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最新のQ&A(#1300-) Q&A(1)#1-#299 Q&A(2)#300-#699 Q&A(3)#700-#999 「50音順キーワード索引」

「物性なんでもQ&A」(#1000-#1299)

アップした日付質問項目分類質問者
2013.08.121299. ドルーデの式の定数項光物性慶応大後藤さん
2013.06.251298. 樹脂の蛍光に関する質問光物性F社Sさん
2013.06.131297. 強磁性体に関する質問磁性弁理士Mさん
2013.06.071296. 比誘電率・比透磁率と電磁波遮蔽効果の関係性電子物性S大Yさん
2013.05.251295. 電圧印加によるナノ粒子の堆積結晶成長無職Sさん
2013.05.231294. 粗さのある金属表面における反射の偏光性光物性S研Rさん
2013.04.231293. エポキシ樹脂のAC絶縁耐圧がDCより低いわけ誘電物性NS社さん
2013.03.191292. 物性なんでもQ&A#482「ステンレスの屈折率」へのコメント光物性元N社竹田さん
2013.03.191291. UV-LEDの分光測定の問題光物性V社Nさん
2013.02.131290. ITO/PET基板の酸による劣化の評価にシート抵抗を使うわけ電気物性X工大宮本さん
2013.02.111289. GaAs, Siの複素屈折率光物性電通大冨田さん
2013.02.111288. 物質が同じでも条件によって物性値を変化できるか電気物性S大Kさん
2013.01.301287. 二酸化バナジウムの相転移と光学的性質の変化光物性N社Yさん
2013.01.301286. 青銅の相と光学的性質光物性高校生Aさん
2013.01.221285. フェリ磁性体の磁化率磁性東京工科大横山さん
2013.01.191284. 3d2のLS多重項に1F、1Pが現れないわけ量子力学東京工科大横山さん
2013.01.191283. PEMを用いた縦カー効果測定のセットアップ(Research Gateより)磁気光学Virginia Polytech、Viswanさん
2013.01.071282. ステンレス球の酸化方法金属工学原研、劉さん
2012.12.311281. 半導体の光学遷移確率の式光物性T大Aさん
2012.12.051280. シマウマの皮膚の導電率と誘電率を知りたい電気物性S大Kさん
2012.12.051279. 鉄単結晶の磁気異方性の図の出典磁性K社Nさん
2012.11.081278. GaAsのホール伝導の異方性電子物性T大Iさん
2012.10.241277. CdS, SrTiO3, KTaO3, LiTaO3のバンド端の電子軌道電子物性T大Yさん
2012.10.191276. 炭素繊維の比誘電率と比透磁率電子物性S大Yさん
2012.09.211275. LED照明された透明アクリル板の表面温度測定光物性M社Kさん
2012.09.051274. 高分子材料の電気伝導の界面支配とバルク支配電子物性T大Tさん
2012.08.181273. NaClの価電子帯と分子軌道電子物性M社Kさん
2012.08.021272. ルビー・サファイアの電気伝導電子物性K社Hさん
2012.07.021271. パワー半導体における伝導度変調半導体デバイスH社Yさん
2012.06.281270. ルビーのR1線の圧力効果の配位子場理論による説明光物性O大Tさん
2012.05.281269. GaN LEDをフォトダイオードとして使用したとき600nm光に感度があるか半導体デバイスP社Sさん
2012.05.231268. ZnMn2O4は正スピネルか逆スピネルか磁性体K大Oさん
2012.05.211267. 酸化スズナノワイヤの電極への移送方法半導体物性E大Kさん
2012.05.111266. ニオブ酸リチウム(LiNbO3), タンタル酸リチウム(LiTaO3)の仕事関数電子物性京都医療科学大 林さん
2012.05.081265. シリカのエネルギー準位図電子物性S社松本さん
2012.04.081264. 誘電体の吸収の原因誘電体物性K大Kさん
2012.03.181263. 縮退半導体は光るか光物性A社Oさん
2012.02.121262. PZTのMPB(相境界)の結晶構造と物性誘電物性K大Yさん
2012.02.021261. 電荷移動型吸収におけるバンドギャップの求め方光物性学N社Sさん
2012.02.011260. カーボンブラックの金属不純物除去化学工学R社Kさん
2012.01.091259. 銀鏡反応で作製した銀ミラーの裏表の色の違い光物性H社Fさん
2012.01.081258. 銅とエポキシの比誘電率と比透磁率電磁気S大Yさん
2011.12.231257. ガリウム金属の保存金属会社員Nさん
2011.11.301256. 光生成したキャリアの計測が太陽電池設計に役立つ理由光物性O大Yさん
2011.11.291255. 赤外透過光学材料光物性旭化成加々尾さん
2011.11.291254. 単層カーボンナノチューブの磁気光学特性磁気光物性C大Iさん
2011.11.241253. 比誘電率の小さな物質誘電物性F社Uさん
2011.11.101252. 金属とセラミックスの光反射特性の違い光物性阪大片山さん
2011.11.091251. 炭素が蒸気に侵される訳化学Y社三武さん
2011.11.051250. PMMAの斜め入射反射率光物性酒井さん
2011.11.031249. 炭素を用いたGa2O3中のEuの還元について光物性東理大松浦さん
2011.10.181248. 複素透磁率の虚数部のイメージ磁性F社Kさん
2011.10.021247. GaAsのドーパント半導体物性D大Nさん
2011.10.021246. 円偏光板の順序光物性P社Kさん
2011.09.211245. 白金(Pt)の電気抵抗の低温における温度依存性電子物性R社Mさん
2011.09.031244. 金色の物理的起源への質問光物性青木さん
2011.09.031243. シリコンの結晶成長の方位依存性他結晶工学D大Nさん
2011.08.251242. 熱間押出アルミニウムのスジ状欠陥の色の見え方光物性L社Kさん
2011.08.131241. GaAsのAs空孔の電子描像電子物性F大Iさん
2011.07.091240. ゲート制御型トランジスタの特性電子デバイスD社伊藤さん
2011.07.091239. ソフトフォノン誘電体物性韓国Cさん
2011.07.091238. 遠赤外線ロングパスフィルタ光物性東工大岡本さん
2011.06.111237. 光の屈折の法則と空間の一様性光物性塾教員Oさん
2011.05.301236. フラットバンド条件の導出法半導体デバイスD社伊藤さん
2011.05.221235. 超伝導体の高周波特性超伝導某私大Tさん
2011.05.181234. ポリロンフィルムの熱伝導率熱物性K大YHさん
2011.04.271233. 水蒸気の比誘電率誘電現象K社小形さん
2011.03.081232. MOS容量の計算式の導出法半導体デバイスD社伊藤さん
2011.02.221231. ZnS:Cu2+の電荷移動による光吸収構造について光物性K大Sさん
2011.02.221230. 金属のプラズモンとバンド間遷移光物性東大Aさん
2011.01.141229. 低温でMOS-FETのフラットバンドを求めるには半導体デバイスT大Kさん
2011.01.141228. ダイヤモンド微結晶・アモルファスカーボン混相の光学バンドギャップ光物性K大Iさん
2011.01.131227. 差動形固定検光子法による磁気光学効果測定磁気光学H大Sさん
2010.12.301226. PCB分画のための処理法分析化学N社Aさん
2010.12.161225. 極座標の加速度表示について数学某私大Tさん
2010.12.161224. 半導体レーザの電流-光強度特性光デバイス某私大Tさん
2010.12.011223. 電気抵抗の温度係数測定の実験データ処理電気工学東理大田仲さん
2010.11.251222. 炭化チタンの組成比と格子定数結晶工学E大Iさん
2010.11.051221. NOT回路についての疑問電子回路フリーターSさん
2010.10.211220. 光MEMSのAlに付着したフッ素の除去(質問者の希望により削除)  
2010.10.101219. CoCrPtの磁気光学スペクトル磁気光学フィレンツェ大セサルさん
2010.10.041218. X線回折実験でMoを使う理由X線結晶学東理大田中さん
2010.10.041217. プラズマCVDのチャンバークリーニング半導体プロセスA社Kさん
2010.09.181216. 加飾顔料のスパッタ成膜結晶工学K社Aさん
2010.08.261215. パルス電流におけるエレクトロマイグレーション結晶工学L社Hさん
2010.08.201214. 溶液のファラデー効果を測りたい磁気光学Y大Uさん
2010.08.021213. サファイアガラス結晶工学もと素材メーカTさん
2010.07.201212. 摩擦に強いプラズモン共鳴センサー光物性T大Oさん
2010.07.101211. 鉄がInPを半絶縁性にするわけ半導体物理T大Tさん
2010.07.101210. アルミニウム中のチタンの拡散係数金属工学M社Nさん
2010.06.281209. バンドの広さと電気伝導度の関係固体物理S社Gさん
2010.06.161208. 酸化チタン粉末の熱処理による色の変化結晶工学Mさん
2010.06.161207. 全微分を偏微分を使って表す式がわからない数学田中さん
2010.06.131191B. 結果報告「太陽光発電パネルは地デジ受信に影響するか」電磁気学運送業内藤さん
2010.06.051206. コバールと78パーマロイのシート抵抗金属工学M社Tさん
2010.06.051205. #1204「CO2レーザ集塵でのアクリル回収率」へのコメント化学K社Sさん
2010.05.281204. CO2レーザ集塵でのアクリル回収率化学M社Tさん
2010.05.101203. 磁気分極の高速応答性磁性S社Mさん
2010.05.101202. アルミニウムの酸化の加速試験(質問者の希望により削除)  
2010.04.301201. シリコンのラマン散乱光物性X社Hさん
2010.04.091200. 均等拡散反射光物性T社Kさん
2010.03.201199. アルミニウム合金の音響異方性金属工学T社小野寺さん
2010.03.201198. ヘリウムの空気への拡散気体分子論I社Kさん
2010.03.021197. 軟鋼の物性値金属工学長崎大出水さん
2010.02.121196. 亜酸化銅の熱処理による抵抗変化熱物性電機メーカーUさん
2010.02.091195. ポリ塩化ビニールの放射率熱物性K大Hさん
2010.02.031194. アクリルの可視光透過率光物性I社Kさん
2010.01.191193. 湿度100%の空気の物性値物理学K大Hさん
2010.01.121192. 電磁界センサーによる金の判別電磁気学M社Yさん
2010.01.121191. 太陽光発電パネルは地デジ受信に影響するか電磁気学運送業内藤さん
2010.01.121190. 酸化アルミニウムポリマー化学Sさん
2010.01.091189. 宝飾用合金の反射率光物性S社廣瀬さん
2010.01.011188. カルコパイライト半導体物性データの出典半導体物性都城工専山下さん
2009.12.221187. 磁気には電気分極に対応する概念はあるか磁性S社Mさん
2009.12.221186. ATO, CeB6を用いた熱線遮断塗料光物性I社Sさん
2009.12.071185. プロピレングリコールの密度と定圧比熱化学K大Hさん
2009.12.071184. 「クントの実験」で鉄棒を擦ると振動する理由物理実験T社Hさん
2009.12.031183. 酸化物半導体の酸素空孔がドナーになる理由電子物性D大Yさん
2009.12.031182. 貴金属と遷移金属の電気抵抗の違い電子物性S社Mさん
2009.11.251181. ショットキー障壁高さに対するボイドの影響半導体物性T社Tさん
2009.11.151180. クロムの弾性定数の温度変化機械的性質P社Nさん
2009.11.091179. 土壌の水分センサ電気化学O大Kさん
2009.11.041178. 表面エネルギー結晶工学A大Mさん
2009.10.261176C. 「濃度と誘電率の関係」へのコメント誘電物性C社Hさん
2009.10.161177. 基板と導電体の密着性加工技術A社Yさん
2009.10.151176. 濃度と誘電率の相関誘電光物性S社Aさん
2009.10.151175. ウェーハの薄膜干渉色除去光物性N社Kさん
2009.10.151174. ナイロン製品は液体燃料にリサイクルできるか化学S社Yさん
2009.10.151173. カーボンブラックの光学特性光物性S社Tさん
2009.09.281172. 縦カー効果を磁性薄膜製膜時の飽和磁化モニターに使えるか磁気光学T社Kさん
2009.08.201171. 熱線遮断塗料光物性I社Sさん
2009.08.171170. 複素屈折率と磁気光学光物性H大OB Aさん
2009.08.121169. 金属多層膜のプラズモン光物性T大Yさん
2009.08.081168. 金属の非接触判定光物性N社Kさん
2009.08.011167. 金属と紙の拡散反射の違い光物性C社鈴木さん
2009.07.181166. eVから温度への変換物理学基礎Suhiさん
2009.07.151165. シリコンへのドーピング半導体工学D社Kさん
2009.07.151164. 非磁性の絶縁体のファラデー効果磁気光学広島大(OB)Aさん
2009.07.151163. SCM440,FCD450の物性値金属工学S社毛利川さん
2009.07.041162. 樹脂の難燃剤素子実装技術O社員Iさん
2009.07.041161. CRS1010の比透磁率磁性会社員貝沼さん
2009.06.271160. LEDチップの機械的強度測定法半導体工学T社Tさん
2009.06.271159. 反転対称のある系の赤外吸収とラマン散乱光物性M大Kさん
2009.05.281158. 鉛フリーはんだAuSn4のヤング率金属物性H社Wさん
2009.05.271157. 電気を流しにくい物質電子物性T大Sさん
2009.05.231156. シリコンウェハーの光透過光物性Suhiさん
2009.05.111155. ダイヤモンドとアルミナの接合結晶工学S社Mさん
2009.04.171154. プリズムから金への斜め入射の反射光物性M高専Kさん
2009.03.141153. ダイヤモンド加熱ATRの高温特性光物性S社Aさん
2009.02.181152. シリコン/アルミニウムのI-V特性電子物性S大Uさん
2009.02.141151. チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸カルシウム(CTO)のバンドギャップ光物性n大Sさん
2009.02.111150. 吸収が強いときの反射率光物性C社Hさん
2009.02.101149. Mn5Ge3の選択エッチングプロセスD大Wさん
2009.02.101148. 磁壁のピニング効果磁性農工大長江さん
2009.02.091147. 軟鋼の表面張力金属工学K社Kさん
2009.02.071146. フラーレンポリマーのバンドギャップ有機エレクトロニクスC大Nさん
2009.02.071145. 磁気インピーダンス(MI)効果磁性T大Yさん
2009.01.301144. 光学遅延変調法のファラデー効果の場合磁気光学T大Sさん
2009.01.301143. 光照射による発熱効果熱物性O大Mさん
2009.01.301142. アルミニウムの誘電率誘電物性E社Mさん
2009.01.241141. 光子の強度相関測定量子光学K大Kさん
2009.01.241140. 円偏光発生についての質問磁気光学O大Wさん
2009.01.241139. アモルファスシリコンの吸収端光物性K大Yさん
2009.01.241138. 量子力学の質問物理基礎K大横山さん
2009.01.101137. 金属間化合物Fe2Al5の磁気特性磁性H試験場Tさん
2009.01.061136. 質問#1061「窒化ガリウム(GaN)の抵抗率の基板による違い」へのコメント結晶工学H社土屋さん
2008.12.251135. 貴金属上の水滴の濡れ性変化表面科学T社Tさん
2008.12.201134. PEMを用いた磁気光学測定における楕円率の膜厚依存性磁気光学K大Hさん
2008.12.151133. シリコンの直接バンドギャップ半導体物性M大Mさん
2008.12.141132. 仮想屈折率法における負の消光係数光物性S社Sさん
2008.12.141131. ダイヤモンドとグラファイトの熱伝導熱物性N社Oさん
2008.12.071130. ファラデー効果の磁区像と磁壁磁気光学O大Hさん
2008.12.031129C. 「磁界中での反応」へのコメント磁性学H社萬さん
2008.11.261129. 磁界中での化学反応磁性学E社Fさん
2008.11.211128. プラスチックの透湿性化学S社Yさん
2008.11.211127. 防音継ぎ手の音響伝搬特性建築音響K社Hさん
2008.11.211126. プラスチックの赤外吸収光物性O社井上さん
2008.11.211125C. 質問#1125へのコメント化学化学会社Sさん
2008.11.151125. 混合攪拌時にホイップクリーム状になる理由化学プロセス技術者平井さん
2008.11.071124. ファラデー楕円率は磁化に比例するか磁気光学K大Hさん
2008.10.311123. 超伝導磁気分離技術の実験をやりたい超伝導物性高校1年生Sさん
2008.10.271122. シリコンウェハのランプ加熱半導体物性H社坂本さん
2008.10.241121. ITOの面抵抗変化電子物性D社Sさん
2008.10.231120. アルミニウム蒸着とクロム蒸着光物性S社Tさん
2008.10.231119. 金/シリコンショットキーダイオード半導体物性M大Mさん
2008.10.231118. 骨の透磁率磁性M社Oさん
2008.10.161117. GaAsの電子線励起プラズマの光学的観察光物性O大Kさん
2008.09.291116. 薄膜シリコン太陽電池の分光感度の光バイアス依存性光物性S大Hさん
2008.09.121115. アルミ溶接時の反りについて金属工学F社Tさん
2008.09.111114. pn 接合ダイオードの順方向電流-電圧特性について半導体物性A高専Yさん
2008.09.091113. The question about the p-GaN ohmic contact
(p型GaNへのオーム性接触について)
半導体物性名工大Zhuさん
2008.08.311112. ダイヤモンドのバンドギャップ以下の光の浸入長光物性K大Iさん
2008.08.311111. emu/gからμBへの換算磁性W大Kさん
2008.08.311110. 黄銅の熱伝導率の温度係数金属工学S社Kさん
2008.09.201093C. 質問#1109へのコメント化学化学会社Sさん
2008.08.311109. シロキサンの水への溶解度化学S社Hさん
2008.08.281108. IH土鍋の銀ペースト電子物性半導体メーカーKさん
2008.08.171107. 高濃度ドープ半導体の活性化エネルギー電子物性半導体メーカーKさん
2008.08.021106. ポリウレタンチューブからの溶出化学S社Hさん
2008.07.291105. 半導体のフェルミ準位はなぜ禁制帯の真ん中に来るか半導体物性S社Gさん
2008.07.261104. n形およびp形半導体のキャリア密度の温度変化半導体物性H大Sさん
2008.07.191103. TM入射光に対するブリュースター角の求め方光物性武蔵工大植村さん
2008.07.111102. 赤色LEDの光を当てたとき青色LEDの光電流が流れないわけ光物性C大Yさん
2008.07.111101. FTIR分析ATR法に最適なプリズム光物性T社Sさん
2008.07.101100. ワイヤグリッド偏光子光物性E社Mさん
2008.07.031099. MIM構造の容量ー電圧特性電子物性K大Kさん
2008.07.031098. 皮膜で固定したアルミ線の熱膨張と線膨張熱物性電機メーカーNさん
2008.06.141097. PN接合の拡散電位を電池として利用できるか電子物性A社Kさん
2008.06.131096. 六方晶サファイヤの結晶面の名称結晶工学S社Yさん
2008.06.121095. ドーピングによってシリコンの色は変わるか光物性S大Uさん
2008.06.111094. スピン偏極の光学的測定について磁気光学O大Mさん
2008.06.211093C. 質問#1093へのコメント化学化学会社Sさん
2008.06.111093. 酸素気体透過率の小さい有機材料 (コメント参照)化学N社Mさん
2008.05.281092. カーボンナノチューブの磁気エネルギー磁性Kさん
2008.05.261091. アルミニウム容器での尿素の保存化学運送業Aさん
2008.05.251090. 強誘電体光変調器光物性N高専Tさん
2008.05.231089. 光電子分光におけるコヒーレント部分とインコヒーレント部分光物性T大Kさん
2008.05.231088. サブバンド間プラズモン光物性O大Kさん
2008.05.201087. プラスチックの電波透過性光物性K社Yさん
2008.05.191086. (Ba0.7Sr0.3)TiO3のヤング率、ポアソン比機械的性質M社Fさん
2008.05.101085. N-メチル-2-ピロリドン化学P社Yさん
2008.05.101084. X線の侵入深さについて光物性F社Kさん
2008.05.101083. ポラリトンの描像について光物性O大Oさん
2008.04.281082. 金ミラーの温度変化による変形薄膜物性K機関Kさん
2008.04.281080. ペロブスカイト型酸化物における物性変化の定性的説明電子物性T大Kさん
2008.04.271079. ソーラーパネルは発光するか光デバイス熊本県Kさん
2008.04.261078. 半導体の実験についての質問電子デバイス大学3年高橋さん
2008.04.261077. 圧力印加による磁化の変化と磁気特性の変化磁性T大Tさん
2008.04.261076. 空間電荷制限電流について電子物性S社Hさん
2008.04.261075. 分光分析における微分スペクトルについて計測技術K大Sさん
2008.04.261074. パイプコイルの加振試験計測技術N社Sさん
2008.04.231073. Fe-Al合金の結晶構造結晶工学熊本大邱さん
2008.04.201072. 酸化物焼結体の酸素の不定比性(酸素欠損)の定量結晶工学A社Bさん
2008.04.121071. 複合材料の比熱熱物性N社Uさん
2008.03.201070. Optical properties of stainless steel at the high temperature
(高温におけるステンレスの光学的性質)
光物性A社Bissonさん
2008.03.201069. ナトリウムターシャルプトキサイドの物性化学S大平崎さん
2008.03.061068. 単元素金属の結晶構造の起源金属物性T大Kさん
2008.02.281067. 光学薄膜の反射光物性K大Aさん
2008.02.241066. 電磁波とプラズモンの結合についての疑問光物性M社Oさん
2008.02.211065. 半導体の光学現象の量子力学固体物理学Mさん
2008.02.211064. チタン酸バリウム薄膜研究の意義結晶工学n大学Sさん
2008.02.211063. フラーレン(C60)単結晶のフォトルミネッセンス光物性*大学院Sさん
2008.02.121062. ボルタは電池の出力をどうやって確認したか電気化学山口市佐伯さん
2008.02.121061. 窒化ガリウム(GaN)の抵抗率の基板による違い
土屋様のコメント
結晶工学F大Yさん
2008.02.121060. 光学薄膜の透過率光学F大Yさん
2008.02.121059. ラマン散乱による結晶歪みの評価結晶工学O大Kさん
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2007.12.051030. ショットキーダイオードのI-V特性エレクトロニクスO大Tさん
2007.11.221029. サファイヤ板の複屈折光物性K大Iさん
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2007.11.181027. 相変態について熱物性秋田県すがいさん
2007.11.141026. 太陽電池の理論的最大変換効率の導出法光物性O大Tさん
2007.11.121025. 強誘電体薄膜のキュリー温度誘電体物性H大Hさん
2007.11.101024. なぜPtの自由電子の散乱寿命は短いのか光物性M社Oさん
2007.11.071023. なぜ光伝導スペクトルを測定するのか光物性O大Tさん
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2007.11.021021. セラミックスの発光光物性A社Nさん
2007.11.021020. 半導体単結晶のゲージ率半導体物性H大Oさん
2007.11.021019. 磁気光学の測定系磁気光学東大嶋田さん
2007.10.311018. パワーMOSのGate容量の温度特性についてエレクトロニクスH社Sさん
2007.10.261017. リンゴの色、金属の色光物性静岡県岡部さん
2007.10.251016. 鉄のバルクと薄膜の磁化の差異について磁性京大倉本さん
2007.10.251015. 金属と半導体の電気伝導の温度変化の主要因固体物性武蔵工大植村さん
2007.10.251014. ガラスエポキシの硬化則機械的性質O大Nさん
2007.10.211013. コイルを近づけたときの磁性粒子に働く力電磁気学O大Mさん
2007.10.111012. ギブスの相律統計力学名城大西脇さん
2007.10.111011. クロムモリブデン合金鋼SCM440の焼き戻し性能曲線金属工学N社Sさん
2007.10.111010. 間接遷移・直接遷移は何によって決まるのか半導体物性北大Kさん
2007.10.091009. 磁石にかかる力電磁気学N大Hさん
2007.10.051008. p型ゲルマニウムの仕事関数半導体物性F大Kさん
2007.10.051007. 磁性ガーネットの磁気光学スペクトルの光入射方向依存性磁気光学T社Sさん
2007.10.051006. 鉄-アルミの金属間化合物の物性値金属工学T社Tさん
2007.09.211005. 37℃の水に23℃の水入り小瓶を入れたときの温度熱学S社Kさん
2007.09.191004. Al-Cu合金鋳造の際の成分の偏り金属工学S社Sさん
2007.09.191003. シリコン研磨発生時の物質の処理半導体プロセスE社Oさん
2007.09.141002. 酸化チタンの伝導帯位置の決め方電子物性T大Sさん
2007.09.081001. ZnO透明導電膜について電子物性K大Sさん
2007.09.081000. 白色LEDについて光物性N大Hさん
2005.12-2007.9Q&A(3)#700-999  
2002.12-2006.12 Q&A(2)#300-699  
2000-2002.12 Q&A(1)#1-299  

1000. 白色LEDについて

Date: 2007/09/05 9:34
Q: 佐藤先生、突然のメール失礼いたします。
先生のホームページを拝見させていただきました。どうか、質問よろしくお願いいたします。

現在、N**大学3年生のH**と申します。
Web上にアップする際は、匿名でお願いいたします。
白色LEDについて勉強してます。
現在は、青色LEDに黄色蛍光体をかぶせる形で、白色光を得ているのが主流と分かりました。
さらに勉強を進めましたら、以下の2点の問題により、青色LEDではなく紫外光LEDを元として、
白色LEDを作成したいように(研究者の方々は)思ってるようなのです。

①青色発光のパワーを強めることは難しい。
②460nm(青色)で、効率的に励起する適当な蛍光体はなかなかない。

なぜ、青色では、①、②のような状態になるのでしょうか?
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Date: 2007/09/07 10:36
A: H君、佐藤勝昭です。
 ①青色のパワーは十分あると思います。ただ、青色を使って、黄色を励起するので、 青と黄色のパワー分配のバランスがむずかしいということがあるのではないでしょうか 。紫外線でRGB蛍光体を別々に励起すればパワーの分配がやりやすいと思います。
 ②蛍光体としてはいろいろのものがありますが、主として希土類系が使われますが、 ちょうど470nm付近に励起帯をもつものは、少ないということです。紫外励起なら色ん な蛍光体が使えます。
 ③紫外でRGB三色を励起する方が演色性がよいというのが開発の主目的です。
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Date: 2007/09/09 19:28
AA: 佐藤先生、お早いお返事ありがとうございました!!
現在、自分なりに勉強はしているのですが、まだまだ知識量が足りない状態です。
したがって、きちんとした質問を行うことができない状態のように思いました。
また、質問が出てきましたら、メールさせていただいてもよろしいでしょうか?是非とも、 よろしくお願いいたします!
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Date: 2007/09/10 10:08
Q2: Hです。

自分なりに勉強しまして、また分からないところが出てきました。現在、うちの大学 の授業で、半導体の授業を履修しているのですが、この授業をしていただいてる教授 にも質問に行ったのですが、よく分からない、という回答でした。

質問① 現在、白色LEDと緑色蛍光体に関する英語論文を読んでいます。
SrAl2O4:Eu2+ (2価のEuをドープしたアルミン酸ストロンチウム)という緑色蛍光体を 用いて、InGaN UV-LED の上に乗せ、 紫外励起の緑色LEDを作製するという論文です。
ここで疑問なのは、なぜ、2価の Euなのに、緑色(下図516nm前後)なのか?ということです。
2価のEuの最低励起状態と基底状態のエネルギー差は、430nm前後と思います。うち の先生にも伺ったのですが、分からない、という回答でした。
以下の図の、516nmがEu2+、614nmがEu3+の影響と書いてありました。
Fig.5

質問②
SrAl2O4:Eu2+ 粉末の励起-発光スペクトル図が以下です。
Fig.3 この緑色蛍光体粉末を、エポキシ樹脂で、熱硬化させて緑色LEDを作製していま す。そして、その緑色LEDの発光スペクトルが質問①にもあります以下の図です。
Fig.5 疑問点は、なぜ粉末状のときは、614nmの赤色が発光せず、緑色LEDにしたら発光 するのでしょうか?
エポキシ樹脂で120℃で熱硬化(これも疑問です。InGaN UV-LEDを120℃の高温にさら して壊れないのか?、と不思議です。)
したことが原因なのでしょうか?と言いますのは、粉末作製の際に、還元環境下 (Eu3+より不安定なEu2+ を多く残すために)で作製されています。それを高温状態 にするということは、酸化され、Eu3+が増えたから、ということなのでしょうか?と 考えているのですが、正しいのでしょうか?

質問③ また、この論文では、完成した緑色LEDの発光スペクトル図(質問①の Fig.5) より、結論として、
「 All the characteristics indicate that SrAl2O4:Eu2+ is a good candidate phosphor that can be applied in white LEDs. 」
と書かれてます。しかし、この図から、何がどう良い候補の蛍光体(good candidate phosphor)なのか分からないのです。自分なりに考えるには、InGaN UV-LED は市販されている と思いますし、よって比較的強力な紫外光を出すのではないか?と思います。よって、上図 を見ますと、その強いとされるInGaN UV-LEDの発光強度と同じくらいの緑色発光 を出しているように思えます。516nm前後と397nm前後を積分したら、圧倒的に516nm 前後の積分量が上まっているように思えます。したがって、この緑色LEDの発 光効率は緑色LEDとして使用するには、十分に期待が持てる、ということなのかな ?と考えています。この考えで正しいのでしょうか?
(添付ファイル:Z.C.Wu et al., Materials Letters 60 (2006) 3499-3501)
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Date: 2007/09/11 1:43
A2: H君、佐藤勝昭です。
 論文を読みました。
 この論文は、電子系の学部3年生にはちょっと難しいかもしれませんね。
 ① 2価のEuの励起状態が430nm(青)というのは、出典はなんでしょうか? f-f遷移を考えておられるのでしょうか?f-d遷移(正確には4f65d1→4f7遷移)を 考えた場合には、配位子が何であるかによって、赤、緑、青のいろんな遷移を示 します。4f電子状態は原子核に強く束縛され結合の影響を受けないのですが、5d 電子状態は配位子のp電子状態と結合して結晶場分裂を受けているため、f-f遷移 の第1励起状態よりかなり低エネルギーに励起状態を作ります。EuSではEu2+のf -d遷移は赤の発光を示しますし、SrS:Eu2+では緑の発光を示します。私は、以 前、SrGa2S4:Eu2+単結晶を作ったことがありますが、f-d遷移による美しい緑色 発光を示しました。SrAl2O4でもSrのサイトをEuが置換すると励起状態は緑色に 来ると思います。
 ② Fig.3の粉末のPLスペクトルは、ジョバン・イボンの蛍光分光装置で測定し たものです。(b)は励起波長が365nm、(c)は励起波長が397nmの単色光源で励起し たときのPLスペクトルです。一方、Fig.5はUV-InGaN LEDを励起光源としたとき のスペクトルです。LEDのスペクトルは決して単色光源ではありません。色々の 波長が含まれています。Eu3+の4f6状態の吸収帯(7F0→5D3遷移)は408nm付近にあ り、LEDの397nmのピークの裾にかかっているので、5D3状態が励起され、5D0状態 に緩和し、5D0→7F2の発光(614nm)を起こすのだろうと思います。熱硬化樹脂によ る影響ではないでしょう。
 ③ これまでの黄色と青を合成した白色LEDでは緑の成分が少ないため、この白 色光源で照らすと緑がくすんで見えるという演色性の悪さが問題でしたから、こ の緑色蛍光体を黄色蛍光体とともに利用すれば演色性が改善されるので、good candidate phosphor that can be applied in white LED's (白色LEDに応用する ことができるよい候補)と書いたのでしょう。
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Date: 2007/09/12 12:13
AA: Hです。
先生ありがとうございました。
自分は、この論文翻訳するのに、1週間くらいかかったのですが、先生は、こんなに すぐに理解してしまわれるのですね・・・
本当に尊敬します。
貴重なお時間を割いていただきまして、本当にありがとうございました。
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1001. ZnO透明導電膜について

Date: 2007/09/06 13:43
Q: 佐藤先生

以前もメールさせていただいたK*大学大学院博士前期課程2年のS**と申します。
再び質問させていただきたいと思いメール差し上げています。
HPにアップする場合は大学名・氏名は匿名で掲載していただければ幸いです。

今も酸化亜鉛の成膜を行い、透明導電膜の研究をやっているのですが 論文などを調べても詳しい内容が分からないことがありましたので質問させていただきました。
酸化亜鉛(ZnO)にアルミニウム(Al)やガリウム(Ga)をドープして低抵抗な透明導電膜を作製する研究は 非常によく行われているのですが、なぜAlやGaなどのⅢ族の元素をドープすれば抵抗が低くなるのか いまいち納得できる解説が見つかりません。
専門外かもしれませんが、よろしければ佐藤先生のアドバイスをいただきたいと考えています。
よろしくお願いいたします。
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Date: 2007/09/06 21:57
A: S君、佐藤勝昭です。
 坂井君は、半導体の不純物ドーピングは勉強したことがありますよね。
ZnOの亜鉛の格子位置をAlが置換したとしますと、Znは2属、Alは3属なので Alの原子核はまわりのZnに比べて+1価だけ電荷が大きいので、このまわりに 電子が引きつけられて、中性ドナーとなります。室温ではドナーに 捕まっていた電子が伝導帯に供給されて、低抵抗になるのです。
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Date: 2007/09/07 11:05
Q2: 佐藤先生

丁寧な回答ありがとうございました。
続けて質問なのですが、電子が伝導帯に供給されると低抵抗にはなると思いますが、 キャリア密度が高くなりすぎると薄膜が着色してしまうと思うのですが、そのよ うな問題は大丈夫なのでしょうか。
一般的にキャリア密度がn=1021 cm-3 を超えると色がついてしまい、あまりに キャリア密度が上昇すると透明導電膜としては使用できないと思うのですが。
透明で低抵抗を実現するには、やはり移動度を高くするという発想が大切になるのですか。
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Date: 2007/09/07 15:22
A2: S君、佐藤勝昭(応用物理学会@札幌)です。
 キャリアをドープすることによる着色は、自由キャリア吸収によるもので、キャリア 密度が高いほど赤外に向かってλ^2で増大するような吸収を作ります。導電率σはキャ リア密度nと移動度μを使って
   σ=neμ
と表されるので、自由キャリア吸収を増やさずに導電率を高める(=低抵抗化する)に は移動度μを大きくする必要があるのです。そのためには、ZnOの結晶性を高くする必 要があります。
------------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/09/07 16:01
Q3: 佐藤先生
Sです。
お忙しい中、返信ありがとうございます。
ZnOを透明導電膜として使用するには、1021 cm-3オーダ程度のキャリア密度と 低抵抗率が必須条件であるので、そのためにはσ=enμから移動度μを高くしないといけないこ とは分かりました。
ただ、移動度μというのは結晶化の度合いに関係するのでしょうか。
我々のコンセプトとして低温成膜(100度以下)で透明導電膜を実現したいのですが、 低温成膜だと結晶化があまり進まないので移動度の向上は難しくなってくるのでしょうか。
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Date: 2007/09/07 20:29
A3: S君、佐藤勝昭です。
 一般論として100℃という低温では、基板上を原子が拡散するのに十分なエネルギー が得られないのでグレインサイズが小さく、欠陥の多い膜になると思います。しかし、 あなたの指導教員が、その温度でやれというのでしたら、きっと成膜技術に自信がおあ りなのでしょうから、私がとやかく言えるものではありません。指導教員と十分に話し 合ってください。
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Date: 2007/09/10 10:10
AA: 佐藤先生
Sです
返信が遅れて申し訳ありません。
我々の考えてしては100度以下で結晶化させようという考え方は少ないです。
しかし、完全に結晶化させずとも透明で低抵抗な膜が得られれば、透明導電膜として の機能は果たせるのではないかと考えているところです。しかし結晶化と移動度μが 大きく関係してくるとなれば他の方法も考えなければいけないと考えています。
いろいろ参考になりました。ありがとうございました。
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1002. 酸化チタンの伝導帯位置の決め方

Date: 2007/09/12 12:43
Q: 佐藤先生はじめまして。
物性なんでもQ&Aいつも研究の参考のため参考にさせていただいております。
T*大学4年のS**と申します。
webにアップロードされる際は匿名でお願いします。
 私は卒業研究で半導体光触媒の可視光増感に取り組んでいるのですが, 恥ずかしながら研究で用いている酸化チタン,酸化タングステンの正確なコンダクションバンドの値の算出法がわからず、 光励起時の電子移動を明確に説明できません。
 自分の大学に仕事関数測定装置はあるのですが,電子親和力を測定することが出来ず、正確な値にちかづけることが出来ませんでした。(イオン化エネルギーは測定できるらしいのですが・・・)
 つきましては、コンダクションバンドの正確な値の仕事関数、及びイオン化エネルギーから求める算出法、もしくは関連するし両党ございましたらお教え願えないでしょうか。
 つたない文章で失礼いたしました。よろしくお願いいたします。
------------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/09/13 0:10
A: S君、佐藤勝昭です。
 卒業研究に関して出てきた疑問は、本来、指導教員に質問すべきものですし、 指導教員もテーマとして与えた限り、学生にきちんと説明する責務があります。
 金属の仕事関数の測定法の最新の解説は、応用物理学会誌の2007年4月号に 載っています。
吉武道子:デバイス電極材料と仕事関数;応用物理、第76巻、第4号、p.0399- 0404 (2007)
 半導体の仕事関数は、バンドギャップ中にあるフェルミ準位と真空準位とのエ ネルギー差が仕事関数となるので、仕事関数だけからは伝導帯の位置が決められ ないのです。光電子分光または逆光電子分光などでフェルミの位置を正確に決める必要があります。
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1003. シリコン研磨発生時の物質の処理

Date: 2007/09/11 17:49
Q: こんにちは。
はじめまして、私はE社Oと申します。
去年の11月ころからシリコン材料(OG)の販売開始しました、 今回は回収先の業者からシリコンと酸化アルミの粉(シリコン研磨時発生後の物です。)
上記の品物の再生利用可能性はありますか?との質問でございます。
つきましては、佐藤研究室様に、シリコン研磨時発生後の物でご教授を頂戴いたしたく、お願い申し上げます。
佐藤研究室様のご協力のほどを切にお願い申し上げます。
敬具
--------------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/09/16 10:09
A: O様、佐藤勝昭です。  私は、農工大を定年になり(現在は特任教授です)、研究室を持って いません。従って、直接お手伝いはできませんが、参考になる情報をお 教えしましょう。
 大阪大学大学院工学研究科環境エネルギー工学専攻の西嶋茂宏研究室 では超伝導磁石から出る強い磁界を用いて、シリコンと研磨剤、さらに は、切断の際に混入した鉄などを分離する研究を行っておられます。 ご相談されるとよいでしょう。
 メールアドレスは、nishijima@see.eng.osaka-u.ac.jpです。 ホームページは、http://www.nucl.eng.osaka-u.ac.jp/04/index.html です。
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Date: 2007/09/18 14:45
AA: 独立行政法人 科学技術振興機構
佐藤勝昭(工博)様
拝啓 仲秋の候 ますますご健勝のこととお喜び申し上げます
 このたびは誠に勝手きわまるお願いを申しあげましたにもかかわらず、お聞き届け くださいまして、心から感謝いたしております。
 おかげさまで、貴重なご意見を多数頂戴することができました。今 後は、これらのご意見を参考に、よりきめ細かで、お客様のご期待に そえる商品開発を始め、営業・サービス体制を確立してまいりたいと 存じます。
 本来、貴社へお伺いしてお礼申し上げるべきところ、略儀にて誠に 失礼ではございますが、書面にて御礼申し上げます。
 どうぞこれからも、忌憚のないご指導ご鞭撻を賜りますようお願い 申し上げます。
敬具
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1004. Al-Cu合金鋳造の際の成分の偏り

Date: 2007/9/18 8:44
Q: 佐藤先生
はじめまして、㈱S***のS*と申します。(匿名希望)
弊社は鋳造業を営んでおります。
先日、疑問があったので材料学の本やWEBで調べてる最中に 先生のHPを拝見させて頂きました。
もしよろしければ回答を御願い致します。

合金鋳物を鋳造する時に、成分が偏る理由が知りたいのです。
例えば、Al-CuでCuが10%の時に製品を鋳造すると、 鋳物のある部分では5%で違う部分では15%になったりする事が多々あります。
ちなみに、母材はメーカーの保証付きのAl-Cu90-10のインゴット合金です。
テストピースは問題なく90-10です。
Al-Mg系でマグネが飛ぶ時とは異なるようです。
御教え願えれば幸いです。よろしく御願い致します。
----------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/09/19 1:37
A: S様、佐藤勝昭です。

クリックすると拡大します
 私は、金属工学の専門家ではありませんので、正しくお答えできる かどうかわかりませんが、一応私の知識の範囲でお答えします。
添付図はAl-Cuの合金状態図(いわゆる相図)です。
(http://tptc.iit.edu/Center/research/PhaseDiagram/Content/result/Al-Ni-Cu%20system/Al-Cu.gif による)
加工用Al-Cu合金の場合、Cu組成が少ないので、合金状態図のα相 の状態を保つことが出来ますが、鋳造用Al-Cu合金は、Cu含有量が 多いので、出発融液の温度によってはα相を保てず、共晶組成の 合金が固化することになるのではないかと存じます。
例えば、90-10合金を700℃で融解し徐冷したとしますと、液相線に 達したところで、α相のAl(Cuをわずかに含む)を析出しながら、液 相線に沿って降下し共晶点に達します。共晶点から急冷すると Cu18%のAl-Cuが得られます。もし、共晶点から徐冷すると、α相と θ相(Cu33%の金属間化合物)が析出します。

合金状態図とにらめっこしながらよく考えてみてください。
-----------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/09/19 9:21
AA: 佐藤先生
御多忙の中、早速の御返事、ありがとうございました。
おっしゃる通り、状態図を見て、考えてみます。
ありがとうございました。
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1005. 37℃の水に23℃の水入り小瓶を入れたときの温度

Date: 2007/09/18 17:00
Q: 東京農工大学名誉教授 佐藤様
はじめまして。私はS***(株)のK*と申します。(社名、名前は匿名でお願いします。)
私は物理・化学・数学等全てにおいて無知ですが、縁あって分析関係の仕事をしています。
仕事内容とは関係ないのですが、上司から、水槽中に物体を入れるとどれくらい温度が下がるのかを 算出しなさいと言われました。水槽の体積や物の比表面積、熱伝導率など関係するとは思うのですが、 相談することも出来ず、ひたすらインターネットで算出方法・例など探しましたがやはり基礎知識も乏しく、 さっぱりわかりません。
例えば37℃の水が2L水槽に入っていて、23℃の水を30mL入れたガラス瓶を1つ入れると何℃下がるのでしょうか? 低レベルな質問で申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
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Date: 2007/09/18 18:03
A: 水の比熱をC(=4.2J/K・g)としておきましょう。2[L]の水の熱容量は、比重を1として2000C[J]です。37℃の水が、 水の入った瓶を入れたことでt[℃]になったとすると、ガラス瓶に移動した熱量は、ΔQ1=2000C(37-t)です。
一方、ガラス瓶30[mL]の水の熱容量は、瓶のガラスの熱容量を無視すれば、30C[J/K]ですから、 23℃の水がt℃になったとすると増加した熱量はΔQ2=30C(t-23)です。
ΔQ1=ΔQ2なので、2000C(37-t)=30C(t-23) よりt=36.79
すなわち、23℃の水30mLを入れたことで、全体の温度は36.79℃になります。
従って、低下した温度はΔT=37-36.79=0.21℃です。
(瓶の熱容量が大きいとこの計算は成り立ちません。また、厳密には比熱Cは温度の関数なので、 水槽と小瓶の水の比熱Cは異なりますが、およその見積もりではこの違いは無視できます。)
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Date: 2007/09/19 9:24
AA: 東京農工大学名誉教授 佐藤様
ありがとうございます。難しく考えすぎたのかもしれませんね。
回答の例を参考に再度計算したいと思います。
ありがとうございました。
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1006. 鉄-アルミの金属間化合物の物性値

Date: 2007/09/27 22:04
Q: 佐藤先生
 はじめまして。T社研究所のT*と申します。
金属の表面処理の開発を行っているものです。

お願いは
・ 鉄-アルミの金属間化合物(FeAl3、Fe2Al5、FeAl2、FeAl、Fe3Al)の熱膨張係数
  破壊靭性値、硬さなどの物性値が知りたいのですが、そうした値が載っている
  ハンドブックないし文献をご存じないでしょうか?

です。よろしくお願いいたします。
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Date: 2007/10/05 14:34
A: T様、佐藤勝昭です。
 海外出張のため、お返事が遅くなりました。鉄-アルミニウム合金の 物性については1957年のフォード自動車による研究があります。

Ion-Aluminum Alloy Systems, Part 1, Fundamental Studies and Alloy Development
Corporate Author : FORD MOTOR CO DEARBORN MI
Personal Author(s) : KAYSER, F.X.
Report Date : MAY 1957
Descriptors : *ALUMINUM ALLOYS, *IRON ALLOYS, MAGNETIC PROPERTIES, MECHANICAL PROPERTIES, METALLURGY, TRANSFORMATIONS.

Ion-Aluminum Alloy Systems, Part 2, Some Investigations in Air-melting and Application of Iron-Aluminum Alloys
Corporate Author : FORD MOTOR CO DEARBORN MICH
Personal Author(s) : CLARK,JOSEPH J. ; ZAGER,WILLIAM J.
Report Date : MAY 1957
Descriptors : *ALUMINUM ALLOYS, *IRON ALLOYS, MACHINING, MECHANICAL PROPERTIES, MELTING

Ion-Aluminum Alloy Systems, Part 3. Welding of Iron-Aluminum Alloys
Corporate Author : FORD MOTOR CO DEARBORN MI
Personal Author(s) : BURTHWICK, R. ; GOODMAN, S.
Report Date : MAY 1957
Descriptors : *ALUMINUM ALLOYS, *IRON ALLOYS, MECHANICAL PROPERTIES, METALLURGY, TESTS, WELDING.

T社なら入手可能ではないでしょうか。

また、West Virginia大学の学位論文に下記のものがあります。
Title: Magnetostriction and Thermal Expansion from 77 K to Room Temperature of Ordered Iron Aluminum Alloys Containing 25 Atomic % Aluminum.
Authors: Cook, Jason Michael
Affiliation: WEST VIRGINIA UNIVERSITY.
Publication: Thesis (PH.D.)--WEST VIRGINIA UNIVERSITY, 1979.Source:
Dissertation Abstracts International, Volume: 40-12, Section: B, page:5727.
Publication Date: 00/1979
Category: Physics: Condensed Matter
Origin: UMI
Bibliographic Code: 1979PhDT.......189C

これは、大学に問い合わせるしかないですね。

添付のpdfは
Thermal Expansion of Aluminum and Some Aluminum Alloys Peter Hidnert and H. S. Krider
です。参考になれば幸いです。
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Date: 2007/10/08 15:17
AA: 佐藤先生
 Fe-Alに関する文献ありがとうございます。
この文献たよりにいくつかあたってみます。
Fe-Al金属間化合物は、最近AlとFeの異種材接合などで 接合部の靭性を低下させるものとして嫌われ、その対策 などが進められていますが、そもそもなぜFe-Alはだめなのか またいろいろあるなかで、どの化合物が問題なのかなど 知っておく必要があり、メールしたしだいです。
また、お願いする機会もあろうかと思いますが 今後ともよろしくお願いいたします。

お忙しいなかご返事いただきありがとうございました。
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1007. 磁性ガーネットの磁気光学スペクトルの光入射方向依存性

Date: 2007/10/02 11:36
Q: 佐藤勝昭様
T社Sです。
製品製造現場からの質問なので、匿名で済みませんが、お願いします。
希土BiFeガーネット光アイソレータ製品で、印加磁界方向変化によって、 (一定光線軸に対する磁力線の傾き角度変化によって)アイソレーション 最大となる波長のシフトが起きているように思えます。 実際は・・・

光線軸に沿って棒磁石のNS方向が有り、棒磁石の側面で、NS極の中央に 置いた回転子よりも、NあるいはS極に寄せて置いた回転子では、最大アイ ソレーション波長が短いほうに10nm(1540⇒1530nm)シフトしていま す。

この原因は物性的に何によるものと考えられ、対策は何でしょうか?
どうぞよろしくお願いします!
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Date: 2007/10/02 13:08
A: S様、佐藤勝昭です。
 磁化方向が光軸から傾いた場合、純粋の磁気旋光性に、磁気円二色性が混じってくることがあります。 また、磁気複屈折の効果も無視できなくなります。従って、スペクトルは、光軸//磁化の場合とは異なるでしょう。定 量的に扱えると思いますが、今、手元に論文がありません。
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Date: 2007/10/02 18:47
A': S様、佐藤勝昭です。
 さきほどの説明は正確さを欠いていました。改めて説明します。
もとの誘電率テンソルの成分が、εxx、εxyおよびεzzで表されるとする。
   εxx  εxy   0
ε=- εxy  εxx   0
    0    0   εzz
  もし光の進行方向が磁化の向き(z軸)からθだけx方向に傾いていたとすると、
そのような系の誘電率テンソルは、c=cosθ、s=sinθとして、
   c2εxx+s2εzz  cεxy     -cs(εxx-εzz)
ε'=-cεxy      εxx      sεxy
   -cs(εxx-εzz) -sεx      s2εxx+c2εzz
に対してマクスウェルの方程式(Nは複素屈折率)
N2E-ε'E=0
を解くとき、 複屈折がない、すなわち、εxx=εzzならば、任意のθに対し、
(N2-εxx)2 + εxy2=0
となって、N2=εxx±iεxyという普通の解しかありません。
しかし、εxx≠εzzならば、
Nは複雑な式となります。
N2-εxx=Aとし、Δε=εzz-εxxとすると
A3+(Δε-c2εxy)A2-(c2(1-s2εxy)Δε+s2εxy)εxyA+s2εxy2Δε(c2+1)(c2Δε- 1)=0
を解くことになります。解析的に解けませんが、εxyとΔεがθに応じて混じってくるため、 解は、N2=εxx±iεxyから大きくずれます。もはや円偏光は固有関数でなくなります。
もともと、ファラデー回転角はεxy'とε"xyの1次結合で表されますが、その係数が角度依存性を持つこととなり ピーク位置が角度によってシフトするものと思われます。
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Date: 2007/10/04 6:05
Q2: 佐藤 勝昭様
早速、丁寧なご説明を有難うございました。
基礎知識が不足なので、佐藤様の著書を勉強します。 ところで・・・
単純な質問ですが、結晶内に複屈折がなければ、光線と磁力線の角度 に依存したファラデー回転角変化は生じないとして良いでしょうか?
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Date: 2007/10/04 23:31
A2: S様、佐藤勝昭です。
 結晶内に複屈折がなければ、光線と磁力線の角度に依存した ファラデー回転角変化は生じないと考えてよいのですが、複屈折として、 結晶の異方性によるもののほか、磁気複屈折を含んでおりますので、 どうしても避けられないのではないでしょうか。
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Date: 2007/10/06 9:40
AA: 佐藤 勝昭様
光線軸と磁力線が傾いている限り逃げられないのですね、ファラデー回転子の ガーネットも最近は片側においた基板に金属で接着固定され、表面実装による 接着歪からの光弾性複屈折も手伝っているかもしれません。
磁力線を光線軸にできるだけ揃えるのを解答とします。
有益なご助言有難うございました。    S
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1008. p型ゲルマニウムの仕事関数

Date: 2007/10/04 18:21
Q: はじめまして。F*大学のK*と申します。
なお、大学名、氏名等は公開時には匿名(イニシャル)でお願いします。
n型のSi基板に プラズマCVD法でGeを堆積させて、ゼーベック効果測定をしたら P型層でした。なぜP型層になるのか教えてください。出来れば、バンド図を書いて 説明をお願いします。(canvasでもパワーポイントでも何でもいいので図を書いて下さい) そして、P型の単結晶Geの仕事関数と電子親和力を教えてください。また、n型のSiの 仕事関数と電子親和力を教えてください。
Si/GeのPN接合をしたら、デバイスとして何に応用されますか?
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Date: 2007/10/05 0:52
A: F大学 K君、佐藤勝昭です。
 ご質問は卒業研究の課題ならば、まずは指導教員におたずね下さい。
また、学生実験のレポートのためのご質問ならお答えするわけにいきません。
ヒントを差し上げましょう。
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 半導体の電子親和力と仕事関数について、参考になるサイトをご紹介して おきます。(コロラド大学の講義テキスト)
http://ece.colorado.edu/~bart/book/book/chapter3/ch3_2.htm
添付の表は、上述のサイトに出ている金属と半導体のショットキー接合の 障壁高さφBです。n型の場合、φB=φM-χですから、
nGeについては、Agとの接合から、0.54=4.3-χより電子親和力χが求まります。
一方、pGeについては、φB=Eg/q+χ-φMです。Eg/q=0.66eV、Agとの接合から
 0.5=0.66+χ-4.3からχが求まります。
半導体の仕事関数は、電子親和力にフェルミ準位と伝導帯のエネルギー差を 足したものです。
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Geがp型になる理由はプラズマCVDの過程でアクセプターになる不純物がドープ されたと考えられます。それ以上のことはわかりません。バンド図で説明せよ というのは筋違いの質問です。pn接合が何に役立つかは、半導体の教科書で 勉強してください。
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Date: 2007/10/05 20:24
AA: F大学のKと申します。
分かりました。ありがとうございました。
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1009. 磁石にかかる力

Date: 2007/10/08 13:09
Q: 佐藤勝昭先生

N**大学情報工学科4年のH*と申します.
(HPアップの際は学校名,氏名とも匿名でお願いします.)

佐藤先生のHP拝見させて頂きました.
気になることがあるので質問させてください.

磁場H中に置かれた磁荷q[Wb]に働く力は,F=qHと理解しているのですが,
現実では磁荷というものは存在しないのですよね.

では現実に,ある磁場中に置かれた磁石にどの程度の力が働いているかという 計算はどのようにしたらよろしいんでしょうか?

勉強不足で申し訳ありませんが,ご教授願います.
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Date: 2007/10/08 15:15
A: H君、佐藤勝昭です。
 磁石にはN極とS極があります。これがペアで現れるので、 磁石と外部磁界とのなす角をθとすると、+qの磁極に力qHsinθが、 -qの磁極に力-qHsinθがかかるので、極の間の距離Lとすると T=qLHsinθというモーメントが働きます。
 磁石と磁界が平行でないなら、回転力が働きます。
 磁石の磁化方向とが磁界の方向が平行なら磁界に勾配がない限り磁石に 移動力は働きません。
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Date: 2007/10/08 17:59
Q2: 佐藤勝昭先生.
N大学のHです.
早々のお返事ありがとうございます.
では,磁場中に置くのを磁石ではなく,鉄球のようなものの場合でも 同じように考えればいいのでしょうか?
また,先生にお聞きするのは御門違いかもしれませんが,
先程インターネット上で,「磁力は F=(B2*S)/(2μ) (B:磁束密度,S:面積, μ:透磁率)
で表すことができる」というのを見つけました.
この式の意味がわからなかったので, ご存知でしたら教えて頂けませんか?

お手数かけますが,よろしくお願いします.
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Date: 2007/10/08 23:10
A2: H君、佐藤勝昭です。
 「磁力は F=(B2*S)/(2μ0) (B:磁束密度,S:面積,μ0:真空の透磁率)」 ですが、これは、電磁気学でいうマクスウェルの応力です。
 空間に電磁場の形でエネルギーを蓄えられるならば、空間を伸縮して電磁場を 変化させることはエネルギー量の変化を伴うため力が必要になります。これは、 エネルギーの定義が力の空間積分であることから、エネルギーの空間微分が力に なるものと理解できます。結果として磁界は外部からの変形に拮抗する何らかの 力を持つことになります。このような力は面積あたり力になり、マクスウェルの 応力と呼ばれます。マクスウェルの応力は電磁場を変化させようとしなければ発 生せず、実際に外部に影響を及ぼすものではありませんが、変化に対してはこの ような応力が働くはずです。このように、微小な変位を考えたときに発生するは ずの力を求める方法を仮想仕事の原理と呼びます。電磁場がもつ潜在的な力です。
(この文章は、
成蹊大学の電磁気学の授業ノートの記述 を参考にしました。)
 従って、強い磁力で鉄球を重力に逆らって浮かせるときの力は、この力であると見て良いでしょう
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1010. 間接遷移・直接遷移は何によって決まるのか

Date: 2007/10/10 8:54
Q: 東京農工大学 佐藤勝昭 先生

突然のメールながら失礼します。
北海道大学博士課程3年 K*と申します。
(web公開時は名前のみ匿名でお願いします)

物性Q&Aをいつも拝見させていただいております。
この度はかねてからの疑問がどうにも解けないため、 先生のご助言を頂けないかと思い、メール致しました。
お忙しいところ大変恐縮ですが、どうぞ宜しくお願いします。

質問は、
「間接遷移になるか直接遷移になるか、それは何によって決まるのか」
というものです。

私が勉強してきた一般的な半導体物性の本では、クローニッヒペニーモデルによって エネルギーギャップの出現、E-k分散関係を求める手続きが説明されています。
E-k分散関係を得る基礎的な過程は理解しているつもりですが、 実際の半導体において、伝導帯下端がΓ点にくるかどうか、 そしてこれが何によって決まるのか、ここまで結びつけた理解ができません。

また、これに関して調べていたところ、以下の記述を見つけました。
(Siが間接遷移であることを説明する一文です)
http://mole.te.chiba-u.jp/(研究内容 → 半導体物語)

電気伝導に使うのは、シグマ結合の結合性軌道と反結合性軌道ですから、
価電子帯と伝導帯の形がかなり違います。そのため、光子を直接つくるのは難しいのです。

これについても、次のような疑問を持ちました。
Siはsp3混成軌道を形成し、それぞれの原子の結合は、シグマ結合によるものかと思います。
しかし、GaAsといった直接遷移の半導体も、Si同様にsp3混成軌道を形成し、 原子同士は結局Siと同じような結合をしているのではないかと思います。
これを基に考えると、GaAsも間接遷移になってしまうのでは、と思いました。

以上、質問をまとめますと、伝導帯下端がΓ点に来るかどうかは、 定性的にどのように決定されるのか。ということになります。

2つの質問を含むようになってしまい申し訳ありませんが、 長い間すっきりとした理解が出来ずにいる問題です。
どうか先生のご助言を頂けたらと思います。
宜しくお願いします。
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Date: 2007/10/11 0:47
A: K君、佐藤勝昭です。
 GaPとGaAsは同じ閃亜鉛鉱構造をもつIII-V族半導体です。
GaPはEg=2.261eVの間接遷移型、GaAsはEg=1.424eVの直接遷移型です。
両者をx:1-xの割合で混ぜ合わせた固溶体GaAs1-xPxのEgは添付図(b) のように組成によって変化します。x<0.45では直接遷移型、x>0.45 では間接遷移型の半導体になります。
(図は、佐藤勝昭編著:応用物性(オーム社)第3章よりコピー)
 図(a)を見ればわかるように、Γ谷とX谷の相対的な位置関係で、 直接→間接の変化があるのです。どちらが低くなるかは、単純には 説明できません。バンド計算をして初めてわかるものです。
 AsとPのイオン半径の違いや電子親和力の違いなどが原因と考えら れますがいろいろの原因が重なっているため特定できないと思います。
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Date: 2007/10/11 8:37
AA: 東京農工大学
佐藤勝昭 先生

おはようございます。
先日Q&Aに質問をさせて頂いた北海道大学のKです。
佐藤先生、早急な回答ありがとうございます。

添付図を使った非常に分かりやすい回答を有難うございます。
GaAsではΓ谷が最下部ですが、リン組成を高くするに従い、X谷が最下点になることが見て取れます。
この連続的変化からも予想されるように、やはり単純な説明という訳にはいかないんですね。
何らかの定性的な理解を得たいと、ここに固執しすぎました。

この度は大変お忙しいところ回答を頂き、有難うございました。
今後も物性Q&Aを拝見させていただき、勉強していきたいと思います。
有難うございました。
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1011. クロムモリブデン合金鋼SCM440の焼き戻し性能曲線

Date: 2007/10/10 19:40
Q: 佐藤 勝昭 様

初めまして。
私、N**社で開発業務に携わっておりますS***と申します。
佐藤先生のHPを拝見し、不躾ながら質問させて頂きたく、メール致します。

下名、業務におきまして、ある部品を応用設計しようと思い、弊社にある過去図面を閲覧しておりますと、 SCM440を高い硬さで使用している部品があり、このSCM440は実用的にどこまで硬く出来るのか?と ふと疑問が起きました。

ここで質問の本題ですが、SCM440の低温テンパまで網羅した焼き戻し性能曲線をお持ちではないでしょうか?

とはいえ、下名の検討条件はHRc 50(MAX)であり、ピーク域では、と思っております。
材料選定に何らかの事情が作用したものと推測しております。

ご多忙のところ、誠に恐れ入りますが、ご教授頂けますと幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
※web上、掲載時には匿名にして頂けますようお願い致します。
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Date: 2007/10/10 23:54
A: S様、佐藤勝昭です。 申し訳ありません。何度か書いておりますように私は金属工学の専門家ではあり ません。従って、焼き戻し性能曲線も有しておりません。
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Date: 2007/10/11 8:01 AA: 佐藤 勝昭 様

Sです。回答有難うございました。
私の確認不足でご迷惑をお掛けしました。
今後のご活躍をお祈りいたします。
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Date: 2007/10/11 11:06
A2: S様、佐藤勝昭です。
 お役に立てず申し訳ありません。
あれから、金属データブックを調べたのですが、クロモリ鋼SCM440はブリネル硬度で285-341となっております。
ロックウェル硬度HRBに換算すると、105.5-109となります。
 焼き戻し性能曲線については、現在、独立行政法人物質材料機構に問い合わせ中です。
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Date: 2007/10/11 11:27
AA2: 佐藤 勝昭 様
お世話になります、Sです。

下名の不躾な質問にてご迷惑をお掛けしましたのに、 とても、ご丁寧な回答を頂きまして、誠に御礼申し上げます。
こうして、先生にお手数をお掛け頂いたことは、HPで先生がお書きになっているように、 まずは自分自身で調べなければならないことですから、今回の件、大変恥ずかしく申し訳なく思っております。

重ねてになりますが、回答を頂きまして誠に有難うございました。
先生のご活躍をお祈りいたします。
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Date: 2007/10/12 20:58
A3: S様、佐藤勝昭です。
 物質材料機構のT*様から返事が来ました。以下に転送します。
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>>>> Date: 2007年10月12日 14:36:41:JST
>>>> 手元にある資料のみでお答えします。
>>>>
>>>> SCM440の最高硬さは焼入れままの硬さです。
>>>> つまりHv=600, Rc=55程度ということになります。
>>>> 焼き戻し温度の上昇にともなって、炭化物の析出が起こる200C
>>>> あたりから、硬さはほぼ単調に低下します。
>>>> 添付は私どもで測定したHvと焼き戻し温度の関係です。
>>>> 鉄鋼便覧や特殊鋼便覧にはより詳細な結果が示されているはずです。
>>>>
>>>> 実用的にどこまで硬く出来るのか?というご質問ですが、これは実用
>>>> の用途によって異なります。
>>>> 例えば部品の衝撃靭性が問題になる場合は、400Cを超えた焼き
>>>> 戻しが必要です。
>>>> これは400C以下では衝撃靭性(シャルピー吸収エネルギー)が
>>>> 10J程度と極めて低いためです。
>>>> 衝撃吸収エネルギーはもちろん不純物量(たとえばP)の影響を受
>>>> けますが、0.02-0.03%では10J程度のはずです。脆いで
>>>> す。これも便覧をご覧になれば詳しい図面があるはずです。
>>>>
>>>> この場合、焼き戻し温度400C(シャルピー吸収エネルギー>10J)
>>>> を条件とすると、許容限界硬さはHv=500でRc=50程度になるかと思い
>>>> ます。
>>>>
>>>> 以上 >>>>
>>>> 追伸:
>>>> どこからの問い合わせかわかりませんが、便覧を見れば得られる情報です。
>>>> また特殊鋼を扱う会社(日立金属や大同特殊鋼)は、顧客のために、
>>>> このような情報を整備しています。
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Date: 2007/10/15 11:23
A4: S様、佐藤勝昭です。
 物質材料機構(NIMS)より添付の
SCM440の焼き戻しに関するパワーポイントファ イルが送られてきましたので添付します。
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Date: 2007/10/16 8:21
AA2: 佐藤 勝昭 様
 この度は誠にお世話になります、Sです。
昨日メールを頂きましたのに、返信が遅れまして大変申し訳ありませんでした。
また、物質材料機構様への問い合わせ、並びに回答についてご教示頂き、大変感謝しております。
 物質材料機構様もお書きですが、今回の件は下名が便覧を調査し確認すれば容易く得られるとのことですので、佐藤先生を始め、皆々様にご迷惑をお掛けしたことを猛省し、これからの自身業務に携わっていきたいと考えております。
 本当に有難うございました。先生のご活躍をお祈りいたします。
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1012. ギブスの相律

Date: 2007/10/11 11:35
Q: gibbsの相律式で、df=h+2-pの2が、金属の場合df=h+1-pとなる理由を教えてください。
名城大学 西脇一彦
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Date: 2007/10/11 11:58
A: 西脇君、佐藤勝昭です。
ギブスの相律は、一般にどんな物質にも当てはまる式なので、金属でもdf=h+2-p が成立すると思うのですが・・。
 私は、金属の場合に1になるという説があることを知りません。
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Date: 2007/10/11 12:01
AA: 返信ありがとうございました。
いま実験でレポートを書くために調べていました。
またほかにもわからないことがあったら質問します。
ありがとうございました。
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Date: 2007/10/12 0:40
A2: 西脇君、佐藤勝昭です。
 物性なんでもQ&Aは実験や講義の課題に関する質問には、 原則としてお答えしないことになっています。今後、指導教員に 聞いてください。
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1013. コイルを近づけたときの磁性粒子に働く力

Date: 2007/10/21 7:08
Q: 佐藤勝昭先生。
はじめまして。O大学工学部応用理工学科4年 M**と申します。
(申し訳ありませんが、HPアップ時は学校名、氏名とも匿名でお願いします。)
先生のHPを拝見し、お聞きしたいことがありメールさせてもらいました。

質問内容は、
磁性粒子 (直径d[μm]、磁化M[Wb/m2]) に、鉄心 (透磁率μ、直径D[mm]) に巻数n[回/m]で導線を巻いたコイル (電流I[A]、長さl[mm]) をz[mm]まで近づけたときに、磁性粒子にどの程度の力が働くかというのを知りたいのですが、計算での求め方がわかりません。

実は、自分が研究していることで磁性粒子を利用しようと思ったのですが、この磁性粒子に働く力がわからないために、先に進みません。
私の指導教官に聞いてみたのですが、恥ずかしながら何度訪ねても忙しいの一点張りで答えてもらえませんでした。
本を調べても、似たような問題が見つからず、頭を悩ませています。

他大学の者の質問で恐縮ですが、ご助言お願いできませんでしょうか?
長文申し訳ありません。
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Date: 2007/10/21 11:53
A: M君、佐藤勝昭です。
 M君は電磁気学を受講されたでしょうか?
お尋ねの件は電磁気学での基本的な事柄です。
(質問では、単位を[μm]や[mm]で書いておられますが、ここでは全部[m]を単位とします。)
なんでもQ&A「1009. 磁石にかかる力」に書きましたように、
 磁気モーメントと磁界が平行でないなら、回転力が働きます。
 磁気モーメントと磁界の方向が平行なら磁界に勾配がない限り磁石に移動力は働きません。
それでは、磁界に勾配があればどのような力が働くでしょうか?
磁界H中に置かれた磁気モーメントMは,U=-M・Hのポテンシャルエネルギーを 持っています。
磁気モーメントmに作用する並進力は,次式で与えられます。
 F=∇U=-∇(m・H )=-(m・∇) H (1)
従って,均一でない磁界中に置かれた磁気モーメントは力を受けます。
ここに∇は(∂/∂x,∂/∂y,∂/∂z)というベクトルで表される微分演算子です。
磁気モーメントが磁界と平行の時、軸方向をzとすると
 F=-m∂H(z)∂z           (2)
となります。
磁化がM[Wb/m2]で直径d[m]の球状粒子の磁気モーメントはm=M・V=(4πM/3)(d/2) ^3[Wbm]ですから、式(2)は
 F=-(4πM/3)(d/2)3∂H(z)∂z    (3)
となります。

一方、透磁率μの鉄心に巻いたコイルからの磁界を計算するには
 半径aの1周のコイルの円電流Iが流れているとき、コイルの中心から中心軸に 沿ってzの位置に作る磁界H(z)は
 H(z)=Ia2/{2(a2+z2)3/2}    (4)
で与えられます。ここにa=D/2です。
 巻き数がmあたりn回のコイルの長さがl[m]ですから全巻き数はnlです。
正しくは各周のコイル位置について積分をしなければならないのですが、 測定位置z[m]がa=D/2[m]に比べて十分長いとしますと近似的に
 H(z)=Inla2/{2(a2+z22)3/2}=InlD2/{8((D/2)2+z2)3/2} (5)
と書けます。従って、中心軸方向の磁界の勾配は
 ∂H(z)/∂z=-3(InlD2/8)z{z2+(D/2)2}-5/2   (6)
で与えられます。
力F(z)は従って、式(3)を用いて
 F(z)=4πM(d/2)3(InlD2/8)z{z2+(D/2)2}-5/2  (7)
となるはずです。
(はじめに書きましたように長さの単位はmであることに注意してください。)
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Date: 2007/10/22 18:05
Q2: 佐藤先生。
O大学のMです。
つまらない質問に回答していただき、真にありがとうございます。
そして、お手数おかけして申し訳ありませんでした。

もうひとつお聞きしたいのですが、

先程の力の式に透磁率μが入ってきませんでしたが、
計算上ではコイルに鉄心を挿入しようがしまいが、力の値には関係ないということなのですか?

経験上、やはり鉄心を入れたほうが、力も大きくなるのではと思いましてお聞きしました。

よろしくお願いします。
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Date: 2007/10/22 19:12
A2: M君、佐藤勝昭です。
 ごめんなさい。確かにコイルのみを考え鉄心のμのことを忘れていました。
鉄心を考えると磁性体内部の磁束密度はB=μHの磁束密度になります。磁性体の外 部では磁界はHex=B/μ0となります。従って、先日お答えした力の式の磁界の値を μ/μ0r(比透磁率)倍した値になります。
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1014. ガラスエポキシの硬化則

Date: 2007/10/25 10:30
Q: 佐藤先生
O*大学大学院工学研究科博士前期過程N*と申します。

いつもこちらのHPを参考にさせていただいております。

現在僕は研究でFEM解析を行っているのですが、ガラスエポキシ樹脂の物性値がなく て困っております。
温度依存性を考慮した硬化則を教えていただければと思っております。また、クリー プにおける温度依存性を考慮したノートン則も教えていただきたいです。

お忙しいところ申し訳ございませんがよろしくお願いいたします。

最後に名前は匿名でお願いします。
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Date: 2007/10/25 14:56
A: N君、佐藤勝昭です。
 私は、プラスチックの機械的特性の専門家ではありません。
 硬化則(hardening rule)というのは、応力ひずみ曲線をσ=Fεnという べき関数で表したときの指数nのことですね。
金属の場合は、軟鋼で0.20-0.28, ステンレスで0.45-0.6, Cuが0.35-0.45, Alで0.25-0.35となっています。
 ガラスエポキシというのはガラス繊維製の布(クロス)を重ねたものに、 エポキシ樹脂を含浸させた複合材料で、製造方法により物性値の変動が大きく、 金属のようにどの金属の加工硬化則の指数nはいくらといえないものです。
従って、具体的な製品についてのデータを製造会社に問い合わせるほかは ないでしょう。
 ハイブリッド材料の非弾性的挙動の解析については、手がかりとして下記の 論文をお読みになってはいかがでしょうか?
河井 昌道 八戸 敦司 高倉寛: ハイブリッド複合材料GLARE-3の室温と高温に おける非主軸非弾性挙動と積層理論による解析; 日本機械学會論文集. A編 vol.69, No.680 (2003) pp. 711-718
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1015. 金属と半導体の電気伝導の温度変化の主要因

Date: 2007/10/24 23:29
Q:武蔵工業大学の植村惇史といいます。今、電子通信の実験をしているのですが今回の 実験の予習事項で、金属と半導体の電気伝導における温度依存性の主要因を調べると いうのがあるのですがどうしてもわかりません。どうか教えてください! ------------------------------------------------------------------------------------
Date: 2007/10/24 22:51
A: 植村惇史君、佐藤勝昭です。
 物性なんでもQ&Aは学生実験の課題に直接お答えすることは出来ません。
固体物理学・半導体工学などの教科書、あるいは、講義ノートを読んで下さい。

ヒントを上げましょう。
導電率σはキャリア密度nとキャリアの移動度μと電子の電荷eを使って
  σ=neμ
で表されます。金属と半導体ではキャリア密度nの温度依存性がどうちがうのか は、半導体工学の授業で学んだ筈です。一方、金属でも半導体でもμの変化は同 じです。μは温度が上がると、格子振動のことを考えるとどうなるか考えてくだ さい。
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1016. 鉄のバルクと薄膜の磁化の差異について

Date: 2007/10/25 18:25
Q: 佐藤 勝昭様

はじめまして。
突然のメールながら失礼します。
京都大学大学院修士課程2年 倉本と申します。

物性Q&Aをいつも拝見させていただいております。
このたびは、不躾ながら質問させて頂きたく、メール致しました。

私は、研究で、直径75mmのSi基板に、真空蒸着装置によって、鉄を5nm、パラジウムを2~3nm を対層として、数十層の多層膜を作成し、鉄の磁化の増減を振動磁束計で調べるという研究を行っています。

そこで、つい先日、鉄60nm単層をSi基板に蒸着し、-250Oe~250Oeの範囲で ヒステリシスループを描いたところ、1.3T弱というバルクの鉄の飽和磁化2.15Tに比べて低い値となってしまいました。
これは、なぜなのでしょうか?鉄の酸化膜ができ、消磁効果をもたらしているのでしょうか?

この試料を中性子線を使って磁化を測定しましたところ、1.5T程度ですが、1.2Tに比べて少々増加しました。 このときの試料にかける外磁場は750Oeと先に比べて3倍程度だったのですが、それでもまだバルクの 鉄の飽和磁化には届きません。
磁壁の大きさが関係していたりするのでしょうか?

ご多忙のところ、まことに恐れ入りますが、ご教授いただけますと幸いです。
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Date: 2007/10/25 19:36
A: 倉本君、佐藤勝昭です。
 修士論文の研究でしょうか?修論の研究過程で出てきた問題点は、本来、指導教員と相談されるべきです。 私が、君の指導教員だったとしたら、学生が自分をさておいて他大学の教員に教わりに行ったとしたら、私は よい気持ちがしません。しかし、京大工学部ともなると指導教員と接する機会も少なそうなので、京大の古き 先輩として特別にヒントを差し上げましょう。
 薄膜の磁化がバルク値より低いことはよくあります。
いくつかの原因がありますので、1つずつつぶしていってください。
(1)結晶化に必要な温度に達していなかったため、膜の一部のみ結晶化し、残りは非晶質であった。
  X線回折(XRD)を測定すると、ブロードな回折線しかみられない場合、この可能性があります。
(2)逆に基板温度が高くて、Feの一部がSiと反応してFeSi2ができてしまった。
  遷移金属のシリサイドは比較的低温でできやすいです。できていないかXRDでチェックしましょう。
  βFeSi2は非磁性(正しくは常磁性)の半導体です。
(3)膜の密度が低く、表面積と膜厚から求めた体積から期待されるバルクの質量に達していなかった。
  走査型電子顕微鏡(SEM)などで表面をよく観察してみてください。がさがさのモルホロジーだと
  この可能性があります。
(4)蒸着機の真空度はいくらですか。かなりの高真空でないと、Fe表面は成膜中に酸化されます。
  酸化膜ができているかどうかは、Auger分析やXPSなどで確認できます。酸化膜は反強磁性なので
  磁化は小さくなるはずです。
(5)なんらかの理由で保磁力Hcが750[Oe]より大きくなって飽和しない。
  欠陥が多く磁壁のピン留めが起きて、Hcが高くなってしまった。この場合は、局所的なモーメント
  は小さくないはずです。磁区が原因なら磁区の様子をカー効果顕微鏡で観察してみてはいかがでしょう。
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Date: 2007/10/26 16:44
AA: 佐藤様

早々の返信まことにうれしく、ありがとうございました。
先生の叱咤の通り、私の担当教官に何度か尋ねましたが、磁性の専門の教官でいらっしゃらないため
なかなかこのあたりのことは難しいといっておりました。
このたびからは、心を改めまして研究に取り組みたい所存でございます。
さて、5nmの鉄で磁化を測定しましたところ、確かに、0.82Tと60nmの磁化1.2Tに比べて さらに低くなりました。その原因として、やはり、おっしゃっていただいたとおり、 (4)の表面の酸化膜の影響が大きいのだろうと考えられます。

真空度は、1.0×10-5Torrくらいで蒸着を行っておりますので、イオンスパッタリングや エピタキシャル蒸着に比べ低いのは確かにあると思われました。

(3)でおっしゃっていただいたバルクの質量に達していないのは確認しました。
といいますのも、振動型磁束計で測定する際に面積は、ノギスで測定し、 Fe膜厚はX線反射率計でθー2θスキャンして測定した結果をフィッティングさせたもの を用いています。
そこで、密度×体積をしたところバルクの質量には追いついていませんでした。ご指摘のとおりです。
(1)~(5)の理由を参考にさせていただき、今後の研究の糧とさせていただきたく思います。
お忙しい中、稚拙な質問にも寛容にお答えいただき、本当にありがとうございました。
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Date: 2007/10/26 19:32
A2: 倉本君、佐藤勝昭です。
 返信ありがとう。
1.0×10-5Torrの真空度では、 「鉄を5nm、パラジウムを2~3nmを対層として、数十層の多層膜を作成し、鉄の 磁化の増減を測定する」実験に使えるような膜は出来ません。
やろうしておられるような実験は、ずっと以前(1980年代)に産総研(当 時)の片山利一先生によって行われており、その当時はスパッタ法で行われてお りましたが、スパッタ装置の到達真空度は10^-8Torrよりも高真空でしたよ。
(例えば、藤森他編:金属人工格子;アグネ技術センター1995、p.68参照)
研究を始める前に十分な調査をされるようお奨めします。
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1017. リンゴの色、金属の色

Date: 2007/10/26 9:17
Q: はじめまして、静岡県で物理学の勉強をしている岡部佑機です。
疑問に思うことがありましてインターネットを検索していたところ先生のホームページにあたりました。
そこで、光の反射・吸収・透過のことについて、いくつか質問させていただきたいのですがよろしいでしょうか。
御多忙中とは存じますがよろしくお願いします。以下に質問を書かせていただきます。

①白色光がリンゴにあたる。リンゴは赤くみえる。これは、リンゴが赤色以外の光を吸収し、赤色の光を反射するからだと思います。
ここで、選択反射は何に依存するのか。
また、何が光を吸収するのですか。(電子が吸収し励起されて熱エネルギーになるのですか。)
何が光を反射するのですか。(電子が吸収し、再放出するのですか。)
反射・吸収のメカニズムを教えてください。

②金属が金属光沢を生じる理由は何ですか。(リンゴは光沢がありません。自由電子が光を反射しているのか。)

③可視光線・電波は、ガラスに対する透過率が大きく、金属に対する透過率は小さいですが、これは、結合の違いによる原子密度が原因なのでしょうか。
透過とはどのようなメカニズムで起きている現象なのでしょうか。

よろしくお願いいたします。
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Date: 2007/10/26
A: 岡部佑機様、佐藤勝昭です。
 岡部様のご年齢、学業経歴、職業キャリア等がわかりませんので、一通り物理 学を学んだことのある年配の方という想定でお答えします。理解するには、多 少、固体物理学の知識が必要です。

(1)リンゴの赤色は、選択反射によるものではありません。物性なんでもQ&A 質問No.85にありますように、「リンゴの皮には、アントシアン系の色素が含ま れています。これは、美しい花の花びらや紅葉する葉に含まれている色素です。 酸と結合すると赤く発色します。この色素を透過し、散乱されて出てきた光は、 波長600nm-700nmの波長の光が多く含まれています。」
 アントシアニンの光吸収スペクトル(永田雅輝他:植物環境工学 18 [1] 42-49 (2006))によれば、吸収帯が450-580nmにあって、橙、緑、青、紫を吸収 するため、その補色である赤が透過するのです。
坂田 健他:アントシアニジンの構造と電子状態に関する量子化学的研究:分子 科学会、分子構造総合討論会2005、講演番号1P079
によりますと、アントシアニン色素は3つの6員環をもち、理論計算の結果、 HOMO(highest occupied molecular orbital:半導体の価電子帯に相当) から LUMO(lowest unoccupied molecular orbital:半導体の伝導帯に相当)への1電 子励起が主成分であるとしています。いわば、バンド間遷移なのですね。

(2)金属の金属光沢の原因は、自由電子の集団運動(プラズマ振動)によって 入射した光の電界が遮蔽され、中に入れないことによります。詳細は、 金属の色の物理的起源 をお読み下さい。

(3)金属においては、自由電子のプラズマ振動によるほか、フェルミ面の下の 満ちた電子状態からフェルミ面の上の空いた電子状態への遷移による吸収が可視 域に連続的に分布しているために、光が透過しないのです。一方、ガラスをはじ めとする誘電体では、価電子帯と伝導帯の間に明確なバンドギャップが開いてい るため、バンドギャップ以下の光子エネルギーをもった電磁波ではバンド間遷移 が起きないので吸収がないのです。
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Date: 2007/10/27 10:20
Q2: 私の年齢は24歳です。今年高等学校の教員になったものです。
物理学に関してそれほど詳しいわけではありません。
御回答ありがとうございます。
(1)リンゴの赤は、白色光の反射ではなく、リンゴそのものが発しているのですか?
以下に自分なりの解釈を書いてみました。正しいでしょうか。
リンゴが赤いのは、色素が酸と結合したときに放出されたエネルギー(電磁波)のうち、 波長450-580nmの橙、緑、青、紫がアントシアニンに吸収され、波長600nm-700nmの赤が透過されるためである。
]ただ、暗いところ(白色光なし)では赤く見えないような気がするのですが。発色しているならみえるはずでは?

(2)金属中に電磁波による電場が進入すると自由電子が力を受け、電気分極がおき、逆向きの電場を生じ金属内部の電場は0となり(振動数が小さい電磁波の場合)電磁波が金属内部に進入しないのと同じことになる。ここまではわかったつもりです。
しかし、金属内部に進入しないこと=反射することであることが納得に苦しみます。電磁波は進入しているけれども実際は進入していないのと同じであるだけで、それが反射につながるのはどうしてでしょうか?無知で申し訳ありません。

(3)「金属においては、フェルミ面の下の満ちた電子状態からフェルミ面の上の空いた電子状態間のエネルギー差が可視光線領域に連続的に分布しているため、光の吸収が起こり、透過しない。このほかに、プラズマ振動による反射の影響もあるが。しかし、ガラスなどの誘電体は、価電子帯と伝導帯の間に明確なバンドギャップが存在するため可視光領域程度のエネルギーではバンド間遷移がおきないため吸収されず透過する。」ということでよろしいでしょうか?
そうすると、紫外線やX線などの高いエネルギーを持った電磁波は、ガラスなどの誘電体に吸収されるのでしょうか?また、金属に対してどのように作用するのでしょうか?

お忙しいところ誠に申し訳ありません。
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Date: 2007/10/27 12:24
A2: 岡部様、佐藤勝昭です。
 メールありがとう。高校の先生なのですね。前回の回答は説明不足だったよう なので補足します。
(1)リンゴが赤色発光していることは全くありません。
 物体を白色光で照らしたとき、光が物体から帰ってくるのは、反射とは限りま せん。むしろ散乱のほうが一般的です。白い紙は実は無色透明な材料から出来て いて、その材料自身の鏡面反射率は4%そこそこです。紙が白いのは、微細な材 料の粒に光が入って裏面で全反射してきたり、粒を透過したのち、他の粒の界面 で散乱されたりして、様々な方位に向けて光が散乱されるためです。
 赤い絵の具でも、同じことです。一例として、バーミリオン(朱赤)という絵 の具を取り上げますと、しんしゃ(硫化水銀HgS)が色素として使われていま す。この物質は半導体で、バンドギャップは2eVで、これ以下の光子エネルギー の光を透過するので透過光は赤です。HgSの反射率は赤だけが特に高いわけでは 決して高くありません。バーミリオンでは、HgSの微粒子が有機物で練り合わさ れていて、有機物の中に微粒子が多数浮かんでいる構造です。入射した白色光は HgS粒子を透過し赤以外の波長の光が透過します。裏面に達したとき、もし裏面 に対する入射角が臨界角を超えていると全反射しますし、そうでなければ裏面か ら抜け出します。そして、別のHgS粒子の表面で反射され、更に反射されたり、 透過したりして、外に出てきます。このとき、光の方向はランダムになってしま います。リンゴの皮の赤も同じです。入射した白色光の内、赤い色のみが散乱し てくるのです。

(2)「金属内部に進入しないこと=反射することであることが納得に苦しみま す。電磁波は進入しているけれども実際は進入していないのと同じであるだけ で、それが反射につながるのはどうしてでしょうか?」というご質問ですが、こ れは電波工学におけるインピーダンス整合の考えと同じです。あなたが、内部イ ンピーダンス50Ωのアンテナに、回路インピーダンス50Ωの同軸ケーブルを接続す ればアンテナで受けた電磁波はそのままテレビ受像器に導かれますが、もし300Ω のフィーダー線をつなげば、インピーダンス不整合のため反射がおきゴースト像 になるでしょう。電磁波が送られてきて、表面で侵入が出来なければ、表面で吸 収されない限り、反射するしかないではないですか。
 理論的には、前回紹介した「金属の色の物理的起源」に書いてあるとおり、金 属内部に電磁波が侵入できない状態は、負の誘電率で説明されます。電磁気学に よれば、誘電率εの物質に空気中から光が垂直入射したときの光強度の反射率R は、R=|(ε^1/2-1)/(ε^1/2+1)|^2で表されますが、εが負の実数とするとR=1と なります。すなわち100%反射するのです。

(3)あなたの解釈はその通りです。通常のガラスは紫外線を吸収します。石英 ガラスはバンドギャップが大きいのでかなり短い波長の紫外線でも透過します。 X線領域になると、光の領域とは別の考えが必要です。X線領域になると、閉殻の 電子状態からの遷移が関与します。この遷移が始まるエネルギーをX線吸収端と 言います。鉛ガラスを用いると通常のX線は吸収されますが、普通のアルカリガ ラスはX線を透過します。
金属は紫外線を吸収しますが、X線についてはX線吸収端以下のエネルギーのもの については透過します。
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Date: 2007/11/01 14:32
Q3: 返事が遅くなってしまい申し訳ありません。ありがとうございました。
ガラスを熱すると色づいて見えるのは、熱することによって伝導帯への遷移が可視光領域のエネルギーでも可能になるからということですね。
また、質問させていただくことがあると思うのですがよろしいでしょうか。
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Date: 2007/11/01 15:22
A3: 岡部様、佐藤勝昭です。
 ガラスを熱すると色づくのは、黒体輻射によるものです。星の色が高温ほど青 いというのと同じです。バンド間遷移は関係していません。
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Date: 2007/11/07 10:50
AA: そうでした。ありがとうございます。またお邪魔させていただくことがあるかと思いますが、どうぞよろしくお願いいたします。
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1018. パワーMOSのGate容量の温度特性について

Date: Fri, 26 Oct 2007 21:07:30 +0900
Q: いつも物性Q&AのHP興味深く拝読しています。
小職、インバーター発電機の開発をしております、H**社S**(匿名希望)と申します。
インバーターのスイッチング時の損失を減らす上では、電流×電圧のどちらかがゼロでない時間をできるだけ短くしたいのですが、時間を短くしすぎるとサージが大きくなってしまいます。(Offの時は電流がゼロ、Onの時は電圧がゼロ)
パワーMOS(Nチャンネル)のGateへ与える信号を適切な時定数を持つようにする為に、容量成分と抵抗成分を用いていますが、外付けのコンデンサーと抵抗の他に、MOS自体の持つGate容量も考慮する必要が出てきます。各社の製品シートをみるとかなりバラツキがありまして、更にバラツキの他に温度特性も考慮する必要があります。しかしながら各社のデーターシートを見ると温度特性に関してはあまり記載がありません。増減の程度、メカニズム等参考になる文献などありましたら、ご紹介いただきたく、宜しくお願いします。
追記
IGBTになるとどの様に変化の傾向が変わるのか、についても、ご存知でしたら宜しくお願いいたします。
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Date: Mon, 29 Oct 2007 14:11:28 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 大変高度なご質問で、私の知識ではお答えできないので、パワーエレクトロニクスの専門家である農工大の赤津助教に伺いましたところ、下記の回答を得ましたので転送します。
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佐藤先生
このたびはお問い合わせありがとうございます。
かなり高度なご質問なので、簡単にしかお答できませんが、知っている限りでご回答 させていただきます。

以下回答です
===================================================================
Mos-FETのゲート容量(酸化膜)の温度依存性は聞いたことがありません。
というのは、仮に容量単体の温度依存性があったとしても、 測定することが非常に難しく、また、 むしろゲート寄生抵抗の温度依存性の方が問題になると思います。
(ゲート寄生抵抗の温度依存性の方が十分に大きい)
さらにはご存じかと思いますが、これら容量はVdsによってダイナミックに変化しま す。
したがって実際にドライブ回路をご設計なさる場合には、 Vgs=0時の等価容量ではなく、ダイナミック特性であるVds-Qg特性を使用して、 各動作モード(オン、導通、オフ)にて容量を算出しゲート抵抗値を決めるのがよい かと存じます。
(IGBTに関しましてもゲート構造は共通のため、これら容量の変化は同一かと思いま す)
参考文献として、下記挙げさせていただきます。

電力制御回路設計ノウハウ 
在田、森、由宇
CQ出版社

トランジスタ技術 1999年3月号
パワーMOSFET実践活用法
CQ出版社
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Date: Date: Mon, 29 Oct 2007 16:12:58 +0900
AA: 佐藤様
ご連絡ありがとうございました。
ご指摘の通り、Vds-Qg特性を実測し、設計に反映したいと思います。

ご紹介いただいた文献は、さっそく探してみたいと思います。
赤津先生にもよろしくお伝えいただければありがたく、お願い申し上げます。
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1019. 磁気光学の測定系

Date: 2007/10/31 14:43
Q: 佐藤勝昭先生
東京大学大学院工学系研究科物理工学専攻D3の嶋田と申します。
物性なんでもQ&AのWebサイトは事あるごとに大変参考に させていただいております。

さて、透過配置での磁気光学の測定系を新たに組み立てることになり、 ミラーで組むのとレンズで組むのとで、どのような違いがあるのか お伺いしたくメールにて質問させていただきました。

測定したい波長領域は250~850nmで光源ランプを分光器で分光した 後、透過配置の光学系を経て光電子増倍管で検出します。
磁場は出力磁場方向に穴(直径5mm)が開いた電磁石で印加します。
(想定している光学系の
模式図を添付させていただきました。)

凹面ミラーで組んだ場合と、凸レンズで組んだ場合とでは下記の 有利不利のトレードオフになっているものと考えられます。

ミラーの場合
【利点】
色収差がない
【欠点】
偏光子、PEMに斜入射
スポットサイズ大きい(磁石の穴を通れない)

レンズの場合
【利点】
偏光子、PEMに垂直入射
スポットサイズ小さい(磁石の穴を通れる)
【欠点】
色収差がある

広い波長領域で色収差を消すにはミラーで光学系を組めばよいと 思われますが、この場合偏光子やPEMには斜入射となってしまいます。
また、偏光が乱れるため、PEMの後にミラーを入れられないので 結局、焦点距離の長いミラーでサンプルに光を絞ることになり、 サンプル上でのスポットサイズが大きくなってしまいます。

一方、レンズで組む場合には色収差は出るものの、PEMや 偏光子にはほぼ垂直入射となります(波長によっては垂直から外れる)。
また、スポットサイズの点でも有利となります。

以上の点を踏まえ、レンズで組もうと考えていますが、色収差があることが 磁気光学効果にとって影響があると考えられますでしょうか?
(少なくとも、透過スペクトルを測定するのには問題ないはずです。)

また、逆に、ミラーの場合で、PEMや偏光子への斜入射は、どの程度の角度 までなら許容となるのでしょうか?

お忙しい所大変恐縮ですが よろしくご指導お願いいたします。
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Date: 2007/11/01 11:19
A: 嶋田君、佐藤勝昭です。  メール、添付図拝見しました。波長範囲が紫外寄りなのですね。 ご質問の、
「色収差があることが磁気光学効果にとって影響があると考えられますでしょうか?」
ですが、色収差が問題になるのは小さなサンプルの場合です。石英レンズの250-850nm による焦点の位置ずれはδf/f=-δn/(n-1)で表されます。この波長範囲のδnは、 Palik: Handbook of Optical Constants of Solids p759-760によれば、 n(250nm)=1.5084, n(850nm)=1.4525なので、δn=0.0559, nの平均値は1.4805 ですからδf/f=-0.0559/1.4805=-0.037です。従って、仮にf=20cmであれば、 6.4mmもずれます。この値が問題になるかどうかは試料の大きさ、一様性など が関係するので何ともいえません。しかしほぼ無視できるでしょう。
問題は、むしろ、偏光光学系に2つのレンズがはいることです。ミラーを使った場合は、 ミラーに偏光特性があったとしても、偏光子・PEM・検光子の外にあるので、全く問題が ないのですが、PEMのあとにレンズが2つも入っているので、よほど均一で複屈折のない レンズを使わないと、ベースラインがうねる場合があることです。これは、お使いになる レンズで実際に調べてごらんになればよいと思います。問題がなければ、お使いになって よいと思います。

次に「斜め入射の問題」ですが、これは使う偏光子のview angle(視野角)によって違います。
ローションプリズムは60度もありますが、グランテーラーは8度程度しかありません。 PEMにおいては入射角が0でない光は光路長が長いため、リターデーションが大きくなり ます。精密測定なら問題がありますが、通常の使い方では変調をかけるだけなので、 10度くらいなら全く問題ないと存じます。
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Date: 2007/11/01 18:02
Q2: 佐藤先生

東京大学の嶋田です。
早速の回答ありがとうございます。

実際に使用しているf=200mmの石英レンズのデータシートでは焦点距離が 181mm(250nm)~204mm(850nm)と20mm以上変化するようです。
試料は径1mmほどのピンホールに貼り付けてあり、その径内では均一だと 考えられるので、問題にならないと理解しました。

偏光子の詳細を書くのを忘れていましたが、グランテーラーを使用して います。角度で8度ですと、Fナンバーでは3.6程度なので、今の (PEMを入れたりするスペースの都合上)長い焦点距離のミラーで試料に 光を絞る場合には偏光子がパスを切ってしまうなどの問題はほとんどない と思います。

心配だったのはむしろPEMへの入射角度が平行からずれることでしたが、 これも10度程度までなら問題ないとのことですので、グランテーラーを通った 光はこの範囲にあるので大丈夫ということですね。

加えての質問で申し訳ありませんが、PEMと検光子の間にミラーを入れると 場合にも、レンズを入れた場合と同様にベースラインがうねるという 理解でよいでしょうか?
(佐藤先生の教科書では偏光が乱れるので入れるべからず、となっていましたが。)

これまでカー効果の測定をする際には、正負の磁場でそれぞれ変調シグナル を測って引き算するという方法でベースラインのゆれを消してきました。

よろしくご教授下さい。
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Date: 2007/11/01 23:25
A2: 嶋田君、佐藤勝昭です。  偏光子と偏光子の間にミラーを入れますと、大変偏光が乱れます。 私自身、スペースの関係からやりましたが、偏光性を打ち消すために ミラーを組み合わせるなどの努力をしましたが、完全には打ち消すことが 出来なかったです。  おっしゃるように、結局はブランクの測定しておいてさっ引くとか、 正負磁界で測定して差を取るとしかないようですね。
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Date: 2007/11/02 0:02
A2': 嶋田君、佐藤勝昭です。
 NHK基礎研勤務時代の1976年4月~6月期の四半期報告の抜粋をお送りします。
このなかに、ミラーを組み合わせて、ベースラインのうねりを取るための試みが 紹介されています。このほか、当時、InSb赤外検出器の窓材で苦労したことなど があって、あのころの苦労を思い出しています。
 何かの参考になれば幸いです。
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Date: 2007/11/02 15:41
AA: 佐藤先生

東京大学の嶋田です。
資料大変興味深く読ませていただきました。

やはり、レンズに比べてミラーは偏光を大きく乱す様ですね。
キャンセルするための工夫も凹面鏡では、パス組みがなかなか シビアになりそうな気もしますが。

奇しくも、当方もInSbのディテクター(Kolmar社製)で赤外領域の磁気光学を 測定(しようと)しており、サファイア窓のものなので、複屈折でベースラインが ゆれているかもしれませんね。(鏡を入れたから仕方が無いとばかり思っていて、 正負磁場で引き算していたのであまり気にしていませんでしたが…)

大変、懇切丁寧なご返答ありがとうございました。
少し手を動かしながらレンズ/ミラーの違いなど確かめてみます。
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Date: 2007/11/02 16:18
A3: 嶋田様、佐藤勝昭です。 
 InSb検出器の窓材問題ですが、これには後日談があります。
お送りした資料では、InSbの前に検光子がありませんよね。
検光子を置いたら、InSbの窓の影響がなくなることがわかりました。
そして、その数学的な解析を進めているときに、検光子を入れた 場合に、変調周波数の2倍すなわち2fの成分をとると、旋光角の 情報が得られることに気がついたわけです。
 これが、下記の論文のもとです。
K.Sato: Measurement of Magneto-Optical Kerr Effect Using Piezo-Birefringent Modulator; Jpn. J. Appl. Phys. 20 [12] (1981) 2403-2409.
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Date: 2007/11/05 10:14
AA2: 佐藤先生
東京大学の嶋田です。
なるほど。大変興味深い後日談ですね。
今でこそ、偏光子-PEM-検光子で変調分光をすれば, 2fと1fでそれぞれ旋光角と楕円率角が同時に求まるというのは半ば常識ですが、当時はそうではなかったということですか。
逆に、サファイア板の複屈折を利用して楕円率角のキャリブレーションを行うというのも、こういった経験からのアイディアにも思えます。
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1020. 半導体単結晶のゲージ率

Date: 2007/11/02 1:35
Q: 佐藤先生 

はじめまして。H*大学で半導体薄膜の研究をしているO** といいます。(匿名でお願い致します。)

① 単結晶Si、SiCのゲージ率を調べているのですが、半導体に関する物性が書いてある本等を   ご存知でしたら教えていただけないでしょうか?

② ピエゾ抵抗特性について様々な文献を調べているのですがなかなか見つかりません。ピエゾ抵抗の原理が   書いてある本等をご存知でしたら教えていただけないでしょうか?

よろしくお願い致します。
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Date: 2007/11/02 15:33
A: O様、佐藤勝昭です。
 ゲージ率(gauge factor)Kは、ひずみ(ΔL/L)あたりの抵抗値の変化率(ΔR/R)で 定義されています。
 K=(ΔR/R)/(ΔL/L)=(ΔR/R)/ε
ピエゾ抵抗効果の原理と特性についての教科書としては、
浜口智尋・谷口研二:(現代人の物理シリーズ4)「半導体デバイスの物理」 (朝倉書店, 1990)p170-173
の7.3節圧力センサーに詳しく出ています。表7.2にGeとSiのゲージ率が出ています。
Ge (1Ωcm)
結晶軸n型p型
[100]-1-5
[110]-97+67
[111]-147+104
Si(2Ωcm)
結晶軸n型p型
[100]-132+10
[110]-104+123
[111]-13+177
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1021. セラミックスの発光

Date: 2007/10/29 17:31
Q: 佐藤様へ
 励起波長関係の質問なのですが、セラミックに200nmから400nmをあてると赤紫の発光するのですが
  どの波長が励起させているのか?また発光している波長を教えてもらえないでしょうか?

   A社技術本部N**
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Date: 2007/10/29 18:15
A: N様、佐藤勝昭です。
 ご質問だけでは状況がわからないので、お答えようがありません。
赤紫という色は、紫の成分(400nm付近)と、赤の成分(600-700nm)が混じってい ると考えられますが、正確には分光器で測らなければなりません。
また、どの波長で励起しているかは、励起スペクトルを測定しなければなんとも いえません。
確認させてください。
(1)セラミクスといっても千差万別です。どのようなセラミクスなのですか? 陶器の壺のようなものでしょうか?また、およその材質がわかればお答えください。
 いわゆる白色のセラミクスは、紫外光をあてても可視発光しないことが多いの ですが、釉薬(うわぐすり)が使われて着色しているものでは、含まれる  金属イオンの発光が観測される可能性があります。釉薬には希土類であるCeや Euなどの化合物であることが多いのです。
(2)200-400nmの光というのは、どのような光源ですか?この波長範囲をすべ てカバーしている光:たとえば、水銀灯やキセノン灯の光をフィルタで選択した のですか?
 それとも、この波長範囲に含まれるいくつかのレーザ光源で励起したのですか? (3)きちんと測定するには、それなりの設備が必要ですが、あなたの会社には そのような設備(分光器、紫外線を出す白色光源、検出器など)があるのでしょ うか?
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1022. GaAs, GaPのバンドギャップ

Date: 2007/11/02 15:44
Q: 私はO**大学 3回生 応用物理学科所属のT*という者です。(匿名希望)

混晶のバンドギャップエネルギーに関して調べていたところ、あなた様のページを見つけ、質問させていただくことにしました。

具体的に言うと、GaAsPがGaAsとGaPの混晶であるとし、GaAsPのバンドギャップエネルギーは組成比を与えられたとき、バンドギャップエネルギーとその比を用いて求めることができるとはわかりましたが、GaAsとGaPのバンドギャップエネルギーを調べていると、室温でGaAsが1.42(k=0),1.90(k=100)でGaP2.75(k=0)、2.24(k=100) となっていました。単位はeVです。

このときバンドギャップエネルギーはどうなるのですか?4種類の可能性があるのでしょうか?
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Date: 2007/11/02 16:54
A: T君、佐藤勝昭です。 GaPのバンド構造は、ロシアのヨッフェ研究所のHPの
(http://www.ioffe.rssi.ru/SVA/NSM/Semicond/GaP/bandstr.html)にでています。

Energy gap 2.26 eV
Energy separation Eo (Γ1c - Γ15ν) 2.78 eV

バンドギャップは最も狭いエネルギー間隙を言います。
GaPは間接遷移型なので、Γ15v→X1cがEg=2.26eVに相当します。
E0=2.78eVというのはΓ点での価電子帯→伝導帯のエネルギー間隔です。

一方、
GaAsについては、同じサイトの
(http://www.ioffe.rssi.ru/SVA/NSM/Semicond/GaAs/bandstr.html)にあります。
Energy gap 1.424 eV
Energy separation (EΓL) between Γ and L valleys 0.29 eV
Energy separation (EΓX) between Γ and X valleys 0.48 eV

GaAsは直接遷移型なので、Γ15v→Γ1cがバンドギャップです。
あなたのいう、1.90(100)は、GaPのE0に相当するエネルギー間隔で、エネルギー ギャップ1.42eVにEΓX=0.48eVを加えた値になっています。
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1023. なぜ光伝導スペクトルを測定するのか

Date: 2007/11/06 16:35
Q: 私はO**大学3回生 応用物理学科所属のT*という者です。(匿名希望)
先日は、
混晶のバンドギャップエネルギーに関して質問をさせていただきました。
とてもわかりやすい説明とサイトを教えていただきありがとうございました。
このバンドギャップに関することでもう1つ疑問があります。(前の質問とはつながりはありませんが...)

