら十分解けます。口当たりのよい「お話」なら、ペーパーバックを読めばよいのです。私は、「お話」の端々にちょっとだけ、程度の高いものを入れています。やる気のある人がさらに勉強するきっかけになればと思うからです。

Q.S偏光とP偏光の違いがわからなかった。もう一度教えて欲しい。(H2小川(博))→A.S偏光は入射面に垂直な偏光です。ということは、物質表面には平行です。これに対して、P偏光は入射面内にあります。入射角が0゜にならない限り、表面に平行になることはありません。

Q.授業でやった以外に偏光が回転する効果はあるのか(H2岡)→A.TN液晶では光学異方性をもつ液晶分子が少しずつ傾いて並んでおり、入射偏光は各分子によって少しずつ回転を受けて液晶を出るときには例えば90゜の回転を受けるように設計されています。

Q.今日やった話は要するに光磁気ディスクのデータを読み込むときに使用する原理のことか(山本一)→A.磁気光学効果に関しては、光磁気ディスクの再生に使われるほか、光ファイバー通信の光アイソレータに用いられています。

Q.ブドウ糖液に初めから回転した偏光を与えたらどうなるか(P山本)→A.直線偏光をただ回転させても直線偏光ですから、結果は、入射時の偏光の向きから、同じ角度だけ回転します。 君の質問が「円偏光を入れたときどうなるか」というのですと話が違います。円偏光はいくら回転させても円偏光ですから、まったく変化がありません。

その他の質問・要望

Q.放送衛星では回転偏波、通信衛星では直線偏波が使われる理由(P山本)→A.よくわかりません。調べておきます。

Q.遠赤外線効果を利用した温かい手袋の仕組み(H1平野)→A.多分、炭素繊維が織り込まれているのではないかと思います。

Q.毎年どのくらいの人が公務員になるか(H1山下)→A.電子では、平均して、地方公務員も含めて年に1人いるかいないかです。農学部は多いようですが・・

Q.学部卒の人が就職について考え始めるのは研究室が決まってからか(H2田村)→A.早い人は3年生の後期年明けくらいからですが、大部分は研究室に入ってからのようです。

 

このほか、手作り日焼けクリームの効果についての質問がありましたが、残念ながら私には判断のしようがありませんでした。

 


5月26日の講義のための補助資料


誘電率の分散とさまざまな分極

(佐藤勝昭編著:「応用物性」(オーム社、1991))P.162による。