光電流スペクトル(吸収スペクトル)を調べると、立ち上がり付近がバンドギャップとなりますが、 励起子の影響などにより、実際のバンドギャップよりも小さくなるということを本 (半導体工学 第二版 松波弘之著 昭晃堂)を読んで知りました。

ではなぜ、光電流スペクトルをしらべるのですか?
バンドギャップを知りたいのであれば、発光スペクトルを分光器を用いて計測すれば、知ることができるのではないですか?
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Date: 2007/11/07 14:00
A: T君、佐藤勝昭@札幌です。
 発光スペクトルを測定できるのは、励起された電子とホールが再結合する時に、光 を放出する遷移(radiative recombination)の場合に限られます。
発光スペクトルに自由励起子が観測されるのは、よほどよい結晶の場合に限られます。
大抵は、束縛励起子か、ドナーアクセプタ対発光が見られることの方が多いのです。
 ドナーアクセプタ対発光では、バンドギャップよりかなり低いエネルギー位置で発光します。
たとえ自由励起子が観測された場合でも束縛エネルギーがわからないと正確なバンドギャップは得られません。
 自由励起子でも束縛エネルギーが小さい場合、熱的に解離して電子は伝導帯を、 ホールは価電子帯をマイグレートして、どこかのトラップ準位に捕獲され、 そのエネルギーがフォノンとして放出される場合があります。
伝導帯の電子と価電子帯のホールが、バンド間直接遷移で再結合して発光する場合もありますが、 室温ではスペクトルがブロードで弱いことがしばしばです。
 よく光らない場合でも、伝導帯と価電子帯にキャリアがあれば、電界を印加すれば、 光電流として観測されますから、正確な情報ではなくても、とりあえずバンドギャップのエネルギーの近似値が得られるのです。

 私もずっと以前に、磁性半導体CdCr2Se4のバンドギャップを決めるために光伝導スペクトルを 測定した経験があります。バンドギャップ付近の発光はほとんど観測されませんし、 薄膜ができないので吸収スペクトルの測定もむずかしいので光伝導に頼らざるを得なかったのです。
 K.Sato and T.Teranishi: Photoconductivity and Electronic Structures of CdCr2Se4; J. Phys. Soc. Jpn. 29 [2] (1970) 523
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1024. なぜPtの自由電子の散乱寿命は短いのか

Date: 2007/11/10 2:15
Q: 佐藤先生

M**社のO**と申します。匿名で「M社のO」でお願いします。
工学部電気系出身で、半導体素子の研究開発をしております。
「物性なんでもQ&A」を楽しく拝見しております。

「Q468. プラズモン励起について」に関連して質問があります。
このQ&Aにおいて、ご質問者の「Ptはダンピングが大きく・・・」に対して、 佐藤先生も「(Ptは)ご指摘のようにscattering lifetime が短く・・・」と 回答されています。

私の質問は、なぜPtはAgやAuなどの貴金属に比べて、 scattering lifetime が短いのでしょうか。
これは、電子のバンド構造より予測できることなのでしょうか。

お忙しいところ申し訳ありませんが、ご指導よろしくお願いいたします。
小生、先生の本などにより物性の基礎は修めておるつもりですので、 かなり専門的なご説明でも理解できる自負があります。
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Date: 2007/11/10 10:13
A: O様、佐藤勝昭です。
 Ptの伝導電子の散乱ライフタイムがなぜ短いかというご質問ですが、明確なお答えが できるかどうか自信がありません。
 バンド構造だけからは散乱の寿命まで予測できないとは言えます。
キャリアの散乱には、フォノンによる散乱、不純物による散乱のほか、遷移金属の場合 磁気的な散乱も関与します。白金はパウリ常磁性体ですが、強磁性秩序をもつ寸前の状 態にあるといわれています。たとえば、PtCo, PtFeなどの合金では、Ptが磁気モーメン トをもつことが、XMCDの測定から明らかにされています。スピン軌道相互作用が大きい ことも考慮すると、スピンの揺らぎによる散乱が効いている可能性がありますが、それ を裏付けるデータを持ち合わせていません。お答えにならなくて申しわけありません。
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Date: 2007/11/10 11:43
A2: 追伸O様、佐藤勝昭です。
 先程、バンドは無関係と書きましたが、もうすこし説明しておきます。
筑波大学松本紳研究室のHP にPtのバンド構造と状態密度曲線(DOS)が載っています。
DOSを見ると、Ptのフェルミ面は狭い5dバンドの中にあることが分かります。
この点は、Auとの違いで、Auではフェルミ面の2eV下に5dバンドが存在します。
このため、自由電子の有効質量が大きいので、電気伝導は小さくなります。しか し、だからといって散乱寿命が短いとは言えないのです。散乱寿命に結びつける にはスピン散乱を考える必要があるのではないかと思うのです。
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Date: 2007/11/30 3:38
AA: 佐藤先生、M社のOです。
「Ptは散乱ライフタイム」に対して、ご指導ありがとうございました。
お礼が遅くなり申し訳ありません。
ご質問者も佐藤先生も当然のように「Ptの散乱ライフタイムが短い」ことをお話しされているので、 現象だけでなく原因の物理も広く知られていることかと思ったのですがそうでもないようですね。
ただ、確かにスピンの効果は大きいような気がします。
お忙しい中、丁寧にご説明して頂き、ありがとうございました。
今後も、「物性なんでもQ&A」で勉強させて頂きます。
御礼まで。
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1025. 強誘電体薄膜のキュリー温度

Date: 2007/11/12 15:47
Q: H**大学大学院 工学研究科 物質系工学専攻のH**と申します。
Webに掲載の際は匿名でお願いいたします。
以前にも質問にお答えしていただいたことがあります。
その節はお世話になりました。

いつも物性Q&Aは参考にさせていただいております。

今回の質問は『強誘電体膜のキュリー点』に関する質問です。

私は現在強誘電体膜について研究を行っているのですが、
つい最近『膜のキュリー点はバルクのキュリー点よりも高くなる』
という話を聞きました。
膜の場合、基板と膜の間に熱履歴が生じていてキュリー点が上昇したように見える、
というのが原因らしいのですが、ある文献によりますと、『Tcは粒径とともに下がる』
と記述されているものもありました。
これは強誘電体の種類によって原因が違うと考えた方がいいのでしょうか。
どちらを信用したらいいものか判断し兼ねましたので
もし宜しければお答えいただきたくメールさせていただきました。

ちなみに参考文献は
Material Letters Vol.34 No1/2 pp. 5-9
で、私の取り扱っている試料はPZT系のものです。

お忙しいところ申し訳ありませんが、
宜しければ回答のほどよろしくお願いします。
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Date: 2007/11/12 16:48
A: H君、佐藤勝昭です。
 強誘電体のキュリー温度は、バルク単結晶ではきちんと決まっていますが、 薄膜となると、物質、作製方法、膜厚、密度等により、大きく変化するので 一概に何が正しいかはいえないと思います。しかし、一般的に言って、バルク に比べて、薄膜のTcはバルクより低いのが当たり前で、高くなる方が例外で、熱履歴の ため見かけ上高くなったように見えるだけのことです。
Material Letters Vol.34 No1/2 pp. 5-9の論文は、ゾルゲル法で作製しており、 グレインサイズの減少とともにTcが低下するという報告で、きわめてリーズナブル な内容だと存じます。
あなたの研究室のHPによれば、あなたのテーマは、「MOD法による圧電体の厚膜」の ようですが、MODでも膜質は作製法に大きく依存します。熱処理方法などを 工夫して、なるべく粒径が大きく、配向性のよい膜を作製されますよう アドバイス申し上げます。
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Date: 2007/11/12 17:48
AA: H大学大学院のHです。

早速のご回答ありがとうございました。
非常に参考になりました。
ありがとうございます。
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1026. 太陽電池の理論的最大変換効率の導出法

Date: 2007/11/13 21:27
Q: 私はO**大学 3回生 応用物理学科所属のT*という者です。(匿名希望)
半導体デバイスの本を読んでいると、Si単結晶によるpn接合のエネルギー変換 効率の理論値は22%となっていたのですが、どのような理論式からでてくるので しょうか?固体物理の本なども見たりはしたのですが、見つけられず頼ることに させていただきました。
Siフォトダイオードの実験の考察に用いたいと考えております。
できれば導出もしりたいですが、ここでの記述はつらいですから、理論式だけでも 教えていただけるとありがたいです。
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Date: 2007/11/14 11:11
A: T君、佐藤勝昭です。
 実験レポートの考察に使う式を、「物性なんでもQ&A」に求めようというのは 本来心得違いです。
しかし、変換効率の理論的背景を知ろうという気持ちをもつことは評価できます のでお教えしましょう。
図書館に行って(古い論文ですが)次の論文を探してきて読んでください。
J.J. Loferski: Theoretical Considerations Governing the Choice of the Optimum Semiconductor for Photovoltaic Solar Energy Conversion;
Journal of Applied Physics 27 (1956) 777-784.
この論文は、太陽電池関係の論文では必ずといってよいほど引用される文献です。
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これによると、pnホモ接合ダイオードを念頭に、次のようにして式を導いています。
まず、光照射を受けたpn接合は、電流電圧特性が
 Ij=I0(exp(eV/kT)-1) (1)
で表されるような非線形抵抗に並列に置かれた電流Is の定電流源に等価です。
ここにI_oは逆方向飽和電流です。
もし、整合負荷がpnダイオードに接続されているとすると、取り出しエネルギー が最大になる電圧Vmpは次式で表されます。
 exp(eVmp/kT)(1+eVmp/kT)=(Is/I0)+1=exp(eVmax/kT) (2)
ここに、Vmaxは開放端子電圧です。従って、V_mpを計算するにはI0とIsを決める必要があります。
I_0はダイオードに関するSchockleyの式I_0= Aexp(-Eg/kT) から導かれます。
(この式の係数Aには、移動度や伝導帯・価電子帯の状態密度などが含まれます が、Siでは10-8のオーダーの量です。)
一方、Isは次式で与えられます。
  Is=Q(1-r)(1-exp(-αl)) e nIph(Eg) (3)
ここにQはキャリア収集効率で、回路を通り抜けるキャリア数と、バルクで生成されたキャリア数の比です。
また、rは光の反射係数(シリコンでは、反射防止コーティングをしなけらば40%くらい反射します(佐藤註))です。
αは吸収係数、lは吸収層の厚みですから、exp(-αl)は試料を透過してしまう光強度の割合、 nph(Eg)は、半導体において電子ホール対を生成するに十分な光子エネルギーをもった単位時間・単位面積あたりの光子の数です。
 最後に、最大変換効率η_maxは、単位面積に到達した太陽光のパワーに対する取り出せる最大電力との比として定義され、次式で与えられます。
 ηmax=Q(1-r)(1-exp(-αl)){(eVmp/kT)/(1+eVmp/kT)}{enph(Eg)/N_ph}(Vmp/Eav) (4)
ここにNphは太陽光スペクトルに含まれる全光子数、Eavはその平均エネルギーです。
 太陽光のパワースペクトルのピークは1eV付近にあるので、光子の数はエネル ギーの増加とともに減少します。従って(4)のn_ph(Eg)はEgの増大とともに減少 します。一方、Is/I0はI0= Aexp(-Eg/kT)を考慮するとEgとともに増大しま す。従って、VmpもEgとともに増大します。
このため、ηmaxをEgの関数としてプロットすると、ピークを生じるのです。
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1027. 相変態について

Date: 2007/11/16 15:08
Q1: なぜおんどは上昇するのですか?
変態温度はなぜ低いのですか?
秋田県在住19歳 すがい
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Date: すがい君、佐藤勝昭です。
A1: 質問の意味がわかりません。もう少し丁寧に質問してください。
(1) 地球温暖化のことを聞いているのですか?それとも、熱源に接したとき の物質の温度上昇のことを聞いているのですか?
(2)変態というのは昆虫かなにか生物の変態ですか?それとも、物質の気相・ 液相・固相の相変態のことですか?
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Date: 2007/11/16 15:26
Q2: 熱源ッてなんですか?
(2)物質の気相・液相・固相の相変態のことです。
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Date: 2007/11/16 15:38
A2:
(1)熱源というのは、熱の元のことです。
例えば、鍋に入れた水の温度を上げるときに、ガスコンロにかけて熱を与えます よね。熱源がなければ温度上昇はありません。
(2)水の固相・液相の相変態(融解)は低い温度で起きますが、金属の融解は 1000度におよぶ高い温度で起きます。
変態温度は物質の結合の強さと関係しています。水では、水分子同士の結合(水 素結合)が弱いので低温で相変態が起きるのです。
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Date: 2007/11/16 15:45
Q3: (2)はわかりました。
(1)体心立方格子から面心立方格子に変わる時に、構造や磁気特性が変わることによって 一瞬膨張し、熱エネルギーが発生するから温度は上昇するのですか?
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Date: 2007/11/16 16:00
A4: 佐藤勝昭です。
体心立方格子から面心立方格子に変わる時になぜ温度が上がるかという質問ですね?それならそのように質問してください。
温度上昇の原因は熱膨張が原因ではありません。
一般に相変化をするときに、潜熱が発生します。潜熱の例としては、水が蒸発するとき、周りから潜熱を奪うので涼しく感じるということで経験されたことがあると存じます。
潜熱とは、水→蒸気 のように物質の状態変化だけに費やされる熱です。全体温度は変化しません。潜熱については、
http://www.osaka-kyoiku.ac.jp/~masako/exp/netuworld/syoutai/sennetu2.html
を参考にしてください。
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Date: 2007/11/16 16:20
AA: わかりました。
ありがとうございました。
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1028. 先端をしぼった電磁石からの磁場

Date: 2007/11/16 2:54
Q: 佐藤勝昭先生.
はじめまして.私,M*大学工学部機械工学科4年A*と申します.(ホームページへのアップ時は,学校名,氏名とも匿名でお願いいたします) 先生のホームページ拝見させていただきました.
さて,質問のほうなのですが,
添付させていただいた図のように,コイルの中に入れた磁性体の先端をしぼった電磁石を設計しようと考えているのですが,先端(r=0)からr (r>0)の位置での磁場の計算の仕方がわかりません.
No.1013の内容も参考にしてみたのですが,あの場合だとr=r´のところからの磁場なので,それから,今回の場合の,面積が小さくなっていく磁性体を通り,先端からの磁場とする応用の仕方がわからず,断念しました.
また,コイルを半無限長コイルと近似して,r=r´での磁束密度B=μnI/2から,r=r´での磁束φ=(μnI/2)*S1と計算し,先端r=0で断面積がS2になるので,r=0での磁束密度がB2=(μnI/2)*(S1/S2)と計算しました.
しかし,ここからどうすれば良いか分からなくなってしまいました.
私の学校の教授に聞こうと思ったのですが,その教授は学会等で忙しくしているらしく,今年は学校には来れないらしいので,誰に相談すべきか悩んでいたときに,佐藤先生のホームページを見つけ,御迷惑かと思いましたが,御相談のメールを送らせていただいた次第です.
お手数おかけしますが,ご教授お願いできないでしょうか?
よろしくお願いします.
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Date: 2007/11/18 0:15
A: A君、佐藤勝昭です。
 r=0における磁束密度がB2[Wb/m2]ですから、そこにB2S2[Wb]の磁極が置かれ たの同じです。r>>D2であれば、先端からrの位置における磁界はクーロンの公式 で与えられるはずです。
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Date: 2007/11/18 2:2015
Q2: 佐藤先生.
M大のAです.
回答ありがとうございます.
なるほど.確かに磁束の単位が[Wb]というのを忘れていました.
もう一つお聞きしたいのですが,
r>>D2という条件が気になりました.
これはどういうことなのでしょうか?
rがD2と近い値だとまずいのでしょうか?
よろしくお願いします.
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Date: 2007/11/18 8:54
A2: A君、佐藤勝昭です。
 磁極の中心から軸上rの位置にある測定点を考えますと、磁極内の各点から測 定点までの距離は一定rではなく、磁界の方向も軸から傾いていますから、各点 からの寄与を中心から磁極の半径D/2にわたって積分しなければならないので す。しかし、r>>Dであれば、磁極内のどの位置からも距離はrと見なせますし、 磁界の方向も軸方向と見なせるからです。
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1029. サファイヤ板の複屈折

Date 2007/11/22 3:20
Q: 佐藤勝昭先生
K*大学のI**と申します。(HPに載せる際には、匿名希望です)
いつもお世話になっております。
ファラデー楕円率の校正をサファイア板を用いて行いたいのですが、サファイア板の楕円率を教えていただけないでしょうか。
また、何面のサファイア板を用いればよいのでしょうか。
お忙しい中、ご迷惑をおかけします。
ご教示いただけますよう、よろしくお願い致します。
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Date: 2007/11/22 15:57
A: I君、佐藤勝昭です。
 サファイアはc面(0001)以外は複屈折を持ちます。通常はc軸を含むa面 (1120)を使います。
ある面に垂直に入射した光のうち、常光線に対する屈折率noと異常光線に対 する屈折率neとしますと複屈折は複屈折Δn=ne-noとして与えられます。
長さdとしますと、これによる位相差は2πΔnd/λ=ωΔnd/cです。このサファイア 板に直線偏光を入射したとき、出てきた光の異常・常光線の位相差が0 のとき は直線偏光ですし、π/2のときは円偏光です。この途中では楕円になります。
したがって、楕円率を測定する設定で、適当な厚みの適当な面のサファイヤ板 を入れたとき、出力には波長とともに振動するが様子が見られます。ピークの 位置が円偏光(楕円率=1)になりますので振動波形の包絡線をとれば、校正が できるのです。
 λ=.590μmにおいてc軸に平行な方向の屈折率がne=1.768、c軸に垂直な方向 の屈折率がno=1.760となっていますので、Δn= 0.008 です。
この波長で1/4波長板にするには 2πΔnd/λ=(π/2)*(奇数) なので d=36.875*奇数[μm] となります。
短波長まで細かい校正をしたければ、薄くすれば波長に対して細かい振動がでます。
(なお、校正の具体的な方法は、 K.Sato, H.Hongu, H.Ikekame, Y.Tosaka, M.Watanabe, K.Takanashi and H.Fujimori
Magnetooptical Spectrometer for 1.2 - 5.9 eV Region and its Application to FePt/Pt Multilayers;
Jpn. J. Appl. Phys. 32 Part 1 [2] (1993) 989-995.
をご覧下さい。)
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1030. ショットキーダイオードのI-V特性

Date: 2007/12/04 16:40
Q: 私はO*大学3回生のT*という者です。(匿名希望)
大学の講義で先日、ショットキーダイオードについて学びました。
その中でpn接合ダイオードのNAを無限大にしたもので、I-V特性も全く類似したものであると学びました。
しかし私が不思議に思うのは、NAを無限大にしたのに全く同じになるものなのかと思ってしまいます。
実験をすればショットキーダイオードのI-V特性も片対数をとればほぼ直線になるのですか?
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Date: 2007/12/04 16:55
A: T君、佐藤勝昭です。
 大学の講義で学んだことについて疑問に思ったら、講義を担当した教員に聞く のが正当ですよ。
pn接合のI-V特性も、ショットキー接合のI-V特性も式の上からは、
 J=J0 {exp(qV/kT)-1}
という同じ形の式で表されます。ただし、pn接合では接合界面から注入された少 数キャリアの拡散が電流を決めていたのに対し、Schottky接合では半導体から金 属側への多数キャリア(電子)の流れが電流を決めているという点が違います。 Schottky接合のJ0はpn接合のJ0より数桁大きく、また逆方向電流はpn接合 と違って飽和しません。
もっと詳しく知りたければ、オフィスアワーに担当教員の部屋に行って、質問してく ださい。
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1031. エリプソメトリで測定した磁性ガーネットの屈折率の磁界依存性

Date: 2007/12/04 19:08
Q: 佐藤勝昭様
元T社のSです。紅葉も真盛りを過ぎようとしているこの頃益々ご活躍と存じます。過日は
磁力線と光線軸の傾きによって、磁気光学結晶ガーネットに複屈折の生じることを指摘頂き有難うございました。
 再びHPをみてご相談お願いします。同じ希土類BiIG結晶ですが、エリプソメトリーによって屈折率を測定するに当たり、外部磁界で容易軸方向[111]に飽和磁化している状態と、磁界が無くマルチドメインの状態とで測定の結果にどのような差が生じると考えられるでしょうか?
試料結晶は{111}板0.3mm厚で[111]方向に成長誘導異方性のある状態、測定波長は光通信帯域1~1.7μmです。
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Date: 2007/12/05 0:20
A:S様、佐藤勝昭です。
  メール有り難うございます。
お尋ねのようなケースのエリプソメトリ測定をやった経験がありませんので、 何が起きるか断定的に言えないのですが、考えられることを述べます。
磁気飽和して単一磁区になった場合には[111]軸の周りについて等方的ですが、 縞状磁区になった場合、縞の長手方向と、垂直方向では屈折率に異方性が 出る可能性があります。また、DyIGのように磁歪の大きなガーネットの 場合、単磁区では磁気ひずみが生じていますが、多磁区では磁気ひずみは 打ち消しています。屈折率はひずみに敏感なので、わずかながら磁界の 有無による変化がある可能性があります。
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Date: 2007/12/06 20:44
Q2: 佐藤勝昭様
早速のご回答有難うございました。
反射光に対して、均一に磁化されている場合は極カー効果のみ発生、 磁区がある時は磁壁が存在するごく微小部分では縦、横カー効果も 発生と考えても良いでしょうか?
磁壁では磁歪も複雑でしょうか?
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Date: 2007/12/10 15:42
A2: 様、佐藤勝昭です。
 エリプソメトリにおいては光は斜め入射しますから、斜め入射の極カー効果に 加えて、一般には、縦カー効果、横カー効果が加わってきます。しかし、磁区内 では磁化は面直で上向きか下向きかだけですから、極カー効果のみが寄与しま す。エリプソメトリでは、rp/rs=tanΨ exp(iΔ)を評価しますから、極カー効果が あるとΨ、Δが磁化方向の正負に応じて正負に変化します。初磁化状態で磁区に分 かれている場合には、この効果は打ち消しているはずです。しかし、面直上向き の十分強い磁界で飽和させると、上向きの成分のみが寄与するので、磁化による カー効果が重畳します。したがって、エリプソで見た屈折率は、非常にわずかな がら変化があるはずです。
 一方、磁気光学効果を考えず純粋に光学的に考えたとき、磁化があると磁歪の ために屈折率が変化しています。単一磁区では全体として大きな磁歪eがあり、 屈折率は全体として変化を受けています。消磁状態では磁歪はe/3になってお り、全体として飽和状態の1/3の屈折率の変化になっているはずです。しかしミ クロに見ると、縞状磁区では、屈折率の変調が起きているはずなので、島に対直 に入射した光は回折格子を見ることになります。磁区/磁壁の周期が波長に近い とこの効果が無視できないと思います。
 また、磁壁内では、面内成分がありますから、縦・横磁気カー効果の寄与があ ります。縦カー効果は、両側の磁壁で反対方向ですから打ち消すはずです。横 カー効果は磁化の方向に応じて強度が変調されるはずです。しかし、この成分は 小さいのではないかと推察します。
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Date: Thu, 6 Dec 2007 20:44:35 +0900
Q3: 佐藤勝昭様
早速のご回答有難うございました。
反射光に対して、均一に磁化されている場合は極カー効果のみ発生、 磁区がある時は磁壁が存在するごく微小部分では縦、横カー効果も 発生と考えても良いでしょうか? 磁壁では磁歪も複雑でしょうか?
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Date: Mon, 10 Dec 2007 15:42:35 +0900
A3: S様、佐藤勝昭です。
 エリプソメトリにおいては光は斜め入射しますから、斜め入射の極カー効果に 加えて、一般には、縦カー効果、横カー効果が加わってきます。しかし、磁区内 では磁化は面直で上向きか下向きかだけですから、極カー効果のみが寄与しま す。エリプソメトリでは、rp/rs=tanΨ exp(iΔ)を評価しますから、極カー効果が あるとΨ、Δが磁化方向の正負に応じて正負に変化します。初磁化状態で磁区に分 かれている場合には、この効果は打ち消しているはずです。しかし、面直上向き の十分強い磁界で飽和させると、上向きの成分のみが寄与するので、磁化による カー効果が重畳します。したがって、エリプソで見た屈折率は、非常にわずかな がら変化があるはずです。
 一方、磁気光学効果を考えず純粋に光学的に考えたとき、磁化があると磁歪の ために屈折率が変化しています。単一磁区では全体として大きな磁歪eがあり、 屈折率は全体として変化を受けています。消磁状態では磁歪はe/3になってお り、全体として飽和状態の1/3の屈折率の変化になっているはずです。しかしミ クロに見ると、縞状磁区では、屈折率の変調が起きているはずなので、島に対直 に入射した光は回折格子を見ることになります。磁区/磁壁の周期が波長に近い とこの効果が無視できないと思います。
 また、磁壁内では、面内成分がありますから、縦・横磁気カー効果の寄与があ ります。縦カー効果は、両側の磁壁で反対方向ですから打ち消すはずです。横 カー効果は磁化の方向に応じて強度が変調されるはずです。しかし、この成分は 小さいのではないかと推察します。
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Date: 2007/12/13 14:43
AA: 佐藤 勝昭様
遅れましたが詳細なご回答有難うございました。
定量的に差を明確にし、最適ARコートするため実測予定です。
年明けには結果は出ますので両者の値をお知らせします。
親切なご教示をいただき感謝いたします。
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1032. イオン照射したCoCr膜のMsとTcの変化

Date: 2007/12/07 19:23
Q: 佐藤勝昭、F社Sです。
いつもお世話になっております。HPを見ての質問です。
匿名希望です。私は、磁気記録媒体の開発を担当しております。

今回の質問は、Coの自発磁化についてです。
hcp-CoCr垂直磁化膜にArイオンを照射すると室温での 飽和磁化が大幅に低下することに気が付きました。膜 減り量を考慮しても十分なMs低下が確認されています。

X線回折測定の結果、hcp-Co(002)の格子定数が大きく なっていました。また、Msの温度変化測定で、Tcが下がっ ていることがわかっています。格子間隔が広がるとTcが 下がることについて、物理的解釈を付けたいのですが、 アドバイスいただけたら幸いです。

また、バンド計算を有限温度に拡張するなどして、Tcと 格子間隔の関係について計算できたらよいのですが、 可能かどうか、先生のお考えをお聞かせいただけたら と思っております。

以上、たいへん恐れ入りますが、なにとぞよろしくお願い いたします。
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Date: 2007/12/08 0:10
A: S様、佐藤勝昭です。
 一般に固体に高エネルギーのイオンを照射しますと表面付近の原子が 散乱を受け原子配列に乱れが生じます。イオンの照射量によっては、ア モルファスライクな乱れとなります。MsおよびTcの低下は格子定数の増 加というよりは格子の乱れの方が聞いているように思うのですが。
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Date: 2007/12/10 10:33
Q2: 佐藤勝昭様

お世話になっております。
アモルファスライクな格子の乱れとTc低下の関係について、 ご教授いただきたく、返信させていただきました。格子の乱れに よって、原子間の交換相互作用にも揺らぎが生じ、Tcが下がった と考えればよいのでしょうか。

磁化の温度変化測定の結果を0 Kに外挿した自発磁化は、イオン 照射で低くなりました。バンド計算によると、基底状態では、格子間 隔が広がると自発磁化が増加し、縮まると減少するようです。つま り、X線回折の結果とあわせて考えると、0 Kでの自発磁化は増加し なければなりませんので、磁化の実測結果と合いません。先生の おっしゃるとおり、格子定数の増加をTc変化やMs変化の原因と考 えることには無理があるのかもしれません。

以上、お忙しいところ、誠に恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
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Date: 2007/12/10 11:05
A2: S様、佐藤勝昭です。
 自発磁化が減少することは必ずしも交換相互作用の減少のせいとはいえませ ん。たとえば、イオン照射で原子空孔やボイドが生じて密度が低くなれば、見か けのMsは低下します。
キュリー温度Tcと交換相互作用Jの関係は、近角先生の強磁性体の物理(6. 34)式によりますと、kTc=J/log{z/(z-2)}と表されます。ここにkはボルツマ ン定数、zは隣接スピンの数です。2次元正方格子ではz=4でこのときkTc= 1.443J、単純立方格子ではz=6でkTc= 2.446Jとなります。このようにキュリー温 度Tcは、Jのみならず配位数zにも依存します。
イオン照射によって、Jが小さくなっても、配位数が小さくなってもTcは低下し ます。私の解釈では、格子の乱れによって、隣接スピンの数が減少したことが Tcの低下に寄与していると思うのですが・・。
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Date: Tue, 11 Dec 2007 10:56:23 +0900
Q3: 佐藤勝昭様
さっそくご回答をくださり、ありがとうございます。
隣接スピンが減少したことによるTc低下について考えて見ます。
格子の乱れによって小さくなるのは、Jよりもzの方が可能性が 高いとお考えの訳をご教授いただけないでしょうか。Jはそんなに 簡単に小さくなるものではないのでしょうか。

ちなみに、膜厚測定は、蛍光X線によるCo強度変化から算出 しているため、厳密にはCo原子の数を測定していることになり ます。

以上、恐れ入りますが、よろしくお願いいたします。
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Date: Tue, 11 Dec 2007 14:40:22 +0900
A3: S様、佐藤勝昭です。
 私は、決して交換相互作用Jの変化がないと言っているわけではありません。J の変化の寄与を考える前に乱れによる隣接スピンの数の変化の寄与を考えて、そ れで説明できない分をJのせいにすればよいのではないかと言っているわけです。
Coのような遍歴磁性体の磁性について乱れの効果がどのようにJに影響するかを 理解するのは簡単ではないと思います。
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Date: Tue, 11 Dec 2007 16:15:14 +0900
AA: 佐藤勝昭様
ご丁寧にご回答くださり、ありがとうございました。
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1033. 酸素プラズマ中の石英の帯電

Date: Tue, 18 Dec 2007 10:35:45 +0900
Q: 東京農工大学名誉教授 佐藤勝昭 様
F社のSと申します。H/Pを拝見させていただき,ご質問します。
申し訳ありませんがよろしくお願いします。

酸素プラズマ中の石英(SiO2)の帯電についてご質問します。
酸素プラズマ中では石英(絶縁物)は一般にはマイナスに帯電すると 思いますが、プラスに帯電する可能性はないでしょうか?
すみませせんが,よろしくお願いします。
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Date: Wed, 19 Dec 2007 02:32:13 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 私は、酸素プラズマ中で石英をおいて帯電させた経験がありませんので間違っているかもしれませんが、 私の考えを述べさせていただきます。
 プラズマにおいてはプラスイオンと電子が分離していますが、マイナ スの電子は軽くて動きやすいので、チェンバーの金属壁に到達して逃げ ていきます。一方、プラスイオンは空間に残ります。(電子は高周波の 動きに追従できるが、イオンは追従できずほとんど動かない)
 このため、プラズマの中心部においた石英はプラスに帯電するはずで すが・・・。
なんでもQ&A 
「832. プラズマポテンシャルとセルフバイアス」 をご参照下さい。
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1034. 形態の違うシリコンの物性値

Date: Tue, 18 Dec 2007 20:04:24 +0900
Q: 佐藤さま
初めまして。
(株)T*で働いているA*と申します。

ボランティアでこのような活動をなさっていることに驚き、でもすごくありがたく 感じています。
学生時代の研究で放射伝熱学を通して半導体の世界に興味を持ち、今の仕事に至っ ています。
バックグラウンドはないですが、忙しいながらも日々楽しく仕事をして知識を増や しています。

すごく基礎的なところで非常にきがひけるのですが、シリコンの物性について教え ていただきたいです。
シリコンと一口に言っても、amorphous/single crystal/poly crystalとあると思 うのですが、このどの状態においても物性は同じなのでしょうか?
会社の図書室で調べた中では、この状態を明記してデータが記載されているような 資料を見つけられませんでした。

具体的に私が知りたいのは各状態における密度と酸化速度(特にwet酸化)の差です。
結合の状態が違うのならば密度が変わってくるだろうし、 その場合には酸化速度も変わってくるのではないかと予想しているのですが・・・。
酸化反応の際のシリコン消費分はあくまでもSi-O結合の問題であって、44%である ことは変わりないですよね?
このあたりについても教えていただけないでしょうか。
参考になりそうな文献ももしご存知でしたら教えてください。

お忙しいところ図々しくお願いして申しわけありませんが どう資料を探していいのか行き詰まっているのでご助力いただけたらと思います。
どうぞよろしくお願いいたします。
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Date: Wed, 19 Dec 2007 00:14:38 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。
 シリコンの物性といっても、結合性、電子物性、光物性、熱物性、機 械的性質など入さまざまなものがあります。  アモルファスシリコンは、 a-Si:H(水素化アモルファスシリコン)と記されるように、水素を数% ~10数%含んでおり、結晶Siとは別の物質(珪素と水素の合金、また は、有機物のC-HにおいてCをSiに代えたもの)と言ってよいでしょう。
 アモルファスシリコンの結合性は結晶シリコンと同じ4配位ですが、配 位の方向も結合の長さもランダムで、その結果3配位になってダングリ ングボンドができて、ドーピングしてもキャリアが活性化しないので、 水素で終端しようというのが、水素化のコンセプトだったのです。従っ てアモルファスシリコンの密度は結晶シリコンの密度より低くなります が、結晶の場合のような物質定数ではなく、アモルファス性によって異 なった値をとります。
 多結晶シリコンといってもいわゆるポリシリコン は、アモルファスシリコンの海の中に微小な結晶粒が浮かんでいる状態 です。従って、その結晶粒の大きさや分布の様子の違いによって密度も 異なった値をとります。アモルファスシリコンからレーザーアニールで ラテラル成長で結晶化した膜の場合、その密度は結晶とほとんど変わり ません。
 電子的にはバンドギャップは、水素含有量にも因りますが、太陽電池 に使うものでは、1.7eV位で、結晶シリコンのバンドギャップ1.1eVより もはるかに大きいこと、ギャップ内状態があるけれど、アンダーソン局 在のために電気輸送には寄与しないことなどが知られています。ポリシ リコンの電子状態は結晶の電子状態と基本的に同じですが、結晶粒界に 障壁が存在することによって、移動度が小さくなっていることがありま す。
 さて、お尋ねの酸化速度の違いですが、私の手元にデータがありませ んが、水素化アモルファスシリコンは、単結晶とは別の物質と考えるべ きでしょう。単結晶シリコンの表面は極めて酸化しやすいのですが、水 素化アモルファスの表面は比較的安定です。
また、多結晶のものは粒界にWetの酸化剤が浸透しますので、酸化しやすいと思います。
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1035. 「多元合金」の英訳

Date: Wed, 19 Dec 2007 10:58:25 +0900 Q: 東京農工大学 佐藤先生
初めまして。私、S**社のU*と申します。
(HPに掲載する時は、所属・氏名はなにとぞ匿名にてお願いします。)
技術用語の英語表記を検索しているうちに先生のHPにたどり付きました。
質問内容が学術的な内容ではないので申し訳ございませんが、教えていただきたいことがあります。
開発テーマの関係で、「多元合金」あるいは「多元合金材料」を英訳したいと思います。
辞書やWebで色々検索したのですがしっくり来ません。
どうも、「多元」という表現があまり出ていないようです。
そこで、先生の参加されている国際会議で、「三元多元化合物国際会議(International Conference on Ternary and Multinary Compounds)」 というものがあるようですが、これを元に考えて、
「Multinary Metal Alloy」や「Multinary Metal Alloy Material」などとして見たのですが、 これで国際的にも通用する表現となりますでしょうか?

恐れ入りますが、ご教授の程よろしくお願いいたします。
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Date: Wed, 19 Dec 2007 11:50:18 +0900
A: U様、佐藤勝昭です。
 合金や化合物において、2元素からなるものを2元合金(binary alloy)、2元化合物(binary compound)、3元素からなるものが、3元合金(ternary alloy)、3元化合物(ternary compound)、4元素からなるものを4元合金(quaternary alloy)、4元化合物(quaternary compound)、・・・・と続きます。これを延長して多元素の場合に多元 合金(multinary alloy)、多元化合物(multinary compound)と呼んでいます。multinaryは造語だと思いますが、金属関係者の述語として定着しています。
なお、日本語では、合金という言葉は、金属にしか使われませんが、英語では半導体の混晶をsemiconductor alloyといいます。
 お尋ねの多元合金はmultinary alloys、多元合金材料はmultinary alloy materialsとなります。(複数形にしておくほうがよいと思います。)どうしても金属の合金であることを強調するのであれば、それぞれ、multinary metallic alloys、multinary metallic alloy materialsとされるとよいと思いますが、ちょっと長たらしいので、書かなくても分かるようであれば、metallicは不必要です。
 なお、化合物や合金でなく多元素が入っている(一般の)場合にmulticomponentという言葉が使われるようです。以前に、ICCG(結晶成長国際会議)で、多元化合物のセッションには、multicomponent compoundsと書かれていました。
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Date: Wed, 19 Dec 2007 12:25:03 +0900
AA: 東京農工大学 佐藤先生

早速の回答、また詳細なご解説を頂き大変ありがとうございます。
大変参考になりました。(multinaryは造語なんですね)
これからも先生のHPは楽しみに拝見させて頂きます。
今後ともよろしくお願いいたします。
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1036. MgOをトンネル障壁に使うとTMRが増大する理由

Date: Sat, 22 Dec 2007 16:53:37 +0900
Q: 佐藤勝昭 様
はじめまして、「物性なんでもQ&A」を度々参考にさせていただいています。
現在H*大学博士前期課程1年のH*と申します。
アップロードされる際は匿名でお願いいたします。

早速質問させていただきます。
現在spin-FETに関する研究をしています。
具体的には強磁性電極から半導体(二次元電子系)への高効率スピン注入です。
そこで、スピン注入という観点からTMRについて調べていたところ、トンネルバ リアとして、それまで用いられていたAl_2O_3ではなくMgOを用いることによって TMR比が改善されたようです。
私自身様々な資料を調べましたが、なぜAl_2O_3ではなくMgOでTMR比が改善(スピ ン注入効率の改善とほぼ同義?) されたのかわかりません。
ちなみに量子力学(小出昭一郎著)と固体物理の基礎(キッテルの固体物理入門程 度)は理解しているつもりです。
急な質問で恐縮ですが、何卒ご教授くださいませ。
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Date: Sat, 22 Dec 2007 17:49:32 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 研究上の疑問は、指導教員に聞くのが筋ですよ。しかし、先端的なこ とは教員も十分に勉強していないことがありますので、ご説明しておき ましょう。
 磁気トンネル接合素子において、アモルファスのAl2O3に代えて結晶 性のMgOをトンネル障壁に使うとTMRが改善され1000%におよぶ値が得ら れる可能性があることは、Butlerらが2001年に理論的に予言しました。
(W. H. Butler, X.-G. Zhang, T. C. Schulthess, J. M. MacLaren: Phys Rev. B63 (2001) 054416.)
 世界中の研究者が実験的に検証しようとしましたが、成功しませんで した。産総研の湯浅らは良質のMgO単結晶層の作製に成功し、200%にお よぶ大きなTMR比を実現しました。
(S. Yuasa, A. Fukushima, T. Nagahama, K. Ando, Y. Suzuki: Jpn. J. Appl. Phys. 43 (2004) L588.)
現在では500%という大きな値が報告されています。
 従来のアモルファス絶縁層によるトンネル効果では、電子のトランス ファーが散漫トンネルによって起きるのでエネルギーの保存だけがかか わったのですが、結晶絶縁層を用いるとコヒーレント・トンネルとなり、 エネルギーのほかに運動量が保存されるために、MRは電極のバンド構造 を反映し、磁化が平行のときはトンネルできるが反平行のときはトンネ ルできなくなるのです。
(猪俣浩一郎:RISTニュースNo.42(2006) 35.参照)
 参考のために、私が、結晶工学分科会年末講演会で話した内容の
予稿パワポ(pdf)が、ネットにアップしてあるので、参照してください。
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読んでみて、分かったかどうかは、返事を下さいね。
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Date: Mon, 24 Dec 2007 02:16:48 +0900
Q2: 佐藤勝昭 様
迅速な返信さらには大変参考になる資料添付に感謝致します。
(猪俣浩一郎:RISTニュースNo.42(2006) 35.)については以前より参考にさせていただいてました。
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Date: Mon, 24 Dec 2007 15:31:56 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 トンネル障壁層を単結晶にすると、特定の波数ベクトルを持つ電子波 動関数の連続性が保たれ、伝導率が特定のバンド電子の透過率で決まる ために等価的に高いスピン分極率が得られると言うことです。
 日本磁気学会2006年サマースクールテキストpp.93-106にあります大 阪大学の鈴木先生の解説がわかりやすいので、それを読んで理解してください。
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1037. 銅とアルミナ基板の接合

Date: Tue, 25 Dec 2007 15:06:54 +0900
Q: 佐藤様
初めてメールさせて頂きます。㈱N**のS*と申します。
HPへ掲載の際は匿名でお願い致します。
今更という内容かも知れませんが放熱基板製作にあたり銅板とアルミナ基板の接合に 取り組んでおります。
不活性雰囲気(N2)で銅の融点(1083℃)より若干低い温度で圧縮しながら 加熱すれば接合するという知見をもとに試験を進めていますが、うまく張付かなかったり 逆に溶けすぎたり(表面状態は綺麗なまま貼り付けたい)と行き詰っております。
条件出しだけの問題として時間をかければできるのか不安があり質問させて頂く事 にしました。
具体的な質問としては酸素濃度と銅の融点の相関関係の分かる資料等があれば教え て頂きたいです。
又、本件の接合に関する製法で既に確立しているものがあるのであれば教えて頂き たいです。
私なりにNETで検索したりと調べて見ましたがこれといったものがなく、初歩的な 質問かもしれませんが御回答頂ければ幸いです。
以上
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Date: Tue, 25 Dec 2007 22:33:38 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 私は、金属とセラミクスの接着については全くの専門外です。
参考になるかどうか分かりませんが、Cuとα-Al2O3結晶(セラミクスで はありませんが)の接着に対する酸素分圧の影響については、次の論文 がありますのでご紹介しておきます。
U. Alber, H. Mullejans, and M. Ruhle:
Wetting of copper on α-Al2O3 surfaces depending on the orientation and oxygen partial pressure;
Micron Volume 30, Issue 2, April 1999, Pages 101-108.
 この論文は、融点と分圧の関係ではなく、高い酸素圧の方が強い結合 が実現すると書いてあります。また、R面の方がB面よりCuとの結合を作 りやすいと書かれています。したがって、CuのAl2O3への接着は融解で はなく酸化物イオンとの結合の問題ではないのでしょうか。
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1038. アルミニウム合金の物性値の温度依存性

Date: Mon, 7 Jan 2008 13:29:26 +0900
Q: 東京農工大学 佐藤先生
初めまして,私はK*大学の修士1年でI**と申します.物性値のキーワードで検索 しておりましたところ先生のサイトを見つけました.
webアップの際は匿名でお願い致します.アルミの物性値について質問させてください.
私はアルミ合金(5000系)の動摩擦係数を測定する研究を行っております.係数 を評価する際に材料の密度,比熱,熱伝導率の3つのパラメータが必要なのです が,いずれも多くの文献で20℃固定での値でしか記されていないことが多いのです. 実験の過程でアルミ合金は15℃から100℃未満まで温度上昇するので,より精度 の高い解析結果を得るためには,温度上昇に伴う物性値の変化を考慮すべきではな いかと考えているところです.

指導教官とも軽金属関係のハンドブックや,論文などを探してはいるのですが目的 とするデータに未だ出会うことができず困っております.
佐藤先生の専門ではないかもしれませんが,アルミ合金の物性値の温度依存性につ いて詳しく記された文献などご存知でしたら,ご教授いただければ幸いです.
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Date: Mon, 07 Jan 2008 14:46:24 +0900
A: I君、佐藤勝昭です。
 私も、通常のハンドブックにしかアクセスできませんので、材料の密度,比 熱,熱伝導率などの温度変化のデータは持ち合わせません。このようなデータの データベースは物質材料機構(NIMS)さんがお持ちだと思います。Mat Naviを調 べてみてください。
http://mits.nims.go.jp/matnavi/
これになければ、NIMS科学情報室に直接問い合わせてください。
 なお、Aluminum Alloyに関する書籍としては、
FM Mazzolani : Aluminium Alloy Structures, 1995
JE Hatch : Aluminum: Properties and Physical Metallurgy, 1984
などに、thermal expansionなどは載っているようです。
Google Scholarに
5000 series aluminum alloy thermal property
など入力して丹念に調べてみるしかないでしょう。
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Date: Mon, 7 Jan 2008 17:15:52 +0900
AA: 佐藤先生
こんなにも早くお返事頂けるとは思いませんでした.お忙しい中ありがとうござい ます.
早速教えて頂いたNIMSのデータベースにユーザー登録しましたので,aluminum alloysから根気よく探してみます.この度は,ご丁寧にどうもありがとうございま した.
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1039. アルミナのレーザー加工

Date: Thu, 10 Jan 2008 16:18:24 +0900
Q1:佐藤勝昭様
 突然のメールで失礼致します。
 私、K**株式会社のM*と申します。(HP公開時は匿名でお願いします。)  「物性なんでもQ&A」をいつも拝見させて頂き、度々参考にさせていただいて います。
 
 早速ですが、セラミックへのレーザ孔加工について質問があります。レーザ 加工は専門外で基本的なことすら分かっておらず困っております。場違いな 質問とは思いますが、何かアドバイスを頂けると助かります。

 内容は、5~6mmtの厚みのアルミナ(純度99.5%以上)基板への多数の 貫通孔加工(φ0.3程度)方法を検討しており、加工タクト等を考慮してレーザ での加工を検討しております。
 そこで、何回かテストしているのですが、垂直に孔が空かずに途中でレーザ が曲がったと考えられる入射口と出射口がずれた位置に出来るという現象が おきています。レーザメーカも経験的には分かっていても、原理までは分かって いないということで困っています。

 ご多忙中申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
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Date: Thu, 10 Jan 2008 17:16:21 +0900 A: M様、佐藤勝昭です。
 むずかしい質問ですね。わたしもよくわかりませんが、ヒントになればと思い 考えてみました。
 アルミナはα-Al2O3の多結晶焼結体です。αAl2O3はコランダム構造をもち、光 の電界の振動方向がc軸方向とab軸方向では屈折率が異なります。結晶粒径は数 μmですが比較的方位のそろった直径数10μmの束が観測されています。光がコラン ダム構造のc軸に平行に入射すれば、複屈折は起きませんが、方位が傾いている と(焼結体ですから当然結晶粒の方位は揺らいでいます)複屈折のため、光が曲 げられてしまいます。特に、直径300μmの孔をあけるとなるとレーザ光の直径は 数十μmに絞っているでしょうから、光が見る結晶方位は完全にはランダムではな く、揺らいでいると思われます。いったん曲がると次の結晶粒界でも曲げられ、 入射位置と出射位置がずれることは十分考えられます。光の直径より1桁以上小 さな直径で方位がばらばらな結晶粒からなるアルミナがあれば、この現象は見ら れないでしょう。
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Date: Thu, 10 Jan 2008 20:07:37 +0900
Q2:佐藤勝昭様
 お世話になります。Mです。
 お忙しいところ迅速なご回答、誠に有難うございました。
 予想としては、結晶粒の方位ということで材料起因とすれば 加工条件での改善は難しいかもしれないですね。
 恐縮ですが、もう一点だけ質問させてください。
 同材料でも、1mmt程度のアルミナ基板であれば、比較的 垂直の孔加工が出来ますが、厚みが薄いために結晶粒の方位 揺らぎがあったとしても、それを払拭するぐらいのエネルギー入射 ができ加工できたと考えても良いのでしょうか?

 度々の質問で申し訳ありませんが、お時間が許すときに、ご教授 いただければ助かります。

 以上、宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 10 Jan 2008 23:47:27 +0900
A2:森様、佐藤勝昭です。
 多分、距離が短いと位置ズレが少ないので目立たないと考えられます。
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Date: Fri, 11 Jan 2008 07:41:14 +0900
AA: 佐藤勝昭様
 K社Mです。
 貴重なお時間を割いていただきまして、ご検討/ご回答本当にありがとうございました。
 また、質問が出てきましたら、メールさせていただいてもよろしいでしょうか?
是非とも、よろしくお願いいたします。
 以上
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1040. ヘリウムリークディテクターでのヘリウムの検出原理

Date: Sun, 6 Jan 2008 18:25:59 +0900
Q:こんにちわ、佐藤先生
HPを拝見しての質問です。
私は、半導体メーカーN社のO*(匿名でお願いします。)です。
文系出身者です。
ヘリウムリークディテクターでのヘリウムの検出において逆拡散(カウンターフロー)を利用して検出していると言う事を聞いているのですが、 この逆拡散現象による、検出には一定の法則(等式)などがあるのでしょうか?
また、リークレート(漏れ量)とその漏れ量とガス(特に特殊高圧ガス)の関係が良く理解できません。
具体的には、漏れ量が 5.0x10-10Pa・m3/secとなった場合 例えばAsH3のようなガスはどれぐらい漏れることになるのでしょうか?

Q&Aの質問を拝見して似つかわしくない質問なのかとは思いますが よろしくお願いいたします。
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Date: Mon, 07 Jan 2008 11:44:09 +0900
A:O様、佐藤勝昭です。
 小生は、真空工学は専門ではありません。正しくお答えできる自信がありません。
キャノンアネルバのホームページに出ている
「真空基礎講座」のリーク探しのページ が役に立つと思います。リーク探しその3その4にヘリウムリークディテクタのことが書いてあります。
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 アネルバのホームページの受け売りですが、 「プローブ法」の原理については、次のように書かれています。
「プローブ法では、プローブガス(ヘリウムガス)に対する排気速度Sと、リークハンティングの対象となっている真空容器の容積Vとの比(排気時定数τ=V/S)が重要となります。 τの大きい真空系に対するヘリウムガスの信号の変化と、τの小さい真空系に対するヘリウムガスの変化は図1に示してある通りです。 この図からわかるようにτは中間ぐらいの大きさが最もリークハンティングに適していると言えます。このτの値は5~8秒が適当と言われています。 τを制御するためにはヘリウムに対する排気速度を変えることを行います。 一般には主ポンプについているバルブを少し絞ることによりτを大きくしています。」
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「カウンターフロー」については、次のように書かれています。
「リークディテクタには真空ポンプ系が組み込まれていますが、主ポンプは圧縮型(分子流ガスの運動方向を揃えて圧縮する方法)のポンプ、即ち油拡散ポンプかターボ分子ポンプが使用されています。 最近はターボ分子ポンプのコストが下がったため油拡散ポンプを使用することは少なくなりました。 これらの圧縮型のポンプは、軽いガスほど圧縮比が小さいという特徴をもっているので、ヘリウムガスの排気速度が小さくなります(またはより小さくすることができます)。
リークディテクタは、被測定系の圧力によっては、大気圧に近い圧力での測定を行うときもありますので、上記の特徴をもったポンプを用いてヘリウムへの逆拡散現象を利用し、質量分析計へヘリウムを導くことができます。 これをカウンターフロー方式と呼びます。図4は通常の方式とカウンターフロー方式を比較したものです。 カウンターフローの場合では、ターボ分子ポンプはヘリウムガスより重いガスに対しては、十分な圧縮比を維持しているので、質量分析計の中は高真空に保たれます。」
ということで、おそらく、ポンプの圧縮比、排気速度などによるので、簡単な計算式は無いのではないでしょうか。
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 より詳細には、アネルバにお問い合わせになってはいかがでしょうか。
特殊高圧ガスのリークと、真空装置のリークとでは、状況が異なります。高圧になりますと分子流から粘性流に変わると言うことです。
そのまま換算することは出来ないと思います。また、AsH3(アルシン)のような危険なガスの場合には、慎重の上にも慎重を期す必要があるでしょう。
ガスの専門家にお問い合わせになることをお勧めします。
 専門違いでお役に立てず申し訳ありません。
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1041. 運動量行列要素

Date: 2008/01/15 21:58
Q: 東京農工大学 佐藤勝昭様
はじめまして。
S**社のM**と申します。
公開の際は匿名でお願いいたします。
分からない点を調べている際に先生のHPを拝見し、質問させていただきたく思 い、メールさせていただきました。

主な半導体の運動量行列要素の経験式や実験データが出ているサイトや文献を 教えてください。

お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
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Date: Tue, 15 Jan 2008 17:49:50 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 小生は、半導体レーザや量子井戸レーザなどの発光効率について研究したこと がありませんので、具体的な半導体の運動量行列要素の式を扱ったことがありませんが、わかる範囲でお答えします。
 東大物性研の近藤高志先生の「ニューマテリアル特論」の
3つめの講義ノートに 運動量行列要素の式が書かれています。このなかの式(36),(37)をご覧ください。
 また、以前、NTT基礎研の影島博之氏が、理論的な研究をしておられました。たとえば、
Hiroyuki Kageshima and Kenji Shiraishi:Momentum-matrix-element calculation using pseudopotentials; Phys. Rev. B 56, 14985 - 14992 (1997)
をお読みください。詳細は、影島氏に直接お尋ねください。
 以下に、この論文から、GaAs, ZB GaN, WZ GaNの価電子帯頂と伝導帯底の間の運動量行列要素を採録しておきます。
単位はatomic units (hbar/aB)

GaAs

 ΓXLU
補正あり0.550.480.580.71
補正なし0.540.480.570.71
Suzuki, Uenomiya0.622   
(補正とはcore repair termの補正のことです。)

ZB-GaN

 ΓXLU
補正あり0.430.480.540.63
補正なし0.650.570.690.70
Suzuki, Uenomiya0.507   

WZ-GaN

 ΓKHAML
補正あり0.430.530.360.010.000.25
補正なし0.660.530.420.020.000.31
Suzuki, Uenomiya0.510     
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Date: Wed, 16 Jan 2008 21:20:12 +0900 (JST)
AA: 東京農工大学 佐藤勝昭様
お忙しい中、私の質問に答えていただきいありがとうございました。
 ぜひ、参考にさせていただきたいと思います。
 また、お願いをする時があるかもしれませんので、そのときは宜しくお願いいたします。
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1042. 分極と光学遷移

Date: Fri, 18 Jan 2008 03:16:25 +0900
Q: 佐藤先生
こんにちは。
T*大学大学院工学系研究科 博士課程1年のI*と申します。
(アップする時は大学名、名前ともに匿名でお願いします) 研究室にMO顕微鏡があり、使っている人がいますが、あまり 誘電率、ましてや光学遷移などは気にせずツールとして使われています。
磁気光学効果について詳しく調べようと考え、先生のHPの 過去の講義PPTを拝見させて頂きました。

実は私は以前農工大に所属しており、その時に他学科でしたが 佐藤先生の固体材料物性工学の講義を受けており、その時の事も 思い出して今回思い切ってメールさせて頂きました。
その時のノートや講義資料は今でも大変役立っていますが、 当時はこの疑問に至るほど理解していませんでした。それとは 程遠いところでつまずいていました。

今回思い切ってお聞きしたい事は、分極と光学遷移の、 「光と磁気」でいうと第4章4.3.4に関することです。
光の電界を摂動として扱い、その励起状態の波動関数を 基底状態の波動関数に取り込むことが分極である、という 事なのですが、実際にその励起状態への遷移が起きていないのに その軌道が取り込まれるとは、どういう事なのでしょうか?
電子が部分的にその軌道を回るようになるという事ならば、それは その軌道への遷移が起きているという事にはならないのですか?

すみません、どうしても疑問が解けないので、教えて頂ければ幸いです。 宜しくお願い致します。

昔のノートを引っ張り出してきて「光と磁気」も購入し 色々懐かしく思い出しながら勉強させて頂いております。
講義を受けていた当時は講義前半の磁性の基礎と、磁気光学効果の 現象論まではなんとかついていっていましたが、電子論はさっぱりでした。
今はその辺も少しずつ理解できるようになりました。
あの時他学科でしたが、佐藤先生の講義を受けていて本当に良かったと 実感しています。

長文失礼致しました。
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Date: Fri, 18 Jan 2008 11:15:35 +0900
A: I君、佐藤勝昭です。
 私の講義のことを覚えてくれていてありがとう。あなたのようにいってくれる と、教師冥利に尽きるというものです。
さて、ご質問の件ですが、量子力学の本質に関わることなので、短い文章では説 明できませんが、遷移が起きるということはreal processです。これに対して、 摂動で上の状態が混じり込んでくることはvirtual processです。real process では、励起エネルギーが必要ですが、virtual processでは摂動で中間状態が取 り込まれても、基底状態→励起状態→基底状態というかたちなので、エネルギーの 収支はゼロなのです。励起状態の軌道が取り込まれるということは、基底状態の 軌道の形が変わったというだけのことで、決して、励起状態の軌道を回ることで はないのです。
 1つの例として、半導体のバンドギャップ以下の光子エネルギーに対する光学 応答を考えましょう。バンドギャップ以下では、real processとしての光学遷移 が起きませんから、光子エネルギーは半導体にトランスファーされません。しか し、光は何も感じなかったかというと、半導体中では、屈折率をnとすれば光速 はc/nとなっていますよね。これは、価電子帯の電子が、virtual にバンド ギャップを超える遷移をおこして中間状態である伝導帯に行き、もう一度中間状 態からvirtualに価電子帯に戻ってきたために、光の吸収は起きないけれど、電 子分極がおき、光は電子分極を引きずりながら半導体中を進むので、速度がc/n になっているのです。
 おわかりになりましたでしょうか。
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Date: Fri, 18 Jan 2008 13:24:47 +0900
Q2: 佐藤先生
早速のお返事ありがとうございます。
そうすると、励起状態を仮想的な中間状態として扱い、エネルギーの 収支なしに、つまり基底状態のエネルギーを変えずに(量子化を保ちつつ) 基底状態の形だけが変わる事を説明するための考えが摂動という事 なのですね。

摂動は少し勉強しただけなのですが、ではポテンシャル井戸で井戸の底の エネルギーが変化するような摂動も、中間状態を仮想的に導入している のでしょうか?
また、「仮想的に」という事は、やはり実際のプロセスではなく、 本当にその軌道が取り込まれているかどうかは分かっていないのですか?

また、共鳴周波数を受けたときは実際の遷移が起きて電子は励起状態の軌道 を回るようになると思うのですが、ではそれ以上光のエネルギーが高くなった ときはどうなるのですか?
もっと上の準位を摂動で取り込むようになるのでしょうか?

沢山聞いてしまい、すみません。
宜しくお願い致します。
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Date: Fri, 18 Jan 2008 13:55:51 +0900
A2:I君、佐藤勝昭です。
 量子力学では、すべてのプロセスは確率的に起きています。
仮想的に取り込まれているというのは、ある確率で基底状態に部分的に励起状態 が取り込まれているがエネルギーの散逸をともなわないことを表しています。本 当に取り込まれているといってよいのです。軌道の形が変わるということは、あ る確率で、別の軌道を運動しているのです。仮想プロセスの場合、エネルギーの 収支を伴わないだけです。
 共鳴周波数より光エネルギーが高くなった場合には、その準位も、それ以上の 準位も摂動の中間状態になり得ます。
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Date: Fri, 18 Jan 2008 14:18:12 +0900
Q3: 佐藤先生
何となく分かったような気がします・・・
摂動論についてよく勉強したらもっと分かるように思うので、 勉強したいと思います。
しつこくお聞きして申し訳ないのですが、では、その仮想過程は 実際に中間状態を経ているのですか?
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Date: Fri, 18 Jan 2008 16:16:40 +0900
A3: I君、佐藤勝昭です。
 量子力学では、観測が状態を決定してしまうので、実際に中間状態にあるかの 観測をしたとたん状態が見えなくなってしまいます。
だれも確認できませんが、中間状態を経ていると考えれば、説明がつくというこ とです。
 このような例は他にもあります。たとえば、電気双極子禁止で磁気双極子許容 の遷移は本来弱い吸収しかもたらさないはずなのに、強く観測されることがあり ます。これは、スピン軌道相互作用の摂動で、エネルギー的に近くにある電気双 極子許容遷移の励起状態が仮想的に混じることで、見かけ上電気双極子許容遷移 になっているという例です。たとえば、Ruby におけるR線のCr3+の4A2→2T2+2Eの 遷移が4T2から強度をもらっている例がこれだと考えられています。この場合、 決して中間状態にリアルに行っているわけでなく、軌道状態を借りているだけな のです。
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1043. 銀接点に生じる硫化銀被膜について

Date: Fri, 18 Jan 2008 13:30:48 +0900
Q: HPを見て初めてお尋ねします。
私、小川は電気接点を製造販売するT*(株)の技術担当です。
純銀の電気接点間の接触抵抗値を論じる必要が起き、大気中で銀の変色原因である硫 化皮膜が問題となりました。皮膜抵抗の計算式と硫化銀の固有抵抗値を教えて頂けれ ば幸いです。其の他本件で留意すべき点があればご指導願います。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 00:21:05 +0900
A: 小川様、佐藤勝昭です。
 銀の電気接点の硫化の問題は深刻で複雑な問題です。硫化銀は半導体 なので抵抗値は不純物・欠陥・温度に依存するので、固有抵抗値は定義 できません。硫化銀と銀の間にはショットキー接合ができてダイオード になっています。従って、電流電圧特性は直線ではなく、整流性が見ら れます。
 この問題を扱った論文としては、下記のものがお勧めです。
G.Russ: Electrical Characteristics of Contacts Contaminated with Silver Sulfide Film; IEEE Transactions on Parts, Materials and Packaging Volume 6, Issue 4, Dec 1970 Page(s): 129 - 137.
これによると、「銀電極の電気特性は接点表面に成長する硫化銀の薄膜 によって損なわれる。一方、または、両方の電極が純銀または銀を含み、 かつ、硫化銀が一方または両方の電極に形成される場合、電気特性は大 きく劣化し、汚染された接点においては見出された最も複雑なものであ る。硫化した接点の電気特性についての最近の研究によれば、非線形 電流電圧特性および抵抗の時間依存によって、接触抵 抗は増加し、かつ接点電圧の極性に依存する。」として、説明のための 理論を展開しています。この理論では、硫化銀の半導体特性、銀の陽イ オンの高い移動度、トンネル効果、電気力による伝導チャネルの広がり、 温度によって変化する硫化銀の結晶構造などに基づいています。
 このように銀接点の硫化銀形成の問題点は単純ではありません。この 論文を取り寄せてお読みになることをお勧めします。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 11:06:07 +0900 AA: 早々に回答を頂きまして心から感謝しております。推奨いただきました論文を取り寄せて よく勉強します。今後ともご指導のほどよろしくお願いします。
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1044. テルル化ビスマスの屈折率と硬度

Date: Fri, 18 Jan 2008 19:18:15 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
K**大学大学院のN*と申します.
(申し訳ありませんが,HPアップ時は学校名,氏名とも匿名でお願いします.)
インターネットでいろいろ調べているうちに先生のHPにたどり着き,メールで 質問をさせていただくことにしました.

現在,熱電半導体であるビスマステルライド(Bi2Te3)を使用して研究を行って います.
ビスマステルライドの屈折率と硬度を文献から調べていたのですが見つけきれず にメールいたしました.
この2つの物性値が載っている文献等をご存知でしたら教えていただけないで しょうか.

突然のメールで申し訳ありませんが,よろしくお願い致します.
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Date: Fri, 18 Jan 2008 22:03:33 +0900
A: N君、佐藤勝昭です。
 Bi2Te3の屈折率は、古くから調べられており、
I G Austin: The Optical Properties of Bismuth Telluride;
Proc. Phys. Soc. 72 (1958) 545-552
によりますと、The refractive index, determined from interference fringes, is 9.2 in the region 8-14μ.
となっています。
 最近のデータでは、
H.E.A. El-Sayed: Structural and optical properties of thermally evaporated Bi2Te3 films;
Applied Surface Science, Volume 250, Issues 1-4, 31 August 2005, Pages 70-78
に載っています。これによると
Bi2Te3 is a high refractive index material (n has values of 4.7 -8.8 in the wavelength range 2.5-10 μm)
となっています。
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 InxBi2-xTe3のVickers 硬度は、
G. R. Pandya, S. R. Bhavsar, C. F. Desai: Temperature Dependence of Vickers Microhardness and Creep Study of InxBi2-xTe3 Crystals; Turk. J. Phys, 24 (2000) 13-19
図1を添付しておきます。x=0すなわちBi2Te3のHvは26kg/mm^2です。

 Bi2Te3のマイクロハードネスは、
Saji Augustine and Elizabeth Mathai: Dislocation, annealing and quenching effects on the microindentation hardness of Bi2Te3 and Bi2Te2.9Se0.1 single crystals;
Materials Characterization, Volume 52, Issues 4-5, July 2004, Pages 253-262
に載っているようです。
大学に行かないとこの論文が手に入らないので、自分で図書館に行って 探してください。
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Date: Fri, 18 Jan 2008 23:09:11 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
K大学のNです.
早速のご解答ありがとうございました.
教えていただいた文献をきちんと読んでみたいと思います.
ありがとうございました.
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1045. グラファイトとダイヤモンドの点欠陥の活性化エネルギー

Date: Sat, 19 Jan 2008 15:33:58 +0900
Q: 東京農工大学 佐藤勝昭 様
はじめまして。私はK大学大学院で材料物性学を学んでいるY*というものです。
ホームページを見て質問をさせていただいています。
Webでは匿名でお願いします。

私は共有結合性物質における低エネルギーでの電子励起効果というテーマで、透 過型電子顕微鏡を用いてグラファイトとダイヤモンドに電子線を照射したときの 構造変化について調べ、原子移動についての知見を得ることを目的としています。

グラファイトとダイヤモンドは低電子励起されると表面原子結合が切断され表面 原子の脱離や空格子点の生成・成長が誘起され表面に穴があきます。
また、試料温度を上げて実験すると、温度が高ければ高いほどグラファイト、ダ イヤモンドともに表面の穴が減少します。この原因は電子線照射によってグラ ファイトとダイヤモンドにできた点欠陥が温度が上がって再結合したためだと考 えていますが、グラファイトとダイヤモンドでは穴の減少の過程に差があります。

この原因は、グラファイトの点欠陥とダイヤモンドの点欠陥の活性化エネルギー とそれぞれの拡散係数の違いによるものだと考え、論文や参考書を読みました。
しかし、拡散係数はみつけることができず、活性化エネルギーは論文によって値 がばらばらです。

そこで、グラファイトとダイヤモンドの拡散定数が載っている論文もしくは参考 書などがあれば教えていただけないでしょうか?

よろしくお願いします。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 16:47:01 +0900
A: Y君、佐藤勝昭です。
 天然グラファイトの原子拡散係数は1950年代に研究されています。
Manuel A. Kanter: Diffusion of Carbon Atoms in Natural Graphite Crystals; Phys. Rev. 107, 655 - 663 (1957)
KanterはArgonne National Lab.の研究者でデータはカーボンの同位体 を使って調べたもので、信頼性があります。それによると、
The volume diffusion coefficient for graphite is D=40f^2exp[(- 163 000±12 000) / RT], where f is a geometry factor used because of the irregular shape of the crystals and is estimated to be between 0.1 and 0.6.
従って、活性化エネルギーは163000±12000[cal/mol]=0.4036±0.024[eV/atom]というこ とになります。
また、グラファイトの欠陥の拡散の活性化エネルギーは、日本のグルー プによってHeイオン照射によるラディエーション・ダメージを使って研 究されています。
E. Asari, M. Kitajima, and K. G. Nakamura, T. Kawabe: Thermal relaxation of ion-irradiation damage in graphite; Phys. Rev. B 47, 11143 - 11148 (1993)
Asariは金材研(現NIMS)の研究者です。これによると
Results indicate that two relaxation processes occur, i.e., a fast-rate process with an activation energy of 0.89±0.10 eV and a slow-rate process at 1.8±0.3 eV. The fast and slow processes are, respectively, suggested to be a recombination of vacancies -interstitials and a vacancy clustering process which occurs during diffusion of vacancies in the graphite plane.
と書かれています。
 一方、ダイヤモンドについては入手できるデータがありません。
理論の論文があるようです。
J. Bernholc, A. Antonelli, T. M. Del Sole, Y. Bar-Yam and S. T. Pantelides: Mechanism of self-diffusion in diamond; Phys. Rev. Lett. 61, 2689 - 2692 (1988)
に実験のデータが引用してあると思われますので、図書館に行って読 んでみて下さい。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 17:02:31 +0900
Q2: 東京農工大学 佐藤勝昭 様
早々のお返事ありがとうございます。
教えていただいた論文を読ませていただきます。
さらに質問なのですが、アレニウスの式中の頻度因子(frequency factor)はグラ ファイトとダイヤモンドでは異なるのでしょうか?
もし異なるのならばその値を教えていただけないでしょうか?

次々と質問をして申し訳ありませんがよろしくお願いします。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 18:49:39 +0900
A2: Y君、佐藤勝昭です。
 ダイヤモンドとグラファイトではおそらく異なると思います。ダイヤ モンドは等方性ですが、グラファイトでは、面に垂直か面内かで異なる はずです。申し訳ないが、具体的な数字は持ち合わせません。
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Date: Sat, 19 Jan 2008 19:08:19 +0900
A2': Y君、佐藤勝昭です。
 さきほどの回答は、拡散係数Dの温度変化の活性化エネルギーでした。 あなたの、最初の質問を読み返してみると、欠陥生成の活性化のアレニ ウスプロットにおける、活性化エネルギーのことでしたね。
 そのつもりになって探してみると、よいサイトが見つかりました。 「照射によるグラファイト格子乱れの熱緩和」
http://www.rada.or.jp/database/home3/normal/ht-docs/member/ synopsis/110001.html
ですが、これは、1998年、前金属材料研究所(現物質材料機構)でHOPG という高配向性グラファイトにおいて、高エネルギー粒子照射による欠 陥生成を調べている研究です。
 ぜひ参考にされてください。
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Date: Wed, 23 Jan 2008 13:31:47 +0900
Q3: 東京農工大学 佐藤勝昭 様
お忙しいと思われますがもう一つだけ質問させて下さい。

グラファイトとダイヤモンドが低電子励起され表面に穴があく原因を、オージェ 緩和過程の終状態おいて生成した二正孔によるクーロン反発力が原因だと考えて いるのですが、グラファイトとダイヤモンドでは結合の違いによりクーロン反発 力に違いはでるのでしょうか?
もしあるならダイヤモンドのσ-σのクーロン反発力、グラファイトのσ-σのクーロ ン反発力、グラファイトのσ-πのクーロン反発力などの具体的な値があれば教え てください。

よろしくお願いします。
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Date: Wed, 23 Jan 2008 21:37:44 +0900
A3: Y君、佐藤勝昭です。
 低エネルギー電子励起で穴が空くのですね。ご質問の件は、おそらく 理論家にお願いして、第1原理計算で調べるしかないと思います。そこ いらに転がっているデータでは、役に立たないと思います。たとえあっ たとしても、疑って掛かる必要があると思います。Y君が自ら計算す べきでしょう。
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Date: Thu, 24 Jan 2008 10:00:48 +0900
AA: 東京農工大学 佐藤勝昭 様
わかりました。やはりそんなに簡単にわかるものではないのですね。
一度、第一原理計算の論文や教科書を読んでみます。
ありがとうございました。
K大学大学院機械工学専攻 Y
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1046. 石英ガラスの緑色発光

Date: Wed, 23 Jan 2008 16:53:22 +0900
Q: 佐藤先生
初めてお便り致します。
私、S*社のT*と申します。
公開の際は匿名にてお願い致します。

弊社で製造しております合成石英で、稀に248nmのエキシマレーザーを 照射した際、緑色に発光するものがございます。
この原因を調査するため、成分(Fe、Al、K、Ca、Na、Cu、Zn)分析を実施しても 検出下限以下(1ppb)でした。
また、未発光品と比較のため、昇温脱離ガス分析(<600℃)にかけても 差は認められませんでした。

このような発光は何に起因するものなのでしょうか?
何か知見が有ればご教授下されば幸いです。
お忙しいとは思いますが、何卒よろしくお願い致します。
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Date: Wed, 23 Jan 2008 23:52:03 +0900
A:T様、佐藤勝昭です。
 不純物が検出されないのに、発光があるとすれば、何らかの格子欠陥 が関与していると考えるのが自然です。
 石英ガラスの発光現象については、湘南工科大学の長沢可也教授がご 専門です。
長沢先生のグループのお仕事のリストを調べていましたら、
Yuryo Sakurai and Kaya Nagasawa: Green photoluminescence band in γ-irradiated oxygen-surplus silica glass;
J. Appl. Phys. 86, 1377 (1999)
が目に留まりました。酸素過剰で出ると云うことのようです。
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Date: Thu, 24 Jan 2008 07:13:02 +0900
AA: 佐藤先生
お忙しい中、早速のご教授有り難うございました。
お教え頂きました論文を読んでみたいと思います。
今後ともよろしくお願い申し上げます。
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1047. 金属中の電磁界の解析

Date: Thu, 24 Jan 2008 16:45:04 +0900
Q: 東京農工大学 佐藤勝昭教授

はじめまして。
K高専専攻科2年のM*と申します。
「物性なんでもQ&A」を拝見し、質問をさせて頂くことにしました。
学校名も名前も匿名でお願いします。

 私は現在学校で、ある研究をする準備としてドルーデ金属(銅)中に 電磁波を入射するシミュレーションを行っています。
そこで電磁波(波長80nmのsin波)を真空から銅に入射させたところ、 透過波は減衰していくのですが、銅中の境界近くの電界が振動を始めます。
この現象は物理的におかしいのでしょうか。
そもそも銅のプラズマ波長は約140nmなので、波長80nmの波は銅を減衰なく 伝搬するのでは?とも思います。
銅の誘電率はドルーデ分散を用いています。
私の文だけでは分かりづらいと思い、
シミュレーション結果を添付させて いただきました(ただし、領域の半分より左側が真空、右側が銅、横軸:位置 、縦軸:電界です)。

大変お忙しい中申し訳ありません。
どうぞろしくお願い致します。
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Date: Thu, 24 Jan 2008 19:21:39 +0900
A: M*君、佐藤勝昭です。
 ご質問の研究は高専の専攻科の研究ですよね。まずは、指導教員の意見を聞い てください。
それでもらちがあかないときには一緒に考えてみましょう。
あなたの質問では、前提条件がわからないので、お答えできません。
(1)図の横軸の単位は何ですか?メートルですか?
(2)半分が真空ということですが、2.5e-7の位置より左ですか?すると振動は 真空側に見られるのですか。
(3)計算には、FDTDを使っているのですか?FDTDのソフトは、気をつけない と、ナノ領域には適用できないという研究があります。
(4)80nmの電磁波とは極紫外光ですよね。そのような光に電磁界解析すること に意味はあるのでしょうか。
(5)銅のプラズマ波長140nm(8.86eV)というのは,バンド間遷移を考えない場合 のプラズマで、実際には、バンド間遷移のために誘電率の実数部・虚数部は複雑 なスペクトルを示します。単純なDrude分散など成り立ちません。現実的なパラ メータを使うべきでしょう。
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Date: Thu, 24 Jan 2008 21:31:11 +0900
Q2: 佐藤勝昭 教授
Mです。早速のお返事ありがとうございます。
指導教員の意見も聞いたのですが、どうしてもらちがあきません。
質問の前提条件は以下の通りです。

(1)図の横軸の単位は[m]です。
(2)ちょうど横軸2.5e-7[m]から右領域を銅に設定してあります。
よって、振動は銅側に見られているものと思います。
(3)CIP法という方法で解析しています。私たちは、CIP法をFDTD法に 代わる電磁界解析手法として注目しています。しかし現段階では、CIP法に よる電磁界解析を分散性媒質に適用する方法が確立されていません。
そこで私は、その方法を模索しています。模索した結果、FDTD法で 分散性媒質を解析する際に用いられるRC法を、CIP法でも用いることに しました。送付した解析結果は、この方法を用いたものです。
比較のためFDTD法でも同じ条件で解析した(自作プログラムで)ところ、 やはり同じ結果が得られました。解析結果は物理的におかしな気がするのに、 CIPでもFDTDでも同じ結果が出たということで悩んでいます。
(4)私は光ナノテクノロジーで必要となる電磁界解析に、CIP法を用いる ことを目標としています。そのための一段階として、CIP法を分散性媒質にも 適用できるようにしようとしています。80nmの電磁波は、分散性が考慮できた かどうかを調べるために用いました。
(5)私の勉強不足でした。ただ、現段階ではDrude分散で考えたいと思います。

Drude分散を持つ銅に、80nmの電磁波が入射した場合の電磁波の応答は、私の 解析結果のようになるのでしょうか。全く異なるのでしょうか。

どうぞよろしくお願い致します。
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Date: Fri, 25 Jan 2008 10:42:19 +0900
A2: M君、佐藤勝昭です。
 誘電率の式としてどのようなものをお使いですか。
純粋に自由電子のみを考えたDrudeの式は、
 ε=1-ωp2/ω(ω+i/τ)
と書けます。もしτ→∞(散乱を考えない)とすると
 ε=1-ωp22
となります。この場合は、ω<ωp ではε<0となり、このときは反射率が100%となり、 電磁波は金属の中に入り込めません。
ω>ωp になると、一部の電磁波は界面で反射され、残りは中に入ります。
τ→∞ということは、損失がないので減衰することもありません。
もし金属の厚みが有限であれば、進入した電磁波は裏面で反射して戻ってきます。 この戻ってきた電磁波と入射した電磁波が干渉することによって、複雑な振る舞 いをするはずです。
τとして有限の値をとった場合、金属にはいった電磁波は減衰しますが、金属の 厚みが無限大でない限り反射した波が来ますから、干渉が起きるでしょう。
 従って、計算するときの金属のサイズを考えないと、端っこから必ず反射波が 来るので干渉が出てしまうでしょう。

実際には、バンド間遷移がありますから、ε=1-ωp2/ω(ω+i/τ)の1のかわりに、 バンド間遷移に基づく誘電率の分散が加わります。
「銅」という具体的な系でやるのであれば、きちんとした複素誘電率の値を使う べきでしょう。
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Date: Fri, 25 Jan 2008 13:16:39 +0900
Q3: 佐藤勝昭 教授
Mです。丁寧ななご回答ありがとうございます。

誘電率はτの値が有限の場合のDrudeの式を用いています。
銅の厚みは、入射地点から右側は半無限であると設定しているため、 裏面からの反射の影響とは考えにくいと思っています。
私のプログラム、あるいは考え方のどこかに誤りがあるようです。 教授がおっしゃることを踏まえ、少し考え直して、新たに取り組んで みたいと思います。

お忙しい中、本当にありがとうございました。
感謝します。
これからも頑張ってください。
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Date: Fri, 25 Jan 2008 14:34:17 +0900
A3: M君、佐藤勝昭です。
 添付図を見る限り、戻り電磁波があるとしか考えられません。有限の数のセル に分けて計算している限り、境界面があります。半無限というのを計算機ではど のような扱いにしているのでしょうか。
ナノサイズでの電磁波解析の数値解析については、東大の宮野研の田丸先生のす ぐれたお仕事があります。
田丸博晴:電磁場の数値計算(FDTD法)
石原照也 監修「メタマテリアル -最新技術と応用-」(基礎編 第3章)、シー エムシー出版 (2007).

田丸博晴:単一金属ナノ粒子の光散乱特性:数値計算による実験の評価
山田淳 監修「プラズモンナノ材料の設計と応用技術」(第10章)、シーエムシー 出版 (2006).
などをよくご参照されるとよいでしょう。
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1048. 原子の電子準位の状態数

Date: Sat, 26 Jan 2008 18:24:10 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
初めまして、A社で機能材料開発に携わっているO*です。
先生のHPを拝見させて頂きました。
学生時代、先生編著のオーム社「応用物理」でお世話になりました。
さて、キッテル著の「第2版熱物理学」で、分からないところがありますので、 ご教授下さい。
図1.1に、水素、リチウム、ホウ素の(全系の)エネルギー準位が低い方から示 してあります。
水素の場合は、エネルギーの低い方から状態数が、2→8→18→32→50→、となっており、 これは、それぞれ、主量子数1→2→3→4→5→、に対応することが分かります。
(水素原子の場合は、1電子でクーロン型ポテンシャルなので、エネルギーが  主量子数のみで決まると理解しています。)
また、リチウムについては、2→6→2→6→10→2→6→24→、で、最後の2→6→24のところの 2が(1s)(2s)2、24が(1s)(2s)(2p)から来ると考えていますが、6のみ分かりませ ん。
それから、ホウ素については、6→12→2→2→10→、となっており、最初の6が (1s)2(2s)2(2p)から来ているだろうことは分かりますが、12からが分かりません。
フントの法則も考える必要があるかと思い計算してみましたが、うまくいきませ んでした。

お忙しいところ申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
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Date: Sat, 26 Jan 2008 22:00:41 +0900
A:O様、佐藤勝昭です。
 キッテルの「第2版熱物理学」は手元にないのですが、一応、分かる範囲でお答えします。
まず、水素もリチウムも、O様が書かれているように1電子系ですから、比較的簡単です。
水素では、純粋に主量子数で考えて結構です。
リチウムの場合、Condon-Shortley: The Theory of Atomic Spectraによれば、
基底状態は2sで励起状態は, 2p, 3s, 3p, 3d, 4s, 4p, 4d+4f, 1s2
となっています。状態数は、基底状態2sが2, 励起状態は2pが6, 3sが2, 3pが6, 3dが10, 4sが2, 4pが6, 4d+4fが24です。

ホウ素は3電子原子です。多電子系の電子状態は多重項で考えなければ なりません。Condon-Shortleyでは
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電子配置多重項全角運動量J (括弧内は状態数)状態数
2s2 2p2PJ=1/2(2), 3/2(4)計6(基底状態)
2s2 3s2SJ=1/2(2)計2
2s 2p24PJ=1/2(2), 3/2(4), 5/2(6)計12
2s2 3d2DJ=3/2(4), 5/2(6)計10
2s2 4s2SJ=1/2(2)計2
2s2 4d2DJ=3/2(4), 5/2(6)計10
2s2 5d2DJ=3/2(4), 5/2(6)計10
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これだと、6→2→12→10→2→10→10となり、 6→12→2→2→10ではありませんね。

一方、
米国NISTのダイアグラムでは
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電子配置多重項全角運動量J (括弧内は状態数)状態数
2s2 2p2P0J=1/2(2),3/2(4)計6(基底状態)
2s 2p24PJ=1/2(2), 3/2(4), 5/2(6)計12
2s2 3s2SJ=1/2(2)計2
2s 2p22DJ=3/2(4), 5/2(6)計10
2s2 3p2P0J=1/2(2), 3/2(4)計6
2s2 3d2DJ=3/2(4), 5/2(6)計10
2s2 4s2SJ=1/2(2)計2
2s2 4p2P0J=1/2(2), 3/2(4)計6
2s2 4f2F0J=5/2(6), J=7/2(8)計14
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従って、6→12→2→10→6→10→2→6→14 となります。少し、近づきましたね。
実験で得たスペクトルをどの準位にアサインするかは、高い励起状態で は、かなり不確定性があるのではないでしょうか。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 13:23:37 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
早速のお返事どうもありがとうございます。
いろいろと勉強になりました。今回、分かったことは以下の通りです。
(1)キッテル本の図の励起状態の数は実験データである。
 (本には明確な記載が無いので、少々不親切だと思います。)
(2)多電子系において、励起状態に、電子が主量子数の異なる状態に移るものが
 含まれる場合、フントの法則が使えないため、励起状態をエネルギーの低い方から
 並べるのは困難。
 (私の書いた、リチウムの励起状態の順序誤っていました。主量子数n=4は考 えていませんでした。)
それから、学生時代と、少し間があって現在と、磁性分野に携わっています。
応用技術も大切ですが、磁性の基礎も開発には欠かせないので、再勉強中です。
(実験屋には不必要かも知れませんが、守谷理論とか式を追うだけでも難しいです。)
周りには磁性の理論を深いところまで分かっている人がいないので、 今後とも宜しくお願い致します。どうも'ありがとうございました。
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1049. 構造複屈折

Date: Sat, 26 Jan 2008 23:23:29 +0900
Q:佐藤勝昭先生
 K社のMです。今回は構造複屈折に関するものです。
本メールの最後に書いている本のAppendix Fに「 Form Birefringence of Composite Media」の記述があります。これは屈折率n1の媒質の中に 屈折率n2の楕円体状の等方性光学体がある方向に配向して分布して いる系の異方性屈折率を扱っています。式の中に楕円体の反磁界係数が 使われていることから単磁区微粒子磁石(ESD磁石)のような系だと 思います。
 教えていただきたいことはこの系と「構造複屈折」として扱われる系 とは全く別物なのか、あるいは広義では同じものなのか、ということ です。
 よく言われるように、構造複屈折の系は一次元のサブ波長周期構造を 持つことが特徴となっています。一方、上のComposite Mediaではサブ 周期構造はなんら言及されておりません。しかし、どちらの系でも方向 によって偏光の伝播速度が違うという点では同じなのだから、広い意味 ではどちらも「構造複屈折の系」ではないのかと職場で議論になって いるのです。
 よろしくお願い致します。

Pochi Yeh and Claire Gu著’Optics of Liquid Crystal Displays’ John Wiley & Sons,Inc,1999、
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Date: Sun, 27 Jan 2008 10:28:28 +0900
A:M様、佐藤勝昭です。
 私は、液晶業界のことはあまり詳しくないのでこの分野での用語の統 一性について議論するつもりはありませんが、Form birefringence (形 状複屈折)とStructural birefringence(構造複屈折)は基本的に同じで す。
 媒体がサブ波長の要素から構成されている場合の光学的なレスポンス を考えるアプローチとして色々な考え方があります。古くは、Maxwell- Garnetの理論に代表される実効誘電率の取り扱いがあります。最もポピ ュラーな扱いは分散している微粒子が球体の場合ですが、楕円体にも一 般化され、通常は楕円体の軸がランダムに配向しているとして、補正項 の形で取り扱われます。この補正項に反電場係数qが使われます。
 ご質問の中にあるYeh, Guの書物は持っていませんが、「屈折率n1の 媒質の中に屈折率n2の楕円体状の等方性光学体がある方向に配向して分 布している系の異方性屈折率」の扱いは上記の実効誘電率の扱いを拡張 して異方性を導いているのではないでしょうか。
 コレステリック液晶のように周期性があるときは、ランダムな分布の かわりに正弦波による展開が使えるので取り扱いが簡単になります。こ のような場合に、日本の文献では「構造複屈折」という用語を使ってい ますが、先程の本の著者は、周期性のある場合もForm birefringenceと いう用語を用いています。例えば、
C.Gu and P.Yeh: Form birefringence dispersion in periodic layered media;Optics Letters vol.21, p.504 (1996)
をお読み下さい。
 平均的な誘電率の代わりに、マクスウェル方程式において、微粒子の 散乱をきちんと扱って、全体的な光学応答を調べるアプローチがありま す。この理論の代表がMie 散乱の理論です。この場合は、波長に近い場 合も扱うことができます。
 Maxwell方程式の厳密解とForm birefringenceとは、構造の単位が波 長より十分小さいときは同じ結論が導かれます。
例えば、
網盛、鈴木:光誘起型二軸性コレステリック液晶の光学特性モデルに関する研究:Fujifilm Research and Development No.52, p.42 (2007)
をお読みになっては如何でしょうか。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 13:11:09 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生、早速のお返事ありがとうございます。ご紹介していただいたGu&Yehの文献をすぐ取り寄せます。

Form birefringence (形状複屈折)とStructural birefringence(構造複屈折)は基本的に同じです。
やはりそうですか。用語が不統一になっているわけですね。
ご質問の中にあるYeh, Guの書物は持っていませんが、「屈折率n1の
媒質の中に屈折率n2の楕円体状の等方性光学体がある方向に配向して分
布している系の異方性屈折率」の扱いは上記の実効誘電率の扱いを拡張
して異方性を導いているのではないでしょうか。

 まさにその通りです。局所電場の話から始まっています。

ところで私が判断しかねているのは、「周期性」と「サブ波長サイズ」の二つは 構造複屈折の必須条件なのかどうかということなのですが、先生の説明全体を 読むと二つとも必須条件ではないように思えます。
たとえば、
コレステリック液晶のように周期性があるときは、ランダムな分布の かわりに正弦波による展開が使えるので取り扱いが簡単になります。
周期性は単に取り扱いを簡単にしてくれる因子であって構造複屈折と 呼ばれる現象の本質とは関係ないと読めるのですが、こういう理解で よろしいでしょうか。

この理論の代表がMie 散乱の理論です。この場合は、波長に近い場
合も扱うことができます。 Maxwell方程式の厳密解とForm birefringence
とは、構造の単位が波長より十分小さいときは同じ結論が導かれます。


これらの文からは、粒子サイズがサブ波長かどうかも本質的なことではない と読めるのですが、この理解でよろしいでしょうか。実用上はサブ波長で ないと透明にならないのでその場合がよく取り扱われるということだけの ように思えます。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 15:10:42 +0900
A2: M様、佐藤勝昭です。
 不均一媒体の光学応答は、粒子サイズがサブ波長かどうか、周期性を もつかどうかは本質的なことではありません。ただ周期性のある系は扱 いやすいし、わかりやすいという利点があります。また、周期構造を扱 う場合、サブ波長でないと干渉や回折の効果でフォトニックギャップな どの問題があり、実効的な誘電率の近似が使えないというだけのことで す。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 22:19:31 +0900
AA: 佐藤先生
やはり本質的なことではないのですね。これで疑問が晴れました。ありがとうございました。
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1050. 酸化アルミによる酸化チタン光触媒作用の増強

Date: Sun, 27 Jan 2008 13:00:37 +0900
Q: 佐藤先生こんにちははじめまして。
I高校Iと言います 光触媒についての課題研究をやってます。再生繊維にTiO2だけを 加えたものとTiO2+Al2O3を加えたものの2種類作りエチルバイオレット水溶液にい れて紫外線を照射してその水溶液の浄化率を分光光度計で計って値をとっているんで すけどTiO2だけのものよりTiO2+Al2O3を加えたものの方が触媒の効果がよく進んで いますしています。どうしてAl2O3を加えたら触媒の効果が上昇したのでしょうか。
もしよろしければ回答お願いします。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 15:43:46 +0900
A:I君、佐藤勝昭です。
 Web掲載の際はイニシャルにしますから、質問するときは、氏名、高 校名、学年を書いてください。エチケットですよ。
 光触媒の研究は、クラブ活動でやっているのですか。実験結果は、面 白い結果が出ていますね。
 お答えする前にお伺いしたいのは、TiO2やAl2O3をどのようにして繊 維に付着させているのかということと、どのような形態で付着している かということです。
 といいますのも、TiO2とAl2O3が別々に存在した場合、Al2O3には光触 媒作用がほとんど無いので、光触媒作用を強める効果がないからです。
もし、例えば、Al2O3が凹凸のある構造として繊維に付着し、そこにTiO2が絡 まっているならば、TiO2の付着量が増加するようなことが考えられます。
 また、TiO2の上にAl2O3が覆っていたとすると、TiO2は屈折率が高く そのため反射率も高いのですが、Al2O3膜が間に入ることで反射防止コ ーティングの働きをして、たくさんの光をTiO2の中に入れることができ たということも考えられます。もっとも、スッポリとAl2O3でくるんで しまうと水との反応が出来なくなるので、光が来る側だけが覆われてい る必要がありますが・・。
 再生繊維にTiO2を付着したものと、TiO2+Al2O3を付着したものの電子 顕微鏡写真が撮れないでしょうか。日本電子(株)に依頼すれば、SEM を使わせてくれます。竹橋の科学技術館でも、SEMを使わせてくれる かもしれません。指導教員を通じて相談してご覧なさい。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 18:24:40 +0900
Q2: I*高校2年のI*と申します。お返事ありがとうございます。説明不足ですいませ ん。TiO2とAl2O3の付着のさせ方ははシュバイツァー試薬を作り脱脂綿を溶かし、そ の溶かした液体にTiO2とAl2O3の粉末を入れてそして繊維状にしています。
  断面図は図のようになっていると思います。
一回学校にある電子顕微鏡で画像を撮ってみました。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 19:59:01 +0900
A2: I君、佐藤勝昭です。
 頂いた図だけでは判断できません。もし、繊維の外側にAl2O3が付着 し、繊維の内部にTiO2が付着していたとすると、外側のAl2O3が反射防 止コーティングの作用をしたとも考えられますね。
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Date: Wed, 30 Jan 2008 22:23:36 +0900
Q3: I高校のIです。お忙しい中たびたびすいません。この前いただいた返事のこと で繊維の内部にTiO2が付着していたとすると、外側のAl2O3が反射防止コーティング の作用をしたというのはどういうことでしょうか説明お願いします。担当教員に聞い てみたりパソコンで調べてもこれといったものが見つかりません返信できるようなら お願いします。
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Date: Thu, 31 Jan 2008 00:16:39 +0900
A3: I君、佐藤勝昭です。
 酸化アルミの屈折率は1.8程度(反射率は8%)、酸化チタンは2.6-2.9 程度(反射率は19%~24%)です。もし、Al2O3/TiO2の接合が出来ていた とするとAl2O3/TiO2界面での反射率は(1.8-2.6)^2/(1.8+2.6)^2=3.3%に 過ぎませんから、ほとんど酸化アルミの表面反射率になり、酸化チタン に光が入りやすいのです。
 一方、外側にAl2O3があり、内側にTiO2があったとすると、たとえ接 触して無くても、外部の反射率が低いので繊維内部に入る光が多くなっ て内部にあるTiO2の光触媒作用が増えるでしょう。
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1051. 子ども科学教室の説明(紙おむつ、バネ電話、簡単モータ)

Date: Sun, 27 Jan 2008 16:12:38 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭先生、お世話になります。

当方は、かわさきA工房と申しまして、一般人が子供たちに 科学に興味を持ち、実験をわかりやすく体験できるようにと 活動している任意団体です。
私はそこの代表をしているS**と申します。
機械科の出身ですが、不勉強な学生時代の余韻が残り今になって苦労しています。
(団体名・氏名はできれば匿名でお願いしますが、先生の都合に合わせます)
こちらのHPは大変高度な内容なので、時々勉強させていただいております。
つきましては、以下の実験の原理について原理説明をしてみましたが、自信があ りません。
場違いの感もありますが、教えていただける方が近くにいないので、 お手数ですがご指導いただければありがたい次第です。

@1.高分子ポリマーの不思議(紙おむつ)
子供用原理説明:高分子ポリマーは水を吸水してジェル状になります。これは高 分子ポリマーの小さい隙間から水が中に入り込み、浸透圧という圧力がある為、 水は外には出てきません。
このジェル状の水をもとの水にもどすには、塩を加えてやります。高分子ポリマ ーは、塩でその小さい隙間を大きくし、水を引きつける能力をなくしてしまいま す。
大人用原理説明:高分子ポリマーの分子中には親水基があり、水を含むと一部が 電離し、+イオンが離れ水中にでます。ポリマー中の親水基には-イオンが残っ ていて、+イオンと-イオンが互いに引き合う力により水分子が親水基にとらえ られます。これは、縦横に張り巡らされた高分子の編み目の中に水分子が水素結 合で押さえ込まれるためです。なので、圧力を加えても水分子をはじき出しませ ん。

@2.糸電話でエコーマシン<ばね電話>
子供用原理説明:糸電話では、糸が振動して音を伝えることができます。その糸 の代わりにばねを使ったのがばね電話です。ばね電話で話すと、自分の声が相手 にはエコーがかかって聞こえます。ばね電話では、音がばねの端ではねかえるの で、音がばねの中を往復して、エコーがかかって聞こえます。
大人用原理説明:ばねを伝わる縦波が端で反射され、往復によりエコーがかかる。

@ネオジム磁石で簡単モータ
子供用原理説明:磁界の中で電流が流れると電線には力が働くことが分かってい ます。ここで、磁石とくぎと電池を直列につないだ時、くぎに電流が流れるので 、くぎを回そうという力が働いています。
大人用原理説明:くぎの頭を磁石のN極につけ、くぎのとがった先を乾電池の+ 極につけて、乾電池からくぎをぶら下げます。くぎは磁化されて、くぎ全体から 磁力線が出てきます。くぎの中を移動する電子は、下から上向きです。くぎが回 転するのは「フレミングの左手の法則」により、くぎの表面の電子全てについて 、磁力線からローレンツ力を受けて回転運動になる。
以上ですが、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 16:51:43 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 青少年の理科離れが問題になっている昨今、このような啓蒙活動をな さっていることに同じ川崎市民として敬意を表します。
 書かれている3つとも、説明が難しい課題ですね。
@1 紙おむつ
 「浸透圧」は子どもに難しいかもしれませんね。
花王のHPの説明は、浸透圧を使っていますが、比較的わかりやすいですよ。
大人用の説明も、疎水基、親水基、水素結合などというとかえってわか りにくいので、高分子の網目構造によるくらいのほうがわかりやすいの ではないでしょうか?

@2 糸電話、バネ電話
 おっしゃるようにバネを伝わる縦波がエコーを生じさせていると考え て良いはずです。バネの縦波とは、バネの伸縮により疎密波として伝わ るので、ばね定数によって幅がありますが、速さは数m/s~数10十m/sと いう遅い速度になっており、エコーになるのです。もし、鉄の線をぴん と張ったのでは、弾性波の速度が速すぎてエコーになりません。このあ たりのことを、説明すべきでしょう。

@3 簡易モータ
 「磁石とくぎと電池を直列につないだ時」と書かれている実験装置の イメージがつかめませんこのようにすると釘はその中心軸の周りに回転 するのですか?この場合に、釘を流れる電流による回転力の説明は難し いです。釘は磁性体なのでそれ自身でネオジム磁石の磁界と相互作用す るので話がややこしくなります。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 18:47:50 +0900 (JST)
Q2: 佐藤勝昭先生
早速のご返事有難うございました。
川崎に御住まいとのこと、力強い限りです。

@1 紙おむつ
折りたたまれた分子の鎖が水をつけると、分子の鎖が伸びきるまで水を吸収する という絵と説明が分かりやすくて感心しました。さすが製造メーカのHPで、こ れを検索するのを忘れておりました。有難うございます。
@2 糸電話、バネ電話
弾性波は線材の中を進み、縦波はコイル状になった円形の面で進むということで しょうか。理解が足りなくてすみません。もう少し、説明をお願いします。
@3 簡易モータ
以下のHPを参考にしました
http://www.eneene.com/omoshiro/11tankyoku/

このHPにも説明がなされていますが、
この説明を見ると、くぎ全体がN極になるように見えるのですが、
実際はどう考えたらよいのでしょうか。

以上ですが、また質問させて頂いてもよろしいでしょうか。
今後とも、どうぞよろしくお願い申し上げます。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 20:28:33 +0900
A2: S様、佐藤勝昭です。
@2 バネを円柱と考えて、そこに伝わる弾性波として取り扱ってよい と思います。円形の面で進むと見ても良いでしょう。
@3 簡易モータ
ネオジム磁石は釘を磁化するだけのためなのですね。わかりました。
釘全体が1つの磁極になることはありません。磁石のNに着けたくぎの 頭はSになり、先端はNになるでしょう。磁化の方向と電流の方向が平 行ですから、ローレンツ力qv×Bは働きません。おそらく、不均一な電 流パスがあって、釣り合いからずれていて、回転トルクが生じるのでは ないでしょうか。この系は、ローレンツ力を理解するには、あまり、教 育的な系ではないようです。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 22:19:19 +0900 (JST)
Q3: 佐藤勝昭先生
@2 了解しました。有難うございます。
@3 簡易モータ
はい、くぎの先端がN極です。磁化の方向と電流の方向が平行なので、ローレン ツ力が働かないとのこと。残念です。何度か子供たちに見せました。するとすご い反応がありましたので、何とか説明を付けたかったのです。理解度が足りない ので、確認させてください。
磁化の方向と電流の方向が平行というのは、電池の-極がN極となり、そこから 使用電線と同じように弧を描きながら磁力線が出て磁石まで到達する。するとく ぎの部分では電流と磁力線が逆向きで平行になる。不不均一な電流パスというの は、くぎの先端で電池の+極の出っ張りとの接触部分と電線が釘に触る部分の電 流の流れに乱れが生じて、磁力線の方向に対して電流の方向が平行でなくなる場 合にフレミングの法則で力が発生する。
・・・というふうに考えてはおかしいでしょうか。
おっしゃるように教育的な題材ではないようですが、興味がありましたので、し つこくお伺いしました。すみません。
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Date: Sun, 27 Jan 2008 23:41:49 +0900
A3: S様、佐藤勝昭です。
 磁極から出る磁界ですが、一般には、釘の先端(N)から外の 空間を弧を描いて釘の頭(S)に繋がります。釘は長いので釘の中を通 反磁界は無視して良いと思います。釘の周りには、アンペールの法則に 従って同心円状に磁界が取り巻いています。従って釘の外には、電流に よる磁界と釘の磁化からの磁界とがベクトル的に加わっています。この 磁界を全部合わせると、その合力は釘と平行になるはずです。従って、 これでは、力が生じません。電線と釘の電気的接触は釘の横っ腹ですか ら電流には斜めの成分があるはずです。この不均一で非対称の電流のた めに回転力が生じていると考えるのが自然でしょう。
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Date: Mon, 28 Jan 2008 00:15:24 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生
遅くまでお付き合い頂き申し訳ありません。
ようやく自分なりに理解できました。
分かりやすく説明頂き有難うございました。

近くにお住まいと分かりましたので、 教えて頂くのにも元気が出てきました。
また質問させていただくことがあるかと思いますが、 我慢のお付き合いをお願い申し上げます。
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Date: Tue, 29 Jan 2008 22:23:07 +0900 (JST)
Q4: 佐藤勝昭先生
お世話になります。かわさきA工房のS*です。

質問です。
タコ糸の場合の糸電話と鉄線の場合の糸電話ですが、

タコ糸の場合:相手の紙コップに届いた時に反射をしないのは何故でしょうか。
鉄線の場合:弾性波のスピードが速すぎて反射がないとのことですが、どうして ばね電話では反射が起こりエコーになるのでしょうか。ここのところがどうも理 解力がないので、よく分かりません。

ご指導お願いします。
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Date: Tue, 29 Jan 2008 23:40:43 +0900
A4: S様、佐藤勝昭です。
 私の説明が悪くて誤解を与えたようですね。
糸でも鉄線でもバネでも反射はあります。何度か反射して減衰するまで の時間が問題なのです。人間がエコーとして捉えるには10-30msくらい の遅れがなければならないと云われています。今、1mの長さの糸電話を 考えましょう。エコーが聞こえるためには1往復しなければなりません から、長さは2mです。
ナイロンの音速は、縦波c1=2620m/s, 横波c2=1070m/s
鉄の音速は、縦波c1=5950m/s, 横波c2=3240m/s
ですから、遅い方の横波でも、2mの線を伝わる時間は、
ナイロンで1.87ms、鉄で0.62msです。ナイロンだと最低5往復、鉄だと 最低15往復位行き来しないと、エコーになりません。その間に音は減衰 してしまうのでエコーにならないのです。
バネの場合、ばね定数によって違いますが、疎密波の伝搬速度は数m/s ~数十m/sなので、5~50m/sとしておくと、2mの線を伝わる時間は、 400ms~40msとなり、十分エコーとして識別可能な時間になります。
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Date: Wed, 30 Jan 2008 01:53:27 +0900 (JST)
AA: 佐藤先生
遅くまでお付き合い頂きありがとうございます。
何度か反射して減衰するまでの時間が糸とばねで違い、糸は減衰が大きく音とし て聞こえなくなるので、エコーにならない。ばねは振動が伝わる時間と反射して くる時間差がちょうど良い時間差なのでエコーとして聞こえる。という理解をし ました。
簡単に出来る実験が、原理説明をしようとするとき こんなに大変なものとは考えていませんでした。
どうもありがとうございました。
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1052. ITOの仕事関数

Date: Tue, 29 Jan 2008 02:29:41 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭先生、初めまして。
Y*大学工学部応用化学科3年のY*という者です。(匿名 希望)
ITOのエネルギー準位をインターネットで探していた ところ、先生のHPにたどりつき、過去の質問を一通り見てみ ましたが、このような質問がありませんでしたので、質問させ ていただきました。

電極表面で何が起こっているのかを知るために、ITOのエネ ルギー準位を調べているのですが、見つかりませんでした。バ ンドギャップは4.1ev-4.8ev程度だということはわかったので すが、エネルギー準位はわかりませんでした。

もしご存知でしたら、教えていただけないでしょうか?または 、参考文献などを教えていただけたら幸いです。
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Date: Tue, 29 Jan 2008 10:53:40 +0900
A: Y君、佐藤勝昭です。
 あなたが知りたい「エネルギー準位」というのは、仕事関数(フェルミ準位と 真空準位とのエネルギー差)のことでしょうか。
 少し古い論文ですが、有機ELの開発者として有名なTang博士のグループが Applied Physics Lettersという雑誌に、4.4-4.5 eVであると述べています。
Y. Park, V. Choong, Y. Gao, B. R. Hsieh, C. W. Tang:
Work function of indium tin oxide transparent conductor measured by photoelectron spectroscopy
Appl. Phys. Lett. 68, 2699 (1996)
We used ultraviolet and x-ray photoelectron spectroscopy (XPS) and (UPS)
techniques to directly measure absolute values of vacuum work function
of indium tin oxide (ITO) thin films. We obtained a work function of
4.4-4.5 eV which is lower than the commonly cited value. These values do
not change substantially by heating and Ar ion sputtering. The atomic
concentrations of each element in ITO, measured with XPS, are also quite
stable under heat treatment and ion sputtering.

ITOというのは、In2O3とSnO2の混晶なのですが、仕事関数はその組成比や表面状 態(何と接触するかも含め)でも変わるはずです。表面状態を改善して仕事関数 を下げる試みは、現在にいたるまで続けられています。最近の論文ではSwedenの グループが、3.7eVという低い仕事関数を達成したと述べています。
W. Osikowicz, X. Crispin and C. Tengstedt, L. Lindell, T. Kugler, W. R. Salaneck:
Transparent low-work-function indium tin oxide electrode obtained by molecular scale interface engineering
Appl. Phys. Lett. 85, 1616 (2004);
A redox reaction between a monolayer of electron-donor molecules,
tetrakis(dimethylamino)ethylene, and the indium tin oxide (ITO) surface
results in a decrease of the ITO work function down to 3.7 eV. The
modified ITO surface may be used as electron injecting electrode in
polymer light-emitting devices. Photoelectron spectroscopy measurements
show that the low-work-function of the modified electrode remains upon
exposure to air or gentle annealing; thus, making it a good candidate
for inexpensive fabrication of organic/polymeric (opto)electronic devices.

1996-2007の間に、様々なデータが報告されていますので、Google scholarで、 work function indium tin oxide と入れて検索してみてください。
また、APLにもたくさんの仕事が載っています。APLのWeb siteにて (work function) and (indium tin oxide) で検索をかけてください。
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Date: Wed, 30 Jan 2008 17:40:50 +0900 (JST)
Q2: 佐藤先生わざわざありがとうございます。
一昨日、先生に言われた仕事関数についてしらべていたのです が、いろいろ混乱していたため調べがひと段落してからお返事 を書こうと思っていました。行動してから結果を報告しようと 思いましたので。

現在、混乱していることは、
 バンドギャップ
 仕事関数
 エネルギーレベル
の3つの違いです。
もはやエネルギーレベルという言葉が正しいのかどうかもわか らない状態なのですが、とりあえず、私が知りたい事をこの言 葉として定義したいと思います。
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Date: Wed, 30 Jan 2008 18:54:33 +0900
A2:Y君、佐藤勝昭です。
 バンドギャップ、仕事関数について、学んでいないのですか?固体物 理の基本なので、それなしには「ITOの表面に違う物質を付着させど のように電気が流れるかをポテンションスタットで計測する」というこ とをやっても、意味がわからないでしょう。
 ここでは、すごく簡単に解説しておきますが、短い文章では理解でき ないと思うので後述の本を読んでください。
(1)バンドギャップ:固体中で、電子は波として結晶中に 広がり、そのエネルギーは幅のあるもの(バンド)となっています。
 金属では、連続なバンドの途中まで電子が満ちています。(絶対零度 において)電子の占めているエネルギーの一番上をフェルミ準位といい ます。
 これに対し、半導体では、エネルギーバンドが価電子帯と伝導帯に分 かれています。価電子帯のてっぺんと伝導帯の底のあいだにはエネルギ ーの隙間(エネルギーギャップ)があって、電子はこのギャップ内のエ ネルギーを持つことができません。
 電子がエネルギーバンドのどこにどれだけ分布するかは、(電子がフ ェルミ粒子なので)フェルミ・ディラックの分布関数によって決まりま す。絶対零度においては、この分布関数は、フェルミ準位の上では0%で、 下では100%という階段型の関数です。半導体においては、、このフェル ミ準位が、バンドギャップのど真ん中のあたりにあるので、価電子帯は 100%電子で満たされるのに対し、伝導帯には全く電子がいません。ちょ うど、分子軌道法におけるHOMOが価電子帯に相当し、LUMOが伝 導帯に相当します。この状態では、電気を運ぶものがないので絶縁体で す。
 温度が上昇するとフェルミ・ディラックの分布関数は、1か0ではなく、 ゆっくりと変化する関数となり、伝導帯に電子が、価電子帯には電子の 抜け穴(ホール)が分布するようになります。これによって、電気を運 ぶもの(キャリア)が生じ、伝導性をもちます。
 一方、価数の違う不純物を入れたり、格子欠陥があったりすると、フ ェルミ準位の位置が、バンドギャップの中心からずれてきます。普通の n型の半導体では、ドナー準位が伝導帯の底にできてフェルミ準位が伝 導帯の底のすぐ下に来るため、伝導帯に電子を供給します。ITOでは、 フェルミ準位が伝導帯の底より高い位置にくるためキャリアを伝導帯の 底にたくさん供給してまるで金属のような電気伝導性をもちます。これ を縮退半導体と呼んでいます。
(2)仕事関数:ITOを他の物質にくっつけて電極として使うために は、接触したときに界面にポテンシャル障壁(バリア)を作らないよう にしなければなりません。このためにバンドギャップを使うことができ ません。なぜなら、バンドギャップは、各物質の中での相対的な値にす ぎないからです。できれば、絶対的な関係を見たいのです。
このためには、フェルミ準位のエネルギー位置を絶対的な尺度で、示しておかなけ ればなりません。このために真空準位を使います。物質から電子を取り 出して、真空準位にもってくるためのエネルギーのことを仕事関数とい うのです。
他の物質との間にバリアを作るかどうかは仕事関数と電子を くっつけることによるエネルギーの得(これを電子親和力といいます) とがどうかで決まります。仕事関数は、フェルミ準位が真空準位からど れだけエネルギー的に離れているかを測る尺度です。
(3)エネルギー準位:今まで述べてきたことからあなたが言うエネル ギー準位とはフェルミ準位のことだと言うことがわかるでしょう。
 HOMOもLUMOも、ドナーもアクセプターもエネルギー準位なの で、他の物質との比較を行うときに使うエネルギー準位としては、フェ ルミ準位を使うべきなのです。

貴学科の電子シラバスで確認しましたところ、2年生前期に、T/K先生の 無機化学の授業があって、「固体の電子構造と化学, 技報堂出版」が 参考書として挙がっています。アマゾンの書評では、「化学者がバンド を勉強するのに最適な本」となっています。貴大学の図書館にもある ようですから、借りて勉強してください。
応用化学科の3年生なので、やむを得ないと思いますが、物理現象の基本的な理解をなし に、実験を進めるのは無茶です。あなたのやろうとしている課題は、学 生実験の課題ですか、あるいは、卒論の課題ですか?上の説明でわから ない部分は、指導教員に基本を教わってください。
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Date: Thu, 31 Jan 2008 02:18:29 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生、詳しい説明に感激しておりますと同時に自分の 知識不足に恥ずかしくなりました。しかし、恥を恐れずご質問 したことでまた新しいことがクリアになりました。ありがとう ございます。
この度は本当にありがとうございました。
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1053. 二次元正方格子における磁化率の温度変化

Date: Wed, 6 Feb 2008 17:56:50 +0900 (JST)
Q: Y**大学理学部四年生、K**といいます。HPを見ました。匿名でお願いします。
現在、二次元正方格子反強磁性体の物質を取り扱っています。M-T(磁化ー温度)曲線を測定したのですが、 ネール温度(反強磁性体転移おきる温度)より高い温度で、キュリーの法則に反して磁化率の落ちていく様子が見られました。
ネール温度より高い温度でこのようなことが起きるのはなぜでしょうか?ネール温度で反強磁 性転移が起きるのは確認済みです。 よろしくお願いします。
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Date: Wed, 6 Feb 2008 23:21:57 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 磁化率χが高温側で温度上昇と共に落ちるのは当たり前でしょう。
もし磁化率の逆数が高温側で落ちたら不思議ですが。いずれにせよ、グラフを添付していただけないでしょうか。
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Date: Thu, 7 Feb 2008 10:17:59 +0900 (JST) Q2: 早いお返事ありがとうございます。
グラフを添付させていただきました。

先のメールでは説明が不十分でした。申し訳ありません。グラフを見ていただければわかると思うのですが、低温にすすんでいるのに、ネール温度より手前から磁化率の低下が見られます。キュリーの法則では磁化率は上がると思うのですが。グラフの→?のあたりです。ちなみに磁場は磁化困難軸に平行にかかっております。取 り扱っている物質は正方格子反強磁性体です。
よろしくお願いします。
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Date: Thu, 7 Feb 2008 23:45:26 +0900
A2: K君、佐藤勝昭です。
 図をみて、どこかで見たことがあると思って、探しましたらありました!
理研の田村さんのお仕事です。
 そもそも、統計物理の教えるところによれば、二次元ハイゼンベルク系 では反強磁性転移は絶対零度まで現れないはずです。従って、反強磁性 秩序が現れると云うことは一見二次元格子であるけれど、低温では層間 の交換相互作用が無視できず三次元の秩序があるということです。高温 になると二次元系として振る舞うので、どこかの温度で二次元と三次元 の転移があるということです。これを次元クロスオーバと呼んでいます。
 高温では層内の相互作用に支配されていて、二次元性を示しますが,層 間相互作用の影響は磁化率のピークよりも低温側でようやく現れてきて いると考えられます。このような物質の例は,層状の正方格子構造をも つ銅(II)化合物などでたくさん知られていて,二次元正方格子モデルに 従って磁化率ピークを示し,そのずっと低温側で反強磁性転移を示します。
(文章は、上記サイトから引用しました。)
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Date: Fri, 8 Feb 2008 05:26:16 +0900 (JST)
AA: とても参考になりました。どうもありがとうございました。
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1054. ろう材の熱伝導率

Date: Thu, 07 Feb 2008 10:28:21 +0900
Q: 佐藤勝昭様
初めてメールいたします。H社の研究員をしておりますT**(Webでは匿名でお願いいたします)と申します。
いつも先生のホ-ムページを拝見させていただいております。

質問ですが、ろう材(例えばAgろう)の熱伝導率が80W/m・K程度と、ある文献で 見たことがあるのですが、なぜ熱伝導率の良い銀や銅を多く用いているのに、 ろう材の熱伝導率は低いのでしょうか?
ご教授頂きたく宜しくお願いいたします。
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Date: Thu, 07 Feb 2008 11:17:36 +0900
A: T*様、佐藤勝昭です。
 私は、金属工学が専門ではないので、正しくお答えできるか自信がありません が、物理屋としての見解を述べます。
 銀蝋の組成を調べると、BAg-1ではAg44-46%、Cu14-16%、Zn14-18%、Cd23-25% (JIS Z 3261-1998) という組成比になっており、Ag以外の金属の方が多い、いわば金属のごった煮です。
 このため、電子は合金散乱を受け、電気伝導率が悪くなっています。Wiedeman -Franzの法則により電気伝導率と熱伝導率は比例しますので、熱伝導も悪いのではないでしょうか。
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Date: Thu, 07 Feb 2008 11:44:29 +0900
AA: 佐藤様
早速のご回答ありがとうございました。
ぜひ参考にさせていただきます。
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1055. 結晶SiとアモルファスSiの活性化エネルギー

Date: Wed, 6 Feb 2008 21:51:04 +0900 (JST)
Q: 初めまして。私は近畿大学理工学部電気電子工学科3年の宮崎隼人と申します。
いつも物性なんでもQ&Aを拝見させていただいております。
今回こちらでいろいろ調べて見たのですがどうしても解らなかったので 質問させていただきたきたいと思いメールを出させてもらいました。
質問内容
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学校の講義でアモルファスシリコンの活性化エネルギーは、結晶シリコンに比べて
大きくなると聞いたのですが、何故大きな数値になるのかがわかりません?
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どうが宜しくお願いいたします。
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Date: Wed, 6 Feb 2008 23:41:04 +0900
A: 宮崎君、佐藤勝昭です。
 活性化エネルギーといっても、欠陥の形成の活性化エネルギー、 不純物拡散の活性化エネルギーなどいろいろなものがありますが、ここでは、キャリ ア密度の活性化エネルギーのことだと考えておきましょう。
 真性半導体の場合、キャリ密度nの温度依存性は、
 n=(NcNv)^(1/2) exp{-(Ec-Ev)/2kT}=(NcNv)^(1/2) exp{-Eg/2kT}
と表されます。Nc, Nvはそれぞれ伝導帯および価電子帯の状態密度, Eg=Ec-Evはバンドギャップです。従って、活性化エネルギーEaはEg/2で 表されます。
 結晶シリコンのEgは1.1eV, 水素化アモルファスシリコン(a-Si:H)の Egはほぼ1.7eVです。従って、結晶シリコンの活性化エネルギーは、 Ea=0.55eV, アモルファスシリコンの活性化エネルギーはEa~0.85eVで す。
 不純物半導体の場合の活性化エネルギーは、ドナーやアクセプターの 準位で決まりますので、必ずしも、上の議論は成り立ちません。
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1056. エレクトロニクスの期末テストの解答が欲しい

Date: Tue, 5 Feb 2008 13:09:24 +0900
Q; 佐藤勝昭様
はじめまして、私は浅野と申します。
お願いがあります。
このホームページにあるエレクトロニクスIIの期末テストの問題を個人的に解いたのですが、解答が無く困っております。
最近、電子回路を勉強しており、大変良い問題だったので挑戦してみました。
誠に一方的なお願いではありますが、「解答例や解答手順」等の資料がありましたら 是非拝見させて下さい。
もし、解答例や解答手順が存在しましたらお願いします。
お忙しい中申し訳ありませんが、よろしくお願いします。
神奈川県大和市在住 浅野
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Date: Tue, 05 Feb 2008 15:48:35 +0900
A: 浅野様、佐藤勝昭です。
 以前の授業なので標準解答が残っていませんでしたので、急遽作成しました。
間違っているかもしれませんが、取り急ぎお送りします。
解答pdf
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Date: Tue, 5 Feb 2008 19:59:08 +0900
AA:佐藤 勝昭様
解答ありがとうございました。
早速、拝見させて頂きます。
お忙しい中、このような好意に大変感謝しております。
佐藤先生の講義プリントも大変参考になり勉強になります。本当にありがとうございました。
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1057. 酸化タングステンの機械的性質

Date: Fri, 8 Feb 2008 14:24:04 +0900
Q: 突然のメール失礼致します。
O*大学工学部4年のK*と申します。(Webでは匿名でお願いします)
現在、「酸化タングステン」に熱負荷を与えた場合の挙動を調べるためにシミュレー ションによる解析を行っております。
しかし、酸化タングステンの物性値(ヤング率、ポアソン比、線形膨張係数、比熱、 熱伝導率)がわからなくて困っています。
恥ずかしながら、図書室で調べた中ではこれらのデータが記載されているような資料 を見つけられませんでした。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご助力いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
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Date: Fri, 08 Feb 2008 15:14:55 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 理化学辞典によると、酸化タングステンには、酸化数4,6およびその中間にある多数のマグネリ相の化合物が存在します。
室温で多形(polytype)をもち、特定の相の単結晶を分離するのが難しいことから、きちんとした機械的性質が測定されていないのではないでしょうか。
最近、ナノワイヤについての機械的性質がin situで調べられているようなので、それから類推するしかないでしょう。
K. H. Liu, W. L. Wang, Z. Xu, L. Liao, X. D. Bai, and E. G. Wang:
In situ probing mechanical properties of individual tungsten oxide nanowires directly grown on tungsten tips inside transmission electron microscope;
Appl. Phys. Lett. 89, 221908(2006)
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Date: Fri, 8 Feb 2008 16:58:24 +0900
AA: O大学工学部4年のKです。(Webでは匿名でお願いします。)
早速のご回答ありがとうございました。
ぜひ参考にさせていただきたいと思います。
佐藤先生のご好意に大変感謝しております。
どうもありがとうございました。
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1058. 66ナイロンの黄変

Date: Fri, 8 Feb 2008 18:48:12 +0900
Q: 佐藤研究室 御中
HPを拝見し質問させていただきます。

名前: S***    所属 : N***社 品質管理グループ
Webにアップする場合は匿名を希望いたします。

お世話になります。
弊社は電気部品として成形品を扱っております。
ご使用されるお客様から66ナイロンの成形品を部品とする製品についてホワイト品の変色(ホワイトからベージュに)について問い合わせを受けており、弊社内でも製造工程を確認しましたが要因となるものが確認されませんでした。
ここで、66ナイロンについて環境から受ける変色に目をつけ、調べておりましたら下記の情報を得ました。
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4.1 黄変現象(暗所黄変)のメカニズム

 スチレン系樹脂(ABS、HIPS、AES等)は、通常の環境下で光や過度な熱の影響を受けない状態で保管しても、長期の保管中に色調が黄色く変化する現象がある。このような環境下での黄変現象は、光の直接当たらない密閉した試験槽などの暗所において発生することから、”暗所黄変現象”と呼ばれている。この暗所黄変の場合、変色した成形品を太陽光に照射すると、元の白味方向の色調に戻る傾向を示し、他の湿熱および耐侯劣化による黄変とは区別することができる。
 暗所黄変のメカニズムは未だ解明されておらず、明確な原因は不明である。但し、一般的には以下の傾向があることがわかっている。
 (1) 保管前に成形品が太陽光等の光エネルギーを照射した状態で保管すると、黄変は増加する傾向がある。
 (2) 保管状態は高温・高湿の場合に黄変が増加する(温度・湿度の影響大)。
 (3) 色調としては、変色が目立ちやすい淡色系で発生し易く、透明色が最も顕著である。
 (4) 酸化防止剤を代表とする、キノン系発色化合物(例:フェノール系酸化防止剤BHT)が存在すると顕著に発生する。

4.2 暗所黄変の対策

 暗所黄変については、そのメカニズムが解明されていないため、根本的な解決策が見つかっていないが、この暗所黄変現象は”初期の光酸化(光照射)を受けて生成したラジカル種により暗所で更に酸化が進む現象”と考えられることから、材料面対策として下記が有効とされている。
 (1) 初期の光酸化防止:紫外線吸収剤の添加
 (2) 生成したラジカル種の除去:光安定剤の添加
更には、注意事項として成形品の保管を屋外等の直射日光はもちろん、蛍光灯、水銀灯等による光照射を避け、高温・高湿とならない場所での梱包および保管する事が重要である。

  (株)技術情報協会発行 高分子材料の劣化・変色メカニズムとその安定化技術-ノウハウ集- より
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この上記情報は66ナイロンも該当するのでしょうか?

また、ご使用いただいているお客様での保管状態は下記のようです。

どの位の期間保管されているか?=約4ヶ月間保管
保管状態(条件)=倉庫(窓なし=日光入らず)に下記条件にて保管
・温度:22℃±10(±10は最大でそこまでいく事は殆どないと思われる)
・湿度:70%以下

製品の梱包状態は一定の数量・一定の姿勢(プラスチック製のトレーに整列されている状態で数段に積み重なっている)でダンボールに梱包されており、この状態ですと外光にさらされることはありません。
変色の状態はこの梱包状態において(重なっているトレーの)一番上の段のなおかつ上面のみ変色しております。
ダンボールが開封された状態で最上段の表面に外光が照射され変色をきたしているのではないかと考えております。
しかしながら保管状態としては光がほとんど遮断されている。
そこで暗所黄変との関係は?????と考えた次第です。

66ナイロンについて蛍光灯や紫外線などの長期間による照射が無い場合でも変色の可能性があるのか?
また、あるならばそのメカニズムについてお教えいただきたいと思います。
解決策が導き出せれば弊社にも展開できると考えます。
何卒よろしくお願いいたします。
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Date: Sat, 09 Feb 2008 00:02:43 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 66ナイロンの暗所黄変の件、お困りのことと存じます。私は、無機材料は 専門ですが、高分子は専門外なので、正しいお答えができるか、自信がありませ ん。私見ですが、トレイに使われているプラスチックは多少の不安定性を有して いて、気温が高いときに揮発性のものが微量ながら分解して出ている可能性を否 定できないと存じます。その気体が空気より軽ければ、梱包の段ボール箱の最上 部に溜まっていることは十分考えられることです。ナイロンは安定な高分子です が、表面がその気体に曝されて、変化を受けることはあり得ないことではないと 考えますが、いかがでしょうか?
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Date: Tue, 12 Feb 2008 10:38:27 +0900
AA: 佐藤勝昭様
お世話になります。ご回答頂きありがとうございました。
回答いただいた内容については全く考えもしておりませんでした。
梱包資材についても考慮してみたいと思います。
S
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1059. ラマン散乱による結晶歪みの評価

Date: Sat, 9 Feb 2008 06:58:12 +0000
Q: 佐藤勝昭 様
いつもホームページを拝見、勉強させていただいております。
私、O阪大学工学部3年、Kという者です。
今回、ホームページを見て、初めて質問させていただきます。

今私はラマン散乱分光測定を行っており、ある希土類ガーネットのサンプルのラマン測定を行いました。
ある2箇所の波数において希土類ガーネット薄膜のピークが観測され、
1つは、z(x、y)-z、 z(x’、x’)-z配置でのみで観測されたのでT2g,
もう一方はz(x、x)-z、z(x’、x’)-z、z(x’、y’)-z配置でのみ観測されたためEgモードとアサインしました。

ここで、c軸に対して圧縮の歪を受けているサンプルに関してはラマンのピークは低波数側にシフトすると記憶しており(調べた文献にもそう書いてありました)、今回測ったサンプルはc軸に対して伸張したサンプルであったため、高波数側にシフトすると考えていたのですが測定結果は低波数側にシフトしていました。

検証のため、c軸に圧縮されたサンプルを測定したところきちんと低波数側にシフトしたのですが、先のc軸伸張のサンプルと比べると、 c軸圧縮のサンプルは2/cmほど低波数側にシフトしておりc軸伸張のサンプルは4/cmほど低波数側にシフトしておりました。

この結果の解釈に困っており、実験に問題があるのか、測定のモードに依存するなにか、もしくはガーネットという複雑な構造ゆえの何かなのか、ヒントをいただければと思い質問させていただきました。

お忙しいとは思いますが、お答えいただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
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Date: Sat, 09 Feb 2008 18:31:26 +0900
A: K君、佐藤勝昭@那覇です。
 学部の3年なのに高級なことをやっていますね。私は、ガーネットのラマンは やったことがないので、よくわかりませんが、referenceとして用いた歪みのな い試料は、薄膜ですか、バルクですか?
 一般論ですが、対称性にもとづくフォノンの議論はバルクについてはきちんと できると思いますが、薄膜については注意が必要です。
おそらく、測定しておられるのは、GGG基板にLPE法で成長したRGG、RAG、または RIGだと思いますが、基板に対してどの程度コヒーレントに成長しているのか で、観測されるものが異なってきます。基板の格子定数より格子定数の小さなも のを成長すると、もしコヒーレントに成長しているなら、確かに面内にひっぱり 歪みが加わり、面内の格子定数は伸び、XRDで見られる面直の格子定数は縮みま す。理想的にはそうなのですが、実際には、ミスフィット転位が入って、格子定 数は緩和してしまうことがあります。従って、ラマン以外の方法で、引っ張り歪 みを受けているか圧縮歪みを受けているかよく調べた方がよいと思うのです が、・・。
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Date: Sat, 9 Feb 2008 21:12:12 +0000
Q2: 佐藤 勝昭 さま

早速のお返事ありがとうございます。

また実験は研究室の4年生の先輩の指導の下行っている次第で、私自身はまだまだ知識が追いついていけていないと感じているのが現状です。

今回リファレンスとして歪のないバルクを採用しました。
実験はGGG基板に少しCaなどをドープして格子定数を大きくしたものを基板として使い、 PLD法という方法でエピタキシャル成長させたガーネット薄膜(RIG)を測定しました。
また、格子定数は基板>薄膜となっています。
私の知識不足でミスフィット転移というのはよくわかりませんが(ある膜厚以下や、格子定数の差がある程度以上になると亀裂が生じるなどといったことでしょうか? 早速調べてみます。)、XRD測定において、膜圧の薄いものに関してはc軸方向の縮みを、膜圧が厚いものに関しては逆にC軸方向に伸びているのを確認しました。(逆格子マッピングというものを測定していただき、その結果、このように聞いております)

膜厚が厚いサンプルにおいて、XRDではC軸の伸びが確認されたのに対しラマン測定ではC軸の縮みと思われる低波数シフトが観測されたということから、今回非常に悩む結果となってしまいました。

何度も申し訳ないのですが、これら以外に格子が圧縮または引っ張り歪みをうけているか測定する手段をご存知であれば教えていただけないでしょうか?
また、繰り返しになりますが、お忙しい中お返事いただきまして誠に感謝しております。
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Date: Sun, 10 Feb 2008 06:57:18 +0900 (JST)
A2: K君、佐藤勝昭です。
 ラマンは、レーザを使うので、波長によっては、試料の中まで侵入せず、表面のみの 情報を見ている場合があります。厚い試料ではX線でみる全体の平均的情報とラマンで みる表面の情報が異なるのでとくに注意が必要です。
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Date: Mon, 11 Feb 2008 05:37:27 +0000
Q3: 佐藤 勝昭 さま
お返事ありがとうございます。
今回用いたラマン測定のレーザーの波長は458nmです。
458nmだと薄膜のどの程度まで侵入しているのかわからないですが、ご指摘いただいた点に関しても考えていきたいと思います。
またお気づきになる点がありましたらご連絡いただけますと幸いです。
お忙しい中、お答えいただき誠にありがとうございます。
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Date: Mon, 11 Feb 2008 22:31:18 +0900 A3: K君、佐藤勝昭です。
458nmは、2.7eVですね。YIGの吸収は2.4eV付近で急に立ち上がるので、吸収係数は105[cm^-1]程度あると思います。
従って侵入深さは10^-5[cm]=100[nm]程度でしょう。
膜厚が100nm以下なら、中まで光は侵入 しますが、例えば10μmの厚さのエピ膜ですと、最表面の情報しか見ないことになります。
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Date: Mon, 11 Feb 2008 14:51:50 +0000
Q4: 佐藤 勝昭 さま
お返事ありがとうございます。
今回測定したサンプルは30nm,50nm,100nm,160nmの膜厚であり、ほとんどのサンプルにおいては中まで光が侵入していると考えられますが、 今現在判断に困っている、XRDではc軸の伸びが観測され、ラマン測定ではc軸の圧縮が観測されたと考えているサンプルの膜厚は160nmであり、このサンプルにおいては光が中まで侵入しておらず、表面の情報のみを見ている可能性があると思います。
ただ、格子の歪の影響はは膜の表面に近づくほど緩和されることを考慮するとラマン測定の結果が膜の表面情報のみを示し、 かつ、膜厚の厚いサンプルが、膜厚が薄いものよりもc軸方向に大きく圧縮されているというラマン結果だったことはますます理解に苦しむことになってしまいそうです。 (設計では膜厚が薄いほど大きくc軸に関して圧縮され、膜厚増加に伴い緩和されるはずです。格子定数:基板>薄膜)
お忙しい中、いつも返事を送っていただきありがとうございます。 実験データがすんなり納得のいくものでないことに対し困惑に近いものを感じたりもしますが、 同時に、このようにいろいろと考えをめぐらせていくことの楽しさも感じているところです。
また、私のような者のためにお時間を割いていただいていること、深く感謝しております。
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Date: Tue, 12 Feb 2008 01:53:38 +0900
A4: K君、佐藤勝昭(自宅に戻りました)です。
 レーザの侵入深さでは、説明できないようですね。
エピ膜試料の良さを見るには、断面TEMを測定するのが一番よいのです が、その前に取りあえず、その膜のようすを光学顕微鏡で観察してみて ください。私の経験ですが、よい試料が出来ていると思っていたのに、 説明できない現象が観測されたことがあり、光学顕微鏡で観測したら、 マクロスケールで相分離が起きていることを発見したことがあります。
マクロな観察も役立つことがあります。
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Date: Thu, 14 Feb 2008 05:57:58 +0000
AA: 佐藤 勝昭  さま
返信が遅くなってしまい申し訳ありません。
はい、早速光学顕微鏡で観察してみたいと思います。
いろいろとアドバイスしていただき本当にありがとうございます。
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1060. 光学薄膜の透過率

Date: Mon, 11 Feb 2008 08:25:27 +0900 (JST)
Q: はじめまして。F*大学工学部4年のY*と申します(Webでは匿名でお願いします)。
私が研究している中の1つに多層膜による光の反射防止というものがありまして、設計した値と実験のデータの比較から設計のミスではないかと思い、恐縮なのですがご助力していただきたくメールさせていただきました。
大変基本的な質問で恥ずかしいのですが、垂直入射で光エネルギーの吸収が無いとすると透過率はどのような式で表すことが出来るのでしょうか。
本を参考に設計していたのですが、薄膜内での繰り返し反射というところがよく分からなかったので、おそらくそこが原因で結果にずれが生じているのではと考えています。
以前佐藤先生は、
反射率の質問のところでエクセルによる解析をなさっていたかと思いますが、リンク先を開くことが出来なかったので、差し支えなければ参考までにそちらの方もお願いできればと思います。

お願いばかりして大変恐縮ですが、よろしくお願いします。
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Date: Mon, 11 Feb 2008 18:39:23 +0900
A: Y君、佐藤勝昭@那覇です。
 大学のHPからprovider(Lacoocan)に移したときにリンク切れが発生しました。申しわけあ りません。旅先なので、帰宅してから対応します。
なお、薄膜の多重反射については、藤原史郎「光学薄膜」(共立)という本に詳 しく載っていますので、図書館に行って調べてください。
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Date: Tue, 12 Feb 2008 02:07:24 +0900
A2: Y君、佐藤勝昭です。
 リンク切れを修復しましたので、ご確認下さい。
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Date: Wed, 13 Feb 2008 17:56:20 +0900 (JST)
AA: 佐藤先生。
返事が遅くなってすみません。
そして出張先から休日なのにも関わらず素早い対応をしていただき、本当にありがとうございます。

佐藤先生に教えていただいた本を参考に、現在多層膜を設けた時の基板内の繰り返し反射を見直しています。
ファブリ・ペロモデルでの透過率がおそらく求めている答えだと考えていますが、本文の説明が多少分かりにくく苦戦しています。
出来るだけ自分で理解しようと思いますが、また質問させていただくかもしれません。
失礼とは存じますが、その時はよろしくお願いします。
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1061. 窒化ガリウム(GaN)の抵抗率の基板による違い

Date: Tue, 12 Feb 2008 21:46:10 +0900 (JST)
Q: T*大学 電気工学科 4年 S*といいます。(匿名でお願いします。)
研究でGa(solid)とNH3(gas)を熱分解により反応させ、GaNを作製しています。
基板にサファイアと石英を用いているのですが、NH3流量を変化させてGaNを作製したところ、サファイアの抵抗率は、流量を増やすことで大きくなり、石英の場合流量を増やすことで抵抗率が小さくなりました。
これはどういうことなのでしょうか?
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Date: Wed, 13 Feb 2008 01:15:29 +0900
A: S君、佐藤勝昭です。
4年生ということですが、卒論ですか?その場合は、本来指導教員に尋 ねるべきですよ。
 サファイヤはAl2O3です。表面のAlはNH3と反応してAlNという絶縁物 が出来る可能性があります。AlNは絶縁性の高い物質です。このため、 NH3の流量と共にAl3N4膜厚のカバーする領域が増え、高抵抗化するので は無いでしょうか。
 一方、石英(アモルファスの酸化アルミニウム)は表面が安定なので、 NH3と反応せず、直接GaN(半導体)が形成され、NH3流量と共に膜厚が 増え、低抵抗になるのではないでしょうか。
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この件に関しH社Tさんから
コメントをいただいております。
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Date: Wed, 13 Feb 2008 01:28:40 +0900 (JST)
AA: お忙しいところすみませんでした。
参考になりました。ありがとうございました。
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1062. ボルタは電池の出力をどうやって確認したか

Q: Date: Thu, 14 Feb 2008 17:43:08 +0900
素朴な質問なのですが教えてください。
ボルタが電池を作った時に電気が流れたことをどういう手段で確認したのでしょうか?
まだ、電球とかはなかったようですが!
      山口市   佐伯清子
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Date: Thu, 14 Feb 2008 19:27:43 +0900
A: 佐伯様、佐藤勝昭です。
 ボルタ電池のことは
「大人の科学」のネット版に出ています。
これによれば、ボルタは死んだカエルの脚に2種類の違う金属を当てて、金属同士を触れさせると、脚がけいれんすることから、電気が起きていることを見出し たようです。
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Date: Thu, 14 Feb 2008 20:24:01 +0900
AA: 佐藤先生
 ボルタ電池の件ありがとうございました。
 また不明なことがありましたらよろしくお願いします。
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1063. フラーレン(C60)単結晶のフォトルミネッセンス

Date: Sun, 17 Feb 2008 22:25:05 +0900 (JST)
Q: 突然のメール失礼致します。*大学院1年のS*と申します(Webでは匿名でお願いします)。
HPとQ&A拝見しました。今度フラーレンC60の単結晶について実験することになりました。
C60単結晶の発光スペクトルについて質問なのですが、低温で測定を行うと3~4つの発光ピークが見られます。
それぞれの発光ピークがどういう発光起源(発光メカニズム)なのかを是非知りたいです。
またC60単結晶の発光スペクトルの起源についての基本的な論文が何かあれば教えていただきたいです。
お忙しいところ申し訳ありませんが、ご助力いただければ幸いです。
どうぞよろしくお願いします。
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Date: Mon, 18 Feb 2008 00:20:10 +0900
A: S君、佐藤勝昭です。
 Webでは匿名にしますから大学名・学科名を書いてください。人にも のを尋ねるときに自分の所属と名前を名乗るのは最低限のエチケットで す。また、学科(専攻)を明らかにすることは、質問者の基礎知識の程 度を判断でき、適切な答えができるからです。

良質のC60単結晶のPLは、
V. V. Kveder, V. D. Negrii, E. A. Shteinman, A. N. Izotov, Yu. A. Osip'yan and R. K. Nikolaev:
Long-lived excited states and photoluminescence excitation spectra in single crystals of fullerene C60;
Journal of Experimental and Theoretical Physics Volume 86, Number 2 (1998) 405-411

V. Capozzia, M. Santoroa, G. Celentanoa, H. Bergerb and G. F. Lorussob:
Growth and photoluminescence spectra of C60 single crystals;
Journal of Luminescence Volumes 76-77, February 1998, Pages 395- 398

J. Feldmann, W. Guss, U. Lemmer, E. O. Gobel, C. Taliani, H. Mohn, W. Muller, P. Haussler, H.-U. Ter Meer:
Photoluminescence Studies of C60 Single Crystals ;
Molecular Crystals and Liquid Crystals, Volume 256, Issue 1 November 1994 , pages 757 - 762

エピタキシャルフラーレンのフォトルミネセンスは、
R. D. Averitta, P. M. Pippengera, V. O. Papanyanb, J. A. Durac, P. Nordlanderd and N. J. Halasa:
Photoluminescence spectra of epitaxial single crystal C60;
Chemical Physics Letters Volume 242, Issue 6, 1 September 1995, Pages 592-597
をお読み下さい。
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Date: Thu, 21 Feb 2008 15:47:02 +0900
A2: S君、佐藤勝昭です。
 昨日、大学に行ったので、J.Lumi.とChem.Phys.Lett.の論文を入手し ました。(JETPとMol. Cryst. Liq. Cryst.は入手できませんでした。)

V. Capozzia, M. Santoroa, G. Celentanoa, H. Bergerb and G. F.
Lorussob: Growth and photoluminescence spectra of C60 single
crystals; Journal of Luminescence Volumes 76-77, February 1998,
Pages 395-398
 これによると、1.4eV~1.8eVにAからHまで8個のピークが見られてい
ます。最も強いピークC(1.66eV),D(は1.62eV)は1重項励起子のゼロフ
ォノン発光線、F(1.51eV),G(1.47eV)は3重項励起子のゼロフォノン線と
アサインされています。A(1.76eV),B(1.71eV)は高温で消滅するので、X
-トラップによるとしています。




R. D. Averitta, P. M. Pippengera, V. O. Papanyanb, J. A. Durac,
P. Nordlanderd and N. J. Halasa: Photoluminescence spectra of
epitaxial single crystal C60; Chemical Physics Letters Volume
242, Issue 6, 1 September 1995, Pages 592-597
 これによりますと、12000~14500cm-1(1.48eV~1.80eV)に6つのPLピ
ークがあります。最も強いピークは14250cm-1(1.76eV=701nm)にありま
す。6つのピークは、1重項励起子および3重項励起子による発光とそれ
に伴うvibroic遷移(格子振動と電子状態が結びついた状態の関与する
遷移)とアサインしています。




このほか、Phys.Rev. Lett.にもよい論文が出ていました。 W.Cuss, J.Feldmann, E.0.Goebel, C.Taliani, H.Mohn, W.Mueller, P.
Haussler,and H.-U.ter Meer: FIuorescence from X Traps in C60
Single Crystals; Phys. Rev. Lett. Volume 72, April 1994, Pages
2644-2647.
 この論文ではPLのピークは730nmと820nmにあると書いてあります。
観測されたピークのアサインは下表のようになっています。
t1u, huとあるのは実験で得られたピークでfalse originと書いていますが、
必ずペアで現れ、その間隔は約33meVです。
これらは、vibronic mode(格子振動・電子状態の結合状態)で、
表の左端が計算で得られた0-0(始状態、終状態ともにフォノンが結合していない状態)
のスペクトル位置を示しています。



 0-0
(eV)
t1u
(nm) (eV)
hu
(nm) (eV)
Δ
(meV)
X11.993683.2 1.815695.1 1.78431
X21.940703.7 1.762718.4 1.72636
C 1.871732.4 1.693747.4 1.65934
X31.839746.5 1.661  
X41.816757.0 1.638  1
X51.781773.5 1.603789.8 1.57033
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1064. チタン酸バリウム薄膜研究の意義

Date: Wed, 20 Feb 2008 17:58:50 +0900
Q: n大S**です。今、研究室でチタン酸バリウムの薄膜をレーザーアブレーションで作製しています。
出来た薄膜をフォトルミネッセンスで温度依存性を測定してます。
未だになぜ薄膜にして酸素欠陥などをそくていするのですかわかりません。
とても馬鹿ですけれどいい返答ありましたら教えてください
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Date: Thu, 21 Feb 2008 01:01:13 +0900
A: n大S君、佐藤勝昭です。
 Webでは匿名にしますから、大学名・学科名はきちんと明かしてくだ さい。
また、研究室でやっていることに関する質問は、本来、指導教員 または上級の大学院生に尋ねるべきです。
自分でバカだと卑下しないで 下さい。学部では、基礎的なことしか学ばないのですから、4年生が知 らないのは当たり前なのです。
君の研究室では、始めに、なぜその研究 をやっているのかの意味づけを教員が教えていないのですね。
 チタン酸バリウムBaTiO3は強誘電体です。「強誘電体」というのは、 外部電場を加えなくても電気分極をもつ(このような分極を自発分極と いいます)誘電体です。このため誘電率が高いのです。

 それではなぜ、薄膜の強誘電体を研究する必要があるのでしょうか。
そのためには、基礎知識が必要です。
 半導体メモリーのDRAMのことは知っていますよね。
DRAMではMOS-FET でスイッチして情報を電荷としてコンデンサに蓄えていますが、コンデ ンサの誘電体として酸化珪素(SiO2)を使っています。
しかし、ご存じの ように集積化が進んで、1ビットのセルサイズが一辺100nm以下になって きますと、コンデンサの面積が小さすぎて、十分な電荷を蓄えることが できません。それで、トレンチという深い井戸を掘ったり、数段重ねに したり工夫をしていますが、追いつきません。
 また、MOS-FETのゲート絶縁物も問題です。MOS-FETではシリコンの上 に酸化膜を付けてその上に金属電極を付けてゲートとしています。
ゲー トに加えた電圧によってシリコンの表面にチャンネルという電気の通り 道を制御してトランジスタの働きをさせるのです。
しかし、ゲートの面 積が小さくなるとゲート絶縁膜でのコンデンサの容量が小さすぎて、じ ゅうぶんな電界がシリコンに加わらないので、チャンネルの制御が出来 ないのです。
それで、ゲート絶縁膜に使われるSiO2の厚みは1nmという 薄さになっています。あまりに薄いので絶縁破壊がおきる寸前になって います。SiO2より10倍高い誘電率をもつ誘電体を絶縁物に使うとすれば、 絶縁層の厚みは10nmになるではありませんか。

 それで、誘電率の高い(high kといわれます)酸化タンタルTa2O5や 酸化ハフニウムHfO2や珪酸ハフニウムHfSiO などが検討されています。
 さらに強誘電体にすれば、数桁も誘電率が高いので、絶縁破壊の問題が ありません。強誘電体としては、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)がよく使 われますが、鉛は環境汚染の問題があるので、チタン酸バリウムに関心 が寄せられているのです。
 このことから、ゲート酸化膜に使うためには薄膜にする必要があるこ とがわかるでしょう?
 次になぜ酸素欠陥をなくす必要があるかということです。酸素欠陥は ドナーとなって電子を供給するので、抵抗率が低下してリーク電流が増 え絶縁物としての使命を果たせないことや、欠陥がトラップとなって電 荷を蓄積することで、トランジスタの応答を悪くする可能性があるので す。
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Date: Mon, 25 Feb 2008 09:13:35 +0900
AA: 返信ありがとうございました。
大学は恥ずかしいので伏せていました。
N**大学のB**学科です!
今回は、教員や上級の人には聞きずらかったので質問させてもらいました。でも、とてもわかりやすく理解しやすかったです。
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1065. 半導体の光学現象の量子力学

Date: Wed, 20 Feb 2008 23:13:54 +0900
Q: 佐藤先生
M**と申します。メーカーを退職をした後、光の物理学について独学しています。匿名でお願いします。
物性Q&AのHPを見ての質問です。
シュレディンガーの方程式に関して、教科書的には、クーロンポテンシャル、井戸型ポテンシャル、調和振動子ポテンシャルの場合が個別に説明されています。しかし、実際の原子や分子において、これらの異なるポテンシャルがどのように連続的に関わっているのかという点がよく理解できていません。

1.孤立原子のエネルギー準位は、クーロンポテンシャルに束縛される電子のエネルギー準位として計算されます。原子や分子が凝集する場合、それぞれのエネルギー準位がバンド幅を持ちます。価電子がエネルギー準位E1にある場合、光の電場を加えると、E1に調和振動の離散的なエネルギー準位Uxが加わると考えてよいのですか?この場合、フェルミ準位が増えるのですか?この場合、内核電子のエネルギー準位も影響を受けるのですか?

2.調和振動のエネルギー準位Uxが軌道間エネルギーギャップを超える場合、エネルギー準位が上の軌道に遷移するのですか?エネルギーギャップを超えない場合、禁止帯にはいりこめないエネルギー準位をどのように考えたらよいのか教えてください。

3.半導体の場合、価電子が調和振動のエネルギー準位を得て(井戸型ポテンシャルから計算される)自由電子のエネルギー準位になると考えてよいのでしょうか?

あいまいな質問で申し訳ないのですが、ご教示いただければ幸いです。
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Date: Thu, 21 Feb 2008 02:03:24 +0900
A:M様、佐藤勝昭です。
 退職後独学されているのですね。頭がさがります。頑張って下さい。
ご質問ですが、すこし、混乱があるようなので、整理して見ましょう。

0.「クーロンポテンシャル、井戸型ポテンシャル、調和振動子ポテン シャルの場合が個別に説明されています。しかし、実際の原子や分子に おいて、これらの異なるポテンシャルがどのように連続的に関わってい るのか」というご質問ですが、実際の物質の中の電子を考えるときのポ テンシャルとしてはクーロンポテンシャルを考えればよいでしょう。
(井戸型ポテンシャルは、量子力学の最も簡単な練習問題として書かれ ているもので、実際の系としては、半導体レーザに人工的な量子井戸と して用いられています。障壁層としてGaAlAsを用い、GaAsを井戸層とし て用いることで、電子をGaAs層に閉じこめることに使われています。バ ンド構造までを論じるときには、井戸型ポテンシャルを使う必要はあり ません。調和振動子モデルは、格子振動や励起子などを量子力学で扱う ための手段で、通常の電子構造を調和振動子的に扱うことは、必要あり ません。)

1.「価電子がエネルギー準位E1にある場合、光の電場を加えると、E1 に調和振動の離散的なエネルギー準位Uxが加わると考えてよいのですか?」 という質問ですが、半導体による光の吸収を考える場合、光は古典的 に電界として考え「価電子帯の電子が光の電磁場のエネルギーと運動量 を得て伝導帯に遷移する」と考えています。本当は、フォトンを粒子 (調和振動子の量子化したもの)として考え、電子の生成・消滅演算子 との相互作用という形で表現しなければ、オール量子力学にならないの ですが、光の吸収や、光による電子分極を考える場合には、初めに述べ たように半量子力学的な扱いになっています。
 「光の吸収でフェルミ準位は上がるか」ですが、真性半導体の場合、 ほとんどフェルミ準位は動かないでしょう。しかし、外来性半導体の場 合、ドナーに束縛されていた電子が強励起で伝導帯に出払ったとすれば フェルミ準位が上がると思います。内殻準位はX線のような高エネルギ ーの光でない限り関係しません。

2.「エネルギー準位が上の軌道に遷移する」という表現は、物理的で はなりません。「価電子帯のエネルギー準位に対応する電子軌道から、 伝導帯のエネルギー準位に対応する電子軌道へと遷移が起きる」という のが正しい表現です。禁制帯には電子を励起しようにも禁制帯内の電子 エネルギーをもつ電子軌道が存在しないのです。その場合、高い電子エ ネルギー準位の状態を光の摂動で仮想的に取り込んできて、電子分極を 起こします。そのために、誘電率が真空の値より大きくなります。

3.「半導体の場合、価電子が調和振動のエネルギー準位を得て(井戸 型ポテンシャルから計算される)自由電子のエネルギー準位になると考 えてよいか」という質問ですが、答えは「いいえ」です。伝導帯の状態 は決して自由電子の状態ではありません。伝導帯の底の電子状態は、格 子の周期的なクーロンポテンシャルのお陰で、有効質量が自由電子質量 より小さくなっています。このことは、ブロッホモデルによるバンドの 考えによって、初めて説明できます。固体物理学のバンドのところをき ちんと勉強して下さい。
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Date: Fri, 22 Feb 2008 00:15:42 +0900 Q2: 佐藤先生 お忙しい中、丁寧な回答をいただき有難うございました。
おかげさまで大分整理していただきました。
再度の質問で恐縮なのですが、
「高い電子エネルギー準位の状態を光の摂動で仮想的に取り込んできて、電子分極を起こします。そのために、誘電率が真空の値より大きくなります。」 の部分が理解できませんでした。

1.「仮想的に」というのは、エネルギー準位の確率的な遷移の重ね合わせであり、固有状態にはないということですか?

2.電子遷移が発生した時には、電子分極の状態にはないということですか?

ご教示お願いします。
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Date: Fri, 22 Feb 2008 00:33:08 +0900
A2: M様、佐藤勝昭です。
 説明が不十分でわかりにくいようでしたね。
光学遷移と分極については
「物性何でもQ&A」の質問#1042 を参考にしてください。
1.摂動を受けた系の固有波動関数は、無摂動系の固有状態の確率的な 重ね合わせで表され、エネルギー保存則の制約なしに高いエネルギー準 位の状態が「仮想的に」混じったものと考えられます。

2.いいえ、遷移が起きたときにも電子分極は起きていますが、エネル ギーの散逸(吸収)を伴うと云うことです。誘電率で云えば、電子分極 は誘電率の実数部、遷移による吸収は誘電率の虚数部に相当します。
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Date: Fri, 22 Feb 2008 17:56:16 +0900
Q3: 佐藤先生
Mです。再度にわたって、教えていただき有難うございます。
「物性何でもQ&A」の質問#1042についても参考になりました。

分極に関して次の2つの場合があると理解しました。
VirtualなProcess:基底状態→励起状態(中間状態)→基底状態:エネルギーの収支をともなわない。
RealなProcess:基底状態→励起状態:エネルギーの吸収を伴う。

このように理解する場合、

1.RealなProcessにおいて、光の自然放出により励起状態→基底状態が発生します。RealなProcessにおいても基底状態→励起状態→基底状態となりますが、この場合、熱や格子振動による散逸がないとすると、エネルギーの吸収と放出の収支はどのようになりますか?

2.VirtualなProcessにおける励起状態(中間状態)とRealなProcessにおける励起状態はどのように区別されますか?2つの励起状態で、電子軌道は違うのですか?VirtualなProcessにおける励起状態(中間状態)の緩和時間は?

3.RealなProcessにおいて、基底状態にとどまっている原子と励起された原子の混合状態はありますか?共鳴周波数の付近では、基底状態にとどまっている原子の誘電率(実部も虚部も)の方が伝導体に励起された原子より大きいと考えてよいですか?

4.励起された状態の緩和時間(励起されてから光の自然放出に至る時間)と伝導電子の散乱による緩和時間は同じですか?

先生のご好意に甘え、沢山の質問をして申し訳ありません。先生のご指導、感謝しています。
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Date: Fri, 22 Feb 2008 19:39:29 +0900
A3: M様、佐藤勝昭です。
 私は理論家ではないので、ご質問のすべてに完全に正確にはお答えできないと 存じます。いわば、私のフィーリングでお答えしますので、理論的に正確かどう かはわかりません。

1.もし光を吸って基底状態から励起状態に遷移確率Pで遷移し、エネルギーの 散逸がなく、低いエネルギーのほかの励起状態へ遷移することがなければ、励起 と同じ遷移確率で基底状態にもどります。このとき光を放出しますので、エネル ギーの収支はありません。

2.実過程で共鳴的に遷移する相手先の励起状態と、仮想過程で基底状態にとり こまれる励起状態とは、必ずしも同じではありません。仮想過程では、いくつも の励起状態を基底状態に取り込むことができますし、直接励起では禁止されてい る遷移でも、他の摂動で仮想的に取り込むこともできます。実過程は、時間がか かりますが、仮想過程では瞬時にとりこみが起きます。実際には遷移していない ので緩和時間という言い方はできないでしょう。

3.普通の光吸収過程で遷移が起きると言っても、部分的に励起がおきるだけで す。真性半導体の吸収では、フォトン数に応じた電子が価電子帯から伝導帯に励 起されます。
しかし、何らかの方法で強く励起すると、基底状態より励起状態の方が多く分布 することがあります。これを反転分布と呼び、レーザー発振するための必要条件 となっています。
誘電率は、多くの励起状態からの(仮想的な)寄与の重ね合わせで表されていま す。強い実過程の遷移が期待される共鳴条件の周波数では、準位の寿命が十分長 ければδ関数的な虚数部を持ち、実数部はその遷移に向かって発散的に増大する はずですが、実際には有限な寿命のため、虚数部 はピークになり、実数部はクラマースクローニヒの関係で与えられるS型の分散 曲線になります。このときどれだけ励起されたかは問題になりません。「共鳴周 波数の付近では、基底状態にとどまっている原子の誘電率(実部も虚部も)の方 が伝導帯に励起された原子(からの誘電率)より大きい」という設問自体、無意 味です。しかし、強励起したときは、誘電率は励起強度に応じた変調を受けま す。これが非線形光学効果です。

4.答えを先に述べれば、励起状態の緩和と伝導電子の緩和は別の現象です。励 起された状態の緩和時間には、励起状態の位相が失われる横緩和の緩和時間T2 と、基底状態に戻ることにとる縦緩和の緩和時間T1とがあります。励起状態の線 幅を(不確定性原理で)決めている緩和時間はT2であると考えられています。基 底状態にもどる緩和時間にも、フォノンが関与した非発光の緩和時間と、遷移確 率の逆数に比例する発光緩和時間とがあります。一方、伝導電子の散乱による緩 和時間は、イオン化不純物による散乱、格子振動による散乱、磁性不純物からの スピン散乱など、いろんな散乱機構が関与します。
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Date: Fri, 22 Feb 2008 20:31:31 +0900
AA: 佐藤先生
村上です。再三にわたり丁寧にご教示をいただき、有難うございました。
いろいろな参考書を読んでも、ともすればDetailだけに目がいき、全体像をつかめません。
先生のご回答により、全体像をつかむための指針を与えていただいたと感謝しています。
今後とも宜しくお願いします。
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1066. 電磁波とプラズモンの結合についての疑問

Date: Sun, 24 Feb 2008 02:28:06 +0900
Q: 佐藤先生

M*社のO*と申します。匿名でお願いします。
工学部電気系出身で、半導体素子の研究開発をしております。
「物性なんでもQ&A」を楽しく拝見しております。

先生のご専門ではない分野で申し訳ありませんが、 多くの方が質問される「プラズモン」に関しての疑問ですので 公開でご指導頂くのは価値があると思い、質問させて頂きます。

ちなみにこの質問は私の現行業務には全く関係なく、 趣味の勉強からの質問で、申し訳ありません。

質問は
「電磁波とプラズモンとは、
 周期構造(回折格子カップラ)や斜入射構成(ATRカップラ)を用いないかぎり、  直接的に結合しないのは、電磁波が横波でプラズモンが縦波だから」
という、よく見る説は、間違っているのでは?
というものです。

以下のように考えたのですが、どこか間違えてないでしょうか。
ご指導いただければ幸いです。

1.なぜ、金属の光反射スペクトルに、プラズモンの応答が現れるのか?
質問915「波長340nmに見られる 銀の光反射率の低下」のご説明は 花村栄一先生の教科書「固体物理学」(裳華房)に基づくものと思われます。
が、教科書の以下の説明(p.150)は、私には理解できませんでした。 「波数k→0の長波長近似では、横誘電率と縦誘電率が等しくなるので、  光で測定できる横電誘電率の中に、縦波のプラズモンを観察できる」

数学的に、横誘電率と縦誘電率が等しくなることは、 物理的に、電磁波とプラズモンとの結合を保証しないのではないでしょうか。
電磁波とプラズモンとの間に、どのような「力」が作用しているかを 説明しない限り、物理の説明になっていないような・・・

2.ある教科書の記述
塚田挺先生編集の「表面科学シリーズ8 表面の電子励起」(丸善)には、 以下のような記載があります。
「プラズモンの励起エネルギーより高いエネルギーの光を、金属に入射した場合、  縦波であるプラズモンを励起する」(p.30、須藤彰三先生のご担当の章) 上記は、特に何の注釈もなく、さも当然のように記述されています。
「電磁波とプラズモンが直接に結合しない」というのは 光学分野だけの誤解なのではないでしょうか。

3.ローレンツ力により、電磁波とプラズモンとが結合するのでは?
D.パインズ先生の「固体における素励起」(日本語訳 吉岡書店)には、 以下のような説明があります。(若き大槻義彦先生の訳!)
「外部のテスト電荷が電子密度変動と直接結合するのに対し、
 外部のテスト電磁波は電流密度のゆらぎと直接結合する」(p.204)
これは固体の光学的性質を理論的に説明する中に出てくるのですが、
ベクトルポテンシャルを用いているので、私のような素人には直感的理解が難しいです。

要するに、以下のようなことではないかと、考えてみました。
・電界と磁界を有する電磁波が、外部より金属に入射する。
・この外部電界により、金属中の電子が振動され電流が発生する。
・ところで、電磁波は波なので、あるいは電流による電界遮蔽により
 外部電界の強度は(電磁波の進行方向zに対して)z位置によって異なる。
・その結果、電流密度はz位置によって異なる
・電流密度が異なるので、電磁波の持つ外部磁界が電流に及ぼすローレンツ力が
 z位置によって異なる。
・ローレンツ力がz方向によって異なると、z方向に電子の疎密が生じる。
・その結果、z方向に伝搬するプラズモンが励起される。

4.結論
ローレンツ力であれば、
電磁波は波数ベクトルの方向に力を及ぼすことができるので、
よく見られる
「電磁波の電界は波数ベクトルに対して横方向の振動なのに、  なぜ波数ベクトルに対して縦方向の電子の疎密であるプラズモンを生み出すのか」
という疑問が解消するのではないでしょうか。

また、よく見られる
「表面に局在するモードの表面プラズモンポラリトンを、どのように電磁波で励起するのか」
という質問は、「縦波/横波」で説明するできるのではなく、
波数-振動数の分散(空気/金属界面に平行方向の、波数の整合)によりのみ 説明できるのではないでしょうか。

もちろん正確には、
(バルクプラズモンの固有振動数以上の振動数の)電磁波が金属に入射する場合、 バルクプラズモンではなく、 表面プラズモンポラリトンとの結合を議論する必要があると思います。
が、表面プラズモンポラリトンの非輻射モード(表面に局在)ではなく、 輻射モード(金属中を伝搬する)と電磁波の間には 波数-振動数の整合の問題がないため、結合には問題がないように見えます。
(「表面科学シリーズ8 表面の電子励起」p.120)

よく考えてみれば、プラズモンと電磁波が相互作用(分散曲線が交差)する場合、 分散曲線には上枝/下枝(upper/lowe branch)の2モードが 現れてもおかしくないはずですが、 よく見る解説は下枝(局在モード)しか触れていません。
これは初学者の視野を狭くさせる解説のような気がしたりします。

お忙しいところ申し訳ありませんが、ご指導よろしくお願いいたします。
(私の趣味にお付き合い下さると、嬉しい限りです。)

ちなみに、「電磁波とプラズモンが直接に結合しない」という誤解が 生まれた背景には、以下のような事情があるのかと、邪推してみました。

・佐藤先生のご専門の光磁気効果以外の、これまでの光学では磁気作用を無視できる誘電体を用いることが多かったので、  自由電子やローレンツ力は視界に入りにくい。
・光学問題の多くは静電近似で考えても説明できるので、  電流のような動的視点は見落としやすい。
 あるいは、つい電磁波を交流電界と同一視してしまう。
・波数-振動数の分散の整合は、初心者には説明しにくいので、  どこかの偉い先生が素人に分かりやすく誤魔化した説明をして、  それが流布してしまった。
 (例:電磁波の発生を説明するための、電界と磁界が互いに輪になるという、   ボルン先生オリジナルの図)
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Date: Sun, 24 Feb 2008 16:36:09 +0900
A: O様、佐藤勝昭です。
 むずかしい問題提起をされましたね。
固体中の電子の集団的運動によるプラズマ振動には縦波も横波もありま す。物質中を伝わる電磁波の電場も波数ベクトルkに対して垂直に振動 する横波E_Tと、kに平行に振動する縦波E_Lに分けることが出来ます。
従って、ご指摘のように「電磁波が横波でプラズモンが縦波」というの は短絡的です。横電場には分極による反電場が働きませんが、縦電場と では反電場のために復元力が働きます。このため、縦電場では自由電子 の運動はω_pで共鳴的になります。通常の実験では、縦電場の測定が行 われないので横電場について扱っています。(工藤恵栄:光物性の基礎、 オーム社、1977、p.82参照)工藤先生は、我が国の光物性の先駆者です。
光学の研究者が縦モードのプラズモンを考えないというのは誤解です。

1.「波数k→0の長波長近似では、横誘電率と縦誘電率が等しくなるの で、光で測定できる横電誘電率の中に、縦波のプラズモンを観察できる」
 この解釈は、私にもよくわかりません。k→0ということは、古典的な 電子の集団運動がおきることを意味していますが、
上記「光物性の基礎」p82によると、
横誘電率の式は
 ε_T=ε_∞ - (ω_p)^2/ω(ω-iγ)
縦誘電率の式は
 ε_L=ε_∞,L + (ω_p)^2/{(ω_p)^2-ω^2+iγω}
で与えられます。 
k→0でω_p→0で無い限り、縦誘電率と横誘電率は等しくありません。

2.ω>ω_pにおいては、横誘電率ε_Tの実数部は正となり、もはや、 電子の運動は電場に追従しなくなります。一方、縦誘電率は、ω=ω_p を境に正から負に変わりますが、このとき、電子の運動は電場の位相か ら遅れがでます。縦波の振動はω>ω_pでも存在するのです。「電磁波 とプラズモンが直接に結合しない」というのは誤解です。

3.私には、ローレンツ力で説明しなければならないかどうかわかりま せん。
 複素誘電率εをもつ媒体のlossはε"/|ε|=Im(-1/ε)で与えられます。 ε=1-(ω_p)^2/ω(ω+iγ)をこの式に代入すると、
loss=Im[-ω(ω+iγ)/(ω^2-ω_p^2+iγω)]
=γ(ω_p)^2/{(ω^2-ω_p^2)^2+ω^2γ^2}
これは、まさに、縦誘電率の虚数部と同じなのです。このことは、横波 モードのプラズモンが電界の横波成分に応答できなくなったとき、縦モ ードのプラズモンが励起され、これを通じてエネルギーの散逸を生じる と解釈できるのですが、この解釈で正しいのか自信をもってお答えでき ません。

4.プラズモンの分散曲線ですが、プラズモンと電磁波が相互作用して, 光の分散関係の直線ω=ckから曲がって離れていく辺りでは、もはや、 フォトンともプラズモンとも言えない状態です。プラズモン・ポラリト ンの上の分枝は格子振動との類推で言えば縦光学モードのポラリトンで す。
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Date: Thu, 28 Feb 2008 00:27:35 +0900
Q2: 佐藤先生へ
M社Oです(匿名でお願いします)。

遅くなりましたが、早速のご指導ありがとうございました。

不勉強なため恥ずかしながら工藤先生も「光物性の基礎」も知りませんでしたが、 さっそく読んでみますと、素晴らしい教科書でした。

工藤先生の本を勉強しているところですが、 佐藤先生に追加で質問させて頂けないでしょうか。

質問1.物質中を伝搬する電磁波の縦電界
確かに誘電体中を伝搬する電磁波には分極のため(分極波のため)縦電界が生じ 半導体のように自由キャリアはその縦電界の影響を受けると思うのですが、 金属中を伝搬する電磁波の縦電界が、イメージできません。
金属中も背景陽イオンの分極を考えればいいのでしょうか。

P.S.
「光物性の基礎」p.81や、以下のような記載がありました。
たぶん、これがヒントかと思うのですが、理解できません。
参考文献も勉強してみます。
「試料の厚さを入射光の半波長より小さくし、p偏向を斜入射させると、
 表面に誘起された電荷によって縦電界を与えることができ、
 縦振動による吸収を測定することができる」
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Date: Thu, 28 Feb 2008 01:10:33 +0900
A2: O様、佐藤勝昭です。
 「光物性の基礎」をきちんと勉強されるのは大変よいことと存じます。
金属であっても光の周波数まで行くと誘電率で扱うことが出来るという ことは、金属でも電子分極を考えてよいということになります。プラズ マを考えるということは正電荷の原子核と負電荷をもつ電子分布の重心 がずれるということを意味します。ωp以下の周波数では、電子が電場 に追従するのですから、誘電体と同じように考えてよいのではないでし ょうか?
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1067. 光学薄膜の反射

Date: Thu, 28 Feb 2008 02:56:17 +0900
Q: 佐藤勝昭先生:
K**大学のA*と申します(匿名でお願いいたします)。
先生のHPの、108.光学定数から薄膜の反射率を計算できますか?を 拝見させていただきました。光学薄膜は専門外で、疑問点および確認点が3つご ざいましてメールを送りました。どうかよろしくお願いいたします。

空気、薄膜、基板それぞれの複素屈折率を元に、界面での「電界の反射率および透過率」 が求まると理解いたしました。さらに、反射の電界Erは

Er =E0 r0 +E0 (1-r0 2 )r1 exp(i2φ){1-r1 r0 exp(i2φ)+(-r1 r0)2 exp (i4φ)+・・}
=E0 r0 +E0 (1-r0 ^2 )r1 exp(i2φ)/{1+r1 r0 exp(i2φ)}
=E_0 {r0 +r1 exp(i2φ)}/{1+r1 r0 exp(i2φ)}

と求めてくださっております。

1.光が界面で反射あるいは透過した場合の位相変化ですが、これは「電界の反 射率および透過率」が複素数であるので、位相の変化も考慮していると理解してよろしいでしょうか?

2.入射電界をE0 と定義しておりますが、実際にはexp{iωt}が隠れているが、光強度の反射率Rを 求める際は絶対値を取るので(exp{iωt}の大きさは1)、このexp{iωt}は省略し てあると理解してよろしいでしょうか?

3.電界Erが空気側に反射してくるわけですが、この反射のErと入射のE0 が干渉し合って、空気側で E0 +Erの電界が生じるのではないかと思います。したがって、空気側では入射光と比べて |(E0 +Er)/E0 |2 倍の強度の光が観測されるのではないかと思いますがいかがでしょうか?
薄膜の膜厚や光の波長、複素屈折率(半導体材料は主にSi、SiO2なので不変)をうまく設計すれば 光増幅デバイスのようなもの(最大で4倍?)ができそうです。

以上、私の身勝手な理解が含まれているかもしれませんが、その場合はご指摘いただけると うれしく思います。ちなみに先生が紹介されている藤原史郎編「光学薄膜」(共立出版1985初版)p.12-18は 読ませていただいております。よろしくお願いいたします。
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Date: Thu, 28 Feb 2008 13:13:35 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。

1.光が界面で反射あるいは透過した場合の位相変化ですが、これは「電界の反 射率および透過率」が複素数であるので、位相の変化も考慮していると理解して よろしいでしょうか?
A: 当然、位相の変化が考慮されています。

2.入射電界をE_0 と定義しておりますが、実際にはexp{iωt}が隠れているが、 光強度の反射率Rを求める際は絶対値を取るので(exp{iωt}の大きさは1)、こ のexp{iωt}は省略してあると理解してよろしいでしょうか?
A: exp(-iωt)は共通ですので、省略しています。
本来電界は実数ですから、電界を考える時は実数部をとることが暗黙の了解です。
光強度を考えるときは、絶対値の2乗で考えるので1となります。

3.電界Erが空気側に反射してくるわけですが、この反射のErと入射のE0 が干 渉し合って、空気側でE0 +Erの電界が生じるのではないかと思います。したがって、空気側では入射 光と比べて|(E0 +Er)/E0 |2 倍の強度の光が観測されるのではないかと思いますがいか がでしょうか?薄膜の膜厚や光の波長、複素屈折率(半導体材料は主にSi、SiO2なので不変)を うまく設計すれば光増幅デバイスのようなもの(最大で4倍?)ができそうです。
A: 100%反射のミラーを考えましょう。その時、媒体側の電界は0でなければなりませんね。
すると、反射界面では連続性から、空気側の電界もゼロでなければなりません。
このため、入射光と反射光は180度位相がずれています。
エネルギー保存則から増幅はできません。光学設計でできるのは、透過で失う分をとり戻すことができるだけです。
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Date: Thu, 28 Feb 2008 21:11:13 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生:

お忙しい中、ご回答ありがとうございました。参考にさせていただきます。
大変恐縮ですが、3番目の質問について再度尋ねたいと思います。

私の増幅という言葉の使い方が悪かったようで申し訳ございません。確かに100%の反射率で、 反射波の振幅は入射波と同じ振幅になり、入力と出力の比は1で、増幅率は1を超えません。

しかし、反射波と入射波が空気側で重なり合ってできる定常波の振幅は入射波の2倍になり、 定常波の強度は入射波の4倍になるのではないかと思います。

以下が再質問です:
電界反射率r(大きさは1とは限らない)を用いまして、光強度の反射率Rは

 R=|r|2=|Er/E0|2<1

と表され、一方、定常波E0+Erの光強度は入射波E0の光強度とくらべて

 |(E0+Er)/E0|2<4

倍で観測されるのではないかと思っていますがこの考えは正しいでしょうか?

実は私は今、薄膜に光が垂直入射した際に空気側でできる定常波の強度を 求めたいと思っているわけでございます。何度も申し訳ございませんが よろしくお願いいたします。
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Date: Fri, 29 Feb 2008 00:25:27 +0900
A2: A様、佐藤勝昭です。
 干渉を考えておられるのですね。
入射光がE0expi(k0r-ωt)で垂直入射したときの振幅反射率がr=|r|expiδであったとしましょう。
反射光はE_r=|r|E0expi(-k0r-ωt+δ)
両者を合成した電界はE=E0exp(-iωt){expi(k0r)+|r|expi(δ-k0r)}
強度は
I=E02{exp-i(k0r)+|r|exp-i(δ-k0r)}{expi(k0r)+|r|expi(δ-k0r)}
=E02{2+2|r|cos(2k0r-δ)}
となり、I/E02=2{1+|r|cos(2k0r-δ)}
となりますから、
位置rとともに変動し、最大は2(1+|r|), 最小は2(1-|r|)となります.
|r|=1のときは、干渉縞のピークで4倍、極小で0となります。
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Date: Fri, 29 Feb 2008 15:29:35 +0900
AA: 佐藤勝昭先生:
このたびは何度もご丁寧な説明をありがとうございました。式の導出を確認いたしました。
教えていただいたI/E02を導き出すプロセスを踏まえて今考えている別の光学薄膜構造(この質問では空気/薄膜/基板でした)に応用したいと思います。
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1068. 単元素金属の結晶構造の起源

Date: Wed, 05 Mar 2008 22:43:13 +0900
Q: 佐藤勝昭 先生
私は T*大学 材料系 M1のK*と申します
物性なんでもQ&AのWebサイトを拝見させて頂いています.
単元素金属の結晶構造の起源について質問させて下さい.
(Web上に掲載する際は匿名でお願いします)

単元素金属の結晶構造を決定する要因は何でしょうか?
特に,細密充填構造であるfccとhcpの違いに興味があります.

以下に,現時点で自分が考えていることを述べます.

 剛体球原子で考えたhcpの軸比c/aは√(8/3)≒1.633だが,
 常温常圧下でhcpである単元素金属のc/aは,
 いずれも1.633ではなく原子形状を真球と見なせない.
 (Zn, Cdでは1.633より大きく,それ以外では1.633より小さい)

 一方,fcc金属をhcpと比較するために,
 最隣接原子間距離をa,細密面間隔をc/2と考えると
 全てのfcc金属はc/a=1.633で,原子形状は真球と見なせる.

 このようなfccとhcpとの違いは,
 電子軌道の形状が異なることに起因している.

と,ここまでは考えたのですが, 金属の電子軌道と結晶に関する文献を探し出せず, この先どう考えたらいいのかが分からない状態です.

長々と書いてしまいましたが,ご回答いただけると幸いです.
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Date: Thu, 06 Mar 2008 15:18:39 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。私は、金属の専門家ではないので、あなた の問題提起は、むしろ、貴学の先生方にしていただいた方がよいのでは ないかと思うのですが、ここでは私なりの考えを述べさせていただきます。
 単元素金属においてどの結晶構造が安定化ということは以前からの課題 のようです。そもそも、金属の結晶構造は、剛体球の充填だけで説明でき るものではありません。あなたが指摘しておられるように、hcpになると、球 同士が重なり合ってしまいます。これをあなたは、電子軌道で説明しようと されているのですが、金属の結合は、原子の軌道を持ってきても、説明で きないのです。なぜなら、金属の結合は、原子から結晶に供給されて結晶 全体に広がるバンド電子が担っており、教科書にあるように、金属の結晶 においては、「電子の海に原子核が浮かんでいる」状態であると見なせる からです。従って、原子核がどのように配列すればエネルギーが低くなる かは、バンド電子のエネルギー状態が鍵を握っているのです。
 このような場合、第1原理計算によっていくつかの結晶構造について、 トータルエネルギーを計算し、その中で、最もエネルギーの低い構造が実現 すると考えるのです。現在ではコンピュータの発達によって、いろいろな原子 について、第1原理計算が行われ、それにもとづいて物性値が議論できる 用になっています。

 しかしながら、話はそれほど単純ではなく、有名なFeのfccとbccの問題 ですら、通常のバンド計算では、どちらが安定か完全には予測できず、 「強磁性をもつことがbccを安定化する原因」だろうと推測されています。
(M. Ekman, B. Sadigh, K. Einarsdotter, P. Blaha: Phys. Rev. B 58, 5296 - 5304 (1998); "Ab initio study of the martensitic bcc-hcp transformation in iron ")

地球の内殻においては高温高圧の環境となっており、この条件下での 第1原理計算からは、Feはhcpが安定であろうとされています。
(L. Voc?adlo, J. Brodholt, D. Alfe`a, M.J. Gillan, G.D. Price: Phys. Earth & Planetary Interiors 117, 123-137 (2000) "Ab initio free energy calculations on the polymorphs of iron at core conditions")

 このような計算では、全エネルギーを求めるので、個々の原子の位置で バンドの電子軌道がどうなるかまでは、論文に書いてありません。あなたが、 仮説を立てたのなら、それを実証するために、自分で計算して、波動関数 の形状、オーバラップと結晶構造の関係をいくつかの物質について系統的 に調べるしかないでしょう。
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Date: Tue, 11 Mar 2008 21:05:23 +0900
Q2: 佐藤先生, Kです。
早速ご返答いただきありがとうございます.
返事が遅れてしまい申し訳ございません.
金属の電子配置・電子軌道で結晶構造を整理できれば便利だと思い調べていましたが, やはり簡単な話ではないようですね.
私は実験系で計算が不得意なので,バンド計算を基に議論するのは厳しそうです. 一応,自分なりに調べ続けたところ,
 金属学のための原子論 / W.Hume-Rothery著 吉岡正三訳, コロナ社, 1968年 という文献を見つけ,遷移金属の章に
「混成軌道の形状と結晶構造に相関が有り,d電子の比率が重要である」 といった内容が書かれていました.
(恥ずかしながら電子論に明るくないため,あまりフォローできていません)
ご紹介いただいた論文とともに,もう少し考えてみます.
また,何かありましたらよろしくお願いします.
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Date: Wed, 12 Mar 2008 00:50:31 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 ヒューム・ロザリー則で有名な先生の本ですね。
ヒューム・ロザリーは金属間化合物に関する法則(価電子数について) や合金の化学的親和力効果を明らかにした学者です。
私は手元に持っていないので、「混成軌道の形状と結晶構造に相関が有 り,d電子の比率が重要である」ということが書かれた前後のページを コピーしてご送付願えませんでしょうか。
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Date: Wed, 12 Mar 2008 10:16:13 +0900
Q3: 佐藤先生、Kです。
「金属学のための原子論」の混成軌道と結晶構造に関する箇所を引用してお送りします.
該当ページ以外にも,金属学的に基本的なことが書かれているので, 現在勉強している最中です.以上,よろしくお願いします.
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Date: Sun, 16 Mar 2008 23:09:29 +0900
A3: K君、佐藤勝昭です。
 「金属学のための原子論」該当ページをお送りいただき有り難うござ いました。この本が書かれた1950年代には、電子状態を第1原理から計 算するなどということはとても不可能だったので、「経験則」によって 定性的に理解するしかありませんでした。現実の金属では、各原子から の電子軌道が混じり合って、純粋のs, p, dの軌道ではなくなっている のですが、その対称性は保たれていることが多いので、そこに注目して、 軌道の混成の度合いと結晶構造の関係を取り出して説明しているのです。  s電子の波動関数は方向性のない偶関数です。p電子の波動関数は、 軸方向に伸びた奇関数です。従って、原子の中心付近には密度が低く、 くびれています。s電子とp電子の混成で作られる電子軌道における方向 性の強いp軌道の混成の割合が結晶構造と関係することは、同じ炭素で もsp2ではグラファイト構造をとり、sp3ではダイアモンド構造になるこ とに現れています。
 遷移元素におけるd電子の波動関数は、2箇所にくびれを持つ方向性 の強い偶関数です。従ってこの電子がどれくらい結合に寄与するかで、 結晶の構造が決まるというのが、p441での説明です。3d電子のエネルギ ー準位は周期表を右に行くに従って、フェルミ面からだんだん深くなっ ていきます。このために、d電子の混成の程度は、IIIA族のScではかな り大きく、その結果異方性の強いhcp構造をとります。一方、系列を右 に進んでCuにいくとd準位はフェルミ準位から2eVも深い位置に来て、混 成が少なくなってfccになります。このように遷移金属の範囲ではこの ストーリーが成り立ちますが、隣のIIB族のZnとなると、d電子殻は満ち て閉殻(3d^10)となりd電子は結合に寄与しなくなりますが、結晶構造は hcpとなります。
 このようなアプローチは現象論として直感的にわかりやすいので、結 晶化学としてよく使われていますが、あくまで定性的な説明やトレンド がわかるという程度で、具体的な金属においてどちらの結晶構造が安定 に存在するかは説明できません。このことは、p442の6章のちょっと上 の行に「dバンドの形の計算の大部分はその基礎的仮定が正しくなかっ たであろうことが示されている。」と書いてあります。現在では第1原 理計算が進み、多くの物性が説明されるようになってきました。しかし、 まだ完全には出来ていないのです。
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Date: Mon, 17 Mar 2008 18:36:55 +0900
AA: 佐藤先生, Kです
分かりやすい説明をして下さりありがとうございます.
教科書の理解がかなり深まりました.
自分の目的は,「結晶構造の起源の定性的な説明」なので,
遷移金属に関しては,この教科書の内容と佐藤先生のご説明でひとまずは事足りそうです.
遷移金属以外に関しては,もう少し教科書を読み進めた上で考えたいと思います.

また,何かありましたらよろしくお願いします.
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1069. ナトリウムターシャルプトキサイドの物性

Date: Tue, 18 Mar 2008 16:46:06 +0900
Q: 佐藤勝昭様
S*社安全技術室のH**です。
ホームページを見てわらにもすがる思いでメールを差し上げます。
管理している危険物倉庫の消防への届出の中に
ナトリウムターシャルプトキサイド (2類)指定数量1000Kgの記載があります。
化学便覧、MSDS、インターネットでの検索でも見つけることが出来ず困っています。
物性またはCAS 登録番号を確認したいのでよろしくお願いします。
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Date: Tue, 18 Mar 2008 18:03:19 +0900
A: H様、佐藤勝昭です。
 私は、化学屋ではないので、正確なことはわかりませんが、
ナトリウムtプトキシドのことと思います。これは金属アルコキシドの仲間で強塩基性です。
カリウムtプトキシドは、よく使われているようですが、金属種がナトリウムのは市販品がないのではないかと存じます。
金属アルコキシドを扱っている高純度化学に問い合わせてはいかがでしょうか。
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Date: Tue, 18 Mar 2008 18:11:32 +0900
AA: 佐藤勝昭様 
早速ありがとうございました。
Na・t-BuOではないかと検索中です。
高純度化学さんに問い合わせて見ます。
本当にありがとうございました。
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1070. 高温におけるステンレスの光学的性質

Q: Date: Fri, 14 Mar 2008 09:31:59 +0900
Dear Prof. Sato,
Q: My name is Bisson. I work at A** company.
I work with laser cutting technology.
I am sorry to disturb you in your work.
I got your reference from Mr. S*, whom you probably know well I think.
You gave him the optical constants of stainless steel at room temperature.
Of course, we are interested in the optical data of stainless steel at 1 and 10 microns and at the melting point in order to calculate absorption. I found a paper relevant for this problem, in
attachment herewith.
But it is for iron. What can we expect for stainless steel?
Also, is the electrical conductivity of stainless steel at the melting point both in soild and liquid phases available?
If so, do you think we can use the Hagen-Rubens law to calculate absortpion?
Thank you in advance,
Best regards,Bisson
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Date: Mon, 17 Mar 2008 00:44:45 +0900
Dear B
Thank you for your e-mail.
The paper you sent me is concerning about the infrared emissivity of transition metals.
You seem want to know infrared absorption of stailess steel.
Generally speaking, "emissivity" is not directly related to "absorption". Although the emissivity is a measure of the absorptivity of material, it should be noted that the value depends on the surface conditions and geometry of materials.

Emissivity of stainless steel depends on material conditions:
emissivity is 0.85 for weathered SS, 0.075 for polished SS, and 0.54 - 0.63 for type 301 SS.
(http://www.engineeringtoolbox.com/emissivity-coefficients-d_447.html)
Therefore, it is evident that you cannot use the emissivity values instead of absorptivity.

Spectral dependence of absorption in SS may be nearly the same as those of Fe. The Hagen-Rubens law may be applied to any metals including liquid states.
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Date: Wed, 19 Mar 2008 08:43:52 +0900
Q2: Dear Professor Sato,
Thank you very much for your kind reply and for introducing this interesting web site.
I was asking about the possible jump of absorption at the melting point of stainless steel.
Such phenomenon was found for pure iron as you can see in the attached file.
Best regards, J-F.Bisson
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Date: Thu, 20 Mar 2008 09:29:38 +0900
A2: Dear J-F
I understand your question. I am not an expert in the emissivity of materials. Whether there is a clear jump in the emissivity, so in turn the absorption, seems to be a delicate problem, since there are so many uncertainties of determining factors for the emissivity. I cannot judge the ratio of emissivities of liquid and solid state in Fe, 1.03, is within the experimental error or not.
Concerning about the emittance of stainless steel in the vicinity of the melting point (1700K) you can refer to the following article.
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A.Cezairliyan, A. P. Miiller: Thermophysical measurements on low carbon 304 stainless steel above 1400 K by a transient (subsecond) technique;
International Journal of Thermophysics, Volume 1, Issue 1, pp.83 -95 (1980)
Abstract Simultaneous measurements, by a subsecond duration transient technique, to determine the specific heat capacity, c_ p , the electrical resistivity,rho, and the hemispherical total emittance in the temperature range 1400-1700 K, and the melting point and the radiance temperature at the melting point, of AISI type 304L stainless steel are described. The results are expressed by the relations:
c_p=1127-7.265x10^-1+2.884x10^-4 T^2
rho=75.59+4.695x10^-2T-9.592x10^-6 T^2
where c_p is in J ・ kg^-1 ・ K^-1, rho is in Mohm・ cm, and T is in K. The value of the hemispherical total emittance is 0.37 in the range 1700-1900 K. The melting point and the radiance temperature (at 653 nm) at the melting point are 1707 and 1590 K, respectively, yielding a value of 0.385 for the normal spectral emittance at the melting point. Estimated inaccuracies of the measured properties are: 3% for the specific heat capacity, 2% for electrical resistivity, 5% for hemispherical total emittance, and 8 K for melting point and radiance temperature at the melting point.
Best regards, Katsuaki
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Date: Wed, 19 Mar 2008 22:02:44 -0400
Dear Professor Sato,
AA: Thank you very much for your kind reply. I will consult the paper you suggest and, if I find something interesting, will let you know.
Best regards,
J-F. Bisson
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Date: Wed, 16 Apr 2008 10:35:36 +0900
Dear Professor Sato,

Comment: Following our correspondence about optical properties of metals, especially stainless steel, I would like to give you some feedback. Following your mail and article from Cezairliyan et al. you introduced us, I studied these papers. Then I found another paper from Makino in attachment herewith. When comparing the normal emissivity measurement of Makino with the resistivity given by the fitting formula by Cezairlyan, we find that the Hagen-Rubens law applies well for 10 microns wavlength but not so well at 1 micron wavelength. However, I am not sure whether it is correct to compare AISI 304L with JIS SUS 304, which are two different standards, how do you think?

Anyway, a more complete modelling of the optical properties of metals is proposed by Makino, which I think is reasonable. From the latter`s data and model, refractive index values are: n= 12.3 -12.9 i and n=5.1-6.1 i for 10.6 micron and 1.06 microns wavelengths respectively.

Now, when using the Fresnel formula to calculate the absorption as a function of wavelength, the conclusions are quite different from that obtained with complex refractive index at room temperature. Indeed, if I did not make a mistake, at large incident angle, the absorption at 10 microns becomes larger than at 1 micron!

Best regards,

Jean-Francois Bisson
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Date: Fri, 18 Apr 2008 00:00:54 +0900
Dear Jean-Francois
Thank you for your e-mail with an attached file of Makino's paper. As for your question whether we can compare AISI 304L with JIS SUS 304, I think the difference may not be serious as far as the optical properties are concerned.
I read through the Makino's paper. Since the paper makes so many assumptions to the parameters, I feel some umbiguity in his conclusion.
I recommend you to carry out experiment yourself to find whether Hagen-Rubens rule is the case or not.
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1071. 複合材料の比熱

Date: Tue, 8 Apr 2008 11:35:55 +0900
Q: 佐藤勝昭様
初めてメールさせて頂きます。N*センターのU*と申します。
現在,発泡PVC(ポリ塩化ビニル)とFRP素材の比熱データを探しているのですが見つからず,難儀しております。
そもそもPVCやFRPといった素材は材料の割合によって変わる物でデータを得るには製品製作会社に問い合わせる他ないような状況なのですが,当の製作会社に問い合わせた所,データを持ち合わせていないとの回答を得ました。
そこで,夫々の密度,比熱のデータを用いて算出することは可能でしょうか?

(1) 発泡PVC(ポリ塩化ビニル)
材料1:PVC
密度 1160kg/m^3 比熱 0.3Kcal/Kg℃
材料2:空気
密度 1293kg/m^3 比熱 0.241Kcal/Kg℃

(2) FRP(繊維強化プラスチック)
材料1:樹脂
密度 1150kg/m^3 比熱 0.229Kcal/Kg℃
材料2:ガラス繊維
密度 2580kg/m^3 比熱 0.201Kcal/Kg℃

(1)の発泡PVCは製品の密度は200kg/m^3で材料の割合は判りません。ですので割合は2つの材料の密度から 適当に決定するしかないと考えています。
(2)のFRPは樹脂とガラス繊維の割合を50%:50%ととして考えています。
全くの専門外で的外れな考え方をしているかも知れませんが,ご教示宜しくお願いいたします。
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Date: Thu, 10 Apr 2008 18:13:36 +0900 (JST)
A: U様、佐藤勝昭です。
 混合物質が2種類の物質1と物質2から構成されているとします。
全体の体積がV、物質1の体積比率がfとします。物質2の比率は1-fとなります。
物質1、2の密度をρ1,ρ2とします。また比熱をc1,c2とします。
物質1の熱容量Q1はQ1=c1ρ1fVです。
一方、物質2の熱容量Q2はQ2=c2ρ2(1-f)Vです。
混合物質の熱容量Qは
Q=Q1+Q2={c1ρ1f+c2ρ2(1-f)}V
混合物質の質量MはM={ρ1f+ρ2(1-f)}V
従って、混合物質の比熱Cは
 C=Q/M={c1ρ1f+c2ρ2(1-f)}/{ρ1f+ρ2(1-f)}
となります。
(1) 発泡PVC(ポリ塩化ビニル)
 空気の密度はあなたが書いておられる数値の1/1000です。
ρ2=1.293kg/m^3
従って、発泡PVCにおいてはρ2=0として差し支えありません。
 C=c1となります。発泡PVCの比熱はPVC自身の比熱と同じです。

(2) FRP(繊維強化プラスチック)
f=0.5ですから、
 C={c1ρ1+c2ρ2}/{ρ1+ρ2}
=(0.229x1150+0.201x2580)/(1150+2580)
あとは自分でやってください。
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Date: Fri, 11 Apr 2008 10:14:44 +0900
Q2: 佐藤勝昭様
丁寧な回答ありがとうございます。
複合物質の熱特性について,もう一つ質問させて頂いても宜しいでしょうか。
先に比熱の計算方法で質問させて頂いたものと同じ複合物質の熱伝導率の推算方法についてです。

(1) 発泡PVC(ポリ塩化ビニル)
材料1:PVC
密度 1160kg/m^3 比熱 0.3Kcal/Kg℃
熱伝導率 0.126W/mK
材料2:空気
密度 1.293kg/m^3 比熱 0.241Kcal/Kg℃
熱伝導率 0.0241W/mK

(2) FRP(繊維強化プラスチック)
材料1:樹脂
密度 1150kg/m^3 比熱 0.229Kcal/Kg℃
熱伝導率 0.267W/mK
材料2:ガラス繊維
密度 2580kg/m^3 比熱 0.201Kcal/Kg℃
熱伝導率 1.03W/mK

(1)の発泡PVCは空気の熱伝導率がPVCの熱伝導率に比べると非常に小さいので,比熱の時と同様にPVC自体の熱伝導率と同じとして良いのではないかと考えています。
(2)のFRPは前回質問させて頂いた時と同様に樹脂とガラス繊維の割合を50%:50%ととして考えています。

比熱・熱伝導率については,現在測定を依頼しておりましてデータ待ちの状況です。しかし,計測データが出てくるのが2週間近く先になるということで当面の措置として推算値を使用して仕事を進めていこうと考えている状況です。

何度も申し訳ありませんが何卒宜しくお願い致します。
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Date: Fri, 11 Apr 2008 16:48:05 +0900 (JST)
A2: U様、佐藤勝昭です。
 熱伝導率は、流れを考えているので、比熱ほど簡単ではありません。
界面での熱抵抗にも配慮が必要です。
複合材料の熱伝導率の理論は、下記論文を取り寄せて勉強してください。

F C Chen et al: A theory of the thermal conductivity of composite materials;
J. Phys. D: Appl. Phys. 10 (1977) 571-586

長谷 隆: 複合材料の熱伝導に関する統計理論;
日本機械学會論文集. B編, Vol.45, No.395 (1979.07.30)pp. 1003-1010
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Date: Mon, 14 Apr 2008 09:08:40 +0900
佐藤勝昭様
ご回答ありがとうございます。
自分なりに調べている所ですが,中々難しそうです。
何処までできるか判りませんが,教えて頂いた論文を参考に頑張ってみようと思います。
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1072. 酸化物焼結体の酸素の不定比性(酸素欠損)の定量

Date: Wed, 16 Apr 2008 14:15:22 +0900
Q: 佐藤先生
初めてmailさせていただきます。
**の**と申します。(匿名「A社のB」でお願いします。)

遷移金属、特にニッケルや亜鉛などの酸化物焼結体の酸素の不定比性(酸素欠損)の 定量に難儀しております。

Ti、やCe、Mnなどのように低次の酸化物が存在する場合は、分析できるようですが、2価の酸化物についての酸素の欠損量の 定量方法は文献等を含めて情報を集めてみましたが、なかなか難しいようでした。

実際、ESCA、EPMA、NMR等を試してみましたが、明確には測定できませんでした。

酸素欠損の定量について、先生にご知見等がございましたら、お願いできないでしょうか。
よろしくお願い致します。
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Date: Wed, 16 Apr 2008 18:04:09 +0900 (JST)
A: B様、佐藤勝昭です。
 高温超伝導関係者は酸素不定比を日常的に調べているようです。
旧佐藤研究室の助教で、現長岡技術科学大学の石橋隆幸准教授(専門:超伝導)に聞きましたところ、次 のような回答がありました。
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酸素の定量は、ヨード滴定法で行うことができます。
Mn, Co, Feなども分析できるようです。
一般に、分量が必要なので、薄膜では難しいようですが。
 また、隣の研究室でこの関係の仕事をしている先生に伺いましたところ、 組成比がわかっていれば、ヨード滴定法で酸素量がわかるそうです。
酸素欠損についても、実際に金属の価数が変化していれば、測定で きるのでなないでしょうかとのことです。
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Date: Wed, 16 Apr 2008 19:46:51 +0900
Q2: 佐藤先生
早速お返事いただきまして、ありがとうございました。
ヨード滴定法でCuやCo、Feなどは分析できるようですが、Ni、Znについては、分析例が見当たりませんでした。
2価の酸化物の場合、Cuのように価数の異なるCuが知られているものは分析が可能で、 NiやZnのように価数の異なるものについてあまり知られていないものは 分析が難しいのでしょうか。
それとも、少ない量の酸素数の変化が価数を変えるほどでない場合は 定量が難しいのでしょうか。
また、そのような場合の定量方法はありませんでしょうか。
ご知見等ございましたら、よろしくお願い申し上げます。
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Date: Sun, 20 Apr 2008 23:31:16 +0900 A2: B様、佐藤勝昭です。  このところ超多忙で、お返事が遅くなりました。すみません。 Google scholarで iodometry nickelと検索すると、397編の論文が引っかかってきます。
iodometry zincでは381編かかります。丹念に探せば求めるものがあるのでは?
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Date: Mon, 21 Apr 2008 08:30:33 +0900
AA: 佐藤先生
ご多忙のところ、ありがとうございます。
当方でも再検索してみます。
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Date: Sat, 26 Apr 2008 09:51:40 +0900
A3: B様、佐藤勝昭です。
 もう一度、長岡技科大に聞いてみました。
「この方が言われるように、NiやZnの場合は価数が安定 なので、酸素欠損の量を滴定で調べるのは難しいようです。
また質問が漠然としていますので、答えがそのまま当てはまるかど うかわかりませんが、酸化物超伝導体の場合では、酸素欠損や過剰な酸 素によりキャリアが誘起されるため、電気抵抗率や、ホール測定で見積 もります。酸素欠損が何かほかの物理現象に影響していることが明らか な場合にはその物理現象を測定して確認できるのですが、ありませんで しょうか?」ということでした。
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Date: Sun, 27 Apr 2008 10:24:48 +0900
AA: 佐藤先生
ありがとうございました。
「酸素欠損が他の物理現象に影響していないかどうか」という観点からも 見直してみます。
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1073. Fe-Al合金の結晶構造

Date: Tue, 22 Apr 2008 17:22:02 +0900
Q: 熊本大学の邱然鋒(Qiu Ranfeng)です。FeAl4, Fe2Al9, FeAl2 などのAl-Fe系金属化合 物の結晶系及び格子定数を知りたいですが,教えてもらいませんか。よろしくお願いいたします。
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Date: Tue, 22 Apr 2008 22:13:18 +0900
A: 邱様、佐藤勝昭です。
 Fe-Al系合金の相図は図の通りです。
FeAl4は存在しません。
結晶構造ですが、
FeAl bcc (秩序相)
Fe3Al DO3 (無秩序相)
Fe2Al3 cubic (complex)
FeAl2 triclinic
Fe2Al5 orthorhombic
FeAl3 monoclinic
となっています。
格子定数は文献を調べなければなりません。
添付の
文書の文献を調べてください。
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Date: Wed, 23 Apr 2008 11:17:15 +0900 AA: 佐藤先生:  熊本大学の邱です。ほんとうに有難う御座いました。 ----------------------------------------------------------------------------------

1074. パイプコイルの加振試験

Date: Wed, 16 Apr 2008 15:49:26 +0900 Q1: 佐藤様
いつも本HPを利用させて頂いております。
N*社S*と申します。Webでは、社名、氏名とも匿名でお願いします。
物質に関する質問ではありませんが、
のような試験を実施したいと考えていますが、よい方法が見つかりません。よい案があればご教示お願い致します。
添付ファイルに示す部品を3Hzで振って評価をします。
くれぐれも匿名でお願いします。宜しくお願致します。
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Date: Wed, 16 Apr 2008 17:50:38 +0900 (JST)
A1: S様、佐藤勝昭です。
 フランジとバネ状のパイプにC重油を入れて3Hzで振動させて、何を試験したいので すか。説明不足なのでお答えのしようがありません。
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Date: Wed, 16 Apr 2008 18:11:18 +0900
Q2: 佐藤様
お世話になります。説明不足で申し訳ありませんでした。
本部品は、エンジンの燃料系配管の一部に設置されます。配管が振動します。
振動を吸収するようにコイル状のパイプ(SUS)になっています。
試験条件は、運転時のデータから決定しています。
まだ情報が不足でしたら連絡下さい。分かり範囲で回答致します。
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Date: Wed, 16 Apr 2008 21:00:08 +0900
A2: S様、佐藤勝昭です。
 まだ、何を試験したいのかわかりません。
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Date: Thu, 17 Apr 2008 07:52:50 +0900
Q3: 佐藤様
情報が不足しており申し訳ありません。フランジとパイプは溶接で締結しております。
溶接部の耐久性を確認したく本試験を計画しました。
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Date: Sun, 20 Apr 2008 23:36:43 +0900
A3: S様、佐藤勝昭です。
 溶接部の耐久性なのですね。
バネ状のものがパイプであるという点をのぞけば、普通のバネを板に溶 接したものの振動試験と同じではないのでしょうか。
 バネの振動試験では、御社の技術が定評あると思うのですが・・。
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Date: Mon, 21 Apr 2008 11:10:13 +0900
Q4: 佐藤様
お世話になります。確かにコイル状のパイプを加振することはできるのですが、パイプ内部に圧を立て、且つ、油温を150度にするところで行き詰っています。
社内的にも事例がなく悩んでいます。上記のことを考慮していただきご教示頂ければ幸いです。
宜しくお願い致します。
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Date: Sat, 26 Apr 2008 09:47:43 +0900
A4: S様、佐藤勝昭です。
 このところ超多忙でしたので、お返事が遅くなってごめんなさい。
あまり一般性のないご質問で、職場での問題のコンサルタントを求めて いるものなので、「なんでもQ&A」の趣旨には沿っていないのですが、
お困りのようなので、試験方法についての提案を添付図に示します。
 オイルを何らかの方法で加圧し加振機の固定側から供給します。
 振動側のフランジはメクラ蓋をしておきます。
 パイプの加熱はバンドヒータで行います。
 温度センサを使って温度制御を行います。
この提案で何か事故が起きたとしても責任は負いかねますので、お含み置き下さい。
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Date: Sun, 27 Apr 2008 08:21:15 +0900
Q5: 佐藤様
お世話になります。
回答ありがとうございました。
オイルの温度を上げると体積膨張で内圧が上昇してしまいます。
内圧を一定に保持するのに苦労しそうです。(圧力鍋?)
都合のよい装置があればご紹介いただけないでしょうか。
再三のお願いで申し訳ありませんが、宜しくお願い致します。
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Date: Sun, 27 Apr 2008 11:14:32 +0900
A6: S様、佐藤勝昭です。
 封じきりにするとたしかに内圧が上がってしまいますから、外部に圧 力調整装置を付けているわけです。流体の圧力はどこでも一定ですから 外部の圧力調整装置において、圧が一定になるように制御すればようで しょう。具体的には気体を使ってオイルに加圧して、圧が一定になるよ う気体側の圧力調整弁を制御すればよいのです。
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Date: Sun, 27 Apr 2008 13:31:26 +0900
AA: 佐藤様
お世話になります。
お休みのところ申し訳ありませんでした。
アドバイスを基に試験装置の設計に入りたいと思います。
本当にありがとうございました。
今後とも宜しくお願い致します。
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1075. 分光分析における微分スペクトルについて

Date: Mon, 21 Apr 2008 15:25:43 +0900
Q: 佐藤先生
HPを拝見して、メールをさせていただきます。
お時間とりまして申し訳ございません。
K大学でシニアエンジニア(研究員)をしておりますS*といいます。
公開のときは匿名をお願いいたします。
FT-IR で蛋白質の二次構造の変化について調べています。
アミドⅠバンドをピーク分離してαへリックス、βシート、ランダムコイルの ピークを明らかにしたいのですが、分からないことが数点あります。

1.二次微分によって各ピーク位置が明らかとなるといわれていますがなぜなのでしょうか。

2.二次微分はスペクトルをスムージングしなければ行なってはいけないのでしょうか。

  積算50、分解1.0cmなのでずいぶんがたがたのスペクトルです。測定はBKG測定の直後で行なうため水蒸気の影響は最小限に抑えていると思います。
3.二次微分の後、各合成スペクトルを元のスペクトルと共に表示してあるグラフを 作りたいのですが、二次微分の後、どのような処理をしているのでしょうか。

当方物理、数学を大学で学んでいません(専門は生物学です)理解が足りないかと思います。
物理、数学を学んでいなくても分かるような文献や、成書がありましたらご紹介いただければ幸いです。胴かよろしくお願い致します。
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Date: Fri, 25 Apr 2008 01:04:57 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 ここんところ超多忙のためお返事が遅くなってごめんなさい。
スペクトル線の解析に2次微分を使うのお話ですが、スペクトル線がブ ロードでなだらかなときとか、いくつかのスペクトル線が重なっている ようなときに使われる手段です。
1.ローレンツ型吸収スペクトルを仮定し、1回微分した曲線はω=ω0 で0を横切ります。単一ピークであれば、微分して0を横切ればそこが ピークですが、ほかのピークと重なっているときには、必ずしもゼロの 位置とは限りません。こんなとき、もう一度微分すると、吸収係数の1 次微分が最も変化している位置にピーク位置が現れるので、ピーク位置 を見つけやすいのです。
2.一般に、わずかな変化でも微分しますと大きなピークになってしま います。ノイズがのっていると、それも微分して、肝心の情報が見えな くなるので、スムージングしたほうがよいのです。
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Date: Fri, 25 Apr 2008 10:47:23 +0900
AA: 佐藤先生
お忙しいいなかをご丁寧にご解答くださいまして、ありがとうございました。
ローレンツ型吸収スペクトルとはなど、分からないことがあります。勉強を進めて、理解できるようがんばります。
また理解できないことがありましたら質問させていただくかもしれません。よろしくお願い致します。
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Date: Fri, 25 Apr 2008 23:59:57 +0900
A2:S様、佐藤勝昭です。
 ローレンツ型の振動子モデルでは、光子エネルギーをω、スペクトル線の中心エネルギーω0、スペクトル 線の半値幅γとすると吸収係数αは、近似的に次の式で表されます。
α=A*(ωγ)^2 /{(ω^2-ω0^2)^2+(ωγ)^2}
この式をEXCELで計算したものが添付のスペクトルの青の記号です。(図をクリックすると拡大します。
ω0=2, γ=0.5, A=1として計算してあります。
この曲線の1次微分のスペクトルを数値的に求めたものを赤の記号で、 2次微分のスペクトルを求めたものを緑の記号で示します。
2次微分を取ったものは、もとのスペクトルよりピーク位置をはっきり 示していることがわかるでしょう。
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Date: Mon, 28 Apr 2008 13:52:44 +0900
AA: 佐藤先生
この度は何度もご教授いただきありがとうございました。
K大学理工学部 Sです。
グラフの形はよく分かりました。データの2次微分から 分析をして、間違いの無い結論を出したいと思います。
深く御礼申し上げます。
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1076. 空間電荷制限電流について

Date: Mon, 21 Apr 2008 15:29:56 +0900
Q: 東京農工大名誉教授  佐藤先生
こんにちは、S*社のH*と申します。 半導体プロセスが仕事 のエンジニアです。 佐藤先生のこのHPは、いつも興味深く 読ませて頂いております。 尚、公開されるときは、匿名でお 願いしたいと思います。

本HPの佐藤先生への質問
「NO. 826. 空間電荷制限電流の 温度依存性(半導体中の) 」などを参考に空間電荷制限電流について調べております。

絶縁膜に大量の電荷が注入される場合の電流値が、電圧の 2乗に比例し膜厚の3乗に反比例することなどは数式を追いか けて理解することが出来たのですが、この現象の意味する物 理的な意味が飲み込めないでおります。
「オーミックな電流より流れるのになぜ制限電流と呼ぶんだ?」 などどくだらないところに気を取られて現象の理解が出来てお りません。

恐れ入りますが、この現象を解説して頂けないでしょうか。
お手数お掛けしますが、どうか宜しくお願いします。
失礼します。
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Date: Mon, 21 Apr 2008 18:21:14 +0900 (JST)
A: H様、佐藤勝昭です。
 J0がV0の2乗で立ち上がる(J0=(9/8)εμ(V02/d3))ということは、微分コンダクタンス (g=dJ0/dV0)はV0=0のときゼロということを表し、空間電荷によって電流は制限されているのです。
しかし、大きな電圧を印加するとオーミックより流れるようになるのです。
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Date: Mon, 21 Apr 2008 19:02:47 +0900
AA: 東京農工大名誉教授  佐藤先生
こんにちは、S社のHです。 早速ご回答いただきましてどうも有り難うございました。
 
微分コンダクタンスのことまでは考えてみませんでした。
そうすると、電圧を印加していくときの微係数がオーミック電流(V0=0のとき微係数≠0) より小さいことを見て「電流の流れ出しが制限されている」ということに着眼したネーミング だったのですか。 私は、大きな電流が流れることだけに気を取られておりました。

このような質問にお答えいただきまして、どうも有り難うございました。
  今後とも宜しくお願いいたします。

それでは、失礼します。
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1077. 磁化の変化による磁気特性の変化

Date: Wed, 23 Apr 2008 18:29:03 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
T**大学の修士1年T*と申します。
HPを見まして、本日ご質問したいことが出来ましたのでメールいたしました。
以下の点について調べても参考になる文献、論文等が見つからなかったため、質問いたします。 Q.外部から磁性体に応力を与えてやることで磁歪の逆効果がおこり、磁化させることについてはわかるのですが、磁化の変化により磁気特性や透磁率も変化すると思うのです。
そのときに、応力の印加による磁化や透磁率の変化具合については応力に対してどのようなレスポンスになるのでしょうか。
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Date: Thu, 24 Apr 2008 23:44:13 +0900
A:T君、佐藤勝昭です。
「応力の印加による磁化や透磁率の変化具合」は弾性磁気効果 (elastomagnetic effect)として知られる現象です。
私は、この効果について調べたことがないので、文献を読んで下さい。
たとえば、
Giovanni Ausanio, Cornelia Hison, Vincenzo Iannotti, Cesare Luponio and Luciano Lanotte:
Elastomagnetic effect in novel elastic magnets;
Journal of Magnetism and Magnetic Materials Vol. 272-276, Part 3, (2004), Pages 2069-2071

磁気と応力の関係はあなたの指導教員がお詳しいので、直接質問した方がよいですよ。
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1078. 半導体の実験についての質問

Date: Thu, 24 Apr 2008 23:39:22 +0900
Q: はじめまして、大学3年、電気工学科の高橋と申します。
半導体デバイスについての質問なのですが、
実験で、線形領域および飽和領域のキャリア移動度と閾値電圧を求めたのですが、
値が異なりました。考察で理由が必要なのですが、教えていただけますか?
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Date: Fri, 25 Apr 2008 00:01:36 +0900
A: 高橋君、佐藤勝昭です。
 授業や実験のレポートに関する質問にはお答えできません。
学生実験での課題は、通常の授業で学んだことを復習するために出され ています。自分で調べることに意味があるのです。
電子デバイス工学の教科書の電界効果トランジスタの項を読んで、飽和 領域でどのような現象が起きているのかを復習して下さい。そうすれば、 わかるはずです。
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1079. ソーラーパネルは発光するか

Date: Sun, 27 Apr 2008 09:45:45 +0900 (JST)
Q: 佐藤研究室 御中
突然のメールお許しください、疑問がありますので教えてください
LEDとソーラーパネルはPN型半導体で出来ていますが、ソーラーパネルに、順方向 の電圧をかけましたら発光するのでしょうか?
熊本市K**(名前は非公開にして下さい)
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Date: Sun, 27 Apr 2008 10:59:13 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 たしかに太陽電池もLEDもpn接合ダイオードですから、順方向に電流 を流すと発光するはずですが、結晶系のシリコン太陽電池に順方向電流 を流しても発光を肉眼で観測することは出来ません。エネルギーの大部 分が格子振動を通じて熱になってしまうため、発光の量子効率が非常に 低いこと、および、バンドギャップが1.1eVなので発光したとしても赤 外線なので見えないからです。しかし電卓などに使われているアモルフ ァスシリコン太陽電池では、順方向通電によって近赤外光(1.3eV)のエ レクトロルミネッセンスが観測されたという報告がありますが、量子効 率は10^-5%と低く、高感度のフォトセンサーによって初めて観測できる レベルだと存じます。
(Koeng Su Lim, Makoto Konagai and Kiyoshi Takahashi:Observation of Electroluminescence from Amorphous Silicon Solar Cells at Room Temperature; Jpn. J. Appl. Phys. 21 (1982) pp. L473-L475.)
 従って太陽電池に順方向に電流を流せば大部分は熱になるので、冬季 夜間に通電して融雪することも試みられています。
(依田弘之他:融雪機能付き太陽光発電システム;シャープ技報第86号・ 2003年8月・p43-p47)
:私の調査不足でした。2005年に奈良先端大の冬木先生によって、ソーラーパネルの評価にエレクトロルミネッセンスを用いていることが発表されていました 。
T. Fuyuki, H. Kondo, T. Yamazaki, Y. Takahashi, and Y. Uraoka: Photographic surveying of minority carrier diffusion length in polycrystalline silicon solar cells by electroluminescence; Appl. Phys. Lett. 86, 262108 (2005).
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Date: Sun, 27 Apr 2008 12:03:34 +0900 (JST)
AA: 佐藤先生 様
早速のご返事を頂きまして、誠にありがとうございました
おかげさまで、頭のもやもやが解消いたしました
熊本市 K 
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1080. ペロブスカイト型酸化物における物性変化の定性的説明

Q: Date: Mon, 28 Apr 2008 19:08:19 +0900
HPを見ての質問です。名前はKといいます。所属は、T大学大学院に今年入学したM1です。
大学で学ぶ物理は一応一通りの理解は出来ていると思います。Web掲載の際は匿名でお願いします。質問は以下の通りです。
ペルブスカイト型の酸化物におきまして、微小な格子ミスマッチによるエピタキシャルな歪みや、単純な折り曲げ(bend)による歪みによって物性が大きく変わる事例が数多く(ex. STO,LSCO,YBCO...)報告されています。知っている範囲では、抵抗率の変化、磁化率の変化、誘電率の変化、超伝導体転移温度の変化などがあります。この原因を知りたいと思ったのですが、様々な論文で電子トポロジー転移やバンド構造の変化からシミュレーションして一致させたなどかいてあるのですが、定性的によくわかりません。あまり計算を用いずに定性的な説明を是非して頂きたいです。お忙しいとは思いますがお願いします。
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Date: Mon, 28 Apr 2008 21:42:55 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 ペロブスカイト型Mn酸化物の大きな相変化についてのわかりやすい説 明は、産総研Today Vol.7 (2007) No.6 に載っています。
http://www.aist.go.jp/aist_j/aistinfo/aist_today/vol07_06/special02/p26.html
 また、産総研の2005年度の報告書にも解説が出ています。
http://unit.aist.go.jp/cerc/rep2005/img/rep_2005_controlJ.pdf

ABO3で表されるペロブスカイト型酸化物の格子歪みは、Aサイトの希土 類REとアルカリ土類AEの平均イオン半径(r_A=(1-x)r_RE^3+ + xr_AE^2+) とBサイトのイオン半径で決定されます。r_Aが小さくなると格子歪みが 増加し、B-O-Bの結合角が減少するため、電子の重なりが減少し、バン ド幅がせまくなり、金属相が不安定になります。ほんのわずかな変化で 金属-絶縁体相転移が起き、抵抗率の大きな変化をもたらします。また 絶縁層では反強磁性が、金属相では強磁性が安定なので、相転移に伴っ て磁性の変化も起きるのです。また、電荷・軌道整列絶縁相も付近にあ るため、複雑な変化をもたらすのです。
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Date: Tue, 29 Apr 2008 17:46:21 +0900
AA: ご回答ありがとうございます。紹介されたホームページを見つつまた勉強しようと思います。
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1082. 金ミラーの温度変化による変形

Q1: Date: Mon, 28 Apr 2008 23:44:29 +0900
佐藤さま
初めまして、K機関のKと言います。
HPを拝見して、質問させて頂きたく思い、メールしました。
Webにアップされる場合は、匿名(イニシャル)でお願いします。

【背景】
赤外望遠鏡の反射ミラーに、金を蒸着したSiC製のミラーを使おうと 考えているのですが、SiCと金では線膨張係数が約4倍異なり、常温で SiCが3.5*10^-6に対して、金は14.2*10^-6となっています。
赤外望遠鏡のため、全体を50K程度にまで冷やすので、常温で製作 したものを、250度程度冷やすことになります。

【質問】
(1)金の線膨張係数は、固体時と薄膜時で同じでしょうか?

(2)温度変化時の線膨張係数の違いにより、ミラーが変形する可能性は ありますでしょうか? 当然、SiC基盤はかなり厚く製作しますが…。

もし、金に引っ張られるとすると、凹面鏡だと常温時よりも曲率半径が 小さくなる可能性があるばかりか、最悪の場合、周辺が剥がれるのでは ないかと危惧しています。

一方、金は柔らかいので、SiCを引っ張って変形させることはないとも 考えられますが、その場合、金のみが変形し、結局金表面の曲率半径が 変わってしまう(中心から周辺まで均一の厚さだったものが不均一になる) という可能性もあると思います。

先生のご意見をお聞かせ頂ければ幸いです。

以上、よろしくお願い致します。
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Date: Tue, 29 Apr 2008 00:13:18 +0900
A1: K様、佐藤勝昭です。
(1)基板に堆積した薄膜では多少基板の影響を受けますからfree standingのバルクより膨張係数が小さくなると考えられます。
(2)ミラーの変形はありません。収縮時にAu薄膜にひびが入ったり、 剥離したりすることが考えられます。特にμmを超える厚い膜では要注 意です。
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Date: Tue, 29 Apr 2008 00:20:25 +0900
Q2: Kです。
早速の返答、ありがとうございます。
ひびが入ったり剥離したりという件ですが、これは何らかの方法で シミュレーション可能でしょうか?
それとも、実際に作って、実験してみるより方法はないでしょうか?
よろしくお願いします。
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Date: Tue, 29 Apr 2008 01:01:49 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 理想的な単結晶薄膜であればシミュレーションも可能でしょうが、実 際の金薄膜は多結晶なので、そのモルフォロジーや粒径などによって、 条件が変わってしまうでしょう。またSiCの表面状態によっても違っ てきます。やはり、実験してみる必要があるのではないでしょうか?
 ただ、光学ミラーを作っている会社には、経験則としてノウハウの蓄 積があるかもしれませんので、聞いてご覧になるとよいでしょう。
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Date: Tue, 29 Apr 2008 20:39:36 +0900
AA: 佐藤先生、Kです。
回答&アドバイスありがとうございます。
金ミラーを作っているメーカーいくつかに聞いてみたいと思います。
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1083. ポラリトンの描像について

Date: 2008/05/07 19:38
Q: 佐藤勝昭先生へ
はじめまして, O*大学のO**です(公開時は大学と名前は匿名でお願いします).
機械系の4回です.
物性なんでもQ&Aを拝見してメールしました.
現在, ポラリトンについて勉強しています.
1.ポラリトンとは横光学フォノンとフォトンを相互作用である
2.相互作用の結果, 分散曲線が変化し周波数ギャップが生じ, その周波数ギャップの周波数は境界面で反射され媒質中を伝搬できない このようなことはわかったのですが, 物理的イメージが良く理解できません.
ポラリトンの直観的描写を教えていただけないでしょうか.
お忙しいと思いますが, 御教授よろしくお願いします.
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Date: Sat, 10 May 2008 01:15:58 +0900
A: O君、佐藤勝昭です。
 光の波は物質に入ると,もはや純粋な電磁波ではなくなります。 光の電界が物質に電気双極子を誘起し、その結果物質中に分極の波が形 成されます。この分極は振動すると電磁波のアンテナとして働くわけで すから、物質中では、電磁波の振動と分極波の振動の連成振動状態に なっているわけです。
その固有状態は、upper polaritonとlower polaritonという状態ですが、 その中身は電磁波と分極波の混成状態です。ポラリトンを指して、 「ある時は光であり、ある時は分極波であって、両状態間でエネルギー のキャッチボールをしている」と表現する人もいます。光が物質中を伝 搬するとき、速度が遅くなりますが、これは物質中で「光が分極を引き ずりながら進んでいる」からに他なりません。
 lower polaritonの固有エネルギーは横光学フォノンのエネルギーωo を超えることができません。一方、upper polaritonの固有エネルギー は、(ωo^2+Nq^2/mε)^(1/2)より小さくなることはありません。この ように、ポラリトンの2つの固有状態に対するエネルギー固有値の分散 曲線の間にはギャップが生じます。つまり、物質中には、このエネルギ ーギャップ内のエネルギーをもつポラリトンの固有状態が存在しないの です。そのためにこのギャップ内のエネルギーをもつ光は物質中を進め ないのです。
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1084. X線の侵入深さについて

Date: 2008/05/09 15:46
Q: 佐藤勝昭様
F***社 K***です。(公開の際は匿名でお願いいたします)
いつも過去の物性なんでもQ&Aを見て勉強させていただいています。
当方、化学工学系の出身ですが、最近結晶に関する仕事をすることになり、 自分なりに調べてみたのですが納得のいく回答が見つからなったため質問させて いただきました。
(In-planeでなく)一般的なXRD分析において深さ方向はどの程度まで分析される と考えればよいでしょうか?
ある基板上に作製したシリコン薄膜の結晶性を調べていますが、結晶配向性の分 析にはどの程度の膜厚が必要かを決める根拠が見つからず困っています。
本などで調べたところ、"X線は数μm程度潜り込む"であるとか"少なくとも1μm は膜厚が必要"とありましたが、その"数μm潜り込む"という値の根拠が分かりま せん。
別の本には侵入深さの計算について書かれており(本の中ではHe-Neレーザにつ いて計算されていました)、それに基づいて計算したところ、
侵入深さd=λ/(4*π*k)
光源波長λ=0.154nm (←X線源Cu-Kα)
シリコンの複素屈折率=n+ik, n=4.367, k=0.079
⇒ d=0.155nm
となり、シリコン膜内へはほとんど侵入しないことになってしまい、上記"数μm 潜り込む"という話と矛盾します。
XRDにおける侵入深さについてどのように考えれば宜しいのでしょうか?
どうぞよろしくお願いいたします。
以上です。
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Date: Sat, 10 May 2008 02:00:23 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 ご質問の件ですが
可視光線とX線では波長が異なるので、同じn=4.367, k=0.079を使うこ とができません。X線領域では屈折率nは1以下ですし、消光係数kも波 長依存性があります。理科年表によればX線回折によく使われるCuのKα 線の波長1.5Åにおいて原子番号13のAlの質量吸収係数(吸収係数を密 度で割ったもの)は44.9ですからSi(原子番号14)では50程度でしょう。
Siの密度は2.34ですから、吸収係数α=50×2.34=117~100[cm^-1]とな り、浸入長は1/100 [cm]=100[μm]程度でしょう。このため、薄い膜だ と基板の奥深くまで侵入しますから、主として基板の結晶性の情報を得 ることになるでしょう。従って、膜の情報を得るには、ある程度の厚み が必要なのです。
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1085. N-メチル-2-ピロリドン

Date: 2008/05/08 10:05
Q: 東京農工大学 佐藤様
P*社のY*と申します。(Webでは匿名でお願いいたします)
初めてメールいたします。
早速ですが質問させていただきます。
N-メチル-2-ピロリドンに関しまして、アルカリ,酸と共存させると分解するとあったのですが、 具体的にアルカリ側,酸側ではどの様な反応が起きるのでしょうか。
また、N-メチル-2-ピロリドン自体、弱アルカリ性だと思いますが、アルカリ側,酸側どの程度のpH領域で分解するのでしょうか。 ご多忙中とは存じ上げますが、何卒宜しくお願い申し上げます。
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Date: Sat, 10 May 2008 20:49:51 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
 ご質問は、化学反応に関する内容で、私の専門の物性の範囲から外れ ています。東京農工大学の化学系先生に聞きましたところ、次の ような回答でした。
==========================================================
お尋ねの件ですが、N-メチル-2-ピロリドンは什器中で長期 間保持すると過酸化物が生成するようです。
一般的にはそれを防止するためにNaOHなどのアルカリ水溶液を添加しま す。どのような反応機構で分解が進行するのかは分かりません。
このN-メチル-2-ピロリドンは溶媒としてよく使われますので、溶 剤便覧などを参照されると記載されているかも知れません。
頼りない回答で申し訳ありません。
============================================================
ということでした。
図書館で溶剤便覧をご覧下さい。
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Date: Mon, 12 May 2008 09:21:21 +0900
AA: 佐藤様
専門外の質問に対しお調べ頂き、誠に有難う御座いました。
アドバイスを元に書物等を調べてみたいと思います。
Y
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1086. (Ba0.7Sr0.3)TiO3のヤング率、ポアソン比

Date: Mon, 19 May 2008 16:09:53 +0900
Q: 佐藤勝昭 様
はじめまして、M社中央研究所のF**と申します。
※佐藤様のHPにご掲載の際は匿名でお願い致します。
佐藤様のHP「物性なんでもQ&A」を拝見し、ご質問させて頂きます。

(Ba0.7Sr0.3)TiO3のヤング率、ポアソン比を お教えくだされば幸いです。
よろしくお願い致します。
また、どのような本を参照すれば掲載されているのかも、あわせて教えてくださればありがたいです。

どうぞよろしくお願い致します。
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Date: Mon, 19 May 2008 19:13:09 +0900 (JST)
A: F様、佐藤勝昭です。
 チタン酸バリウムは50年以上の研究の歴史があるので、いろいろなデータがあります。
セラミックスのチタン酸バリウムについては村田製作所のカタログ(添付)に掲載され ており、ヤング率Y11Eは11.5x1010N/m2、ポワソン比σEは0.30となっています。
 チタン酸ストロンチウムのヤング率は、338GPa=33.8x1010N/m2となっています。
(F. J. Espinoza Beltr?n1 et al.:Journal of Physics: Conference Series 61 (200 7) 293-297)

 なお、Si上にMODで成膜したBa0.7Sr0.3TiO3のヤング率とポワソン定数は、
FANG Te-Hua, CHANG Win-Jin, LIN Chao-Ming, JI Liang-Wen, CHANG Yee-Shin, HSIAO Yu-Jen:
Effect of annealing on the structural and mechanical properties of Ba0.7Sr0.3T iO3 thin films:
Materials science & engineering. A, Structural materials : properties, microst ructure and processing vol.426, (2006) [1-2], pp.157-161
要旨は
「Si基板上にMOD成膜し様々な温度でアニールしたたBa0.7Sr0.3TiO3薄膜の機械 的性質および表面評価を行った。薄膜の硬度、ヤング率、および、コンタクトひずみ応 力特性を、ナノインデンション技術、XRD,およびAFMを用いて調べた。XRDによると、Ba 0.7Sr0.3TiO3 薄膜は強い (1 1 0)-配向性と純粋のペロブスカイト構造を示した。結晶 粒径と表面荒さはアニール温度の上昇とともに増大した。硬度、ヤング率ともにアニー ル温度を600度から800度に上昇すると増大し800度で最大となった。」
と書いてあるのですが、この雑誌が手元にありません。取り寄せて、調べてください。
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Date: Fri, 23 May 2008 17:06:49 +0900
AA: 佐藤勝昭 様
こんにちは、M社中研のFです。
※佐藤様のHPにご掲載の際は匿名でお願い致します。
佐藤様にご教示頂いた文献が手元に届きましたので、 ヤング率についてご報告させて頂きます。
----------------------------------------------------
アニール温度600℃のヤング率:39.37±1.78GPa
アニール温度700℃のヤング率:73±4GPa※
アニール温度800℃のヤング率:80.2±1.8GPa
------------------------------------------------------
※ヤング率vsアニール温度のグラフに700℃でアニールした場合のヤング率もプロットされているのですが、数値は明示されておりませんでした。
700℃の数値はグラフから読み取った値であります。

なお、残念ながら、ポアソン比の記述は見つかりませんでした。
この度は、貴重なご教示を頂き、ありがとうございました。
また、ご質問させて頂く機会があるかと存じますが、 その節は、どうぞよろしくお願い致します。
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Date: Fri, 23 May 2008 17:36:03 +0900 (JST)
A2: F様、佐藤勝昭です。
 文献からのデータをお教えいただきありがとうございました。Webにアップします。
ポワソン比ですが、BaTiO3の0.30とあまり違わないと思われますので、とりあえずは、 0.3を使っておかれてはいかがでしょうか。
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Date: Mon, 26 May 2008 07:42:01 +0900
AA科学技術振興機構(JST)
戦略的創造研究推進事業(さきがけ)研究総括
佐藤勝昭 様
おはようございます、M社のFです。
※佐藤様のHPにご掲載の際は匿名でお願い致します。
ポワソン比に関するご教示ありがとうございます。
ご教示の通り、0.3を使用することと致します。
度々のご教示ありがとうございました。
以上
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1087. プラスチックの電波透過性

Date: Tue, 20 May 2008 10:11:19 +0900
Q: K社 Y***です。
下記のご連絡をさせていただきます。

2.45GHzのICタグ検出実験をしております。
現在の問題点は、金属キャビネット内に乱雑に格納した RFIDタグの検出障害を実験しており、それに電波遮蔽板を内部に置いて、 それによる電波透過率の問題等の影響を調べたいと思っておりますが、 電波遮蔽板にプラスティックを用いる場合、ポリカーボネートやFRP、アクリル等の 材料が比較的透過率が高いと聞かされましたが、それらの数値を調べる参考書等 お教えいただければ幸甚に存じます。
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Date: Tue, 20 May 2008 13:59:57 +0900 (JST)
A: Y様、佐藤勝昭です。
 ほとんどのプラスチックは2.45GHzの高周波の電磁波を透過すると存じます。
吸収の尺度は誘電正接(tanδ)=ε"/ε'です。(ε':比誘電率実数部、ε":比誘電率虚数部)
エンプラネットというサイト によると、
FR4(ガラスエポキシ):ε'=5, tanδ=0.03
が比較的損失が大きいですが、
PI(ポリイミド):ε'=4, tanδ=0.008
PPS(ポリフェニレンサルファイド):ε'=4, tanδ=0.004
LCP(液晶ポリマー):ε'=4, tanδ=0.003
となっていますから、ガラスエポキシでさえ、メートルサイズの厚みにしない限り、
電磁波は通り抜け、電磁遮蔽板としては使うことができないでしょう。
導電性の材料を使う必要があるのではないでしょうか?
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Date: Tue, 20 May 2008 15:26:21 +0900
AA: K社Yです。
下記のご連絡をさせていただきます。
佐藤先生
早速のご教授まことに有り難うございました。
入手の容易な何種類かの材料で実験いたす所存です。
重ねてお礼を申し上げます。
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1088. サブバンド間プラズモン

Date: Wed, 21 May 2008 23:06:17 +0900
佐藤勝昭様
O***大学修士2年K(大学名、氏名ともに匿名希望です)と申します。
いつもHPを楽しく拝見させて頂いております。

さっそくご質問なのですが、プラズモンについての質問です。
一般に誘電関数がゼロとなる振動数では縦型振動です。つまりプラズマ振動の量子であるプラズモンは 縦型振動であることが知られています。バルク半導体中(3次元)では、このプラズモンの振動がイメージできます。

しかし量子井戸(2次元)に閉じ込められた状態ではこのプラズモンはしばしば intersubband plasmon とよばれています。

このサブバンド間プラズモンというのがどのような縦型振動を示すのかがイメージで きずに困っております。どうも準位間の双極子モーメントがからんでくるらしいのですがよく分かりません。 単純な2次元プラズモンとは異なるのでしょうか?
お忙しいと思いますが、どうぞよろしくお願い致します。
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Date: Sat, 24 May 2008 00:14:25 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 私は、不勉強で、正しくお答えできる自信がないので、東京農工大学 の三沢和彦教授に伺いましたところ、下記の返事をもらいました。
=================================================================
三沢です。
量子井戸に閉じ込められた電子であっても、量子井戸の面に沿った 方向にはキャリアは自由に伝搬します。したがって、電子の疎密が 面内に生じた場合に、プラズモンが伝搬することになります。
2次元プラズモンを量子井戸層の断面で見た図が下のようになります。

────────────────────────────────────
○○○ ○ ○  ○  ○  ○ ○ ○○○ ○ ○  ○ 
 ○ ○ ○ ○○○ →
────────────────────────────────────

面に沿った方向に伝搬し、疎密も面内ですから、縦波となります。
このときの自由キャリアを、サブバンド間遷移で励起した場合に、特に interband plasmonと呼ぶことになります。
サブバンド間遷移はテラヘルツ電磁波に共鳴することが多いですか ら、量子カスケードレーザーなどのテラヘルツ波デバイスなどに応 用できると思われます。
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Date: Sun, 25 May 2008 16:16:00 +0900
AA: 佐藤勝昭様
O大学 Kです。
ご返事ありがとうございました。
おかげ様でイメージすることができました。
大変なお手間をとらせまして申し訳ございませんでした。
ありがとうございました。
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1089. 光電子分光におけるコヒーレント部分とインコヒーレント部分

Date: Fri, 23 May 2008 13:38:02 +0900
Q:HPを見ての質問です。名前はK**といいまして、2回目の投稿になります。
所属は、T大学大学院に今年入学したM1です。大学で学ぶ物理は一応一通りの理解は出来ていると思います。
Web掲載の際は匿名でお願いします。質問は以下の通りです。
「光電子分光におけるコヒーレント部分(準粒子バンド)とインコヒーレント部分(上部または下部ハバードバンドの名残)」 の意味を教えていただきたいです。光電子分光の原理は理解できていると思いますが、ハバードバンドや準粒子バンドの意味、 何がコヒーレントなのかが分かりません。お願いします。
-----------------------------------------------------------------------------------------------
Date: Sat, 24 May 2008 00:34:43 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 私にも正確に答える自信がありませんので、光電子分光がご専門の東 大理学系研究科の藤森淳教授に問い合わせましたところ、下記のような お返事を頂きました。
=========================================================-
「モット転移近傍の電子相関の強い金属は,電子同士がぶつかりながら 辛うじて動き回っている金属で,瞬間的・局所的にモット絶縁体と似た 電子状態が形成されたり消えたりしていると考えられます。
インコヒーレント部分はこの”モット絶縁体”的な瞬間から来るものな ので,光電子スペクトルが上部・下部ハバードバンドと似た構造を持っ ています。一方,コヒーレント部分は金属的な瞬間から来るもので,フ ェルミ準位を横切るバンドなど金属の特徴を示しています。」
=============================================================-
参考になさってください。
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Date: Sat, 24 May 2008 19:05:34 +0900
AA: わざわざお問い合わせまでして頂いてありがとうございます。実空間で起こっていることのイメージまで説明して頂いてよく分かりました。お忙しいところありがとうございました。
----------------------------------------------------------------------------------------------- Date: Sun, 25 May 2008 21:35:17 +0900
A2: 菊月君、佐藤勝昭です。
 前回の説明ではわからないのではないかと思い、
『「瞬間的・局所的にモット絶縁体と似た電子状態が形成されたり消えたりしている」という状態は想像しにくいのですが、観測によっては、どちらかの状態の方を観測してしまうということなのですね。』
と、藤森先生に尋ねました。藤森先生の返事は、
 『「瞬間的・局所的に...が形成されたり消えたりしている」は 「時間的・空間的な電子状態の揺らぎ」とした方がより正しかった かも知れません.電子状態が揺らいでいるとき,メスバウアー分光や NMRが時間的に平均した電子状態を見るのに対して,光電子分光は 瞬間的な電子状態を見ることが特徴だと考えております.』 とのことでした。
------------------------------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 26 May 2008 12:41:00 +0900
AA: ありがとうございます。揺らぎということは想像できていましたが、他の分光と違い光電子分光の場合だけ揺らぎが観測できるというのは新たな知見でした。重ね重ねありがとうございます。
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1090. 強誘電体光変調器

Date: Sun, 25 May 2008 14:15:02 +0900
Q: N高専3年のT***です。公開時には匿名でお願いします。

強誘電体LiNbO3(リチウムナイオベート)結晶を用いた光強度変調器・LN変調器に電圧を加えたときの光透過特性がわかりません。
光透過特性の偏光についてもお願いします。
後、光強度変調器の原理や構造についても教えてください。
光強度変調器と光位相変調器の構造の違いについてもお願いします。
質問だらけですがお願いします。
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Date: Sun, 25 May 2008 21:25:00 +0900
A: T君、佐藤勝昭です。(あなたのメールアドレスに返信しましたが、送れませんでした。)
 高専の3年生の数学や光学や電磁気学の基本的な知識ではどの程度わかっていただけるか自信がありませんが、以下の説明でわからなければ、またお尋ね下さい。
 強誘電体とは何かというと、自発分極をもつ誘電体です。自発分極を持っているとは、外から電界を加えなくてもはじめから物質中の電気双極子の向きがそろっていて巨視的な電気分極があるということを意味します。実際には、自発分極Pの向きは、外部電界Eに対して変化します。
1.位相変調器
 光を強誘電体に入射したとき、光の電界ベクトルが自発分極に平行な直線偏光については、屈折率nが電界Eによって変化します。高周波電界が時間tとともに sinΩtで変化するならば、屈折率もn=n_0+Δn sinΩtのように変化します。z方向に進む物質中の光の電界はE=E_0 expiω(t-nz)と表すことができますが、n=n_0+Δn sinΩtを代入すると、
E=E_0 expiω{t-(n_0 +Δn sinΩt)z/c}
=E_0 exp{iω(t-n_0 z/c)} expi(ωΔn sinΩt z/c)
となり、位相がωΔn sinΩt z/c=(2π/λ)Δn sinΩt zで変化します。位相の変調の振幅はωΔnz/c=2πΔnz/λです。
expi(ωΔn sinΩt z/c)を展開すると、・・ω-2Ω, ω-Ω, ω+Ω, ω+2Ω・・の成分が現れます。その展開係数には、ベッセル関数があらわれます。例えば、ω+Ωの周波数成分の振幅は1次のベッセル関数J1(ωΔnz/c)で表され(ベッセル関数は高専3年では学んでいないでしょうね。)

2.振幅変調器
 上に述べたように、光の電界ベクトルが自発分極に平行な直線偏光については、屈折率nが電界Eによって変化しますが、垂直の成分については、電界にかかわらずほぼ一定です。分極方向から45°傾いた直線偏光を入射すると、分極方向の成分とそれに垂直な成分との間にsinΩtで振動する位相差が生じます。入射側の偏光子と直交する検光子を置き、電界を増加していくと、Δn=aEとすると出力光の強度は(sinωaEz/c)^2 で増大して行きます。ωaEz/c=π/4となる電界を中心にして電界を交流的に変化すると、出力光強度は電界と同じ周波数で変調されます。

日本レーザー社のサイト(
https://www.japanlaser.co.jp/product_detail.php?productid=301)が参考になります。
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Date: Sun, 25 May 2008 23:21:51 +0900
Q2: N高専のTです。今回も匿名でお願いします。
ベッセル関数は習ってないです、のでよくわかりません。出来れば図とかグラフがあればわかるかもです。お願いします。
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Date: Mon, 26 May 2008 00:03:17 +0900
A2: T君、佐藤勝昭です
。  ベッセル関数は、円筒座標において微分方程式を解くときに出てくる関数です。
一例を挙げれば、円形の池の中心に石を投げ込んだときに、池の中にできる波紋の様子を表すのが、ベッセル関数です。
J0(x), J1(x)のグラフを添付します。(www18.ocn.ne.jp/~hchiba/gnu6.htm より)
ウィキペディアに「ベッセル関数」が出ています。図も出ていますよ。
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Date: Mon, 26 May 2008 22:12:41 +0900
AA: N高専のTです。
ベッセル関数について、例を見て考えたらなんとなくわかりました。本当にありがとうございました。
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1091. アルミニウム容器での尿素の保存

Date: Mon, 19 May 2008 21:56:17 +0900 (JST)
Q: HPを見ました。内張りがアルミニュウムのトラックの荷台で尿素(粉状)を運んだ時長期的に見てトラックの荷台あるいは尿素に弊害がありますか?
A**(匿名希望)運送業経営者
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Date: Tue, 20 May 2008 00:14:46 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。
 私は、化学は専門外なので、正しくお答えできるかどうかわかりませんが、アルミニウム粉末と尿素粉末を混合し、アルミニウム容器に入れ て、表面を加熱すると、爆発的に反応して窒化アルミニウムが生成するという記述があります。
(Chun-Nan Lin, Shyan-Lung Chung: Combustion synthesis method for synthesis of aluminum nitride powder using aluminum containers (II); J. Material Research Vol.19 [10] (2004) 3037-3045)
 アルミニウムの粉末を混ぜたり加熱したりしなければ、爆発反応の心配はありませんが、長期的に見れば反応がおきて、アルミニウムの内張 が劣化する心配がないとは言えないと思います。
ただし、私は、化学が専門ではないので、化学の先生がやっているQ&Aに聞いてみてください。
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Date: Mon, 26 May 2008 20:28:17 +0900 (JST)
AA: こんばんわ
早速のご返信有難うございます
まさかこんなに早くメールが届くとは思ってもみませんでしたので, 驚きと感激です。
お答え頂きました内容で充分参考に成りましたがその方面の方に問い合わせさせていただきます。
今後ともご活躍されますように、短文ですが再度お礼申し上げます。
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1092. カーボンナノチューブの磁気エネルギー

Date: Mon, 26 May 2008 13:55:52 +0900
佐藤先生突然のメール失礼致します。K*と申します。
現在、会社を退職いたしており、就職活動をしながら独学で材料の勉強をしています。
そこでカーボンナノチューブ関係に興味を持ち、自分なりに少しずつ論文を読んだりして勉強しています。
Web上にアップする際は、匿名でお願いいたします。どうしても論文中で分からないことがありましたので質問させて頂きます。
カーボンナノチューブの磁場配向の論文なのですが、Introductionの最後の方に・磁場による配向エネルギー:
 ΔU=U(π/2)-U(0)=(B^2)n(χ〃-χ⊥),
となっているのですが、計算したところ合いません。
詳しくは以下に書きます。まず、炭素のモル数(n)を求めないといけませんが、これは長さ300nmの(10,10)のナノチューブの炭素数は計算した!
48000個でした。この計算は添付のワードで計算過程を書きました。おそらく合っていると思います。
問題は、ΔU=(B^2)n(χ〃-χ⊥)の(B^2)と(χ〃-χ⊥)でして、
 B=15.3[T]とχ〃-χ⊥=106.4x10^(-6) emu(molC)^(-1)を単位換算せず、単に代入しても計算が合いません。10倍程度、5kB・Tより小さい結果が出てしまいます。
(またmolCという表現は見たことなかったのですがおそらく炭素1molという意味と思います。)
χ〃-χ⊥の単位が もしJ・T^(-2)・mol^(-1)なら、そのまま代入すればよいのでよくわかるのですが。
磁気関係の知識がほとんどなくネットや手持ちの書籍等で探してみたのですが分かりませんでした。
またもともと、どうやって
U(θ)=-(B^2)n(χ〃(cosθ)^2-χ⊥(sinθ)^2)-②
を導出しているのかが分かっていません。
単位換算の仕方ともしよろしければ②式の導出をお教え頂けたらと思います。
よろしくお願い致します。
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Date: Wed, 28 May 2008 00:53:51 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
(1)この論文のΔU=(B^2)n(χ〃-χ⊥)は単位系がcgs-emuですから、Bの単位はGauss、ΔUの単位はergです。
ΔU=(B^2)n(χ〃-χ⊥)=(1.53×10^5)^2 (Gauss^2)× 7.99×10^-20 (mol) × 1.064×10^-4(emu/mol)
=1.99×10^-13 erg
一方、kB T=1.38×10^-23 (J/K) × 287 K=3.96×10^-14 (erg) 従って、ΔU/kB T=5.0です。
(2)U(θ)=-(B^2)n(χ〃(cosθ)^2+χ⊥(sinθ)^2)の導出ですが、
もし等方的であれば、モルあたりのポテンシャルエネルギーは、磁場Bと誘起された磁気モーメントχBの積に比例し、
もし両者の向きが平行ならばエネルギーは低下しますから、U=-n・B・χB=-nχB^2 となります。
χに異方性があると、BのCNTの軸方向の成分をB//, 軸に垂直な方向の成分をB⊥と書けば、
 U=-n{χ// (B//)^2 + χ⊥ (B⊥)^2}となりますが、B//=Bcosθ、B⊥=Bsinθなので、結局
 U=-n(B^2){χ//(cosθ)^2+χ⊥(sinθ)^2}
となります。
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Date: Thu, 29 May 2008 01:37:24 +0900
Q2: Kです。お忙しいところ、早速のご返事大変感謝しております。本当に有難うございます。
(1)はcgs単位ですべてそろえて計算するとΔU/kB T=5となること、よく理解できました。
(2)もよく理解できました。有難うございます。
あと大変申し訳ありませんが、もう1つ質問させて頂けないでしょうか?
上と同じくintroductionの最後の方にあるdP(θ)=(v)^-1・u×exp(-u^2・sinθ^2)sinθdθなのですが、この式は熱擾乱のエネルギーkBと磁場配向エネルギー⊿Uの比を求めることができたら、その磁場強度において例えば、10°傾いてる可能性がいくらあるということを求めることができる式だと思っています。
ですので、まず、ΔU/kB T=5(磁場15.3T)のとき10°傾いている可能性を算出してみようといろいろ計算を試みるもうまくいきません。
積分の計算のためにMathematicaほど高性能ではないと思いますがフリーで使えるwxMaximaというソフトをインストールしています。
元々、ある磁場がCNTにかかっているとき、どの程度傾くかを理論的に予想するたいと思い、この論文を調べていましたのでどうしても求めたいと思っています。
お忙しいところ、誠に申し訳ありませんが、ご教授頂けたらと思います。現在、出先でして数式を入力できなかったので、手書きの方が見やすいかと思い、
手書きの計算の過程をお送りします。よろしくお願い致します。
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Date: Thu, 29 May 2008 15:29:47 +0900 (JST)
A2: K様、佐藤勝昭です。
 添付された手書きの計算式を見ましたが、なぜ、exp(-u^2 sinθ^2)を積分しておられ るのかわかりません。dP(θ)=A(θ)dθの意味はθを中心に微小な角度dθの範囲の値を とる確率です。
たとえば、θ=10π/180(rad), dθ=0.1π/180(rad)としてP(θ)をもとめれば、θ=10° を中心に0.1°の幅の中に来る確率が求められます。
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Date: Thu, 29 May 2008 23:19:46 +0900
AA: 佐藤先生
Kです。ご返事、大変有難うございます。
dP(θ)の意味を誤って理解していました。
下の先生の仰るとおりの方法で、dPを求めることができました。
本当に有難うございます。
これからもまたご教授願うことがあると思いますが、よろしくお願い致します。
先生のご活躍、陰ながら応援させて頂きます。
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1093. 酸素気体透過率の小さい有機材料

Date: Tue, 10 Jun 2008 09:16:03 +0900
Q: 佐藤勝昭様
お世話になっております。
N**社のM*(会社、名前とも匿名希望でよろしくお願いします)と申します。 いつもホームページを楽しく拝見しております。

さて、この度は気体透過率について、御質問があり御連絡差し上げました。
現在、酸素気体透過率の小さい有機材料を探しております。
EVOHやPVOH、ポリエチレン等は包装材料として用いられているせいか、各種気体の データはカタログ等に載っていますが、エポキシやウレタン、アクリル等の接着剤 として用いられるような材料の気体透過率に関してはなかなか調べてもわからず、 困っております。

つきましてはエポキシ、ウレタン、アクリル、ポリイミド系の接着剤の各種気体透過 率を御存知でしたら、御教授願えないでしょうか。
また、それらが載っている文献等も合わせて御教授頂ければ幸甚です。
(もちろん、同じエポキシ系といっても、その気体透過率が樹脂の配合比率、成分、 可塑剤等で変化するのは存知ておりますが、各樹脂がどの程度の実力を持っているか 当たりをつけたいと思っております。)

お手数であるとは存じ上げますが、以上の件宜しくお取り計らい頂ければ幸甚です。
取り急ぎ御連絡申し上げます。
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Date: Wed, 11 Jun 2008 00:21:05 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 わたしは、化学の専門ではないので、手元にデータがありません。
Polymer handbook 4th Edition,John Wiley & Sons,Inc. (1999) にポリマーのガス透過性が出ているようなので、図書館でお調べ下さい。
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Date: Wed, 11 Jun 2008 11:27:50 +0900
AA:佐藤勝昭様
お世話になります。
さて、お問い合わせさせて頂いた件に関し、早速御返答頂き誠に有難うございました。
とりあえず、御教授いただきました文献を調べてみることに致します。
お手数をおかけしてしまい誠に申し訳ございませんでした。
今後とも御愛顧のほど宜しくお願い致します。
取り急ぎ御返信申し上げます。
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Date: 2008/06/11 12:07
A2: M様、佐藤勝昭です。
 本日、東京農工大学の図書館でPolymer Hanbook 3rd edition(1975)を見ました。
この本のVI/435-449にS. Paulyというドイツの方が、"Permeability and Diffusion Data"という論文を書いていて、気体の透 過性(permeability)について、丁寧な解説をしています。
その中に、表があって多数の高分子の透過性permeability coefficient (P) がリストされています。
これによると、エポキシ、ウレタンは見あたりません。polymetacrylatesは出ています。
polyamides, polyimidesの項にはNylon66, Nylon6, Nylon11, Kaptonが載っています。(これは接着剤で はないですね。)コピーしましたので送ります。
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Date: Wed, 11 Jun 2008 14:04:56 +0900
AA: 佐藤勝昭様
お世話になります。
さて、ポリマーの気体透過に関し、わざわざお調べ頂き有難うございました。
またコピーまでして頂いたようで、大変お手数をおかけし恐縮に存じます。
まずは、ご送付頂く資料を拝見させて頂き、4th edition の方も並行して調べて みたいと思います。
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1093C. 質問#1093へのコメント

Date: Fri, 20 Jun 2008 13:08:13 -0400
佐藤先生、化学会社のS*です。掲載の際は匿名でお願いします。以前
シリコーン材料の件でコメントさせていただきましたが、今回はプラスチックの気体透過性についてコメントさせていただきます。
しばらくサイトを覗いていなかったので、遅れたタイミングになりましたが、ご容赦ください。
ポリエチレンやナイロンの気体透過性のデータがあるのに、ウレタンやエポキシのデータがなかなか見つからないのは、次の理由によります。
ポリエチレンやナイロン(ナイロン6、ナイロン6,6など)は、名前イコール化学式と考えることができ、バルクの性質は、化学式が同じである限り、メーカーやグレードが異なっても、大差はありません。
ですから代表データをハンドブックに記載しても、大きく間違うことはないわけです(それでも、添加剤によって透過性が大きく変わる例はあります)。
しかし、ウレタン、エポキシ、ポリエステルなどの名前は、ポリマー全体の内、結合部分の化学を表しているにすぎないのです。
分子と分子をウレタン結合でつないだのがウレタン樹脂、エポキシ結合でつないだのがエポキシ樹脂です。
こういった材料のバルク特性は、結合と結合の間の分子に左右されることが一般的ですので、そこがどんな化学式をしているのかがはっきりしていないと、バルクの特性はわかりません。
ですから、「XXXXXとYYYYYYを結合したウレタン樹脂」などと指定すれば、気体透過性のデータが得られる可能性があります。
しかし、想像されるように組み合わせの数はほぼ無限にありますので、とてもハンドブックなどに全てを掲載することはできないわけです。
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Date: Sat, 21 Jun 2008 08:52:30 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 コメント有り難うございました。質問者に伝えるとともにWebにアップします。
今後ともよろしくお願いします。
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1094. スピン偏極の光学的測定について

Date: Tue, 10 Jun 2008 20:22:35 +0900
Q: スピン偏極の光学的測定についてなのですが、光学配置について、良くそれぞれのはたらきがわからず困っています。
偏極した3Heから、放出される668nmの円偏光の度合いで偏極を測定するのですが、光学配置は放出された668nmを
直線偏光子→λ/4板→角周波数ωで回転するλ/4板→直線偏光子→668nm付近の干渉フィルター→フォトマルチプライヤ
ー→Lock-inアンプ&DCアンプ→それぞれADC→コンピュータ
です。フォトマルチプライヤー以降は理解できます。この測定の目的は偏極された3Heから放出される、668nm光の円偏光のσ+、σ-の度合いを調べることです。 しかし直線偏光子で円偏光はみえなくなりますよね・・・
一応何人かで色々考えたのですが、σ+、σ-の度合いを観測するのに直線偏光子を使っている時点でつまずいてしまします。
私はO*大学工学部4回生でM*といいます。(匿名でお願いします)
春からスピン偏極について学んでいるレベルです、なにかと言葉足らずな点もあるかと思いますが、宜しくお願いします。
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Date: Tue, 10 Jun 2008 21:32:53 +0900 (JST)
A: M君、佐藤勝昭です。
 君の指摘の通り、円偏光を測定したいのなら、最初の直線偏光は不要です。
左右円偏光が1/4波長板を通ったあとc軸と±45°の方向に傾いた直線偏光になり ますから、直線偏光子を使って左右円偏光を選択できるのです。
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Date: Thu, 12 Jun 2008 12:53:32 +0900
AA: お返事遅くなり申し訳ありません。
どうも有難うございました。
まだまだわからない事だらけですので、 また質問させてもらう事もあるかと思いますので、 そのときはお願いします。
失礼しました。
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1095. ドーピングによってシリコンの色は変わるか

Date: Thu, 12 Jun 2008 15:33:04 +0900
Q: 佐藤勝昭先生へ
はめまして、私はS*大学の修士1年U*です。
  度々物性なんでもQ&Aを参考にさせていただいています。HPへ掲載の際は匿名でお願い致します。

現在Siの光学特性を勉強しています。
以前のHPを見たときにシリコンの色はp型、n型などで変化するか?
という質問に対して自由キャリアが増えることで、赤外領域のスペクトルは 変化するとの回答がありました。

しかし、高濃度に不純物(たとえばB)をドーピングしたとき、Siのバンド構造が変化して 紫外、可視光領域の反射スペクトルにも変化が出る可能性はあるのではないでしょうか。
というのが質問です。

また、ヘビードープシリコンの物性を調べましたが、自由キャリア吸収によるスペクトル変化の 文献はあるのですが、ドーピングによるバンド構造が変化して反射率がどのように変化するかは 分かりませんでした。何か良い文献があれば教えていただけたら幸いです。
宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 12 Jun 2008 17:56:06 +0900 (JST)
A: U君、佐藤勝昭です。
 シリコンにヘビードープした場合、フェルミ準位が伝導帯または価電子帯の中にくる ことによって、光学吸収端が高エネルギー側にシフトする現象(バーステイン-モスシ フト)が知られています。しかし、そのシフト量はわずかで、可視域には変化として現 れません。
 一方、シリコンの可視-紫外域の反射ですが、添付図(Geの場合)に示すようにk空間におけるΛ 線、Δ線上でのバンド間遷移がE1,E2ピークを作っており、この遷移はフェルミ準位付 近の状態密度を反映しないので、ドーピングによって反射スペクトルが変化することは ほとんどありません。
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Date: Thu, 12 Jun 2008 23:27:14 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生
Uです。早速のお返事有難う御座いました。
つまりSiに高濃度で不純物をドーピングしても、 可視、紫外域の反射スペクトルが変化しないということは、 不純物をドーピングでk空間におけるバンド構造に大きな 変化はないと考えてよろしいでしょうか?
宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 12 Jun 2008 23:39:20 +0900
A2: U君、佐藤勝昭です。
 そうです、不純物ドープで多少変化が出るのは、p型では価電子帯の頂(Γ点)付近、 n型では伝導帯の底(SiではX点付近、GeではL点付近)の占有状況のみで、k空間におけるバンド構造に影響を 与えるものではありません。
ヘビードープといってもせいぜい1020cm-3程度ですから シリコンの単位体積あたりの原子数5×1022cm-3に比べれば十分に小さく、バンド構造を 変えてしまうほどの変化は生じないのです。
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Date: Fri, 13 Jun 2008 00:08:25 +0900
Q3: 佐藤勝昭先生へ
Uです。丁寧なご回答有難うごいざいました。
10^20cm-3程度のドープ量ではバンド構造に変化はないのですね。
私は以前MOSの極浅接合の研究をしていました。そのとき、ソース、 ドレイン層に最高で2E21cm-3ほどのドーピングを行っていました。
このオーダーで考えると、k空間におけるバンド構造に何か定性的な 変化は起こりうるでしょうか?
少ししつこくなってしまいましたが、よろしくお願いいたします。
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Date: Fri, 13 Jun 2008 00:29:35 +0900
A3: U君、佐藤勝昭です。
 2E21cm-3もドープすると、Si1-xBxという合金ですね。
結晶構造がダイアモンド構造を保っているか疑問です。その場合は、 バンド構造が変化している可能性があるでしょうね。このとき、  色が変わるかどうかは、わかりません。
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Date: Fri, 13 Jun 2008 00:50:08 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
Uです。ダイアモンド構造が多少崩れ、k空間にも変化が現れる可能性も あるのですね。分かりました。大変勉強になりました。
お忙しい中、迅速にご回答いただいて有難うございました。
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1096. 六方晶サファイヤの結晶面の名称

Date: Fri, 13 Jun 2008 13:08:17 +0900
佐藤勝昭先生
S**株式会社のY*と申します。こんにちは。
(公開される際は匿名にてお願い致します。S社のYです。)
ホームページの物性Q&Aを拝見させていただき、連絡させていただきました。

現在、六方晶の材料を扱っております。ご存知と思いますが、代表的な結晶面に は、一般的に名前がついております。具体的には、{0001}をC面、{10-10}をM面 、{11-20}をA面、{10-12}をR面、などがあります。
web上にも、サファイア基板を取り扱っておられる
京セラ殿のページに絵が描いてあります。

質問は
・他にも名前が付けられている結晶面はあるか?(どのように調べたら良いか?)
・立方晶の結晶面には名前はついていないのか?なぜか?
・CやMなどのアルファベットはどのような由来でついたのか?
・それ以外の特異な結晶面に名前をつけて良いか?(例えばB面など)

です。誠にお手数とは存じますが、よろしくお願い致します。
                                  以上
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Date: Sat, 14 Jun 2008 00:12:24 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
SEMIM65-0306によるサファイヤの面方位名称 図をクリックすると拡大

 六方晶サファイヤの結晶面の名称については、SEMIの規格に若干の混乱があり
2006年に修正が行われ、SEMIM65-0306という国際規格になりました。
このいきさつは、2007年春の応用物理学会講演会27p-SM-1(半導体B・分科内招待講演)で沖電気の
佐野芳明さんがまとめて報告されました。そのときのパワポがネットにアップされています。
pdfファイルを添付します。アルファベットのいきさつは、わかりません。
佐野芳明さんに聞かれては如何でしょうか。大抵の面は上記規格に出ていますので、勝手に命名しない方がよいでしょう。
 立方晶の場合は(100), (110), (111)などミラー指数で表されるのが普通だと思います。
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Date: Sat, 14 Jun 2008 10:29:46 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生
S社のYです。大変参考になりました。ありがとうございました。
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1097. PN接合の拡散電位を電池として利用できるか

Date: Sat, 14 Jun 2008 00:55:03 +0900 Q: 佐藤勝昭先生 A****社 K**と申します。 最近、業務の関係で、ダイオードの勉強をしています。
しかし、下記の疑問がいつも頭をよぎり、勉強が進みません。
電池は、溶液中のイオンの濃度勾配による移動傾向を打ち消すよう、 電極間に静電ポテンシャルを発生させ平衡に達している。この静電ポテンシャル があるので、電極間に導線をつなぐと電気が流れる。
一方、PN接合でも、 似たような状況であり、電子とホールの濃度勾配による移動傾向を打ち消すよう、 静電ポテンシャル(拡散電位)を生じる。でも、PとNとに導線をつないでも、 電気は流れそうにありません。
なぜPN接合に導線をつないでも電流は 流れないのでしょうか?
お忙しいなか大変申し訳ありませんがご回答よろしくお願いいたします。
わからないなりの現時点での考え:
電流は静電ポテンシャルの勾配でなく、静電ポテンシャルを含めた電子の化学ポテンシャルの 勾配によって生じる。
PN接合では、P側とN側で、静電ポテンシャルを含めた電子の化学ポテンシャルが 平衡状態で同じになっている結果、導線でつないでも電子の移動は起こらない。
一方、電池では平衡状態でも、正電極と負電極とで、電子の化学ポテンシャルが異なる?
なぜなら、溶液中を電子は移動できないので、正電極と負電極は独立した系と考える ことができ、化学ポテンシャルが同じでなくてもよい。電子の化学ポテンシャルが異なれば、 導線をつなげば移動するのでは?
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Date: Sat, 14 Jun 2008 11:24:22 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 基本的に、あなたのご理解でよいと思います。
 PN接合の拡散電位差の起源を考えてみましょう。
もともとP型半導体もN型半導体も中性です。(正電荷と負電荷が釣り合っています)
P型の場合アクセプタ原子核がもつ正電荷不足(見かけの負電荷)とアクセプタから供給されたホールの正電荷とがバラ ンスしています。一方、N型においては、ドナー原子核の余分の正電荷とドナーから供給された電子の負電荷とがバラ ンスしています。
 PNを接合しますと、P側のホールがN側に拡散するとともに、N側の電子がP側に拡散します。
境界面付近では、電子とホールが再結合し、キャリアがなくなります。すると、もともと中性であったP型半導体側に おいてはホールが消えたので負に帯電しますし、N型半導体側は電子が消えたので正に帯電します。このため、境界面 付近のキャリアのない領域(空乏層)にはP型側がマイナス、N型側がプラスの電気二重層が生じ電場勾配が生じます。
このことはとりもなおさず境界面付近に電位差が生じたことになるのです。P側のホールのN側への拡散およびN側の 電子のP側への拡散は、いつまでも続くわけでなく、N側が正なのでPからNへのホール拡散はとまり、P側が負なの でNからPへの電子拡散も止まって、バランスします。この状態では、P側とN側の化学ポテンシャルが一致します。
逆に言えば、化学ポテンシャルが一致するまで拡散がすすみ、もはやそれ以上拡散しなくなったときの電気二重層の電 位差が拡散電位差なのです。だから、PN接合に導線をつないでも電気は流れません。
しかし、空乏層に光を当てて、 電子とホールの対を作りますと、電子は拡散電位差の正の方(N型側)に進み、ホールはP型側に進み、化学ポテンシ ャルの差ができます。これが太陽電池の原理で、両端に導線をつなぐと電流が流れます。
 一方、電池では、電極のフェルミ準位(=化学ポテンシャル)と溶液のREDOX(酸化還元電位)との電位差のために電極の 酸化/還元がおきるので、もともと中性であったわけではないと考えるべきでしょう。
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Date: Sat, 14 Jun 2008 20:33:44 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
早速のお返事ありがとうございます。
Kです。
お答えの最後でご指摘されている。”・・もともと中性であったわけではない”とのご指摘が、 何か重要なような気がします。あいにく電気化学の知識がないので腑に落ちるところまで いっていないのですが、早速、電気化学の本を買ってきて、もう少し詳細な電池の理解を 図りたいと思います。お答えの内容を完全に理解し、もし、さらに疑問が生じたときは、大変 図々しいですが、また質問させて頂きます。

自分の仕事からは脱線気味ですが、何かを心の底から理解できたら気分がいいですよね。

非常に丁寧なご回答ありがとうございました。
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1098. 皮膜で固定したアルミ線の熱膨張と線膨張

Date: Wed, 25 Jun 2008 19:17:01 +0900
Q: 佐藤勝昭先生へ
小生は某電機メーカーで設計に携わっておりますNと申します。
(大変申し訳ございませんが、個人情報公開の際には匿名にしていただきます よう、よろしくお願いいたします)

熱膨張と線膨張に関しまして検索していたところ、佐藤先生のHPにたどり着きました。
質問ですが、線径がΦ0.8~0.6位のアルミ線に厚い皮膜でコーティングして電流を流して発熱させ、 その時のアルミ線の温度を350~400度まで上昇したとすると、どういった変化が見られるのでしょうか?

厚い皮膜により、径方向の膨張は抑えられて、長さ方向の膨張のみが起こるのでしょうか?
また、径方向の膨張が抑えられることにより、長さ方向の膨張は皮膜が無い場合よりも大きく変化するのでしょうか?

さらに、同じアルミ線を紙管に何層かに巻きつけた後(線全長は40mm位)、接着剤で固め、同じように電流を流して発熱させて場合、線は動けずに、径方向にも 長さ方向にも膨張しないのでしょうか?(この場合、単純に皮膜の強さと接着剤の強さに起因する気はしますが。)

以上、お忙しいところ大変恐縮ですが、ご回答いただけましたら幸いです。
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Date: Thu, 26 Jun 2008 07:27:55 +0900 (JST)
A: N様、佐藤勝昭(スエーデン出張中)です。
 厚い皮膜でコーティングとありますが、皮膜の材質は何でしょうか?手元にデータが ないので、正確なことは言えませんが、プラスチックの場合、400度にも加熱しますと 軟化するので、膨張係数は金属より大きくなっている可能性があります。従って、径方 向の膨張が抑えられるということは無いと思います。
また、径方向の膨張を抑えるために、膨張係数の小さな金属で覆ったとしたとしますと 、両金属の境界ですべりが起きないとすれば、伸びは覆った金属の膨張係数とアルミの 膨張係数を断面積の重み付き平均したもので決まると存じます。
 コイルを巻いて、接着剤で固めた場合の伸びの評価においても、接着剤が400度で堅 牢であるとは考えられません。
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Date: Thu, 26 Jun 2008 10:58:37 +0900
Q2: 佐藤勝昭様
ご出張中にも関わらず、ご返答いただきありがとうございました。

皮膜はイソシアヌル酸系のポリエステルイミド樹脂を主体とした絶縁ワニスです。
また、コイルを巻いた後、硬化させる接着剤ですが、詳しいことはあまり言えませんが、 熱硬化型ワニスを使用します。

単純にアルミ線を使用の線膨張係数から計算すると、
40mm使用して300℃まで上昇した場合、
L=23.1x10^(-6)*40*300≒0.28≒28cm

となり、ここまで膨張していると、実使用上間違いなく不具合が生じているはずなのですが、 問題は起きていないのが現状です。(巻いた線がほつれてバラバラになることもありません。)

そこから、接着剤で固められていることにより、膨張が抑えられているのか?
また、果たして本当に抑えられるものなのか?ということを科学的に知りたかった次第です。
(皮膜のワニスと接着剤が極端に強固であり、膨張しないためなのでしょうか?)

お時間の許す時にご返答していただけましたら幸いです。
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Date: Thu, 26 Jun 2008 13:01:27 +0900
Q2': 佐藤勝昭様

お忙しい中、度々のメールで大変申し訳ございません。
各線が密接に何層かに巻かれた場合、隣り合う線が膨張しようとするが、作用、反作用により その膨張しようとする力が打ち消し合われてゼロとなり、最内外周のみが膨張する。
もしくは、最内外周もまた、作用、反作用により膨張しないとは考えられますでしょうか?
雑で申し訳ございませんが、図を添付させていただきます。(
)
お時間の許す時にご返答していただけましたら幸いです。
よろしくお願いいたします。
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Date: Thu, 26 Jun 2008 13:37:29 +0900 (JST)
A2: N様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。おっしゃるとおり、何らかの作用・反作用が働いてい ることは確かです。それが何であるか、コイルの熱膨張問題は、物理学の演習問題にな りそうですね。
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Date: Thu, 26 Jun 2008 14:00:25 +0900
佐藤勝昭様
お忙しい中、ご回答いただき実にありがとうございました。
摩擦や作用・反作用など様々な物理的応力が働いているようですね。
今後も、現物の変化なども見ながら解析してみます。
ご出張がご無事であることを心から願っております。
ありがとうございました。
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1099. MIM構造の容量ー電圧特性

Date: Wed, 2 Jul 2008 11:28:57 +0900 (JST)
Q: 先生始めまして。
K*大学 修士一年のK*といいます。
一つお聞きしたいことがありましてメールさせて頂きます。

修士で研究室を変えまして、新しく半導体の勉強をしています。
最近までMOS構造に関する勉強をしてきたんですが、最近MIM (METAL-INSULATOR-METAL)構造にも取り組みだして、最近容量ー電圧特性を測りました。

そこで質問なんですが、MIM構造の容量ー電圧特性は何故直線になるんでしょうか??

負バイアスをかけたときに単純に反転しないからでしょうか?
バンド図を描いて考えるんですがどうしても結論に達しません。
なにか、MIM構造の良い文献や本等がありましたらお教え願えると幸いです。
もしかしたら色々と考えすぎかもしれませんが、なにぶん勉強始めたばかりなので 考えが追いつきません、時間がありましたらお願いいたします。
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Date: Wed, 2 Jul 2008 15:34:53 +0900 (JST)
K君、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなり申しわけありません。
・薄いトンネル障壁をもつMIMのトンネル電流による電流電圧特性はよく論じられてい て、Simmonsの式でフィッティングできるので私もやった経験があるのですが、容量は 測定したことがありません。
 通常のトンネル接合では電荷の蓄積が起きないので、容量は一定だと思います。 Simmonsの式の誘導は、
ドイツのUlm大学の講義ノート が参考になります。
・一方、HfO2, Ta2O5などのhigh k絶縁物を挟んだMIMキャパシターは、Si-RF回路など に使われ、注目されていますが、私は研究したことがないのでよくわかりません。それ でネットで調べましたところ、添付のような論文が見つかりました。
このVCC(=voltage coefficient of capasitance)には、2次の係数αと1次の係数βがあり、 C=C0(1+αV^2 +βV) として表されるようです。
論文では正の係数のものと負の係数のものをスタックして、VCCを小さくすることができるという話が書いてありますが、αやβの 原因は書いてありません。
おそらく、何らかのトラッピング(捕捉準位によるキャリア の捕捉)による電荷の蓄積が働いているのであろうとは思いますが、不勉強でよくわか りません。おそらくバンド図で解釈できる話ではないと思うのですが。
もし、あなたの今やっている研究が、修士論文に関わる研究であるならば、あなたの指 導教員に、尋ねて教えてもらうべきです。研究室を変わったのなら、わからなくて当た り前なのですから。
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Date: Thu, 3 Jul 2008 11:29:25 +0900 (JST)
AA: 先生、お忙しい中こんなにも丁寧にお返事頂いて本当に嬉しいです。
基本的に私の研究室は全て自分で考えろ、的な方針で、MIMに関しても自分自身でやっていて、得られた結果も自分で咀嚼しているんですが、分からないことだらけです。
MIMの容量に関しても当たり前やろ!的な雰囲気だったので質問できる人もおらず、ずっと一人で考えていました。

先生に教えていただいた事をヒントにしてもう少し深く考えてみたいと思います。有り難うございます。
これから暑くなりますがお体に気をつけてお過ごしになって下さい。
どうしても分からない時はまた質問させて下さい。
あつかましくてすいません。

では、失礼します。
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1100. ワイヤグリッド偏光子

Date: Tue, 8 Jul 2008 10:13:23 +0900
Q: 佐藤先生

はじめまして、E*社のM*と申します。(すみません、もしHP掲載時には匿名希望です。)
先生のHPを見て、是非教えていただきたいことがあります。

今、Wire-grid Polarizerの試作を検討しているのですが、光の電場がワイヤーと平行になった ときの素子の反射率とワイヤの径の関係についてわからないことがあります。

例えばYAGレーザ(波長1064nm)に対し、ワイヤ間隔500nm、ワイヤ径50nmのAuでグリッドを 作った場合、ワイヤ間隔が波長の1/2以下なので、光の電場がワイヤーと平行になったとき AuのYAGに対する反射率(99.2%)が得られると期待しているのですが、直感的に自信が持てま せん。

もし、ワイヤグリッドでなく、厚み50nmのAuの薄膜を用意してこれにYAGレーザを入射すれば AuのYAGに対する侵入深さが10nm程度なので、間違いなく反射率は得られると思いますが、 ワイヤグリッドは間隔500nm、径50nmなので、面積的には1/10しかありません。
光の反射率は導電率とキャリア密度で決まるとおもうのですが上記のように面積的に制限を加 えた場合、どのように扱って反射率を見積もればよろしのでしょうか。

お忙しいところ恐縮ですがご指南いただければ幸いです。
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Date: Thu, 10 Jul 2008 01:19:57 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 私は、ワイヤグリッド偏光子を授業や著書で紹介しているのですが、実際に 設計したり使ったりした経験はないのです。
 定量的な値はきちんとした回折理論で扱うべきものであると思います。
ご参考になるかどうかわからないのですが、
X. J. Yu and H. S. Kwoka: Optical wire-grid polarizers at oblique angles of incidence:
JOURNAL OF APPLIED PHYSICS VOLUME 93, NUMBER 8 15 APRIL 2003
に回折理論を用いた解析が出ています。読んでみて下さい。
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Date: Thu, 10 Jul 2008 09:33:30 +0900
AA: 佐藤先生
早速ご回答いただきましてありがとうございます。
教えていただいた論文を元に基本的な理論を勉強してみます。
重ねてお礼申し上げます。
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1101. FTIR分析ATR法に最適なプリズム

Date: Fri, 11 Jul 2008 11:30:43 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
はじめまして。
私、T**社のS*と申します。
(公開時は匿名でお願いします)
FTIR分析のATR法について、勉強しております。
プリズムとして使用されるセレン化亜鉛の結晶構造は 単結晶と多結晶のどちらが適しているのでしょうか。
あるいはどちらも同じなのでしょうか。
ご回答いただければ幸いです。
よろしくお願いします。
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Date: Fri, 11 Jul 2008 12:25:16 +0900 (JST) A: S*様、佐藤勝昭です。
 セレン化亜鉛結晶は立方晶で等方性なので、単結晶でも多結晶でも本来屈折率にちがいがありません。
ただ、私見ですが、多結晶の粒径によっては、短波長の散乱が増える可能性があります。
透過波長領域を注意してください。また、液体に漬けて測定する場合は、単結晶の方が よいのではないかと思います。粒界から液体が侵入する可能性があります。
いずれにせよ、メーカーによくお尋ね下さい。
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Date: Fri, 11 Jul 2008 16:12:31 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
ご回答いただきまして、ありがとうございます。
IR装置のメーカーの方に聞いてみます。
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1102. 赤色LEDの光を当てたとき青色LEDの光電流が流れないわけ

Date: Fri, 11 Jul 2008 16:32:05 +0900
Q: C**大学1年のY*というものです。電気回路のことでわからないことがあるので教えていただけないでしょうか?
「添付した回路で赤色発光ダイオードの光を青色発光ダイオードに照射しても光電流が観測出来ない理由は?」
という問題です。お忙しいとは思いますが何とぞよろしくお願い致します。
また、Webのアップは匿名でお願いします。
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Date: Fri, 11 Jul 2008 17:10:32 +0900 (JST)
A: Y君、佐藤勝昭です。
 授業での演習問題ですか?ヒントだけ差し上げましょう。
青色LEDに使われているバンドギャップと赤色LEDに使われている半導体のバンドギャッ プを比べてください。LEDから光電流が流れるためには、光のエネルギーがバンドギャ ップを越えていなければならないことを思い出してください。
なお、波長λ(nm)と光子エネルギーE(eV)の関係は、E=1234/λです。赤色LEDの波長λ=650nm, 青色LEDの波長は450nm付近です。これらは、それぞれに使われている半導体のバンド ギャップにおよそ対応します。
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Date: Fri, 11 Jul 2008 17:44:00 +0900
AA: ヒントありがとうございます!ヒントを元に自分でもう一度考えてみたいと思います。
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1103. TM入射光に対するブリュースター角の求め方

Date: Sat, 19 Jul 2008 12:19:20 +0900
Q: TM入射時の反射係数が0となったときの,入射角θ(ブルースター角)の求め方を お聞きしたいのですが。お願いします。
武蔵工業大学 植村 惇史
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Date: Sat, 19 Jul 2008 15:55:25 +0900
A: 植村君、佐藤勝昭です。
 理論的な式の導き方が知りたいのでしょうか。
小生の著書「光と磁気(改訂版)」第3章3.5に斜め入射の反射の式の導出が出ています。 TM入射とは光学の言葉ではp偏光です。
Webに
光と磁気3.5-3.7節のpdf がアップしてありますので読んで下さい。(3.70)式(分母の符号が間違っていますが・・。)
Rp=|(N2(cosΨ)2-{N2-(sinΨ)2}1/2|2/|(N2(cosΨ)2+{N2-(sinΨ)2}1/2|2
ここにNは複素屈折率N=n+ikです。
消光係数k=0の場合にはN=nです。Rp=0となるためには、
(n2(cosΨ)2-{n2-(sinΨ)2}1/2=0
これより
(n4-1)(cosΨ)2=n2-1
従って
cosΨ=1/(n2+1)1/2
となります。例えば、n=3とすると
cosΨ=1/1/2
これよりΨ=71.56°となります。
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1104. n形およびp形半導体のキャリア密度の温度変化

Date: Sat, 26 Jul 2008 03:35:07 +0900
Q: はじめまして、私はH*大学のJ学科に所属しておりますS*と申します。
HPへの掲載は匿名でお願いします。「物性何でもQ&A」のHPをいつも拝見させ ていただいております。
さっそく質問なんですがN型半導体とp型半導体における電子密度の温度特性につい て、よくわからないので詳しく定性的に説明してください。
お忙しいと思いますが、御教授のことよろしくお願いします。
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Date: Sat, 26 Jul 2008 17:47:12 +0900 (JST)
A: S様、佐藤勝昭です。
 学生さんですか?その場合はコースと学年を書いてくださいね。学んでいる基礎によ って教える方法が異なるからです。
貴学J学科電子情報コースのカリキュラム表によれば、物性工学、半導体デバイス工学 が3年次の必修となっています。あなたの質問内容は物性工学で学んでいるはずです。
情報工学コースの場合には、物性関係がありません。物性を学んだことがあるかどうかで、 説明の仕方はすっかり変わります。
 とりあえず、物性を学んでいるとして話を進めます。
n型やp型のいわゆる外因性半導体では、n型の場合は伝導帯の底からΔEdだけ低いエ ネルギー位置にドナー準位が、p型の場合は価電子帯の頂からΔEaだけ高いエネルギー の位置にアクセプタ準位があります。これらは、それぞれ、ドナーにとらえられた電子 の束縛エネルギー、および、アクセプタにとらえられたホールの束縛エネルギーです。  キャリア密度の温度変化を横軸を1/Tにとり縦軸をキャリア密度の対数をとって表し た図を添付します。(このようなプロットの仕方を提唱したスエーデンの科学者アレニ ウスにちなんでアレニウスプロットといいます。)
n型を例にとって話をしますと、ΔEd>>kTであるような低い温度では、電子はドナーに 捕まったままで、伝導帯に電子はほとんどありません。温度が上がるとドナー電子のう ちボルツマン分布に従うexp(-ΔEd/2kT)の分だけが、伝導帯に供給されます。(これは 、難しく云うとフェルミ分布のすそがボルツマン分布で近似できることによるのですが ・・) 従って、横軸を1/T縦軸を対数にすると、添付図の右側のようなゆるい傾きの プロットになります。
さらに温度Tが上がると-ΔEd/2kTは限りなくゼロに近づいて、exp(-ΔEd/2kT)は1に近 づきます。すなわち、ドナーの電子が全て活性化します。キャリア密度波温度に対しほ ぼ一定になります。これを出払い領域とか飽和領域といいます。
さらに温度が高くなると、真性半導体と同様の価電子帯から伝導帯への遷移が起きて、 exp(-Eg/2kT)の形で温度変化します。これが、図の左端です。
これが、定性的な説明です。詳しくは、佐藤勝昭編著
「応用物性」 第2章のp.41付近(名大竹田先生執筆部分)をお読み下さい。
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1105. 半導体のフェルミ準位はなぜ禁制帯の真ん中に来るか

Date: Tue, 29 Jul 2008 19:00:55 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
お世話になります。
私はS**社のG***と申します。
Webに掲載する際は匿名でお願いします。

基本的なことですが大事なことだと思うので質問させてください。
なぜ、フェルミエネルギーは半導体、絶縁体の場合には伝導帯と価電子帯の間の 禁止帯の中にあるのでしょうか? 教科書などで普通に書かれていることですが、どうも納得いきません。 金属の場合には電子をバンドの底から詰めていき、その数が系の全電子数になっ たところの電子のエネルギーですが、
その定義をそのまま絶縁体や半導体で使うと価電子帯の一番上のところがフェル ミエネルギーの位置になるのではないかと思うのです。
また、禁止帯の位置には電子が存在できないのにフェルミエネルギーが そこにあるのもよくわかりません。
何かの数学的導出で真ん中に来ると証明されるのでしょうか?
それとも、便宜的にその位置にしたということなのでしょうか?

お忙しいところ申し訳ありませんが、お返事いただけるとありがたいです。
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Date: Wed, 30 Jul 2008 00:16:06 +0900
A: G様、佐藤勝昭です。
「禁止帯の位置には電子が存在できないのにフェルミエネルギーがそこにあるのもよくわかりません」
という質問から答えましょう。フェルミ分布というのはフェルミ統計に従う 粒子がどのエネルギーにどれだけ分布するかをあらわす単なる分布関数です。
一方、固体の電子構造から決まる状態密度関数g(E)があります。半導体では、 価電子帯、伝導帯に状態密度があって、禁制帯には状態がありません。
状態密度g(E)と分布関数f(E)をかけたのが実際の電子の占有状況です。

状態密度関数g(E)は劇場や教室の席がどう配置されているかをあらわすもので、 席のあるところが価電子帯と伝導帯に相当します。途中に席のない横列(通路) がありますが、それが禁制帯に相当します。この席にどのように学生が着席する かをあらわすのが、フェルミ分布関数f(E)です。

真性半導体では、禁制帯(通路)のまんなかにフェルミ準位Efがあって, エネルギーEの状態を占める確率は、フェルミ分布f(E)=1/[1+exp{(Ef-E)/kT}] で記述されます。T→0のときE>Efならexp{(Ef-E)/kT}=exp(-∞)=0なので、 f(E)=1, E>Efなら、exp{(Ef-E)/kT}=exp(+∞)=∞なので、f(E)=0です。
E=Efにおいては、exp{(Ef-E)/kT}=exp(0)=1, f(Ef)=1/2となります。
劇場でいえば、前から席が詰まっていき、通路より後ろはだれも座っていないのが 絶対零度での着席状況です。通路の真ん中にEfがあるので、ここのf(E)は1/2です が席がないので、人は座っていません。

それでは、「なぜ、フェルミエネルギーは半導体、絶縁体の場合には伝導帯と 価電子帯の間の 禁止帯の中にあるのでしょうか?」に答えましょう。
これは、真性半導体の場合に限られます。伝導帯の電子密度をn、価電子帯の 価電子帯のホール密度pとすると、
n=Nc exp{(Ef-Ec)/kT}  (1)
p=Nv exp[(Ev-Ef)/kT}  (2)
と表されます。ここに、Nc, Nvは、それぞれ、伝導帯電子に対する実効状態密度 および価電子帯ホールに対する実効状態密度です。これより、(1)(2)の積から  np=NcNv exp{(Ev-Ec)/kT} (3)
真性半導体では、n=p=ni ですから、
ni^2=NcNv exp{(Ev-Ec)/kT}=NcNv exp{-Eg/kT}
これより、
ni=(NcNv)^(1/2) exp{-Eg/2kT} (4)
一方、
(1)/(2)=1より
(Nc/Nv)exp[{2Ef-(Ec+Ev)}/kT]=1
これより、
Ef=(Ec+Ev)/2+(kT/2)ln (Nc/Nv) (5)
となります。従って、Nc~Nvとすると、Ef=(Ec+Ev)/2(伝導帯の底と価電子帯の頂の平均値) にすなわち禁制帯の真ん中に来ます。
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Date: Wed, 30 Jul 2008 00:46:54 +0900 From: Takeshi Goto AA: 佐藤先生

お返事ありがとうございました。
大まかには理解できたと思います。
先生の文章をよく読んで更なる理解に努めたいと思います。
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Date:Wed, 30 Jul 2008 09:18:06 +0900 (JST)
A2: G様、佐藤勝昭です。
 詳しくは、佐藤勝昭編著応用物性
第2章2.1節(名大竹田教授執筆部分)のp30-34を丁寧にお読み下さい。
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Date: Wed, 30 Jul 2008 18:42:45 +0900
AA2: 佐藤先生
お世話になっております。Gです。
ご親切にここまでしていただけるとは 正直思っておりませんでしたので とても驚いております。
勉強させていただきます。
本当にありがとうございました。
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1106. ポリウレタンチューブからの溶出

Date: Tue, 22 Jul 2008 09:35:55 +0900
Q: 佐藤勝昭殿
この度HPを見てメールさせていただきました。
物性変化につてどうしても気になることがあります。
ポリウレタンチューブに
エタノール80%
メタノール20%
イソプロピルアルコール2%
ノルマルプロピルアルコール8%
の混合溶液を流した場合に物性変化でポリウレタン中に含まれる物質が溶出する 可能性はあるでしょうか?
また、溶出するか可能性がある物質名をおしえてください。

株式会社S** 濱田
HPに記載する場合は社名を伏せていただけると幸いです。
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Date: Sat, 2 Aug 2008 20:59:02 +0900
A: S社濱田様、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなり申し訳ありません。
1093C. 質問#1093へのコメントにありますように、「分子と分子をウレタン結合でつないだのがウレタン樹脂、エポキシ結合でつないだのがエポキシ樹脂です。
こういった材料のバルク特性は、結合と結合の間の分子に左右されることが一般的ですので、そこがどんな化学式をしているのかがはっきりしていないと、バルクの特性はわかりません。」
従って、ポリウレタンチューブに使われている分子の化学式がわからないと、何が溶出するのか判断できません。
メーカーさんに聞くしかないのではないでしょうか。
なお、
財団法人 化学物質評価研究機構【CERI】 が、ポリウレタンチューブの変色の研究をするなど、化学物質の安全性評価に関わる様々なご調査、研究をやっていま すので、何か情報があるのではないかと存じます。お問い合わせになってはいかがでしょうか。
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1107. 高濃度ドープ半導体の活性化エネルギー

Date:Thu,14 Aug 2008 10:29:04 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
はじめまして、某メーカー研究所勤務のK*と申します。普段から先生のHPを活用さ せて頂いております。
 小生、若輩ながら半導体の研究開発に携わっているのですが、現在取り組んでいる実 験とデータ解釈に関してどうもよく分からない事項を抱えており、先生の御知恵を拝 借できればと思い不躾ながらメールさせて頂きました。あつかましいお願いで恐縮で すが宜しくお願い申し上げます。web公開の際は匿名でお願いいたします。
 あるワイドバンドギャップ半導体に高ドーズのイオン注入を行い、アニールで活性化 させて高濃度ドープ(~1e20cm-3ぐらい)の半導体を作製し、その電気特性を調べてい ます。シート抵抗の温度依存性(-223~573K)を評価してアレニウスプロットした結 果、綺麗にプロット上に乗りました(活性化エネルギーEa~70meV)。ただ、濃度が濃 度なだけに、バンド伝導だけではなく、不純物バンドのホッピング伝導も考慮する必 要があるのではと考えています(ちなみに温度依存性は十分にあるので、縮退はして いないと思います)。そのためホッピング伝導の温度依存性が気になり、当HPで先生 のホッピング伝導に関する記述を読ませて頂いて、ホッピング伝導に関わる伝導率が exp(-E/kT)、可変領域ホッピングの場合はexp(-E/kT^(1/4))に比例することを教えて 頂きました。ここで質問なのですが、「ホッピング伝導」と「可変領域ホッピング」 の違いを教えて頂けませんでしょうか。色々と調べた印象ではフォノン等のアシスト があるか否か、といった話なのかなあと漠然と感じているのですが、明快な記述が見 当たらず困っている次第です。質問事項としては、以下の2つです。

1. 可変領域ホッピングとは何か(普通の??ホッピング伝導と比較して)
2. 導電率が1/Tの1乗のアレニウスプロットに乗っている場合に、バンド伝導と普通 の??ホッピング伝導を並列的に考えるというモデルは間違いではないか(正解かどう かは別として)

長文かつ読みづらい文章で申し訳ありません。御迷惑でなければ、お手数ではござい ますが、御教授頂ければ幸いです。

よろしくお願い申し上げます。
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Date: Thu, 14 Aug 2008 14:23:59 +0900 (JST)
A: K様、佐藤勝昭です。
 ワイドギャップ半導体における高濃度ドーピングの問題は、それほど簡単ではないと思います。
10^20 cm^-3 もの高濃度ドープをしても、キャリアの活性化率がそれほど高くないので はないかと存じます。その証拠に縮退していません。それはさまざまな補償メカニズム が働くからです。
223~573Kというような高温でシート抵抗が普通の活性型で活性化エネルギー70meVとい うのは、通常の不純物準位からバンドへの活性化のメカニズムを考えればよいのでは無 いでしょうか。
高濃度ドープしたことによる格子の乱れによるアンダーソン局在が強ければ、variabl e range hoppingが起きますが、exp(-E/kT^1/4)の形を取るのは低温だけです。
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Date:Sun, 17 Aug 2008 02:19:22 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生

御礼が遅くなり申し訳ありません、Kです。表題の件に関しまして貴重な御助言あ りがとうございました。実は、ドーズ量が同等にも関わらず、注入の仕方によって活 性化エネルギーが変化するような現象が見られており(結晶欠陥密度が高い程、活性 化エネルギー低い~70meV)、不純物バンドやバンドテイルを絡めて説明できないもの かと浅学ながら頭を捻っております。例えば、結晶歪が比較的大きな系においては、 より高密度のバンドテイルが形成されることで不純物バンド内のホッピング伝導が促 進されて(伝導パスが増えて)、通常のバンド伝導の活性化エネルギーとは異なる値が 得られる、などということはあり得る話でしょうか。あるいは、実証する方法はあり ますでしょうか。重ね重ね申し訳ありませんが、御教授頂ければ幸いです。
よろしくお願い申し上げます。
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Date:Sun, 17 Aug 2008 11:39:47 +0900 (JST)
A2: K様、佐藤勝昭です。
 メール有り難うございます。
電気伝導率σはキャリア密度nと移動度μに比例します。
電気伝導率がexp(-ΔE/kT)という活性型をとるとき、
①キャリア密度nがn=n_0 exp(-ΔE/kT)の形をとることによる場合と
②移動度μがμ=μ_0 exp(-ΔE/kT)の形をとることによる場合とがあります。

①の場合は、ボルツマン分布によるもので、活性化エネルギーΔEは n-typeの場合、伝導帯の底のエネルギーEcと、フェルミ準位Efとすると
 ΔE=(Ec-Ef)/2 です。
この場合、高濃度ドープでフェルミ準位が高くなればΔEは小さくなります。
これだと、欠陥が多くなるのは高濃度ドープの結果であって、欠陥が多いことが原因で はないでしょう。

②の場合がホッピング伝導です。ポテンシャル障壁を熱的に越えて、キャリアが伝わる メカニズムです。
この場合、欠陥密度が多くなって、乱れが増大すると、局在化が進み、活性化エネルギ ーΔEが増大するはずです。

ホッピング伝導と拡散伝導が共存する場合のことをお尋ねですが、ホッピング伝導によ る移動度は、通常は0.1cm^2/Vs程度、大きくてもせいぜい1cm^2/Vsのオーダーであり、 拡散伝導の移動度(10^3 cm^2/Vs以上)に比べ、桁違いに小さいので、通常はホッピン グの寄与を無視しても差し支えないと思います。

どうやって、検証するかですが、ホール効果を用いてキャリア数の温度変化を測定し、 電気伝導率の温度変化と比較して、移動度の温度変化を求めます。一般に、ホッピング 伝導ではホール効果を測ることは出来ませんので、TOF(time od flight)などの方法で 移動度の測定を行います。

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Date: Tue, 19 Aug 2008 00:06:27 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
Kです。表題の件、もう少しデータを貯めて考察を進めたいと思います。有意義な 御助言ありがとうございました。
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1108. IH土鍋の銀ペースト

Date: Mon, 25 Aug 2008 12:26:36 +0900
Q: 佐藤勝昭様

「物性なんでもQ&A」を拝見して、初めてメールいたします。
私はM**社という会社で技術開発をしておりますA*と申します。
(もしWeb記載されるようなら匿名でお願いします)

わが社ではIH調理器に使用する土鍋を製造しています。
発熱体として銀ペーストを使用しています。

元々銀は抵抗値が低いので、厚膜にすると発熱せず、それを薄膜 にすることにより加熱できる、というのが、一般によく聞く話です。
(何十年か前のSONYの特許)

今まで開発生産している中で、銀ペーストの厚みですが、ある程度 の厚みより薄くしていくと加熱され難く(出力が落ちる)なるという傾向 にあります。
出力を落とさずに、もっと厚みを薄くしたい場合、銀ペースト自体の抵抗を 下げる方向にすればよいのでしょうか?

電流は表皮だけ流れ、加熱されているでしょうか?
(その場合厚みは関係しないのでしょうか)

分かり難い質問で申し訳ありません。
膜の抵抗、膜厚、電磁波の浸透深さなど、出力(Power)に関わる要因 など、わかる範囲で教えていただけませんか?
もしそのような説明の書かれている本をご存知であれば、教えて いただけませんか?
お手数だと思いますが、よろしくお願いします。
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Date: Wed, 27 Aug 2008 14:10:10 +0900 (JST)
A: A様、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなって申しわけありません。
 電磁波の表皮深さはδ=(2/ωμ0σ)1/2と表され、電磁波の角振動数ωと、導電率σ の積の平方根に反比例します。材料と周波数が決まれば決まる量です。およその見積も りで20kHzの電磁波は銀ペーストに2.5mm侵入します。銀ペーストの厚みがδより厚けれ ば、電磁波が全部銀ペーストに吸収されますが、これより薄いと電磁波の一部は通り抜 けるので、加熱が弱くなるのでしょう。もちろん、σが大きくなれば、δが小さくなる ので、よいのでしょうが、焼結できて低抵抗になるものとしては、銀ペースト位しかな いと思います。
 なお、IH土鍋の銀ペーストに関しての文献はほとんどなく、かろうじて添付の佐賀県 窯業技術センターのものしか見つかりませんでした。
報文を添付しておきます。佐賀県窯業技 術センターにお聞きになっては如何でしょうか。
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Date: Thu, 28 Aug 2008 08:31:57 +0900
AA: 佐藤様
おはようございます。早速のお返事ありがとうございます。
先生のおかげで導電率と表皮深さの関係がわかりました。
わが社はM県にあり、近くにM県窯業試験場というのがあります。
佐賀県窯業技術センターと、技術的な交流もあると思いますので、 まずは一度M県のほうに相談してみます。
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1109. シロキサンの水への溶解度

Date: Wed, 27 Aug 2008 14:17:10 +0900
Q: 佐藤勝昭様
初めてメールを差し上げます。
S**社のH**と申します。尚、WEBに出す時は匿名(S社H)として頂きたくお願い いたします。
先生のHPで「物性なんでもQ&A」を拝見しました。 質問させて頂きたくメールをいたしました。

質問
下水汚泥のメタン発酵によって発生するバイオガスを 精製してのバイオガスの燃料化を検討していますが、 バイオガス中に含まれる微量のシロキサンを水接触で 除去したく考えています。シロキサンの水に対する溶解度 (温度、圧力による影響も含めて)を教えて頂きたく宜しく お願いいたします。
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Date: Wed, 27 Aug 2008 18:37:32 +0900 (JST)
A: H様、佐藤勝昭です。
申し訳ありませんが、私は、専門ではありません。
シロキサンの化学式は、H3SiO-(H2SiO)n-SiH3 と書かれ、nの値によって性質も変わるようです。
この形のままでは、溶解度は低そうですね。

http://www.nikkeibp.co.jp/style/eco/report/070619_cng/index.html に神戸市・神鋼の試みが出ています。
http://www.engineer.or.jp/dept/mech/record/document/document2005/document0510-1.pdf には活性炭による除去のことが書いてあります。
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Date: Thu, 28 Aug 2008 11:47:41 +0900
AA: 佐藤勝昭様
早速のご回答、有難うございました。
シロキサンは最近話題になった物質で、なかなか 文献がありません。こんな中でご苦労頂き有難う ございました。今後とも宜しくお願いいたします。
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Date: Sat, 20 Sep 2008 15:20:43 +0900
佐藤勝昭です。
 なんでもQ&Aをごらんになった米国化学会社のS様より、コメントをいただきました。
詳細は、直接、S様に御連絡下さい。
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Date: Sat, 20 Sep 2008 15:47:12 +0900
佐藤先生
お世話になっております。
シロキサン溶解度の件, 貴重な情報を頂き、有難うございました。
検討させて頂きます。追って米国化学会社S様へ直接ご相談させて頂きます。
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1093C. 質問#1109へのコメント

Date: Wed, 17 Sep 2008 15:32:31 -0500
C: 佐藤先生、
米国化学会社Sです。
完全にタイミングがずれましたが、
質問1109(シロキサンの溶解性)についてコメントを差し上げます。
活性汚泥に含まれるシロキサンは、ほとんどがシャンプーやリンス由来のものですが、正式にはポリジメチルシロキサン(略称PDMS)です。従って、先生が書かれた化学式のHを全てCH3に置き換えたものが、問題となるシロキサンです。この構造からわかるように、水への溶解性はゼロと考えてよく、水を用いての除去は不可能です(逆に油層には来ますけど)。
ただし、中性ではない水(酸性かアルカリ性)によってPDMSは加水分解し、最終的には水溶性のシラノール種に変換されます。シラノール種とは、SiOHを含む化学物質の総称です。
また、地中では粘土と接触することによって分解されることも知られています。
PDMSの汚泥中での挙動や、粘土による分解については、多くの文献が発表されています。例としてhttp://www.dowcorning.com/content/publishedlit/01-1113-01.pdf をあげておきますが、GoogleでPDMS fate in sludge を検索すれば、たくさん出てきます。
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Date: Thu, 18 Sep 2008 05:52:48 +0900 (JST)
A:S様、佐藤勝昭@ベルリンです。
 お久しぶりです。コメントありがとうございます。
帰国次第、HPを更新します。今後とも、宜しくお願いします。
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1110. 黄銅の熱伝導率の温度係数

Date: Thu, 28 Aug 2008 18:55:41 +0900
Q: はじまして。
私は伸銅品メーカーS社に勤務しておりますKです。
突然ですが質問させて下さい。
伸銅品というのは温度によって、熱伝導率・電気伝導率は変わってくるのでしょうか? 一般的に純銅は温度が高くなるにつれて熱、電気伝導率は下がるので、伸銅品も同様 だとは思うのですが、
具体的に常温と115℃における数字の違いというのはお分かりになりますでしょうか?
※C3604(快削黄銅) フラットバー4X12 及び 6X16 です。

突然の質問で大変もうしわけございません。
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Date: Thu, 28 Aug 2008 19:30:19 +0900 (JST)
A: K様、佐藤勝昭です。
 ちょっと調べてみましたが、黄銅の熱伝導率の温度係数までは載っている書物が見つ かりませんでした。JISは調べていません。ひょっとしたら、あるかも。
 金属の熱伝導は、格子振動による寄与は少なく、ほとんどが電子によって担われています。
電子による熱伝導率Kと電気伝導率σの間には、Wiedeman-Franzの法則が成り立ち、
 K/σ=LT
と表されます。従って、電気伝導度の温度依存性がわかれば熱伝導率の温度依存性も推測できます。
金属の電気伝導率の表 によりますと、銅の電気抵抗の温度係数は4.3×10-4(/K)に対し、黄銅のそれは10×10-4(/K)となっています。従って、銅の2倍ちょっと温度変化するようです。 ところが、 熱伝導率の表 によれば、銅の熱伝導率は
25℃125℃225℃
401400398 (W/m K)
となっており、25℃から125℃に加熱したとき、温度係数は-1/400/100=-2.5×10-5という電気伝導の温度係数より小さな値です。
黄銅の熱伝導率の温度係数はわかりませんが、せいぜいその倍程度と考えてはいかがでしょうか。
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Date: Mon, 1 Sep 2008 09:55:35 +0900
AA: 佐藤勝昭様、Kです。
詳しく教えていただき大変ありがとうございます。非常に助かりました。
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1111. emu/gからμBへの換算

Date: Fri, 5 Sep 2008 11:27:33 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭先生
W大学3年のKと申します。匿名でお願いします。
今、磁性体について勉強をしていて、行き詰った問題があるので質問させてください。
[emu/g]を[μB/(Mn+Fe)]に換算したいのですが、どうすればよいかわかりません。
例えば、5emu/gのMnFe2O4があった場合、[μB/(Mn+Fe)]に換算しようとするにはどうすればよいのでしょうか?
そもそも、[μB]という概念があまりわかっておりません。
大変お忙しいのは重々承知いたしておりますが、お教えくださいますでしょうか。
宜しくお願い致します。
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Date: Sat, 6 Sep 2008 16:03:27 +0900 (JST)
 ボーア磁子というのは水素原子のもつ磁気モーメントを表す単位です。
大きさは、 9.274 009 15(23) × 10-24 J・T-1 (SI)
または、9.274 009 15(23) × 10-21 Erg・Oe-1です。
例えば、Mn2+イオンの軌道配置は3d5なので、高スピン配置では磁気モーメントは5μBです。
MnFe2O4が正スピネルであるとすれば、Mn2+(3d5=5μB)がAサイトを占め、Fe3+(3d5=5μB)が Bサイトを占め、AサイトとBサイトが反強磁性結合するので1分子あたりの磁気モーメントは5μBになるはずです。
1モルあたりにするアボガドロ数NA=6.02×1023倍になりますから、1モルあたりの磁気モーメントの大きさは 5×6.022×1023×9.274×10-21=2.792×104emuとなります。
これを1モルあたりの分子量229.6で割ると、飽和磁化の大きさは121.6emu/gとなります。
実際には、部分的逆スピネル構造をとり、部分的にMn2+がBサイトに、Fe3+がAサイトに 入ったりするのでこの値より小さくなります。
完全な逆スピネルだと1分子あたり4μBになるので、97emu/gになります。
1分子あたりnμBとすると、24.32n[emu/g]となります。
あなたの場合、飽和磁化が5emu/gしかないので、分子あたりの磁気モーメントは0.216μBです。
このモーメントはMn+Feから来ているので0.216μB/(Mn+Fe)と書けるでしょう。
ということで、あなたのMnFe2O4は、本当に出来ているのかどうか不明です。
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Date: Mon, 8 Sep 2008 09:19:18 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生
大変参考になりました。
ありがとうございました。
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1112. ダイヤモンドのバンドギャップ以下の光の浸入長

Date: Sat, 6 Sep 2008 22:36:57 +0900
Q: 佐藤先生
K*大学物4年のI*と申します。(Web up時は匿名でお願いいたします)
物性なんでもQ&Aは、よく分かっていなかったことを丁寧に解説してくださっていて、いつもありがたく拝見しています。
初歩的な質問で恐縮ですが、メールさせていただきました。

バンドギャップよりも大きいエネルギーをもつ励起レーザーの侵入長は、吸収係数の逆数程度ということは分かるのですが、 バンドギャップよりも小さいエネルギーをもつ励起レーザーの侵入長は、どのように求めればよいのでしょうか?

私は現在、ワイドバンドギャップ(5.5eV)半導体であるダイヤモンド薄膜のラマン測定を研究テーマにしているのですが、
励起レーザーのエネルギーが物質のバンドギャップよりも小さい時、レーザー光は物質を透過する(侵入長が無限長になる)と思っていたのですが、 ダイヤモンド薄膜のラマン測定をしている論文を探していると、244nm(5.08eV)のバンドギャップ以下のエネルギーをもつ励起光でも侵入長が短くなり、 薄膜の情報が得られることが分かりました。

すみませんが、お時間のあるときに、ご教授いただければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
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Date: Sun, 7 Sep 2008 00:43:07 +0900 (JST)
A: I君、佐藤勝昭です。
 ダイアモンドの吸収端付近の光学定数の表をPalik Optical Constant of Solids IIから抜粋します。

光子エネルギー
(eV)
波長(μm)屈折率n消光係数k
7.50.16533.3210.553
7.30.16983.3760.473
7.10.17463.4440.210
7.00.17713.3229.35×10-2
6.80.18233.1463.44×10-2
6.60.18793.0311.47×10-2
6.40.19372.9449.87×10-3
6.20.20002.8368.62×10-3
6.00.20662.8267.99×10-3
5.80.21382.7805.02×10-3
5.60.22142.7401.48×10-3
5.30.23392.6882.98×10-3
4.820.2582.6141.47×10-3

nは屈折率、kは消光係数です。
吸収を表すのが消光係数kです。吸収係数αをkと波長λを使って表すと
  α=4πk/λ
と書くことが出来ます。
本来の吸収端は7.0eV付近にありますが、kは吸収端より低いエ ネルギーでも有限の値をもちます。これは、ダイヤモンドに含まれる窒素などの不純物 や空孔などによるものです。
5.3eV付近でのkは、k=2.98×10-6の値をもっています。浸入長はd=1/αの程度です。
d=λ/4πk=0.2339×10-4cm/(4π×2.98×10-6)=6.25×10-1cm
となります。0.625mmしか侵入できないのです。
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Date: Sun, 7 Sep 2008 14:03:24 +0900
Q2: 佐藤先生
K大学4年のIです。
とても早い返信で、ありがとうございます。

バンドギャップよりも小さいエネルギーをもつ励起光でも、 ダイヤモンドに含まれる窒素などの不純物や空孔がつくる準位の励起に使われるため、 吸収される、ということでしょうか。

間違っていたら、ご指摘いただければ嬉しいです。
すみませんが、よろしくお願いいたします。
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Date: Sun, 7 Sep 2008 15:46:35 +0900 (JST)
A2: I君、佐藤勝昭です。
 君の理解の通りです。一般に、どんな半導体でもsubgap absorptionと言って、バン ドギャップでピッタリと吸収が始まるのではなく、すそを引いていることが多いのです 。すその吸収としては、特定の不純物準位や欠陥準位による吸収だけでなく、Urbach tail といって、結晶の熱揺らぎや結晶格子の乱れによる場合もあります。
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Date: Sun, 7 Sep 2008 20:16:07 +0900
AA: 佐藤先生
K大学物4年のIです。
返信ありがとうございます。
お陰様で、よく分かりました。
又佐藤先生の講義にも出させていただきたいと思いますので、 よろしくお願いいたします。
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1113. The question about the p-GaN ohmic contact(p型GaNへのオーム性接触について)

Date: Tue, 9 Sep 2008 11:56:26 +0900
(この質問は、日本語で頂きましたが、文字コードの違いから私のメーラーでは読めないので、英文での質問をお願いしました。)
Q: Dear Professor Sato, I am sorry to disturb you again.
I know you are very busy. Let me introduce myself, I am a foreign student form China.
Now, I am a M2 student in Nagoya Institute of Technology. My major is electronics.
Yesterday, I read your homepage for the first time, and I have felt your kindness in the column of the questions.
So would you like to give me some advice about my title? Actually in my experiment, the realization of the p-GaN ohmic contact always makes the problem for me until today. The specific contact resistance varied from 10-2 to 10-3Ωcm2.
To my knowledge, in the reference (Appl. Phys. Lett. 79, 2588 (2001)), the best data is 1.1×10-6 Ωcm2.
Both processing and evaluation are my main work, during these work, the results often annoy me.
I think there are many factors influence it, for example, the surface treatment, evaporation, and the annealing.
The conditions are hydrochloric acid: water (1:1), EB (Ni/Au), and 600 degree/3 minutes, respectively.
Maybe the pressure of vacuum is more important? I am confusing which factor is the dominate one, and in next step what should I do?
Please give me some advice. Thank you very much.
Yours sincerely.
Y.H. Zhu
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Date: Tue, 9 Sep 2008 13:42:53 +0900 (JST)
A: Dear Mr. Zhu
Thank you for your e-mail. I understand your situation of the trouble in the ohmic contact with p-GaN.
Unfortunately I am not a specialist in studies of nitrides.
I found in the Google Scholor a number of papers discussing on the ohmic contact to p-GaN.
From your mail I found you anneal the Ni/Au alloy evaporated on p-GaN at 600 deg C.
I guess you anneal it in vacuum not high enough.
If you anneal metals at 600 deg C in poor vacuum of 10-3 to 10-6 Torr, the metals or alloys should be subjected to oxidation.
According to the paper "Microstructural investigation of oxidized Ni/Au ohmic contact to p-type GaN" published inJ. Appl. Phys. 86, 3826 (1999), the crystalline NiO and/or the amorphous Ni-Ga-O phases may significantly affect the low resistance ohmic contact to p-GaN.

My recommendation is as follows:
You had better observe the surface morphology either by an optical microscopy or by a SEM.
If oxidation occurred, the as-deposited Au film converts into discontinuous islands containing small amounts of Ni that connect with p-GaN.
In such a case the contact area will be reduced, which in turn leads to high contact resistance.
Also you had better analyze the film by XPS or such whether Ni is oxidized.
If you find such symptom of oxidation you should anneal the film in high vacuum of the order of 10-8 to 10-10 Torr (such as in MBE chamber) to prevent oxidation.
I hope my suggestion is helpful to you.
Best regards,
Katsuaki Sato
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Date: Tue, 9 Sep 2008 15:35:20 +0900
AA: Dear Professor Sato,
Thank you for your kind consideration of my question, and I couldn't believe it that your reply is so quickly.
So, I would like to express my appreciation again.
I will do some expriment concerning with your kind suggestion.

Yours Sincerely
Youhua Zhu
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1114. pn 接合ダイオードの順方向電流-電圧特性について半導体物性

Date: Sat, 30 Aug 2008 12:17:13 +0900 (JST)
Q: はじめまして,私はA高等専門学校専攻2年のYと申します.佐藤勝昭先生の「物性なんでもQ&A」を拝見させていただき,ぜひ教えていただきたいことがあるので質問させていただきます.なおHPへの掲載は匿名でよろしくお願いします.

質問内容
 私は現在,pn接合ダイオードの電流-電圧特性(以下I-V特性と省略します)について詳しく解析しています.特に順方向I-V特性についてですが,電流を対数にとったグラフを描き解析すると,以下のように4つの領域を考えることができます.文章だけだとわかりにくいので画像を添付させていただきます.
(1)バイアス電圧が微小な領域では空乏層における再結合電流が主で,理想係数n=2となる.
(2)バイアス電圧が中程度だと拡散電流が主で,理想係数n=1となる.
(3)高いバイアス領域ではキャリアの高注入による電流が主で,理想係数n=2となる.
(4)さらに高い領域であれば,ダイオード自体がもつ直列抵抗効果により,電流増加が鈍ります.
通常,半導体の電流機構は,ドリフト・ディフュージョンモデルで説明できるという文献を読みました.上記に示した4つの領域において,ドリフト電流が主となる領域はあるのでしょうか.

 また整流用のpn接合ダイオードとPINフォトダイオードの構造的な違いについてですが,これらの違いは,PINフォトダイオードのほうが真性半導体が間に入っている分だけ空乏層が大きいこと以外,pn接合ダイオードと同じ構造であると考えてよいのでしょうか.


 整流用のpn接合ダイオードとPINフォトダイオードのI-V特性を比較してみました.前者を測定した結果からは,上記の4領域に分類することができませんでしたが,後者は上記の4領域に分類することができました.空乏層が広い分だけ再結合電流が多くなり,再結合電流の領域がより顕著に現れたと考えてよいのでしょうか.実 験結果の画像を添付します.(
pn 接合I-V特性, pn 接合ダイオードとpinフォトダイオードのIV特性の比較
)
長文となってしまい,お手数とは思いますが,ぜひとも御教授いただければ幸いです.
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Date: Tue, 2 Sep 2008 01:40:32 +0900
A: Y君、佐藤勝昭です。
 拡散(difusion)モデルでは、ショックレーの式が得られます。
    J=Js{exp(eV/kT)-1}
で表されます。従って、ご質問の4領域の中では(2)です。
一般には、4つの領域がに明確に分かれるということはなく、領域の境もあいまいです。
君の測定結果について、
 半導体デバイスの専門家にメールで尋ねているところですが、私は、基本的にpnもpinもそれほど大きな違いはないと おもいます。
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Date: Tue, 2 Sep 2008 19:42:10 +0900 (JST)
Q2:早速の返信,ありがとうございます.前回送信した測定結果なのですが,Agilent Technologies社製の半導体パラメータ・アナライザーB1500Aを用いて行いました.さまざまなダイオードで測定を行ったのですが,このpinフォトダイオードほど理論に一致する結果を得られるダイオードはありませんでした.

 前回送信した画像(Si pin フォトダイオード)の理想係数を求めた画像を送信します(添付ファイル図1).ほとんど,理論どおりの結果になっていると思います.また,直列抵抗効果による影響を考慮して,I-V特性の高い電流(直列抵抗効果が生じる)領域を補正すると,キャリアの高注入領域の傾きとほぼ一致しました.なお,直列抵抗効果により生じる抵抗 値の導出は,図2のような手法で行っております.よって,実際のI-V特性は直列抵抗効果による領域を除くと,(1)再結合電流による領域,(2)拡散電流による領域,(3)キャリアの高注入による電流領域の3つとして考えることができると解析しております.

 またpn接合ダイオードのI-V特性において,「直列抵抗効果による電流増加割合が減少し始めたところから,ドリフト電流が主体になる」というように,本校の先生がおっしゃっていたのですが,これは正しいのでしょうか.さらに,この直列抵抗効果が生じ始める電圧が,ほぼ拡散電位に等しいともおっしゃっていました.
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Date: Fri, 12 Sep 2008 00:26:35 +0900
A2: Y君、佐藤勝昭です。
 ご質問につき、専門家である愛知工業大学堀田厚生教授にお尋ねしましたところ、下記の回答を頂きました。
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I. まず、ダイオードの電圧電流特性について、

1 上記に示した4つの領域において,ドリフト電流が主となる領域はあるのでしょうか.

    半導体で、電流が流れる仕組みは拡散とドリフトの二つです。
(1)バイアス電圧が微小な領域では空乏層における再結合電流が主で,理想係数n=2となる.
この場合、電荷の生成/捕獲による電流が発生します。これは電荷の生成により、電荷が生まれ、次に捕獲されるわけですが、そ の電流の流れは微小電界によるドリフトだと思います。
(2)バイアス電圧が中程度だと拡散電流が主で,理想係数n=1となる.
 これは、接合の近傍では、拡散電流が主ですが、接合の近傍を離れて、外部端子まで流れる電流はドリフト電流です。拡散電流 とドリフト電流は連続した、電流の流れです。電流値は同じ。
(3)高いバイアス領域ではキャリアの高注入による電流が主で,理想係数n=2となる.
 この場合は、上と同じで、接合の近傍では、拡散電流が主です。ただし高注入なので、n=2となります。接合の近傍を離れて、 外部端子まで流れる電流はドリフト電流です。
(4)さらに高い領域であれば,ダイオード自体がもつ直列抵抗効果により,電流増加が鈍ります.
 ダイオードの持つ直列抵抗は半導体のバルクの抵抗分ですからこの部分はドリフト電流です。ただし接合の近傍は拡散電流です。

2 これらの違いは,PINフォトダイオードのほうが真性半導体が間に入っている分だけ空乏層が大きいこと以外,pn接合ダイオ ードと同じ構造であると考えてよいのでしょうか.

 その通りだと思います。

3空乏層が広い分だけ再結合電流が多くなり,再結合電流の領域がより顕著に現れたと考えてよいのでしょうか.

 空乏層が広いと生成/捕獲の確率が上がりますからそうもいえます。接合の善し悪しで、再結合中心の濃度が異なりますから、 その違いともいえます。

II. 第2の質問について
 以下のような回答になると思います。
1 「(1)再結合電流による領域,(2)拡散電流による領域,(3)キャリアの高注入に よる電流領域の3つとして考えることができると解析しております.」

  作成されたpinダイオードが、理論式によく合致しているということで、仰るとおりです。

2 「直列抵抗効果による電流増加割合が減少し始めたところから,ドリフト電流が主体になる」

PN接合においては、接合近傍で、拡散電流、バルクのシリコンでは、ドリフト電流が主です。電流のメカニズムは違いますが、 一連の連続した電流です。

3 「この直列抵抗効果が生じ始める電圧が,ほぼ拡散電位に等しい」

 これは、PN接合の電圧降下はほとんど接合の拡散電位で決まっていて、外部端子につながるバルクのシリコンの抵抗分は小さい と言っていることと同じです。通常、ダイオードは寄生抵抗を減らすため、不純物濃度の濃い半導体で、外部端子までの距離を短 く作るため、これは当たっています。
 真性半導体でダイオードを作れば外部抵抗が大きくなり、上のことは言えません。しかし、そんなダイオードは作りません。

 堀田厚生
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Date: Fri, 12 Sep 2008 10:48:52 +0900 (JST)
AA: お忙しいところ,御教授ありがとうございました.佐藤勝昭先生,堀田厚生先生には心から感謝しております.非常に参考になりました.
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1115. アルミ溶接時の反りについて

Date: Fri, 12 Sep 2008 09:18:42 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
F*社T*と申します。(WEB掲載時は匿名でお願い申し上げます。)
先生のHP「物性なんでもQ&A」を拝見しメールさせて頂いております。

現在、縦8mm×横250mm×高さ1mmのアルミバーにφ0.5mmのタンタルワイヤーを溶接しているのですが、 このときにアルミバーが両端から1mm程度の反りが出てしまい、この反りの原因、対処が掴めずにおります。

<電極>
タンタルワイヤ側電極:円盤型のアルミナ分散銅を使用(プラス側)
アルミバー側電極:幅250mm程度、厚み3mm程度のモリブデンを使用(マイナス側)

<溶接方法>
モリブデンの上にアルミバーをセットし、アルミバーの上にタンタルワイヤを並べて、その上から円盤型電極を下降させ溶接。
これを1アルミバーに対して50回程度繰り返します。

尚、溶接(電流を流している)時間は1ms~5ms程度と一瞬です。

<これまでに試したこと>
・電流値下げワイヤ無しのアルミバーだけに電流をかける
 ⇒同様に反り発生(アルミが溶けた形跡はさほど無し)
  溶接時に溶けたアルミが反りの原因では、と考えていたが
  この結果をみるとそうではないのかと疑問が深まってしまいました。

・低電圧で実施すると、しっかり溶接されており、反りもきつく出る
 電圧を下げると反り幅は現象するが溶接も弱くなる。
 ⇒電流がなんらかの関係をしていることは間違いなさそう。

・エアブローで冷やしながら溶接
 ⇒効果なし

・アルミバー側の形状をかまぼこ型(電流設置面積を減らすような形)で溶接
 ⇒効果なし

目標としているところは、反らずにしっかりとした溶接なのですが、
反りの根本原因が分かっていない為、解決の目処がたたずにいます。

お忙しいところ大変恐縮ですが、ご回答いただけましたら幸いです。

以上となります。
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Date: Fri, 12 Sep 2008 11:26:59 +0900 (JST)
A: T様、佐藤勝昭です。
私は、金属加工の専門家ではありませんので、東京農工大学機械システム工学科の國枝教授にお伺いしましたところ、
=======================================================================================
溶接の状況がはっきり分からないので明解な回答はできませんが、そりの発生の原因には大きく 分けて2つの可能性があると思います。
ひとつは溶接時の熱的な負荷の非対称性で、もうひとつは溶接前の素材にすでに存在する残留応力の影響です。
アルミの板をどのような加工で用意したかによって、溶接前にひずみがすでに内在しています。
したがって、溶接の熱的負荷がたとえ対称であっても、溶接前の残留応力が非対称の場合、顕在化しそる可能性があります。
ひとまずこの点を先方にお伝え願えないでしょうか.
=======================================================================================
という回答をいただきましたのでお伝えします。
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Date: Fri, 12 Sep 2008 11:44:32 +0900
AA: 佐藤勝昭先生、國枝先生

早速のご回答、誠にありがとうございます。
また國枝先生に伺って頂き、ご回答くださいましたこと、重ねて御礼申し上げます。

下記2点が原因となる可能性があること、了解致しました。
その点を考慮し、再度対応を考えていこうと思います。

それでは失礼致します。
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Date: Tue, 16 Sep 2008 16:23:01 +0900
AA2: 佐藤勝昭先生
お世話になっております。
先日件名の質問をさせて頂きました、F社Tです。

先日ご相談させて頂いた問題の対処は、かなり原始的な方法になってしまったのですが、 溶接時にアルミフレームを下側から持ち上げるような方式と致しました。

乱暴な言い方をしますと、反りの分 逆側から曲げる、といった具合です。

ご報告までとなりますが、今後も佐藤先生のページ拝見させて頂きますので どうぞ宜しくお願い致します。

以上となります。
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1116. 薄膜シリコン太陽電池の分光感度の光バイアス依存性

Date: Sun, 28 Sep 2008 20:49:26 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭様 こんにちわ。
S*大学 理工学研究科 修士2年H*と申します。匿名希望です。
私は、現在SiH2Cl2とH2を原料に プラズマCVD法からのpin型薄膜太陽電池を作製しています。
そして作製したpin型薄膜太陽電池を分光感度を用いて評価を行っています。
ここで質問があります。
評価の中で、バイアス光を斜め45度から照射しながら分光感度を測ることがあるのですが、  バイアス光を照射しますと感度が下がってしまうのはなぜなのでしょうか?
通常、バイアス光を照射しますと欠陥の場所をバイアス光によってできたキャリアがうめて、分光感度は上がるとかんがえているのですが。。。
もしかしたら、塩素がなにか悪さをするのではと考えていますが、たしかではありません。もしご存知でしたら教えていただけませんか?
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Date: Mon, 29 Sep 2008 23:39:41 +0900 (JST)
A: H*君、佐藤勝昭です。
 ジクロロシランと水素を原料としてプラズマCVDで薄膜シリコンの太陽電池を作っておられるのですね。
水素の分量によりますが、作っているのは水素化アモルファスシリコン薄膜、あるいは、微結晶シリコンが水素化アモルファスシリコンのマトリクスに浮かんでいる状態でしょうか?
 太陽電池の分光特性を測る時に、通常は分光器からの光は弱くLockin ampで交流測定しますが、実際の太陽光照射条件に近づけるために、AM1.5の白色バイアス光を当てて、分光測定します。
 しかし、ご質問のようなことが起きる原因としてトラップ準位が関係するのかどうかわからないので、太陽電池の専門家であるパナソニック電工の根上様にお尋ねしました。
 根上様の回答は下記のとおりです。
=============================================================
アモルファスSiは専門ではありませんが、わかる範囲でご返事いたします。
太陽電池の分光特性を測る時には、通常、AM1.5の白色バイアス光を照射しながら測定することが基本です。
この時、白色バイアスはDCですので、分光感度の測定は、単色光をチョッピングしてロックインで測る必要があります。
質問者の測定法には間違いありませんが、白色バイアス光を用いない測定は、白色光強度に対し、線形性が保持されているサンプルで有効です。
JISやIECの測定法では白色バイアス光を照射することになっています。

アモルファスSiでは、光照射するとダングリングボンド欠陥を生じます。
これは、Siを終端しているHが抜けるためと考えられていますが、まだ決着はついていないと思います。
アモルファスSiはpin構造ですので、pin間に生じる拡散電位によってi層内全域に電界が拡がります。
しかし、光照射によりi層内で生成したダングリングボンド欠陥がp層及びn層近傍に空間電荷を形成することでi層中央部の電界が低下し、電子と正孔は分離されにくくなり、 欠陥を介した再結合によって消滅してしまいます。
この光劣化は主にFFに効いてきますが、Jscも低下します。従って、分光感度も低下することになります。
ただし、光照射によるJscの低下はそれほど速くはないので、分光感度測定中では、ほとんど低下しないと思います。
何度も測定していると低下がみられるかもしれませんし、サンプルの元々の欠陥の量にも関係するかもしれません。
アモルファスSiの光劣化のメカニズム等の詳細は専門の方にお尋ね下さい。

CISは逆に光照射によりFF,Vocが増加します。Jscはほとんど変化ありません。
従って、CISでは光照射で効率が向上する現象がみられます。
ただし、この現象もバッファー層やCISの膜質によって異なるためメカニズムは、まだはっきりとはわかっていません。

ご質問に対し、不十分かもしれませんが、回答まで。
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以上ののように、水素化アモルファスシリコン特有の光劣化のためではないかということのようです。
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Date : Tue, 30 Sep 2008 22:43:24 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭様 こんばんわ 
S大学大学院Hです。
ご返事有難うございました。
はい、私は微結晶シリコンの太陽電池について研究をおこなっています。
欠陥は、ESRスピン共鳴法から算出した欠陥量はそこまで多くないのですが、やはり
シランではなく、ジクロロシランのClが関係しているのではと現在は考えております。
今後、シランでも同じようなことが起こるのか、試していき考察していこうと考えております。

わざわざパナソニック電工の根上様までお聞きくださり有難うございました。
失礼致しました。
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1117. GaAsの電子線励起プラズマの光学的観察

Date: Fri, 10 Oct 2008 22:31:32 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
私、O*大学博士課程3年のK*と申します。
突然のメール申し訳ありません。
先生のHPを拝見させていただきました。
半導体に詳しい先生のお力をお借りしたくメールさせていただきました。
WEBにアップされる際は、匿名で研究内容はふせていただけないでしょうか?

GaAsの光誘起による反射率、透過率というのが変化するという報告があるようです。

Phys. Rev. B 60, 8890 - 8896 (1999)
Appl. Phys. Lett. 51, 1442 (1987)

たとえば800nm(1.5eV)のレーザーでポンプすると、GaAsもしくはGaAlAsのバンドギャップが1.4eV程度なので 伝導帯端の少し上に励起キャリアが分布し、それが反射(透過)率変化を引き起こすようです。
さらに、このような励起過程というのは非常に高速で、レーザーパルス幅(100フェムト秒程度)にほぼ追随する程度のタイムスケールで観測できるようです。
[ここに研究内容が書いてありますが、希望により伏せてあります。]
そこで、質問なのですが、
・例えば30MeV程度の電子線で励起した直後、励起キャリアはどのように分布するのでしょうか?
恐らくX線で励起した場合も励起キャリアは伝導帯には同様な分布を作る思いますが、その分布は伝導体全体に均一に分布するのでしょうか?
それとも、どこかのエネルギー準位に何らかの分布を持つのでしょうか?
よろしくお願いいたします。
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Date: Sat, 11 Oct 2008 01:18:27 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 論文は、半導体をレーザーで強励起したときに生じる電子正孔プラズマによる非線形光学現象ですね。
近赤外から中赤外にかけての反射率変化は、吸収の変化と屈折率の変化の両方の効果です。
吸収の変化は、強いバンド間励起によって価電子帯の上のサブバンドに高密度のホールが出来ると、下の満ちたサブバンドから上の空いたサブバンドへのサブバンド間吸収が生じることが吸収変化の一因のようです。
一方、屈折率の変化は、自由キャリアのドルーデ項が再結合の速度によって大きく変化することが原因とされています。

 さて、お尋ねは、電子線励起でも同様の反射スペクトル変化が見られるかということですね。
高いエネルギーの電子線で励起すると、電子は価電子帯から伝導帯の遙か上の方に励起されますが、数百fsから数ps以内に伝導帯の底に落ちてきます。
このとき、エネルギーのほとんどを格子振動に渡して熱化してしまいます。このため、強いパルスレーザー光によるバンド間共鳴励起に比べ、 遙かに少ないキャリア対しか作れません。
もし同じ程度励起しようとすれば、相当な電子線のフルーエンスが必要で、そうすると熱化も大きくなってしまうでしょう。
[この部分は研究内容に関する回答ですが、希望により伏せてあります。]
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Date: Wed, 15 Oct 2008 22:39:34 +0900
AA:佐藤勝昭先生
早速のお返事ありがとうございます。
O大学のKです。

やはり、GaAsを電子線で励起したとしても熱化時間がいくらかあるわけなのですね。
[ここに研究室での実験内容が書いてありますが、希望により伏せてあります。]
液体などでも同じようなこと(熱化)がおきるといわれていて、固体ならどうかと疑問に思ったのですが残念ながら、同様のようですね。

現在はGaAsの実験には手を出せない状態なのですが、また時間ができたら、実験をやってみようと思います。

お忙しい中お答えくださりありがとうございました。
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Date: Wed, 15 Oct 2008 22:51:49 +0900
A2: K君、佐藤勝昭です。
 私は、自分の答えにあまり自信が持てないので、半導体の光による励起に詳しい東京農工大学の三沢和彦先生にご意見を伺いま したところ、次のような回答を得ましたので、参考にしてください。
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 佐藤勝昭先生
 三沢です。
 keV程度の電子線照射ですと、カソードルミネッセンスとして半導体のバンドギャップでの直接発光が見えるでしょうから、先生のご回答の通りかと思います。
 この他、パルス電子線照射で結晶転位が起こることも報告されていて、EBリソグラフィにおける半導体試料損傷の研究もあるようです。
 30MeV程度の高エネルギーの電子線になりますと、原子核から放射線が放出されたりするとも思われます。
 取りいそぎ、ご参考まで。
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Date: Thu, 16 Oct 2008 12:42:51 +0900
AA2: 佐藤勝昭先生
お返事ありがとうございます。O大学のKです。
わざわざほかの先生にも聞いてくださりありがとうございました。お手数をおかけしました。
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1118. 骨の透磁率

Date: Tue, 21 Oct 2008 09:25:11 +0900
Q1: はじめまして
私は㈱M**技術開発センターのO*と申します。
先生のH・Pを見て、メール差し上げた次第です。
先生のH・Pに載せる際は社名及び氏名は匿名でお願い致します。
さて、現在弊社で開発検討中の磁気治療器に関してご質問したい事があります。
コイルより発生した磁界はコイルより離れるに従い磁界強度は小さくなっていくと認識しております。
また、治療器という特性上、発生磁界は体に作用させるため、磁界の透磁率が関係すると認識しております。
そこでご質問ですが、骨の透磁率はどうなっているのでしょうか?
製品より発生する磁界を骨がシールドしてしまうかどうかの検討をしております。
詳しくはお知らせできないのですが、発生する磁界はMHz帯で数mT 程度の磁界強度を考えております。
生体の透磁率は一概に定義する事は難しいと思いますが、ご助言だけでも頂けると幸いです。
私は電磁気学どころか物理学も専攻した事がない素人であります。
稚拙なご質問で大変恐縮ですが何卒よろしくお願い申し上げます。
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Date: Wed, 22 Oct 2008 09:45:43 +0900
A1-1: O様、佐藤勝昭です。
 骨の成分は、リン酸カルシウムです。物質の磁性の元となる遷移元素(鉄や ニッケルなど)を含んでいないので、弱い反磁性または常磁性ではないかと推察します。
従って、比透磁率は、限りなく1に近く、磁気シールドなどの作用はないと断言できます。
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Date: Wed, 22 Oct 2008 13:49:26 +0900 (JST)
A1-2: O様、佐藤勝昭です。
 本日、大学に来たので、文献を調べましたが、骨の成分であるリン酸カルシウムCaPO3に関する透磁率あるいは磁化率のデータは見つかりませんでした。
添付のデータによれば、他のリン化物のモル磁化率χはリン酸亜鉛Zn3(PO4)2で-141×10-6cm3mol-1、 リン酸鉛Pb3(PO4)2で-182×10-6cm3mol-1といずれも負(反磁性)で小さく、比透磁率μ=1+χはほとんど1と考えて差し支えないと思います。
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Date: Wed, 22 Oct 2008 15:14:02 +0900
AA1: 佐藤先生
㈱MのOです。
早速のご対応ありがとうございます。
文献の調査まで時間を割いて頂き、まことにありがたく存じます。
骨の成分、リン酸カルシウムが弱い反磁性との事で、骨を構成する物質に磁性がなければ磁界に作用しないのは少し考えると当たり前の事ですね。
素人考えの稚拙な質問に関わらず丁寧にご回答頂きありがとうございました。
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Date: Thu, 23 Oct 2008 10:18:45 +0900
Q2: 佐藤先生
お世話になっております。
㈱MのOです。
骨には磁性がないため、磁界遮蔽効果はないとの方向で上司と打ち合わせを進めた次第です。
そこで、新たな疑問が生じたため、メールを差し上げた次第です。
C. Ramon, J. Haueisen and P.H. Schimpf, Influence of head models on neuromagnetic fields and inverse source localizations, BioMedical Engineering OnLine 2006, 5:55(Page 4 of 13)によると骨の電導度は他の組織に比べて群を抜いて低いとされています。
この際に使われる単位:Conductivity(Siemens/cm)に関する認識なんですがこれはあくまで、電場にだけ関係する事だと認識しています。
つまり骨は電場は遮蔽するが磁界は遮蔽しないと私は認識しております。しかし、上司も私同様電磁気学に通じていないため、この認識に判断がつきません。
現状といたしましては、治療器より生じる磁界にコイルからの距離だけを考慮するのか、距離と遮蔽効果、2項目を考慮するのか、どちらが正しいのか判断がついておりません。
先に述べたように私は電磁気学に通じておりません。
そのため、骨は電場は遮蔽するが磁界は遮蔽しないという私の認識が正しいのか誤りなのか佐藤先生にご教授頂ければと存じます。
またもや佐藤先生のお手を煩わせる質問ですが何卒よろしくお願い申し上げます。
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Date: Thu, 23 Oct 2008 22:48:05 +0900
A2: O様、佐藤勝昭です。
 その文献によれば、頭蓋骨の電気抵抗率は16000[Ωcm](導電率=1/電気抵抗率=6.25E-5[S/cm])ということですから、ほぼ絶縁 物と考えてよいでしょう。電磁波は、金属のように電気抵抗が低いと遮蔽され透過しなくなりますが、非磁性の絶縁物は通り抜け ます。あなたの認識(電場は遮蔽する)は全くの誤りです。
(医療関係の技術開発センターで医療機器を扱っている方が、電磁気学を知らないでは、世間に通用しません。努力して勉強さ れることをお勧めします。)
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Date: Fri, 24 Oct 2008 09:49:13 +0900
AA: 佐藤先生
おはようございます。
M社のOです。
ご返信ありがとうございます。
「骨は電気抵抗が高く絶縁物で、磁性がないため電磁波は透過するとの認識に改めました。」
佐藤先生のおっしゃる通り努力不足、勉強不足でございます。前任者の退職に伴い、今年度下半期より現在の開発プロジェクトに参加しているため、日々精進していく所存です。
まことにありがとうございました。
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1119. 金/シリコンショットキーダイオード

Date: Fri, 17 Oct 2008 12:33:56 +0900 (JST)
Q: M大学の学部4年のM*と申します(ネット公開は非公開でお願いします)。
半導体物性、光物性について質問があります。
現在、金とシリコンを蒸着させたショットキーダイオードを作製しているのですが、シリコンと金の組み合わせでは、金がシリコンに拡散され、合金化されてしまい、障壁の低いショットキーダイオードが形成されてしまいます。
このように、合金化されてしまうと、なぜ、ショットキー障壁が低くなってしまうか、その理由を教えていただけませんか。
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Date: Fri, 17 Oct 2008 23:40:03 +0900 (JST)
A: M君、佐藤勝昭です。
このコーナーでは、匿名にはしますが、非公開には致しません。
ショットキー障壁は、金属と半導体のabrupt junction (急峻な接合)の場合に起きます。
金属よりも半導体の方がフェルミ準位が高いと半導体から金属へと電子が流れ込み 金属側は負に帯電し、半導体側は正に帯電し障壁層ができます。

金とシリコンは合金を作りますから、Au/Si-Au合金/Siというgradual junction(段つな ぎ接合)になっています。AuとSi-Au合金とでは真空準位から測ったフェルミ準位の深 さが異なるため、ショットキー接合を作る条件が満たされなくなって、ohmic junction (オーム性接触)になるのではないでしょうか。
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Date: Sat, 18 Oct 2008 19:02:33 +0900 (JST)
Q2: 佐藤先生: 返信ありがとうございました。
そもそも、シリコンと金が合金化されてしまうという資料が少なくて、その原因について述べてる参考文献もあまりなかったので(調べ方が悪いのかもしれませんが・・・)、佐藤先生の意見を聞けてよかったです。
もうひとつ、半導体物性、光物性についての質問があります。
合金化されない金属とシリコンを使用して、ショットキーPDの作成を考えています。また、光はシリコン側からの照射してを考えています。このときの電流応答を測定しようとしているのですが、現在使用しているシリコンのウェハでは、片面は研磨されており、もう片面は研磨されていない状態です。
金属蒸着は研磨されている面に行うのですが、光を照射するとき、研磨されていない面では、散乱などの影響はあるのでしょうか?
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Date: Mon, 20 Oct 2008 01:13:04 +0900
A2: M君、佐藤勝昭です。
 確かに裏面が非研磨面だと光散乱があるでしょう。その分鏡面反射が抑えられるというメリットもあるので、光の損失について は何とも言えません。
ただ、光の光子エネルギーがバンドギャップを越えていると表面で強く吸収が起きショットキー接合付近に届かない可能性があり ます。また、この付近でキャリアが生成されますと、キャリアが散乱されたり、欠陥等にトラップされるために、光起電力に寄与 しない可能性があります。
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Date: Tue, 21 Oct 2008 09:39:22 +0900 (JST)
AA: 佐藤先生:
返信ありがとうございます。
とても参考になりました。
また、質問があると思いますが、そのときはよろしくお願いいたします。
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1120. アルミニウム蒸着とクロム蒸着

Date: Thu, 23 Oct 2008 14:23:45 +0900
Q: S**社のT*と申します。
以前、佐藤先生には
アルミニウムの反射について丁寧にご教授して頂きました。

今回アルバダ式逆ガリレオファインダーの設計を行っているのですが視野枠見え辛いと言う現象がおきております。

視野枠をクロム蒸着し、反射面をアルミニウム蒸着(レンズ中心は蒸着せず周辺だけを蒸着しています)をしています。

下記内容で視野枠を見易くしようと考えているのですが考え方等に間違いがあるでしょうか?

①視野枠線幅を2倍にすれば光量が2倍になるので明るくなる
②アルミニウム反射面の範囲を増やす(アルミニウムが蒸着されていない箇所に視野枠から出た光線が当たっている割合が多かった)
③視野枠線をクロム蒸着からアルミニウム蒸着に変更する。

見た目だけですとアルミニウムとクロム蒸着で差はない様に見えるのですが同じ線幅でもアルミニウムとクロム蒸着では大きく異なるのでしょうか?
お忙しいとは思いますがご教授の程宜しくお願い致します。
社名は伏せて頂きたいと思っています。
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Date: Thu, 23 Oct 2008 18:04:33 +0900 (JST)
A1: T様、佐藤勝昭です。
 アルバダ式逆ガリレオファインダーというのがわかりません。
従って、視野枠が見え辛いと言う現象がどんなことなのか理解できません。
図を添付して説明していただけないでしょうか?
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Date: Fri, 24 Oct 2008 09:45:03 +0900
Q2: 東京農工大学名誉教授 佐藤様
S社Tです。
説明不足で、お時間を取らせてしまい申し訳ありません。
添付したファイルにアルバダ式逆ガリレオファインダーの簡単な説明を記述しました。
つたない説明で分かりにくい箇所もあるかと思いますが、読んで頂けますでしょうか。
現在問題になっているのは、視野枠が薄く見辛いと言う事です。
視度は合っているので、視野枠の光線が眼に届く量が少ないのだと思っています。
視野枠線にクロムメッキを使用していますが、こちらをアルミ蒸着に変更すると反射率が約1.5倍位上がると思っています。
クロムの反射率50%とアルミの反射率85%ですと見栄えに大きく差が出るものでしょうか?

お忙しいとは思いますが宜しくお願い致します。
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Date: Fri, 24 Oct 2008 16:40:03 +0900 (JST)
A2: T様、佐藤勝昭です。
①視野枠線幅を2倍にすれば光量が2倍になるので明るくなる:
  この認識で正しいと思います。

②アルミニウム反射面の範囲を増やす(アルミニウムが蒸着されていない箇所に視野枠から出た光線が当たっている割合が多かった):
  視野が狭くなりませんか?

③視野枠線をクロム蒸着からアルミニウム蒸着に変更する。:
  下記のように、1.4倍程度になるはずですが、アルミは酸化して反射率が低下している可能性があります。

 クロムの反射率50%、アルミの反射率85%というのはどこから出ているのでしょうか。
PalikのOptical Constants of Solids vol.2 に出ているn,kのデータから
直入射の反射率をR={(n-1)^2+k^2}/{(n+1)^2+k^2}の式で計算しますと
波長  n   k   R
409  1.54 3.71 69.5%
456  1.99 4.22 70.2%
512  2.75 4.46 67.6%
556  3.18 4.41 65.5%
611  3.48 4.36 64.4%
701  3.84 4.37 63.8%
となり、可視光領域で平均65%以上あります。
一方、アルミニウムは(酸化してなければ)
400  0.49 4.86 92.4%
450  0.62 5.47 92.4
500  0.77 6.08 92.3
550  0.96 6.69 92.1
600  1.20 7.26 91.6
700  1.83 8.21 90.3
となり可視域で92%程度あります。
従ってCr×Alでは約60%、Al×Alでは約85%で後者だと前者の1.4倍となります。
実際には酸化のためにおっしゃるような値に落ちているかもしれません。
まずは、CrもAlも蒸着直後MgF2などでコートし酸化を防げば、もう少しはっきりと見えるかもしれません。
また、アルミに変えて、銀のミラーにすれば、97%以上の反射率が見込まれます。Ag×Agならトータル94%も反射します。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 08:51:12 +090
AA1;東京農工大学名誉教授 佐藤様

返事が遅くなり、申し訳ありません。
クロムの反射率50%と言うのは、
実際に蒸着した製品(視野枠線)を業者に測定して貰った際のデータです。
(線幅が0.1mmと言う細さなので、測定し辛いようです。

専門とは違う分野での質問になってしまい先生にはお手数をお掛けしました。
本当にありがとうございます。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 14:35:06 +0900
A3: T様、佐藤勝昭です。
 幅0.1mmの細線の反射を測定するとき、エッジ部分での散乱がありますから、 反射率の絶対値を正確に評価するのはむずかしいと思います。本当は50%より も高かったのではないかと拝察します。いずれにせよ、線幅を2倍程度にすれ ば、見やすくなるでしょう。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 15:08:13 +0900
Q4: 東京農工大学名誉教授 佐藤様
S社Tです。
エッジ部分の散乱があると言う事は考えてもいませんでした。
散乱があると言う事はエッジがボケると言うことなのでしょうか?
(ボケるまではいかないのかも知れませんが)
何度も質問してしまい、申し訳ありませんが ご意見をお聞かせ頂けますでしょうか?
宜しくお願い致します。
-----------------------------------------------------------------------------
Date: Mon, 27 Oct 2008 15:08:13 +0900
A4: T様、佐藤勝昭です。
 平面での反射は、ミクロに見れば、表面に誘起された多数の電気双極子からの 放射がconstructiveに干渉して加え合わされて、入射角と同じ反射角でビームが 出て行くのです。しかし、エッジでは、反面からの双極子放射が無いので、反射 角以外の方向にも散乱されます。ぼけるというかエッジがはっきりしなくなる効 果があります。
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追伸:Tさま、佐藤勝昭です。
 前メールほどは、エッジがはっきりしなくなると言いましたが、  金や銀などプラズモンが存在する場合、エッジでは光散乱が強調される場合も あるようです。
http://www.jst.go.jp/kisoken/crest/report/heisei19/pdf/pdf13/13_1/011.pdf
要するに、無限の平面と細線とでは反射の様子が異なると言うことです。
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Date: Tue, 28 Oct 2008 08:55:06 +0900
東京農工大学名誉教授 佐藤様
回答ありがとうございます。
今までの内容を踏まえ、再度検討したいと思います。
今回も先生には本当にお世話になりました。
ありがとうございました。
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1121. ITOの面抵抗変化

Date: Fri, 24 Oct 2008 19:24:02 +0900
Q: はじめまして佐藤勝昭様。
HPを拝見しメールさせて頂きました。
私は株式会社 D社のSと申します。公開時は社名名前共に匿名でお願いします。

ITOの性質に関する質問をさせて頂きます。

弊社ではITOフィルム(基材は、PETフィルム)を使用しております。
添付資料の様にITOフィルムのITO面に通電(5V・72H)していると
面抵抗値が「+極側で100Ω高く」、「-極側で100Ω低く」なり、
放置しておくと元に戻る 現象が発生しました。
しかし、同じフィルムでも現象が発生しないものがあります。

面抵抗値が変動し元に戻る現象はこれまでに経験がなく解らない現象です。
そこで、「SEMでの表面観察(1万倍程度まで)」・「通電時の熱収縮」・「ITOの(基材)密着性」 「表面の凸凹性」・「EDXによる測定」を確認しておりますが、現象が発生するものとしないものとの 「差」が見つかっておりません。

・ITOが通電によって、面抵抗値が変動することは、通常起こりえることなのでしょうか?
・この現象の有効な確認方法

以上2点についてご教授お願い致します。
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Date: Sat, 25 Oct 2008 00:05:48 +0900 (JST)
A: S様、佐藤勝昭です。
 このご質問は、一般性がなく、「物性なんでもQ&A」の主旨に合わないのですが、お困りのようなので調べてみました。
 ご質問ではPETフィルムにITOを使っておられるそうですね。
PET上にITOを成膜する際に加熱しますとPETが分解して炭素がITOに混入します。
Web J-tokkyoの「透明導電性積層体」http://www.j-tokkyo.com/1999/B32B/JP11010780.shtml によりますと、
【0020】発明者らは、加熱プロセスにおけるITO膜の抵抗上昇が、ITO膜中に炭素が多く混入していることが原因であり、加熱処理によってその炭素量が変化するために抵抗値変化が引き起こされることを見いだした。ITO膜中の炭素は加熱処理によって減少しており、すなわち、膜中から抜け出しており、炭素量の減少が抵抗値の上昇 につながっていることが示唆される。炭素含有量がもともと多いITO膜は、その炭素が抜け易く性能は不安定であり、抵抗値変化が大きいばかりでなく通電時に断線しやすい脆い導電膜となっている。
と書かれています。

 従って炭素の含有量を測定してご覧になると、いかがでしょう。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 08:18:17 +0900
佐藤勝昭様へ
早速のメールを頂きありがとうございます。

早速ITO膜内の炭素量の比較を行います。

今回は、主旨から外れる質問をしてしまい申し訳ございませんでした。
また、お調べ頂けとても感謝しております。この度はどうもありがとうございました。
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1122. シリコンウェハのランプ加熱

Date: Sun, 26 Oct 2008 16:06:23 +0900
Q: 佐藤先生
HPを見てご相談いたしたく、メールを出させていただきました。
H社の坂本と申します。

現在、ハロゲンランプによるシリコンウェハの加熱を行なっております。
シリコンウェハはSiCコートされたグラファイトのサセプタの上に乗っており、 上下両面から光を照射しています。

このときのシリコンウェハの加熱のされ方ですが、
上方からの吸収端より短い波長の光を直接ウェハが吸収して加熱される分と、 上方からの吸収端より長い波長の光、及び下方からの全波長の光をサセプタが吸収し、 伝熱、及び輻射により間接的にウェハが加熱される分が合わさっていると考えればいいのでしょうか。

また、シリコンウェハ自身は、昇温に伴って徐々に透過率が減少し、
600℃程度の温度でも、吸収端より長い光に対する吸収率が 著しく増加すると思われるのですが、この推察は正しいでしょうか。

つまりは、シリコンの光学スペクトルの(特に高温での) 温度依存性がどうなるのかを検討したいと思っています。

よろしくご教示のほど、お願い申し上げます。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 14:22:26 +0900
坂本様、佐藤勝昭です。
シリコンウェハのランプ加熱のメカニズムは、ほぼ坂本様のお考えの通りでよい と思いますが、ハロゲンランプは熱線(赤外線)をかなり放射していますから、 シリコンが赤外線を直接吸収して加熱される分も考慮する必要があるでしょう。
なお、お尋ねの、シリコンの高温における吸収の増加を調べた最近の文献としては、
E. H. Sin, C. K. Ong, H. S. Tan,
Temperature Dependence of Interband Optical Absorption of Silicon at 1152,1064, 750, and 694 nm,
Physica Status Solidi (a), Volume 85 Issue 1, Pages 199 - 204, Published Online: 16 Feb 2006
をご参照下さい。
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Date: Mon, 27 Oct 2008 22:02:38 +0900
佐藤先生
早々のご回答、ありがとうございました。
早速、現場でも検討したいと思います。
今後ともご指導のほど、よろしくお願いいたします。
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1123. 超伝導磁気分離技術の実験をやりたい

Date: Wed, 29 Oct 2008 19:25:25 +0900
Q: HPページを拝見してメールさせてもらいました。
私、K*県立H*高等学校の1年の生徒のSです「匿名でお願いします」
今度学校で超伝導磁気分離技術の実験を行おうと思っています。
磁性付与などは難しいので磁性活性炭を使おうと思っているのですがどこをさがしてもありません。
なので磁性活性炭の値段と売っている、または貸し出しなどができる所があったら教えてもらいたいのですが。
また超伝導電磁石に必要な超伝導線も貸し出しできる所があったらそちらのほうも教えてもらえると幸いです。
お忙しいところ申し訳ありませんができるだけ早く返信していただければと思います。
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Date: Wed, 29 Oct 2008 20:51:23 +0900
A: S君、佐藤勝昭です。
 申し訳ありませんが、私には、超伝導磁気分離技術の経験がありません。
磁性活性炭も使ったことがありません。磁性活性炭は、株式会社MSエンジニアリング
〒551-0031 大阪市大正区泉尾6-2-10 Tel06-6552-1555 Fax06-6552-3653 e-mail:info@ms-engineering.co.jp
が扱っていますから、電話で聞いてみてはいかがでしょうか。高校生が、実験に使うと言うことなら、分けてくださるかも知れませんよ。
 ただ、超伝導電磁石を高校生が自力で作って磁気分離をやろうというのは、経験のある指導者がそばにおられるのなければ、無理があるような気がします。まず、超伝導線はNbTi系などの低温超伝導体をお考えでしょうか?(高価な液体ヘリウムが必要です。
また高価なクライオスタットが無いと、超伝導にできません。)それとも、Bi2Sr2Ca2Cu3Ox系などの高温超伝導体をお考えでしょうか?(これなら液体窒素で超伝導にできます。これでも、液体窒素用クライオスタットが必要ですよ。)高温超伝導線は、住友電工で入手できると思いますが、超伝導体で磁石を作るのもそれほど簡単ではありません。超伝導線の曲げ方によっては、超伝導を破壊してしまいます。電源も大電流を流すことができ、かつクエンチのときに対応できる回路を備えたものが必要です。高校生がちょこっと作れるようなものではありません。
 国際超電導研究所ISTECに相談してご覧なさい。
財団法人 国際超電導産業技術研究センター/超電導工学研究所
〒135-0062 東京都江東区東雲一丁目10番13号 電話 (03)3536-5703 FAX (03)3536-5717
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Date: Wed, 29 Oct 2008 20:58:17 +0900
AA: お早い返信ありがとうございます。
確かに高校生には難しそうですが、できる限りを尽くしていけるところまでいきたいと思います。
本当にありがとうございました。
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Date: Sat, 1 Nov 2008 00:20:04 +0900
A2: S君、佐藤勝昭です。
 高校生がチャレンジするのは素晴らしいと思います。頑張って下さい。なお、液体ヘリウムとか液体窒素の扱いには、十分な注意が必要ですので、指導教員の立ち会いのもとに実験して下さい。
MSエンジニアリングさんも、君から電話があれば、サンプルを分けて下さるとのことですから頑張って下さい。
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<参考>超電導工学研究所の町さんからS君からの問い合わせに対するメッセージ
Date: Thu, 6 Nov 2008 12:39:38 +0900
Sさんへ(cc 佐藤勝昭先生)
超電導工学研究所の町と申します。
メールをありがとうございました。Sさんのメールおよび佐藤先生のお返事も読ませて頂きました。返事が遅くなって申し訳ありません。

「超伝導と環境問題」というテーマでの実験を計画されているということで,非常に興味深くメールを拝見いたしました。磁性活性炭と 超伝導マグネットを用いたいということは,おそらく
大阪大学の西嶋茂宏先生高温超伝導磁気分離システムのことを念頭に置かれていることと思います。

高温超伝導体を用いた磁気分離による環境浄化には,もう一つの方式があり,これは九州電力と日立製作所が共同開発しているものです。
それは線材を用いた超伝導マグネットではなく,着磁した超伝導バルクを用いるものです。

ここで少し超伝導体の性質について説明します。

超伝導体は直流電流に対しては電気抵抗がゼロであるという性質を持ち,これを線材に加工し,コイルを作製することで非常に強力な 磁場を発生させることができます。ただし流せる電流は無限ではなく,ある臨界値に達すると超伝導ではなくなり電気抵抗が発生します。 この電流値のことを,臨界電流と呼びます。電流が流れるということは,そこに磁場が発生します。自分自身に流れた電流によって発生 した磁場は,超伝導体内部に侵入しようとしますが,低い磁場ではマイスナー効果という性質のために,磁場が内部に侵入すること ができません。磁場が高くなってきても,磁場そのものは侵入できませんが,量子磁束という形で超伝導体内部に存在できるように なります。この入り込んだ量子磁束が超伝導体内部で動いてしまうと電圧が発生してしまいますので,完全な超伝導状態とは呼べなく なってしまいます。臨界電流値の高い線材というものは,量子磁束が内部で動かないように,特定の場所に「ピン止め」できる傾向が 強いと言えます。量子磁束をピン止めできる性質を積極的に利用したのが,超伝導バルクマグネットです。超伝導転移温度よりも 高い温度で磁場を印加し,その状態で超伝導体を転移温度以下に冷却すると量子化された磁束がピン止め点に捕捉され,外部から 観察すると,非常に強い永久磁石が存在するように見えます。

以上述べた性質は,第2種超伝導体と呼ばれるものの性質です。

つまり高い磁場を発生する方法は,
・超伝導線材を使ったコイル
・高温超伝導バルクを使ったマグネット
の2つの方法があることが分かります。そして,それぞれの場合に超伝導磁気分離システムがあることになります。

さて,結論から言いますと,佐藤先生がおっしゃるように,どちらのマグネットも簡単に作製することはできません。現在市販されている 超伝導線材は,NbTiなどの金属系のものとBi2Sr2Ca2Cu3Oy などの高温超伝導線材です。

金属系の超伝導線材は液体ヘリウムやGM冷凍機などで冷却しなければ超伝導にはなりませんので,もしも学校にそのような設備があれば別 ですが,現在無いとなれば,入手するだけでも大変なことになると思います。またNbTiなどは,かなり固い材料ですので,コイル化 するには,専用の巻線機が必要です。

高温超伝導線材は,国内で手に入るのは,住友電工のBi2Sr2Ca2Cu3Oy(Bi2223)線材ですが,こちらは金属系よりも高価です。超伝導転移温度 が高いので,冷却は液体窒素でも可能ですが,この線材は液体窒素温度でのピン止め力が弱いので,通常の永久磁石よりも強い磁場を発生 することはできません。こちらも液体ヘリウムや冷凍機で冷却すればかなり高い磁場を発生できます。

もしもマグネットが作製でき,低温クライオスタット(低温を保つための容器)が確保できたとしたら,これも佐藤先生のメールにあった 大電流を流せる電源が必要です。100Aクラスの電源が必要でしょう。

次に,高温超伝導バルクを使ったマグネットですが,こちらも冷却は液体窒素で可能です。線材を用いたコイルのように,クライオスタット がなければならないということはなく,簡単には発砲スチロールなどで容器を作ることもできますし,大電流の電源も不要です。こちらの 問題は,高温超伝導バルクが非常に高価であること,および着磁をするために超伝導マグネットを所有する機関に依頼するなどして, 着磁状態で冷却したまま運搬しなければならないという困難があることです。

以上のような理由で,実物の超伝導マグネットを用いた磁気分離システムを構築するのは,かなり困難であると思います。

磁気分離については,概念を説明するための実験ならば可能です。例えば,有害物質に付着した微小な磁性体を模して,粗いものならば 砂鉄や細かいものならばコピー用のトナーを用いる方法です。これらを液体に混ぜて,非磁性で透明な管に流します。途中に強力な永久磁石 を置いて,磁性体の軌道を変えて,別の管にでも導けば,綺麗になった液体が得られるというものです。磁性体の粒径は揃えておいた 方がうまくいくようですし,液体は粘性があるものを用いるとゆっくりとした動きになりますので,磁気分離の原理を視覚化する のに適していると思います。磁石には,Nd-Fe-B系の強力なものを用いるのがいいでしょう。管は円柱ではなく,平管にすれば, 効率的に磁場が加えられると思います。

そこで,永久磁石をより強力な超伝導マグネットの替えれば,現実の磁気分離システムになる,というような説明をするのがよろしいかと思います。

超伝導現象については,別に実験するという手もあります。短期間であれば,当所から超伝導バルクを貸し出すことはできますので, 永久磁石の磁場をどのようにピン止めできるかを実験し,二つの実験を組み合わせて,磁気分離システムを説明してみてはどうでしょうか。

このメールがお役に立てばよいなと期待しております。
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<参考> 上記回答に対するS君のレスポンス
 K高校のSです。
返信が遅くなり真に申し訳ございません。
町さんからのメールを受け、班員と相談した結果 学校には専門的な設備も無いことから超伝導バルクなどを使った実験はしないことにしました。
ただ町さんからのアドバイスであやふやだった知識もまとまり、どのような実験をやればいいのかがわかりました。
町さんのおっしゃったとおりに超伝導の持つ性質と磁気分離技術の概念の説明という形で発表をし、超伝導磁気分離技術の説明をしたいと思います。
町さんのアドバイス及び、ご協力には本当に感謝しています。
本当にありがとうございます。
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1124. ファラデー楕円率は磁化に比例するか

Date: Fri, 7 Nov 2008 19:16:02 +0900
Q: 佐藤 勝昭先生
K*大学の修士課程2年H*と申します。(HPに載せる際には、匿名希望でお願いいたします)
「物性なんでもQ&A」を拝見し、磁気光学効果の基本的なことで大変恐縮なのですが、二点ほどお聞きしたく連絡差し上げた次第です。

まず、ファラデー楕円率は磁化に一次で比例するかについてお伺いいたします。
磁化が小さい場合、複素ファラデー回転角が磁化に比例するということは、ファラデー楕円率も磁化に比例するということでよろしいのでしょうか。
逆にいうと、どのような場合に磁化に一次で比例しなくなるのでしょうか。
論文や文献を調べたところ、ファラデー回転角が磁化に比例するということは多く目にするのですが、ファラデー楕円率が磁化に比例すると記載されたものは見つけることができませんでした。

もう一点、ヴェルデ定数についてお伺いいたします。
強磁性体の場合もファラデー回転角の磁化に比例する係数のことをヴェルデ定数というのでしょうか。
同じくファラデー楕円率の場合、もし磁化に比例するのであれば、その比例係数のことをヴェルデ定数というのでしょうか?

お忙しい中、ご迷惑をおかけします。
何か良い文献や論文をご存知でしたら教えてください。
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Date: Sat, 8 Nov 2008 00:20:55 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 ファラデー回転角θとファラデー楕円率ηは、同じ原因から出ています。
  Φ=θ+iη=iεxy/(εxx)1/2
従って、θとηは同じ磁化依存性を持つはずです。
 しかし、Φがシンプルに磁化Mに比例するかどうかは簡単ではありません。
・現象論的には、εxyはMの奇数次で展開でき、εxxはMの偶数次で展開できます。
つまり、詳しく見ればεxy=e1M+e3M3+・・、εxx=e0+e2M2+・・・
と展開できます。通常εxyはMの1次のみ、εxxはMの0次のみをとりますから
ΦはMに比例するのですが、あくまで近似の範囲内だと言うことを知っておいてください。
・電子論的には、εxyはかならずしも磁化に比例するのではなく、 磁化とスピン軌道相互作用Δsoの相乗作用で生じます。強磁性体では単磁区の磁化Msは物質定数です。
Misemerによれば、鉄の場合に仮想的にMsとΔsoを変化させてεxyを計算したところ、Msには単純な比例関係はないが、Δsoには 比例するという結果が得られています。(光と磁気p148参照)
・強磁性体のΦが磁界Hにどのように依存するかは磁区のことを考えなければなりません。光ビームの直径が大きくて多磁区をカ バーするような場合には、平均的な性質が現れます。縞状磁区における磁気光学効果の大きさは、必ずしもマクロな磁化Mの平均 値に比例せず測定法に依存することが沼田らによって示されています。(光と磁気p12脚注)
・反磁性体や常磁性体において磁界が小さい範囲には、ファラデー回転角θは印加磁界Hに比例します。単位長さの媒質における 比例係数がベルデ定数です。ファラデー楕円率も当然磁界Hに比例しますが、その係数はベルデ定数と同じではありません。
・強磁性体においては、本来飽和磁化Msは定数です。磁化Mは印加磁界HにHが小さい場合比例しますが、その立ち上がりは反磁界によって決まります。強磁性体のファラデー効果もHの小さいときHに比例する部分があるのでその比例係数をヴェルデ定数と称している記述が特に工学系の論文に見受けられますが、本来はヴェルデ定数と呼ぶべきではありません。
・なお、あなたは、磁化と磁界を混同しているのではないかと見受けられますので、しっかりと区別してください。
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Date: Sat, 8 Nov 2008 12:12:07 +0900
Q2: 佐藤勝昭 先生
お忙しい中返信いただきありがとうございました。
貴重なご意見参考にさせていただきます。
ヴェルデ定数とはあくまで印加磁界に比例する係数のことをさすということでよろしいのでしょうか。
では強磁性体の場合、磁化に比例する係数に名前はあるのでしょうか。
そもそも磁化に比例する係数に名前はないのでしょうか。

また楕円率の場合は、ヴェルデ定数のように印加磁界に比例する係数に名前はあるのでしょうか。
および強磁性体の場合、回転角でもしあるならば、磁化に比例する係数に名前はついているのでしょうか。
ご存じでしたら教えていただけますでしょうか。
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Date: Sat, 8 Nov 2008 13:58:07 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 強磁性体の磁気光学効果の磁界に比例する係数に名称はありません。
しかし、応用関係の論文では、磁界比例部分について便宜上ヴェルデ定数ということばを使っています。
電中研報告「高感度光応用磁界センサ用材料Ce:YIG の開発」
マッチングファンド方式による産学連携研究開発事業究成果報告書「微粒子分散型磁気光学プラスチック光ファイバの開発」
福岡県工業技術センター「レーザによる導体の高速イメージセンシングに関する研究」
TDK Now 「磁性ガーネットLPE膜を利用した光アイソレータ」
 楕円率については名称はありません。楕円率の磁界依存係数とでも言いましょうか?
あなたが、名称にこだわる理由がわからないのですが、・・・。
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Date: Sun, 9 Nov 2008 14:32:00 +0900
AA: 佐藤勝昭 先生
先生を困惑させてしまったみたいで申し訳ありません。
説明の便宜上もし名称があれば知りたいと思った次第ですので、お気になさらないで下さい。
お忙しい中、お時間を割いていただきありがとうございました。
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1125. 混合攪拌時にホイップクリーム状になる理由

Date: Thu, 13 Nov 2008 22:17:07 +0900
Q: 工学博士 佐藤勝昭 先生
突然メールをお出しいたしますが、貴HPを見ての問い合わせです。
宜しくお願いいたします。
ポリウレタン原料の変性ポリオール(二重結合を取り込んだポリオール)に無機顔料(特に酸化チタンが顕著)を均一分散させる場合、ハイシェアーな混合機を使用し、長時間混合攪拌を続けると、全体が(液状からかけ離れて)ホイップクリーム状になってしまう理由を教えて下さい。
安定的に均一分散させた(外観が)液状品を作りたいのです。
        平井龍昭(弱小企業に勤めている老技術者(64歳))
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Date: Thu, 13 Nov 2008 23:03:37 +0900
A: 平井様、佐藤勝昭です。
 私は、化学製品の専門家ではありませんので、一般論でお話しします。
ホイップクリームがなぜ泡立つのでしょうか?泡は、空気の粒です。
混合攪拌の際に、空気を巻き込んでいるのです。例えば、
「生クリームができるまで」 のサイトをご覧下さい。
何らかの形で原料(おそらく無機顔料)に気泡が抱き込まれていたのではないでしょうか。
乳製品など食品工業では脱気装置(ディアレータ)が用いられるようです。
正確なことはその道の専門家にお聞き下さい。
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Date: Thu, 13 Nov 2008 23:28:15 +0900
Q2: 佐藤 先生
早速、ご返信を頂きまして有難うございます。あまりにも速いので驚いております。
ご説明頂いた意味合いは充分理解いたしました。
実は本当の性状を上手く表現出来なかったので「ホイップクリーム」状と書き込みましたが、泡が巻き込まれているか否かは良く観察してみます。
原料系で、水が大量に入っていることを書き忘れましたが、水のある場合、メカニズムが異なって来るのでしょうか?
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Date: Fri, 14 Nov 2008 00:13:23 +0900
A2: 平井様、佐藤勝昭です。
 水ですか?変性ポリオールの攪拌に伴って反応が進み温度が上がっていないでしょうか。温度上昇で水蒸気が発生する可能性がありませんか?
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Date: Fri, 14 Nov 2008 06:37:38 +0900
Q3: 佐藤 先生
色々とアドバイスを頂き有難うございます。
変性ポリオールは反応する相手がありませんので反応熱は出ないはずですが、ハイシェアー攪拌機なので摩擦熱で昇温していることは確かです。
また、ばらばらと情報が追加され申し訳ありませんが、水はポリオールの30wt%位入っております。その他シリコン系の消泡剤(主にイソシアネートと反応する時に発生する炭酸ガスによる気泡を取り除くため)が含まれています。
攪拌時間は1時間くらいで、直後の充填時には、このホイップ状現象は起こっておりませんが、半月も保管して取り出した時に気が付く様な現象です。
最終的には、イソシアネートと混合し、骨材(大半は硅砂/樹脂の5~10倍)を加えて、鏝でコンクリート上に塗布します。
その時の粘度(鏝への抵抗感)が異なるので問題となる次第です。
なお、最終製品の仕上がり感には殆ど差が出ません。
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Date: Fri, 14 Nov 2008 10:23:09 +0900
A4: 平井様、佐藤勝昭です。
含まれていた微細な気泡が保管中に集まって泡の原因になる程度になったのでしょうね。
攪拌中に減圧するなどによって内部に含まれる気体をできるだけ減少させる以外に解決できないのではないでしょうか。
 この方面の知識に疎くて十分なお答えができず申しわけありません。
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1125C. 質問#1125へのコメント

Date: Mon, 17 Nov 2008 11:27:49 -0600
C: 佐藤先生、
アメリカ化学会社のSです。
1125の「ホイップクリーム状」の件ですが、私も専門家とは言いがたいのですが、似たような経験があります。
「混ぜた直後はそうでもないのに、放置しておくと現象が出る」というのは、水素結合による擬似架橋が原因の場合があります。
混合によるせん断の記憶がある間は液状を保ちますが、徐々に水素結合が進み、いわゆるチクソトロピーな性質が出てくるものです。
これを防ぐためには、無機物質の表面の水酸基を化学修飾によりカバーする必要があります。それが無理なら、混合してすぐに使うのがベストです。
また、無機顔料のマスターバッチ(濃度の高いペースト)を作っておき、それを使用直前にポリオールと混合するとましになる場合もあります。
この現象に詳しい人に現物を見てもらうしか、根本的な解決法はないと思います。
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1126. プラスチックの赤外吸収

Date: Thu, 20 Nov 2008 13:47:28 +0900
Q: はじめまして、O社 開発技術課 井上と言います。(匿社名でお願いします。)
佐藤先生のHPを拝見させていただき、先生の知識をお借りしたく、メールさせていただきました。

現在、「9.3μm~9.4μmの遠赤外線を透過し、それ以外の赤外線を吸収するプラスチック」を探しています。
これを人の検知に利用したいと考えている為、人が発する遠赤外線(9.3μm~9.4μm)だけを透過できればプラスチックなら理想ですが、5μm~15μm程度(焦電センサなどで利用される人体検知用光学フィルタと同等)の透過でも問題はありません。
プラスチックに限定している理由は焦電センサに利用する安価なプラスチック製フレネルレンズに光学フィルタの機能を付加できないかと考えているためです。
当社は焦電センサ及びプラスチックに精通した者がおらず、情報をネットで調べたり、工業試験所に問い合わせたりした結果、遠赤外線を透過させるには、ポリエチレンがもっとも適しているのではないかと考えております。ただし、ポリエチレンの赤外分析チャートからは遠赤外領域における波長依存性がほとんどみられないので、そのままでは目的のフィルタとしては利用できません。(赤外分析チャートは周波数に対する透過率ですが、500cm-1~25cm-1を20μm~4mmの波長に読み替えて判断しました。)
実際、安価なプラスチック製フレネルレンズにはポリエチレンが使われていますが、赤外線の波長依存性は確認できませんでした。

そこで質問ですが、
1.ポリエチレンに赤外線の波長依存性は無いという私の認識は正しいでしょうか?

2.1.が正しい場合、ポリエチレンに他の材料を混ぜる、または、安価な別の材料と組み合わせる事(ポリエチレンに別材料のフィルムを貼るなど)で特定の波長(9.3μm~9.4μmまたは5μm~15μm)だけを透過できる方法はありますか?あるなら、その組み合わせはどのようなものでしょうか?また、特定の波長だけを透過できるようになる形状(厚みや光を屈折させるレンズ形状など)はありますか?

3.ポリエチレンに限らず、特定の波長だけを透過できるプラスチックはありますか?あるなら、それは何でしょうか?

4.プラスチックに限定せず、特定の波長だけを透過する光学フィルタに使える安価でフレネルレンズに加工し易い材料はありますか?

以上、お忙しい中、申し訳ありませんが、ご教授いただけますよう、お願いいたします。
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Date: Fri, 21 Nov 2008 01:29:51 +0900 (JST)
A: 井上様、佐藤勝昭です。
 プラスチックの光学特性は専門外ですが、すこし調べてみました。

質問1.ポリエチレンに赤外線の波長依存性は無いという私の認識は正しいでしょうか?
答え:ポリエチレン一部の波長(720cm-1(13.9μm), 1470cm-1(6.8μm), 2900cm-1(3.45μm))を除いては吸収がありませんからあなたの認識でよいと思います。
ポリエチレンの赤外透過スペクトル(クリックすると拡大します。)

質問2.ポリエチレンに他の材料を混ぜる、または、安価な別の材料と組み合わせる事(ポリエチレンに別材料のフィルムを貼るなど)で特定の波長(9.3μm~9.4μmまたは5μm~15μm)だけを透過できる方法はありますか?
答え:上記波長領域は分子振動による吸収の領域なので、いろいろな振動スペクトルをもつプラスチックを探し出して混ぜるしかありませんが、適当な分子振動の吸収スペクトルがあるか、また均一に混じるかを調べなければならないでしょう。

質問3.ポリエチレンに限らず、特定の波長だけを透過できるプラスチックはありますか?あるなら、それは何でしょうか?
答え:ポリイミドは図のように多数の吸収線があり、1000cm-1(1μm)付近に透過帯があります。透過率が低いですが、目的によっては使えるかも知れません。
ポリイミドの赤外透過スペクトル(クリックすると拡大します。)

質問4.プラスチックに限定せず、特定の波長だけを透過する光学フィルタに使える安価でフレネルレンズに加工し易い材料
答え:フレネルレンズに加工できるような材料はないと思います。多層膜で干渉フィルタを作ることができれば、特定の波長帯を透過するバンドパスフィルタができると思います。
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Date: Fri, 21 Nov 2008 11:27:05 +0900
AA: お世話になっております、井上です。
お忙しい中、早々にご返答いただきありがとうございました。
添付いただいた図は社内セキュリティに引っかかってしまったのか確認できませんでしたが、各質問について回答いただいた内容から、プラスチック製フレネルレンズに光学フィルタの機能を持たせる事は難しそうだと認識しました。
また、ポリエチレンの赤外分析チャートにおける吸収域をカイザーと波長で併記いただいた事で、どの波長が吸収されるのか明確に理解する事ができました。
カイザーから波長を求める計算式は工業試験所より教わっていましたが、理解しきれず、3箇所の吸収域はおよそ遠赤外線波長に引っかかっていないだろう程度の認識しか持っていなかった事は恥ずかしい限りです。
今回、ご教授いただいた知識を参考に自身の知識を深め、焦電センサと人体検知の可能性を拡げられる製品開発に役立てていきたいと思います。
この度はお忙しい中、対応いただきありがとうございました。
佐藤先生の知識を拝借できました事に感謝しております。
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1127. 防音継ぎ手

Date: Thu, 20 Nov 2008 16:47:46 +0900
Q: はじめまして
佐藤先生
K*社のマーケティング事業部に勤務していますH*といいます。(匿名でお願いします)

耐火モルタル被覆(セメント地)した継手とねずみ鋳鉄の継手の伝搬音の違いについてお尋ねします。
コンクリートスラブに上記の異種素材で構成した継手をモルタルで埋め戻して、継手内に排水した場合、駆体に与える伝搬音の影響を調べています。
単純に硬質塩化ビニルとネズミ鋳鉄に振動を与えて、透過損失を両者比較した場合、どのような音圧レベルと振動加速度が考えられますでしょうか?
専門違いかどうかも分かりませんが、お応えできる範囲内で何かご存じでしたら何卒宜しくお願いします。
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Date: Fri, 21 Nov 2008 15:03:51 +0900 (JST)
A: H様、佐藤勝昭です。
 申しわけありません。建築音響は、私の専門ではありません。
ネズミ鋳鉄は、黒鉛(グラファイト)が鉄組織の間に偏析して析出し鉄を伝わる音響振動を熱に変えるために振動が伝わりにくいと言われていますが、耐火モルタル被覆継手では、防火性はあっても遮音性は期待できないでしょう。
私は、この方面の専門家ではないので、ご質問のような定量的なことをお答えすることはできません。
なお、遮音性及び耐火性を備えた排水管構造として繊維混入モルタルの外管で覆ったものが市販されています。
浅野耐火パイプのエーアンドエーマテリアルさんにお問い合わせになられてはいかがでしょうか。お役に立てず申しわけありません。
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Date: Fri, 21 Nov 2008 15:57:24 +0900
AA: 佐藤先生、Hです。
お忙しい中にも拘わらず、ご返信、ご回答いただきありがとうございました。
先生のHPを色々拝見して勉強させていただきます。
もうすぐ冬到来です。先生のご活躍を遠方よりお祈りしております。
失礼します。
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1128. プラスチックの透湿性

Date: Fri, 21 Nov 2008 00:21:33 +0900 (JST)
Q: はじめまして。S*社のY*と申します。
社名・氏名共に匿名でお願い致します。
現在、製品に塗布する防湿材の選定を行っており、この防湿材に含まれる樹脂成分についてご教授頂きたくメールさせていただきました。
比較している3種の防湿材には、各々「ポリオレフィン系樹脂」、「ゴム系樹脂(ポリブタジエン)」、「アクリル系樹脂」を使用しています。
質問:上記の樹脂成分を防湿性、接着強度、導電性などの観点より比較したいのですが、これらに関する特性値はお持ちではありませんでしょうか。
(吸水率や透湿度、引張強さ伸び率、絶縁抵抗値、誘電率…etc)
製品に塗布しての熱衝撃試験や高温高湿試験などを行っているのですが、すべて合格すると思われ、なかなか比較することができず。
機械系育ちということもあり化学的なことには疎く四苦八苦しております。
ネットで調べたりもしましたが、「吸水性がよく…」などのあいまいな表現でしかなく数値としての比較ができません。
お忙しいとは存じますが、ご回答をよろしくお願いいたします。
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Date: Fri, 21 Nov 2008 15:47:43 +0900 (JST)
A: Y様、佐藤勝昭です。
 同じ質問をヤフーの知恵袋にもされてますね。私は、化学の専門家ではないのですが、お困りのようなのでさがしてみました。

プラスチックの水蒸気透過性については、
三菱化学グループのホームページに安田武夫さんが書かれた「プラスチック材料の各動特性の誠験法と評価結果」に表の形で出ています。
(pdfファイル添付)この論文には、他の特性値もあります。
ポリメチルメタクリレート(アクリル)41(g/m^3・24h)
ポリブタジエン58(g/m^3・24h)
ポリオレフィンについては出ていませんが、三井化学ファブロのクレアフォースという製品のカタログでは、180(g/m^3・24h)という数値が出ています。
導電性についてはいずれも高抵抗で電気は流れないと思います。接着性についてはしかるべきサイトをごらんください。その他の物性値も、製品を作っている化学会社にお問い合わせになれば技術情報を持っていると思います。
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1129. 磁界中での化学反応

Date: Wed, 26 Nov 2008 18:21:37 +0900 Q: 突然のメールで恐縮です。わたくしは秋田県仙北市のE*社のF*ともうします。
環境対策の一環としてYUZOX(燃料の磁気分解による)というものをあつかってます。
まえおきはさておき、磁界内において磁力に反応する物質はあるのでしょうか。
例としてセラミックに炭をいれて加熱すると遠赤外線がでる、磁性共鳴ではマイクロ波が波長転換して遠赤外線を放出など。
また、ラジカル反応が液体内でおこるとすれば、燃焼、たとえば石油ストーブにも効果はあるのでしょうか?
 液体の磁気分解をおこなうと、分子の結合が弱くなり一部(炭化水素でいえば炭素と水素結合)の結合が細かくなる、ということなんですが、
K准教授によればこまかくなってもすぐ分子が結合する、とのことでした。
しかし、分子を光学顕微鏡で観察できればいいのですが、さしつかえなければ教えていただきたいのですが。
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Date: Wed, 26 Nov 2008 19:59:17 +0900 (JST)
A: F様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。私は、YUZOXについては、不勉強で全く存じ上げませ んので、一般論でお答えします。
「磁界内において磁力に反応する物質」という意味がわかりません。
(1)ご質問の「反応」が物理的な反応を意味するのでしょうか。
一般に伝導電子をもつ物質には、反磁性といって、加えた磁界を打ち消そうとして逆向きの磁化を生じる反応がありますし、遷移金属を含む物質は、常磁性といって磁界を受 けて磁気モーメントが誘起される反応があります。しかし、反磁性も常磁性も弱い磁性です。
一方、強磁性といって外部磁界を加えなくても自発磁化を持つ物質においては、外部磁界により磁気ヒステリシスを示すような反応があります。

(2)ご質問の「反応」とは化学反応のことでしょうか?
磁界の物質に及ぼすエネルギーは強磁性体ではかなり強いのですが、有機物などの反磁性体または常磁性の物質では、磁気の及ぼすエネルギーは小さいのです。
スピンS=1/2の原子に及ぼす磁気のエネルギーはゼーマンエネルギーといいますが、その大きさは(g=2として)1テスラ(10000ガウス)の静磁界をかけても0.1meVの程度しかありません。
ボルツマン定数kとT=300Kの積で表される室温の熱エネルギーは25meV程度なので、強磁性体でない物質が1テスラの磁界を受けても、化学反応を起こすほどのエネルギーをもらうことがあり ません。
磁界として高周波の磁界を印加した場合は静磁界とは異なる現象がおきます。
プラズマの中の電荷をもつ粒子や荷電化学種は電磁界中でサイクロトロン共鳴をするので運動エネルギーをもらいます。
このエネルギーは加える高周波電力に依存しますが、十分に化学反応を起こすことができます。
たとえば、マイクロ波によるECRプラズマは半導体のプロセスにも用いられていますし、高周波マグネトロンスパッタ装置も荷電粒子の高周波磁界による運動を利用してアルゴンイオンをターゲットにぶつけ基板上にターゲット物質を堆積させていますが、これも半導体工業で普通に用いられています。
このほか常磁性体にマイクロ波を当てると電子スピン共鳴(ESR)がおきますし、強磁性体では、強磁性共鳴がおきます。高周波磁界による共鳴現象が起きると、最後は緩和して格子振動となり、熱になります。このとき遠赤外線を発しますが、これは「波長転換」ではありません。

私は、化学の人間ではないので、ラジカル反応のことは詳しくありません。炎が磁界の影響を受けるという話は知られており、
「ブンゼン火災の燃焼・排出特性に及ぼす一様磁場の影響」という論文があります。この論文で加えている磁界は5テスラという大きなものです。
高周波磁界をかけた場合は、何らかの変化はあると思いますが、データの持ち合わせがありません。

「液体の磁気分解をおこなうと、分子の結合が弱くなり一部(炭化水素でいえば炭素と水素結合)の結合が細かくなる」という話は、私には理解できません。
さきほども述べましたように静磁界の非磁性原子に及ぼすエネルギーは非常に小さいので、超強磁界(10テスラ以上)を印加しないかぎり、液体を分解することは不可能だと思うからです。
もちろん、高周波磁界では、何らかの分解を起こす可能性があります。

数ナノメートルのサイズの分子レベルの分解を光学顕微鏡で観察することはできません。なぜなら、回折限界のため、可視光線を使う限り、液浸レンズを使っても分解能は、100ナノメートルを見るのが精一杯でだからです。
あまりお答えになっていなくて申し訳ありません。
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Date: Wed, 26 Nov 2008 23:02:55 +0900
Q2: 返信ありがとうございました。秋田のFともうします。
磁力に反応とは、例えば酸化チタンに光、電磁波が当たると電子スピンが励起し、有機物などを分解するなど。ある准教授から電磁波のことも教えていただきました。
磁界(YUZOXの双極閉回路構造より中心部で0.7Tから1Tの磁束密度)内で物理的に反応が起こるとすればどういった反応が考えられますでしょうか。
 また、燃焼効率の妨げとなる原因は吸気と排気と摩擦以外にどんなことが考えられますでしょうか?
今回メールさせていただきましたのは、今地球環境について考えております。一つは燃料です。
メーカーは否定しておりますが、YUZOXというものを車につけることにより排気ガスの削減が可能となります。(一部の車種)
私は7年ぐらい前に磁石を燃料ホースに向かい合わせにつけたところ、燃費がよくなったのを覚えています。6月か7月にたまたまYUZOXのことを知り東京まで押しかけて、販売を許可していただきその営業をしております。
しかし、大学の教授からは07T、0.8Tなんてそんなことない、と否定されておりますが、鳥取大学、静岡大学では磁気分解を取り上げております。
燃料の磁気分解による、また塞流感応電位による燃焼効率の向上により加速、排気ガスの削減、ついでに燃費もあがっております。
燃料の削減と有害物質の削減により環境対策として考えております。
 もう一つは、温暖化が進むと海流にどんな影響がでるのか、ということです。温度はさわがれていますが、海流のことはだれも発表しません。
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Date: Wed, 26 Nov 2008 23:52:19 +0900 A2: F様、佐藤勝昭です。  酸化チタンに光が当たるだけで有機物を分解することは,東京大学名誉教授で神奈川サイエンスパーク理事長の藤嶋先生が以前に発見された現象(光触媒効果)です。
電磁波を当てる必要はありません。なぜ分解が起きるかの物理的メカニズムについてはまだ完全には解明されていないので、メカニズム解明のためにESR(電子スピン共鳴)の研究が行われています。電子スピン共鳴が起きるということは不対スピンがあるということなので、有機物分解のメカニズムにラジカルが関与しているだろうということが推測されているのです。
 私は、YUZOXについて全く存じませんので、YUZOX内で物理的に何が起きているかのコメントは差し控えたいと存じます。
前に書きましたように、通常の磁性学の範囲では、0.7T-1Tの静磁界がおよぼす効果は余り大きくないということは確かで、もし、何らかの効果が見られことが事実であれば、何か別のメカニズムを考えなければならないということでしょう。鳥取大学・静岡大学で追試が行われているのであれば、そちらにお尋ね下さい。
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Date: Thu, 27 Nov 2008 00:34:41 +0900
AA: 返信どうもありがとうございました。勉強させていただきます。お忙しい中ほんとうにありがとうございました。
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Date: Thu, 4 Dec 2008 23:44:04 +0900
A3: F様、佐藤勝昭です。
 なんでもQ&Aのやりとりをご覧になったH社の萬(よろず)様より次項#1129Cに示すようなコメントを頂きました。
私は、不勉強で磁界の作用を過小評価していました。
 萬様に紹介いただいた坂口喜生「スピン化学」(裳華房2005)を本日紀伊国屋書店で買ってきました。
この本によりますと、(詳しくは理解できていないのですが)三重項ラジカル対と一重項ラジカル対の変換が磁界効果をもつこと が書かれております。反応場を狭くすると、化学反応に対して磁界がかなりの効果を示すことが記述されています。
私の不勉強のため、不十分なご返答をしたことをおわびします。
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1129C. 「磁界中での反応」へのコメント

Date: Wed, 3 Dec 2008 11:14:37 +0900
C: 佐藤先生
物性なんでもQ&A、先生の博学をいつも感心しながら見させていただいております。
最近の「磁界中反応」について少しだけコメントを。ただしあまりにも古い話なので記憶ちがいの可能性もあります。

ずっと昔ですが、理研で坂口嬉生さんたちが燃焼に関して強磁場の影響を調べておられたと記憶しております。詳細は、裳華房から出てます化学サポートシリーズ、「スピン化学」という 著書に書かれてあるかもしれません。私は内容見ておりませんで、もしまちがっておりましたらお許しください。
酸素は基底状態で三重項ですが、この三重項や燃焼などで生成しましたラジカルが、強磁場存在下で再結合反応などに影響及ぼすのでは、ということで一時研究されていたと記憶しております。

昔から、磁場が化学反応などの中間状態で生じる励起状態に影響及ぼしてもいいのではとの報告がいくつかありますが、フォトクロミック分子の構造変化に伴う分子内ラジカル対の相互作用 への影響を調べた報告もその例の一つで、現、奈良先端大学の河合壮先生が昔発表されていたと思います。
萬 拝
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Date: Thu, 4 Dec 2008 23:10:09 +0900
AA:萬様、佐藤勝昭です。  貴重なサジェスチョン有り難うございました。不勉強で磁界の作用を過小評価していました。
ご紹介いただいた坂口喜生「スピン化学」(裳華房2005)を本日紀伊国屋書店で買ってきました。
この本によりますと、(詳しくは理解できていないのですが)三重項ラジカル対と一重項ラジカル対の変換が磁界効果をもつこと が書かれております。質問者にお伝えしたいと存じます。有り難うございました。
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1130. ファラデー効果の磁区像と磁壁

Date: Sun, 7 Dec 2008 01:45:24 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
はじめまして。私、O*大学4年H*と申します。
(ホームページへのアップ時は、学校名、氏名とも匿名でお願いいたします。)
先生のホームページ拝見させていただきました。
法政大学大学院大学院工学研究科
「 磁性工学特論第7回 ―光と磁気(1)―」の講義資料に関しての質問です。
私は現在、ガーネット薄膜の磁壁をファラデー効果を用いて偏光顕微鏡で観察しようと考えています。
ある論文にファラデー効果で見た磁壁の画像(講義資料のスライドの31のような画像です)があり、それを再現しようと思ったのです。

ですが、論文やテキストなど普通に書かれているのは磁区のストライプ幅が同じ画像ばかりでした。
そこでたまたま先生の講義資料の中に同じ画像を見つけ、質問させていただいた次第です。

講義資料のスライド31にあるNHK技研の玉城氏の磁区の画像に関してなのですが、黒い部分は磁壁と考えてよろしいのでしょうか?

私なりに調べていくうちにファラデー観察に直交偏光子法という方法があることと、Bi置換によってファラデー回転角が大きくなることを知ったのですが、「白い部分が ↑or↓スピンで黒い部分が磁壁」という確信に迫る論文を見つけることができませんでした。

もう1つ、まことに申し上げにくいことなんですが、
もし「直交偏光子法を用いて磁壁を見た」、「白い部分が↑or↓スピンで黒い部分が磁壁」と宣言している論文をご存じでしたら、教えていただけないでしょうか?
厚かましくて申し訳ありません。
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Date: Sun, 7 Dec 2008 02:10:30 +0900
A: H*君、佐藤勝昭です。
 私の講義資料を見ていただきありがとう。
ファラデー効果で磁区を見ますと、↑磁区が白なら、↓磁区は黒く見えます。
玉城さんの測定結果の黒い部分は磁壁ではありません。逆向きの磁区です。
磁壁は白から黒への移り変わりの部分にあるのです。磁壁の厚さは数十原子層程度なので、 光学顕微鏡では見えません。
磁気力顕微鏡では、磁区と磁区の境目に磁極が出るような磁壁の場合に磁壁が見えますが、 通常は直接見るのはむずかしいです。
ローレンツ電子顕微鏡では磁区と磁区の間に白または黒の部分が見えますが、 これは、電子ビームの曲がり方が違うために白い部分や黒い部分が見えるのであって 磁壁そのものではありません。
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Date: Sun, 7 Dec 2008 02:52:43 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生、ご返答ありがとうございます。Hです。
磁壁ではないんですか…
添付のpdfの最後のページを見ていただきたいのですが、この論文には磁壁が近づいたり離れたりしている時の画像だと書いてあります。
この黒いのは磁壁ではないということですよね?
できれば判断していただけないでしょうか?
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Date: Sun, 7 Dec 2008 09:56:35 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 論文読みました。確かにこの論文で見ているのは磁壁です。
前のお答えは、私の説明不足でした。
直交偏光子法の説明を見てください。
玉城さんのデータは、磁区の↑と↓を白黒のコントラストで表すために、偏光子と検光子を完全に直交させず、5度くらいズラしてあるのです。
ご指摘の論文の図は、偏光子と検光子を直交させた配置で測定したものと思われます。(論文に詳細が記述されていませんが)
↑磁区も、↓磁区もファラデー効果のため、光が通るようになるので、白くなりますが、磁壁においては磁化が回転して面直磁化成分が0になるところがあるため暗くなりますから、(黒い帯が磁壁というわけではないが)確かに磁壁の中心位置を表しているのです。(通常の方法では、このコントラストを見るのはむずかしいので何らかの工夫をしたのでしょうね。)
君を混乱させたようでごめんなさい。
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Date: Sun, 07 Dec 2008 15:33:03 +0900
Q3: 佐藤勝昭先生、解説ありがとうございます。O大学 Hです。
この論文の黒い部分が磁壁でよかったです。
偏光子と検光子を完全に直交させて磁壁を見ているということが確信できました。
この論文と同じような画像があって、「偏光子と検光子を完全に直交させて磁壁 を見ている」と書かれている論文をご存じでしたら教えていただけないでしょうか?
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Date: Sun, 7 Dec 2008 18:31:05 +0900
A3: H君、佐藤勝昭です。
 磁壁そのものを光学顕微鏡の明視野像で見るのは通常困難とされています。
なぜなら、180度ブロッホ磁壁の厚さtはt=π(A/K)(1/2)で与えられ、鉄の場合 A=8×10-12 J/m, K=5×104J/m3 を代入すると、t=12.6π×10-9 m、すなわち 磁壁の厚さは約40 nmに過ぎないのです。磁気バブル用の磁性ガーネットでは、 磁気異方性が2桁程度小さいので光学顕微鏡で観測できるサイズになります。
 磁気バブル用の磁性ガーネットにおけるネール磁壁の中のブロッホラインを 磁気光学的に観測する試みは、Thiavilleらによって行われました。
A. Thiaville et al.: Direct Bloch line optical observation;
J. Appl. Phys. 63 (1988) 3153-3158.
彼らは、暗視野散乱法で磁壁(黒い帯)を観察し、磁壁の中に含まれる コントラストの強い部分(矢印)をブロッホラインだとしています。
このイメージは、単純な磁気光学では説明できず、歪みが関与していることが 理論的に明らかにされています。
A. Thiaville et al.: On the influence of wall microdeformations on Bloch line visibility in bubble garnet;
J. Appl. Phys. 69 (1991) 6090-6095.
磁区および磁壁の理論と実験に関しては、
A.Hubert and R.Schaefer: "Magnetic Domains"; Springer 1998
に詳しく載っていますから、勉強してください。
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Date: Sun, 07 Dec 2008 19:32:19 +0900
AA: 佐藤勝昭先生、Hです。
論文データありがとうございます。
このデータを参考に勉強し、理解していきます。
本当にありがとうございました。
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Date: Sat, 13 Dec 2008 17:33:37 +0900
Q4: 佐藤勝昭先生、O大のHです。
匿名でお願いします。
前回私が質問させていただいたことに関して、論文の著者に質問できる機会がありました。
今回はいろいろ教えていただいたせめてものお礼としてその情報を、先生に還元したいと思いましたのでメールしました。
あの磁壁は暗視野散乱法で見たのではなく、クロスニコル法を用いて普通の顕微鏡で見たそうです。
偏光子と検光子をうまく直交させただけで見たようです。
ほんの少しで情報で申し訳ありません。

ここからが質問なんですが、

 磁壁中にBloch lineがあるということは、磁壁の巻き方が2種あると考えていいのでしょうか?  つまり、巻き方が1種ではBloch lineはできないのでしょうか?
それともう1つ質問があるのですが、
 暗視野散乱法は簡単じゃないと耳にしたのですが、難しいことなんでしょうか?
できればどういう点で難しいのか教えていただけないでしょうか?
お願いします。
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Date: Sat, 13 Dec 2008 19:13:38 +0900
A4: H君、佐藤勝昭です。
 貴重な情報をありがとう。単なるクロスニコル法だったのですね。
ガーネットは磁壁の幅が広いので、観測できたのだと思います。
さて、ブロッホラインですが、あなたの言うとおり、ネール磁壁においては磁化 の回転方向に右巻きと左巻きがあって、その境目ではブロッホラインになるのです。
 暗視野法は、ビームの中心付近をマスクして、周辺のみの光を使うのです。顕 微鏡によっては、そのためのコンデンサレンズ・スリットを付属品として備えています。それほど難 しいことではありませんが、視野が真っ暗になるので、焦点を合わしたりするの が難しいのです。
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Date: Sat, 13 Dec 2008 19:51:12 +0900
佐藤勝昭先生、O大のHです。
なるほど、わかりました。毎回ありがとうございます。
では、失礼します。
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1131. ダイヤモンドとグラファイトの熱伝導

Date: Wed, 10 Dec 2008 17:19:54 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
初めてお便りいたします。
私は、熱ダイオード効果(熱流方向を逆転させると物体の熱伝導率が変化する現象)を研究しているN*社のO*(会社名、個人名を匿名でお願い致します)と申します。
先生のこのサイトをいつも拝見しながら、そのご苦労に感服いたしています。いつまでも後進の私たちをご教授いただけることを心より期待致しております。
ところで、先生は以前、
「熱伝導率には、自由電子によるものと格子振動によるものとがあり、ダイヤモンドの高い熱伝導率は、格子振動を介したものでUmklapp過程が関与する一方、グラファイトの熱伝導率は極めて異方的で、層内はダイヤモンドの半分くらいの熱伝導率を示すが、層間はアルミナより小さい熱伝導しか示さず、格子振動による。」
と話されていましたが、ウムクラップ過程がどのように関与しているのでしょうか。
ダイアモンドやナノカーボンチューブなどの熱伝導率が高いのは、その結晶性と結晶構造にありフォノン振動によっていることは理解していますが、ダイアモンドの場合、結晶内のウムクラップ散乱が小さく、一方でグラファイトのような物質は、結晶層内での伝導電子やフォノンと結晶層間の間でウムクラップ散乱が大きくなると理解してよろしいでしょうか。
また、文献がございましたらお教え下さい。
ところで、基本的な質問ですが、グラファイトの結晶層間など結晶-結晶あるいは結晶-アモルファスとの界面での熱伝導は非常に大きい熱抵抗が生じることがありますが、これは量子力学あるいは物性物理学的にどのように理解すればよいのでしょうか。
ご多忙とは存じますが、何卒よろしくお願い致します。
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Date: Sun, 14 Dec 2008 12:39:35 +0900
A: O様、佐藤勝昭です。
 C. Kittel: Introduction to Solid State Physicsの第5章によれば、通常のフォノンの衝突過程を考えただけでは、関与するフォノンの波数が保存されてしまい、熱抵抗が生じないのです。
Umklapp(反転)過程を考えることによって、全波数の保存なしに衝突する過程が存在するというわけです。Umklapp過程があって初めて、例えば正の波数を持つ2つのフォノンが衝突して、負のフォノンが生じるような過程が起き熱抵抗が生じるのです。
 2つのフォノンの波数がK1K2が衝突してK3になったとし、K3が第1ブリユアン域の外に出てしまったとしましょう。Umklapp過程があれば、K3に適当な逆格子ベクトルGを加えることによって、K3+Gが第1ブリユアン域の中に来るようにすることができます。これによって熱抵抗が生じます。
しかし、これが起きるためには、衝突する2つのフォノンのエネルギーはデバイ温度をθとしてkθ/2より高くまたK1K2G/2より大きくなければなりません。もし2つのフォノンの波数がともにG/2より小さかったら(従って、エネルギーがkθ/2より小さければ)合成した波数は第1ブリユアン域の外に来ないのでUmklapp過程は起きず、熱抵抗も生じないのです。
 ダイヤモンドやグラファイトでは、デバイ温度が高く、Umklapp過程に関与するフォノンが少ないことが、熱抵抗が低いと解釈できます。デバイ温度はダイヤモンドが2200K、グラファイトが402Kとされています。 Kittelによれば、デバイ温度は、θ=(h'v/k)(6π^2N/V)^(1/3) で表されます。N/Vは原子密度です。(密度はダイヤモンドが3.515 g/cm^3、グラファイトが2.16 g/cm^3です。)これだけでは、グラファイトの異方性の熱伝導は説明できませんね。おそらく層に垂直方向に進むフォノンに関しては、Umklapp過程におけるGが見つけやすくフォノン散乱が起きやすいのでしょう。
 ここまで述べた熱抵抗の起源は完全結晶のもつ性質ですが、結晶の不完全性によってもフォノン散乱があります。ご質問の「結晶-アモルファスとの界面」は、結晶の乱れによるものでしょう。関与するフォノンの波長と乱れのサイズが同程度だと熱抵抗が生じやすいのでしょう。
 フォノンによる「熱伝導の量子的起源」については、Peierls: Quantum Theory of Solids; Oxford University Press: London, 1955.をお読み下さい。
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Date: Mon, 15 Dec 2008 00:22:32 +0900
AA: 佐藤勝昭先生、Oです。
先生、本当にありがとうございます。
今日は日曜日ですが、会社に来てしまいました。先生からのメールを拝見することができ、孤独な研究者としてうれしくてしかたがありません。
私は昔、液晶で有名なS社にお世話になっていたことがありますが、当時は大学で学んだ固体物理学など全く不要でしたが、30年近く経った今になってキッテル氏の名著を改めて紐解くことになろうとは思いもよりませんでした。
会社でたまたま“熱ダイオード現象”を見い出したために、T大熱制御工学のN氏などに相談しておりましたが、企業としての相談は限定的になってしまい本質的な検討は社内での実験の積み重ねと文献調査しかないのが現実です。非常に孤独で、自分の能力の限界を日々感じている次第です。
特に熱現象は、古典物理学の範疇で説明できないことがまだまだ多く、特に固体における“熱ダイオード現象”については古典物理学の世界では存在を否定するしかなく、ようやく量子力学的な考察をすることでそのきっかけが得られてきたところです。

先生の啓蒙されているこうした近代物理学の基礎を、一日も早く高校や中学で教えていかなければ日本は世界から取り残されてしまうような気がしてなりません。
そのためにも、このサイトがこうしたきっかけをつくり出すことを願って止みません。

貴重なご意見ありがとうございました。
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1132. 仮想屈折率法における負の消光係数

Date: Fri, 12 Dec 2008 11:24:17 +0900
Q: 佐藤先生
私、S*社のS*と申します。
 不勉強でお恥ずかしいのですが、質問は「複素屈折率の消衰係数が負値になることはあるのでしょうか」です。
 物性なんでもQ&Aの152番「多層膜の反射率」を拝見し、そこに記載されている式を用いて酸化鉄の薄膜厚さによる反射率の変化を調べたところ、仮想薄膜の消衰係数が頻繁に負値になりました。
 例えば、屈折率が3.6、消衰係数が5.9の基盤の上に同じく2.4、ゼロの薄膜100μmをつけたとき、仮想薄膜の屈折率が0.89、消衰係数がマイナス2.58となりました。数式からは消衰係数が負値になることもありそうですが、物理的には疑問に感じます。
 なお、計算式はエクセルで自作し、
Modest, M. F., Radiative Heat Transfer, p.67, 1993, McGraw-Hill.
のexample 2.6の結果と比較して同じ結果が得られることを確認したので、少なくとも一層の場合の計算は正しくできていると考えています。計算の途中で消衰係数が負値になった場合に絶対値をとるなどの特別な処理が必要ということはあるのでしょうか。

 お忙しいと存じますが、ご教示いただければ幸いです。
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Date: Sun, 14 Dec 2008 14:04:28 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 貴重なご指摘有り難うございます。
 仮想屈折率法はあくまで、膜と下地を総合した系における見かけの反射率を求めるための手段なので、 その過程で負の消光係数がでたとしても気にすることはありません。
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仮想屈折率法で、実効複素屈折率n_effは
  n_eff=n_1×{1-r exp(2iφ)}/{1+r exp(2iφ)}
で与えられます。ここに、r=(n_1-n_2)/(n_1+n_2)はフレネル係数, φ=4πn_1h_1/λ は薄膜中を往復するときの位相で、 n_1は薄膜の複素屈折率、n_2は下地の複素屈折率、h_1は薄膜の膜厚、λは波長です。
  n_eff=n_1×{1-r exp(2iφ)}{1+r* exp(-2iφ)}/{1+r exp(2iφ)}{1+r* exp(-2iφ)}
     =n_1×{1-R-iIm(r exp(2iφ))}/{1+R+Re(r exp(2iφ))}
r=√Rexp(iθ)とすると、(θはフレネル係数の位相の飛びです)
 Im(r exp(2iφ))=√RIm (expi(θ+2φ))=√R sin(θ+2φ)
 Re(r exp(2iφ))=√RRe (expi(θ+2φ))=√R cos(θ+2φ)
従って、
  n_eff=n_1×{1-R-i√R sin(θ+2φ)}/{1+R+√R cos(θ+2φ)}
となりますから、
 θ+2φの値によってn_effの虚数部は正の値も負の値もとることができます。このn_effを使って、薄膜と下地を合わせた見かけのフレネル係数r_effは
  r_eff=(1-n_eff)/(1+n_eff)で表されます。
n_effの虚数部の正負はr_effの位相変化量の正負に変化を与えますが、光強度の反射率を考えるには問題がありません。
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Date: Mon, 15 Dec 2008 09:03:31 +0900
AA: 佐藤先生
 S社のSです。
 丁寧なご説明ありがとうございました。
 今後とも仮想屈折率法の式を活用させていただきたいと思います。
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1133. シリコンの直接バンドギャップ

Date:Mon, 15 Dec 2008 03:03:50 +0900 (JST)
Q1: 以前、
メールで質問をしたM大学のMです(ネット公開では匿名でお願いします)。
シリコンのバンドギャップについて質問があります。
シリコンは間接遷移型半導体ですが、バンドギャップエネルギーより高い光子エネルギーに対しては直接遷移が見られるとあります。
直接遷移になるための光子エネルギーとは、Eg1の光子エネルギーを与える必要があるのか、Eg2の光子エネルギーを与える必要があるのか、どちらになりますか。
また、参考文献にのっているシリコンのバンドギャップエネルギー1.11 eVという値は、Eg1の値だと思うのですが、直接遷移になるために、Eg2の光子エネルギーが必要ならば、そのEg2の値も教えてください。
以上、よろしくお願いいたします。
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Date:Mon, 15 Dec 2008 09:38:44 +0900

図1

図8
A1: M君、佐藤勝昭です。  シリコンの直接遷移は、あなたの図のように単純ではなく、結晶工学スクールのテキストの図1(a)に示すバンド図において、k空間におけるΔ線やΛ線に沿っての平行なバンド間遷移が全部、直接遷移に寄与するのです。
 同じく添付のテキストの図8に説明がされています。そのピーク(3.46eV)は明瞭なのですが、いろいろの遷移が混じっているので、ギャップEg2の単純な見積もりはむずかしく、正確な値は不明瞭になっています。
 消光係数の変曲点は2eV付近になりますので(Palik: Optical Constants of Solids voll.1 p565)Eg2はほぼ2eVと考えてよいのではないでしょうか。
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Date:Mon, 15 Dec 2008 11:22:51 +0900 (JST)
Q2: 佐藤様
M大学のMです。
早速のお返事ありがとうございます。

基礎ができていないので、申し訳ないのですが、直接遷移でなくても、シリコン太陽電池において間接バンドギャップ1.11 eVと同じフォトンエネルギーを照射すると、バンド間励起によって、光電流として流れますか?
それとも、光を照射するだけでは光電流として流れることはできませんか?
一般的なシリコン太陽電池の感度波長は1μm以下みたいですが、これはバンドギャップ1.11 eV以上のフォトンエネルギーを与えているからですか?

以上、よろしくお願いいたします。
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Date:Mon, 15 Dec 2008 13:02:30 +0900 (JST)
A2: M君、佐藤勝昭です。
>
図1 光伝導

図2 太陽電池
 大学で光伝導を学ばなかったでしょうか。少し解説しておきます。
 半導体のバンドギャップを超えるエネルギーの光を照射すると、価電子帯から伝導帯への励起がおき、伝導帯には電子が、価電子帯にはホールが熱平衡より過剰に注入されます。(間接遷移でも過剰なキャリアができることには変わりがありません。)
 これだけでは、光電流は流れません。電界を加えなければ、光電流は観測されません。
 図1のように電界を加えて電子とホールを分離しますと、電子は正の方向に流れ、ホールは負の方向に流れるので、電子・ホールともに電気伝導に寄与します。電子がホールと再結合するか、電子またはホールが欠陥などにトラップされるまでは、電気伝導に寄与し続けます。これが光伝導(光導電、内部光電効果とも呼ばれる)です。 もちろん、図2に示すフォトダイオードや太陽電池のように、pn接合を作ると界面に空乏層ができ、電界を加えなくても拡散電位差が生じるので、光電流が観測されます。
 今、光で生成されたキャリア密度がΔn[cm^-3]、移動度がμ[cm^2/V・s]、キャリアが再結合またはトラップされるまでの時間をτ[s] (トラップの束縛エネルギーが低い と、熱的に再励起されるので、何度かトラップされてついに再結合するまでという場合もあります)とすると、光伝導による導電率σ_p=Δneμτ[S/cm]で与えられます。ここ にeは電子の電荷1.6×10^-19[C]です。
 このように、バンドギャップを超える光でなければ余分のキャリア密度Δnが発生しないので光伝導は起きません。しかし、実際に光伝導スペクトルを計測してみると、バ ンドギャップより少し低いエネルギーで光伝導が起き始めます。これは、バンドギャップの中に、不純物や欠陥による準位があって、そこにとらえられていた電子またはホー ルが光エネルギーを吸ってバンドに励起されキャリアとなるのです。逆に、これらの準位は、電子またはホールを放出してからになるので、今度は光励起キャリアのトラップ としても働くのです。
 なお、半導体光物性については、貴大学の電気電子工学科のM*先生が量子エレクトロニクスで詳しく教えておられるので、授業を聴講されることをおすすめします。
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1134. PEMを用いた磁気光学測定における楕円率の膜厚依存性

Date: Wed, 17 Dec 2008 21:40:10 +0900
Q: 佐藤 勝昭先生
以前ファラデー楕円率が磁化に比例するかについて質問させていただきましたK*大学のH*と申します。(HPに載せる際には、匿名希望でお願いいたします)
再度ファラデー楕円率についての質問で恐縮なのですが、どうしてもわからないことがありましたのでメールした次第です。
私は、石英基板上に真空蒸着させた様々な膜厚(膜厚は水晶振動子により測定)のNi薄膜のファラデー回転角や楕円率を円偏光変調法を用いて測定しました。
その際飽和ファラデー回転角(Ni薄膜の磁化が面直方向に飽和したときのI(2p)/I(0))は、10,20,30,50nmと膜厚に比例して大きくなるのですが、飽和ファラデー楕円率の方(I(p)/I(0))は比例しません。
10,20nmは比例するのですが、その後30,50nmと膜厚の増加に伴い楕円率も増えるのですが明らかに比例していません。
回転角やリタデーションの変調振幅が大きくなると近似が成り立たなくなり正確に測定できなくなるとは思うのですが(光と磁気p.98)、なぜ回転角が比例している膜厚で楕円率の方は比例しないでしょうか?
実際に装置やデータを見ていないので察しにくいとは思いますが、思い当たる節がありましたら教えていただけますでしょうか。
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Date: Thu, 18 Dec 2008 19:05:28 +0900 (JST)
A:H君、佐藤勝昭です。
 30nm, 50nmのNiの厚みになりますと、吸収がかなり強くなります。
2eV(620nm)における消光係数κの値は3.65です。
吸収係数に直すと、α=4πκ/λ=0.074[nm-1]ですから
 d=30nmでは、αd=0.074×30=2.22;exp(-αd)=0.109
 d=50nmでは、αd=3.7; exp(-αd)=0.025
となって、光信号が非常に小さくなります。するとPEM測定におけるf成分も2f成分も小さくなります。
楕円率を測定するf成分は、いろんなところから変調周波数成分の不要輻射を受けていますから正しい楕円率を測定できていない可能性があるのです。そのような余計な信号の位相は、正しい信号とは逆相の場合もあり、信号が小さいと何を測っているかわからないこともあります。
回転角を観測する2f成分はあまり不要輻射を受けにくいので、弱い信号でも比較的正確に観測できているのではないでしょうか?
光の透過率を考慮してあまり厚い膜で測定しない方がよいかと存じます。
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Date: Sat, 20 Dec 2008 16:23:08 +0900
Q2: 佐藤勝昭 先生
ご返信いただきありがとうございます。
光信号については、光源の強度を変えても測定に影響はなかったため問題はないかと思われたのですが・・・
ヒステリシスの形はどの膜厚でも回転角と楕円率で相違はありません。
正しい楕円率を測定できているかどうかというのは何で判断すればよいのでしょうか?
また現在私は、楕円率の絶対値から磁化の議論をおこないたいと思っているのですが、楕円率の絶対値から議論するのは難しいのでしょうか?
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Date: Sat, 20 Dec 2008 19:49:31 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 カー回転とカー楕円率が正確に測定できているかは、カー回転スペクトルをクラマース・クローニヒ変換して、相手のスペクト ルが得られるかがポイントになります。カー回転のピークにおいてカー楕円率の傾斜が最も急になり、逆にカー回転の傾斜が極大 の時にカー楕円率がピークになるかどうかをチェックしてください。クラマース・クローニヒ変換は、外挿に近似が入るので絶対 値は不正確ですが、カー回転ピークの高さと、カー楕円率のpeak-to-peak値がほぼ等しくなります。

 PEM変調周波数(p)成分は、PEM素子と発信器とコントローラをつなぐケーブルや、コントローラとロックインアンプをつなぐ参 照信号のケーブルなどから不要輻射として信号入力に入ってきます。アースの取り方が悪くても不要輻射を受けます。光を切って もロックインにp成分が観測されれば要注意です。

 なお、光強度の信号をフォトマルにフィードバックして一定にする回路は使っておられますか。これを使わないと、正確な値は 出ないことがあります。フォトマルの光電流にはDC成分の上にpHzと2pHzの高周波成分が重畳しているのですが、DC成分の大きさ によって高周波成分のゲインが異なるのです。このような現象はdifferential gainといって一般に起きます。もっとも、2p成分 は正確に測定できているのですから、あなたのケースでは、この問題はないと思います。

 「楕円率の絶対値から磁化の議論をおこないたい」とのことですが、回転角が正確に測定できているのであれば、わざわざ、問 題のある(原因は不明)楕円率を使うことにこだわる理由はないと思うのですが、・・。
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Date: Sun, 28 Dec 2008 00:07:03 +0900 (JST)
Q2: 佐藤 勝昭先生
返信が遅れて申し訳ありません。先日PEMを用いたファラデー楕円率の測定について質問させていただいたHと申します。いろいろ御助言いただきありがとうございました。
さっそくフィードバック回路を用いてDCをほぼ一定にすることで1.5eVから3eVと狭い範囲ではありますがスペクトルを測ってみたところ、ファラデー回転角の傾斜が極大の辺りで楕円率のピークが観測されました。もっともどの膜厚においてもスペクトルの形はかわりませんでしたので、50nmのときも測れているということになるのでしょうか・・・
光を切ってもロックインにp成分が観測されれば要注意というのは、いわゆる暗電流のことでしょうか。光を切っている場合、ロックインの表示は0です。
ただしロックインのことで一つ気になることがあります。2p成分はRが0で位相が反転するのですが、p成分はRが0ではないところで反転してしまいます。そのため例えばヒステリシスなどを測った場合、位相が反転するところでデータがとんでしまいます。これはどうしてなのでしょうか。
今まで楕円率でデータを取ってきているため、なるべく楕円率で議論したいと考えています。
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Date: Sun, 28 Dec 2008 00:43:13 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 光を切って、DC成分が観測されればそれは暗電流ですが、p成分がでるのは暗電流ではありません。p成分が出るとすれば、発振 器から何らかの回り込みで(光信号を通さず)ロックインアンプに信号が入っていることを意味するからです。
 君の質問の「R=0で2p成分が反転」の意味がわかりません。反射率Rが0になることがあるのですか?それじゃあ、DC成分を一定 に保つことなどできるはずないでしょう。
  H君は研究室で以前、CNTに内包した金属を研究していましたよね。測定しているのは、上記試料でしょうか? CNTは細いので、1本の光学測定は不可能ですね。従って、多数の複合体の磁気光学を測定していることになります。 しかも異方性がありますから、磁気光学スペクトルの解釈はとても面倒なものになります。
 CNTの反射スペクトルはLee et al.,JJAP 42 (2003) 5880-5886にあります。これによれば、CNTの金属相で はDrude型、半導体相では調和振動子型であるとされています。Drudeなので、ε'は負でしょうね。この中に磁性体を挿 入した場合トータルのε'はどこかで0を切る可能性があり、そのとき反射率Rは急減すると思いますが、Rが0になるとは考えられ ません。
 それともH君の今のテーマは磁性フォトニック結晶でしょうか?この場合は確かに多重干渉により反射率が極小になる場合 がありますね。そのときは、確かに位相の大幅な変化が期待されます。しかし、ヒステリシス測定の際に磁界の印加によって 反射率が0になることがあるとは考えられません。
 具体的なことを聞かないと君の相談にのれません。
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Date: Mon, 29 Dec 2008 02:10:11 +0900 (JST)
Q3: 佐藤勝昭先生
色々説明不足で申し訳ありませんでした。確かにひとつ上の先輩はフォトニック結晶を研究していましたが、そのときから楕円率の方はうまく測れているか不明瞭でした。
現在の私の研究テーマは「Ni薄膜における電気化学反応による磁性変化」です。Ni薄膜の表面を電気化学的に変化させることで磁気異方性や磁気モーメントを可逆的に変化させうることが期待されます。薄膜の磁性を溶液中でその場測定するための手段として磁気光学測定を行ってきました。異方性の変化はヒステリシスの形からある程度議論できるので問題なかったのですが、磁気モーメントの変化を議論しようとしたところそもそも楕円率の絶対値が膜厚に比例しないので困っています。
ですから、楕円率の絶対値が膜厚に比例する領域では信頼のあるデータが得られており厚い場合は何かの要因で正確に測定できていないのか、それとも、どの膜厚においても測定できていないのかがわからなくなってしまい先生に相談した次第であります。スペクトルの形は膜厚によって変わらなかったので後者の方なのでしょうか。少し不安になってしまいます。
ちなみに回転角ではなく楕円率で測定した理由は、楕円率では石英や溶液のバックグラウンドが見られないためです。また今後のためにも楕円率をきちんと測定できるようにしたいと考えています。
そして今回の相談で先生を困惑させてしまったRとは、AC成分の振幅のことです。説明不足で大変申し訳ありません。一般的にロックインアンプでは位相が反転するのは、振幅が0の時ではないのでしょうか。振幅が0付近では正確に測定できなくなるとは思われるのですが、2p成分と比較してp成分は明らかに振幅が0ではないところで位相が反転してしまいます。
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Date: Mon, 29 Dec 2008 10:22:19 +0900
A3: H君、佐藤勝昭です。
 メールありがとう事情が飲み込めました。たしかに君の言うとおり、楕円率の方はバックグラウンドが少ないので、これを使う ことに賛成です。
 特定の波長で測定した磁気光学定数が膜厚に比例しないことは私も経験があります。これは、スペクトルが膜厚とともにわずか ながらシフトする場合です。(ファラデー回転もファラデー楕円率もその点では同じです。)しかし、特に分散型楕円率スペクト ルの中心付近では、わずかな変化でも大きな変化につながるからです。従って、楕円率スペクトルのピーク付近で(できればピー ク波長を追いかけながら)測定する必要があると思います。
 磁気光学定数(回転角・楕円率)から、磁気モーメントの大きさを推定するのは危険です。強磁性体の磁気光学効果の大きさは、 ほとんどがスピン軌道相互作用によって決まっているので磁化に比例しませんし、あなたが言う電気化学処理した薄膜の場合は、モ ルフォロジーなど巨視的な構造的変化が伴っていますから、誘電率の対角成分の効果も考えなければなりません。拙著「光と磁気 の」p.38(3.54)式にあるように膜厚で規格化した複素ファラデー回転角Φ=θ+iηは
 Φ=-(ω/2c)(iεxy/εxx^1/2)
で表され、電気化学的にεxxが変化する可能性もあり、磁気モーメントに関する情報を得るには、εxyに直して論じる必要がある でしょう。
 「2p成分と比較してp成分は明らかに振幅が0ではないところで位相が反転」する理由は、2つ考えられます。1つは、回り込み による信号が重畳している場合で、もう1つは、ロックインアンプのフェーズ調整の問題です。2pとpでは別々に位相調整しなけれ ばなりません。それは、プリアンプの位相特性に周波数依存性があるからです。
 年明けに千代田区三番町にあるJSTの私のオフィスに来ませんか?実験の状況をもっと話してもらって、指導してあげますよ。
 なお、指導教員のS先生には、私を訪問することを連絡してからお越し下さい。
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Date: Mon, 29 Dec 2008 14:50:19 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生
お誘いいただきありがとうございました。
是非うかがわせていただきたいと思います。
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後日談
 1/9にデータを見せてもらった翌日、K大学の研究室に出向き直接指導しました。結果を紹介しておきます。
(1)データの飛びの問題:
 H君らは、ロックインアンプの振幅出力Rと位相出力φをGPIBでコンピュータに取り込み、X=Rcosφを計算していましたが、
 ロックインでは、アナログ出力として得られるX-出力とY-出力を用い、内蔵のコンピュータ(演算ユニット)を用いて、
 X,YからR=(X^2+Y^2)^(1/2)とφ=tan^-1(Y/X)を計算していました。
 この計算の際に、X成分が0になるときに位相φ=tan^-1(Y/X)が発散する状態になることがわかりました。従って、R,φのかわりに、
 X成分(Rcosφ)の出力を使うように指導しました。(但し、この場合位相の手動調整が必要になります。)
(2)楕円率の値が正確でない問題:
 サファイヤを使った校正曲線がある波長で符号を変える現象が起きており、明らかにPEMのリターデーションが波長に応じて
 変化していないことを示していました。チェックした結果、HindsのPEMコントローラでコンピュータから波長を入力して
 外部制御する場合はREMではなくLOCにする必要があるのですが、H君らはREMを使っていました。
 (注:REMは、外部から0-5Vのアナログ電圧を入力してPEMを制御する場合に使います。)
  なお、回転角については、PEMのリターデンションを波長制御をしない場合も、校正によって正確な値が得られます。
(3)楕円率に大きなオフセットがある問題:
 楕円率測定の状態で試料を入れないときに、検光子を回してもバックグランドが0になりませんでした。原因は
 「光源→分光器→レンズ系→偏光子→試料→検光子→レンズ→検出器」
 の光軸調整が十分でなく、光源→分光器の焦点調整も全くとれていないためでした。
 きちんとした光学系配置調整後は、オフセットを0にすることが可能になりました。
なお、指導教員からは下記のメールを頂いています。
 K大のSです。
 昨年暮れから私ども研究室のH君の相談に親身にご回答頂き、さらに、私どもの大学へお越しいただいて
装置のチェックまでしていただき誠に有難う御座います。当日立ち会うことができず、また御礼が遅くなり
ましたことお詫び申し上げます。
 先生のご指示に従って測定を行なった結果、これまでの疑問点が解消し大変助かりました。測定結果を議論
しまして、これまでのデータに少しの修正をすることで大枠の考え方を修正することは必要ない状況であるこ
とが分かりました。今後ともご指導宜しく御願い親します。
 御礼まで。
卒論・修論については、本件の場合のように、指導教員の了解の元に質問をしてください。
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1135. 貴金属上の水滴の濡れ性変化

Date: Thu, 25 Dec 2008 17:15:39 +0900
Q: 佐藤先生
T社で薄膜応用製品の開発を担当しております T* と申します。
[HPにご掲載いただく場合は、T社と略していただきますと助かります]
HPを拝見しまして、是非ご意見をお伺いしたいことがありメールを差し上げた次第です。

貴金属薄膜のぬれ性の径時変化について困っていることがあります。
具体的には、プラスチックフイルム上に形成した厚み10nm程度の白金薄膜とパラジウム薄膜ですが、 製膜装置(スパッタ)から取り出してからの時間経過と共に水とのぬれ性が変化してしまう現象です。
クリーンルーム内での実験であり、有機物による汚染は少ないと考えておりますが、取り出し直後は、 接触角が10度程度あったものが一時間放置後には70度近くまで上昇し、結果的に水系の塗料がはじいてしまいます。
XPSやESCAで表面分析を試みましたが、ヒントになるような結果を得ませんでした
この様な短時間で変化を生じるメカニズムを解明し、変化を抑える方法を見いだしたいと考えております。
御知見がありましたらご教示賜りますようお願い申し上げます。
以上
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Date: Thu, 25 Dec 2008 18:59:02 +0900 (JST)
A: T様、佐藤勝昭です。
 私は、表面科学の専門家ではないので、正しいアドバイスができるかどうかわかりませんが、私見を述べさせていただきます。
J. Bico, C. Marzolin and D. Quere:Europhys. Lett., 47 (2), pp. 220-226 (1999))
および
Erratum :Europhys. Lett, 47 (2), pp. 220-226 (1999)
によれば、スパイクのある構造の上に水滴を載せると、濡れ性がなくなって球状になると書かれています。
 同様のことは、産総研 TODAY Vol.6(2006) VOL.6 No.1
「ナノ構造制御により親水性表面を超撥水表面へ -直径6nmのナノピンが超撥水表面を作り出す-」
にも報告されています。
 これらのことから推察するに、スパッタ直後の白金またはパラジウム膜は、極めてフラットで親水性だったものが、時間がたつとともに、熱膨張係数のちがいによる冷却時のひずみ、プラスチックの変形などの理由(現段階では正確な理由はわかりませんが)によって、表面にナノレベルの凹凸が生じたものと考えられます。
 SEM、AFMなどで表面のモルフォロジーを観察されることをおすすめします。
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Date: Fri, 26 Dec 2008 09:32:17 +0900
佐藤先生
早速ご助言を賜り、有り難うございます。
顧みれば、表面構成元素についての分析はしておりますが、表面形態については SEM観察程度にとどまっており、ご助言いただきましたナノ構造の変化については 解析していませんでした。ただ、表面のボイド(添加粒子近傍のひずみ)の周辺に 微細なクラックがあったことを思い出しました。
早速表面構造担当の解析部署に相談し調査を進めたいと思います。
ご紹介できる知見が見つかりましたら、御連絡をさせていただきたく存じます。
取り急ぎ、御礼まで
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1136. 質問#1061「窒化ガリウム(GaN)の抵抗率の基板による違い」へのコメント

Date : Mon, 5 Jan 2009 11:26:40 +0900
C: 佐藤先生
H社の土屋と申します。
応用物理学会結晶工学分科会では,先生には大変お世話になっておりまして,感謝いたしております。

先生の「物性何でもQ&A」のウェブサイトを拝見しました。
すばらしいサイトだと思います。化合物半導体の成長に携わっている者として,拝見していて一点,気づいたことがあり,不躾ながら突然,メールさせて いただきました。

『No.1061. 窒化ガリウム(GaN)の抵抗率の基板による違い』 の項で学生さんがサファイア基板上と石英基板上で,製膜されたGaNの電気抵抗率に生じた違いの原因を質問されている部分です。

この質問者はどういう事情か,指導教官には聞きたくなかったようですが,(きっともっと自分で考えて見ろとでもいわれたのでしょうか) 虫のいい質問だなあと少々あきれました。それはさておき,質問文に成長方法をはっきりとは書いていないので推定になってしまいますが, 質問者は固体Gaソースを使用していると言うので,HVPE(クロライド成長)法を使っていると考えられます。

そういたしますと,塩酸ガスの影響で高温の石英が侵され,塩化珪素の発生によりGaN中にシリコン汚染が生じてシリコンドナーが 増えて低抵抗化したものと想像されます。
アンモニアガスを増すことで十分なV族原料が供給されて結晶欠陥が減少し,それとともにGaN結晶は本来であれば高抵抗化するべきですが, シリコンが存在すると,不純物シリコンの活性化率の向上と再結合中心の減少により自由電子濃度が増加したものと思われます。

塩酸ガスの供給量やキャリアガスの種類,成膜温度など,判断に必要な実験条件を押さえずに質問している点を考慮しますと, やはり,考察すべきポイントがわからず,指導教官にしかられたんじゃないかなと,この学生に同情する次第です。

差し出がましいことを申し上げすみません。
今後ともよろしくお願いいたします。
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Date : Mon, 5 Jan 2009 13:48:42 +0900 (JST)
A:土屋様、佐藤勝昭です。
 貴重なアドバイスをありがとうございました。
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1137. 金属間化合物Fe2Al5の磁気特性

Date: Tue, 06 Jan 2009 16:55:11 +0900
Q: 佐藤勝昭 先生
初めまして。H試験場のT*と申します。
金属材料の研究開発しております。ネットで検索していて先生のサイトに至りました。

金属間化合物Fe2Al5の磁気特性を調べております。高温での磁気特性、特にキュリー点を調べています。
実験的には、常温ではFe2Al5は強磁性を有することを確認しておりますが、高温では実験が難しくお手上げの状態です。
磁気に関しては私は全くの素人なので、文献など調べておりますがなかなか行き着きません。もしご存じであれば教えて頂きたくお願い申し上げます。

なお、ネットへの掲載にあたっては、匿名にして頂きますようお願い申し上げます。
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Date: Tue, 6 Jan 2009 19:23:43 +0900
A: T様、佐藤勝昭です。
 私は、金属磁性学の専門家ではないので、データの持ち合わせがありません。
金属磁性の専門家に問い合わせているところですので分かり次第御連絡します。
 なお、以下は私見です。
Al-richのFeAl金属間化合物は耐食性をもち機械的強度が高く構造材料として最近元素戦略上注目されている材料ですが、あまりきちんとし た物性データがないのではないかと思います。
結晶相図はMetals Handbook, Vol. 63, 10th Edition, ASM International, (1992)に載っています。
FeAl2の磁性はCrと同様のincommensurate型の反強磁性であるが、モーメントの傾きによる弱い強磁性(canted antiferromagnetism)がみられる書かれています。
(D. Kaptas, Phys. Rev. B 73, 012401 (2006) [4 pages])

 FeAl金属間化合物の粉末試料の磁性は名工研の橋井さんらが研究しておられます。
H10年度の報告 によると名工研では、ボールミルで金属間化合物を作っており、メスバウア分光で磁性を評価しています。組成は書いてないのですが、ミリングの中間段階では強磁性だが、最終段階では常磁性となっています。
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Date: Wed, 07 Jan 2009 08:22:29 +0900
AA: 佐藤勝昭 先生
H試験場のTです。お世話になります。
突然の質問にもかかわらず、早速のご回答ありがとうございました。教えて頂いた資料、文献を調べてみます。
他にも何か情報がありましたら、ご連絡頂きたくお願い申し上げます。

今後とも宜しくお願い申し上げます。
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Date: Sat, 10 Jan 2009 01:40:45 +0900
A2: T様、佐藤勝昭です。
 Fe-Al合金系の磁性の情報は「磁性体ハンドブック」p364にありました。
Fe3AlなどFe-richの組成はセンダストなどとして研究された磁性体です。Alの組成を増加すると、25%を超えたあたりから磁化は急速に低下します。
磁性体ハンドブックにはAl-rich組成のものは記述がありません。
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Date: Fri, 16 Jan 2009 00:07:03 +0900
A3: T様、佐藤勝昭です。
 金属磁性の専門家で以前Fe-Al系アモルファス合金を研究しておられた名工大の隅山教授がFe-Al系の文献をどさっとお送りいただきました。全部に目を通す時間がなかったのですが、その中で特に目に付いたのは、隅山先生の論文
K.Sumiyama, Y.Horose, and Y. Nakamura: Structural and Magnetic Properties of Nonequilibrium Disordered Fe-Al Alloys Produced by Facing Target Type DC Sputtering; J. Phys. Soc. Jpn. 59 [8] (1990) pp. 2963-2970.
です。この論文に添付のような磁気相図が出ています。(a),(b)はスパッタ法で作製したもので(a)は水冷基板、(b)は液体窒素冷却基板の場合です、(c)は水冷急冷で作製したバルク合金*です。
*)R.D. Shull et al.: Solid State Commun. 20 (1976) 863, K.H.
 Fischer: Phys Stat. Sol. (b) 116 (1983) 357, ibid.(b) 130 (1985) 13.
いずれにせよ、急冷Fe2Al5 (Al72%)では常磁性のようです。
上記隅山論文とその引用文献を調べてください。
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Date: Fri, 16 Jan 2009 00:38:56 +0900 (JST)
AA2: 佐藤勝昭 先生
H試験場のTです。
出張先からメールしております。

深夜にもかかわらずメールいただきありがとうございます。
また、丁寧なご回答を頂き、感謝の言葉がありません。
職場に戻り次第、文献を調べてみます。

突然のメールで依頼に対し、これほどの内容をしかも無償でご呈示いただけたことに驚くばかりです。
私はいわゆる公設試の者で、企業さんからいろいろな依頼を受けますが、これほど丁寧に対応した記憶がありません。
今後は私も先生に習ってできるだけの対応を心がけます。

名工大の隅山先生にも御礼をお伝えいただけると幸甚です。
取り急ぎ御礼申し上げます。
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Date: Sat, 17 Jan 2009 10:28:06 +0900
A4: T様、佐藤勝昭です。
 丁重なメール有り難うございました。
さて、Al-richのFe-Alは常磁性のはずなのに、T様の最初の質問にあった「強磁性」がなぜ出るかと言うことですが、隅山先生が 送って下さった文献の中に
 R.A. Dunlap et al., Physical properties of rapidly quenched Al-Fe alloys,
 J. Phys.:Metal Phys. 18 (1988) 1329-1341
にAl86Fe14のTEM像があり、最小10nm程度の準結晶(電子線回折で5回対称)の微結晶が含まれているとされています。
また、as-quenchedの準結晶試料の磁化曲線はなかなか飽和しない振る舞いを示しており明らかに超常磁性的です。
その飽和磁気モーメントは0.76 emu/g (4.2K), 0.63emu/g (室温)であるが、結晶化した試料は強磁性的で非常に小さな飽和磁気 モーメント0.055emu/g(室温)しか示さないと書かれています。
 おそらく、T様の試料もTEMでみると不均一で、作製の過程で準結晶が析出している可能性があるのではないかと思います。
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1138. 量子力学の質問

Date: Wed, 21 Jan 2009 05:54:44 +0900
Q: 私は、K**大学2回生の横山と申します。
突然のメール申し訳ありません。
先生のHPを拝見させていただきました。
私は物理学科で数学を専攻しているのですが、量子力学の単位が必要で困っています。
ですので、先生の御力を借りたくメールさせて頂きました。
問題は以下の通りです。
1)弦の振動を記述する波動方程式

を境界条件 Ψ(0,t) =Ψ(L,t) = 0 (Lは弦の長さ)のもとで解け。すなわち、変数分離法を用いて解くと、変微分方程式2つの常微分方程式に分離され、一般解は

(Aは定数)
で与えられることを示せ。
ただし



である。
また、は独立な調和振動子の位置座標、は運動量と見なせることを説明せよ。

2)(1)を結晶固体の現視振動に適用すると3次元の波動方程式になり、無限大の個数の固体振動のモードがあることになる。しかし、結晶固体は実際には連続体でないので、N個の原子からなる固体の固有振動のモードは3N個しかない。これは、原子間距離の2倍より短い波長を持つ固有振動のモードは意味がないからである。このことは考慮し、固体の比熱を求めよ。

3)空洞内の電磁場の振動はやはり3次元の波動方程式で表される。この場合、電磁場は連続体であり、(1)の理論はそのまま3次元に拡張される。そうすると、空洞の比熱は無限大になり、実験事項と矛盾する。この矛盾をプランクの考えたエネルギーの量子化を簡単に説明せよ。
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Date: Wed, 21 Jan 2009 21:47:50 +0900
A: 横山君、佐藤勝昭(京都に出張中)です。
 なんでもQ&Aは授業で出された課題にお答えしないことになっています。
私が、その課題を出した教員なら、そのような学生に単位を与えることはできません。
ヒントだけ差し上げましょう。
1)は量子力学の基本的な問題で、大抵の量子力学の演習問題に載っています。
波動関数が求まれば、オブザーバブルの値を求めるには、オブザーバブルに対応する演算子Aの期待値として求められるはずです。
 
=∫Ψ*AΨdτ/∫Ψ*Ψdτ
位置の演算子の場合A=x 、運動量の演算子はA=-ihbar∂/∂xです。
2)は、2年生にはちょっと難しいですね。固体物理や熱学の教科書、例えば、キッテルを参考にしてください。
3)は、前期量子力学の創生期の話のところで出てきたはずです。例えば、朝永先生の量子力学の教科書を読んで下さい。
いずれにせよ、物理学コースの授業に出ていれば、教わっているハズです。授業に出ないで単位を取ろうというのは、間違っています。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 00:51:40 +0900
AA: 先日、量子力学についての質問をさせて頂いたK大学2回生の横山です。
先生の下さったヒントを頼りに頑張ってみようと思います。
お忙しい中丁寧な解答ありがとうございました。
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1139. アモルファスシリコンの吸収端

Date: Wed, 21 Jan 2009 14:16:27 +0900 (JST)
Q: K**大学に所属しているY*といいます。 学年は3年です。
HPを見ての質問しました。Webにアップする場合匿名でお願いします。
学生実験でシランを水素で希釈し、プラズマCVD法によりシリコン薄膜を成膜しました。
成膜したサンプルを紫外可視分光光度計で測定し、taucプロットにより光学的禁止帯幅を測定しました。
しかしシラン濃度が7.5%の時に線に丸みを帯びて光学的禁止帯幅を求めれませんでした。
そのことをレポートに書きたいのですがどのような原理でかわかりません。
どのような原理で丸みを帯びているのかを教えてください。
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Date: Wed, 21 Jan 2009 22:11:18 +0900
A:Y君、佐藤勝昭です。
 学生実験も授業の一種です。「なんでもQ&A」では授業の課題を教えることはできません。
ヒントだけを上げましょう。
(1)おそらく吸収係数を透過スペクトルから求めてTaucプロットをしているのだと思いますが薄膜の場合、多重干渉による干渉縞の影響を受けています。その補正をしなければなりません。
(2)Taucプロットは、あくまで近似的なものです。
例えば、http://www.jstage.jst.go.jp/article/jvsj/49/7/443/_pdf/-char/ja/
の第3図にアモルファスNi-Cr oxideの場合もきちんと直線に載っていません。
(3)アモルファスシリコンの吸収端については、
Mok, Tat M.; O'Leary,Stephen K:The dependence of the Tauc and Cody optical gaps associated with hydrogenated amorphous silicon on the film thickness: Experimental limitations and the impact of curvature in the Tauc and Cody plots; Journal of Applied Physics, Volume 102, Issue 11, pp. 113525-113525-9 (2007).
図書館に行って勉強してください。
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1140. 円偏光発生についての質問

Date: Fri, 23 Jan 2009 09:47:05 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭先生
お世話になっております。O*大学修士2年のW*と申します。先生のHPで色々と勉強させていただいています。
光の偏光の発生理由について教えていただけないでしょうか。光学を専攻していないため、低次元の質問でしたら申し訳ありません。

フォトンは全角運動量の変化に応じて右回りか、左回りかの状態を持つことは理解しました。
また、偏光状態を観察する(例えば、1999年に発表された東北大学の大野先生の実験)場合、外部磁場の印加方向と、測定方向を同じ向き(ファラデー配置)で測定しなければならないことも分かります。
しかし、選択則での全角運動量の変化と測定方向との関係がよくわかりません。その間の関係を教えていただけないでしょうか。
私の考えでは、
光(電磁場)は束縛された正孔と電子の振動により生じ、その振動面に対し垂直に磁場を印加した場合、電子はローレンツ力を受けて回転する。
このとき、正孔は電子に比べ重く、回転しないと考えた場合、正孔と電子の間に生じる遷移モーメントの向きも回転する。
その回転によって、ファラデー配置で光を観測した場合には円偏光となり、また、フォークト配置で観測した場合には直線偏光となる。
さらに、選択則での全角運動量の変化は遷移モーメントの向きと一致し、磁場印加によって回転する向きが逆になり、円偏光の向きが逆になる。
と考えています。

ただ、遷移モーメントの向きが逆になっても、回転方向には影響がないため、右または左の回転に差が出るとは考えられないのですが。
どこが間違っていますでしょうか。よろしくお願いいたします。
なお、掲載の場合は匿名でお願いいたします。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 01:00:00 +0900 (JST)
A: W君、佐藤勝昭です。
 W君は、東北大学の大野先生の研究で、「スピン偏極した電子がGaAsに注入された場合に発光がスピンの向きに応じて右回り又は左回りの円偏光になる」という現象を自分なりに説明しようとしてしているのですね。しかし、考え方が少し違っています。
 このことをきちんと説明するには、GaAsのバンド構造から説明しなければなりません。伝導帯はs電子軌道から構成されているので、軌道角運動量がありません。スピンがs=1/2、従ってsz=±1/2。軌道角運動量l=0なので、全角運動量はj=1/2で、jz=±1/2です。一方、価電子帯はp軌道から構成されているため、l=1の軌道角運動量があります。するとlzとしては、1,0,-1の3つがありますが、スピン軌道相互作用のため、全角運動量が±1/2の状態と±3/2の状態に分かれています。
 jz=±1/2の状態には、(lz, sz)=(+1,-1/2), (0,+1/2), (0, -1/2), (-1, +1/2)の4つの組合せがあります。もし、伝導帯に+1/2のスピンを注入すると、価電子帯のホールのスピンも+1/2でなければ遷移はおきません。すると、(0,+1/2)と(-1,+1/2)にしか遷移できません。(lz, sz)=(0,+1/2)に遷移する場合は軌道角運動量の変化Δlzが0なので円偏光は生じません。(lz, sz)=(-1,+1/2)に遷移するとΔlz=-1となります。このときに光が放射されますが、Δlz=-1なので、その光は左円偏光です。遷移が起きる前には、ホールの軌道角運動量はlz=-1だったので、量子化軸zに関して左回りの回転運動をしていました。電子とホールが再結合するとこの回転運動がなくなり、左回りの電気双極子ベクトルの回転に変換され、左回りの円偏光が出射されるのです。
 一方jz=±3/2の状態には、(lz, sz)=(+1,+1/2), (-1,-1/2)の2つがあります。この場合には、伝導帯に+1/2のスピンを注入すると、(+1,+1/2)の価電子帯ホール(右回りの回転運動をするホール)と結合して光を出しますが、このときΔlz=+1なので右回り円偏光が出ます。
 もっと正確には、遷移行列によって説明しなければなりませんが、定性的には、上のように遷移に当たって光と電子の角運動量が保存されると考えればよいでしょう。
 磁気光学効果の場合は、磁界の印加によって、基底状態のスピンの向きが規定されるために、どちらかの円偏光による遷移が選択されます。ファラデー効果を透過光で測定する場合は、円偏光によってバーチャルに右回り、または左回りの励起電子状態が基底状態に混じり込むことによって、誘電率の非対角成分が生じ、旋光性が生じるのです。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 11:02:05 +0900 (JST)
Q2: 佐藤先生
O大学のWです。
解説ありがとうございます。
先生が解説してくださったファラデー効果とコットンムートン効果はある光を物に通した時、その光に対して外部から磁場を かけた時にでてくる効果と考えて正しいでしょうか。
例えば、東北大学の大野先生の実験について、実験では、素子の面内方向に磁場を印加し、その方向から測定していますが、仮に面に対して垂直に磁場を印加し(磁化容易軸ではないので大きな磁場が必要でしょうが)、素子側面からでてくる光を測定すると、スピンの選択則に起因して、何か偏光度に変化が現れるのでしょうか?
前回の質問と同じないようでしたら申し訳ありません。
よろしくお願いいたします。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 11:28:54 +0900
A2: W君、佐藤勝昭です。
 確かにファラデー効果やコットンムートン効果は、磁化された物質を光が透過する際に受ける効果です。
従って、光学遷移は、バーチャルに関与しているのでエネルギーの変化はありません。これに対し、発光を観測するのはリアルな過程ですから、系からエネルギーの放出がありますが、それ以外の偏光の受ける性質に関しては共通です。
 面に垂直に磁化して、側面からの発光を見た場合については、きちんと、数式を追って見る必要がありますが、私の予想としては、磁界に垂直な振動成分の発光はおそらく磁界の正負に応じてわずかな強度の変化を伴うでしょうがあまり大きなものではないでしょう。一方、磁界に平行な振動成分については磁界の正負に応じて位相の反転として観測されるのではないでしょうか。従って、発光の偏光角の傾きが磁界の正負の変化に応じて正負に変化する様子が観測される可能性があります。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 13:23:54 +0900 (JST)
AA: 佐藤先生
O大学のWです。
休日にも関わらず、返信いただきありがとうございます。
非常に興味深い分野でしたので、今後も色々と勉強させていただきます。
私的な質問に丁寧に解説をくださりありがとうございました。
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1141. 光子の強度相関測定

Date: Fri, 23 Jan 2009 12:47:05 +0900
Q: 佐藤勝昭先生。
はじめまして、K*大学電気電子工学科4年生のK*と申します。
実験でハンブリー・ブラウンとトゥイスの強度相関計を用いまして 光子のバンチングorアンチバンチングを観測しようとしております。
光源はコヒーレント光源であるチタンサファイアレーザーとHe-Neレーザーを NDフィルタ等で減衰させた光源を使用しております。
また、検出器にはPMTを使用しております。
しかし、検出器のダークカウントと同じカウントレートまで減衰させているにも かかわらず観測結果にはディップが現れずに相関がない場合と変わりません。

そこで質問なのですが
レーザー光を単に減衰させるだけではアンチバンチングは観測されないのでしょうか?

また、系の評価をするという点でバンチングを観測したいのですがなにかいい方法はないでしょうか?

漠然な質問で申し訳ないのですがよろしくお願いします。
Webにアップされる際は匿名でお願いします。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 10:13:40 +0900 (JST)
A1: K君、佐藤勝昭です。
 電気系の4年生なのにむずかしいことを研究しているのですね。
卒業研究での疑問は、本来、そのテーマを与えた指導教員に尋ねるべきでしょう。
 アンチバンチングを観測するのは、きちんとした装置とかなりの熟練がいると思います。
私は、単一光子計測の専門家ではありませんので、よいアドバイスをすることができないので いま、レーザー計測の専門家にお尋ねしています。回答が来るまでお待ち下さい。
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Date: Sat, 24 Jan 2009 23:28:09 +0900
A1': K君、佐藤勝昭です。
 専門家である東京農工大学の三沢和彦教授から次のメールが来ましたので転送します。
これを元に研究室で頑張って下さい。
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佐藤勝昭先生
三沢です。
とりあえず以下の通り回答します。
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実験装置や実験条件の詳細な記述がないので、一般的な観点でコメントします。

ハンブリー・ブラウンとトゥイス(HB-T)相関計で、次の点について確かめてください。
(1)それぞれのPMTで単一光子の計数ができているか、減光した状態での光の平均パワーを測定し、光子エネルギーの値を使って、単位時間あたり何個の光子が来ているかを推定する。
どちらか一方のPMTで光子のカウントレートを実測し、最初の推定値と比較する。

(2)装置の応答関数は十分速いか
PMTの時間応答をカタログで調べ、また、時間相関計(おそらく時間ー電圧変換器TACを使っているものと思われる)の時間分解能も調べて、装置の時間応答が光子のカウントレートよりも十分速いことを確認する。

「系の評価をするという点でバンチングを観測したい」の意味が理解できません。
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Date : Sun, 25 Jan 2009 01:39:06 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
K大学4年生のKです。
深夜にもかかわらず返信していただいてありがとうございます。
三沢和彦先生のメールで指摘された所を再度確認し、なんとかやってみようと思います。
今回は専門外の内容にもかかわらず迅速に回答していただき本当にありがとうございました。
三沢和彦先生にも御礼をお伝えいただければ幸いです。
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1142. アルミニウムの誘電率

Date: Thu, 29 Jan 2009 09:34:21 +0900
Q: 佐藤勝昭様
初めまして。E**社のM**と申します。半導体関連の営業を担当しております。誠に申し訳ございませんが、匿名希望にてお願い致します。
お客様にてエッチャー工程内の装置の部材をアルミナからアルミアルマイトに材質を変更されたいとの事でお引き合いを頂きました。
アルミナとアルミの誘電率を調査して欲しいとの宿題を頂きましたが、誘電率表などにも記載されておらず、先生のHPを 拝見させて頂きましたが、誠に申し訳ございませんが理解出来ない状況です。
カタログ値にあるようにアルミナ:1MHz:10というような 表記の時はアルミニウムの誘電率はいくつになるのでしょうか?お手数お掛けいたしますが、ご回答お願い致します。
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Date: Thu, 29 Jan 2009 12:35:48 +0900 (JST)
A: M様、佐藤勝昭です。
 アルミナは絶縁体で比誘電率が10程度と考えて良いでしょう。
一方、アルミニウムは金属なので、Drude則に従います。
すなわち、εr'=1-ωp^2/(ω^2+γ^2)で与えられます。
ここにωpは自由電子数から見積もられるプラズマ振動数で、eV単位では12.5eV
γは自由電子の散乱の確率でeV単位では0.06-0.1eVです。
直流、および、振動数がγより十分小さい極限では
(ご質問の10MHzはeV単位では4.13×10^-8eVなので、ω<<γが成立します)
  εr'=1-(ωp/γ)^2
となります。εr'は-50,000程度の負の大きな値になります。
[ωpおよびγの値は、Palik: Optical Constants of Solids Vol. 1 p.394のTable XIから引用しました。]
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Date: Fri, 30 Jan 2009 11:30:50 +0900
AA: 佐藤勝昭様
いつもお世話になっております。E*㈱ Mです。
お忙しい中早急なご回答誠に有難うございました。
弊社は主にデバイスメーカー様に半導体製造装置の消耗パーツを製造販売しており 特に、ドライエッチング工程では今回のようなケースの調査依頼を多々受けます。
今後も佐藤様のHPを参考に勉強させて頂き、お客様のお役に立てるよう営業活動に精進いたします。
早速先生のご回答を元にお客様と再打合せに挑んで参ります。
この度は誠に有難うございましす。
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Date: Fri, 30 Jan 2009 11:39:00 +0900 (JST)
A': (追伸)
M様、佐藤勝昭です。
 アルミニウムの誘電率というご質問でしたので、金属の負の誘電率を述べましたが、 実際にはアルミの表面はアルマイト加工されているのですね。
アルマイトは陽極酸化によって表面にアルミナの薄膜がコートされた状態になっています。
この膜厚が試料によって十nm~数μmと異なるので、アルマイト加工されたアルミニウムを外から見た場 合の誘電率は、金属と表面の酸化物層を総合したものになっています。
アルミナ膜が十分厚ければ誘電率はアルミナそのものですが、薄いと金属の負の誘電率が効いてきます。
クライアントさんにはそのこともご注意してあげてください。
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1143. 光照射による発熱効果

Q: 佐藤勝昭先生
O大理学部修士2年M*と申します.
物性なんでもQ&Aを見てメールさせていただきました.
フリーメールにて質問することをお許しください.
本題なのですが, 私は, 光照射による誘電率応答の研究をしています.
この際, 光照射による発熱効果がどれくらいのものかを考えています.

そこで質問が2つあります.
1つ目の質問は, 照射光のワット数は100Wなのですが, 試料に当たる正味の照射光のパワーは定量的にどのように見積もったらよいのかが分かりません. これをなるべく簡単な方法で見積もる方法を教えていただけますでしょうか?
文献ではだいたい数mWとなっていると思います.
試料に当たる正味の照射光のパワーが分かった場合単位フォトンエネルギーあたりの熱変換率が分かると思うのですが,薄膜試料の場合は, 試料に当たる正味の照射光のパワー,バンドギャップ, 及び吸収係数が分かれば単位フォトンエネルギーあたりの熱変換率が分かると思います.

そこで2つ目の質問なのですが, バルクの場合の単位フォトンエネルギーあたりの熱変換率評価の仕方がよくわかりません.
質問を端的にまとめますと, 同じ物質においてバルクと薄膜での光照射による熱効果の違いが分からないということになります.
ご多忙かと思いますが, 返答よろしくお願いします.

Webにアップされる場合は, 大学名と名前を匿名にしていただけますでしょうか.
乱文お許しください.
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Date: Fri, 30 Jan 2009 11:57:57 +0900 (JST)
A: M君、佐藤勝昭です。
 ご質問は、修士論文研究の過程で出てきた実験結果の解釈に当たってのものと推察します。
具体的な実験条件がわからないので、お答え出来ません。
(1)光源は、白熱電球ですか、LEDですか、レーザですか?それによって違ってきます。
たとえば、光源が白熱電球のように指向性がなければ、光は全周に広がるのでP[W]の光源からr[m]離れたところにある試料の位置での光束Φ[W/m^2]は
 Φ=P/4πr^2
となります。試料の面積が十分小さければ、面内は一様な照射であると考えてよいでしょう。従って問題は、1次元の伝熱の問題に期することが出来ます。
LEDの場合指向性があるので、やはり光源からの距離と角度によって光束は異なります。このため、試料面内に村が出来ます。また、レーザの場合は、試料がよほど小さくない限りスポットは試料の面内の一部に光が当たります。従って、LEDやレーザの場合には、光束に垂直な面内での熱拡散を扱うこととなり、3次元の熱拡散を扱う必要が出てきます。
(2)光源の波長はいくらですか?誘電体(半導体?)は何をお使いですか。そのバンドギャップはいくらですか。
上の(1)とも関係あるのですが、白熱電球の場合、光強度は光子エネルギーに対し黒体輻射の法則に従って分布しています。物質中で熱に変わるのは、赤外光が格子振動を直接励起して吸収され熱化するものと、バンドギャップを超える光子エネルギーの光を吸収して熱化するものとがあります。シリコンでは赤外吸収は弱いのですが、化合物半導体ではかなり強い赤外吸収がおきます。
(3)試料の表面は平坦ですか、薄膜の場合透過スペクトルに干渉縞は現れていませんか?
バルクの場合、試料の反射率をRとすると、試料の内部に入る光束は、(1-R)をかけたものになります。
たとえばシリコンは可視光領域で40%位の反射率を示しますから、中に入る光は60%程度です。ざらざらであれば、散乱はあるが、光は大部分試料に入ります。 薄膜の場合、裏面(基板との界面)の反射があるため、多重反射による干渉があり、透過は膜厚と屈折率と波長に依存して振動します。これを干渉縞と言います。この場合、膜厚と波長を選ぶと反射なしに試料に入る場合と、全く入らない場合があります。
(4)試料の光吸収:間接遷移、直接遷移
厚みtが吸収係数の逆数(α^-1)に比べ十分大きなバルク試料では、試料に入った光束がすべて吸収されます。αは光子エネルギーに依存します。シリコンは間接ギャップ半導体なので吸収端直上のエネルギーにおける「αは小さい値しかしましません。α=10^3[cm^-1]程度であれば、t>>10^-3[cm]=10[μm]という膜厚がないと入った光は試料を透過してしまいます。一方、CISのように直接吸収端でしかも価電子帯に大きな状態密度のd軌道が混成していると、吸収端直上の吸収係数が10^5[cm^-1]に達し、0.1[μm]の厚さでも光は全部吸収されます。M君の試料のギャップは直接ですか間接ですか?
(5)試料は光りますか?
光照射によって励起状態にある試料が基底状態に戻るときには発光する場合と熱に変わる場合があります。よく光る物質では、熱に変わる成分が少ないことになります。
(6)照射と反対側の試料の様子はどうなっていますか?
試料の裏側が熱浴に接している場合、たとえば、十分厚く十分面積が広いアルミ板に接着されていた場合、アルミ板は熱浴と考えられます。そのときは、試料の終端の温度は一定値T0と考えてよいことになります。この場合は、照射面での温度がT1ならば、定常状態ではq=κ(T1-T0)となり、熱流束qと熱伝導率κがわかれば、ΔTを見積もることが出来ます。
もし試料が熱浴に接しないで宙に浮いている場合は、熱輻射以外に熱は逃げないので、試料の放射率を勘案する必要があります。
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以上書きましたように、実験条件がはっきりしていないと、この問題をきちんと扱うのに難しいことがわかります。また、3次元で考えなければならない場合も多く、有限要素法などを使ってシミュレーションするのが普通のようです。このような扱いは光ディスクの熱設計に使われています。たとえば、
http://konicaminolta.jp/about/research/technology_report/2000/pdf/71.pdf
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Date : Sat, 31 Jan 2009 12:06:33 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生 お世話になります. O大理学部修士2年Mです.
ますは前回の質問に非常に丁寧にお答えくださったことに感謝します. ありがとうございました.
(1)光源は、白熱電球ですか、LEDですか、レーザですか?それによって違ってきます。
・100Wハロゲン光源です.
j-imagingの光源を用いました. 冷凍機内にCaF2の窓を通じて光が通るようになっています.
(2)光源の波長はいくらですか?そのバンドギャップはいくらですか。
・単色ではありません. 上記のハロゲンランプからの白色光をそのまま試料にあてています.
バンドギャップは Eg=0.5eV程度です.
(3)試料の表面は平坦ですか、薄膜の場合透過スペクトルに干渉縞は現れていませんか?
・ 薄膜ですが透過スペクトルに干渉縞は見られません.
(4)試料のギャップは直接ですか間接ですか?
・おそらく間接だと思いますが, まだ確定していません.
(5)試料は光りますか?
・発光スペクトルはとっていませんが, 発光はないと思います.
(6)照射と反対側の試料の様子はどうなっていますか?
・照射側は光が当たるようにするため, むきだしになっています.
冷凍機内部の熱輻射を浴びていると思います. 反対側は銅版を絶縁したものに置いています. 冷凍機の温度調節のためです.

ご質問は、修士論文研究の過程で出てきた実験結果の解釈に当たってのものと推察します。
・まったくその通りです. そこでお願いですが、以下の説明は知財の問題があるので、公開される場合は、ご配慮下さい。
(以下、質問者の希望により骨子のみ紹介します)
私は, 鉄系強誘電体を研究しています.この物質は, 過去に行なわれた誘電率測定より, 活性化エネルギーが分かっていました.
私は, この活性化エネルギーは間接的にバンドギャップを見ているものだと考えた結果, 可視~赤外領域の白色光を照射し,  交流誘電率と交流伝導率が増大するという結果を得ました.その一例を添付させていただきます.(質問者の希望により非公開とします)
要するに, このデータの解釈を考えているということになります.
試料は最初にバルクで測定したのですが, 後に,薄膜を製作し, 同様の実験を行ないました.
また, バンドギャップを吸収スペクトルから決定しました.おそらく間接型のギャップをもつのではないかと考えています.
 光照射による誘電率変化の原因として、光照射によって単に試料があったまって誘電率が増加したという可能性が十分にあります.
しかし、誘電率が減少する場合もあり、私は、どうも単なる発熱とは現象が異なるように思います.
私としては, 光照射によって電子系が集団励起するということを主張したいと思っています. これが事実なら 光照射によって伝導度が増加した結果, 誘電性に異常が生じるという描像が成り立つと思っています.
そこで問題になるのが, 発熱効果をどうやって否定するか(あるいは寄与が小さいか)ということになります.
そこで今回の質問に至りました.
以上, 時間にゆとりのあるときで結構ですので返信よろしくお願いします.
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Date : Sat, 31 Jan 2009 15:40:22 +0900
A2: M君、佐藤勝昭です。
 事情は飲み込めました。知財が絡んでいるのですね。その点では、あなたが指 導教員に無断で第三者である私に質問したこと自体モラルも問われますよ。私 は、 JSTの人間として知財には十分配慮しますので安心してください。しかし、 ある程度、現象が解明された段階で私に意見を求めたことを指導教員に白状して ください。
 あなたが見出した現象は、計算してみないと断定はできませんが、多分、熱効 果ではないと思います。白熱電球からの距離がわかれば、P/4πr2で光束のおよ その強さは見積もれるでしょう。これがすべて吸収されたとして熱流束を見積も り、密度と比熱を使い、熱伝導率を考えればおよその温度上昇が計算できるはず です。
 添付ファイルを見ますと、高周波で測定した誘電率の光応答が遅いので、キャ リアのトラッピングが効いていると思います。非常に似た光効果として、シリコ ン添加磁性ガーネットY3Fe5O12:Siにおいて光照射による初透磁率変化の現象が あります。この場合も、数秒から数時間という遅い応答が知られています。Fe3+ の3d電子が光照射で伝導帯に励起され、トラッピングも受けながら、別の3+サ イトにたどり着き、捉えられてFe2+を作ることで、磁性に変化をもたらします。 1960-70年代にオランダのEnzらによって研究され、photomagnetic effectと命名 されました。あなたの場合も上述のガーネットの場合と似たことが起きているの ではないでしょうか。下記に参考としてphotomagnetic effectに関する拙著 「光と磁気」2.8節の原稿を転載しておきます。
 光照射の効果が熱効果であるかフォトン効果であるかの判定基準は、誘電率変 化の光波長依存性を測定することです。あなたの測定されたバンドギャップだと 赤外部にあるので分光測定は難しそうですが、やれないことはないと思います。
ただトラッピングの効果があるので、簡単ではないかも知れません。
磁性の光効果の測定もされるとよいかも知れません。
====================
参考:光と磁気第2章2.8節
Siを添加したYIG結晶の強磁性共鳴周波数が光照射によって大きく変化する現 象は1967年に英国のTeale, Templeらによって発見された29) 。この効果はその 後オランダのEnzらによって詳細に研究され30) 、YIGだけでなく磁性半導体 CdCr2Se4や他のフェライトにおいても光照射による磁気的性質の変化が見い だされた。例えば、YIG:Si0.006において77 Kでの光の照射によっ て、はじめ120あった初透磁率が数秒の間に10にまで減少する。
また、同じYIGにおいて、50 Hzで測定したヒステリシスループが、もとはS形で、 Hc=0.6 Oeだったものが、光照射によって角形となり、Hc=2 Oeに増大する 31)。このほかにも、光誘導磁気異方性、光誘導ひずみ、光誘導二色性などが 報告されている。この効果には、光による電荷移動型遷移が起きたことによる 3d遷移金属イオンの価数変化、光によって生成されたキャリアのトラップ準位 による捕捉と再解放、電子正孔対の再結合などが絡み合っており、未だに完全な 理解が得られていない。最近の興味ある研究としては、Co添加YNdIG薄膜で の光誘導磁気効果が直流磁界に依存する効果の研究があげられよう32)
29) R.W. Teale and D.W. Temple: Phys. Rev. Lett. 19 (1967) 904
30) U. Enz and H. van der Heide: Solid State Commun. 6 (1968) 347
31) U. Enz, R. Metselaar, P.J. Rijnierse: J. Phys. (France),C1 (1970) 703
32) 大森一稔、中川活二、伊藤彰義:日本応用磁気学会誌19 (1995) 249
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Date : Sat, 31 Jan 2009 16:41:00 +0900
佐藤勝昭 先生
今回の一件, 大変参考になりました.何とお礼を申し上げたらよいか分かりません。 お陰様でしっかりした考察が書けそうです。
知財の件も了解いたしました。
何も知らない自分が恥ずかしくなりましたが,これをきっかけにこれまで無関心だった 特許についても最低限の知識が持てるように勉強しようと思います。
参考図書に挙げていただいた先生の本は早速手続きをとりました。
届いたら早速読んでみようと思います。
今後もお世話になることがあるかもしれませんがまたよろしくお願いいたします。
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1144. 光学遅延変調法のファラデー効果の場合

Date: Sat, 31 Jan 2009 03:14:33 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭先生、はじめまして。
T*大学4年S**と申します。(webに掲載する際は大学名、所属、名前を伏せていただけると助かります。)
先生の著書、「光と磁気」の、5.1.6 光弾性変調法の所で質問させていただきたい所がありメールさせていただきました。
ここでは、カ―効果の場合を例に取って、御説明されていますが、ファラデー効果の場合どのような計算になるのでしょうか?
具体的には、光E2からE3を導くところで、カ―効果の場合は右円偏光、左円偏光にフレネル係数をかけているのですが、ファラデー効果の場合には何をかければいいのでしょうか?
「光と磁気」p37、(3.44)→(3.45)の式変形のように計算すればいいかと思いやってみたのですがうまくいきません。
お時間ありましたら、回答していただけると幸いです。
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Date: Sat, 31 Jan 2009 08:34:54 +0900
A: S君、佐藤勝昭です。
 光と磁気をお読みいただき有り難うございます。
反射の場合はフレネル係数ですが、透過の場合はr+=|r|exp(iθ+), r-=|r-|exp(iθ-)の代わりに
右回り偏光の透過率T+と左回り偏光の透過率T-に置き換えればよいはずです。
この場合は、T+=exp(-ω(κ+)ζ/c)exp(iω(t-(n+)ζ/c))等とすればよいのです。ここにζはサンプルの長さです。
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Date: Sun, 1 Feb 2009 12:08:07 +0900 (JST)
AA: 佐藤勝昭先生
Sです。素早い返信ありがとうございます。
わかりました。ではその透過率で早速計算してみたいと思います。
ありがとうございました。
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1145. 磁気インピーダンス(MI)効果

Date: Mon, 02 Feb 2009 23:09:44 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
はじめまして、T**大学電気電子工学専攻修士2年のY*と申します。HPに アップする際は匿名でお願いします。
HPを拝見させていただきメールを送らせて頂いています。
私はいまアモルファス磁性ワイヤに高周波電流を通電した際に起こる磁気イン ピーダンス効果を用いた磁気インピーダンスセンサについて研究しているのです がその原理でよく分からないところがあります。

ある本によると外部磁界によってアモルファス磁性体の磁化が傾き歳差運動を し、その結果円周方向の磁束密度の変化が大きくなり円周方向の透磁率が大きく なりインピーダンスが大きくなる。と書いてあります。
ここでいう”円周方向の透磁率”とは高周波通電電流によって誘起された交流磁界 によってアモルファス磁性体は磁化されるわけですが、そのときのヒステリシス ループにおける透磁率をひとつの透磁率で表したもののことです。
アモルファス磁性体の磁区が外部磁界によって傾き透磁率が変化するというのは なんとなくわかるのですが、円周方向の磁束密度の変化と透磁率の関係がよくわ かりません。なぜ、磁束密度の変化量が大きいと透磁率が大きくなるのでしょうか?
ご教授お願いします。
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Date: Sat, 7 Feb 2009 14:01:16 +0900
A: Y君、佐藤勝昭です。
 修士論文の研究ですよね。M2ということは最終段階でしょうか。
もっと早い段階でご質問のようなことを先輩とか指導教員に聞いておくべき でしたね。今頃になって・・という感じがします。
 MI効果に関しては
ナノテックラボ にわかりやすく解説があります。
インピーダンスは
Z=(a/2√(2ρ))R_DC(1+j)(ωμ(Hex))^(1/2)
となっていて、円周方向の透磁率μ(Hex)が基本的に重要です。
・初磁化状態ではアモルファスワイヤは長さ方向に磁区に分かれ磁区の中で 交互に逆回転の周方向の磁化がありますが、外部磁界が加わると、各磁区の 周方向磁化ベクトルがねじれています。
・長さ方向に高周波電流をながすと、円周方向に高周波の磁界が加わり、ね じれていた磁化ベクトルの向きが円周方向に戻ります。このとき円周方向の 高周波磁束密度が変化します。
・円周方向の高周波透磁率は、円周方向の高周波磁束密度の変化を 円周方向の高周波磁界で割ったものですから、上のプロセスで透磁率が変化 するのです。
 これ以上詳しいことは、修論の指導教員にお尋ね下さい。
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Date: Mon, 09 Feb 2009 16:56:02 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生
お答えいただきありがとうございます。
実は研究室でも私しかMIセンサを扱っていないので指導教員も詳しい原理が分からないんです。
磁界をかけて磁化ベクトルが変化して透磁率が変化するということは分かるんですが

>円周方向の高周波透磁率は、円周方向の高周波磁束密度の変化を
円周方向の高周波磁界で割ったものですから

ここがいまいち分かりませんでした。透磁率はμ=B/Hなので高周波でも磁性体内の磁束密度を磁界の強さで割った値になると思いますが なぜ、磁束密度の"変化"を磁界で割らなければいけないのでしょうか。
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Date: Tue, 10 Feb 2009 21:07:01 +0900
A2: Y君、佐藤勝昭です。
 私も、MI効果の物理的起源に精通しているわけではないので、名古屋大学でMI 効果を研究しておられる内山剛先生にメールで問い合わせていますので、わかり 次第お答えします。
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Date: Wed, 25 Feb 2009 16:56:44 +0900 (JST)
A2':Y君、佐藤勝昭です。
 名大内山剛先生から、学生さんの博士論文の中のバイアス透磁率に関する部分の抜粋 をお送りいただきました。透磁率がバイアス磁界に依存することはStoner-Wolfarthの 時代からわかっていたことのようです。
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Date: Mon, 02 Mar 2009 16:35:24 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
山中です。わざわざ、名古屋大学内山先生にご相談してくださりありがとうございます。
これから頂いた論文の抜粋を読んでみます。
お忙しい中、私の質問に答えていただき、ありがとうございました。
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1146. フラーレンポリマーのバンドギャップ

Date: Fri, 6 Feb 2009 14:43:18 +0900 (JST)
Q: はじめまして。佐藤先生のページを拝見しました。
私はC*大学 修士1年のN*と申します。Webでは匿名でお願いします。
現在、有機物をトランジスタや太陽電池、センサーやスイッチング素子などのデバイスへ応用しようと研究しています。
この度フラーレンC60を用いてデバイス構造を作製しようと考えていますが、その前にC60自体の知識が必要になります。
特にC60薄膜の電気的、光学的特性、電子状態の理解が重要となりますので、C60の文献を読んでいます。
そこで気になる点がひとつありました。C60薄膜に光照射すると光化学重合(ポリマー化)が起こります。
この光重合化したC60薄膜の発光スペクトルを測定すると、光重合前に比べ低エネルギー側へシフトすると書いてあるのですが、 その理由が分かりません。ポリマー化したC60も興味深いので、この先研究していきたいと思います。
宜しければ回答のほどよろしくお願いします。
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Date: Sat, 7 Feb 2009 14:46:29 +0900
A: N君、佐藤勝昭です。
 私は、フラーレンポリマーの専門家ではないので、正しいお答えができるかどうかわかりませんが、一般論でお答えします。
一般に、低分子が重合して高分子(ポリマー)になりますと、共有結合ができます。電子軌道はC60に局在した分子軌道から 変化して、非局在化した電子軌道になります。これによって、電子軌道同士の重なりが起き、パウリの排他律によって、 同じ軌道には2個の電子しか入れませんから、重なり合った電子軌道は僅かずつ形を変えて同じ軌道に入らないように調整 が起きます。この結果,とり得るエネルギーは幅をもったものになってきます。このエネルギーの広がりをエネルギー帯 またはバンドと呼びます。このため、HOMO-LUMO間のギャップが小さくなり狭いバンドギャップになりましょう。
 フラーレン、フラーレンポリマーの電子構造については、
東北大金研岩佐研のホームページを参考にしてください。
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Date: Wed, 11 Feb 2009 18:23:53 +0900 (JST)
佐藤先生、Nです。
回答していただき、ありがとうございます。非常に参考になりました。自分でもフラーレンや電子状態について今後も勉強していきたいと思います。
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1147. 軟鋼の表面張力

Date: Mon, 9 Feb 2009 13:41:26 +0900
Q: 初めてmailさせていただきます。
私はK*社のK***と申します。(もしWebで公開する場合には匿名でお願い致します)
質問なのですが、軟鋼の表面張力を教えてください。
当然、液体状態ですが、温度により違いがあるのでしょうか?(融点直上、融点+α・・・)
軟鋼といっても各種ありますが、材質の成分も大きく影響するものなのでしょうか?
よろしくお願い致します。
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Date: Mon, 9 Feb 2009 14:51:01 +0900 (JST)
A: K様、佐藤勝昭です。
 私は金属工学の専門家ではありませんので、適切なお答えができるか自信がありませ んが、手元にある資料「日本金属学会編:金属データブック」の範囲でお答えします。
 この資料のp16に純鉄の表面張力の値γ0と温度係数dγ/dtが出ています。
これによれば、T0=1536℃においてγ0=1872[mN/m], dγ/dT=-.0.49[mN/m・K]となって おり、任意の温度T「℃]における表面張力γは、γ=γ0+(T-T0)(dγ/dT)で与えられます。
 軟鋼というのは、炭素含有量がが0.2%以下の鋼です。同じ資料のp71に元素添加による 表面張力の変化が図に示されており、ほとんどの場合添加元素とともに急激に表面張力が低下しす る様子が載っていますが、炭素に関してはあまり大きな変化がないようです。
従って軟鋼の場合、純鉄の値を使っておいてもよいのではないでしょうか。
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1148. 磁壁のピニング効果

Date: Mon, 9 Feb 2009 20:09:19 +0900
Q: 私、東京農工大学M1の長江と申します。
学部のときは佐藤先生の物性工学概論を受けさせていただきまして、分かりやすかった講義で大変ありがとうございました。
今回、磁性粒子の粒径と保磁力の関係について調べていて分からないことがあったので佐藤先生のHPを拝見させていただきました。
質問内容ですが、ピニング効果とは一体、どのような効果なのですか?
また、磁壁の移動とそのピニング効果は何か関係があるのですか?
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Date: Tue, 10 Feb 2009 01:09:09 +0900
A: 長江君、佐藤勝昭です。
 お久しぶりです。
磁化反転は、磁化の回転によっておきる場合と、磁壁移動でおきる場合があります。
磁性粒子のサイズが静磁特性長より小さいとその磁気構造は磁区にわかれず単磁区になります。
このときの保磁力Hcは、磁気異方性定数をKu、磁化をMsとすると、Hc=2Ku/Msで与えられます。
一方、いくつかの磁区に分かれる場合ははじめに磁壁移動が起き、最終段階で磁化回転がおきて全体の磁化反転が起きます。
 強い磁界を加えて飽和磁化状態にしたあと、磁界を減らしていくと、逆向きの微小磁区が発生します。これを、結晶成長のアナ ロジーから核発生(nucleation)と言います。さらに磁界を下げると、磁壁が動くことによって、逆磁区の面積が広がります。磁 界を0にしても、逆磁区の面積はもとの磁区の面積には届かないので、残留磁化が生じます。さらに逆向きに磁界を加えると、磁 壁が移動し互いに逆向きの磁区の磁化が打ち消し合います。このときの磁界が保磁力です。
 もし、核発生した微小磁区の磁壁が、どこかに引っかかって動けないとしますと、逆向き磁区は広がらないので、磁化反転しに くくなり永久磁石になります。これをピン止め(pinning)効果といいます。ネオジム磁石は、ピン止めでできた永久磁石と言ってもよいでし ょう。
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Date: Tue, 10 Feb 2009 23:20:03 +0900
AA; 先日、質問させていただいた長江です。
丁寧に解説していただきどうもありがとうございます。参考書や様々なHPで探しても分かりやすく説明されたものが無かったのでとても助かりました。
今後また別の質問をする機会があるかもしれないのでその時はまたよろしくお願いします。
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Date: Tue, 10 Feb 2009 23:39:16 +0900
A2: 長江君、佐藤勝昭です。
 磁区などを考えるときは、
近角著「強磁性体の物理」(裳華房)
小林著「したしむ磁性」(朝倉書店)
高梨著「磁気工学入門」(コロナ社)
佐藤編著「応用物性」(オーム社)第5章
などが参考になります。
図書館で借りてご覧なさい。
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1149. Mn5Ge3の選択エッチング

Date: Tue, 10 Feb 2009 14:54:41 +0900
Q:佐藤勝昭様、はじめまして
D*大学大学院修士1年W*です。(web掲載の際は匿名でお願いします)
佐藤先生のHPをたびたび拝見させていただいております。
ただ今私は、Mn5Ge3/Ge磁性金属ー半導体の磁性および電気特性の評価を 研究していまして、Mn5Ge3の選択エッチングをしたいのですが、溶液がわかりません。
お手数お掛けしますが、もしご存じでしたら、ご回答のほどよろしくお願いいたします。
失礼いたします。
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Date: Tue, 10 Feb 2009 16:41:54 +0900 (JST)
A: W君、佐藤勝昭です。
 難しい質問です。選択エッチングなどというのはデバイス構造を考えて初めて必要になる技術です。
Mn5Ge3は、電子デバイス材料としては、ほとんど研究されていない物質です。最近になり、 スピン偏極度が大きいというのでMTJの電極として注目されるようになりました。
しかし、そのプロセスについては、ほとんど報告がありません。GeについてはH2O2系の エッチャントが使われますので、Mn5Ge3を選択エッチする場合は、H2O2系を避けなけれ ばならないでしょう。印象としては、GeのほうがMn5Ge3よりエッチングされやすそうな ので、ウェットエッチングは難しそうです。Arイオンミリングなど物理的な方法をとっ た方がよいでしょうね。

Mn5Ge3/Ge(111)エピ成長やMn5Ge3/Ge(001)のアイランド成長については文献があるので 、それらを丹念にチェックするとヒントが得られるかもしれません。

R. P. Panguluri et al., Spin polarization and electronic structure of ferroma gnetic Mn5Ge3 epilayers, phys. stat. solidi (b). 242 [8] (2005) R67 - R69

C.Bihler et al., Structural and magnetic properties of Mn5Ge3 clusters in a d ilute magnetic germanium matrix, Applied Physics Letters, 88, [11] (2006) 1125 06 (3 pages).

H.Kim et al., Epitaxial Mn5Ge3 nano-islands on a Ge(001) surface, Nanotechnology 19 (2008) 025707 (4pp)

S. Ahlers et al., AbstreiterMagnetic and structural properties of GexMn1-x fi lms: Precipitation of intermetallic nanomagnets, Phys. Rev. B 74,(2006) 214411 [8 pages]

S. Olive-Mendez, Epitaxial growth of Mn5Ge3/Ge(111) heterostructures for spin injection, Thin Solid Films, 517 [1] (2008), 191-196
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Date: Tue, 10 Feb 2009 19:54:50 +0900
AA: 佐藤勝昭様
回答ありがとうございます。
教えていただいた文献を確認し、再考しようと思います。
ありがとうございました。
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1150. 吸収が強いときの反射率

Date: Wed, 11 Feb 2009 18:12:08 +0900 (JST)
Q: 佐藤勝昭様
はじめてメールいたします。C*社のH*と申します。
掲載時は匿名でお願い致します。
なんでもQ&Aには以前よりお世話になっておりました。
早速ですが、
光が空気層からある物質へ垂直入射した場合の、反射率の式を 見ていて疑問がでてきましたので質問させてください。
  R={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2} 
の式で計算すると
nを固定した場合、消光係数κが大きいほうが、反射率が高く なるという結果になります、このことが今ひとつ理解できませ ん。
(反射する対象となる膜に吸収されやすいほうが、反射も起き 難いようなイメージがあります。)
消光係数kは対象となる膜に光が進入した場合の、膜への吸収 されやすさを意味していると思いますが、 反射を考えた場合には、消光係数はどういった物理的な意味を もつのでしょうか?
とんちんかんな質問とは思いますが、ご回答をお願いいたしま す。
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Date: Wed, 11 Feb 2009 19:56:30 +0900
A: H様、佐藤勝昭です。
 あなたのいうとおり、消光係数κが無限大になれば、反射率は100%となります。
実際、金属では、nに比べκが遙かに大きいのでε'=n^2-κ^2は負となり、非常に高い反射率を示します。
このことを理解するのに、電気回路の線路(分布定数回路)のアナロジーを使って、次のように考えられます。
=================================================================================
一般に電磁波が特性インピーダンスZ0の線路から特性インピーダンスZの負荷へ入射したとき、
振幅反射率rは|r|=|(Z-Z0)/(Z+Z0)|であらわすことができます。
インピーダンスマッチングがとられていると、Z=Z0ですから、r=0となり反射はありません。
もし、線路を短絡したとき、負荷のインピーダンスがゼロ(Z=0)なら振幅反射率は|r|=|(-Z0/Z0)|=1となり100%反射します。
逆に、線路を開放したとき、負荷のインピーダンスが線路インピーダンスに比べ十分大きいと|r|→|(Z/Z)|=1となりやはり100%反 射します。
====================================================================================
光(電磁波)に対して非磁性媒体は単位長さあたりの容量がε、インダクタンスがμ0の分布定数回路と見なすことができます。
特性インピーダンスはZ=(μ0/ε)^(1/2)で表されます。真空の特性インピーダンスはZ0=(μ0/ε0)^(1/2)です。
従って、振幅反射率は|r|=|(ε0^(1/2)-ε^(1/2))/(ε0^(1/2)+ε^(1/2))となります。
屈折率がnで消光係数がκならば誘電率はε=ε0(n+iκ)^2となりますから、振幅反射率は
 |r|=|(n+iκ-1)/(n+iκ+1)|なので、光強度の反射率はR=|r|^2={(n-1)^2+κ^2}/{(n+1)^2+κ^2}となり
反射の公式が導かれました。従って、上述の線路インピーダンスの考えがよいことがわかりますね。
κ→∞だとε'=(n^2-κ^2)ε0→-∞、ε"=2nκε0→∞なので、|Z|=|(μ0/ε)^(1/2)|→0となり、線路を短絡終端した場合に相当 するのです。
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Date: Wed, 11 Feb 2009 22:10:41 +0900 (JST)
Q2: 佐藤先生、Hです。
早速のご回答誠にありがとうございます。
電磁気学の勉強不足を痛感している次第です。
ご回答いただいたなかで、以下の文が理解できていません。
---------------
κ→∞だとε'=(n^2-κ^2)ε0→-∞、ε"=2nκε0→∞なので
、|Z|=|(μ0/ε)^(1/2)|→0
---------------
文中のε'およびε"はどこからでてくる値でしょうか?

誠に恐縮ですが、ご教授のほど宜しくお願いいたします。
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Date: Wed, 11 Feb 2009 23:51:22 +0900
A2: H様、佐藤勝昭です。
 複素誘電率εは実数部ε'と虚数部ε"を使って、ε=ε'+iε"と表すことができます。
ε=εrε0 と書くことができます。ここにεrは比誘電率、ε0は真空の誘電率です。
光の電界ベクトルがE=E0 exp{-iω(t-Nx/c)}で表される光が比誘電率εrをもつ等方性媒体中 をx方向に進むとすると、マクスウェル方程式を解くことによって
複素屈折率N=n+iκの固有値は
  N^2=εr
と表されます。N=n+iκ、εr=εr'+iεr"を代入して、実数部同士、虚数部同士を比較することによって
  εr'=n^2-κ^2, εr"=2nκ
が得られます。従って、ε'=(n^2-κ^2)ε0, ε"=2nκε0 となります。
(詳細は、
機能材料のための量子工学(講談社)の第4章(佐藤執筆部分)の4.1節をご参照下さい。)
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Date: Sat, 14 Feb 2009 21:25:55 +0900 (JST)
A: 佐藤先生
Hです。
連絡遅くなり申し訳ありません。
丁寧に解説いただきありがとうございます。
教えていただいた本をみて勉強します。
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1151. チタン酸バリウム(BTO)、チタン酸カルシウム(CTO)のバンドギャップ

Date: Thu, 12 Feb 2009 12:30:18 +0900 (JST)
Q: n*大学4年 S*(公開時匿名希望)と申します。
一度、質問させていただきました。現在抱えている問題についてのご質問をさせていただきたく、メールさせて頂きます。
BTO,CTOが間接遷移か直接遷移か?誰の手法によってエネルギーギャップが見積もられたのかががいまいち検索などしても見つからないのでよろしければ教えてください。
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Date: Thu, 12 Feb 2009 13:35:22 +0900 (JST)
A: S君、佐藤勝昭です。
 BTO,CTOというのは、それぞれ、BaTiO3, CaTiO3の略称ですね。
私はSrTiO3については、研究したことがあり(K. Sato and T. Ishibashi: Magneto-opt ical and Reflectivity Studies in SrTiO3; Proc. Magneto-Optical Recording Inter national Symposium 2002, Benodet, France, May 6-9, 2002, Trans. Magn. Soc. Jpn . 2 [4] (2002) 167-170. )、直接遷移であると思っていますが、BaTiO3, CaTiO3につ いては不勉強で、実験結果を知りません。第1原理バンド計算によると、伝導帯の底は BaTiO3においてはM点にあり、CaTiO3においては、R点にあります。また価電子帯の頂は いずれの物質でもΓ点です。従って、両者ともに間接バンドギャップです。
======================================================================
理論計算の結果は下記を参照してください。
Hong-Jian Feng, Fa-Min Liu: Electronic structure of barium titanate: an abini tio DFT study
F M Michel-Calendini et al: Band structure and optical properties of tetragonal BaTiO3, J. Phys. C: Solid State Phys. 6 (1973) 1709-1722.
S.Saha, T.P.Sinha, A. Mookerjee; First principles study of electronic structure and optical properties of CaTiO3; The European physical journal. B, Condense d matter physics 18 [2] (2000) 207-214
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1152. シリコン/アルミニウムのI-V特性

Date: Tue, 17 Feb 2009 18:03:33 +0900
Q: 佐藤先生
S*大学のU*と申します。(web公開時は匿名でお願いします)
以前にも質問したときは大変お世話になりました。研究を進める中、初歩的な疑問が生まれ、文献などを調べてもほとんど載っていなかったので質問させていただきます。
Siと電極に使っているAlは仕事関数の関係を考えるとショットキー接触になってしまうのに、なぜI-V特性の波形はオーミック性(I-V特性がほぼ直線)が取れるのでしょうか??ショットキー接触となっているので正常な抵抗測定がなされていると言えるのでしょうか?
もちろんN形SiとP型Siでは仕事関数は違います。Alの仕事関数は4.13eVです。それに対してドーピング濃度に対して多少異なりますが、N形Siは4.15eVでP型Siは5.05eV程度です。AlとSiがオーミック接触になる条件はN形とP形に対して以下のとおりです。
N型   Alの仕事関数<N型Siの仕事関数
P型   Alの仕事関数>P型Siの仕事関数
Alの仕事関数は4.13eV、N形Siは4.15eV、そしてP型Siは5.05eVです。
P型Siに対してAlはオーミック接触になる条件を満たしておらず、ショットキー接触になります。質問を繰り返しますが、なぜI-V特性の波形はオーミック性が取れるのでしょうか??
また、P型SiでMOS構造のサンプルの絶縁膜容量を測定する際に、P型Siの裏面にコンタクトのためにAl電極をつけたことがあります。P型SiとAlの接触は、ショットキー接触になってしまうので、ショットキー接触による空乏層容量が発生してしまいます。すなわち測定されるC-Vカーブは絶縁膜容量の他にこの空乏層容量の情報も含むのではないかと考えられます。こちらの疑問に対しても宜しくお願い致します。
ご多忙のところ、誠に恐れ入りますが、ご教授頂けますと幸いです。
宜しくお願い申し上げます。
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Date: Tue, 17 Feb 2009 21:06:51 +0900 (JST)
A1: U君、佐藤勝昭です。
 ご質問の趣旨がよくわかりませんが、p型シリコンにアルミニウム電極を付けると、 CV測定では空乏層が見られショットキー接合になっているのに、なぜI-Vではオー ム性接触のように見えるのかということでしょうか?
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Date: Wed, 18 Feb 2009 00:20:36 +0900
Q2: 佐藤先生、Uです。
失礼しました。文章表現がよくなかったので質問をまとめます。
1、p型シリコンにアルミ電極を付けると、ショットキー接合になっているのに、なぜI-Vではオーミック性接触のように見えるのか?
2、MOS構造(Al電極/SiO2/P型Si/Al電極)のC-Vを測定は、SiO2の容量とSiO2/P型Si界面にできる空乏層の容量を見るものです。
しかしショットキー接合となっているP型シリコンとアルミ電極の界面に空乏層ができると考えられます。この空乏層の容量がC-V測定を行った際のC-V波形に影響を与える可能性はないのか?
以上の二つが質問内容です。
宜しくお願い致します。
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Date: Wed, 18 Feb 2009 09:46:07 +0900
A2: U君、佐藤勝昭です。
1.I-Vがオーミックということは、ショットキー接合になっていないということだと思います。
 考えられるのは、
(1)アルミニウムを付ける前のシリコン表面がクリーンでなく、界面準位が できてフェルミ準位がピン留めされ、P型Siの仕事関数が小さくなって
  Alの仕事関数>P型Siの仕事関数
の条件が成立したか、
(2)アルミニウムの拡散によって、縮退したp+層ができ、あたかも金属のようになったか
のどちらかではないかと思います。

2.Al電極/SiO2/P型Si/Al電極のC-Vに与える空乏層の影響ですが、空乏層は 薄いので大部分の電界はSiO2の部分に加わり、あったとしても無視できるくらい 小さいでしょう。また、1で述べたようなことが起きておれば、空乏層はできて おらず、接合の効果は無視できるのではないでしょうか。
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Date: Wed, 18 Feb 2009 18:18:39 +0900
Q3: 佐藤先生、Uです。
ご回答ありがとうございます。
「アルミニウムの拡散によって、縮退したp+層ができ、あたかも金属のようになる」ようなことは 蒸着法やスパッタ法で形成したアルミ電極ではよく起こることなのでしょうか?
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Date: Thu, 19 Feb 2009 00:42:29 +0900
A3: U君、佐藤勝昭です。
 1000℃におけるシリコン中におけるホウ素の拡散係数は10^-14[cm^2/s]であるのに対し、アルミニウムの拡散係数は10^-13[cm^ 2/s]と1桁も大きいのです。従って、何らかのデバイス作成プロセスで800-1000℃になっている場合、アルミニウムはシリコンに 拡散してドープされます。ただし、温度を上げなければ、拡散はほとんど起きません。
 なお、配線にアルミニウムを用いた場合、プロセスを通すときに拡散することを防ぐため、固溶限いっぱいのシリコンをドープ したアルミニウムを拡散バリアとして用いているそうです。
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Date: Thu, 19 Feb 2009 01:44:23 +0900
佐藤先生、Uです。
アルミ電極をつけるときは拡散にも注意しているのですね。
大変勉強になりました。御回答ありがとうございます。
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1153. ダイヤモンド加熱ATRの高温特性

Date: Thu, 5 Mar 2009 18:31:53 +0900
Q1: HPを見て質問させていただきます。
S*社のA*と申します。(匿名希望)
FT-IRの加熱ATR(ダイヤモンド結晶)を使用していて、いくつかわからないことがあるので教えていただきたく思います。
(1)2000cm-1台にダイヤモンド結晶自体の赤外吸収バンドがあるが、温度上昇とともにこの吸収が徐々に強くなっていく(室温での参照光比)のはなぜか?
(2)ダイヤモンド上に試料をのせて赤外吸収スペクトルを測定すると、温度上昇とともに試料の吸収強度が低下(同温度での参照光比)するのはなぜか?
(3)(2)の吸収強度低下の度合いが試料のガラス転移温度前後で大きく変わる(低温側で小さく高温側で大きく変化する)のはなぜか?(熱膨張と関係あり?)
(4)150℃以上になると上記以外の部分も全体的に(参照光自体の)透過光強度が低下するが、なぜか?
(5)もし上記内容に関する説明がのっている本や論文などをご存知でしたらご紹介いただきたく思います。

お忙しいとは思いますがご回答いただければ幸いです。
まことに勝手ながらよろしくお願いいたします。
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Date: Thu, 12 Mar 2009 20:14:44 +0900 (JST)
A: A様、佐藤勝昭です。
 メールに件名が書いてなかったので、ジャンクメールに入っていました。ジャンクメールを整 理していて見つけました。返信が遅くなりました。
 私は、ダイヤモンド製の加熱ATRを用いたことがなく、また、ご質問には測定試料 が書いてないので、きちんとしたコメントが出来ませんが、わたしの知識の範囲でお答 えします。
 (1)2000cm-1台にダイヤモンド結晶自体の赤外吸収バンドがあるが、温度上昇ととも にこの吸収が徐々に強くなっていく(室温での参照光比)のはなぜか?
・ダイヤモンドやシリコンのように等極性の物質は光学モードのフォノンとの結合がな いので真性の赤外吸収は一般に弱いはずです。
・この吸収は2フォノン吸収なので光学フォノンと結合するようです。このため、高温で吸収が増加したようです。

 (2)ダイヤモンド上に試料をのせて赤外吸収スペクトルを測定すると、温度上昇と ともに試料の吸収強度が低下(同温度での参照光比)するのはなぜか?
・試料は何なのですか?もし極性のある試料であれば赤外光は光学フォノンとカップル します。温度が低いと試料は赤外光を吸収してフォノンを励起します。高温ではフォノ ンがすでに励起されているので、吸収が減ったのではないでしょうか。
・また、試料の放射率が温度上昇とともにも高くなり(赤外発光)このため、見かけ上 吸収が減ったように見える可能性があります。

 (3)(2)の吸収強度低下の度合いが試料のガラス転移温度前後で大きく変わる( 低温側で小さく高温側で大きく変化する)のはなぜか?(熱膨張と関係あり?)
・赤外吸収は中心対称のある物質では弱くなります。低温で中心対称がない物質では赤 外吸収がはっきりと見えていますが、ガラス化すると球対称になるため、吸収は小さく なるのではないでしょうか。

 (4)150℃以上になると上記以外の部分も全体的に(参照光自体の)透過光強度が低 下するが、なぜか?
・温度が高くなると試料からの赤外線放射(つまり赤外線の発光)が増加して、吸収をマスクしてしまいます。

 (5)もし上記内容に関する説明がのっている本や論文などをご存知でしたらご紹介 いただきたく思います。
・ダイヤモンド加熱ATRを売っている会社の技術関係者に聞かれてはいかがでしょうか。
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Date: Thu, 12 Mar 2009 23:53:37 +0900
AA1:佐藤勝昭様、
ご回答ありがとうございます。
また、うっかり件名を入れずに送信してしまい、大変失礼いたしました。
内容に関してはなんとなくイメージがつかめました。
細かいところはメーカーに問い合わせてみたいと思います。
お忙しいところありがとうございました。
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Date: Fri, 13 Mar 2009 23:30:38 +0900
A2: A様、佐藤勝昭です。
文献検索していたら、ダイヤモンドの赤外吸収の高温での振る舞いは
T.P. Mollart, K.L. Lewis: The Infrared Optical Properties of CVD Diamond at Elevated Temperatures;
physica status solidi (a)Volume 186 Issue 2, Pages 309 - 318
に記載されているようです。論文要旨は下記の通りです。
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ダイヤモンドは、低吸光度だけでなく、極限の機械的・熱的性質をもつため、優秀な遠赤外(8-14μm)窓材応用に有無を言わせぬ 強さをもつ。CVDダイヤモンドの高温での光学的性質は極限応用の多くにおいてクリティカルである。  この研究では、多様な光学特性を持つダイヤモンドを研磨した試料を550℃までの高温に加熱して、回折格子型赤外分光光度計 を用いた透過測定を通じて吸収係数を評価した。CVDダイヤモンドの5000-200 cm-1(2-50μm)領域における高温透過スペクトル が示される。近赤外の4200 cm-1 (2.5μm)における透過率は、温度上昇によってわずかに影響を受けるだけであるが、3フォノン、 2フォノン領域では予想通りの温度依存性を示した。遠赤外においては、1250 cm-1 (8μm)付近に中心を持つブロードなピークの 透過率が減少した。これはテストしたすべての試料に特徴的な振る舞いであった。表面散乱がないと仮定し各温度における屈折率 を計算することによって各温度における反射率を推定し、吸収スペクトルの温度依存性が求められた。放射率測定結果や光熱偏向 法の実験結果は、上記測定とコンシステントであった。1000cm-1 (10μm)における吸収係数の温度変化を予測する実験式が提示 される。
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私は、この論文を手元に持っていないのですが、取り寄せてお読みになると参考になるかも知れません。
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Date: Sat, 14 Mar 2009 09:44:19 +0900
AA2: 佐藤勝昭様
わざわざ調べてくださってありがとうございます。
とても面白そうな論文なので、ぜひ読んでみたいと思います。
吸収係数の温度変化を予測する実験式というのがとても興味深いです。
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Date : Wed, 18 Mar 2009 10:04:55 +0900 (JST)
A3: A様、佐藤勝昭です。
 論文を読みましたが、
詳細な赤外吸収の温度依存性データがでていましたが、2000cm-1の温度変 化の原因は書かれていないようです。著者は遠赤外の500~1250cm-1付近の吸収に強い温度依存性があることに着目して予測する式を提案しているようです。
いずれにせよ、ダイヤモンドのATRを使って温度変化をとるのは要注意ということでしょうね。
また、この論文にはemissivityについても詳しく出ているので参考にされるとよいでしょう。
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1154. プリズムから金への斜め入射の反射

Date: Wed, 15 Apr 2009 22:44:09 +0900
Q: M*高専専攻科2年のK*と申します。(出来れば匿名でお願い致します)
早速なのですが,表面プラズモン共鳴について質問がございます。
現在,金薄膜をプリズム上に形成した状態での表面プラズモン共鳴吸収の 角度‐反射率特性を実験にて調べたのですが,今後は,プリズムと金との間に クロム等のガラスとの密着性の高い金属を挟んで実験しようと思っております。
そこで,順序がおかしいのは承知なのですが,シミュレーションで角度‐反射率特性を 算出,グラフ化して,実験値と比較し,より深みのある論文を作りたいと考えております。

いくつか論文や本を読んでフレネルの多層膜の式を用いて,まずは金一層,つまりプリズム‐金‐大気(真空)の場合から挑戦しようと思ったのですが,プリズム層(n=1.514)から金属層(n=0.16)への入射角θ2が6.06度以上で全反射してしまい存在しなくなってしまいます。
これでは多層膜の式が解けないのでθ2の考え方が間違ってるのではないかと思うのですが,どこが間違っているかご指摘頂けたらと思います。

また,以前の
投稿109では,角度を変更しようとするには,偏光方向を考慮しないといけないので止めたとあったのですが,とても複雑になってしまうのでしょうか?
#176の添付ファイルと109を組み合わせて多層膜でのシミュレーションは不可能でしょうか?

お忙しいところ申し訳ございませんが、ご教授いただけると幸いです。
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Date: Thu, 16 Apr 2009 00:35:19 +0900 (JST)
A1: K君、佐藤勝昭です。
 メールありがとう。屈折率の大きな媒体から屈折率の小さな媒体に光を斜め入射する と当然ながら全反射します。しかし、界面の外には伝わらない波(エバネッセント波) が光の波長程度しみ出して減衰しています。このエバネッセント波と金の中の電子の疎 密波(表面プラズモン)とが結合して表面プラズモンポラリトンになっているのです。
なんでもQ&A#109は、空気からシリコンへの斜め入射なのでエバネッセント波を扱うようにはなっていません。
表面プラズモンポラリトンの詳細については、福井萬寿夫・大津元一著「光ナノテクノロジーの基礎」などをご参照下さい。
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Date: Fri, 17 Apr 2009 19:20:09 +0900
A2: K君、佐藤勝昭です。前の回答を補足します。
 #109は真空中からシリコンへの斜め入射反射率の計算式です。
プリズムのガラスから金の膜への斜め入射を扱うにはもとの式に帰らな ければなりません。屈折率N_1の媒質から屈折率N_2の媒質へ斜め入射し たときの反射率については、山田・佐藤他著「機能性材料のための量子 工学」のp151-152に書きましたので、再録します。
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入射光、反射光、屈折光の波動ベクトルをそれぞれK_0、K_1、K_2と すると各媒質において,波動ベクトルの大きさに成り立つ次の関係式を 得る。
K_0=K_1=(ω/c)(ε_1)^1/2=(ω/c)N_1
K_2=(ω/c)(ε_2)^1/2 =(ω/c)N_2
                       (4.1.21)
界面での電界成分と磁界成分の連続性から、
ψ_1=ψ_0                (4.1.22)
sinψ_2/sinψ_0=K_0/K_2=N_1/N_2    (4.1.23)
を得る。

(中略)

<一般の入射角の場合>
添付図において、入射面(入射光と法線を含む面)をxzとしたとき、 この面に垂直な電界ベクトルの成分(y成分)をE_sと垂直を意味する ドイツ語senkrechtの頭文字のsをつけて表し、入射面内の成分をE_p とp(parallel)をつけて表す。入射側には0をつけ、反射光には1、屈 折光には2をつける。入射光と反射光の電界の比を複素振幅反射率また はフレネル係数という。p偏光、s偏光に対するフレネル係数r_p、 r_sは、斜め入射の場合異なった値をもち、それぞれ次式で与えられる。

r_p=E_1p/E_0p=(K_2cosψ_0-K_0cosψ_2)/(K_2cosψ_0+K_0cosψ_2)=tan(ψ_0-ψ_2)/tan(ψ_0+ψ_2)
r_s=E_1s/E_0s=(K_0cosψ_0-K_2cosψ_2)/(K_0cosψ_0+K_2cosψ_2)=-sin(ψ_0-ψ_2)/sin(ψ_0+ψ_2)
                        (4.1.25)
となる。ここに、r_p=|r_p|e~(iδ_p)、rs=|rs|e^(iδ_s)
である。
 (4.1.23)式を利用してψ_2をψ0で表すと
sinψ_2=K_0sinψ_0/K_2
cosψ_2=(1-sin^2ψ_2)^(1/2)={1-(K_0sinψ_0/K_2)^2}^(1/2)
となるので、(4.1.25)式は、

r_p={(K_2)^2cosψ_0-K_0((K_2)^2-(K_0)~2sin^2ψ_0)^(1/2)}/{(K_2)^2cosψ_0+K_0((K_2)^2-(K_0)^2sin^2ψ_0 )^(1/2)}
rs={K_0cosψ_0-((K_2)^2-(K_0)^2sin^2ψ_0 )^(1/2)}/ {K_0cosψ_0+((K_2)^2-(K_0)^2sin^2ψ_0 )^(1/2)}
                          (4.1.26)
が得られる。
K_0, K_2に(4.1.21)を使って
K_0=(ω/c)N_1、K_2 =(ω/c)N_2
を代入すれば、複素屈折率Nによる式になります。
プリズムのSiO2のNについては、実数部だけでよいと思いますが、 金のNについては、実数部(屈折率n)・虚数部(消光係数κ)ともに 考慮しなければなりません。

金/ガラスにおけるp偏光・s偏光の反射の角度依存性を計算してみました。
ここでは、ガラスの屈折率は一定(=1.514)としています。
たしかに、8°の入射を考えますと、波長690nmにおいて、s偏光の反射率は100%となってしまいますが、p偏光の反射率は有限の値94%となっています。
複素反射率で見ますと
rp=0.700565649466593+0.672602588090427i
rs=0.983413106871728-0.181379881003642i
となっています。
rsにも大きな虚数部がありますから、光は侵入していることになります。

界面を透過してくる透過率をtとすると、
t_p=1-r_p
t_s=1-r_s を使って計算できます。
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Date: Fri, 17 Apr 2009 20:39:55 +0900
AA: 親切丁寧なご説明ありがとうございます。
せっかくここまで教えていただいたので,一生懸命理解して より高度な質問が出来るくらいになろうと思います。
本当にありがとうございます。
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1155. ダイヤモンドとアルミナの接合

Date: Sun, 10 May 2009 18:18:10 +0900
Q1: 始めまして佐藤先生
S社のMといいます。
佐藤先生の”物性なんでもQ&A”を拝見させていただき、メールをさせていただきました。
現在異種材料の接合で困っています。具体的には微小な(数mm3程度のサイズ)ダイヤモンド とアルミナの接合です。
現状は銀ろうを用いて接合して一部の性能評価を実施しているのですが、将来的には銀ろうの 導電性がネックとなり製品化を阻害してしまうことがわかっています。
そこで結晶構造を持ち、格子数も比較的近いことから直接接合が可能なのではないかと安易に 考えて導電性の材料を介さないで直接接合させる方法を調査・検討してきたのですが、現状見つ かっていません。
理想は直接接合なのですが、非導電性材料(酸化物や水酸化物も含めて)を介在させて接合 させる方法も含めて可能性は無いでしょうか。
お忙しいところ誠に恐縮ですが、ご教授いただけますようよろしくお願い致します。
なお,WEBへアップする際は匿名にてお願い致します。
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Date: Mon, 11 May 2009 13:29:28 +0900 (JST)
A1: M様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございました。
「ダイヤモンドとアルミナの接合」ということですが、「接合」にもいろいろあって、 強度が必要なのか、光学的なつながり、熱的なつながりが必要か、何度で使用するのか など目的がわからないと検討しにくいと思います。たとえば、室温で使うのならエポキ シセメントでもよいわけで、どのような環境下でどのような目的に使おうとしておられ るかについて、お教えいただければ幸いです。
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Date: Mon, 11 May 2009 16:44:28 +0900
佐藤先生、SのMです。
早速の対応をありがとうございます。
仕様条件を提示せず、申し訳ありませんでした。
まず強度についてですが、十数gの繰り返し荷重と、場合によってはこれ以上の衝撃荷重が 印加されることが想定されます。このため、少なくとも素手で壊せない程度の強度が必要です。 また使用温度については、数百℃程度を想定しています。
さらに”アルミナ”と指定しましたが、じゅんぶんな強度と絶縁性と比較的高い熱抵抗 を有する材料であれば代替は可能と考えます。
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Date: Mon, 11 May 2009 18:32:06 +0900 (JST)
A2: M様、佐藤勝昭です。
 ダイヤモンドとアルミナでは、熱膨張係数が違うので、たとえうまく接合できても温 度変化させると接合が破壊するかもしれませんね。
 ダイヤモンドを基板としてシリカ(酸化ケイ素)ガラスを成長すると非常にロバスト な接合ができるということが知られています。ダイヤモンドとシリカなら、熱膨張係数 が近く、シリカは熱伝導率も小さく絶縁性なのでよいかと存じます。
 はじめにダイヤモンドの表面を非常によく清浄化しておけば、SiH4のCVD、あるいはS iO2のスパッタでシリカを堆積することができます。ダイヤモンドに1μmくらい堆積し たシリカ膜と溶融石英の板を溶着またはUV光接着をすれば、お望みの接合ができるので はないかと愚考しますがいかがでしょうか?
 なお、ダイヤモンドへのシリカの堆積方法については
パテントが出ています。
付着力がどれくらいかは、ダイヤモンド表面の清浄度によると思いますが、 数gから十数gなら大丈夫ではないでしょうか
熱的には、溶融石英の軟化点1100℃くらいまでOKでしょう。   
参考
材料熱膨張率(K-1)熱伝導率(W・m-1・K-1)
ダイヤモンド1.0×10-61000
アルミナ10.3 × 10-640
シリカ0.55× 10-61.38
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Date: Mon, 11 May 2009 18:55:01 +0900
AA: 佐藤先生
ありがとうございます。
以前から酸化膜や水酸基などを介在させれば接合できるのではないかと 考えてはいたのですが、あまりに知識が足らず、思考がその先に進まず 恥ずかしい限りです。
是非調査の上、実験評価を実施したいと思います。
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1156. シリコンウェハーの光透過

Date: Sat, 23 May 2009 01:48:32 +0900
Q:こんにちはSuhiです。
このメールはウェッブで見つかったんですが。(物性なんでもQ&A)
よろしければ、シリコンウェハは可視光を透過しないが、赤外光は透過する理由」を教えていただけませんか。
どうもありがとうございました。
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Date: Sat, 23 May 2009 02:33:41 +0900 (JST)
Suhi様、佐藤勝昭です。
 あなたは、日本語が不自由と思われるので英語でお答えします。
Dear Suhi
Generally speaking a semiconductor has an energy band gap between valence ba nd and conduction bands, which is inherent to individual semiconductor. The band gap of silicon is 1.1 eV at room temperature.
If the photon eneergy of the incident light is below the band gap the light is not absorbed by the semiconductor, which means the light trsnmits without absorption, while if the photon energy is above the band gap the light is absorbed. The photon energy of the infrared light with a wavelength longer than 1.13 micrometer is less than the band gap of silicon (1.1eV), and is transmitted without absorption, while the photon energy of visible light (between 1.6 eV and 3.3 eV) is far above the band gap, and absorbed.
For details of the band theory of semiconductors you are recommended to consult with a book titled "Introduction to Solid state Physics" by C. Kittel.
Best regards,
Katsuaki Sato
(一般的に半導体は価電子帯と伝導帯の間にエネルギーバンドギャップを持っています。シリコンのバンドギャップは室温において1.1 eVです。もし入射光の光子エネルギーがバンドギャップより低いと、その光は半導体に吸収されずに透過します。一方、光子エネルギーがバンドギャップより大きいと、光は吸収されます。波長が1.13μmより長い赤外光の光子エネルギーは、シリコンのバンドギャップ(1.1eV)より低いので吸収なしに透過しますが、可視光の光子エネルギー(1.6~3.3eV)はバンドギャップより遙かに高いので吸収されます。
半導体のバンド理論を詳しく知りたいなら、キッテルの固体物理学入門を参考にされることをお勧めします。)
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Date : Sun, 24 May 2009 22:37:30 +0900
AA: 佐藤勝昭 様へ
分かりやすく英語で説明していただいて、どうもありがとうございました。
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1157. 電気を流しにくい物質

Date : Wed, 27 May 2009 00:49:31 +0900
Q: 名前はS*と言います。所属はT**大学工学部1年です。
質問内容ですが、電気を流れにくくするために材料レベルでどんな工夫をすればいいか誘電率と移動度の観点から次の3つについて教えていただきたいです。
(1)誘電率の小さい材料が選ばれる理由
(2)移動度が小さい材料が選ばれる理由
(3)エネルギーギャップが大きい材料が選ばれる理由
質問自体にわかりにくい部分があったら申し訳ないですが、よろしくお願いします。
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Date : Wed, 27 May 2009 13:09:37 +0900 (JST)
A: S君、佐藤勝昭です。
 工学部1年生ですか?固体物理や電気電子工学の基礎知識はどのくらいあるのでしょ うか?一応基礎知識があるものとして説明しますが、もしわからなかったら再質問してください。

・電流を流しにくくする原因
(1)誘電率の小さい材料が選ばれる理由
 直流における誘電率はバンドギャップの2乗に反比例します。低誘電率はバンドギャ ップが大きいことを意味します。バンドギャップが大きい物質は一般にキャリア密度が 低いので電流が高抵抗率になります。
 
(2)移動度が小さい材料が選ばれる理由
 電気伝導率σは、キャリア密度Nと移動度μとすると、σ=Neμで表されます。移動度 というのは、単位電界を加えたときキャリアがどれくらいの速度になるかの尺度です。 伝導機構にはバンド内のドリフトとサイト間ホッピング伝導とがあります。普通の半導 体はバンド伝導です。シリコンの移動度は1000cm^2/Vsの程度、一方、一般にホッピン グでは移動度が低く、1cm^2/Vs以下です。

(3)エネルギーギャップが大きい材料が選ばれる理由
 真性半導体のキャリア密度は、N=N0 exp(-Eg/2kT) で表されます。Egが大きいとNが 小さくなることはお分かりでしょう?

半導体のバンド構造と電気伝導性については、佐藤・越田「応用電子物性工学」(コロ ナ社1989)を読んで下さい。第2章の抜粋pdfを
Webからダウンロードして下さい。
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Date : Thu, 28 May 2009 16:30:34 +0900
AA: 佐藤勝昭様
お忙しい中丁寧に解説していただき、ありがとうございました。
とても参考になりました。
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1158. 鉛フリーはんだAuSn4のヤング率

Date: Thu, 28 May 2009 16:01:10 +0900
Q: 佐藤 先生
私はH**社のW*と申します。 HDDに組み込まれる磁気ヘッドを製造しております。

Sn3Ag0.5Cuの鉛フリー半田を用い接合を行なっています。半田接合部の破断応力の解析を行なおうとしているのですがAuとSnの合金であるAuSn4のヤング率の値が分かりません。教えていただけると幸いです。
また値が分からない場合定性的にSnのヤング率に比べAuSn4のヤング率は高いのでしょうか、 あるいは低いのでしょうか? お教えください。
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Date: Thu, 28 May 2009 17:59:37 +0900 (JST)
A: W様、佐藤勝昭です。
 申し訳ありませんが、私は、金属工学の専門家ではないので、手元に関係するデータを持ち合わせません。
ただ、
マイクロインデントで測定したデータによると、 AuSn4のIndentation Modulus E/(1-ν^2)=43±4 GPaとなっています。(νはポワソン比)
また、私の手元にないのですが、
D. G. Ivey:Microstructural characterization of Au/Sn solder for packaging in optoelectronic applications;
Micron Volume 29, Issue 4, August 1998, Pages 281-287
には、Au/Sn半田のヤング率も書かれているようですので取り寄せて調べてください。
因みにSnのヤング率は49.9 GPaです。
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Date: Thu, 28 May 2009 18:11:24 +0900
AA: 佐藤 先生
御回答有難うございます。 早速お教えいただいたところを検索し調べます。
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Date: Fri, 29 May 2009 12:44:26 +0900
A2: W様、佐藤勝昭です。
 本日、農工大にいったので図書館で調べた結果、ご紹介した論文には載っておらず、 M.T. SHEEN Y.H. HO C.L. WANG K.C. HSIEH and W.H. CHENG:
The Joint Strength and Microstructure of Fluxless Au/Sn Solders in InP-Based Laser Diode Packages;
Journal of ELECTRONIC MATERIALS, Vol. 34, No. 10, 2005
のTable IIにAu/Snハンダのヤング率として59 GPaという値が載っていま した。ご参考まで。
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Date: Fri, 29 May 2009 13:17:40 +0900
佐藤 先生
貴重な追加情報の提供有難うございました。
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1159. 反転対称のある系の赤外吸収とラマン散乱

Date : Fri, 26 Jun 2009 14:19:19 +0900
Q: はじめまして佐藤先生。
M*大学 工学部3年 K*と申します。掲載時は匿名でお願い致します。
ホームページの物性何でもQ&Aを拝見させていただきました。
 現在「Solid-State Physics」 H.Lbach、H.Luth著 の本を読み進めて勉強しているのですが、パネルⅢ p112ページの3つ目の段落で、
「反転の中心をもった結晶に対して横光学フォノンモード(TO)はラマン活性でなく赤外活性」ということが当たり前のものとして書かれています。
しかし、これがなぜなのかわかりません。
これのひとつ前の段落で、ラマン活性のときは(αXxx/αX)≠0、(αXxy/αX)≠0 (Xは変位)
と書かれているため、赤外活性のときは逆に(αXxx/αx)=0、(αXxy/αX)=0
を示すことができればいいと思うのですがよくわかりません。
お忙しいとは思いますがご回答よろしくお願いいたします。
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Date : Sat, 27 Jun 2009 14:24:22 +0900
A: K君、佐藤勝昭です。
 私は、 H.Lbach、H.Luth著「Solid-State Physics」を手元に持っていませんので一般的なことでお答えします。
 格子振動(フォノン)による光学吸収の遷移行列要素がゼロにならないためには、単位セル内の有効電荷がゼロでなく、フォノンの振動方向による双極子モーメントの単位ベクトルと光の電界の単位ベクトルの内積がゼロでない値をとる必要があります。
 単一原子からなる物質では単位セル内の有効電荷がゼロになるので、1次過程では赤外吸収はおきません。
光の電界ベクトルは、光の進行方向に対して垂直な面内にあります。つまり横波です。
 一方、フォノンですが、フォノンには音響モード(Acoustic mode)と光学フォノン(Optical mode)とがあり、光と結合するのは光学モードのフォノンのみです。
格子振動には縦波(Longitudinal)と横波(Transverse)とがありますが、縦波だと、格子振動ベクトルと光のベクトルとの内積はゼロになってしまいますから、結局、光吸収に関与するフォノンは横波の光学モード(TO)のみとなります。
 空間の反転に対して、電界ベクトルは符号を反転します。従って、反転対称性のため格子振動のベクトルを空間反転しても符号が同じだと、トータルの遷移行列は打ち消して赤外不活性になります。ダイヤモンド構造は反転対称があるので赤外不活性です。逆に、反転対称性がなければ赤外活性になります。ZnSは反転対称性がないのでTO活性です。
 しかし、反転対称を持つ分子であってもある基準振動によって双極子モーメントに変化が生じれば赤外活性になります。例えば、NaClでは中心対称位置に原子があり、双極子の変化が奇パリティであるような基準指導があるので、赤外活性です。
 一方、ラマン散乱確率は、入射光によって電子が基底状態から中間状態にバーチャルに遷移し、励起状態の電子がフォノンを生成・消滅し、再び基底状態にもどるというプロセスを伴っていますから、双極子遷移とは全く異なる選択則が働きます。
 これを扱うためにはラマンテンソルという分極率テンソルをもちいます。古典的には、散乱確率は入射光の電界ベクトルei、散乱光の電界ベクトルes、ラマンテンソルRjとしてei Rj es を計算するのです。
 あるフォノンがラマン活性かどうかはラマンテンソル成分がゼロでないかどうかで決まります。ラマンテンソルは2階のテンソルなので反転操作によって符号を変えないという性質を持ちます。このため、ダイヤモンドでは、赤外不活性なモードがラマン活性になります。
 一方、NaClにおいて赤外活性であるフォノンモードについて、ラマンテンソルを計算するとラマン不活性であることがわかります。
 以上のことは決して「当然のこと」ではありません。正確には群論を使って説明しなければならないので3年生にはむずかしいのです。
一般に、反転対称のある分子では
(1)赤外活性の基準振動はラマン活性ではない。
(2)ラマン活性の基準振動は赤外活性ではない。
ということが言えます。これを「交互禁制律」といいます。
 詳細な議論は、工藤恵栄「光物性の基礎」(1990年改訂2版;オーム社)をご覧下さい。この本は絶版ですので図書館で勉強してください。
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Date : Sat, 27 Jun 2009 21:38:43 +0900
AA: こんばんは佐藤先生。
M大学 Kです。
お忙しいなか教えていただきありがとうございました。
これから紹介してくださった本を元に勉強を進めていきます。
本当にありがとうございました。
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1160. LEDチップの機械的強度測定法

Date : Sat, 27 Jun 2009 16:05:35 +0900
Q: 東京農工大学 佐藤先生
初めまして,私はT*社のT*と申します。
LEDの開発を担当しています。
LEDチップ(AlInGaP系)の機械的強度を測定しようと検討中ですが、どのような測定器で測ればよいでしょうか?
目的は、チップ組立時の割れ対策を検討するうえで、チップの機械的強度を知りたいのです。
今、考えているのは、以下の内容です。
 1. ビッカース強度測定
 2. 静加重加圧試験機での強度測定
また、既にデータがあれば参考に知りたいです。
どうぞよろしくお願いします。
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Date : Sat, 27 Jun 2009 18:06:37 +0900
A: T様、佐藤勝昭です。
 メール有り難うございます。LEDチップの実装関係は専門ではありません。
LED照明の機械的環境試験につきましては、
特定非営利法人LED照明推進協議会さんがLED照明信頼性ハンドブックを出しておられます。そちらにお尋ね下さい。
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1161. CRS1010の比透磁率

Date: Fri, 3 Jul 2009 15:12:03 +0900
貝沼と申します。
材料名:CRS1010の比透磁率が知りたいのでですが、教えてください。
会社員 37才
以上
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Date: Sat, 4 Jul 2009 12:00:26 +0900
A: 貝沼様、佐藤勝昭です。
 CRS1010というのは、米鉄鋼協会の企画AISIの1010に従うCRS(cold rolled steel=冷間圧 延鋼)でその化学成分は、
CMnPSSiFe
0.08-0.13wt%0.30-0.600.040 max0.050 max0.10 max残り
となっています。AISI 1010はJIS G3141に相当します。
JIS G3141は、冷間圧延鋼板及び鋼帯 を規定しており,
 SPCC 一般用
 SPCD 絞り用
 SPCE 深絞り用
 SPCF 非時効性深絞り用
 SPCG 非時効性超深絞り用
となっています。
化学成分は
種類の記号CMnPS
SPCC0.15以下0.60以下0.100以下0.050以下
SPCD0.12以下0.50以下0.040以下0.040以下
SPCE0.10以下0.45以下0.030以下0.030以下
SPCF0.08以下0.45以下0.030以下0.030以下
となっていますから、 お申し越しのCRS1010はJISのSPCD~SPCFに相当すると思われます。
しかし、これらの磁性は探しましたが見つかりませんでした。
SPCCに関しては、
JFE技報No. 8(2005年6月)p. 22.25
藤田、井上、江本:純鉄系磁気シールド材料の高透磁率化とその磁気シールド性能
という論文のTable 2に、彼らが開発したEFEという磁気シールド材の比較対象としてSPCCの透磁率が載っていました。
それによると、最大透磁率μmは厚みが0.8mmのSPCCでは730、1.2mmでは1900となっています。
もっと詳しくは、JFEスチール(株)スチール研究所の関係者にお尋ねになってはいかがでしょうか。
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1162. 樹脂の難燃剤

Date: Fri, 3 Jul 2009 17:46:21 +0900
Q1: 物性なんでもQ&Aを見ての質問です。

いつもHPを参考にさせて頂いています。
O社関連会社にて品質保証を担当しているI*と申します。
Webアップの際には匿名にてお願いします。
早速ですが質問です。
充電部(銅、銀)を樹脂で保護しているような構造物があります。
大きさは手の上に乗る程度です。
とある場所において、密閉された高温高湿環境に置かれていたせいか、樹脂に 使用している難燃剤(リン)がリン酸などになって析出し付着(結晶のような 形状)するという現象がおきています。
しかし付着するのは充電部の銀ばかりで、樹脂の内壁はもちろんの事、他の 充電部である銅にも付着がありません。
この現象についてメカニズムのようなものがありましたらご教示をお願いしま す。
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Date: Sat, 4 Jul 2009 12:48:59 +0900
A1: I様、佐藤勝昭です。
 メール有り難うございます。状況がよく見えないのですが、析出物について、「樹脂に使用している難燃剤(リン)がリン酸な どになって析出し付着(結晶のような形状)」と断定されていますが、根拠はあるのでしょうか?
 付着物の分析はされたのでしょうか。ご承知のように銀は拡散しやすい元素で、イオン伝導体としても知られています。例えば リン酸銀Ag3PO4は白色の物質です。このような物質ができている可能性はないのでしょうか?
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Date: Mon, 6 Jul 2009 08:20:14 +0900
Q2: 早速のご回答ありがとうございます。
付着物は針状に成長した結晶のような形状であったり球体であったりします。
成分分析を行なうとPが主で少量のOとCが含まれている物質でした。
リン酸銀であるかどうかは不明ですが。
PはAg(帯電した)と結びつき易い性質があるのでしょうか?
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Date: Mon, 6 Jul 2009 10:46:41 +0900
A2: I様、佐藤勝昭です。
エレクトロマイグレーション(EM)という言葉をご存じでしょうか。EMは湿度が高く、 電圧がかかった状態で絶縁体上の金属が、イオンとなって元の場所を離れてどこか別の 場所に堆積する現象です。このことによって絶縁不良が起きることがよく知られていま す。この現象は水の膜が連続的に荷電した正負の両電極を覆っていて、電圧が印加され ているときに起きます。正極からは陽イオンが生じて負極に向かってマイグレートして いき、金属を樹枝状に堆積していくと言われています。銀は最もEMを受けやすい金属で す。なぜなら銀は陽極において溶解しやすくマイグレーションの活性化エネルギーも低 いからです。銅も亜鉛も鉛もEMを受けますが、銀よりも過酷な条件でしか起きません。 ニッケルや錫は水に溶解しにくく、金や白金やパラジウムは陽極で安定なので、いずれ もEMが起きません。
http://www.ami.ac.uk/courses/topics/0158_emgr/index.htmlによる)
 このことより考えられることは、陽極側の銀が水分の存在のもとで銀イオンとなって エレクトロマイグレーションを起こし、銀イオンを含んだ水が、難燃材であるリンの化 合物の結晶化のためのフラックスの作用をしているのではないかと考えられます。
 一方、銅はEMを受けにくいのと、リン化合物の結晶化のフラックスとしての作用がな いのでリン化合物結晶の析出が起きないのではないでしょうか。
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Date: Mon, 6 Jul 2009 15:18:48 +0900
ご回答ありがとうございました。
当現象は非常に稀なもので、社内で再現させようとして湿度放置などを幾度もトラ イしたのですが容易に再現させる事ができなくて苦慮しているところです。
把握できている事としては、船舶関連に搭載されて1年程度経過した場合に当現象 が起きているという事だけです。
この度はご多忙のところ質問にお答え頂きありがとうございました。
またの機会もよろしくお願いします。
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1163. SCM440,FCD450の物性値

Date: Thu, 9 Jul 2009 12:32:20 +0900
Q: お世話になります。㈱S*の毛利川と申します。
下記の物性値について回答お願いいたします。
SCM440、FCD450について
 ヤング率 ポアソン比 密度 線膨張係数 熱伝導率 比熱 比透磁率 抵抗率
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Date: Thu, 9 Jul 2009 21:40:53 +0900
A1:毛利川様、佐藤勝昭です。
 電子材料シンポジウムのため、琵琶湖に出張中です。来週、大学に行きますの調べて おきますが、お急ぎでしたら、どこかの図書館でJISを調べてはいかがでしょうか?
SCM440 (クロモリ鋼)はJIS G4105にあります。
FCD450 (黒鉛鋳鉄)はJIS-G5502にあります。
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Date: Fri, 10 Jul 2009 07:45:18 +0900
AA1: ありがとうございます。
調べてみます。
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Date: Wed, 15 Jul 2009 12:20:40 +0900
A2: 毛利川様、佐藤勝昭です。
本日、大学の図書館で調べたのですが、完全には調べられきれませんでした。
物性SCM440
(AISI4140)
FCD450
(GGG40)
ヤング率190-210 GPa 167-170 GPa
ポアソン比0.27-0.300.275
密度7.7-8.03 g/cm^37.1-7.3 g/cm^3
線膨張係数12.3×10^-6/℃12×10^-6/℃
熱伝導率42.7W/m・℃33.5 W/m・℃
比熱473J/kg・℃544~711J/kg・℃
比透磁率35-80*
抵抗率0.222 μΩ・m0.5-0.7 μΩ・m
(*電気学会論文誌A 128 (2008) pp.289-297)
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Date : Wed, 15 Jul 2009 13:18:29 +0900
AA: ありがとうございました。
参考にさせて頂きます。
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1164. 非磁性の絶縁体のファラデー効果

Date: Tue, 14 Jul 2009 12:22:35 +0900 Q: はじめまして、広島大学OBのA**と申します。(匿名希望でお願いします) 現在は会社員ですが、先生の著書『光と磁気』を読ませていただいており、個人的に質問させてもよろしいでしょうか。
ファラデー効果についての質問なのですが、四章では非磁性の半導体のように自由電子の運動が重要な役割を持つときは古典電子論で説明できるとありましたが、非磁性の絶縁体のようにバンドギャップが大きく遍歴電子が無い場合はファラデー効果はどのように説明されるのでしょうか?それとも非磁性の絶縁体の場合ファラデー効果は無いということになるのですか?
逆に金属磁性体の場合は局在電子による磁気的な効果が大きいために、遍歴電子のファラデー効果は無視されるのでしょうか?
また、私の理解ではファラデー効果は大小はあれ、ほぼ全ての物質でみられる根源的な現象だという認識ですが、ファラデー効果の起きない物質はありますか?
たとえば一重項基底となる4Heの超流動状態や、第一種超伝導を起こしている完全反磁性物質でも起きるのでしょうか?
お忙しいところどうもすみませんが、先生のご意見を聞かせていただけたら大きな助けになると思いますので、是非ともよろしく御願いいたします。
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Date: Tue, 14 Jul 2009 14:28:44 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。
 非磁性絶縁体、例えば、酸化亜鉛、チタン酸ストロンチウム、さらにガラスも磁気光学効果を示します。
光と磁気では、主として強磁性体を扱ったので、非磁性体の磁気光学効果については触れていません。
 酸化亜鉛などの半導体では磁界中においてバンドギャップに関わる電子状態がゼーマン分裂し、スピン軌道相互作用の助けで光学遷移が円偏光に対する選択則を持つために 磁気光学効果を生じると考えられます。磁気光学効果は酸素ガスなどでも見られます。
超伝導状態では反磁性磁化が誘起され内部に磁束が存在しませんから磁気光学効果は観測されないと思いますが、第2種超伝導体のボルテックスの内部では磁束が存在するので磁気光学が見られると思います。しかし、通常は非常に小さいので、磁束のイメージングでは磁性ガーネット膜に転写して、磁性ガーネットの磁気光学効果を用いて観察をしています。
超流動状態については、検討したことがありませんので、回答を差し控えます。
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Date: Wed, 15 Jul 2009 12:17:33 +0900
昨日、先生に質問をさせていただいた、広島大学OBのAです。
お忙しいなか回答をいただきありがとうございました。
急な申し出にもかかわらず、即日お返事頂き感激しております。
回答の件につきましては、非磁性、絶縁体であっても入射光の右円偏向と左円偏向 の光学遷移確立はゼーマン効果によって差が生じるためにファラデ-効果は起きる ということですね。
もうひとつお聞きしたいのですが、『光と磁気』の三章P29で磁気光学効果におい て誘電率テンソルの各成分は磁化Mの関数とありましたが、その後の古典論では誘 電率テンソルの対角項は磁束密度Bの関数となっていました。
古典論の場合、非磁性でM=0,磁場Hと磁束密度Bが比例している場合を考えているた めに表記の差が出ているものと思いますが、実際の磁性体内で起きるファラデー効 果の旋光角度は磁化Mの関数となるのでしょうか、それとも磁束密度Bの関数となる のでしょうか?
磁性体にはヒステリシスがあり、飽和磁化があるのでファラデー旋光角が磁化の関 数であれば飽和磁化以上磁場印加しても角度は変化しなくなり、磁束密度の関数 であれば外部磁場を大きくすればするほど旋光角は大きくなるという違いが生じる かと思うのですが、実際の磁性体内では磁気光学効果はどのように振舞うのでしょ うか?
基本的で簡単な質問で失礼かもしれませんがお忙しくなければ、是非ご教授いただ きたいと思います。
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Date: Wed, 15 Jul 2009 12:31:06 +0900
A2: A様、佐藤勝昭です。
 古典電子論では外部磁界が加わった場合の説明しかしていません。
強磁性体の磁気光学効果はスピン軌道相互作用が一義的に重要なのでMs が顕わに現れません。光と磁気p148にあるように、磁気光学効果は交換 エネルギーの大きさとリニアな関係にありません。
外部磁界は磁区をそろえるために必要なだけです。
磁気飽和後の磁気光学効果の外部磁界依存性は、ほとんど無視できます。
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Date: Wed, 15 Jul 2009 13:52:53 +0900
AA: 佐藤先生、さきほど質問させていただきましたAです。
お忙しいなか早速のお返事ありがとうございました。
書籍の中に説明してあることを聞いてしまい失礼いたしました。
現在、磁気光学効果の入門書として読んでいるのですが、読みやすく大変興味のあ る内容なので今後も勉強を続けていこうと思います。
どうもありがとうございました。
また質問させていただくかも知れませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
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1165. シリコンへのドーピング

Date: Wed, 15 Jul 2009 12:50:32 +0900
Q: 佐藤先生
はじめまして。D**社のK**と申します。(匿名でお願いいたします。)
先生のHPを見て投稿致しました。
シリコン半導体へのドープについて教えてください。
P型にする時、N型にする時にホウ素やリンのガスを不純物として吹き付けて差別化する手法が一般的に利用されていますが、それ以外に簡単にウェットプロセスでドーピングする手法は無いのでしょうか?ドープについて、書籍レベルの知見しかないため、専門的な事は分かりませんが、ご返答頂ければ幸いです。
よろしくお願いいたします。
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Date: Wed, 15 Jul 2009 13:31:04 +0900
A: D社Kさん、佐藤勝昭です。
 通常シリコンのドーピングは、結晶作製時に原料に入れておきます。
例えばP型シリコンでは引き上げ法のメルトの中にホウ素を加えておきます。これによって、均一にホウ素が結晶中に分布して、シリコンを置換しP型となります。
この結晶にpn接合を作るときは、リンなどV属元素の化合物を表面に堆積して加熱して拡散させるか、高電圧で加速したリンのイオンをP型シリコンに注入し、アニール処理する方法で行われます。
お尋ねの中にある「ガスを吹き付けるプロセス」が一般的なのか、私にはわかりません。ウェットプロセスでも結晶表面にドーパントを堆積できるでしょうが、いずれにせよ熱拡散のプロセスを経ないと、シリコンの原子サイトを置換してくれないと思います。
 化合物半導体であるCIGS(CuIn1-xGaxSe2)/CdSの太陽電池では、p型のCIGS薄膜を作製した後、CBD(chemical bath deposition)という方法でn-CdSを作製します。塩化カドミウムとチオウレアを含む溶液に浸けて、攪拌しながら少し温度を上げるウェットプロセスが取られますが、このときに、CdがCIGSに拡散してn型のドーパントとなり、CIGS内に埋もれたpn接合が形成されるといわれています。この場合CdSは障壁層として働くのでしょう。
 私は、シリコン太陽電池のウェットプロセスのことは、よく存じませんが、うまい溶液が見つかれば、CIGS同様のウェットプロセスができると思います。
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Date : Thu, 16 Jul 2009 08:23:00 +0900
Q2: 佐藤先生
返答頂きまして、ありがとうございます。
シリコンの太陽電池のドーピングに関して、了解いたしました。やはり、高温プロセスが必要になる。
下記に挙がったCIGSに関して、CIGS薄膜はドーピングをしなくても既にP型として働くのでしょうか?その薄膜は、真空プロセスでしか作成できないのでしょうか?
質問が多くなり申し訳ございませんが、返答頂けたらと思います。
よろしくお願いいたします。
以上
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Date : Thu, 16 Jul 2009 13:05:02 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 CIGS薄膜はCu空孔がアクセプタの働きをしてP型になります。この薄膜は、高効率の ものは三段階多元蒸着法という真空プロセスで作られますが、大面積のものは、セレン 化法で作製されています。Cu-In-Gaをスパッタ成膜(室温)した後、H2Se等のガス雰囲 気中で熱処理してCuInGaSe2としています。
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1166. eVから温度への変換

Date: Fri, 17 Jul 2009 11:58:18 +0900
佐藤勝昭先生へ
この間分かりやすく英語で説明していただいて、どうもありがとうございました。
Q: ちょっと聞きたいことがありますが~
If we heat helium gas to a high-enough temperature,the average kinetic energy of an atom in its thermal motion will be so high that an inelastic collision between two helium atoms can easily excite one of them to its first excitation state at 19.8 electron volts above the ground state.
Estimate an approximate value of this temperature,applying the relationship 1.5kT= kinetic energy, where k is the Boltzmann's constant, k=1.38 x 10-23 J/deg. Electronic charge = 1.6 x 10-19C.
(ヘリウムを十分に高い温度に熱すると、原子の熱による運動エネルギーは非常に高くなるので、2個のヘリウム原子の非弾性衝突のために、そのうちの1個の原子は基底状態より19.8eV高い第1励起状態に励起されます。1.5kT=運動エネルギーという仮定を使って、およその温度を推定しなさい。ここにkはボルツマン定数です。)
という質問があります。
ここで、1.5kT=1/2mv2を使いますね?
そして、Tを求まるために、どうすれば良いでしょうか?
ありがとうございました。
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Date: Fri, 17 Jul 2009 13:10:52 +0900
A: Dear Suhi
This problem is a simple question that requires conversion of energy in eV to temperature in K.
The energy for the first excited state is E=19.8 eV. Using electron charge e=1.6x10-19 C, the energy is converted to joule unit as E=19.8 x 1.6 x 10-19=3.17 x 10-18 J. Here I used Coulomb x Volt equals Joule.
By assuming E=1.5 kT, T can be obtained as T=E/1.5k=3.17 x 10-19/(1.5 x 1.38 x 10-23)=1.53 x 104.
The answer is 15300 K.
(この問題は、エネルギーの単位をeVから温度に換算する単純な質問です。第1励起状態のエネルギーは、E=19.8 eVです。電子の電荷e=1.6x10-19 Cを使うと、E=19.8 x 1.6 x 10-19=3.17 x 10-18J です。ここにCV=Jの関係を使いました。E=1.5 kTを仮定すれば、T=E/1.5kとかけますから、T=3.17 x 10-19/(1.5 x 1.38 x 10-23)=1.53 x 104となります。答えは15300Kです。)
Best regards
Katsuaki
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Date: Sat, 18 Jul 2009 14:56:31 +0900
AA: 佐藤勝昭先生へ,
分かりやすく説明していただいて、ほんとうにどうもありがとうございました。
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1167. 金属と紙の拡散反射の違い

Date : Fri, 31 Jul 2009 18:22:37 +0900
Q: 佐藤様
初めまして、株式会社C*の鈴木と申します。
佐藤様のサイトをみて金属反射の見え方について参考にさせていただきました。
しかしどうしても分からないことがありますので佐藤様に質問させてください。
現在私は3Dゲームのグラフィックを担当していましてフォトリアルな質感表現を追及しています。
分からないことというのは金属と非金属(木やペンキ等)のものの見え方の違いです。
金属は自由電子の影響で光を強く反射し、波長ごとの反射率が違えば色が付くということはなんとなく理解できましたが 金属の乱反射についてよく分からないことがあります。
それは金属の表面が微小な凸凹で形成された金属は、非金属の拡散反射と同じに見えることはあるのでしょうか?
例えば拡散反射90パーセントの白い紙とおなじような反射特性を金属の乱反射で表現できるのでしょうか。
紙の場合は完全拡散反射に近い状態だと表面が見えればどの角度から見てもほぼ同じ輝度で見える状態です。
金属の表面の形と非金属の表面の形がまったく同じ凹凸なら金属でも完全拡散反射に近いものができるのでしょうか?
逆に非金属の表面をすごく平らにしても正反射成分は強くなりますが拡散反射はなくならないような気がします。
お忙しいところ申し訳ありませんがご教授いただければ幸いです。
よろしくお願いします。
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Date: Sun, 2 Aug 2009 09:52:51 +0900
鈴木様、佐藤勝昭です。
 金属と紙とでは拡散反射の様子がかなり違います。
なぜなら、紙を構成している繊維の分子は、本来無色透明な物質です。無色透明の氷砂 糖を粉末にすると白く見えるのと同じで、繊維分子がランダムに向いているので、分子 を透過した光が、別の繊維で表面散乱を受けたり、さらに次の繊維を透過したりして、 最終的にほとんどが散乱して出てくるのが、紙の拡散反射の仕組みです。
 これに対して、金属は、高い吸収係数を持っていますから、光が金属の結晶粒の中を 透過して、他の結晶粒で反射され・・ということはほとんど考えられません。このこと は金属の粉末を考えればわかることです。銀粉は決して白くなく、灰色です。銀の微粒 子の表面で反射されたものが、別の粒子で反射されますが、中には奥の方に散乱された 光があって、それは表面に出てこられなくなるので、反射率はどうしても低くなります 。(形状によっては、白金黒や現像銀のように光が出てこれなくなって、真っ黒になり ます。)
 従って、金属の表面の形と非金属の表面の形がまったく同じ凹凸だとしても完全拡散 反射にするのはむずかしいでしょう。
 非金属の表面を平坦化したときですが、白い陶器のように複雑な形の透明な結晶粒が 集まってできている物質では、いくら表面を平らにしても、内部に入っていった光が粒 界で散乱を受けて、拡散反射しますから、正反射はせいぜい数%であるのに対し、拡散 反射は数十%になるので白いのです。
 同じ非金属のガラスの場合は非晶質なので粒界反射がありません。このため、表面に 凹凸のあるすりガラスからの拡散反射は白いですが、水をつけると平らになって、拡散 反射がなくなります。
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Date : Mon, 3 Aug 2009 07:16:20 +0900
AA: 佐藤様 鈴木です。
 お忙しいところとても分かりやすい説明をいただきありがとうございます。
非金属は透明で光を透過しつつ反射するので均一な拡散反射が得られやすいというこ とですね。
また非金属の場合は表面の形状の依存度はそれほど高くないですが、 金属の場合は光の吸収が高いことと内部の乱反射が期待できないことから表面形状が 重要になるということですね。

紙のような非金属を斜めから見た場合、 表面の微小な凸によって遮蔽されて本来見えない凹部分があるからといって影になる わけではなく透過と反射により出射光が目に届くということですね。
長い間疑問に思っていたことが解消できました。
ありがとうございました。
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1168. 金属の非接触判定

Date: Thu, 6 Aug 2009 16:32:48 +0900
Q: 始めまして、佐藤先生。
N*社のK*と申します。(匿名でお願いします。)
ホームページの物性なんでもQ&Aを拝見し、ご連絡させて頂きました。
現在、金属片(15mm×10mm×0.5mm程度)を非接触で測定し その材質を判別する方法を探しています。無垢材ばかりでなく 合金やメッキも判別したいのですが、どういった方法があるでしょうか。
X線による方法も検討いたしましたが、装置が高価すぎる・測定時間が 長い(できれば1秒以下で判別したい)などの理由で、他の方法で できないか検討しています。ご回答いただければ幸いです。
よろしくお願い致します。
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Date: Thu, 6 Aug 2009 17:03:28 +0900 (JST)
A: K様、佐藤勝昭です。
 金属片の素性がまったくわからない場合に、1秒以下という短時間で非接触で判別す る方法はありません。やはり正攻法でX線解析をするしかないと思います。
 ただし、もし素性がある程度わかっている場合には、光学的に判定することは可能か と存じます。CCD付きの分光器で反射スペクトルを測定し、予め測定しておいた素性の わかっている金属や合金のスペクトルと比較するのです。スペクトル形状全体を比較す るのは難しいので、特徴的な2波長または3波長を選び、1つの波長の反射光強度を基準 に波長の反射光強度が何倍であるかを測定するのです。ただし、光だけからメッキか無 垢かを判定することは難しいと思います。
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Date: Thu, 6 Aug 2009 17:33:11 +0900
Q2: 佐藤先生、こんなにも早いご回答有難うございます。
こんな時期ですので、ご連絡いただけるのは夏休み明けかと思っていました。
判別についてですが、やはり難解な課題のようですね。ご説明が足りませんでしたが 今回の判別ターゲットは金の無垢材か、それ以外かというものです。ただし金メッキ品も それ以外になります。ご連絡いただいたスペクトル分光以外でも実現できる方法は ないでしょうか。ご回答の程、よろしくお願い致します。
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Date: Thu, 6 Aug 2009 19:23:33 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 金の無垢材か、それ以外かを判別するということになると、 (1)平均の密度を調べる→これは非接触ではX線以外には無理ですね。
(2)全体の電気伝導率を調べる→電極をつけなければなりませんから非接触では無理 でしょう。
(3)メッキと無垢では表面の性質が違います。光学顕微鏡で表面を観察する。1秒で は無理でしょうが、・・
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1169. 金属多層膜のプラズモン

Date: Tue, 11 Aug 2009 17:37:24 +0900
Q:佐藤先生:
T*大学部4年のY*と申します(ホームページでは匿名でお願いします)。
なんでも物性のホームページを拝見してメールさせていただきました。
現在、プラズモンに関して勉強しているのですが、多層膜における表面プラズモンを知りました。
多層膜にする利点とは何でしょうか?
おそらく、多層膜にすることで、各層界面にプラズモン共鳴が起き、一層の場合よりもより大きいプラズモンのエネルギーを得られると思うのですが、1層目に金属がある場合、1層目の表面で光をほとんど反射してしまい、2層目まで光が届かず、表面プラズモンを各層で共鳴させることは不可能ではないでしょうか?
以上、お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
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Date: Wed, 12 Aug 2009 12:29:24 +0900
A:Y君、佐藤勝昭です。
 4年生と言うことは、卒業研究のテーマでしょうか?
なんでもQ&Aは、原則として卒業研究や修士論文研究の課題にはお答えしていません。
「多層膜にする利点」についてですが、おそらく研究室では、利点があるからこそテーマにしているので、 「それくらいは理解してよ。」という気持ちでしょう。指導教員か大学院生に聞いてみてください。

「1層目に金属がある場合、1層目の表面で光をほとんど反射してしまい、2層目まで光が届かず、表面プラズモンを各層で共鳴させることは不可能ではないでしょうか?」というご質問ですが、
多層膜といっても層の厚さが十分に薄ければ光は十分に下層まで届きます。光は多重反射も含め全体として平均した誘電率を感じます。
以下に、多層膜のバルクプラズモンによる磁気光学効果のエンハンスメント(増強効果)関する私の研究論文を紹介します。
(1)Fe/Cu多層膜(層厚50-200Å)では、Cuのプラズマ周波数2eV付近で磁気カー効果のエンハンスが見られます。
K.Sato, H.Kida and T.Katayama:
Interpretation of Magneto-Optical and Reflectivity Spectra in Compositionally Modulated Multilayered Fe/Cu Films; Jpn. J. Appl. Phys. 27, Part 2 [2] (1988) L237-L239.(Letter)

(2)光磁気記録材料として研究されたPt/Co多層膜では層の厚さは数オングストロームです。この場合はプラズマは6eV付近に見えます。 K.Sato: Analysis of Magneto-Optical Spectra of Pt/Co and Pt/Fe Multilayers Using Optical Constants Determined by Reflectivity Spectra between 0.5 and 25 eV; Proc. Magneto-Optical Recording Symposium, December 7-10, 1992, Tucson Arizona, J. Magn. Soc. Jpn. 17 Suppl. S-1(1993) 11-16. (invited)

(3)Fe/Au人工格子において層厚が10ML(ML=単分子層)のあたりでは、磁気光学効果のプラズモンエンハンスによるピークが2eV付近に見られますが、 1ML~5MLではプラズモン効果が明瞭に見られなくなります。これは層厚が薄くなると新たなバンド構造が生じて新たなL10型金属間化合物になるから です。
K. Sato, E. Takeda, M. Akita, M. Yamaguchi, K. Takanashi, S. Mitani, H. Fujimori, Y. Suzuki: Magneto-optical spectra of Fe/Au artificial superlattices modulated by integer and non-integer atomic layers; J. Appl. Phys. 86 [9] (1999) 4985-4996

なお、
T. NEYER , P. SCHATTSCHNEIDER , J. P. R. BOLTON & G. A. BOTTON: Plasmon coupling and finite size effects in metallic multilayers Journal of Microscopy, 187 [3[ (2003) 184 - 192.
がfinite size effectについて議論しています。
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Date: Wed, 12 Aug 2009 14:26:08 +0900
AA: 佐藤先生: Y*です。
ご回答、ご助言ありがようございました。
先生の論文を参考に勉強・理解してみます。
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1170. 複素屈折率と磁気光学

Date: Mon, 17 Aug 2009 12:26:12 +0900
Q: お世話になっております、先日もこちらで質問させていただきましたH大学大学 院OBのA*と申します。(匿名で宜しくお願いします)
磁気光学効果というのを知り興味深く感じて先生の著書「光と磁気」で勉強させて いただいているのですが、領域の違いもあり勉強不足の部分もあり理解が及ばない 部分があるのでここで質問させていただきたいと思います。

2つお伺いしたいのですが、1つは左右円偏向の複素屈折率の差が何故生じるか教 えていただきたいのです。ごく初歩的な話かもしれませんが考えるほど分からなく なって困っています。

古典的に光の伝搬を式の上で考えマクスウェル方程式に代入して解くと、入射光と 平行に磁場印加してある場合には複素屈折率の固有値N^2は誘電テンソルの非対 角項分だけ左右円偏向でズレが生じ、左右円偏向が媒質中を進むにつれて位相がズ レていき、旋光性が生じるというのは理解できます。また量子論による解釈として も軌道の選択則を考えればよく分かる話です。

しかしトンチンカンな考え方をしているとは思いますが、等方性物質に直線偏向の 光を入射するイメージを考えたときに電場の振動によって生じる分極は磁場による ローレンツ力を考えたとしても、等方的に生じており左右円偏向で複素屈折率に差 が生まれるとは思えないのです。

自分なりに物理的にイメージ仕様としても、誘電テンソルの非対角項がなぜ左右円 偏向の複素屈折率の差として現れるのかうまく説明できません。良い考え方があれ ばご教授願いたいと考えております。

もう1つは、ファラデー効果の起源となる誘電率テンソルの非対角項εxyは個別の 物質毎に全く異なる波長依存性をみせていますが、なぜこのような波長依存を持つ のでしょうか?個別の物質の何に依存して波長依存性が変化しているのかご教授い ただければと思います。

お忙しいとは思いますが、上記の件どうぞ宜しくお願いいたします
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Date: Mon, 17 Aug 2009 19:07:02 +0900
A: A*様、佐藤勝昭です。
 「光と磁気」をお読みいただきありがとうございます。
(1)最初のご質問は左右円偏光(偏向ではありません!)に対する屈折率のちがいが なぜおきるかを定性的に物理イメージがつかめないかというご質問と思います。

「電場の振動によって生じる分極は磁場によるローレンツ力を考えたとしても、等方的 に生じており」という考えは間違っています。

磁場によるローレンツ力のもとで高周波電界によって生じる分極をもとめる式がp62の( 4.6)式です。この式は変位uを求める式ですが、uにNqをかければ分極Pになります。[ (4.5)式] 
この結果
P_x=χ_xxE_x + χ_xyE_y
P_y=χ_yxE_x + χ_yyE_y = -χ_xyE_x + χ_yyE_y
となります。ここで(3.11)を使っています。
(4.9)によれば、γ=0の極限では、χ_xx、χ_yyは実数、χ_xyは虚数です
Bの1次までの近似ではχ_xx, χ_yyは等しくBに依存しません。一方、χ_xyはBに比例 します。[(4.9)式]
ここで、Bで展開したときのχ_xx0次の係数をa、χ_xyの1次の係数()虚数)をibと書け ば、
P_x=a E_x +i b B E_y
P_y=-i b B E_x + a E_y
となります。
入射直線偏光がx軸方向に偏っていたとすると、
P_x=a E_x, Py=-ib B E_xとなりますから、分極は、x軸、y軸の単位ベクトルをそれぞ れe_x, e_yとして
P=E_x(a e_x +i b B e_y)
とかけます。これは楕円偏光です。
楕円偏光というのは振動のx成分とy成分との間に位相差がある場合をいいます。この位 相差がプラスかマイナスかで右回りの楕円か左回りの楕円かになります。上の式でy成 分は磁界Bのプラスマイナスに対応して、プラスになったり、マイナスになったりする ので、磁界の符号によって、右回り楕円になったり左回り楕円になったりするのです。

(2)第2の質問は、電子構造を考えなければならないのです。
これについては、4.4「磁気光学スペクトルの形」(p77)を読んでください。電子の 光学遷移の置き方は個別の物質の電子構造を反映します。具体例は第6章(p116以後)に 様々な物質の電子構造と光学遷移の関係を示しています。たとえば、6.3節p146に示 したように、第1原理のバンド計算から導いた磁気光学スペクトルの形は実験を非常に よく再現します。
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1171. 熱線遮断塗料

Date : Wed, 19 Aug 2009 22:48:12 +0900
Q: 佐藤先生
いつも「物性なんでもQ&A」のホームページを拝見させていただき、 仕事の参考にさせていただいております。
I社の研究所におります、S*と申します。
(HPに掲載される場合は匿名でお願いできればと存じます) ぜひご教授いただきたいことがあり、メールを差し上げました。
お時間がある時で結構ですので、お返事いただければ幸いです。

熱線遮蔽塗料に興味があり、調べていたのですが、赤外線反射の 機能は、近赤反射顔料によるものであることがわかりました。
以下のHPによれば、
http://www.tomatec.co.jp/ganryo/kinseki.html
顔料はCr2O3やCuCr2O4が主成分のようですが、近赤外領域のちょうど 良い波長域に反射が起きています。

可視光や赤外域の反射といいますと、金属やITOのように自由電子に よる反射くらいしか思いつかないのですが、Cr2O3は絶縁体に近い ものだと思いますし、CuCr2O4もキャリア濃度は低いように思われます。
この反射はどのような物性によって起きているのでしょうか?
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Date : Thu, 20 Aug 2009 14:28:05 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。  Cr2O3もCuCr2O4も絶縁物です。金属のような自由電子のプラズマによる高反射率は考 えられません。
Cr2O3の電子遷移はCr3+の配位子場遷移による弱い吸収が赤~黄緑にあり、バンドギャ ップが3.3eVにあるるため、透過光は薄い緑色を示しますが、赤外域では「無色透明」 なのです。
岩塩NaClは可視光線に対して無色透明ですが粉にすると白くなるように、無色透明なも のを粉砕すると拡散反射によって白くなります。紙も70%くらいの拡散反射率を示しま すが、無色透明な繊維分子がランダムに存在しており、透過した光が、ほかの繊維分子 で散乱されたり反射されたりするので高い拡散反射率を示します。
なんでもQ&A#1167
Cr2O3は赤外では透明なので,粉末にすると赤外での拡散反射率を高くすることができま す。ただし、粒径が波長の1/2よりも大きくなければなりません。
700-1100nmの赤外拡散反射率を高めるには,粒径が350-550nmであればよいのです。おそ らく熱線遮蔽塗料には、粒径が350-550nmくらいのCr2O3などがアクリルなどに分散さ せてあるのでしょう。
Cr2O3を使わなくても赤外透明な物質ならなんでもよいはずですが、Cr2O3は耐食性に優 れ、硬度が大きく傷つきにくいので塗布顔料として優れているのです。
詳しくは、添付資料"Infrered Reflective Inorganic Pigments"をお読みください。
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Date : Thu, 20 Aug 2009 20:00:54 +0900
AA: 佐藤先生
こんなに早くお返事いただけるとは思っていませんでした。
本当にありがとうございました。

粒子径による散乱のためとは思っていませんでした。
文献にも載っていたように、白色のZnOとかTiO2なら有機の顔料を 合わせることで鮮やかな色での遮熱塗料ができるのでしょう。
クロムの系は暗色の遮熱塗料として使われるのでしょう。

3価のクロムですから毒性は低いのでしょうが、6価のクロムの 毒性イメージがあるので一般の遮熱塗料の解説には、クロム顔料を 使っていることを明記している例は少ないようでした。

粒子径をそろえるだけでよいのなら、もう少し安全なイメージの 顔料も考えられると思います。
大変参考になりました。ありがとうございました。
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1172. 縦カー効果を磁性薄膜製膜時の飽和磁化モニターに使えるか

Date: Fri, 25 Sep 2009 16:37:55 +0900
Q: 東京農工大学 名誉教授 佐藤 勝昭 先生
はじめまして。T*社のK*と申します。
弊社では、AMR(素材は、Ni:Fe=81:19のパーマロイです)角度センサーを取扱っています。

 バイアス磁性薄膜の成膜に関しては、比較的多くの論文があり、スパッタリングでも出来る事が確認できました。
処が、通常、AMR素子を角度検出素子として使う場合は、磁化飽和(例えば、20KA/m程度)させる必要があります。
更に、量産時は、モータ等の回転軸角度を検出出来る様に該軸に磁石(例えば、2極磁石)装着し、それによる回転磁界を角度 検出する必要が御座いますので、バラツキを考慮するのしても、バイアス薄膜磁石の飽和磁束密度(又は、飽和磁化) を特定範囲内に加工しなければ、組立の都度、個別に軸側の回転磁石の磁界強度を調整する必要が出て参ります。
これでは、量産に適しません。

従って、該飽和磁束密度を成膜中に常時モニターする方法をWEBで検索中に、先生が記述されたテキスト「磁気工学 効果の基礎と最近の研究展開1」に出会いました。該テキスト中の”縦カー効果”の出力信号を活用してス パッタリング装置を制御する事が出来ないかと勝手に想像しています。

そこで、質問ですが、該縦カー効果で得られる飽和磁束密度の精度(例えば、20KA/m±0.1%位を期待)は、どの程度の 品質(自動最適化調整機能付発振器、Spatial_shaping[DM]、Pulse_shaping[SLM]、Wave_front_Contorol[DM]、Passive_ control等の制御機能を満たすTHGタイプ)のUVレーザ光源を使えば、実現出来るのでしょうか?
又は、飽和磁束密度の値と縦カー効果の角度変化が関係(式)が判れば、目安が付くのかもしれませんので、その辺 の技術情報をお持ちでしたら、ご教授戴けないでしょうか?

目論見通り、該効果が量産用モニターに使え、且、スパッタリング装置の飽和磁束密度の制御信号として使えれば、万 々歳なのですが、… 。

ご多忙中とは存じますが、ご回答方、宜しくお願い申し上げます。
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Date: Sat, 26 Sep 2009 01:06:05 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 本サイトは、質問内容に一般性がなく特定の業務内容の詳細についてコンサルタント的な見解を求める場合にはお答えできません。
ここでは一般論でお答えします。

 カー回転角は一般的には飽和磁化に比例するとは限りません。
成膜時の飽和磁化の違いがは何によるかで異なってきます?
薄膜磁石は単結晶ではなく結晶粒の集合体であると考えられます。
(A)結晶粒自身はきちんとできていて、各結晶粒においては磁気飽和しているとしましょう。
  (1)もし薄膜の密度が低い、すなわち結晶粒の間にすき間があって見かけ上飽和磁化が低い場合は、
     反射光の強度には違いがありますが、カー回転角は変わりません。
  (2)もし薄膜磁石材料に異方性があれば、結晶軸の向きがばらついた場合に全体としての飽和磁化が
     低くなる場合があります。このときはカー回転角も低くなる可能性がありますが、
     誘電率の対角成分の異方性も関与するので、比例するかどうかはわかりません
。 (B)何らかの理由で完全には磁気飽和していない(単磁区になっていない)
  (1)光スポットが磁区のサイズより十分に広いなら、カー回転は平均値となり磁化にほぼ比例します。
  (2)光スポットが磁区のサイズ以下だとどの磁区を見ているかで、回転角が正になったり 負になったりする。
(C)部分的に異なる物質ができたため飽和磁化が小さい
   ・この場合は、物質毎に磁化とカー回転角の関係がちがいますから、カー回転角から飽和磁化を見積もることができません。
従って、比例関係があるか実験で確かめる必要があるでしょう。

・仮にカー回転角と飽和磁化の間に比例関係があるとして、飽和磁化の大きさの精度は、角度を測る方法の精度で決まります。

・使用するレーザ光源ですが、薄膜磁石のカー効果がUV光に対して大きいかどうかわかりません。スペクトルを測定しておく必要があるでしょう。
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Date: Mon, 28 Sep 2009 07:12:45 +0900
AA: 東京農工大学 名誉教授 佐藤 勝昭 先生
いつもお世話になります。T社のKです。

ご回答有難う御座いました。一般論とは言え、ご回答の中には、色々な示唆が沢山盛り込んで戴き感謝に耐えません。

未経験の領域ですが、方向性に関して、自信を持って前に進展出来ると思いました。多分起こり得ると思いますが、 もし、壁にぶち当たった場合は、一般論で結構ですので、宜しくお願い申し上げます。

以上です。
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1173. カーボンブラックの光学特性

Date: Thu, 01 Oct 2009 14:14:10 +0900
Q: S*社のT*と申します。(会社名は非公開でお願い致します)

現在、光学レンズの塗装(墨塗り)効果について色々とシミュレートしております。
レンズとの界面に墨を塗る事で、全反射の条件を変える事が出来ると考えているのですがシミュレートでその様な結果を得る事が出来ていません。
原因として考えられるのは、墨の成分の一つと考えられるカーボンブラックの光学特性が入力されてないからだと思っています。
色々、資料等を探しているのですがカーボンブラックの光学特性と言う考え方自体が間違っているのかその様なものを見つける事が出来ません。
つきましては、カーボンブラックの光学特性について詳しく記載されている文献等御座いましたら教えて頂けないでしょうか?
宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 1 Oct 2009 15:56:27 +0900
A: T様、佐藤勝昭です。
カーボンブラックというのは10-500nmのランダムなザイズをもつ炭素粒子のランダムな構造の集合体です。添付図はその電子顕微鏡像です。
(http://www.koppers.com.au/CCA-Questions-and-Answers/default.aspx)
グラファイトの光学的性質は、自由電子によるドルーデ項とグラファイトのバンド構造 で決まるバンド間遷移とで決まっています。これに対し、カーボンブラックは、光を閉 じこめて外に出さない構造をしているために黒いのです。この点では白金黒や現像銀の 黒と同じです。構造的な原因で光を全面的に吸収するので、その光学的性質は構成して いる粒子のサイズや構造に多少依存しますがスペクトル的にはフラットと考えて差し支 えないでしょう。実際、Photo Acoustic Spectroscopy (PAS)やPhotothermal Deflecti on Spectroscopy (PDS) では、カーボンブラックの分光的平坦性を利用して、吸収100% の標準として、スペクトルの校正にカーボンブラックを用います。
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Date: Fri, 02 Oct 2009 09:50:20 +0900
Q2: 東京農工大学 名誉教授 佐藤様
S社Tでです。お忙しい中の返答ありがとうございます。
カーボンブラックが構造上光を全面吸収する事が分かり疑問点の一つが解決しました。
塗装の効果について私なりに考えた内容を
別ファイルに纏めましたので佐藤先生のご意見をお聞かせ頂けますでしょうか?
お忙しいとは思いますが、宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 15 Oct 2009 15:41:22 +0900
A2: T様、佐藤勝昭です。
お返事が遅くなりました。 「塗装の屈折率がガラスより大きい為、界面で全反射せず塗装面に透過し、カーボンブラックの構造により光を全面吸収する。と言った考えで良いのでしょうか?」というご質問ですが、 「http://www.j-tokkyo.com/2007/C09D/JP2007-016157.shtml」によれば、カーボンブラックの光学定数は n=1.8, κ=7となっています。これだと、たしかにガラスの屈折率1.4より大きいので、御 推定は正しいかと思います。
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Date: Thu, 15 Oct 2009 15:50:36 +0900
AA: 東京農工大学 名誉教授 佐藤様
S社のTです。お忙しい中、お時間を割いて頂きありがとうございます。
素朴な疑問から始まったのですが基礎の基礎から躓いていた事が分かり良い勉強になりました。
本当にありがとうございました。
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1174. ナイロン製品は液体燃料にリサイクルできるか

Date: Sun, 4 Oct 2009 10:02:33 +0900
Q: 佐藤先生、S社Yです。突然のメ-ル失礼いたします.
HPを 拝見し メ-ルを 送らせていただきました どうか、質問よろしくお願い致します。
知り合いが パンストの製造会社に勤めており 大量の廃パンスト(ナイロン+スパンデックス)が できるため どうにか  これを 液体燃料として再生利用できないかと 言う事で 相談させていただきました。
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Date: Thu, 15 Oct 2009 14:28:55 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
 遅くなりました。文献(前川幸洋:繊維学会誌, 55巻, 198頁 (1999))によれば、ナイロン、ポリメタクリル酸メチルは解重合によってモノマーに還元す る事のできるケミカルリサイクル性ポリマーであるとされています。
また、神戸製鋼のKOBE STEEL ENGINEERING REPORTS/Vol. 47 No. 3(Nov. 1997)に野末幾男さんが「解重合反応を利用したモノマー, 低分子量物回収技術は,海外の化学会社を中心にPET,ナイロンを対象として活発に技術開発されてきており,一部では実用化段階に入っている。」 と記載しておられますので、しかるべき会社でリサイクルしていると思われます。
 
東レさんもリサイクルを研究しておられるようなので、お尋ねになってはいかがでしょうか?
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1175. ウェーハの薄膜干渉色除去

Date: Tue, 6 Oct 2009 19:13:30 +0900
Q1: 佐藤先生。
N社K*と申します。
HPを拝見させていただきました。早速ですがご教示願えれば幸いです。
弊社では半導体ウェーハの外観検査装置を開発しています。
ウェーハを5倍対物レンズで白黒ラインセンサに結像させ撮像しパターンマッチングで欠陥検査を行うものです。照明は同軸落射で白色LED(OSLAM)で行っています。
ウェーハ内の複数チップから参照チップ画像を合成し、その各ピクセル濃度に許容値をもたせ被検査チップとマッチングしています。
ところがウェーハの場所によりチップ内のパターンの色が変化し、このため参照チップの許容値が大きくなりすぎてしまいます。濃度の変化は255諧調で50程度でるところがあります。
同じチップ内でも色変化が殆ど出ない場所、パターンもあります。色の変化はおそらくパッシベーション膜(0.5~3μm程度)とウェーハ面の干渉色が出ているものと考えます。
この干渉色を除去する方法がありましたら教えていただけないでしょうか?
よろしくお願いします。
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Date: Wed, 7 Oct 2009 19:03:38 +0900
A1: 一般的に言って、干渉縞の除去は簡単ではありません。
一番よいのはスペクトルを測定し、厚みと屈折率を仮定してシミュレーションを使って、元のスペクトルを推定する方法です。
おそらく市販の分光エリプソメータには、そのようなソフトが付属されているはずです。
 単一波長で、推定するのは不可能に近いです。
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Date: Wed, 7 Oct 2009 19:43:10 +0900
Q2: 佐藤先生
早速のご返事ありがとうございました。
ウェーハの同心円状に明るさムラがでます。透明膜厚は1μ程度のようでウェーハ中心と周辺で 膜厚が変化し薄膜干渉により明るさムラが出ていると推測しています。
現実的な対策は450nmと550nm付近にピークがある
白色LEDのスペクトルと カメラの分光感度をかけ合わせなるべく各波長で等しいカメラ感度となるようフィルタ を工夫するのがいいような気がしています。(複数の波長の干渉縞を取り込み明るさの平準化を図る)
LED照明光の半分を1/2ラムダ板を通すというのは効果ないでしょうか?
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Date: Thu, 15 Oct 2009 16:41:26 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなりました。白色LEDは青と黄色にピークがあるので、干渉縞も2つの単色光に対して起きます。
白黒センサでは、それらの平均したものが、膜厚による濃淡として現れているのでしょうね。
 干渉縞の間隔より十分に小さな欠陥であれば、測定したい試料との標準試料との画像マッチングでを見つけ出せると思います。このとき標準試料か らの光量にばらつきがありすぎて、画像マッチングがうまくいかないということでしょうか。対症療法ですが、明るさの平均をとるというご提案でよ いかと存じます。なお、1/2λ板で干渉を消すことはできません。
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Date: Thu, 15 Oct 2009 17:01:31 +0900
AA: 佐藤先生
ご回答ありがとうございました。
ウェーハにはパッシベーションと呼ばれる透明の保護膜(厚さ0.5~3μmのようです)があります。
チップ内のパターンはどうやらミクロで見ると平坦ではなく、アルミ配線はおそらく1μm程度の厚み があるようで、このアルミ配線部分では特にパッシベーション膜厚が薄くなっているようで、このため 薄膜干渉の影響が強くでているようです。同じウェーハ内でも場所により0.1~0.2μmの膜厚バラツキ はあるようで、参照パターンチップ画像データで検査チップをパターンマッチングで検査していきますが 明るさのばらつきのため、どうしても虚報や欠陥見逃しが生じてしまいます。

白色LEDよりもキセノン光源が望ましいのですが、ランプ寿命が短いのが難点です。とりあえずフィルタ によりLEDスペクトルをなるべく平坦にすることと、欠陥検出ソフトのアルゴリズムの工夫で対処します。

今後ともよろしくお願いいたします。
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1176. 濃度と誘電率の相関

Q: 東京農工大学 佐藤勝昭先生
はじめまして。私は電子機器開発専門の会社を3人で営んでいる(有)S*のA*と申します。
物性関係は専門分野ではないので文献やネットで調査している過程でHPを拝読し、質問させて頂きます。

質問内容は溶液の濃度と誘電率の相関についてです。

近赤外(例えば波長870nm)を溶液に照射し、透過した時間差を計測して濃度を推測しようとしています。

溶液、例えばアルコール(誘電率20)を水(誘電率80)で薄め濃度10%のアルコール溶液を作った場合、誘電率は幾つになるのでしょうか。
又、濃度20%のアルコールを作った場合、誘電率はどのように変わるのでしょうか。
濃度と誘電率の相関を求める方法を、お教え願います。
一般に誘電率の異なる溶液の混合後の誘電率は何に依存するのでしょうか。
併せて文献等があれば、お教え下さい。
お忙しいところ大変恐縮ですが、ご教授願えれば幸いです。
宜しくお願い致します。
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Date: Wed, 7 Oct 2009 18:55:08 +0900
A: A様、佐藤勝昭です。
 一般的には、もし溶質と溶媒の間に化学反応が起きなければ、静的誘電率は両物質の誘電率を体積比で平均したものを見ると考えてよいと思います。
 しかし、もし、時間応答まで考えた場合は、両者に時間応答の違いが考えられますので、各時間における平均を取る必要があると思われ、単純な解析はできないと思います。
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Date: Fri, 9 Oct 2009 09:29:08 +0900
AA: 東京農工大学 佐藤勝昭先生
出張先からの対応、恐縮しております。有り難う御座います。
混合後の静的誘電率は、両物質の誘電率を体積比の平均値であるとのこと、理解できました。
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Date: Mon, 26 Oct 2009 22:57
A2: A様、佐藤勝昭です。
 先日、濃度と誘電率の関係についての質問にお答えしましたが、
このほどC社のH様から
コメントを頂きましたので転送します。
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Date: Tue, 27 Oct 2009 13:27:23 +0900
AA2:Aです。
お世話になっております。
濃度と誘電率の相関の件ですが、C社のH様から頂いたコメントにあるように、均一に混合系の誘電率を示す一般式は 現時点で不明、とのこと。了解しました。
現在試作器を開発中なので、機器が出来上がり、もしも誘電率が計測出来るようになったら、試行錯誤を繰り返し実験的にトライしてみます。
佐藤勝昭先生並びにH様に厚く御礼申し上げます。
ご丁寧な対応有り難う御座いました。
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Date : Wed, 28 Oct 2009 23:52:30 +0900
A3: A様、佐藤勝昭です。
 混合物の誘電率の理論は、Perambur S. Neelakanta: Handbook of Electromagnetic Materials のp110に載っています。これによると、Lichteneckerの対数法則について次のように書 かれています。
*************************************************************
Lichtenecker[13]とLichtenecker and Rother[14]は、混合の理論を確率問題ととらえることによって、
統計学の一般理論から対数混合則を導いた。
2つの成分の混合系において
 εeffk=θε1k+(1-θ)ε2k (-1≦k≦1) (4.14)
と書くことができる。
 ここに、k=1のとき、(4.14)式は、積層誘電体において電場が積層面内にある場合に導かれる式に相当し、
k=-1のとき、積層誘電体において電場が積層面に垂直にある場合に導かれる式に相当する。
 無秩序系では、kは0に近づき、(4.14)式は
 εeff=ε1θ ε2(1-θ)             (4.15a)
あるいは、
 log(εeff)=θlog(ε1)+(1-θ)log(ε2)     (4.15b)
となる。
[13] K. Lichtenecker: Phys. Zeitsch. vol.30 (1929) 805-809.
[14] K. Lichtenecker and K. Rother: Phys. Zeitsch. vol.32 (1938) 255-260.
*************************************************************
参考になれば幸いです。
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Date: Thu, 29 Oct 2009 09:17:35 +0900
AA: 東京農工大学 佐藤勝昭先生
お世話になっております。
資料並びに解説有り難う御座います。
若干難しそうですが、参考にさせて頂きます。
取り急ぎ御礼まで。 有り難う御座いました。
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1176C. 「濃度と誘電率の関係」へのコメント

Date: Mon, 26 Oct 2009 11:03:00 +0900
C:東京農工大学 佐藤勝昭先生
はじめまして。
C*社のH*と申します。(HP公開時は匿名でお願いいたします。)
いつもHPを拝見させていただき、勉強をさせていただいております。
さて、「1176. 濃度と誘電率の相関」の佐藤先生のご回答に疑問があります。
佐藤先生のご回答では、静的な誘電率の範囲に限って言えば、誘電率の異なる2 種の物質が均一に混ざっているときの実効的な誘電率は、「両物質の誘電率を体 積比で平均したも」とされていますが、これは正しいでしょうか。
例えば誘電率ε1の物質(媒質1)の体積分率がv1、誘電率ε2の物質(媒質 2)の体積分率がv2であった場合、均一に混合された溶液の誘電率ε*は
ε*=ε11+ε22
ということになるのでしょうか。
上記の式は、媒質1で満たされたキャパシタと媒質2で満たされたキャパシタを 並列に接続したキャパシタの合成の誘電率の式に一致します。
しかし、均一に混合した溶液の場合、両媒質が並列に分離されているのではない ので、上記式は成り立たないのではないかと考えられないでしょうか。
私が調べた限りでは、均一に混合系の誘電率を示す一般式は見つかりませんでし たが、幾つか経験的な実験式は提案されているようです。具体的な形は示しませ んが、
・Weinerの一般式
Lichteneckerの対数式
・Lichtenecker-Rotherのべき式
等があるようです。
以上です。
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Date : Mon, 26 Oct 2009 11:19:30 +0900
A:H様、佐藤てす。貴重なご指摘ありがとうございました。
物質の分極は単位体積あたりの電気双極子モーメントの総和なので単純に体積比と書きましたが溶液の場合はそれ ほど簡単ではありませんね。訂正したいと思います。ありがとうございました。
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1177. 基板と導電体の密着性

Date: Fri, 16 Oct 2009 11:33:49 +0900
佐藤様
はじめまして
A*社のY*と申します。(公開時は匿社名でお願いいたします)
いつも先生のHPを拝見させていただき、参考にさせていただいております。
本日は導電ペーストと基板(ITO基板やPETフィルム等)の密着に関して質問させていただきます。
現在業務において導電ペーストと基板との密着性を向上させたいと考えております。
以前仕事関数の差異がお互いの密着(結合?)に寄与しているという話を耳にしたことがあるのですが、 仕事関数と密着性に関係はあるものなのでしょうか?
文献なども探しているのですが、なかなか見つけることが出来ておりません。
もしメカニズムなどお分かりになるようでしたら、教えていただければ幸いかと存じます。
宜しくお願い致します。
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Date: Fri, 16 Oct 2009 15:29:47 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
 仕事関数は電子を真空中に取り出すために必要なエネルギーです。極めて清浄な金属 表面と半導体表面を接触させたときに、金属の仕事関数が半導体の電子親和力より低け れば、オーム性の接触ができることが知られています。Y様の仰る「密着性」が電気 的な密着性を表すとすれば、清浄表面の場合に仕事関数が関係することがわかります。
 おたずねの導電性ペーストとITOまたはPETとの密着性というのは、電気的なオーム性 接触を指しているのではなく、機械的な密着性を指しておられるのだと思います。この ような機械的密着性には、熱処理時におけるさまざまな表面の変質が関与しており、仕 事関数に関連づけることは困難かと存じます。たとえば、導電性ペーストをPETに塗布 して熱処理したとき、ペーストに含まれた有機物成分とPET表面の間で架橋・化合物形 成などの変性が起きている可能性があります。また、基板クラック等への金属の拡散な ども考えられます。仕事関数との関係は、あったとしても「たまたま」あったのではな いかと考えます。
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Date: Fri, 16 Oct 2009 15:45:33 +0900
AA: 佐藤様
ご丁寧な教示ありがとうございます。
おっしゃられますように密着性はPET,ITOと導電体との機械的な密着性を意味しております。
基板表面の有機物による密着性の変動なども評価しており、PET表面間での化学反応(結合)も検討しております。
今回のご教示を参考にさらに業務を進めていきたいと思います。
誠にありがとうございます。
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1178. 表面エネルギー

Date: Wed, 28 Oct 2009 22:41:55 +0900
Q: はじめまして、佐藤先生
A*大学 学部3年生のM*と申します。
(HPでは匿名でお願いします。)
いつもHPの方拝見させていただいています。
先生の解答が分かりやすいのではじめて質問させていただきます。
*質問事項
単純立方格子の表面エネルギーの求め方はわかるのですが、
最隣接原始と相互作用のみを考慮した場合の
面心立方格子の各面方位の表面エネルギーの
求め方がわからないので教えてください。
よろしくお願いします。
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Date: Wed, 4 Nov 2009 01:06:39 +0900
A: M君、佐藤勝昭です。
 出張等で返事が遅くなりました。
ご質問は、結晶の形態に関するウルフの理論に関しての課題でしょうか?
ヒントを差し上げましょう。
 ある結晶面についての表面エネルギーを計算するには、その面の1つの原子あたり何 本の結合が切れているかを考えます。
たとえばfcc格子の(001)表面では、1原子あたり4本の結合が切れます。
隣接原子どうしの間の相互作用をJとすると、結合を切ったときのエネルギーの損失は
結合1本につき1原子あたりJ/2となります。
(001)面では単位結晶面(面積a^2)に2個の原子があります。表面エネルギー密度は、
4×(J/2)/(a2/2)=4J/a2
となります。他の面も同様にして、何本切れるかを考えてください。
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1179. 土壌の水分センサ

Date: Thu, 5 Nov 2009 19:34:21 +0900
Q1: O*大K*です。
物性なんでもQ&A HPを見させていただきメールさせてもらいました。
現在卒業論文で土壌の水分センサを作製しており、電極にはんだ付けをした単芯銅線を使用しているのですが、
電界によって分極し、電界の印加をやめると元に戻り数値が安定して取ることができません。
なにか”分極しない”もしくは”分極しずらい”電極素材は無いでしょうか?
お忙しいとは思いますが返信お願いします。
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Date: Thu, 5 Nov 2009 22:56:09 +0900
A1: K君、佐藤勝昭です。
 「分極する」とは、どういう状況を指して言っているのか、わかりません。
もう少し実験のやり方や、何を見て「分極」と判断しているのかについて説明してください。
できれば、図を書いてwordに貼り付け、メール添付でお送り下さい。
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Date: Fri, 6 Nov 2009 12:39:42 +0900
Q2: 言葉が足りず申し訳ありません。
図1.のように多孔質ブロック(石膏)を円柱状に成型し、内部に単芯銅線を埋め込み電極としています。
石膏ブロックに吸水させ、含水率ごとに電気を流し、抵抗値の変化を測定していますが、
含水率ごとの抵抗値が安定せず、電極と吸水体について考察しています。
 現在、電極の抵抗値の変化をみるために、図2のように水溶液中に電極をさし、抵抗値を測っているのですが、
Aを+につなぎ、Bを-につなぎで長時間通電することにより、A+、B-でのときには抵抗値は低く、
B+、A-でつなぐと抵抗値が高くなるため極性が付いてしまったと考察しています。
印加を止めると徐々にA+、B-でつないだ時の抵抗が高くなり、初期値まで戻ります。
センサ全体を安価で作製したいのですが、安価で、極性が付かないまたは極性が付きにくい電極素材は無いでしょうか?
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Date: Fri, 6 Nov 2009 14:46:40 +0900
A2: K君、佐藤勝昭です。
 説明を見る限り、電極の問題ではありません。水に2つの電極を差し込んで通電して いるのですから電気分解の実験と同じです。
純水だと電流は流れませんが石膏に含まれる不純物がイオンとして溶け出すと電流が流れ、 水を電気分解することになります。+極と-極は等価ではなくなります。
電極付近に電気2重層ができるため電圧降下がおき、本当の抵抗率は測定できません。
間にもう2本電極を差し込んでその電極間の電圧を測って、外側の電極間を流れる電流で割れば 水溶液の(または石膏にしみこんだ水の)抵抗値がわかるはずです。このような測定法を四端子法と言います。
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Date: Mon, 9 Nov 2009 12:55:50 +0900
Q3: ありがとうございます
電極の配置は送付した図のように行い、BC間の電圧をAD間の電流でわれば抵抗値が求められるということでよろしいのでしょうか?
予備実験として、カップに入れた水道水100mlに、石膏に埋め込んでいない半田付けした電極を差し込み、
長時間通電させると抵抗値が下がり、通電を止めて測定時のみ通電させると時間の経過とともに抵抗値が上昇してしまうのですが、
これは誘電分極なのでしょうか?
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Date: Mon, 9 Nov 2009 20:36:45 +0900
A3: K君、佐藤勝昭です。
 4端子法は、あなたの添付図の通りで結構です。
これで測った抵抗値は電極における電圧降下には依存しないはずですから、
分極の影響なく抵抗値そのものの変化を見ていると思います。
長時間通電しますと、水中にイオンが増加します。
イオンが電気のキャリアとなるため通電によって電気抵抗が下がるのです。
一方、測定時のみ通電すると、通電時にイオンができますが、量が少ないので 電気抵抗が高いのです。
水道水は塩化物イオンCl-が含まれているため電流が流れます。
陰極では,溶液中の陽イオンが電子を受け取り,還元反応が起こります。一方,陽極で は溶液中の陰イオンが電子を失い,酸化反応が起こります。
+電極ではCu電極がCu2+となって電子が電極に供給されます。通電とともに水中の銅イ オンが増えます。
ー電極ではCu2+に電子が供給されCuが析出します。
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1180. クロムの弾性定数の温度変化

Date: Thu, 12 Nov 2009 13:55:16 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
 物性なんでもQ&Aを見せていただき、メールさせていただきました。
私はP社のN*と申します。
私は弾性波デバイスの開発をしており、ニオブ酸リチウム単結晶上にくし型 電極を構成し、その上にSiO2などの誘電体薄膜を積層した構成のシミュレー ションを実施していますが、現在前記くし型電極の材料としてクロムを用いた 場合のシミュレーションをしようとしたところ、25℃の弾性率はわかるのです が、-30°や85℃における弾性率がわからず、デバイスの温度特性の シミュレーションができずに困っています。知る方法はありませんでしょうか? よろしくお願いいたします。
 以上
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Date: Thu, 12 Nov 2009 21:11:58 +0900
A: N様、佐藤勝昭@大阪です。
旅先で資料がないのですが、
http://arxiv.org/ftp/physics/papers/0601/0601101.pdf に体積弾性率(bulk modulus)の1気圧下での温度依存性が載っています。
比較的簡単なパラメータ3つで金属から酸化物まで温度依存性を説明できるようです。
3つとは、
体膨張係数、等温体積弾性率、アンダーソン・グリュナイゼンパラメータのゼロ温度での値です。
Ag, MgO, NaClなどに適用できるようです。
Crについては載っていませんが、パラメータを図書館等で探して、試してご覧になってはいかがでしょう。
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Date: Fri, 13 Nov 2009 09:15:06 +0900
佐藤先生、P社のNです。
旅先にもかかわらず早速ご対応くださり、ありがとうございます。
早速検討してみます。
 以上
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1181. ショットキー障壁高さに対するボイドの影響

Date : Tue, 24 Nov 2009 11:06:03 +0900
Q1:東京農工大 佐藤先生
 突然のメール失礼いたします。
私、T*社で研究開発部門に所属しておりますT*と申します。
(HPには、会社名、氏名は伏せて頂くようお願いします。)
”ショットキーバリア”について、調べていたところ佐藤先生のHPがヒットして、質問させていただきたく メールを差し上げている次第でございます。
以下、質問内容です。
金属-半導体の接合面にボイドなどの阻害層が形成された場合ショットキーバリア高さは高くなってしまうのでしょうか?
もし高くなるのであればその理屈を教えていただけないでしょうか?
ショットキーバリアは、金属の仕事関数と半導体の電子親和力の差であるので、ボイド(接触面積:小)には関係ないと認識していたのですが。
論文等を調査したところ、ボイドの形成はショットキーバリアを増大させるそうですがその理屈までは述べられておらず、判然としません。
以上、お手数ではございますが、ご回答の程よろしくお願いいたします。
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Date : Tue, 24 Nov 2009 15:06:04 +0900
A1:T様、佐藤勝昭です。
 理想的には、金属側から見たショットキーバリアは、金属の仕事関数と半導体の電子 親和力の差ですが、実際に金属・半導体接触を作ったとき、障壁の高さは理論的に計算 したものとは大幅に異なってきます。たとえば、Alはn形シリコンともp形シリコンとも ショットキー障壁を作り、障壁の高さは、それぞれ0.72eV、0.58eVということです。こ れに対して理論式から得られるn形のショットキー障壁は0.18eV, p形のショットキー 障壁は0.9eVです 。このちがいは、実際の金属・半導体界面の詳細が理想通りでないこ とから生じています。理想では、金属も半導体も完全に純粋で、両者の間には相互作用 がなく、余分の界面層もないとしていますが、実際には界面には界面準位や界面層が存 在するのです。
 ボイドにはいろいろなケースがありますが、ボイドのところで結合が切れている場合 には、そこが界面準位となって半導体側のフェルミ準位をバンドギャップ中央にピニン グする可能性があります。すると、半導体側から見たバリア高さV=Φm-Φsが大きくな るという現象がおきます。たとえ、ボイドの面積が小さくても、そこでフェルミ準位が ピニングされてしまうと、全体に影響するのではないかと存じます。
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Date : Tue, 24 Nov 2009 16:11:42 +0900
Q2:東京農工大 佐藤先生
T社Tです。
早速のご返信、また、ご丁寧なご解説を頂き心より感謝いたします。
私からの情報が不足しておりましたので、再度質問させていただいてもよろしいでしょうか。
二度手間になってしまい申し訳ございません。
窒化物半導体(GaN)のようなワイドバンドギャップをもつ半導体と金属との接合を考えております。
”ボイド”についてですが、半導体層上に形成した金属が高温(融点に近い温度)の熱処理等によって 一部半導体層との界面に空隙が形成されてしまった場合を想定しています。
(つまり、金属が熱拡散して形成されたボイドのことです。)
上記のようなボイドが半導体層と金属層界面に形成された場合ショットキーバリアが増大する理屈についてご教授願います。 単純に、金属と半導体層の接触面積が変動しているだけなのでショットキーバリア高さを揺るがす要因には成り得ないと 考えているのですが、実験ではボイドが形成されるとショットキーバリア高さは大きくなっています。
お忙しいところ、大変恐縮ではございますが何卒ご教授の程よろしくお願いいたします。
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Date : Tue, 24 Nov 2009 16:33:29 +0900
A2:様、佐藤勝昭です。
 ボイドは金属側にあって、半導体はその部分でむき出しになっているのですね。
確かに、「単に金属と半導体層の接触面積が小さい」だけなら、ショットキー障壁の高さは変わらないはずですね。
 もし、何かが起きているとすれば、
(1)ボイドがショットキー障壁の原因ではなく、ボイドができるような熱処理をしたために、ボイドができると同時に接触している界面に酸素等が進入して酸化物等のの薄い層が生じてしまった。
(2)もとボイド部分にあった金属の一部が半導体に拡散し、界面状態が変化した。
などが考えられます。
 界面の断面TEM観察、局所的な元素分布の分析などの観測が必要ではないでしょうか。
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Date : Tue, 24 Nov 2009 16:50:15 +0900
AA: 東京農工大 佐藤先生
Tです。ご返信ありがとうございます。
STEM-EDX分析を実施していましたので結果をよく見返してみました。
すると、ボイド部分にはわずかですがO2が検出されていました。
(あまりにわずかすぎて見逃していました。)
先生のご推察の通り、界面に(薄膜の)酸化膜が形成されているとするとショットキーバリア高さが高くなる理由に十分なり得ます。
分析のn増しをして、同様の現象が起こるかどうか確認してみます。
適切なご回答を頂き、本当にありがとうございました。
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1182. 貴金属と遷移金属の電気抵抗の違い

Date: Thu, 3 Dec 2009 14:56:31 +0900
Q1: 佐藤先生
物性なんでもQ&Aを拝見させていただきご質問したいと思い本メールをお送りいたしました。
なお、Webへの回答公開については甚だ恐縮ですが匿名としてS社Mとしてお書き添えいただければ幸いです。
大変不躾で申し訳ありませんが、質問の内容は下記の通りです。
昨今、電気特性についてあれこれ検討しておりますが、ふと電気抵抗について素朴な疑問を持ちましたので ご質問させていただければと思います。
質問内容
金属抵抗の違いはなぜ生まれるのか?
銅や銀などの貴金属類の抵抗に対し、鉄やニッケルなどの遷移金属は概ね一桁高い値を示しているように思います。
先の公開回答の中で946. 負の磁気抵抗効果の記載において、以下の内容を拝見しました。
>伝導電子はs電子、磁化はd電子からもたらされます。d電子は、ホールを介した相互作用で強磁性的に結合し、磁性半導体の磁化をもたらします。
とありますが、絶縁体の中にはモット絶縁体というものがあり、いままで単純に考えてきた金属の導電性については半導体で用いられるバンドギャップの概念以外に 必要な概念があるのではないかと思いご質問と相成りました。
曖昧な質問で大変恐縮ですが何か手がかりを頂けるようでしたら幸いです。
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Date: Thu, 3 Dec 2009 21:44:12 +0900
A1: M様、佐藤勝昭です。
 貴金属と遷移金属の電気抵抗率の違いについてのご質問ですが、 貴金属と遷移金属のバンド構造の違いを考えなければなりません。
電気の伝導はフェルミ準位Ef付近のエネルギーを持つ電子が担っています。
貴金属のバンド図を見ると、d電子バンドがフェルミ準位より2~3eVだけ 深いところにあります。一方、遷移金属のバンド図を見ると、フェルミ準位が dバンドの中にあることがわかります。
d電子は局在性が強く有効質量が大きいので移動度が低いのです。これに対し s電子は結晶全体に広がり有効質量が小さく移動度が高いのです。
遷移金属ではs電子とd電子の両方が伝導に寄与しますが、s電子が散乱されてd電子帯に 入り込むと移動度が低くなるので、全体として抵抗が高くなります。
貴金属ではs電子のみが伝導に寄与するので抵抗が低いと考えられます。
 もう一つ遷移金属の抵抗が高い理由が、スピン散乱です。たとえばNiでは キュリー点の直下でスピンの揺らぎが大きくなっているために散乱が大きい と考えられています。
 なお通常の金属においてはモット絶縁体のことは考える必要がないでしょう。
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Date: Fri, 4 Dec 2009 09:15:04 +0900
Q2: 佐藤先生
 おはようございます。S社のMです。
懇切丁寧に、また判りやすい解説をありがとうございます。
本回答内容に大変感謝しつつ、可能ならばもう一つご相談させていただきたいのですが よろしいでしょうか。

 フェライトなどの絶縁タイプの磁性体に対し、金属磁性体というものがあります。
 金属磁性体は往々にして、高周波特性が良いものが多く使用を検討しています。
 なぜ金属磁性材料では、高周波特性が一般的に高いのでしょうか。

 以上 度重なる質問で恐縮ですが、もしヒントを頂けるようでしたら幸いです。
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Date: Fri, 4 Dec 2009 12:02:23 +0900
A2: M様、佐藤勝昭です。
 磁性材料の高周波応用についてのおたずねですが、私は、この分野の専門家ではあり ませんので、一般的な知識でお答えします。
 高周波の電磁波は、表皮効果のためにバルクの金属磁性体には浸入できません。この ため、絶縁性の磁性体であるフェライトが使われてきました。けれども、フェライトはフ ェリ磁性であるため磁化が小さく初透磁率が大きくならないという問題がありました。
 バルクではなく薄膜で、厚さがskin depthより十分薄ければ、金属であっても磁界は 浸入できるのでかなりの高周波まで使うことができます。
 しかし、侵入深さの問題は解決しても、渦電流損失と、ヒステリシス損失の問題は残ります。
渦電流損失を抑えるには、電気抵抗率を高くすればよく、ヒステリシス損失を抑えるには、 保磁力(従って磁気異方性)を小さくすればよいのです。

 電気抵抗率が大きく、磁気異方性の小さな材料としてはセンダストに代表されるFe-Al合金(ρ=0.8~1.4μΩm, Hc=2-4A/m)や、Co系アモルファス合金(Co-Fe-Si=B)(ρ~1μΩm,Hc=0.16~3.58A/m)があります。

 さらにアモルファス合金を熱処理によって結晶粒がナノスケールまで微細化した微結 晶を析出しますと,微細化とともに実効的に磁気異方性が減少し、高透磁率の高周波ソ フト材料が得られます。
 このほか、金属の連続膜に比べ絶縁体に金属磁性微粒子を埋め込んだナノ複合材料で は電気抵抗率が十分高いので表皮深さも長くなり、高周波用途に適しているとされます。
 詳細は、その関係の書物を読まれるか、専門家である東北大学名誉教授の島田先生な どにお尋ねください。
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Date: Fri, 4 Dec 2009 13:39:28 +0900
AA: 佐藤先生,
 専門外の内容をご質問したにも関わらず丁寧なご回答まことにありがとうございました。
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1183. 酸化物半導体の酸素空孔がドナーになる理由

Date: Thu, 3 Dec 2009 22:09:57 +0900
Q:佐藤勝昭 先生、D*大学修士1年Y*と申します。
Webにアップする場合には匿名を希望します。
先生のHPを拝見し、勉強させていただいております。
今回、酸化物半導体のドナーの発生メカニズムについてお教え願いたく思います。
ZnOやSnO2などの酸化物半導体では質量作用の法則による推定から、酸素欠陥がドナーとして働くと 多くの本に記述されていました。
SnO2であれば、マイナス2価のO2-が抜けて(1/2)O2となって外に出る際に 空孔部分に電子を2個置いて行き、その電子がドナー電子として働くそうなのですが
プラス4価のSn4+のクーロン力によって、Sn原子に束縛され プラス2価のSn2+として安定状態となったりはしないのでしょうか?
また、何も存在しない空孔がドナーの発生要因となるのもあまりうまくイメージができません。
大変初歩的な質問かもしれませんが、お教え願いたく思います。
宜しくお願い致します。
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Date: Thu, 3 Dec 2009 23:28:30 +0900
A: Y君、佐藤勝昭です。
 酸化物半導体は、Si、GaAs等とちがって元素添加によるドーピングがむずかしいので、 欠陥由来のドナーが使われることが多いです。
 共有結合性のGaAsにおいてもAs空孔はドナーとして働きます。
GaAsにおいては、正電荷・負電荷が周期的に並んでおり全体としては中性になっています。
 負電荷のAsが空孔となると、空孔の位置にあたかも正の電荷があるかのように振る舞い、 結合が切れて余った電子がこの正電荷にクーロン相互作用で束縛されドナーとなります。
空孔のないところの原子は電荷的には中性なので、電子を束縛することはありません。
 SnO2において、確かにご指摘のように、SnとOはSn4+イオンとO2-イオンが静電的に 結合するイオン結合性を持っていますが、同時にSnとOが電子を出し合って結合する 共有結合性も持っています。
 この見方では酸素空孔は、GaAs中のAs空孔のように正電荷として働き、電子を束縛 してドナーとなります。
 なお、東北大学の川崎先生は、ZnOにGa添加でn形を、N添加でp形の作製に成功され UV発光ダイオードを作製しておられます。結晶性の良いZnO試料を作れば、欠陥によらずにドーピングできます。
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Date: Sat, 5 Dec 2009 16:10:07 +0900
Q2: 佐藤勝昭 先生
D大学修士2年Yです。
早速の御返答ありがとうございます。
大変参考になりました。

現在疑問に残る点がありまして 何点か質問させていただきたく思います。

イオン結合性と共有結合性が共存する様子というものを うまくイメージすることができません。
最外殻の電子はどのように結合に関与しているのでしょうか?

共有結合の観点から、Sn原子が中性となるのもよくわかりません。
SnとOが、Snの最外殻電子を共有し合うことで共有結合になるのなら Oが抜けた場合にその電子は もともとあったSnに戻る形で束縛されないのでしょうか?

空孔の位置にあたかも正の電荷があるかのように振る舞うとのことですが SnO2であればこれは、もともとあったマイナス2価のO2-が抜けると 0価の何もない状態が出現し、-2から0に変化するので 実効的にプラス2価の正の電荷を持った状態になるということなのでしょうか?
そしてこれはホールの概念とはまた違ったものなのでしょうか?

質量作用の法則を用いて、酸素分圧によるドナーの発生源の推定の話を 「電気伝導性酸化物 (増補版)」という本で読み、
クレーガー=ビンクの表記法を知ったのですが SnO2であれば

O^x ⇔ 2e + (1/2)O2 + Vo^・・
O^x :通常のSnO2の中の酸素原子
Vo^・・ : プラス2価の有効電荷を持った酸素位置の空孔

となり、プラス2価の有効電荷をもった酸素空孔として取り扱い、
2価のイオンをひとつの塊として質量作用の法則を展開していき

 [e]2 * [Vo^・・] * [Po2]1/2= k
[e]=[Vo・・] = n
n3 * [Po2]1/2 = k
n ∝ [Po2]-1/6
n : 電荷キャリアの数
[Po2] : 酸素分圧
k : 平衡定数

となるようでした。
もし酸素空孔がドナーならば 電荷キャリアの数nと比例関係にある伝導度σが 酸素分圧の-1/6乗に比例し、実験結果は-1/6.5乗に比例したので 酸素空孔がドナーらしいと結論付けていました。

電気伝導性酸化物の本と、そこに書かれていた文献 そして文献に書かれいていた内容から論文を検索し http://dspace.mit.edu/handle/1721.1/13608 このページにある論文の12~13ページを元にして 式を書きました。

メールでの式の表現は大変見づらいもので申し訳ないのですが マイナス1価の電子[e] とプラス2価の酸素空孔[Vo^・・] が 価数が違うのに電荷キャリアの数としては同じとなるのが不思議でなりません。
実体のある電子と、実効的でしかない空孔の取り扱い方は 違うのだとは思うのですが、その考え方がよくわかりません。

大変長い質問となってしまい恐縮ですがお教え願いたく思います。
宜しくお願い致します。
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Date: Sun, 6 Dec 2009 01:42:08 +0900
A2: Y君、佐藤勝昭です。
(1)イオン結合性か共有結合性か.
は佐藤勝昭編著「応用物性」に掲載しているNaCl, Si, Ge, CuInSe2の電子分布です。
またGaAsの電子分布も付け加えてあります。
NaClは完全なイオン性なので、電子分布の等高線図にはNaの山とClの山の間に明確な谷があります。
これに対してIV族のSiやGeは100%共有結合です。ここでは原子間に電子分布の高い場所が見られます。
IV族→II-VI族→I-III-V2族と置き換えると、CuInSe2のようなカルコパイライト構造になりますが、 ここでは、(程度問題ですが)Cu-Se間は共有性、In-Se間はイオン性が強いことがわかります。
Ge→GaAs→ZnSeと行くにつれて共有性に対するイオン性の割合が増加していきます。つまり、電子分布 で見る限り、共有性とイオン性は連続しているということです。
 SnO2についても私の手元にはありませんが、多分計算した人がいると思います。
Snは4族なのでSn-O結合のイオン性はそれほど強くないのではないかと存じます。

(2) 導電性酸化物の業界では質量作用の法則を使うのですね。
たしかに、[e] = [Vo・・] = n はおかしい(多分誤植)ですが、
2[e]=[Vo・・] =2n としても
 [e]2 * [Vo^・・] * [Po2]1/2= k
2n3 =k[Po2]-1/2
従って、
 n=(k/2)1/3 [Po2]-1/6
となり結論は変わりません。
 この考えも1つの考え方だと思いますが、イオン結合で考えるのは限界があります。

これ以上の疑問は指導教員に聞いてください。
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Date: Sun, 6 Dec 2009 18:50:39 +0900
AA: 佐藤勝昭 先生
D大学修士2年Yです。
御返答ありがとうございます。
共有結合性とイオン結合性が連続している様子が図を見て良く分かりました。
共有結合性も踏まえてもう少しじっくり考え不明な点があれば、指導教員に質問してみることにします。
浅学な私の質問に懇切丁寧にお答えいただき本当にありがとうございました。
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1184. 「クントの実験」で鉄棒を擦ると振動する理由

Date: Mon, 07 Dec 2009 16:06:02 +0900
Q: 佐藤勝昭 先生
はじめまして
T*社 技術部のH*と申します(HPには、会社名、氏名は伏せて頂くようお願いします。)
電子回路設計を行っておりますが最近センサー関係に興味を持ち 現在超音波センサーについて調べているのですが、たまたま 定在波の可視化で有名な「クントの実験」を見て鉄棒を擦ることにより、 鉄棒を振動させガラス管内に定在波を発生させガラス管内の粉末で可視化 することですが、ここで鉄棒を擦すると振動する原理が分らず調べているうちに 佐藤先生のHPへたどり着きました。
お教え願いたくお願いします。
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Date: Tue, 8 Dec 2009 00:51:37 +0900
A:H様、佐藤勝昭です。
 クントの実験は、学生実験の定番ですが、あなたのような質問が出るとは思っていませんでした。
鉄棒をこすると音がしますよね。これは、摩擦によってノイズのようなわずかな振動が発生したことを意味しています。
それが、共振器に入ると特定の共振波長のみが増幅されて、定在波がガラス管内に立つのです。
 共振器にはQ値というものがあって、わずかな電圧が共振によってQ倍に増幅されることを、電子回路設計の専門家 のあなたならお分かりになると思います。
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Date: Tue, 08 Dec 2009 11:11:50 +0900
Q2: 佐藤先生
早速のご返信有難うございます。
奇抜な質問のようですが私はむしろ鉄棒の振動のほうに興味がありもう少し物理的な質問をさせて下さい。
気体や流体の粗密波などによる振動は理解できるのですが個体の振動というものをもう少し深く理解したい思ってい ます。
鉄棒すなわち金属を擦ることは、摩擦熱や静電気などが発生し金属の原子の振動や電子の移動が起こり これが振動(弾性波など)となるのでしょうか。さらに振動が大きくなり固有振動数に共振するとひずみが が生じ、物質によっては原子の共有結合が崩れスプーン曲げなどのように変形することになるのでしょうか。
ちょっと雑学な質問で申し訳ありませんがご教授お願いします。
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Date: Tue, 8 Dec 2009 12:59:38 +0900
A2: H様、佐藤勝昭です。
 鉄棒をこすったときに弾性波が生じるメカニズムには、純粋に力学的な過程を考えれ ばよいのであって、熱や電子を介在させる必要はないと思います。
 もし鉄棒と指の間に摩擦がなければ指でこすっても応力は働きません。摩擦があると いうことは表面が平坦ではなくでこぼこしていて、ミクロに見ると金属の突部と指先の 分子とが触れたり離れたりします。このため、金属の突部には、触れて動く方向に応力 が加わりひずみます。ひずみとは金属原子に微小な移動が起きたことを意味します。指 と金属突部が離れるとひずみは元に戻ろうとして、逆方向に原子が移動します。これに よって金属格子に振動するひずみが加わり、それが金属柱を弾性波として伝搬すると考 えられます。
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Tue, 08 Dec 2009 15:26:57 +0900
AA: 佐藤先生
お忙しい中、適切な回答を頂き有難うございました。物理が面白くなってきたので また疑問等が有りましたらよろしくご教授お願いします。
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1185. プロピレングリコールの密度と定圧比熱

Q: 私はK**大の機械システム4年のH*と申します(Webには匿名でお願いします)。
図書館やインターネットで探しても見つからずにいたところ、貴研究室のホームページを拝見しました。
失礼ながら質問させていただきます。
プロピレングリコールの密度(標準気圧、20℃及び30℃)と定圧比熱(標準気圧、20℃及び30℃)を教えていただけませんか?
熱交換器でプロピレングリコールを使おうと思い、現在熱設計しています。
どうかよろしくお願いします。
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Date: Mon, 7 Dec 2009 23:51:46 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 propylene glycolについてはわたしもデータは持ち合わせませんが、英文でグーグル検索してご覧なさい。
密度は、Googleでpropylene glycol densityとして検索すると
 密度 1.036 g/cm3 (標準温度) となっています。
一方、比熱は、propylene glycol specific heatとして検索すると
 比熱 2.4702 kJ/(kg*K) at 20℃
調べることができます。
 比熱の温度変化はLyondell社のWeb
http://www.lyondellbasell.com/techlit/techlit/2516.pdf
に載っています。ただし、アメリカの会社なのでデータはすべて ヤードポンド法、華氏温度で書かれているので換算が必要です。
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Date: Tue, 8 Dec 2009 00:39:32 +0900
AA: 夜遅くにもかかわらずご回答していただきありがとうございます。
英文で検索するのは思いつきませんでした。
本当にありがとうございました。
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1186. ATO, CeB6を用いた熱線遮断塗料

Date: Tue, 08 Dec 2009 22:14:21 +0900
Q: 佐藤先生
以前、
熱線遮蔽塗料について質問させていただいたI社のSと申します。
その折は丁寧にお答えいただき、ありがとうございました。
(今回もホームページでは匿名でお願いいたします。)
今回も熱線遮蔽材料の質問でございます。

導電性の微粒子を分散させたインクを塗布した熱線遮蔽フィルム があることを知りました。
http://www.smm.co.jp/product/kinousei/shahei.html

特許などの情報から、このホームページの図でFMF-3Sはアンチモンドープの酸化錫(ATO)を入れたもの、 FMF-7Sはホウ化ランタン(LaB6)だと思われます。
この図を見て疑問に思ったことがあります。
文献などを調べますと、薄膜のATO、単結晶のLaB6ともに 1000-1300nm以上では自由電子による反射が見られます。

ところが微粒子の場合、ATOではある波長以上の光が反射されて しまうのに対して、LaB6は900nmに吸収のピークがありま すが、より長波長側は透過してしまいます。

表面プラズモンが関係しているのではないかと思いますが、ATOと LaB6の振る舞いの差がわかりません。

お時間が取れるときで結構ですので、ご説明いただけると助かります。
よろしくお願いいたします。
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Date: Wed, 9 Dec 2009 10:52:03 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 ホウ化ランタンを使っているのは、FMF-7SではなくKHF-7Sですね。
酸化スズは本来は透明な物質です。Sbドープで赤外吸収が高くなるのは自由キャリア吸収です。
ご紹介のHP(http://www.smm.co.jp/product/kinousei/shahei.html)にのっているFMF-3Sのスペクトルは、これによってすんなりと理解で きます。
一方、KHF-7Sに使われているホウ化ランタンは、化学量論比の単結晶では赤紫色をしていますが、ホウ素過剰にすると青色、イオン打ち込みで 緑色になると言われています。着色はおそらく欠陥やそれにもとづくLaの価数変化が関係していると思われます。
これを微粒子にして分散したときの状態はわかりませんが、吸収のピークを900-1000nmにずらすことができたのではないかとぞんじます。自由キャ リア吸収は、欠陥が増加してキャリアが減少すれば、中赤外域にシフトすると思われます。
 いずれにせよ、具体的なデータがないので推測でしかありません。
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1187. 磁気には電気分極に対応する概念はあるか

Date: Mon, 21 Dec 2009 09:53:46 +0900 Q: 佐藤教授様
 お世話になっています。
 S社のMです。
 前回は、大変明瞭なご回答ありがとうございました。
 その後、実験は進めておりますが、前回の質問とは違った形疑問が生じましたので  もしも可能ならばヒントをお教えいただけないかと思い、再度メール致しました。
質問内容
 電子分極に相当する、磁気分極?という概念は存在するのでしょうか?
ふと思ったのですが、電荷については 電子分極、イオン分極、配向分極 など応答速度に相当する概念が存在します。
また、電子分極に関しては光速と同じ速度で応答するといわれていますが、 同じことを磁気モーメントに関して考えた場合、なにが相当するのかという質問です。
真空ならびに一般的な物質は透磁率が1、銅などは1を若干下回るものもありますが、 透磁率は、遷移金属などでは1以上の高い値を示しますが、これらについては 応答速度に追従性が寄与しそうです。
また、磁気材料でも、セラミックなどで有名なペロブスカイト構造に相当する結晶構造があるようで 先にもお話したとおり、アモルファスなどドメインが小さければ高速追従性がありますが ドメインが大きな場合やフェライトなどのセラミックでは追従性が低く透磁率が比較的周波数が 低めなところで飽和してしまいます。
こうした意味、電子分極に相当する磁気モーメント成分がどんな形で 材料物性として働いているのかイメージをつかみたく、もしご存知のことがあれば お教えいただけないでしょうか。
お手数ですがよろしくお願いいたします。
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Date: Mon, 21 Dec 2009 14:00:51 +0900
A: 真篠様、佐藤勝昭です。
(1) ご質問の磁気分極ですが、磁性の世界では「磁化(magnetization)」と呼んで います。最近は、磁気分極(magnetic polarization)と言った方がわかりやすいという 学者もいて、たとえば小林久理眞先生の「したしむ磁性」という教科書では、磁気分極 という用語を使っています。定義は、単位堆積中の磁気モーメントの総和です。
(2) 磁気モーメントの応答速度ですが、常磁性体のスピン磁気モーメント場合、電子 スピン共鳴(ESR)の周波数までは応答します。1T程度の磁界ではESRの周波数は9GHzのオ ーダーですが、100Tもの超強磁界のもとではESR周波数はTHz(遠赤外)に来ます。電 子スピンによる磁化率χは室温では非常に小さな値なので、μr=1+χと表される比透磁 率はほとんど1と考えて差し支えありません。
一方、強磁性体の場合、交換相互作用によってスピン同士が結びついていますから、そ の応答は、強磁性共鳴現象の概念で理解され、ランダウリフシッツギルバートの方程式 に従って、応答します。最近では、スピン偏極電流誘起磁化反転なども、この枠組みで 議論されています。
(3) 磁区が応答を決めるのは確かです。従って高周波応用には、Hcの小さな軟磁性体を もちいます。この場合は磁壁の移動ではなく磁化の回転による反転が使われます。
磁性体微粒子を用いたナノコンポジット磁性体では、磁性体が単磁区になるため、応答 がよくなります。
詳細は、磁性の教科書をお読みください。
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Date: Mon, 21 Dec 2009 17:07:22 +0900
Q: 佐藤教授様
 早速のご返信ありがとうございます。
当方の知見の少なさから内容の咀嚼に手間取っております。
ESRの周波数までということですが、磁気モーメントの場合は 電子分極によるダイポールモーメントと比較して低い周波数までしか追従できないことが よくわかりました。
再度、内容を確認すると同時に、教科書等を取り寄せるなりして 知見を深めたいと思います。
 取り急ぎお礼まで
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Date: Mon, 21 Dec 2009 18:55:32 +0900
A: M様、佐藤勝昭です。
 説明がわかりにくくてごめんなさい。強磁性体の磁気モーメントはせいぜい数10GHz くらいまでしか応答できません。拙著「光と磁気」では、光の周波数領域でのμrは1と して扱っています。光に対する物質の応答は電気分極、従って、誘電率が担っていて、 ファラデー効果、磁気カー効果などの磁気光学効果は、誘電率テンソルの非対角成分の 磁化依存性によって説明されます。(佐藤勝昭著「光と磁気(改訂版)」(朝倉書店) p26~p40参照)
 誘電体でもイオン分極による電気分極は、赤外領域までしか応答できず、可視光領域 では電子分極のみが応答しています。
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Date: Tue, 22 Dec 2009 08:47:41 +0900
AA: 佐藤教授様
おはようございます。
丁寧なご返信ありがとうございます。 
説明については、的を得た内容でご説明頂いていると感じておりますので 後は、学生並みの努力のみかと存じております。
素朴な疑問でしたのは、マクスウェルの電磁気学を見ると電場と磁場の 相互作用となっているように思ったため、素人発想ながら 磁場の応答性についてどう捉えればよいのか多少苦慮しておりました。
ただ、これもまた素人発想ながら、いわゆる電波と光の境目(区別→回折等)において そうした磁場の作用の変化も関わっているのかと思いつつ、 また知見が深まった折に再度考えてみたいとも思っています。
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1188. カルコパイライト半導体物性データの出典

Date : Fri, 1 Jan 2010 19:08:35 +0900
Q: 東京農工大学 佐藤勝昭 教授
初めまして。都城工専専攻科2年の山下恭平という者です。
先日、佐藤教授の「2009年春季第56回応用物理学関係連合講演会 シンポジウム」においてご発表された
「イントロダクトリートーク カルコパイライト系材料の高いポテンシャル」のパワーポイントファイル がインターネットにアップされており、それを拝見させて頂きました。
その中で、9ページのカルコパイライト型半導体の物性について記した表があり、この値をどのような文献から引用されたのか知りたく、メールを差し上げた次第です。
自分でもいろいろと調べたのですが、有料な文献サイトが多く、うまく見つける事が出来ずにいます。
このような内容でメールをして良いのか迷いましたが、もし可能であれば、引用された文献を紹介して頂けないでしょうか。
宜しくお願い致します。
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Date : Fri, 1 Jan 2010 21:53:00 +0900
A: 山下恭平君、佐藤勝昭です。
 お申し越しの表は平木昭夫監修、田口常正編「高輝度青色発光のための電子材料技術」(サイエンスフォーラム、1991)という本の第4部第5章佐藤勝昭執筆部分pp.239-250の表-1によります。
ただしこの表は、入江泰三・遠藤三郎:結晶工学分科会1986年年末講演会「三元多元結晶の現状と将来」テキストpp.5-11(1986.12.11)の表からの抜粋です。
さらに遡ると、次の文献がもとになっています。
野村重孝、遠藤三郎、入江泰三:3元カルコパイライト型半導体の物性と応用;応用物理 55(8) pp.795-799 1986/08
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Date: Mon, 4 Jan 2010 12:44:51 +0900
AA: 佐藤勝昭教授
都城工専の山下恭平です。詳細な情報を紹介して頂き、ありがとうございました。
担当の教員に相談して、上記のテキストが保管されていないかチェックしたいと思います。
この度は、年末年始というお忙しい時期の中、本当にありがとうございました。
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Date: Fri, 8 Jan 2010 21:57:29 +0900
A2: 山下君、佐藤勝昭です。
入江泰三・遠藤三郎:結晶工学分科会年末講演会「三元多元結晶の現状と将来」テ キストpp.5-11(1986.12.11)のpdf
および
野村重孝、遠藤三郎、入江泰三:3元カルコパイライト型半導体の物性と応用;応用 物理 55(8) pp.795-799 1986/08
を私の隠れサイトにアップしましたので、ダウンロードしてご利用下さい。(Webでは公開できません。あしからず)
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Date: Mon, 11 Jan 2010 14:07:36 +0900
AA2: 佐藤勝昭教授、こんにちは。
都城工業高等専門学校の山下恭平です。
返事が遅れてしまい、すみませんでした。
アップして頂いたpdfファイルを拝見しました。
担当教員は持っていないということでしたので、どうしたらいいものか迷っていました。
本当にありがとうございました。これらのファイルを十二分に活用させて頂きます。
一介の学生の為に、ここまでして頂き、感謝致します。
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1189. 宝飾用合金の反射率

Date: Fri, 8 Jan 2010 18:30:52 +0900
Q: 佐藤勝昭 先生
はじめまして。
私、S社で研究開発をさせていただいております、廣瀬智規と申します。
S社では、宝飾品を作っているのですが、金属や合金の固有色や明暗等、色の差をデザイン要素とした仕事を行ってきました。
そこで、使用している金属・合金を、黒いほうから順に反射率の数値で表現したいのですが、使用している金属が一般的でないものも多く、合金組成も様々で困っています。
数値の求め方、あるいはもし可能ならば、それぞれの400nmと700nmでの反射率の数値をご教授いただきたくよろしくお願い申し上げます。
以下に使用している金属・合金を黒いほうから順にあげたいと思います。

・ジルコニウムを高温で酸化した黒色皮膜。
・タンタル
・チタン
・ジルコニウム
・金58%-パラジウム42%合金(ホワイトゴールドと呼んでいます。)
・白金90%-パラジウム10%合金
・白金90%-イリジウム10%合金
・銀95%-銅5%合金
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Date: Sat, 9 Jan 2010 10:52:26 +0900
A: 廣瀬様、佐藤勝昭です。
 多くの金属単体の光学定数は、ハンドブック等に載っています。
・タンタル 413nm n=2.81, k=2.24 →R=42.4%
      729nm n=1.24, k=2.95 →R=63.8%
・チタン  436nm n=2.04, k=2.85 →R=53.0%
      650nm n=3.03, k=3.65 →R=59.0%
・ジルコニウム データが見つかりません(酸化しやすく空気中でZrO2になるため測定が困難でしょう)
・ジルコニウムを高温で酸化した黒色皮膜:データありません。
 (無定形Zr粉末は黒色と書かれていますから、白金黒と同様に構造的なものでしょう。)
・銅-パラジウム、銀-パラジウム、金-パラジウム合金については、
H.P.Myers, L.Wallden, Å.Karlsson:
Some optical properties of CuPd, AgPd, AuPd and CuMn, AgMn alloys;
Philosophical Magazine, Volume 18, Issue 154 October 1968 , pages 725 - 744.
に載っているようなのですが、この雑誌は手元にありません。ネットから有料でダウンロードできます。
・白金-パラジウム、白金-イリジウム合金についてはデータが見つかりません。
・銅銀合は、最近GaN発光ダイオードの反射板として使われるため、半導体関係の論文に出ています。
Jun Ho Son, Gwan Ho Jung, and Jong-Lam Lee:
Highly reflective Ag-Cu alloy-based ohmic contact on p-type GaN using Ru overlayer;
Opt. Lett. 33, 2907-2909 (2008) (460nmで91%と書かれています。)
H.Kim et al.: High-Reflectance and Thermally Stable AgCu Alloy p-Type Reflectors for GaN-Based Light-Emitting Diodes; IEEE Photonics (400nmで89.5%という高い値が報告されています。)

合金のデータについては実際の宝飾品について分光光度計で測定するしかないでしょうね。
お役に立てず申し訳ありません。
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1190. 酸化アルミニウムポリマー

Q: 佐藤先生、HPを見て質問させていただきます。以前ステンレスの腐蝕性について質問させていただいたことがございます。その節はご丁寧にお返事をいただき誠に有難うございました。お忙しいところ恐縮ですが、新たに2点の質問がありメールさせていただきました。

【質問①】使用中の調理道具の素材として酸化アルミニウムポリマーという物質が使われています。そこで安全上お尋ねしたいのですが、酸化アルミニウムポリマーはアルミニウム同様に酸やアルカリ等に溶解して人体に入り込み、影響を与える可能性は高いのでしょうか?
【質問②】酸化アルミニウムポリマーはダイヤモンドに次ぐ硬度を持つということですが、理論的にはダイヤモンド以外の物質によって物理的に研磨することはできないということなのでしょうか。

専門の先生に対し誠に的外れな質問で失礼とは存じますが、よろしくお願い申し上げます。
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Date: Sat, 9 Jan 2010 16:41:17 +0900
A: 菅原様、佐藤勝昭です。
 申し訳ありません。「酸化アルミニウムポリマー」という物質があることを存じ上げませんでした。
ポリマーというからには有機高分子材料なのでしょうね。
Webでパテント情報を調べましたら、米国特許に
"Anodically formed intrinsically conductive polymer-aluminum oxide composite as a coating on aluminum " というのがありました。United States Patent 6818118
特許のclaimには、この物質が、intrinsically conductive polymer intermixed with aluminum oxide. と書かれており、アルミニウムは酸化物の形で混合して入っているようです。
 酸化アルミニウムはサファイアに代表されるように堅牢で、耐食性も強く、アルミニウムイオンが溶け出すことはないのではないでしょうか?
硬度についてはまったくデータがありません。
お役に立てず申し訳ありません。
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Date : Mon, 18 Jan 2010 14:42:11 +0900
AA佐藤先生、1月9日に「酸化アルミニウムポリマー」についてご質問させていただいた菅原です。
いつもご丁寧な回答を頂き恐縮に存じます。
その日のうちにお返事を頂いておりましたのに、うっかりメールを見落としてしまい、お礼が遅れて しまいました。
申訳ございません。
時節柄くれぐれもご自愛下さいませ。
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1191. 太陽光発電パネルは地デジ受信に影響するか

Date: Mon, 11 Jan 2010 20:43:49 +0900
Q: 佐藤先生のホームページを見させていただいて質問させていただきます。
太陽光パネルの電波の透過性について
現在、屋根裏に地デジアンテナ(UHF)を設置し受信しています。太陽光パネルを屋根に設置する予定ですが、地デジの受信は可能でしょうか?
宜しくお願いいたします。
  運送業  内藤 博之
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Date: Mon, 11 Jan 2010 23:30:30 +0900
A: 内藤様、佐藤勝昭です。
 太陽電池はどのようなタイプのものをお使いでしょうか。ここではシリコン単結晶と仮定しましょう。
シリコンの電気伝導率は10^-5Ω/cm=10^-3Ω/m程度なので,地デジのUHF周波数500MHzでは表皮深さは 約1mの程度となります。従って、太陽電池シリコンの厚さ(200μm程度)では電波は遮断されません。
しかし、太陽電池には、電極などに多少金属が使われているので、電界強度の非常に弱いところでは 多少は影響するかも知れません。
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Date: Tue, 12 Jan 2010 19:56:33 +0900
Q2: 佐藤先生へ
申し訳ありません、説明不足でした。
太陽光パネルはシャープ製の多結晶(メイン電極2本タイプセ ル)で、NDー153AUという製品です。
画像を添付しました。
屋根裏のアンテナはマスプロ製LS30(感度10.7~17.4 db)ブースターはUB33Nという製品を使用しています。
現在のテレビの受信レベルは75です。
受信レベル60以上あれば地デジ放送が見られるということです。
お忙しいところ、ご面倒おかけいたしますが、宜しくお願いいたします。
内藤
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Date: Tue, 12 Jan 2010 21:28:45 +0900
A2: 内藤様、佐藤勝昭です。
 電界強度が十分高いので、太陽電池自身による減衰の問題はないと思いますが、 太陽電池パネルを支持する金属製の枠がありますので、それによる反射があるかも しれません。アンテナの向きを微調整する必要があるかもしれません。
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Date: Tue, 12 Jan 2010 22:08:48 +0900
AA: 佐藤先生へ
ご返答ありがとう御座います。
太陽光パネルを設置(2010年3月予定)した後、結果を報 告させていただきます。
うまくいけば、台風や地震の際のアンテナの落下によるパネル の損傷の心配が無くなるのと同時に、屋根の美観も保てるので 非常に良いと考えます。
佐藤先生の益々のご活躍をお祈りいたします。
本当にありがとう御座いました。
              内藤
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1191B. 結果報告「太陽光発電パネルは地デジ受信に影響するか」

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Date : Sun, 13 Jun 2010 20:15:19 +0900
AA2: 佐藤先生へ
質問1191でお世話になりました内藤と申します。
結果報告致します。
太陽光パネル設置前の屋根裏アンテナでは、問題なく地デジ放送を受信できました。
太陽光パネルを設置した場合、若干受信レベルは落ちましたが受信できました。
太陽光パネルはシャープND-160AV(多結晶)、アンテナはマスプロLS30、ブースターはUB33Nです。
テレビの受信感度は、パネル設置前は平均75位でした、設置後は60程度になりましたが問題なく受信できています。
本当に有難うございました。
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1192. 電磁界センサーによる金の判別

Date : Thu, 14 Jan 2010 20:32:45 +0900
Q: はじめまして、M**社のY*と申します。
職務機密に関することでもあるので、匿名でお願いします。
金属の判別ができないか調べていたところ先生のHPに たどりつきました。突然の質問お許しください。

具体的には、非接触で(5mm程度)で、1cm角で厚さ1mm程度、1gの 「純金」の板を、本物であるか、似せて作った他の金属であるかを判別できるかという課題です。

全くのシロウトなので、理論とか数式はほとんど解らなかったのですが、 いろいろ調べた結果、「電磁誘導による渦電流(高周波発信形)」を計測すれば可能かと考えました。
結果、材質の違いで値は変化するのですが、他の金属で距離、大きさをわずかに変えると 本物と同じ値になってしまいます。
そこで悩んでいたところ、電磁誘導につかう「周波数」を変化させ渦電流を測定し、 その周波数ごとの値の変化は材質の特性があるという話をききました。
発信周波数を変化させられるセンサーを作成し、 実験したところ、確かに測定する材質によって変化に差がみられました。
「金」あるいは、この「このサイズの金の板」固有の変化は信用できるのでしょうか?
また、この原理をどう説明すれば納得していただける理論になるのでしょうか?

勝手な質問ではありますが、どうか御返答いただけるよう願っております。
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Date : Mon, 18 Jan 2010 01:43:17 +0900
A: Y様、佐藤勝昭です。
 お返事が遅くなり申し訳ありません。私は、電磁誘導センサーの専門家ではないので 正しくお答えできるかどうか自信がありませんが、私の知識の範囲で回答します。
 渦電流センサーは、励磁コイルと検出コイルからなり、このセンサーを測定したい対象 に近づけ、検出コイルに誘起された電圧Vと励磁に使った高周波電流Iを測定し, 励磁電流Iと誘起電圧VよりインピーダンスをZ=V/Iを求めます。
 インピーダンスZには対象とする金属の導電率が反映しており、測定条件さえ同じであれば 導電率の違いから金属を推定できます。しかし、測定条件がかわるとインピーダンスの絶対値 も変わってしまいます。
 一方、周波数を低周波から高周波へと変化させて測定すると、ある周波数のところで表皮 効果のため、電磁波が侵入できなくなり、その周波数でインピーダンスおよび位相が急変します。
この周波数は、対象とする金属の導電率を反映します。従って、この方法ではインピーダンスの 絶対値ではなく変化する周波数を読み取るので、測定条件に鈍感になると考えられます。
 電磁誘導センサーについては、金沢大学の環日本海域環境研究センターの山田外史教授が お詳しいので、そちらにお尋ねになるとよいでしょう。
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Date : Mon, 18 Jan 2010 15:00:43 +0900
AA: 佐藤勝昭 様
御返答ありがとうございます。
早速測定してみます。
インターネットのおかげで随分便利になりました。
でも、これは「佐藤様」などの善意と貢献の皆様あってのことです。
これからも、佐藤様とHPのますますの発展を願っております。
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1193. 湿度100%の空気の物性値

Date: Mon, 18 Jan 2010 20:49:45 +0900
Q: 私はK*大学の機械システム4年のH*と申します(Webには匿名でお願いします)。
先日はプロピレングリコールのことでご教授いただきありがとうございました。
失礼ながら、また質問させていただきます。
水蒸気(100%)の物性値を教えていただきたいのです。
具体的に知りたいのは標準気圧、30℃のときの密度、比熱、熱伝導率、粘性率です。
どうかよろしくお願いします。
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Date: Mon, 18 Jan 2010 21:05:22 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 質問を確認させてください。30℃における水蒸気の圧力は4244Paです。
標準気圧、30℃のときH2Oは液体です。
30℃における飽和水蒸気を含む空気のことでしょうか?
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Date: Mon, 18 Jan 2010 21:50:33 +0900
Q2: 佐藤先生へ
情報不十分ですみませんでした。
ご指摘の通り、30℃における飽和水蒸気を含む空気です。
改めましてよろしくお願い致します。
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Date: Mon, 18 Jan 2010 23:50:58 +0900
A2: H君、佐藤勝昭です。
 水蒸気を含む空気の密度は
 
http://wahiduddin.net/calc/density_altitude.htm のサイトで計算できます。
Air Density Calculatorという紫の箱がありますので、
気温 30℃
気圧 1013mb
露点 30 ℃(湿度100%)
としてcalculateをクリックすると
密度は1.1457kg/m3
となります。

 比熱については
http://www.engineeringtoolbox.com/enthalpy-moist-air-d_683.html を読んで下さい。

熱伝導については
P.T. Tsilingiris:
Thermophysical and transport properties of humid air at temperature range between 0 and 100 °C ;
Energy Conversion and Management Volume 49, Issue 5, May 2008, Pages 1098-1110

粘性については
E. L. Studnikov:The viscosity of moist air;
Journal of Engineering Physics and Thermophysics  Volume 19, Number 2 (1970) 1036-1037
をお読み下さい。

英文で検索しましょう!それぞれ,Googleで
moist air density,
moist air thermal conductivity
moist air viscosity
として検索して得た結果です。
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Date: Mon, 18 Jan 2010 23:59:04 +0900
AA: 佐藤先生へ
調べていただきありがとうございました。
図書館で調べても見つからなかったのでとても助かりました。
本当にありがとうございます。
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1194. アクリルの可視光透過率

Date : Wed, 3 Feb 2010 06:02:20 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
こんにちは、I*社K*です。(氏名所属は非公開でお願いします。)
HPを拝見して質問を以下のようにさしあげます。
お忙しいことと存じますが何卒よろしくお願い申しあげます。

・固体の可視光透過率について
アクリル・ガラス等の透過性の高い固体の物質についてお伺いします。
これらの透過率を調べていたのですが、各素材メーカーの物性データ等で 例えばアクリルなら型番にもよりますが93%等具体的な数値が記載されていました。
この、93%という数値なのですが、これは厚みによりどのように減衰していくのでしょうか。
メーカーへの問合せでは厚さに拠らずこの数値は保持されるとのことでした。
(※ただし営業の方と思われる方の回答で開発・研究部門の専門知識のある方ではないように思われました)
たとえば厚さが1kmあるアクリルの固まりがあったとして、それでも透過率は不変なのでしょうか?
液体の場合には「ランベルト・ベールの法則」などで算出することが出来る??
ようなことはなんとなくわかったのですが固体の場合にどのようであるかが調べてもわかりませんでした。
固体における光の減衰量を算出する方法はあるのでしょうか
具体的に知りたいこととしては例えば「透過率93%のアクリルで光の量が0になるつまり光が途絶えてしまうようなことがあるとしたら、それはどれくらいの距離なのか」 ということになります。
以上よろしくお願いいたします。
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Date : Wed, 3 Feb 2010 11:19:18 +0900
A:K様、佐藤勝昭です。
メールありがとうございます。
一般に、吸収係数をα[cm-1]、厚みがd[cm]の固体において、表面での反射率をRとす ると、透過率Tは
T=(1-R)2 exp(-αd) (1)
と書くことができます。

まず、表面と裏面の反射を考えましょう。入射面側の透過率が(1-R)、出射面側の透過 率(1-R)ですから両方で(1-R)2がかかります。この部分には試料の厚みdは関係してい ません。
透明媒体の反射率Rは,屈折率をnとすると
R=(1-n)2/(1+n)2 (2)
n=1.492です(
http://www.tangram.co.uk/TI-Polymer-PMMA.html)から、R=(0.492/2.4 92)2=0.039
(1-R)2=0.9235
となり、両面での反射だけで透過率は92.3%に落ちています。

次に、媒体の吸収を考えましょう。
吸収係数α[cm-1]の媒体に入射した光の強度Iinとし、入射面からd[cm]通過するとき 、光強度は指数関数的に減少し、位置dにおける光強度I(d)は、
I(d)=Iin exp(-αd) (3)
と表されます。この成分は、ご指摘のように試料の厚みの関数です。ではアクリル(PMM A)の吸収係数はどれくらいでしょうか、文献(Journal of Polymer Science: Polymer P hysics Edition Volume 21 Issue 4, Pages 647 - 655)によればPMMAの光強度の減衰率 は153dB/km=0.153dB/m=0.00153dB/cmです。
dB(デシベル)というのは電磁波の強度の減衰を表すもので常用対数をlogで表すと 減衰量(dB)=10log(Iin/I(d)) (4)
ですから、(3)を代入して
減衰量=αd10loge~4αd
なのでd=1cmとするとα=0.00153/4=0.00038=3.8×10-4となり、exp(-αd)は限りなく1 に近い量です。
従って、1kmもの長さになると153dBも減衰しますが1cm~100cm程度であれば厚さととも に減衰する量は無視して差し支えないということになります。
というわけで、メーカーの方がお答えになったように、厚さによらず92.3%というこ とになります。
93%と92.3%の違いは、マテリアルの違いで屈折率がわずかに小さいと、その程度の差が 起きます。

なお、「光が途絶えてしまうようなことがあるとしたら、それはどれくらいの距離ですか」というご質問ですが、 通常大まかには光強度が1/eになる、すなわちαd=1になる距離dを光の到達距離としています。
 α=0.00153/4=0.00038=3.8×10-4[cm-1]
なので、d=2.63x103cm=26.3mです。
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Date : Wed, 3 Feb 2010 15:08:14 +0900
Q2: 佐藤勝昭先生
こんにちは。
早速の回答ありがとうございます!
こんなにも早く答えていただけると思いもよらず驚きと感謝です。

正直に申し上げて、さっと読んだ程度では私の物理知識ではよくわからないのですが 明確にお答えいただけていることはわかります。

ちゃんと理解できるよう勉強していかなくてはですが、、、、

具体的な数字の回答もいただけまして非常に助かりました。
現在進めているプロジェクトで必要な数字ですので、26.3mというのは思ったより短い距離ですね 実際に制作して見てみたいものです。

ちなみにですが、、、、これは数式を理解していればわかることなのでしょうが 光の減衰のグラフは どのようであるでしょうか。
単純に距離に比例して徐々に減衰するまっすぐなラインなのか 最初はあまり減衰せずに途中から 減衰率が上昇するようなカーブなのか 逆に最初にある程度がくんと減衰してその後は徐々に減っていくようなカーブなのか、、、教えていただけますと助かります。
まずは上記の26.3mという数字をいただけたことで大きな壁はクリアできたのですが もしお時間があるようならこの減衰のグラフについても教えていただけたら幸いです。

それでは失礼します。
本件誠にありがとうございました。
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Date : Wed, 3 Feb 2010 16:30:33 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 表面反射を別として減衰のようすは、
 I(d)/Iin= exp(-αd)
で記述されます。指数関数y=exp(x)は高校の数学で学んでいるはずですが
  exp(-x)=e^(-x)
^の記号はべき乗をあらわします。すなわちeのマイナスエックス乗です。
ここにeは自然対数の底(2.71828182845904・・)です。
参考のため、y=exp(-x)のグラフを示します。
これの対数をとれば、xに対して直線になります。
 さきほど26mといったのは図のx=1の時すなわち1/eになるところです。
実際にはグラフのように、x=5のときも0.006くらいありますから、26mの5倍の距離 (約130m)でも光源が明るければ感度のよい検出器を使って検出できるわけです。
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Date : Wed, 3 Feb 2010 16:59:26 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
ご丁寧に回答ありがとうございます。
高校の数学も既に抜けて落ちていてすみません、、、、
グラフ添付いただきありがとうございました。
光源の明るさによっては100mでもわずかながら光を感知することが 出来るのですね グラフと式をよく読んでみたいと思います。
本件どうもありがとうございました。
また、何か伺うこともあるかと思いますが今後ともよろしくお願いいたします。
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Date : Wed, 10 Feb 2010 01:51:19 +0900
Q3: 佐藤勝昭先生
こんにちは、先日は一連の質問にお答えくださりどうもありがとうございました。
その後、再度先生にいただいたお答えを見ていて疑問に思う部分が出てきましたので お時間ございましたら回答いただけませんでしょうか。
>> > 通常大まかには光強度が1/eになる、すなわちαd=1になる距離dを光の到達距離としています。
すみません、この基準はどういうものになりますでしょうか。
人間の目に感知しない程度の光となるということでしょうか。
また、実際にはグラフのように、x=5のときも0.006くらいありますから、26mの5倍の距離 (約100m)でも光源が明るければ感度のよい検出器を使って検出できるわけです。
グラフでいくとx=0でない限り、限りなくゼロには近づいていきますが 最終的にはゼロにならないのだと思うのですが ということは「物理的に完全に」光が消えるということはないのでしょうか
単純に申し上げて、1km角の巨大なアクリルの立方体が仮にあったとして 真夏の直射日光を基準とする光強度、2000 μmol m-2 s-1 の光が垂直に入射した時に 果たしてどの距離で「完全な」闇となるのでしょうか
添付の図での説明で具体的に描いています、しつこくて申し訳ございませんが、、、、 最終的にはこういった図を出来るだけリアリティのあるグラデーションで描きたいと 考えているのです。
お忙しい折大変恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。
※光の単位が現在検討していることにふさわしくない場合は先生の お考えで他単位で教えていただければと存じます。
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Date : Wed, 10 Feb 2010 09:15:04 +0900
A3: 佐藤です。前に述べましたようにアクリルの光強度は1kmで153dB減衰することがわか っています。dBで表した減衰率は距離に比例しますので、10kmなら1530dBです。どこま で行ってもゼロになりませんが減衰した光を検出できるかどうかの問題なのです。
添付図を見ました。人間の目は光強度の対数を感じますので、グラデーションはリニア に黒くなるものでよいでしょう。
人間が視認できる最も暗い星は6等星です。
6等星の明るさは1等星の100分の1の光強度です。
1等星の光強度は http://www.geocities.co.jp/Bookend-Kenji/5046/ryoshi4.htm によれば、「一等星が放出する光が視細胞のレチナール分子に与える単位時間当たりの エネルギーは、1億分の1アトワット=10-8aW=10-26W」と書かれています。 同じサイトにレチナールの断面積は1nm2=10-18m2と書かれていますから、 1等星の光強度は10-8W/m2となります。
6等星はその1/100ですから、結局人間が視認できる光強度は10-10W/m2 と言うことになります。太陽光は103W/m2の光強度なので、10-13の減衰を受けるまでは「見える」ということになります。
これをdBで表すと-130dBです。アクリルの1kmあたりの減衰は153dBですから、130/153=0.84kmの厚さで太陽光が6等星なみになるということになり、1kmの厚さなら、真っ暗闇と考えてよいことになります。
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Date: Wed, 10 Feb 2010 12:10:32 +0900
AA2: 佐藤さま
こんにちは
たいへんたいへん丁寧な回答、誠にありがとうございます。
すみません、物理が本当に苦手で自分なりに理解を試みたのですが 解決できず甘えて何度もお伺いすることになりすみませんでした。
これで今度こそ問題は解決したと思います。
本当にありがとうございます。
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1195. ポリ塩化ビニールの放射率

Date: Tue, 9 Feb 2010 18:45:04 +0900
Q: 佐藤先生へ
私はK*大学の機械システム工学科4年のH*と申します(Webには匿名でお願いします)
わからないことがあるので、失礼ながらメールさせていただきました。
ポリ塩化ビニルの放射率を教えていただけないでしょうか?
図書館で調べてもなかなか見つかりません。
どうかお願いします。
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Date: Tue, 9 Feb 2010 21:42:28 +0900
A: H君、佐藤勝昭です。
 "polyvinyl chloride emissivity" または "PVC emissivity" として、英語で検索するとすぐ見つかりますよ。
http://www.infrared-thermography.com/material-1.htm というサイトによればPVCの放射率は2.5-6μmに対して0.91-0.93となっています。
http://www.thermoworks.com/emissivity_table.html も同じ値を報告しています。
http://www.infraredheaters.com/page15.htm ではPVCシートの放射率として0.90となっています。

放射率は、なんでもQ&Aの#475「YIGの放射率」に書きましたように物質定数ではなく、同じ物質でも、温度、表面のテクスチャー、材料の履歴などに依存して大きく変化する量なので、上記の値も表面状態によってはちがった値をとる可能性があります。
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Date: Tue, 9 Feb 2010 21:53:16 +0900
AA: 佐藤先生へ
ご返答ありがとうございます。
温度等でちがってくるのですね。
よく検討してみようと思います。
本当にありがとうございました。
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1196. 亜酸化銅の熱処理による抵抗変化

Date : Fri, 12 Feb 2010 15:54:12 +0900
Q: 佐藤教授殿 

 某電気メーカーのUと申します。匿名希望です。 

 酸化銅(絶縁物に近い抵抗値なのでCu2Oと思っている)の挙動を教えていただ きたいのですが、酸化も還元もしない雰囲気(気密雰囲気)で熱処理(200℃)を 繰り返すと、その抵抗値がさがったり、上がったり(もとに戻る)します。 た とえば以下のような反応が可逆的に起こりえるものなのででしょうか?
   Cu2O ⇔ Cu + CuO 

ちなみに 200℃程度で ギブスの自由エネルギーは 

■ 2Cu+O2 = 2CuO   K= -220 (kj/mol) ・・・ ①
■ 4Cu+O2 = 2Cu2O  K= -270 (kj/mol) ・・・ ② 
(文献より引用) 
なので、①②より

■ Cu2O = Cu + CuO K=+25 (kj/mol) ・・・③

と計算上③式のようになりますが、+25という値が小さいので、上記のようなこ とが起こるのでしょうか? こんな反応はありえないのでしょうか? 
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Date : Fri, 12 Feb 2010 16:26:14 +0900
A: U様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。
25kJ/molは1分子あたりの活性化エネルギーΔEになおしますと

ΔE=25×103J/6.02×1023=25×103×6.24×1018eV/6.02×1023=0.26eV=260meV

一方、200℃=473Kの熱エネルギーkT=473×8.62×10-5eV=40.8meV

従って、exp(-ΔE/kT)=exp(-260/40.8)=0.0017
という確率で現象がおきます。絶縁物Cu2Oの中に1000分の1.7の割合で金属Cuが混じれ ば十分抵抗値は変化すると思います。
実際にその温度でCuが生じているかどうかは、XPSで調べることができると思います。
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Date: Mon, 15 Feb 2010 11:27:05 +0900
Q2: 佐藤教授殿 
 さっそくの返信ありがとうございます。
 
 この計算は 平衡定数Kを求めているのですね。
 K= exp(-ΔE/kT)=[A]/[B] 
 ということは、∞時間たったとき、この割合が 0.0017になると思っていいでしょうか? 
 活性化エネルギーというと、ポテンシャル障壁のイメージがあるのですが、これとは別ですね。 

 質問としては、 Cu2O ⇔ Cu + CuO の反応において、熱処理を入れる たびに微視的(原子オーダーではなく)にではなく巨視的に 上記反応はいった りきたりするものなのでしょうか?

 もっと具体的にいうと 何本かのCu2O線(orCu線)(実際取り扱っているのは 幅1umオーダーかつ極薄nmオーダー)があって、そのうち何本かが低抵抗になっ たり、高抵抗になったりします。 熱処理は190℃(N2雰囲気無酸素)で10h程 度です。 
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Date: Mon, 15 Feb 2010 11:59:54 +0900
A2: U様、佐藤勝昭です。
 書き忘れた点を指摘いただきありがとうございます。
仰るとおり、あくまで熱平衡に達したときの話です。
幅1μm、厚さ数nmであれば、10時間たてば、熱平衡に達していると考えてよいでしょう。
 具体的なプロセスについての助言は、「なんでもQ&A]の範囲を超えるので、差し控え ますが、気になったのは、熱処理前から低抵抗のものがあり、熱処理で逆 に高抵抗になっているということです。これは、同一の反応ではあり得ないことです。
 低抵抗のものは銅でしょうから、銅の酸化によるものと考えられます。こちらは生成 熱が200kJ/molと大きいので、亜酸化銅が還元されるに比べれば、時間がかかりそうですね。
 図では、各ステージの途中経過がわからないのですが、もう少し短い時間での変化が 知りたいですね。
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1197. 軟鋼の物性値

Date:Tue, 02 Mar 2010 02:00:57 +090
佐藤勝昭先生
長崎大学工学部大学院1年の出水と申します。
私の専門は、コンクリートです。
 研究で軟鋼(SM400A)の突き合わせ溶接時の溶接残留応力をFEMでシミュレートすることになりそうです。
 そこで、軟鋼の下記の物性値が詳しく記載している資料・手段をアドバイスしていただけませんか?
 自らその物性値を計測することは、想定しておりません。
●静弾性係数、降伏応力、比熱、熱膨張係数、熱伝達率、比熱、(温度によるそれぞれの変化の値)
●潜熱、溶融熱
お忙しいと思われますが、よろしくお願いいたします。
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Date:Tue, 2 Mar 2010 09:48:56 +0900
出水様、佐藤勝昭です。
 私は金属工学の専門家ではないので、手元に軟鋼の物性値に関するデータを持ち合わせていません。

大学の図書館に行って、自分で鉄鋼ハンドブックやJIS規格(SM400はJIS G 3106)を調べるべきではないかと思うのです。
また、あなたと同じようなテーマの先人の研究論文を参考にされるとよいと思いますよ。
例えば、
Chin-Hyung Lee and Kyong-Ho Chang: Prediction of residual stresses in welds of similar and dissimilar steel weldments; Journal of Materials Science, 42 [16] (2007) 1573-4803 (Online)
この論文では、SM400, SM490, SM520 and SM570を扱っています。

なお、一般に、金属の降伏点は物性定数ではなく厚みによっても異なります。
SM400の場合でいえば、降伏応力(N/mm2)は厚みt(mm)で下記のように変わります。
16<t≦40  140
40<t≦75  125
75<t≦100 125
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Date:Tue, 02 Mar 2010 09:55:40 +0900
佐藤先生、出水です。
 早速の返答ありがとうございます。
まずは、図書館にいってみます。
お手数おかけしました。
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1198. ヘリウムの空気への拡散

Date : Wed, 17 Mar 2010 23:05:52 +0900
Q: 佐藤勝昭先生、こんばんは
以前に、
アクリルの可視光透過率でお世話になりました、I事務所 のK*と申します。
すみません、再度質問をさせてください。
度々で恐縮ですが、何卒よろしくお願いいたします。匿名にての対応ですみませんがお願いいたします。

質問事項/ヘリウムの空気への拡散について

ヘリウムは比重が 0.1381で空気に比べ大変軽い気体ですが、拡散係数は大きく0.596[平方cm/秒]とのことです。
今、ガスバリア性が大変高くヘリウムが漏れないフィルムで一定の閉じた空間があるとして、その内部にヘリウムと空気が1:2の割合で存在しているとします。
このとき、ヘリウムと空気の比重差を考慮するとヘリウムが上部にたまり空気が下部にたまるような状態になるかと思っていたのですが、拡散係数のことを考えるとこのような状態は続かずにすぐにヘリウムと空気は混ざりあうように思えます。
因みに二酸化炭素と窒素の拡散係数は0.135[平方cm/秒]で約4倍の差があります。
比重と拡散係数と、どちらが実際は影響が大きいのでしょうか?
比重の影響が大きければ、水と油のように界面が発生して安定的2層になるかともおもったのですが、違うのでしょうか拡散係数のほうが支配的で、比重差によらずまざりあってしまうのでしょうか。
実際どのような状態になるのかおわかりになれば教えていただけないでしょうか。
よろしくお願いいたします。
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Date : Sat, 20 Mar 2010 09:56:20 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 専門外のためお返事が遅くなり申しわけありません。アルゴン・窒素等の混合ガスが 市販されていますが、通常分離することは考えていません。一般に拡散が優位か重力分 離が優位かは重力拡散と濃度拡散の両方を考慮して拡散方程式を解くという問題となり それほどシンプルではありません。このあたりの話は、TOSHIの宇宙2というブログに詳しく載っています。
これによれば、酸素と窒素の混合気体(空気)においても一酸化炭素と空気の混合気体 でも、分子拡散のほうが優勢で、重力分離は起きない、一酸化炭素ガスセンサを天井に 取り付けるのは一酸化炭素が空気より軽いからではなく、燃焼によって対流が起こり、 気体が上昇することを利用しているに過ぎないと結論づけています。
 ヘリウムと空気の混合気体の場合も、分子拡散が重力拡散よりも大きいので分離しな いのではないでしょうか。
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Date: Sat, 20 Mar 2010 12:35:27 +0900
AA: 佐藤勝昭先生
こんにちは
回答丁寧にどうもありがとうございます。
専門外のことをお伺いしてしまいどうもすみません、、、、
そうですか、、、、なかなか難しい問題なのですね
参考のブログを拝見させていただき、細かい式のことは わかりませんがなんとなく納得できたような気がします。
どうもありがとうございました。
それでは失礼いたします。
度々の質問にご回答いただき感謝しています。
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1199. アルミニウム合金の音響異方性

Date: Fri, 19 Mar 2010 11:26:19 +0900
Q: 佐藤 様
突然の御連絡で失礼致します。
鋼構造物の製作会社で設計を担当しております、小野寺と申します。
アルミ合金(A5083-P O)を使用して、全溶接構造の屋根を製作中です。 溶接部の非破壊試験に超音波探傷試験(以下:UT)の採用を考えたのですが、 UTの検査技術者からは、溶接部の結晶粒の組成が各溶接層毎に違ってくる事と、 アルミ合金板の方向により超音波の伝わり特性が変わるため、正確な検査が出来ない との説明を受けました。
溶接部の結晶粒が違ってくることは理解が出来るのですが、アルミ合金板の方向により超音波の 伝わり方が変わるのはなぜでしょうか?圧延方向とそれに直交する向きでは、結晶粒の組織が 違って出来るものなのでしょうか。
突然の御質問で恐縮ではございますが、お手すきな時にでもご返答を頂ければ幸いです。 では、よろしくお願い申し上げます。
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Date: Fri, 19 Mar 2010 23:51:52 +0900
A: 小野寺様、佐藤勝昭です。
 金属の超音波探傷についてのご質問ですが、
(社)日本溶接協会/溶接情報センターのホームページに JWES WEB版接合・溶接技術Q&A1000というコーナーがあり、そのQ03-04-43に、
音響異方性のある材料として「一部の材料では,圧延集合組織や溶接凝固組織などのために結晶方位が揃うことがあり,それに伴って音速が伝搬方向によって異なることがある。このような音響異方性は,アルミニウム合金板,制御圧延鋼板およびオーステナイト系ステンレス鋼溶接部などで認められており,超音波探傷試験に及ぼす影響が検討されている。」と記載されております。
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Date: Tue, 23 Mar 2010 09:07:45 +0900
AA: 佐藤 様
ご返答を頂きましたこと、ありがたく存じます。
自分もJWES等の資料を参照しておりましたが、辿りつけなかったようです。
では、失礼いたします。
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1200. 均等拡散反射

Wed, 7 Apr 2010 00:29:12 +0900
Q: 佐藤勝昭様
はじめまして。私、T***社のK*と申します。
会社ではアンテナなどの電磁界のシミュレーション技術に携わっています。
佐藤先生のHPを見て、光学に関連した事項について質問させて頂きたいことがございます。
光学についてはまだまだ未熟であり、また社内には光学について良く知っている人間がいないため、Webサイトを検索しているうちに佐藤先生のHPに辿り着きました。
お手数とは存じますが、よろしければご教授頂きたく存じます。

質問内容:
 均等拡散反射/透過面(いわゆるLambert散乱する面)はどの方向から見ても輝度が一定であり、その光度がLambertの余弦則(I=I0cosθ)に従うということを理解しています。 ところで、このような散乱がどのようなメカニズムで起きるのかご存じないでしょうか?
表面(境界面)の微細な凹凸による回折現象などが影響しているのでしょうか?
どのような角度で光線が入射しても輝度が一定になる散乱というのは非常に不思議に感じます。
 一方、鏡面については、反射/屈折光線の振幅あるいは強度についての反射/透過率はフレネルの公式に従うことを理解しています。
入射媒質が有損失の場合も、フレネルの公式に用いられる屈折率を消光係数を考慮した複素屈折率で置き換えれば良く、無損失の場合とは透過/反射率の値が異なることも佐藤先生のHPなどを見て理解しています。
 ところで、均等拡散反射/透過面の場合も、入射媒質が無損失と有損失の場合では反射/透過率(反射/透過光を半球に渡って積分した値を使用)は異なるのでしょうか?
また、均等拡散反射/透過面について、複素屈折率を用いて反射/透過率を求めるフレネルの公式のような理論式をご存じないでしょうか?
 この質問は、均等拡散反射する材料の複素屈折率を求めたいという背景があります。
エリプソメトリーによる複素屈折率測定は恐らく鏡面反射を仮定しているので、均等拡散反射する材料には使用できないのではないかと考えています。
また、弊社の環境ではエリプソメトリー測定はなかなか出来ないので、可視光の範囲での無偏光光による単純な反射測定による複素屈折率測定の方法を模索しています。
また、参考になる文献などご存じであれば教えて頂ければ幸いです。
先生の著書「機能材料のための量子光学」やBorn,Wolfの「光学の原理」などを見ても上記のようなことは見当たりませんでした。
長文となってしまい恐縮ではございますが、よろしくお願い致します。
------------------------------------------------------------------------------------- Date: Fri, 9 Apr 2010 00:28:29 +0900
A: K様、佐藤勝昭です。
 「どの方向から見ても輝度が一定」というのはふしぎではありません。
輝度というのは面積あたりの光束です。観測方向の角度が法線方向からθだけ傾いていたとすると光束はcosθをかけたものになりますが、添付の図(石黒浩三:光 学;共立全書p119)のように見かけの発光面積ももとの面積にcosθをかけたものになっているので、輝度としては一定になるのです。
このため、光源が球または円筒であっても観測者には見かけの面積の等しい円板、矩形板と区別が付きません。太陽、満月、灼熱した金属球などはほぼこの条件を 満たしているようです。
 さて、ご質問ですが、
(1)Lambert 散乱(完全拡散散乱)のメカニズム
1167. 金属と紙の拡散反射の違い」「1171. 熱線遮断塗料」に書きましたように、無色透明の固体のを粉砕すると拡散反射によって白くなります。拡散反射が大きくなるためには、粒径が波長の1/2よりも大きくなければなりません。理想に近い拡散反射板は反射型液晶ディスプレイのために市販されています。また積分球に塗る白色塗料も理想に近い拡散反射をもたらします。

(2)有損失の場合の拡散反射率
 均等拡散反射面でも、入射媒質が無損失と有損失の場合では当然ながら反射率に違いが出ます。透明の粒子を透過した光が別の粒子の面で反射されたり透過した り複雑な過程を経て散乱光となるから、透過の際に損失があると、散乱強度に影響するのです。

(3)均等拡散反射面の複素屈折率による取り扱い
 もちろん、拡散反射の際に偏光の情報が失われますから、エリプソメトリ(偏光解析)は有効でないと思います。
私の理解では、拡散反射は平均化した光学定数だけでは説明できず、粒子の形状やサイズなどの因子をどのような扱うかに依存すると存じます。
私は、不勉強でこのあたりの最近の発展を知らないので、光学理論の専門家である山梨大学堀裕和教授に尋ねてみようと思います。
しばらくお待ち下さい。
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Date: Sun, 11 Apr 2010 17:21:38 +0900
Q2: 佐藤先生、Kです。
ご多忙の折、ご回答頂き、誠にありがとうございます。

均等拡散反射面でも入射媒質が無損失と有損失の場合では反射率に違いが表れ、その原因が透過光の損失にあるという先生のご説明が非常によく納得できました。
フレネルの公式を用いて反射率を計算すると、複素屈折率の虚部(消光係数)が1~10の範囲で反射率が大きく変化するのですが、この範囲の消光係数の値は導電率で換算すると導体には及びませんが、半導体くらいの導電率になってしまいます。
実は、私は樹脂の化学変化による反射率の変化を調べていました。樹脂では、半導体ほどの導電率を持っているとは思えないため、屈折率(実部)の影響を考慮したとしても大きな反射率の変化が 現れるとは考えられませんでした。確かに先生のおっしゃる通り透過光であれば光の周波数帯域における表皮厚さの薄さを考えれば、小さな導電率の変化でも有意な(透過光としての)反射率の低下を引き起こすと考えられます。
光学定数測定についても、確かに拡散反射する材料では偏光の情報が失われてしまいますから、光学定数はエリプソメトリーでは測定できなさそうですね。

また正直、ミー散乱の理論からランバート散乱まで発展させるのはかなり骨の折れる作業だと思ったので、山梨大学の堀先生からのご回答をご教授頂ければ幸いです。
お手数とは存じますが、よろしくお願いいたします。
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Date: Mon, 12 Apr 2010 23:18:20 +0900
A2: K様、佐藤勝昭です。
 山梨大学の堀先生からの回答をお伝えします。
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  お問合せにかかわる完全拡散という極限概念あるいは理想化はたしかにさまざまな場面であるわけですが
 「それを近似的に実現する物理はあるかあるいはそれはどんな現象の極限か」という問いに置き換えると
 簡単そうに見えて実は例えば「摩擦の物理的機構は何ですか?」というような奥の深い問題になるように思います.
・簡単には
 「表面全体の複雑な散乱過程の統計的平均を議論すると入射条件に依らないような散乱状況になる極限を
  Lambert光源あるいは散乱と呼び、そのような理想化ができる場合は例の式が成り立つ」
 というようなお答えになるかと思います.詳細に依らないという統計的性質を持つという前提は
 「詳細を議論してはいけない極限的状況である」という前提に立つ事とほぼ同等ということであると思います.
 この論理で行きますと、後半の光学応答に関しては「均等拡散面は入射条件を無に帰す極限的表面」ですので
 「光学応答自体の定義に意味が無くなる」ということが導かれるかと思います.
・以上のことから、お問合せの方の質問の真意は「実は完全な均等拡散面ではない現実の散乱表面」において
 「完全均等拡散からのずれ」を問題にしたいと考えておられると思います.
 すなわちお問合せの方の問題を正確に表現すれば「ほぼ均等拡散面とみなせるがそこからわずかにずれた
 実際の散乱表面がありその性質を詳しく調べるためにはどうすればよいのかあるいはどう考えたらよいのか?」
 ということではないかと推察します.
 質問された方自身の言葉をお借りすれば「均等拡散反射する材料の複素屈折率を求めたい」というのは
 「ほぼ均等拡散反射するように見えるが実際は『これこれの側面において』均等拡散反射とはわずかに異なる材料の
 複素屈折率を求めたい」という問いになると思います.
 ほぼ均質拡散面であるような状況でそのメカニズムの詳細を追いたいという事になりますと、問題意識を持っている
 「違い」に寄与しているメカニズムに関わる表面に関する詳細な情報を知ることが必要になります.
 すなわち『これこれの側面において』均等散乱反射とは異なるその『これこれの側面において』とは
 どのような側面なのかそれに応じて問題が異なりまたそれをはっきりさせれば問題は明確になってくると思います.
 そのような問題の中にはランダム表面の光学応答や近接場光も含む散乱問題も関与する
 たいへん高度な背景を持った内容も含まれてくるかと思います.
・取りまとめますと
 質問の内容に関わる問題は多様な物理側面を含んでいますので何を問題にするかによって解くべき問題そのものが変わってきます.
 どの光学応答の側面に着目してその表面の性質を調べたいのかによりさまざまなお答えを用意できると思います.
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というお答えでした。参考にして下さい。
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1201. シリコンのラマン散乱

Date: Fri, 30 Apr 2010 11:54:14 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
お世話になります。X社のH*と申します。
佐藤先生のホームページの
「基礎から学ぶ光物性」のeラーニング資料 にて、光について学習させて頂いております。
ありがとうございます。

実は、
”補足資料:ラマン分光と赤外分光”を拝見し、P59 Siのラマン選択則を 手持ちの装置で確認してみようと思ったのですが、その前に不勉強な点につき、ご教授をお願いしたく、メールをお送りさせて頂いた次第です。

◆ご教授をお願いしたい内容◆
 X//(110)の図において、
θ=0°つまり、Y // <110>でのラマン強度をX(YY)X’で0.0 、X(YZ)Y’で1.0とした場合に
、 θ=90°つまり、Y // <100>でのラマン強度がX(YY)X’で1.0 、X(YZ)Y’で1.0となる。
⇒この時、(全偏光成分で測光すると)ラマン強度が1.4倍になる。
と解釈したのですが、解釈として正しいでしょうか。言い換えると、
「ラマン散乱(全偏光成分の総和)強度は入射光の偏光方向依存性を持つ。」
のでしょうか。
X//(100)やX//(111)では(全偏光成分の総和)強度が偏光方向に因らず一定なので、X//(110)についてのみ、奇異に思えました。
不勉強で申し訳ございません。ご教授のほど、よろしくお願い致します。
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Date: Fri, 30 Apr 2010 14:47:12 +0900
A: H様、佐藤勝昭です。
 私の授業資料をお使いいただきありがとうございます。
ラマンの部分については、自分で計算したのではなく、"第10回結晶工学講習会(1983.10.20-21)のテキストに中島信一先生(当時阪大工)が書かれた赤外ラマン分光による結 晶性評価(テキストのp75-82)に書かれたものをそのまま持ってきました。このテキストによると、x//(110)についてはθをY'と<110>軸とのなす角と定義しています。
 自分で計算したわけではないので自信はありませんが、ei=(cosθ,sinθ, 0)となるのと、テンソルを45度回転しなければならないので選択則が変わってsin2θ成分にsin θの成分が加わったきたのだと思います。無偏光の場合仰るように散乱強度は方位に依存しますね。
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Date: Fri, 30 Apr 2010 15:21:06 +0900
AA: 佐藤先生
早速、ご教授くださりありがとうございます。
散乱強度(受光部:無偏光)が偏光方位に依存するということを全く理解しておりませんでした。
ラマン選択則を理解するために、テンソル計算に対する苦手意識を克服する必要があると自らに言い聞かせ、(遅ればせながら)勉強を始めたいと思います。
このたびはご多忙のなか、私共のためにお時間をとってくださり、ありがとうございました。
引き続き、ご指導、ご鞭撻のほど、よろしくお願い申し上げます。
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Date: Fri, 30 Apr 2010 19:43:54 +0900
AA': PS. 本日、手持ちの(110)面方位ウェーハについて、後方散乱配置にて、入射光の偏光(垂直/水平)とウェーハステージの回転によりラマン散乱強度の偏光方位依存性を調べてみました。

◆X(YY)X'
 θ=0°⇔ <110>偏光 の時、Int. = 0
 θ=35°⇔ <111>偏光 の時、Int. = 6
 θ=90°⇔ <100>偏光 の時、Int. = 6
◆X(YZ)X'
 θ=0°⇔ <110>偏光 の時、Int. = 5
 θ=55°⇔ <112>偏光 の時、Int. = 2
 θ=90°⇔ <100>偏光 の時、Int. = 6

と、ほぼ図の通りの方位依存性が確認できました。
そんなわけで、理論の理解が後回しになってしまいましたので、頂いたテキストを元に、連休を利用して、勉強したいと思います。
いろいろとご指導くださり、ありがとうございました。先生にここまでして頂き、こころより恐縮しております。重ね重ね、お礼申し上げます。
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1203. 磁気分極の高速応答性

Date: Mon, 10 May 2010 12:55:14 +0900
Q: 佐藤教授様
 お世話になっています。
 S社のMです。
前回は、大変明瞭なご回答ありがとうございました。
 その後、実験は進めておりますが、前回の質問とは違った形の疑問が生じましたので  もしも可能ならばヒントをお教えいただけないかと思い、再度メール致しました。
質問内容
「電子分極に相当する、磁気分極?という概念は存在するのでしょうか?」
 ふと思ったのですが、電荷については、電子分極、イオン分極、配向分極 など応答速度に相当する概念が存在します。
 また、電子分極に関しては光速と同じ速度で応答するといわれていますが、 同じことを磁気モーメントに関して考えた場合、なにが相当するのかという質問です。
 真空ならびに一般的な物質は透磁率が1、銅などは1を若干下回るものもありますが、透磁率は、遷移金属などでは1以上の高い値を示しますが、これらについては 応答速度に追従性が寄与しそうです。
 また、磁気材料でも、セラミックなどで有名なペロブスカイト構造に相当する結晶構造があるようで先にもお話したとおり、アモルファスなどドメインが小さければ高速追従性がありますがドメインが大きな場合やフェライトなどのセラミックでは追従性が低く透磁率が比較的周波数が低めなところで飽和してしまいます。

 こうした意味、電子分極に相当する磁気モーメント成分がどんな形で材料物性として働いているのかイメージをつかみたく、もしご存知のことがあればお教えいただけないでしょうか。
 お手数ですがよろしくお願いいたします。
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Date: Mon, 10 May 2010 16:05:11 +0900
A: Mさま、佐藤勝昭です。
ご質問の件ですが、一つ一つお答えします。
電子分極に相当する、磁気分極?という概念は存在するのでしょうか?
Answer> 前回にもお答えしましたが、磁気分極は存在します。通常は「磁化」(magnetization)といわれています。
 最近では、磁気分極magnetic polarizationという言葉も使われます。
(たとえば、. 「したしむ磁性」, 小林久理眞著, 志村史夫監修, 朝倉書店)
・電子分極、イオン分極、配向分極 など応答速度に相当する概念が存在します。
 また、電子分極に関しては光速と同じ速度で応答するといわれていますが、  同じことを磁気モーメントに関して考えた場合、なにが相当するのかという質問です。
Answer>磁性に関してはミクロな磁化(磁気分極)とマクロな磁化(磁気分極)を  考えなければなりません。
 (電子分極は必ずしも光速では応答しません。自由電子の場合
  プラズマ周波数が応答の極限です。電気双極子許容の光学遷移
  でもスペクトル線幅の逆数くらいの時間がかかります。念のため)
○ミクロな磁気分極の起源は、電子スピンおよび電子軌道です。
 ・ルビー(Al2O3:Cr^3+)のように非磁性体中に希薄に含まれた遷移金属   イオンの磁気分極はスピン起源です。
 ・ユーロピウム添加イットリウムオキシサルファイド(Y2O2S:Eu^3+)など   希土類イオンの磁気分極は電子軌道+スピン起源です。
 スピンによる磁気分極はかなり速い応答速度を持ちます。常磁性共鳴  の周波数までは応答します。強い磁界のもとでは遠赤外領域に来ます。
○強磁性体、フェリ磁性体のように自発分極があって、スピンがそろえ合っ  ている系におけるミクロな磁気分極のダイナミクスは、LLG方程式に従い  ます。ざっくりいって強磁性共鳴周波数までの高周波に応答します。
○一方、強磁性体、フェリ磁性体のマクロな磁気分極は、磁区(ドメイン)のダイナミ  クスが応答を決めています。(強誘電体でいえば、分域の挙動に相当します。)
 たとえば、磁気ヒステリシスの起源は磁区・磁壁の核発生と成長モデルで  理解されます。こちらは、あまり速い応答が期待できそうにないのですが、  電流注入による磁壁移動は結構高速であるといわれています。
○磁気分極は光学現象にほとんど寄与しませんが、磁気双極子許容光学遷移  が弱い吸収をもたらすこともあります。磁気分極のもとになる磁気モーメントは  軸性ベクトル、電子分極に相当する電気双極子モーメントは極性ベクトルです。
○材料物性への寄与を考えるには、マクロ・ミクロいずれであるかの見極めが
 大切だと思います。
ご質問の趣旨に的確にお答えできたかどうか、自信がありません。
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1204. CO2レーザ集塵でのアクリル回収率

Date: Fri, 28 May 2010 19:52:46 +0900
Q: 佐藤教授様
M*社 T*と申します。会社名、氏名は非公開でお願い致します。
HPを拝見して質問をさせて頂いています。
メカ設計者のため物性に詳しくなくインターネット等で 検索しましたが答えにたどり着けず、先生のHPのQ&A で質問をお願いしている次第です。

CO2レーザでアクリル樹脂の除去を行う際の集塵機の選定を するにあたり、集塵能力を算出中です。
ジョブショップでの簡易実験で、ある加工仕様を満たしつつ アクリルが除去できるレーザの条件は出たのですが、加工時に 発生するヒュームを取るための集塵機が必要な状態です。

仮にアクリルをある重量、レーザで除去を行い(例えば1Kg) ほとんどが昇華及び燃焼したと仮定しそのガスを集塵した場合、 集塵機内のフィルター表面に固化したアクリルの質量は1Kgに なるのでしょうか?
アクリルがもとの状態に戻る可逆係数(表現がいいかわかりませんが) を教えていただけないでしょうか。

アクリルがレーザで固体⇒気体になり集塵機でフィルター等に付着 して気体⇒固体へ戻る際のアクリルの可逆性が関連すると思うのですが、 御忙しいとは思いますが回答をお願いします。
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Date: Fri, 28 May 2010 21:03:34 +0900
A:T様、佐藤勝昭です。
 専門外なので、正しくお答えできるかどうか自信はありませんが、一般論でお答えし ます。
CO2レーザでアクリルを加熱したとき、もし、アクリル分子が分解せずそのままの形 で気体になり、集塵機フィルタにおいて冷却され、気体のままフィルターを通ることな く、すべてが固体に戻るのであれば、あなたのおっしゃる可逆係数は100%になるでしょ う。
 しかし、アクリル(アクリル酸エステルあるいはメタクリル酸エステルの重合体)を CO2レーザで加熱したとき、どのような化学反応が起きるでしょうか。
 
英文のWikipedia によれば、「アクリル(PMMA)の融点は160℃、沸点は200℃」と記載されています (2010.6.5注:沸点200℃はWikiの間違い:Sさんのコメント参照)から、 沸点以上に加熱するとアクリルのままで気化するはずですが、実際にはもっと高温に なりますからさまざまな反応が起きると考えられます。
 例えば、アクリルをCO2レーザ加熱すると悪臭が出ることが記されています。
大島商船高等専門学校 紀要 第41号 p.141
この悪臭は空気中の窒素と反応してシアン化水素ができたと考えられ、あきらかに熱分 解が起きていると思われます。このほか、分解してCO2や低分子の炭化水素の気体も 生じているでしょう。
 したがって、分解した気体がそのまま集塵機フィルターを通り抜ければ、アクリルに 戻ることはありません。
 結論的に言えば、CO2レーザ加熱によって、どのような分解反応が起きているかを 知れば、「可逆係数」なるものを得ることができるでしょう。私は、化学の専門家では ないので、どのような分解反応が起き、どのような気体が生じているかを、専門家にお 尋ねになる必要があると思います。
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Date: Fri, 28 May 2010 21:18:59 +0900
AA: 佐藤教授様、Tです。
早々の回答ありがとうございました。
イメージは湧きました。一度化学の専門家に確認をしてみます。
ありがとうございました。
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Date: Sat, 5 Jun 2010 04:15:33 +0900
A2: T様、佐藤勝昭です。
 先日のご質問をWebにアップしたところ、米国在住のT社S様より、下記のようなコメ ントが寄せられましたので転送します。参考にして下さい。
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Date: Sun, 06 Jun 2010 13:25:21 +0900
佐藤教授様,Tです。
転送のメールありがとうございます。
S様のコメント参考にさせて頂きます。
S様のコメントの中に”温度が低いと液体のMMAが凝縮する可能性が・・・”
とありましたが、加工点(レーザにてアクリルを除去する点)のすぐ横に 集塵ノズルを取り付けてホースを経由して、集塵機で回収予定です。
集塵ノズル付近もホースも常温になりますのでMMAが凝縮する可能性がありそうです。
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1205. #1204「CO2レーザ集塵でのアクリル回収率」へのコメント

Date : Fri, 4 Jun 2010 10:29:04 -0500
C: 佐藤先生、ご無沙汰しております。K社のSです。HPには匿名でお願いします。
アクリル樹脂(PMMA)について、Wikipediaにboiling pointとあるのは明らかに間違いです。
ポリマーの定義の一つに「蒸気圧がゼロに限りなく近い」というのがあり、沸点は普通は存在しません。
PMMAは、加熱すると容易にモノマーであるMMAに戻ります(解重合と呼ぶ)。この温度が大体220℃で すので、きっとそのことを誤解しているのではないかと思います。
質問者の「フィルターに堆積するか」の質問に対しては、MMAモノマーは蒸気として通過しますので 、「堆積しない」が正解です。但し、どこかに気流が滞留する場所があり、そこの温度が低いと、液 体のMMAが凝縮する可能性はあります。
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Date : Sat, 5 Jun 2010 03:53:29 +0900
A: S様、佐藤勝昭です。
 貴重な情報を有り難うございました。質問者にお答えするとともにHPを修正したいと 存じます。
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1206. コバールと78パーマロイのシート抵抗

Date : Sat, 5 Jun 2010 10:10:21 +0900
Q: 佐藤教授殿、M*社T*と言います。公開時は匿名でお願いします。
Q&A. 非常に興味深く拝見しております。

コバールと78パーマロイのシート抵抗値の情報を探しています。
ご存知でしたら教えてください。
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Date: Sat, 5 Jun 2010 11:41:09 +0900
A: T様、佐藤勝昭です。
 シート抵抗の概念は、半導体表面に不純物を拡散した場合のように、深さ方向に不均 一な系において、回路設計上、2次元的に表現しやすいように,単位面積あたりの面積 抵抗率を用いるもので、金属・合金のように抵抗値が深さ方向にほぼ均一な系には用い ません。このため、物性値として掲載されていないと考えられます。
シート抵抗Rsは、 厚みをt[m]としてRs=ρ[Ωm]/t[m]なので[Ω]のディメンションをもちますが、単なる 抵抗値と区別するため[Ω/□]と表記します。
コバールの電気抵抗率ρは0.49 μΩ・m=0.48Ω・μmです。仮に1μmの薄膜であれば敢 えて「シート抵抗」にすれば0.48Ωです。一方、78パーマロイの電気抵抗率ρは、およ そ0.55μΩ・mですから、1μmの膜のシート抵抗は0.55Ωということになります。 合金の抵抗率は、同じ組成比であっても不純物濃度や作り方で大きく変化します。上の 数値はあくまで目安と考えて下さい。
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Date: Sat, 5 Jun 2010 17:17:31 +0900
佐藤教授 
迅速なるご回答ありがとうございました。
製品設計の参考にさせて頂きます。
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1207. 全微分を偏微分を使って表す式がわからない

Date: Mon, 14 Jun 2010 20:42:12 +0900
Q: 佐藤先生、はじめまして。
突然のメールで失礼します。
私、田中と申します。
現在、大学には通っていませんが熱力学を独学していて質問があります。
熱力学関数のことで、
  dU=-pdV+TdS
内部エネルギーU(V,S)の全微分はなぜ
  dU=(∂U/∂V)dV + (∂U/∂S)dS
となるのかがわかりません。
参考書で、微分積分についても勉強しましたが、なぜこうなるのか全くわかりません。
お手数をおかけしますが、詳しく教えていただけないでしょうか。
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Date: Wed, 16 Jun 2010 00:51:04 +0900
A: 田中様、佐藤勝昭です。
熱力学の独学は大変ですね。(∂U/∂V)sなどは偏微分です。偏微分の意味を添付フ ァイルにしましたので勉強してください。

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Date: Tue, 29 Jun 2010 05:44:35 +0900
AA: 佐藤先生、メール返信ありがとうございました。
大変わかりやすく教えていただき本当にありがとうございます。
またわからないことがありましたら、質問するかもしれませんがその時はまた、宜しくお願い致します。
お忙しい中本当にありがとうございました。
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1208. 酸化チタン粉末の熱処理による色の変化

Date: Tue, 15 Jun 2010 02:44:23 +0900
Q: いつもHPを拝見して勉強させていただいています。
私は大学四回生の材料系の学科に通っている学生なのですが、二つ質問をさせていただいてよろしいでしょうか。
研究で酸化チタンを使って光触媒の実験を行っているのですが、酸化チタンを100℃、200℃、300℃、400℃、500℃に酸化焼成して各温度での光触媒活性について調べています。
ここで黄色い粉末の酸化チタンが300℃以上の焼成だと白い粉末に色が変わってしまうのですが、どのようなことが起こっているのでしょうか。これが一つ目の質問です。
次に、この白い粉末の酸化チタンを水溶液に溶かし、ガラス板などにコーティングして乾燥機で水分を飛ばすと表面に白い膜ができるのかと思いきや、透明な膜が生成しますがなぜなのでしょうか。 文献などを調べるとレイリー散乱が関係していると書かれているのですが理解できなかったのでよかったら説明おねがいします。
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Date: Tue, 15 Jun 2010 09:23:42 +0900
A: M君、酸化チタンは本来無色透明です。粉末が黄色いのは酸素欠陥があるからです。酸素中焼成で欠陥が無くなれば本来の無色透明になります。無色透明の物質を粉末にすると白くなります。岩塩でも氷砂糖でも無色透明の物質を粒径が1μ程度の粉末にすると散乱によって白くなります。薄膜では散乱がないので無色透明です。
少し補足します。
http://www.nanonet.go.jp/japanese/facility/report/f-070.pdfによれば、「報告によると酸化チタンは、高温で還元されると紫灰色を示し、N ドープされたTiO2 は黄色になると言われている。本研究結果においてH25%/Ar、NO 1%/Ar、NO 10%/Ar のそれぞれの雰囲気中でのアニール温度によるサンプルの色変化を確認したところ、H2 5%/Ar 中においては600℃にて還元された灰色となるが、温度が室温まで下がると再び白色へと戻った。NO/Ar の場合は温度上昇時にN ドープされたTiO2 のように黄色へと変化するが、H2/Ar の場合と同様に再び白色へと戻る。この高温時の黄色への変化は、TiO2の酸素欠陥による影響であり、N がドープされた時の反応ではないと考えられる。」とあります。
あなたの実験結果では熱処理したら黄色が消えたとあるので、矛盾しているように見えますが、あなたの行った空気中の熱処理では酸化雰囲気であり、上記文献の熱処理は 還元性であると考えれば、矛盾なく説明できると思います。
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Date: Tue, 15 Jun 2010 12:22:26 +0900
Q2: 返信ありがとうございます。
よろしかったらもう一つ質問したいのですが、なぜ酸素欠陥があったら黄色く見えてしまうのでしょうか。
そもそも酸素欠陥とはなんなのでしょうか。よろしくお願いします。
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Date: Tue, 15 Jun 2010 12:54:12 +0900
A2: さて、白い物質が色づく原因ですが、あなたは、カラーセンター(色中心)って聞いたことがないですか?
アルカリハライド(NaCl、KCLなど)に紫外線を当てると、マイナスの塩化物イオンが抜けて、空格子点(空孔)ができます。このため、空孔の位置にはあたかもプラスの電荷があるかのように働き、電子を引きつけて水素のような束縛状態を作り、赤から緑の波長の光を吸って励起状態になるため、透過光は青色に着色します。これが色中心です。
 TiO2においては、何らかの理由で酸素が抜けた空孔(これを酸素欠陥と呼びました)ができて色中心となり、青色を吸収するため、黄色に着色すると考えられます。
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Date: Thu, 17 Jun 2010 00:29:01 +0900
Q3: 丁寧な説明ありがとうございました。
実は私の勘違いでして、最初の粉末は酸化チタンではなく、ペル・オキソ・チタン溶液(PTA溶液)を用いたので始めは黄色で、酸化焼成すると、酸化チタンになり、白色を示すことが佐藤先生の説明からわかりました。
しかし、先生の説明では酸化チタンはもともと無色透明であり、それが散乱によって白色になるとのことでした。
ここで散乱によって白色に見える原理とはどのようなものなのでしょうか?また散乱する物質の大きさによって、レーリー散乱、ミー散乱などに分けられます。
今、白く見えているのは酸化チタンの粒子の散乱ですよね。次に2.5cm四方の瓦に酸化チタンの溶液を塗布して乾燥機に入れ、表面に酸化チタンの薄膜を生成させたところ、酸化チタンの薄膜は透明になりました。また、このときの状態をSEMで観察したところ、薄膜は均一であり、クラックなどは見られませんでした。
このとき透明にみえるのは粉末のときに白く見える場合との違いはなんでしょうか。
教えてください。
すみませんが匿名でお願いします。よろしくお願いします。
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Date: Thu, 17 Jun 2010 00:56:16 +0900
A3: M君、佐藤勝昭です。
 添付したのは、拙著「理科力をきたえるQ&A」のp123にある「粉砂糖は白いのに、氷砂糖はなぜ無色透明なのですか」の部分を抜粋したものです。そこに書きましたように、粉の粒子は形がランダムなので入射した光は、様々な方向に反射したり、透過した後も様々な方向に反射されまた粉の粒子を通っていろいろな方向に散らばって、その一部が目に届きます。このため白く見えるのです。白というのは拡散反射面があらゆる波長の光を均等に拡散反射する場合を言います。
薄膜は平らで拡散反射がおきないで、透過した光が戻ってきませんから、無色透明なのです。「理科力をきたえるQ&A」のp124にあるように拡散反射のあるすりガラスでも水に濡れると無色透明になりますが、それと同じです。
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1209. バンドの広さと電気伝導度の関係

Date : Mon, 28 Jun 2010 06:36:57 +0900
Q: 佐藤勝昭先生
お世話になります。S*社のG**と申します。WEB掲載時は、匿名でお願いします。
2008.07.29に質問させていただいたときは大変丁寧な説明ありがとうございました。最近、その質問も収録された先生の御本「半導体物性なんでもQ&A」が発行されたというので購入させていただきました。
さて早速質問なのですが、金属において(と制限付きでなくてもいいのかもしれませんが、)バンド幅が広いとなぜ電気伝導がよくなるのでしょうか?
バンド幅はそれぞれの原子が持つ軌道同士が近いとエネルギー軸に対して上下に広がるイメージを私は持っています。そういうイメージで考えると電気伝導がよくなるのもうなずけます。
しかし、私は純粋にバンド構造から理解したいと思っています。
以前どこかで、図を使って説明を受けたことがありました。メールに添付しましたので、御覧いただけると幸いです。
k=0の軸に対して対称なバンド構造を持つ物質において、電場をかけていない場合は左右対称に電子が存在し全体として電気が流れていな いが、電場をかけると電子の詰まる位置が非対称になり電気が流れる(例えば、右に進もうとする電子が左に進もうとする電子より多くなり全体として電気が流 れる)というような説明でした。
この説明自体は納得できた記憶があるのですが、バンド幅と電気伝導の関係もこの図で説明できるのか私には分かりません。
もう一つ、これに関することで疑問があります。
バンド幅が大きいモデルと小さいモデルがあるとして、等しい大きさの電場をそれぞれに印加した場合、2つのモデルにおける電子の詰まる位置の変位は、次のどれになるでしょうか?
1. k軸変位が等しい
2. エネルギー軸変位が等しい
3. その他
できれば、図を使って説明していただけるとありがたいです。
お忙しいところ申し訳ありませんがご回答宜しくお願いいたします。
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Date : Mon, 28 Jun 2010 10:07:24 +0900
A: G様、佐藤勝昭です。
 メールありがとうございます。拙著をご購入賜りありがとうございます。
G様の書かれた図について、電子が電界によってk空間でシフトする様子のご理解は、正しいと思います。

さて、バンド幅と電気伝導のよさの関係ですが、あまり難しく考える必要はないと存じます。
伝導帯の底はパラボリックになっていると考えますと、
    E=(1/2m*)(h'k)2
と表されます。ここにEは電子のエネルギー、m*は有効質量、h'はhbar、kは波数を表します。
狭いバンドでは、E-k曲線の縦方向がつまっているので、パラボラの係数(1/m*)が小さいのです。
従って有効質量m*が大きいのです。(有効質量は、E-k曲線の曲率の逆数に比例します。)
移動度μは電荷eと散乱の緩和時間τを用いて、μ=eτ/m*と表されますから、m*の大きな狭いバンドでは移動度が低いのです。
μ=eτ/m*を誘導しておきましょう。
 電界Fがk空間の各状態に対して緩和時間(平均自由時間)τだけ加わったとすると、kで表される状態の運動量の増加の平均は 平均ΔP=h'Δk=Fτ です。P=m*vですから、速度の増加の平均は
    Δv=(1/m*)ΔP=Fτ/m*
となります。
 電流密度Jは、キャリア密度n、電荷eとすると、
    J=neΔv
なので、
    J=(neτ/m*)F 
電流密度は電気伝導度σを用いてJ=σFと表されますから、電気伝導度は
    σ=neτ/m*
となります。ここで移動度μを導入すると、
    σ=neμ
と書けますから、結局
    μ=eτ/m*
が得られます。

 電界Fを印加したときの変化は、あなたの質問の(2) kに現れます。Δh'k=Fτです。図に示すように狭いバンドではkが変化してもエネルギーEが変化できません。だから電気伝導が悪いということもできます。
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Date: Tue, 29 Jun 2010 23:44:45 +0900
AA: 佐藤勝昭先生、Gです。
お返事下さいましてありがとうございました。
有効質量の辺りを勉強してバンド構造と伝導度の理解を深めたいと思います。
ありがとうございました。
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1210. アルミニウム中のチタンの拡散係数

Date:Fri, 09 Jul 2010 11:51:56 +0900
佐藤先生
 M社のN*と申します。HPを見てメールをしました。
Al中のTiの拡散係数とAlの自己拡散係数がどちらが大きいか知りたいのですが、 Al中のTiの拡散係数のような都合の良いデータが載っている文献が見つかりません。
そのような文献をご存知ではないでしょうか?
または、理論的に導くことは可能でしょうか?

HPに掲載される場合は、匿名でお願いいたします。
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Date:Fri, 9 Jul 2010 21:56:07 +0900
N様、佐藤勝昭です。
 私の専門外です。もうお調べかも知れませんが、英文Webで調べた結果,
次の文献が引っかかりました。これらの文献およびその中の引用文献を参照して見て下さい。
  • アルミ中のチタンの冷間圧延による拡散 J-G. LUO AND V. L. ACOFF: Interfacial Reactions of Titanium and Aluminum during Diffusion Welding; WELDING RESEARCH SUPPLEMENT 239-s SEPTEMBER 2000
  • チタンとアルミの相互拡散 F.J.J van Loo and G.D Rieck: Diffusion in the titanium-aluminium system?II. Interdiffusion in the composition range between 25 and 100 at.% Ti ; Acta Metallurgica Volume 21, Issue 1, January 1973, Pages 73-84
  • アルミの自己拡散 T. E. Volin, R. W. Balluffi: Annealing kinetics of voids and the Self-diffusion coefficient in aluminum; Phys. Stat. Solidi(b) Volume 2 5 Issue 1, Pages 163 - 173 Published Online: 31 Mar 2006
  • Y. Mishin, Chr. Herzig: Diffusion in the Ti?Al system; Acta Metallurgica Volume 48, Issue 3, Pages 589-623 (2 February 2000)
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    Date: Mon, 12 Jul 2010 09:42:12 +0900
    AA: 佐藤先生
     M社のNです。
    専門外にもかかわらず文献を調べていただきありがとうございました。
    参考にさせていただきます。
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    1211. 鉄がInPを半絶縁性にするわけ

    Date:Fri, 9 Jul 2010 20:34:35 +0900
    佐藤勝昭先生
    初めまして。突然のメール失礼いたします。
    私はT*大学修士2年のT*と申します。

    この度ホームページで先生の質問コーナーの存在を知り、一点お聞きしたいことがご ざいましてメールいたしました。
    勝手で申し訳ございませんが、Webにアップする際には匿名でお願いしたいです。

    早速質問なのですが、私は現在OMVPEでの結晶成長の研究に携わっているのですが、 InPに対して、Feをドーピングした場合に、半絶縁性となる文献を多く見かけます。 しかしながらその原理について詳細に記述されている文献を発見することが難しく、 また、一言で説明を求められても、「Feのドーピングは絶縁性になる」といった形で の説明しかできず、直観的な理解にも苦しんでいる状況です。

    そこで、この件についてお聞きしたく思います。
    よろしくお願いいたします。
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    Date:Fri, 9 Jul 2010 20:34:35 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     一般に、GaAsやInPなどの化合物半導体単結晶は成長時にるつぼからケイ素などの不 純物がドープされるために、あまり高抵抗ではありません。しかし、デバイスを作るに は、素子間が絶縁されている必要があります。何らかの方法でキャリアを減らして絶縁 性にしたもののが半絶縁性半導体結晶です。
     化合物半導体のキャリアを減らして半絶縁性にするには、キャリアを捕捉(トラップ )する準位を導入すればよいのです。トラップされたキャリアが熱的に活性化するのを 防ぐには、準位のエネルギー位置がバンド端から十分離れている「深い準位」である必 要があります。この目的のために、LEC(液体封止チョクラルスキー法)GaAsでは、EL2 と名付けられたAsのアンチサイトが関連する複合欠陥を導入します。HB(水平ブリッジ マン法)GaAsではppm程度のクロム(Cr)を添加して、3d準位に基づく深い準位を作りこ れによってキャリアをトラップします。InPではEL2欠陥がないので、多くの場合鉄(Fe) を添加して、3d準位による深い準位を導入します。半導体中の遷移金属の準位について は多くの書物が出版されています。
     かなり前(1984年)に私が結晶工学分科会第11回講習会で話した「半導体中の遷移金属 とDeep Level」のテキスト(何と当時は手書きだったのですね!)をスキャンしてpdf にしたものをWebにアップしました。
    佐藤勝昭のホームページ→刊行・発表・出版→研究会テキスト→54「半導体中の遷移金 属とDeep Level」あるいは、下記URLを直接入力して下さい。
    URL=http://home.sato-gallery.com/research/deep_level.pdf
    この解説では、半導体中のDeep Levelの起源を基礎から説明しています。化合物半導体 については§5をお読み下さい。
    また、文献には参考になる書物や論文が引用されていますので、参考にして下さい。
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    Date:Sat, 10 Jul 2010 02:19:43 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生、T大学 理工学研究科Tです。

    早急かつ丁寧なご回答ありがとうございました。
    大変わかりやすくまとめて下さり感謝いたします。
    「InPに対してFeをドーピングすることで、伝導帯からも価電子帯からも遠い順位を 形成することが可能で、そこにキャリアがトラップされる事で半絶縁性となる」とい う理解で良いでしょうか?

    アップしていただいた資料は、私の専攻分野からは若干離れている事もあり、すぐに 理解することは難しいですが、ご紹介いただいた文献を参考にしつつ、少しずつ理解 を深めていけたらと思います。
    また、その参考文献をもとに辿って行きましたところ、たくさんの関連論文に行きつ く事が出来ました。

    ありがとうございました。
    大変勉強になりました。
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    Date:Sat, 10 Jul 2010 09:41:17 +0900
    A2: T君、佐藤勝昭です。
     「InPに対してFeをドーピングすることで、伝導帯からも価電子帯からも遠い準位( 順位ではありません!)を形成することが可能で、そこにキャリアがトラップされる事 で半絶縁性となる」というあなたのご理解でよいと思います。
     アップした解説論文は難解と言うことですが、次のように理解してください。
    3d遷移金属を化合物半導体に添加した場合、ギャップ内に準位を作ります。その電子状 態は、3d軌道由来のCFR(crystal field resonance)とともに、遷移金属を添加したこと によって切断された結合(ダングリングボンド)と3d軌道が混成した電子状態(danglin g bond hybrid)もあるのです。このため深い準位を作りやすいというのが、私の解説の ポイントです。また、遷移金属の価数は多価で、フェルミ準位がどこに来るかで価数は さまざまに変化することも重要なポイントです。Inを置き換えたFeはフェルミ準位が価 電子帯端に近い場合はFe3+ですが、伝導帯に近い場合はFe2+となります。
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    Date: Mon, 12 Jul 2010 13:28:25 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    T大学理工学研究科Tです。
    追加での丁寧な解説ありがとうございました。
    大変理解が深まりました。
    これで、結晶成長を行っているInPの絶縁性に関しての疑問が解決いたしました。
    この度はありがとうございました。
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    1212. 摩擦に強いプラズモン共鳴センサー

    Date : Tue, 20 Jul 2010 17:16:51 +0900
    Q: 佐藤 勝沼先生
    はじめまして、T**大学修士2年のO**と申します。
    webでは匿名にしてくださるようお願いします。
    表面プラズモン共鳴センサについて調べているところ、佐藤先生の物性なんでもQ&Aを見つけまして、勉強させて頂いております。
    文献を見ても分からないことがあり、質問させていただきました。

    私はある機械の摺動部における潤滑について研究しております。
    その摺動部では潤滑油にガスが溶け込むため通常の潤滑より複雑な解析となっています。
    現在の研究テーマとして摺動部の潤滑油のガス溶解濃度を求めようとしており、そのために屈折率の測定を行うことを考えています。
    そこで小型であること、摺動部の油流れを邪魔しないことなどから表面プラズモン共鳴センサを使用しようと思っています。

    ですが表面プラズモン共鳴センサを用いるとすると、今回の条件下では金または銀の薄膜では摺動部の摺動に耐えられず剥離してしまうのではないかと考えています。

    そこで質問なのですが
    金、銀以外で表面プラズモン共鳴センサの金属薄膜に使えるものはあるのでしょうか?(とくに硬度が高いもので)
    またその際のレーザの波長や強度といった測定条件はどのようになるのかご存知の範囲で教えていただければ幸いです。

    ちなみに本機械では摺動部は面接触になっており圧力は数十~数百MPa程度かかるものと予想しています。

    以上、お忙しいところ申し訳ありませんが、よろしくお願いいたします。
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    Date : Wed, 21 Jul 2010 00:35:06 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     摺動部における潤滑油のガス溶解度をガス混入による屈折率変化を通じて光学的に測 定しようという面白いアイデアですね。しかし、表面プラズモンが観測できる金属材料 は極めて限られてしまいます。
     表面プラズモンが生じるのは集団運動する自由電子ガスがあればこそです。金や銀で は等方性のs電子系の自由電子による「金属結合」が結晶の凝集を決めており、それが 、可視域でのプラズマ振動の原因であると同時に、金属の展性や延性の原因でもあるの です。一方、硬い金属は、異方性の強いd電子による結合が重要ですが、これらの電子 の有効質量は重くプラズマ振動は赤外領域になります。またプラズマ振動も減衰が激し いので金銀のような明瞭なεのゼロ交差は見られません。 というわけで、硬質金属に おいて自由電子プラズマは期待できません。
     むしろ、金または銀の表面をプラズモン共鳴センサの感度に影響しないギリギリの薄 いDLC(diamond-like-carbon)膜で覆うのはいかがでしょうか?近接場光を使った光磁気 記録において磁性体表面を硬質のDLC保護膜で覆う技術が使われていましたから,DLCを 用いてもプラズモン共鳴センサからの近接場が利用できるのではないかtと推察します 。やってみないとわかりませんが・・。
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    Date : Wed, 21 Jul 2010 15:08:24 +0900
    AA:佐藤 勝昭 先生
    T大学のOです。
    迅速なご返信ありがとうございます。
    分かりやすいご説明ありがとうございました。
    硬い金属における電子結合では表面プラズモンを発生させるのは難しいということですか。
    大変よくわかりました。
    DLC膜で覆うという考え方は現実味がありそうですね。
    シリカコーティングをした表面プラズモン共鳴センサの例がありました。
    今後検討していきたいと考えています。
    お忙しいところ丁寧に回答していただき本当にありがとうございました。
    またお世話になることがあるかもしれませんがその時はまたよろしくお願いいたします。
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    1213. サファイアガラス

    Date : Mon, 2 Aug 2010 17:08:55 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
    いつも先生のホームページを拝読し、知識の深さに感銘しています。
    また、時折見かける院生・卒論生からの質問にもまことに適切なご指導をされ、我が意を得たりの思いです。
    小生いまは半ばリタイアの身ですが、一時期素材メーカーで化合物半導体(Ⅲ-Ⅴ族、Ⅱ-Ⅵ族の両方とも扱っていました)の単結晶作 りに勤しんでおりましたこともあり、今でも単結晶と聞くと血が騒ぎます。T*と申します。(Web上では匿名希望)
    先日、ふとある単語が気になり、少々調べてみましたが答えが得られずにおります。ご教示賜りたくメールを送らせて頂きます。
    =====================================
    サファイヤ・ガラスというモノです。
    酸化ケイ素なら、非晶質の物質は「石英ガラス」と呼ばれ、単結晶は「石英」と呼ばれます。
    では、アルミナの場合はどうなのか?
    まず第一に、サファイヤ・ガラスはガラスなのか単結晶なのか、という疑問。
    どうも、メーカーのホームページでは、単結晶アルミナのことを「サファイヤ・ガラス」と表記しているように思えますが、そうなん でしょうか?
    第二に、非晶質のアルミナは、ガラスのように使えないのか、という疑問です。
    かなり良い耐熱材料です。どうやって加工するのか、というのが問題のようにも思いますが。
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    Date : Mon, 2 Aug 2010 18:23:47 +0900
    A: T様、佐藤勝昭です。
    「なんでもQ&A」をごひいきにして頂きありがとうございます。
    ご質問にお答えします。
    (1)サファイアガラスはガラス窓のように無色透明なサファイアということでα-Al2O3の単結晶(コランダム)です。
     アルミナ・セラミクスは、炉心管などに使いますが、あれはα-Al2O3微結晶の集合体です。
    そもそもα-Al2O3は高融点物質(Tm=2072℃)なので、ガラス転移点もよく知られていないのではないかと思います。アルミシリケートのように固溶体を作ると融点も下がりガラス化できるのですが、アルミナそのものではガラスにするのは難しいのではないかと思います。

    (2)一方、Alは酸化しやすく、空気中に置くと直ちに自然酸化膜ができますが、これはアモルファスです。MTJ(磁気トンネル接合)のTMR素子では、最近になるまでAlのアモルファス酸化膜をトンネルバリアとして用いていました。今では湯浅氏らの開発したMgO単結晶バリアが普通になりましたが・・。
     アモルファスAl2O3薄膜は一種のガラスです。ただ、Alを自然酸化すると、数ナノメートルの膜を作った段階でこれが不動態となって、これ以上酸化が進行しないという特徴があります。おそらくCVDやALEなどの方法を採ればかなり厚くできるとは思うのですが、そんな面倒なことをして作った高価なガラスは、耐摩耗性・耐食性コーティングなど特殊な用途以外に使われないと思います。
     お答えになっているでしょうか?
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    Date : Mon, 2 Aug 2010 20:28:11 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    早々にお返事を頂き、まことにありがとうございます。
    疑問が氷解しました。
    ご指摘のガラス転移点には思いが及びませんでした。
    glass transition temperature (of) alumina でネット検索をしても、何も出てこないところをみると、ガラス転移しないのかとも思います。
    固化後は、機械加工以外に加工方法が無いようでは、用途も限定されます。
    もっとも現在、サファイア・ウェーハはGaNのLED用基板として、供給不足とのことですので、それで十分に世間のお役に立ってはいるんでしょう。
    余談ですが、
    単結晶屋の端くれとしては、「単結晶をガラスと呼ぶな!」という思いも多少あります。
    ありがとうございました.
    T拝。
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    1214. 溶液のファラデー効果を測りたい

    Date : Wed, 18 Aug 2010 20:01:14 +0900
    Q: 始めまして。Y*大学4年のU*と申します。(ホームページ上では匿名でお願いします。)
     いろいろと調べたのですがなかなか分からない時に先生のホームページを見つけました。いきなりの質問失礼しますが、よろしくお願いします。

     卒業研究で、溶液のファラデー効果を調べようと思っているのですが、溶液を入れる容器をどのようなものを用意すればよいかよく分かりません。
    サイズは試験管程までのサイズを希望しています。
     光学ガラスのセルのようなものを用意すればよいのでしょうか。それともガラス製品なら何でもよいのでしょうか。
    もしくは、プラスティック等の容器でもよいのでしょうか。円形の容器では測定は難しいのでしょうか。
     お手数ですが、お教えいただけると大変ありがたいです。よろしくお願いします。
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    Date : Thu, 19 Aug 2010 00:51:54 +0900
    A: U君、佐藤勝昭です。
     卒業研究に関しての疑問は、原則として指導教員に尋ねるべきことです。
    私が指導教員だとしたら、卒業研究のことを他の人に相談するのは自分が学生に信頼されていないのだなと、哀しい気持ちになります。
     何らかの理由で先生に聞けないことがあるのだと解釈して、考え方のヒントを差し上げましょう。

     U君はどのような装置で測定しようとしているのですか?
    ・市販の磁気旋光分光計で測定するのですか?その場合は、付属の溶液用のセルがあるはずです。
    ガラスもファラデー効果があるので、薄いガラス製のものでなければなりませんが、もし溶液のファラデー効果が非常に小さければ、 たとえ薄いガラス容器でも容器のファラデー効果の方が大きくなって、溶液のファラデー効果が測りにくいことがあります。
    ・ファラデー効果の装置を自作しようとするなら、いろいろのことを考えなければなりません。
    ファラデー効果を測定するには、光の進行方向に平行に磁界を印加する必要があります。
    電磁石だとポールピースに穴のあいた電磁石が必要です。ガラスセルは電磁石の磁極の間に入るものでなければなりません。
    ファラデー効果は、直線偏光の回転です。2つの直線偏光子を用いて、回転角を測ります。
    回転角の小さいときの測定法は、何らかの変調法が必要です。
    詳細は佐藤勝昭著「光と磁気(改訂版)」(朝倉書店2001年)の第5章(pp.90-99)を読んで下さい。
    -----------------------------------------
    もっと詳しく知りたければ、指導教員にその旨を話して、了解をもらってから私にメールして下さい。
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    Date : Fri, 20 Aug 2010 23:13:28 +0900
    AA: 東京農工大学名誉教授 佐藤先生
     先日質問させていただいたY大学Uです。
     返信ありがとうございました。指導していただいている先生を信頼していないわけではありませんが、少し先走ってしまいました。
    佐藤先生のアドバイスや、本を参考にして、指導教諭の先生ともよく相談して、やってみます。
    また何かありましたら、質問させていただくかもしれませんがその時はよろしくお願いします。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------------

    1215. パルス電流におけるエレクトロマイグレーション

    Date : Wed, 25 Aug 2010 12:00:17 +0900
    Q: 佐藤先生、こんにちは。
    HPを見て質問です。
    私はB*と申しまして、L*社でLED関連の仕事についております。
    WEBにアップされる時は、匿名でお願いいたします。
    ===================================
    最近LEDの寿命に関して調べていますが(LED自体には下記の方程式が適用されないかも知れませんが)金属配線などの Electro Migration(EM)を考えるとき
    ブラック方程式が通常使われますね。
    (佐藤註Black's Equation:MTTF=Awj-n exp(Q/kT) , ここに A は定数, wは金属線の幅、jは電流密度、nはモデルパラメータ、Qは活性化エネルギー、Tは温度)
    その式には電流密度というパラメータが入っています。
    ここで質問ですが、
    たとえば、100mAのDCの電流と、デューティ比(Duty Ratio)50%の 200mAの電流値の両方の場合に付いて、時間的の平均にして、両方100mAの電流密度として適用するのが妥当なんでしょうか。
    私の推測では同じ電流密度(EMの原因と考えるられるのが、金属GrainとGrainの接合部分にエネルギーを持った電子が流れることによると知られているので、平均にしたら同じ数の電子が流れることだと思ったのです。)と見なしていいと思って同じ寿命になると考えていますが、この場合、他の影響によって両方の寿命に違いがあるのでしょうか。
    実際、実験を行う前に、ご意見を参考させていただきたいと思ったのでお伺い致します。
    よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Thu, 26 Aug 2010 01:53:57 +0900
    A: B様、佐藤勝昭です。
    エレクトロマイグレーション(EM)について私は専門知識をもっていませんが、一般論としてお答えします。
    直流とパルス電流でEMの起きやすさがどう違うかは過去に研究されています。
    Boon-Khim Liew et al.: Projecting Interconnect Electromigration Lifetime for Arbitrary Current Waveforms; IEEE Tranns Electron Devices 37 [5] pp.1343-1351 (1990)に詳しく検討されています。

    また、実際アルミニウム配線において25%のDuty ratioのパルスを用いるとDCの場合よりcritical length-current density product(長さと電流密度の積の臨界値)を2.6倍に増やす ことができたという報告があります。
    Frankovic, R. Bernstein, G.H. Clement, J.J.:Pulsed-current duty cycle dependence of electromigration-induced stress generation in aluminum conductors; E lectron Device Letters, IEEE 17 [5] pp.244 - 246 (1996)
    熱的な解析が行われており、パルスの場合、電流の流れない時間にヒーリングの効果があり、単純に平均的な電流密度で考えては説明できないと考えられているようです。 論文を参考に検討して下さい。
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    Date : Tue, 31 Aug 2010 09:46:48 +0900
    AA: 佐藤先生。
    早速のお返事、どうも有難う御座います。
    教えて頂いた論文は大変参考になりました。
    疑問が解決されました。
    まだ様子を見てみているところですが、今のところ、実際の実験結果も、論文通りの(定量的な値には差があるとは思いますが、)結果が出ています。
    再度、ありがとうございます。
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    1216. 加飾顔料のスパッタ成膜

    Date : Fri, 17 Sep 2010 10:30:58 +0900
    Q: 東京農工大学名誉教授 佐藤先生
    初めてご連絡させて頂きます。K*社のA*と申します。
    先生のホームページを見てご連絡させて頂いた次第です。
    (webアップの際は社名、部署名、氏名を匿名でお願い致します)

    加飾薄膜についてご教示頂けると幸いです。

    無機顔料(複合酸化物)ターゲットをマグネトロンスパッタにおいて樹脂基板上に光学干渉効果によるものではなく材料由来の着色膜の成膜を目的としています。

    樹脂基板ではガス分圧・ガス圧・スパッタ出力を変化させても着色しない(目的とは異なる色彩の透明膜)ため、結晶性が起因しているのか確認するため基板をガラスに変更し上記3点の条件以外に基板加熱・成膜後のアニール処理を行いましたが同様に着色しませんでした。XRDにて基板上の確認をしましたが結晶ピークは得られておりません。

    加飾膜に関して知識・経験が浅く難儀しており、バルク由来の無加熱着色膜の成膜を行う場合、何を考慮した上で成膜を行えばよいのか。
    お忙しい中申し訳ありませんがご教示頂けますよう、宜しくお願い致します。
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    Date : Fri, 17 Sep 2010 15:07:44 +0900
    A1: A様、佐藤勝昭です。メールありがとうございます。無機複合酸化物のスパッタ製膜 で着色しないとのご質問ですが、具体的な組成をお示しいただかないと見当が付きませ ん。例えば遷移金属イオンの配位子場遷移の場合吸収が小さいため、かなり厚い膜でな いと着色しないです。
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    Date : Fri, 17 Sep 2010 18:39:34 +0900
    Q2: 東京農工大学名誉教授 佐藤先生

    具体的な組成・化合物名に関しましてはご教示頂く際に 必要不可欠とは存じておりますが、弊社に於ける開発品と云うこともあり 品名・元素名につきまして誠に勝手ではありますが 公開はお控え頂くか、或いは匿名にてお願い申し上げます。

    該当品は青色顔料としては一般的なコバルト系酸化物です。
    成膜条件としては本件の質問をさせて頂いた際の説明と一部重複致しますが、 Ar-O2反応性スパッタにて成膜行い、n数は少ないですが O2分圧(低圧~等分圧)・ガス圧・スパッタ出力を変化させて行っております。
    尚、樹脂基板への着色膜を目的としておりますが、 ガラス基板上への成膜(基板加熱あり)、成膜後のアニール処理を 行っても着色に至りませんでした(先生のご指摘のように褐色)。
    どの程度の真意かは不明ではありますが、 某メーカーの特許では弊社とは異なるコバルト系複合酸化物材料にて Ar雰囲気下の成膜で0.5~1.5μmの膜厚であれば着色するとのことでした。
    青系に限らずその他の色彩についても実施を予定しておりますが、 結晶性に寄るところではなく、配位子場遷移の場合吸収を考慮した 材料選択が必要と云うことで宜しいのでしょうか。

    宜しくお願い申し上げます。
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    Date : Fri, 17 Sep 2010 22:03:59 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。  一般的に言って青色顔料(コバルトブルー)はコバルトアルミネート(コバルトスピネル)でCoAl2O4という分子式で書かれていますが、AB2O4のスピネルにおけるAサイトは四面体配位です。 Co2+の結晶場遷移は、四面体配位の場合4A2→4T1遷移が可視に吸収をもたらしますが、この遷移は結晶場の強さとともに高エネルギー側にシフトします。 四面体配位の例としてZnS内のCo2+は赤(1.6-1.9eV)の領域と紫(>3eV)に吸収をもちますから青緑です。
    CoAl2O4中のCo2+は結晶場が強いので4A2→4T1遷移の吸収帯が短波長化するので青になるのです。四面体配位は反転対称がないのでやや強い吸収ですが、 Fe2O3のような電荷移動型遷移ではないので、厚みが必要だと思います。また、もしCoがBサイトに入ると八面体配位におけるCo3+となるので、 可視域全体にわたる弱い吸収帯と紫外域(>4eV)の吸収があります。この場合は灰色か薄い黄色でしょうか。
    青系に限らずその他の色彩についても配位子場遷移の場合吸収を考慮した材料選択が必要だと思います。
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    Date : Tue, 21 Sep 2010 17:23:19 +0900
    AA: 東京農工大学名誉教授 佐藤先生
    ご教示頂き、大変有り難うございました。なかなか目的とする材料の選択には至らないかとは思いますが、厚膜を含め試験を進める事と致します。

    末筆ながら今後ともご教示いただけると幸いです。
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    1217. プラズマCVDのチャンバークリーニング

    Date : Wed, 29 Sep 2010 15:35:44 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
    お世話になっております。
    A**社のK**です。匿名でお願いしたいのでお願い致します。「物性なんでもQ&A」のHPを見て質問させて頂いております。
    過去にも相談をしたことがあります。)
    「質問事項」
    プラズマCVDでは、C2F6や、NF3といったガスを導入してチャンバー内のクリーニングが可能ということを知りましたが、 この方法でSiO2の除去が出来るそうですが、Ti(またはTiO2)膜、そしてTa(またはTa2O5)膜の除去は可能でしょうか?
    また、除去の可能・不可能は何によって決まるのでしょうか?
    よろしくお願いします。
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    Date : Mon, 4 Oct 2010 17:39:59 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     9/25-10/2海外出張中のためお返事が遅くなったことをお詫びします。
    US Patent 2005/0252529 A1
    "Low temperature CVD chamber cleaning using dilute NF3"
    のclaim[008]によれば、NF3で除去できるのは、
    silicon nitride, polycrystalline silicon, titanium siliside, tungsten silicide , refractory metals and silicides
    となっております。原則的には、シリコン、高融点金属、金属のシリサイドということ で堆積した酸化物膜は、除去がむずかしいかと存じます。

    US Patent 7267842 B2 (2007)
    "Method for removing titanium dioxide deposits from a reactor"
    によれば、TiO2を比較的揮発性の高いフッ化物や塩化物に変換して除去しようというも のです。
    詳しくは、patentを詳しく読んでください。
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    Date : Mon, 4 Oct 2010 18:03:31 +0900
    AA: 佐藤 様
    ご連絡頂きありがとうございます。
    貴重な資料を添付して頂き大変感謝しております。
    仰られたとおり、内容を良く読み検討したいと思います。
    何か進展がありましたら、ご報告致します。
    どうもありがとうございました。
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    1218. X線回折実験でMoを使う理由

    Date : Tue, 5 Oct 2010 03:21:11 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    突然のメール失礼いたします。東京理科大学理学部3年の田中と言います。
    X線による方位決定の実験において、試料をモリブデンを使いますが、それはなぜなのか具体的に教えていただけないでしょうか。
    教科書には「X線解析の実験では波長が結晶の格子間距離に近い0.05-0.25nmのものを扱うものが多い」とだけ書かれていますが、 モリブデンが使われると具体的にどんなメリットがあるのか、格子間距離に近くない金属元素を用いたらどうなるのか、知りたいです。
    お手数おかけしますが、よろしくお願いします。
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    Date : Tue, 5 Oct 2010 09:26:43 +0900
    A: 君の質問に答えることこそが学生実験のねらいです。直接お答えすることはできません。
    ヒントですが、まず、モリブデンやその他の金属について格子定数と面方位から面間隔 を計算し試料カメラ間距離からラウエパターンを見積もってご覧なさい。バターンがカ メラからはみ出さないか、小さ過ぎて見えないかを考えてください。そうすれば、実験 条件からみてモリブデンが丁度よいと思うでしょう。
    これ以上の疑問は指導教員に聞いてください。
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    Date : Tue, 5 Oct 2010 10:41:19 +0900
    AA: ありがとうございます!
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    1219. CoCrPtの磁気光学スペクトル

    (この質問および回答は英文ですが、概要を翻訳して掲載しています。


    Date : Wed, 06 Oct 2010 12:33:25 +0200
    Q: 佐藤先生
    私はセサル・ド・ユリアン・フェルナンデス博士と申します。
    私は、ナノ構造磁性体(ナノ粒子、ナノ薄膜)および単分子磁性体の磁気光学効果を研究しています。
    私はこれまで、CoCrPt薄膜の室温におけるMCD測定(スペクトルとMOヒステリシス)を行って来ましたが、 下に示す貴論文がこの課題についての唯一の論文だと思いますので、コピーをいただけないでしょうか?
    また、先生のホームページには磁気光学に関する多数の教育活動が見受けられますので、いくつかの資料(英文)をお送りいただけないでしょうか?
    論文:K. Sato, M. Hosoba, S. Shimizu, K. Terayama and M. Futamoto: Magneto-optical Spectra of Single Crystalline CoCrPt Films between 1.2 and 6 eV; Proc. Magneto-Optical Recording International Symposium 2002, Benodet, France, May 6-9, 2002, Trans. Magn. Soc. Jpn. 2 [4] (2002) 171-174.
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    Date : Wed, 6 Oct 2010 23:23:58 +0900
    A: セサル様、佐藤勝昭です。
    CoCrPt単結晶膜の磁気光学スペクトルに関する私の研究に関心をお寄せいただきありがとうございます。
    ご要望の論文のpdfファイルを添付します。
    私の教育的な資料に関するご要望ですが、残念なことにほとんどが日本語です。
    磁気光学に関する私の英文の教育的刊行としては、唯一、下記教科書の分担執筆があります。
    "Magnetic Multilyers" edited by H. Bennett (World Scientific, 1994).
    このほか、磁気光学に関する英文チュートリアル講演の英文スライドのppt(またはpdf)ファイルがいくつかホームページにアップしてあります。
    (1)ISOM2000 Tutorila Seminar "Introduction to Magneto-optics"
    (2)International Conference on Functional Materials 2001 Invited talk "Recent advances in magnetooptics"
    (3)MORIS2009 Workshop Tutorials "Spin-related nanosciences for next generation in novative devices"
    (4)International Workshop on Nano-structured Materials & Magnetics, Invited paper "Development and Application of Magneto-Optical Microscope Using Polarization-Modulation Technique"
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    Date : Fri, 08 Oct 2010 17:29:58 +0200
    Q2: 佐藤先生、論文と明解で非常にたくさんの研究のプレゼン資料有り難うございます。
    当グループは、4年前から磁気光学を研究していますが、磁気光学は、起源は単純そうに見えるのですが、実験的にも理論的にもむずかしいものであるとわかりました。
    よろしければ、先生にいくつかの質問をしたいのです。先生にとっては単純な問題かも知れないのですが、私たちにとっては大問題なのです。
    (1)第1の質問は、磁気光学と磁気的に測定したヒステリシスとの比較の問題で、私たちの研究の結果は、両者が一般に異なっているのです。
     私の解釈は「磁気光学は伝搬ベクトルに平行なナノ粒子をよく検出するのに対し、磁気測定ではあらゆる方向を向いたナノ粒子を全部検出してしまうから。」というものです。
    CoCrPtの論文で、先生は、ランダム配向した結晶粒の場合もc軸配向した結晶粒の場合も磁気光学スペクトルは同じであると報告しておられます。同様に、WellerはFePtとCoの薄膜において同様の見解えに到達しています。これが正しければ、ガラスに堆積した多結晶膜において、磁気測定によるヒステリシスと磁気光学ヒステリシスとは異なっていると考えますが、正しいでしょうか?こういう研究はされていますか。私は、問題をマクロでなくミクロに考えたいのです。伝搬ベクトルがc軸に平行で、典型的なz^2軌道を考えます。c軸に垂直に到達した電界ベクトルは、この条件の下で結合は最大になるからです。
    (2)第2の質問は、実験に使っている光が電荷移動によって磁性状態を変えてしまうような場合、磁気光学と磁性の直接の関係は正しくなくなると考えてよいでしょうか?先生のお考えはどうですか?これは励起状態の寿命に関係するはずです。古典的な磁性体、例えば金属やフェライトにおいてこういう問題を扱った研究をご存じですか?
    (3)先生の研究室では、ファラデー回転とファラデー楕円率を測定しておられますが、どうやるのですか?MCD測定にPEMを使っており、マニュアルに書いてあるようにPEMを使って旋光角と楕円率を測定しましたが、うまくいきませんでした。先生はどのようにPEMを使っているのですか?
    (4)校正法:どのようにしてMOのセットアップを校正するのですか?可視光領域の校正用の化合物はありますか?符号の決定法は?文献ごとに定義が異なっています。
    お答えいただければ幸いです。
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    Date : Sat, 9 Oct 2010 01:44:14 +0900
    A2: セサル様、メールありがとう。
     あなたの具体的な実験データを見ていないので、お答えになっているか自信がありませんが、各質問に対する私の考えを述べます。
    (1) 磁気測定と磁気光学測定でヒステリシスが異なる
    磁気光学の信号は、試料の表面あるいは、表面から光の浸入長までの情報を反映するのに対し、磁気測定の信号は試料のバルク全部からの情報を反映しています。
    このため、試料が膜厚方向に不均一であれば、磁気カー効果のループと磁気測定のループは一般に異なるのです。
    (2) 光が磁気状態に変化を与えるとき
     通常よほど強い光を当てない限り、励起状態が磁性状態、さらには磁気光学効果に影響を与えることはありません。しかし、非常に強い光を使った場合に、非線形磁気光学効果が起きることがあります。 (3) PEMによる回転角と楕円率の測定
    下記論文を注意深くお読み下さい。
    K.Sato: Measurement of Magneto-Optical Kerr Effect Using Piezo-Birefringent Mo dulator; Jpn. J. Appl. Phys. 20 [12] (1981) 2403-2409.
    (4) 校正法
    校正法については、下記論文に記述しました。
    K.Sato, H.Hongu, H.Ikekame, Y.Tosaka, M.Watanabe, K.Takanashi and H.Fujimori: Magnetooptical Spectrometer for 1.2 - 5.9 eV Region and its Application to FePt/Pt Multilayers; Jpn. J. Appl. Phys. 32 Part 1 [2] (1993) 989-995.
    おわかりいただけたでしょうか?
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    1221. NOT回路についての疑問

    Date : Fri, 5 Nov 2010 01:30:28 +0900
    Q: 佐藤先生
    いつもWEBページを拝見しておりますS*と申します。
    現在フリーターで資格試験にチャレンジしているところです。今日、NOT回路を勉強しているのですが、 テキストには2種類のNOT回路がありました。
    この2種類の回路(画像添付)はそれぞれどういった特徴をもっているのか、あるいは得失について考えるとどういう 違いがあるのか、ご教授願えませんでしょうか?
    さらにNOT回路には丸みをもつ信号波形(オシロスコープで見たときの)を方形波になおす役割があるそうなんですが、 どういった原理なのかが記述されていなく、気になっています。時間の余裕がございましたら、こちらもアドバイスを いただけないでしょうか
    よろしくお願いします。
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    Date : Fri, 5 Nov 2010 08:46:38 +0900
    A: S様、佐藤勝昭です。
     ご質問の回路は、NANDゲートをインバータ(NOT)回路として使う方法で、例えば7400( 4NAND)の1つをNOT回路として用いうることによって、7404を1個省くことができるので よく使います。
     論理回路としてみれば、どちらも同じ動作をします。しかし実際の回路では、左図(a)の NANDの2入力を接続した場合には、2TTL入力を必要としますから、前段のロジックIC のファンアウトが1しかなければ、NOT回路として動作しないのです。その点、右図(b)の回路 では、一方の入力がHiレベルにプルアップされているので、1TTL入力だけで動作する ので確実にNOTとして働きます。特に前段がTTLでなくCMOSである場合には、(b)の回路を 推奨します。
     ファンアウトについては、
    Web上でのファンアウトについての解説を参照して下さい。
    ・波形修正についてですが、NAND回路に限らず、ロジックICは、ある値以上ではon、あ る値以下ではoffという閾(しきい)値動作をするので、アナログ入力を2値のディジ タル信号に変換できるのです。offからonになる電圧はonからoffになる電圧より若干高 い(ヒステリシス)をもつので、入力信号に乗ったノイズがあっても閾値付近でチャッ タリングを起こさないようになっています。
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    Date : Fri, 5 Nov 2010 10:26:02 +0900
    佐藤先生
    理解することができました。本当にありがとうございました。
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    1222. 炭化チタンの組成比と格子定数

    Date : Thu, 25 Nov 2010 11:56:11 +0900
    Q: 初めまして、E*大学工学部M1のI*と申します。
    (webにupする際は匿名でお願いします)
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させていただきます。

    今自分たちはTi粉末と炭素粉末を10~90%の割合で混合し、
    ペレット(1g)にして家庭用電子レンジ(2.45GHz)による
    加熱(10min)でTiCの合成の研究をしています。
    なお、発熱助剤として計2gの炭素でペレットを覆っています。

    50%で混合するとXRDによる解析の結果TiCのピークが現れるのですが、 それ以外の試料では炭素の量を増やす、または減らすとともに
    ピークが高角側にシフトし、TiCNのピークに近づきます。
    (50%を境にアーチ状になります)

    窒素の存在を確かめたいのですが、軽元素であるため検出が難しく、困っています。
    なぜピークがシフトするのかよろしければ教えてください。

    長文失礼しました。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Thu, 25 Nov 2010 15:16:42 +0900
    A: I君、佐藤勝昭です。
     修士論文の研究に関することは、基本的には指導教員にお尋ねください。
    ここではヒントだけ差し上げますから、詳細は指導教員に相談してくださいね。
    添付したのは、NIMSのdatabaseにあるTi-Cの平衡状態図(相図)です。
    (あなたは電子レンジで加熱しているので、系が熱平衡になっているかどうかわかりません。)
    相図をみるとTi-CのNaCl相の範囲がTiリッチ側に大きく広がっていることがわかります。
    このことはTi50%より上では、炭素空孔ができて密度が下がり、格子定数が小さくなると思われます。
    Ti50%以下の炭素リッチでは、Ti-Cとグラファイトに相分離します。このために見かけ上TiCの
    回折線が高角側にずれたのではないかと思うのですが、データをみていないのでなんともいえません。
    なお、Ti-C-Nの三元相図は入手できませんでした。文献を探すしかないと思います。
     結合の変化をみるならXPSを測定するのがよいかもしれませんね。
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    Date : Fri, 26 Nov 2010 13:52:09 +0900
    Q2: 佐藤先生、お忙しいところお返事ありがとうございます。
     担当の教員には先日相談した上での質問でした。お気づかい頂きありがとうございます。
     僕もTi-C-Nの三元相図を探しているのですが、まだ見つかっていません。
     もう少し探して勉強してみようと思います。
     貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 26 Nov 2010 21:20:41 +0900
    A2: I君、佐藤勝昭です。
     指導教員と相談しておられるのですね。Ti-C-Nの実験で決めた相図はありませんが、
    九州工業大学軽量金属材料研究室で熱力学的な理論計算をやっておられます。
    H. Ohtani, M. Hillert:
    Calculation of V-C-N and Ti-C-N phase diagrams;
    Calphad, Volume 17, Issue 1, January-March 1993, Pages 93-99
    Abstract:
    The phase diagrams of the V-C-N and Ti-C-N systems are calculated by combining
    the thermodynamic descriptions of the various phases used in recent assessmen
    ts of the V-C, V-N, Ti-C and Ti-N systems. No ternary interactions were added
    due to the limited and uncertain experimental information. Comparison is made
    with experimental information available and satisfactory agreement is obtained
    in some cases but not in other cases. The need for further experimental studi
    es and theoretical treatments is stressed.
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------------

    1223. 電気抵抗の温度係数測定の実験データ処理

    Date : Tue, 30 Nov 2010 23:13:59 +0900
    Q: 東京理科大学理工学部2年の田仲と言います。
    Exselによる微分グラフの書き方について佐藤先生にいろいろと教えていただきたいので、
    メールさせていただきました。
    では、質問ですが、
    まず、Rを抵抗値、Tを絶対温度と定義させていただきます。
    結論から言いますと、目的は
    「RとTの値で dR/dTを求めて、dR/dTの温度依存のグラフをExselで書きたい」です。
    RとTでdR/dTを求めるには、 RnをRのn番目の値,TnをTのn番目の値として定義して
    (R2-R1)/(T2-T1)
    (R3-R2)/(T3-T2)
        ・
        ・
        ・
    というようにExselに計算させればいいと思っているのですが、大丈夫でしょうか?
    もしそれが正しいとすれば、dR/dTはわかったところで、
    「dR/dTの温度依存のグラフ」は縦軸dR/dTとし、横軸を温度にして書くわけですが、その温度は どのように決めていけばいいのでしょうか?
    質問は以上です。お忙しい中大変恐縮ですが、お答えいただけると幸いです。
    --------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Tue, 30 Nov 2010 23:43:44 +0900
    A: 田仲君、佐藤勝昭です。
     学生実験のデータ処理をExcel (Exselではありません!)で処理する課題が出たのですか?
    微係数dR/dTの求め方は、あなたのやり方でもほぼ正しいのですが、正確にはT_nにおける微係数は
    (dR/dT)n={R_(n+1)-R_(n-1)}/{T_(n+1)-T_(n-1)}とした方が、よいと思います。
    (その代わり、両端の2点では微係数が求まりませんが・・)
    この場合だと横軸はT_nでよいのですが、あなたの場合には横軸は{T_(n+1)+T_n}/2にとるべきでしょうね。
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    Date : Tue, 30 Nov 2010 23:58:09 +0900
    Q2: さっそくのご返答ありがとうございます。大変よくわかりました。
    ExcelをExselと書いてしまい、大変お恥ずかしいです。書いたときには確かに違和感を感じたのですが・・・(恥
    もう1つお聞きしたいのですが、温度で抵抗値が変化するわけですが、降温過程と昇温過程では多少データの差が ありました。
    この差の原因は実験装置によるものでしょうか。それとも他になにか原因があるのでしょうか。ヒントをいただけたら幸いです。
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    Date : Wed, 1 Dec 2010 07:05:01 +0900
    A2: 田仲君、佐藤勝昭です。
     降温過程と昇温過程で抵抗値が異なるには、(1)実験のやり方による場合と(2) サンプル自身に非可逆な変化がある場合とがあります。
    (1)実験方法による場合
     温度を変化させるとき、スピードが速すぎると温度計とサンプルの間に温度差があっ て、正しい温度を測っていないのです。こんな時は、降温・昇温のスピードを変えて測 定してみて、データが異なるようでしたら、このケースです。
    (2)サンプル自身が変化する場合
     アモルファス半導体など、非平衡状態にあるサンプルの場合、昇温過程で結晶化がお きて物質が変化してしまいます。また、グラニュラー磁性体などでは、磁気的な状態に 本質的な非可逆性があります。
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    1224. 半導体レーザの電流-光強度特性

    Date: Wed, 15 Dec 2010 14:10:15 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
    はじめまして、某私立大の2年生のT**です。
    お手数おかけしますが、サイトのほうで掲載される際は氏名を匿名にしてくださるようお願いいたします。

    I-L特性について
    先日、半導体レーザー(LD)を光源とする小型レーザーの発振に関する学生実験を行いました。
    レポートを書いているのですが、途中でつまづきました。どうかお力を貸してください。
    まず、レーザー発振の確認として入力電流(mA)と光の出力の強度(μW)を測定し、I-L特性グラフを書きました。グラフをみると最初は光出力0μWが続いていて、入力電流がとある値に到達すると、突如ほぼ直線的に上がり始めました、その上がり始めた点の入力電流をしきい値電流I_th(mA)だと思うのですが、このしきい値電流を励起出力に換算してしきい値P_th(そのしきい値P_thは教科書に例としてしきい値電流を励起出力掲載されています)はどのようにしたら出せるのかがわかりません。
    また、グラフがしきい値電流以降は直線的に(傾きが一定)上昇していくはずなのに、若干曲がっているのは、 静電気などで半導体レーザーの劣化を引き起こしたため、光学損傷を起こしたからと考えていいでしょうか?(その他に測定時の温度変化なども考えられるのですが・・・)
    よろしくお願いいたします
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Wed, 15 Dec 2010 19:10:53 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     なんでもQ&Aは学生実験のレポートの課題や考察に直接お答えできません。
    ヒントだけ差し上げましょう。
    (1) Pth=VLD×Ithです。ここにVLDはレーザの端子にかかる電圧です。
    電源の内部抵抗によっては、レーザの両端の電圧は、電流を流さないときと閾電流の時とで異なっている場合がありますから、端子電圧をきちんと測っておく必要があります。
    (2) 通常、破壊寸前までI-L特性は直線です。もし曲がるとしたら、やはり電源のことを考える必要があるでしょう。レーザの端子電圧が下がっているかどうか調べてご覧なさい。
     電流を流しすぎると、添付図のようにいったんキンクが現れ、次にCODを生じピークとなって一気に破壊します。CODというのはcatastrophic optical damegeのことで、強い光によって光学損傷が起きて破壊します。
     あなたの実験が光学損傷によるものかどうかは、実験データをみていないので何ともいえません。
    いずれにしても、学部2年生には程度の高すぎる課題だと思います。わからなければ、わからないと正直に指導教員に聞いた方がよいと思いますよ。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date: Thu, 16 Dec 2010 04:31:44 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    大変わかりやすくご教授していただき、ありがとうございました。
    大学の友人から「物性なんでもQ&A」を紹介されて質問をさせていただきましたが、
    噂通り大変素早く、かつご丁寧なご返答をいただいて感激です。
    本当にありがとうございます
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    1225. 極座標の加速度表示について

    Date: Thu, 16 Dec 2010 08:33:23 +0900
    Q: 佐藤先生
    お世話になります。T*でございます。
    WEBに掲載される場合はお手数おかけいたしますが、匿名にしてくださるようお願いいたします。
    極座標を復習している際、お恥ずかしながら基礎的な事項で躓いてしまいました。
    様々な参考書を調べましたが、どれもそれに関する記述はありませんでした。
    まず
    こちらのサイトをご覧いただきたいのですが、
    ページの最後のほうで、加速度aのφ成分は2r dφ/dt+rd2φ/dt2となりましたが、これを①式とします。
    さらにこれはaのφ成分は (1/r) d(r^2*dφ/dt)/dt と書くことができると書かれていますが、これを②式とします。
    ①式を②式にもっていくにはどういう操作を行えばよいのでしょうか?
    ①⇒②に変形する途中式を教えてください。
    よろしくお願いたします。
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    Date: Thu, 16 Dec 2010 09:10:56 +0900
    A: T君.佐藤勝昭です。この質問は物性の問題ではなく数学の問題です。
    ①から②は難しくても②から①ならできるはすです。やってご覧なさい。
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    Date: Thu, 16 Dec 2010 11:05:31 +0900
    Q2: 佐藤先生 Tでございます.ご返答ありがとうございます.2から1はやりましたが、1から2はできなかったのですが、これはやはり普通はこの結果を公式として暗記して,2から1をその証明とするという流れと受け止めるべきでしょうか
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    Date: Thu, 16 Dec 2010 13:41:46 +0900
    A2: T君、佐藤勝昭です。  ①から②への誘導はr2=g, dΦ/dt=fと置き換えれば簡単です。詳しくは添付ファイルを見てね。
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    Date: Thu, 16 Dec 2010 22:10:16 +0900
    AA: 佐藤先生、Tです。
    ご丁寧に数学の質問までお答えいただき、本当にありがとうございます。
    言葉では表せないほど感激しています。
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    1226. PCB分画のための処理法

    Date : Wed, 29 Dec 2010 14:16:59 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    物性なんでもQ&AのHPを見まして、初めて質問させていただきます。
    N*社A*です。匿名にてお願いします。
    質問の内容は下記の通りです。
     種々不純物を含んでいる中から、PCBを分画を行う方法を教えていただければと思います。
    ダイオキシン類の場合、塩基性のアルミナを使用にて分画しています。
    その対象がPCBのみの場合、その分画にはどのようなアルミナ(中性、酸性など)をどのような条件で 活性化し、どのような溶媒にて分画していけばいいのでしょうか?
     なるべく少量のアルミナを使用し、なるべく少量の溶媒にてPCBを溶出させることができればと考えてます。
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    Date: Thu, 30 Dec 2010 01:08:32 +0900
    A: A様、佐藤勝昭です。
     ご質問はアルミナカラムクロマトグラフィを用いたco-planar PCBの分画(fraction at ion)についてと思われます。
    私は、分析化学は専門外なので、正確にお答えできるかどうか自信がありません。
    パステルブルーのサイトにある下記ページを参考にしてください。
  • 試料の前処理
  • 内標準物質の添加クリーンアップスパイク
  • 各捕集部からの抽出
  • 硫酸処理-シリカゲルカラムクロマトグラフ:妨害物質を取り除く
  • 多層シリカゲルカラムクロマトグラフ操作:妨害物質を取り除く
  • アルミナカラムクロマトグラフ操作
  • 高速液体クロマトグラフ操作:コプラナーPCB
  • ---------------------------------------------------------------------------------------------------------------------

    1227. 差動形固定検光子法による磁気光学効果測定

    Date:Thu, 13 Jan 2011 10:41:01 +0900
    Q: はじめまして、H*大学・学部4年のS*と申します。
    ※佐藤先生のHPにご掲載の際は匿名でお願い致します。
    佐藤先生の出版なされた「光と磁気」にはいつもお世話になっています。
    佐藤先生のHP「物性なんでもQ&A」を拝見し、ご質問させて頂きます。

    現在私は卒業論文のテーマとして時間分解ファラデー回転法の測定系の設計と計 測に取り組んでいます。論文ではよくファラデー回転を計測するとき、偏光ビー ムスプリッタによって直線偏光の縦成分と横成分に分け、バランスフォトダイオ ードでその差分処理を行った結果をロックインアップにより、検出するとなって います。
    ここで質問なのですが、出力してきた波形からファラデー回転角をどのように算 出すればよいのでしょうか。
    私の考えでは、回転前の縦と横が同じときの強度が必要と考えていて、回転前の 強度をAとし、ファラデー回転後の波形強度をΔE(t)とすると、ファラデー回 転角はθf(t)は θf = arcsin(ΔE/2A)になるのかと単純に考えたのです が、間違っていますでしょうか。
    年始早々お忙しい中申し訳ございません。
    回答よろしくお願いいたします。
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    Date:Thu, 13 Jan 2011 19:01:41 +0900
    A: S君、佐藤勝昭です。
     「偏光ビームスプリッタによって直線偏光の縦成分と横成分に分け、バランスフォト ダイオードでその差分処理を行った結果をロックインアップにより検出」する方法の解 析法は原理的には
     ΔE=A{cos2(θ+π/4)-sin2(θ+π/2)}=Acos(2θ+π/2)=Asin(2θ)
    となるはずなので
     θ=(1/2)arcsin(ΔE/A)
    となりますが、フォトダイオードや増幅器のゲインなどの違いがあるので、必ずしも正 確なデータが得られません。 それで、実際には校正を行います。試料の手前の偏光板 を±1°、±2°・・と変化させて、データをとり、校正するのです。やり方は、私が 農工大物理システム工学科在籍中に物理システム工学実験で使った
    実験指導書 を参考にしてください。
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    Date:Thu, 13 Jan 2011 21:09:27 +0900
    AA: 佐藤先生、
    先ほどファラデー回転の検出方法について質問させて頂いたH*大学のS*です。

    お忙しい中、丁寧な回答ありがとうございます。
    たいへんよくわかりました。今年からの新しい研究内容であって
    先輩も指導教員の方もあまりわからない状態でしたので
    回答頂けてすごく感激しています。
    これからどんどん研究を進めていきたいと思います。

    ありがとうございました。
    失礼します。
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    1228. ダイヤモンド微結晶・アモルファスカーボン混相の光学バンドギャップ

    Thu, 13 Jan 2011 21:44:48 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    K*大学修士1年I*と申します。匿名希望でお願いいたします。
    ホームページを拝見しご質問したいと思いメールさせていただきました。
    私は微結晶ダイヤとアモルファスカーボンの混相膜の研究をしています。
    そこで光学バンドギャップを見積もる際に反射率と透過率から導いたαhνのプロット図を用いています。
    ダイヤやアモルファスカーボンならば間接遷移バンドギャップがあるかと思いますが
    本研究における混相膜においては、ダイヤ、アモルファスカーボンの間接遷移に
    加えて粒界部分による直接遷移の発現が理論的に予測されています。
    この場合複数のバンドギャップが見られると考えていますが、このような混相膜においても
    αhνプロットの直線部分によるバンドギャップの推定は可能でしょうか。
    αhνプロットでのバンドギャップ推定は結晶系であることが前提であると聞いたことがあります。
    ご返答の程よろしくお願いいたします。
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    Date: Fri, 14 Jan 2011 00:33:36 +0900
    A: I君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。「微結晶ダイヤとアモルファスカーボンの混相膜」の光学バンド ギャップを決めようとしておられるのですね。私は、カーボンの経験がないので、シリ コンの例で説明します。
     一般に、結晶半導体において、吸収端付近の吸収スペクトルは
    ・直接遷移の場合、αhν=A(hν-Eg)1/2, したがって、(αhν)2=A2 (hν-Eg) (1)
    ・間接遷移の場合、αhν=B(hν-Eg)2, したがって、(αhν)1/2=B1/2(hν-Eg) (2)
    と表されます。、(αhν)2 または、(αhν)1/2 をhνに対してプロットすると、外挿 がゼロを横切る位置が光学バンドギャップEgです。直接遷移なら吸収が強いので、薄い (~1μm)の試料でαを測定してプロット(1)を行い直線になれば直接遷移です。一方 、間接遷移は吸収が弱いので、厚みのある(~0.1mm)の試料でαを測定してプロット( 2)を行ってみて直線なら間接遷移です。
    一方、アモルファス物質ではTauc plot
     (αhν)1/2=C (hν-Eg) (3)
    が成り立ち、形の上では、結晶の間接遷移のプロット(2)と同じになります。ただし、(2)と(3)では係数の物理的背景が全く違い、CはB1/2に比べて、1桁近く大きいのです。
    添付図は、高橋清・小長井誠著「アモルファス太陽電池」(昭晃堂, 1983)のp.110 の図4.15ですが、同じプロットでも、アモルファスシリコンの方が結晶シリコンより遙 かに立ち上がりが急峻だということがわかるでしょう。
     なお、アモルファスカーボンに適用できるかは、私は、経験がないので、論文を探し てください。
     なお、ご質問では、「微結晶の界面部分で間接遷移が直接遷移化する」という理論が あるとのことですが、おそらく対称性の関係で、k空間でバンドの折り返しが起きて、 直接遷移化したのではないかと推察しますが、界面だけが直接遷移だと吸収も弱く、そ れを分離するのは困難かと存じます。
     修士論文の研究でわからないことは、本来指導教員に教わるべきものです。私の回答 も先生に示して、先生のお考えを聞かれてはいかがでしょうか?
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    Date : Fri, 14 Jan 2011 16:49:46 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    K大学Iです。
    早速ご返答いただきありがとうございました。
    今後の研究の参考にさせていただきたいと思います。
    ありがとうございました。
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    1229. 低温でMOS-FETのフラットバンドを求めるには

    Date : Tue, 25 Jan 2011 02:51:02 +0900
    佐藤勝昭先生
    はじめまして。T*大学大学院修士二年のK*と申します(匿名希望でお願いします)。HPを見てメールさせて頂きました。
    「MOS構造のn型Siにおけるフラットバンド電圧の温度依存性の実験的な求め方」について質問したいと思います。
    ご存知のように、MOSにおいてフラットバンド電圧を求める際には、フラットバンド容量を計算から求め、C-V特性からそのフラットバンド容量となるような電圧をフラットバンド電圧としているかと思います。
    室温の場合はこの方法でフラットバンド電圧が求まるのですが、温度が200K以下になるとキャリアのフリーズアウトが起こるせいで、下記のフラットバンド容量の式が成り立たなくなってしまい、フラットバンド電圧をうまく求めることができません。
    低温においてもC-V特性からフラットバンド電圧を求める方法について何かご存知ではないでしょうか。
    以上、よろしくお願い致します。

    ◆デバイ長の式◆
    LD = (εSi*k*T/q2*ND)1/2 : NDはSi中のドーピング濃度
    ◆フラットバンド容量の式◆
    CFB = Cs * Cox / (Cs + Cox) : Cs = εSi / LD, Cox = εox / Tox
    ただし、εSi,εoxはそれぞれSiとSiO2の誘電率。Toxは酸化膜厚とする。
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    Date : Tue, 25 Jan 2011 11:07:42 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     低温におけるフラットバンド電圧の求め方についてのご質問ですが、ご指摘のように キャリアのフリーズアウトのため、通常使われる式は使えません。このような場合には 基本に立ち返って、フェルミ・ディラック統計から出発し、フリーズアウトを考慮した 一般化したモデルを使わなければなりません。
    C.-L.Huang,G.S.Gildenblat:MOS flat-band capacitance method at low temperatures; IEEE Trans. Electron Devices Volume: 36 Issue:8 (Aug 1989) pp. 1434 - 1439
    に載っていますので、図書館に行って閲読してください。
    なお、修士論文の研究に関する相談は、まず指導教員にされることをお薦めします。
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    Date : Tue, 25 Jan 2011 13:04:47 +0900
    佐藤勝昭先生
    T大学のKでございます。
    早速のご回答、どうもありがとうございました。
    ご紹介いただいた論文を拝見いたしましたが、(12)式にバルクのフェルミエネルギーが入っているあたり、やはり解析的に解くことは難しい印象を受けました。論文のリファレンスを当たってみるなどして、もう少し考えてみたいと思います。
    もちろん、指導教員とも常々議論を交わしてきましたが、今回の質問の件が長らくの疑問として残ってしまったため、今回このような形でご質問させていただきました。
    この度はどうもありがとうございました。
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    1230. 金属のプラズモンとバンド間遷移

    Date : Fri, 18 Feb 2011 13:21:54 +0900
    Q1: 佐藤 勝昭先生
     はじめまして。
     日頃から疑問がある度に先生のHPで勉強させていただいており、誠に感謝しております。

     私は東京大学修士2年のA*と申します。お忙しいところ大変恐縮なのですが、質問があるのでメールいたしまし た。(質問をHPに載せていただける場合には匿名にしていただけないでしょうか。)
     最近プラズモンについて独学で学習し始めたのですが、金属微粒子が酸化チタンなどの酸化物半導体に付いている場合についてどうしても感覚的に理 解できない部分があります。それは、「金属微粒子がプラズモン共鳴して金属の電子が価電子帯から導電帯に一電子励起して酸化物半導 体に電子を受け渡す」ところで、プラズモン共鳴は自由電子の集団的振動のはずなのに一電子励起する部分です。

    ①どこで量子化しているのかが分からず混乱しています。

    また
    ②光の波長を固定した場合に、金属ナノ微粒子の電子密度分布の中である電子密度(光の振動数が微粒子内部の双極子の振動より小さく追従できなくな る、カットオフ密度)の部分で光が反射され(同時に吸収されて)、金属内の自由電子の振動と光の交番電場が共鳴する、そして反射と同時に起こる吸 収は一電子励起で、共鳴した振動は集団的な振る舞いという理解でよいのでしょうか。③カットオフのあたりは普通のプラズマと、微粒子の場合で同じ ように考えてしまっているのですがこの点もあっているのか不安です。

    ④さらに光を吸収しているのはナノ粒子全体として1電子ずつ吸光しているのか、それとも1原子ずつ吸収しているのかもよく分かりません。

    ⑤「局在プラズモン共鳴で反射・共鳴する波長についてナノ微粒子は反射係数が大きく、反射係数が大きいことは吸収係数も大きいことになる」と聞 いたことがあるのですが、反射係数の大きさと吸収係数の大きさの関係はどのようになっているのでしょうか

     勉強が足りず、とても基本的なことをお訊きしてしまって申し訳ございません。
     どうかご教授いただけないでしょうか。よろしくお願いいたします。
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    Date : Sun, 20 Feb 2011 14:35:13 +0900
    A1: Aさん、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。JSTの国際評価委員会が2/17-19にあり、お返事が遅れたことをお詫びします。
    「金属の電子が価電子帯から導電帯に一電子励起」という記述なのですが、貴金属のプラズマによる反射率のディップの原因は、 単なる自由電子のDrude型誘電率の実数部がゼロを横切ることによるプラズマ端ではなく、Efから数eV深いところにある3dバンドから Efへの遷移によるローレンツ型の誘電率の実数部が加わったことによるハイブリッドプラズマによるのです。
    これについては、
    添付ファイルの解説をお読みください。
     この解説を読まれた後、もう一度、ご質問していただけませんでしょうか?
    --------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 21 Feb 2011 14:19:44 +0900
    Q2: 佐藤 勝昭先生
     早速のご返信どうもありがとうございました。私こそお返事が遅れてしまい申し訳ございませんでした。
     分かりやすいPDFファイルを送っていただきありがとうございます。

    >Efから数eV深いところにある3dバンドからEfへの遷移によるローレンツ型の誘電率の実数部が加わったことによるハイブリッドプラズマ

     これは金属の反射には自由電子の集団的な振動だけでは反射のスペクトルを説明することはできず、3dバンドからs軌道のバンドの下端であるフェ ルミエネル ギーまでの遷移の吸収で、反射が落ちてしまうということでしょうか。
     「反射率が大きいところで吸収率が大きい」というわけではないということは理解できました。また金属の着色についても疑問を持っていたのでとて も勉強 になりました。

     私の理解が追いついておらず大変申し訳ないのですが、ハイブリッドプラズマ状態はナノ微粒子のような小さい金属の場合も同じなのでしょうか。バ ルクの 場合は吸収は3dバンド→フェルミエネルギー準位の遷移のみ考慮すれば良いけれど、ナノ粒子では局在プラズモン共鳴(LSPR)の吸収も考 えればよいというこ とでしょうか。

    (LSPRでは金属の表面の分散関係と共鳴波長を考えなければならず、たとえば金のナノ粒子の場合LSPR吸収スペクトルはある程度大きな幅(波 長領域)で吸収 していますが、そのなかでAuのバンドギャップに対応するは波長だけは電子遷移としてもナノ粒子に吸収されると思うのですが、この 波長についてはLSPRの吸 収とバンド吸収が別途行われていると考えるべきなのでしょうか。それともLSPRとバンド間遷移の吸収がカップリング など、何らかの関係を持っていると捉え るべきなのでしょうか。別途に行われているとすれば、金の原子一つ一つがバンド間遷移でフォトンを吸収して いると思うのですが…。)

     最後にもうひとつ疑問があるのですが、教科書や学会におけるLSPRの話(金属)では金や銀などの貴金属とAl、Pd、アルカリ金属くらいしか 出てこないの ですが鉄やニッケル、コバルトなどの普通の卑金属ではLSPRは起きないのですか。内殻が電子で満たされていて、s軌道に電子が1つ あるものがLSPRを生じる 傾向があるようですが、何か理論に基づいているのでしょうか。

       沢山質問があって大変恐縮です。ナンセンスな質問も混じっているかもしれないのですがどうしても分からなくて困っているのでどうぞよろしくお願 いいた します。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 21 Feb 2011 18:24:29 +0900
    A2: Aさん、佐藤勝昭です。
     ハイブリッドプラズマの周波数において誘電率の実数部がゼロを横切る状況は微粒子でも変わらないと思います。誘電率の実数部は誘電率の虚数部(吸収を表す)とクラマ ースクローニヒの関係で結びついています。実数部の分散の原因は確かにバンド間遷移ですが、ゼロを横切る光子エネルギーでは、バンド間吸収は起きていませんので注意が 必要です。
     ナノ微粒子の場合、表面プラズモンといって、表面に電子密度の粗密波ができ、それと光が結合して局在表面ポラリトンという素励起になっているものと考えられます。プ ラズモンポラリトンというのは、プラズモンと光との間でエネルギーのキャッチボールをしている仮想共鳴状態ですから、部分的には遷移が起きていると考えられます。した がって、光電流に寄与することは十分に考えられます。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 21 Feb 2011 20:05:18 +0900
    Q3: 佐藤 勝昭先生
     丁寧に教えていただきありがとうございます。
     頭の中でもやもやしていた部分がだんだんすっきりしてきました。

    >プラズモンポラリトンというのは、プラズモンと光との間でエネルギーのキャッチボールをしている仮想共鳴状態ですから、部分的には遷移が起きていると考 えられます。

     何度もお手数をおかけして申し訳ございませんが、上記のところをもう少しくわしく教えていただけないでしょうか。「仮想」とはエネルギーを間接的にやり 取りしているからなのでしょうか。
     また「仮想共鳴状態」から「部分的な遷移」の経緯と、「部分的な遷移」の言葉の意味を具体的にご教授いただけると大変うれしいのですが…。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 21 Feb 2011 23:01:18 +0900
    A3: Aさん、佐藤勝昭です。
     仮想共鳴状態といったのは私の造語で、アンダーソンの仮想束縛状態(virtual bound state)のアナロジーです。これは、4d遷移金属(Pd,Rhなど)にわずか(1%程度)にFeを添 加した希薄合金の磁化率の振る舞いを説明するために導入された考えです。 Feの3d軌道は4d遷移金属の連続的な4dバンドの連続スペクトルの中に埋め込まれていますが、原 子のd軌道の性質を持ちながら厳密には原子に束縛されていない状態です。 3d電子はあるときは伝導電子的に振る舞い、あるときは束縛電子として磁性に寄与します。  このように、量子力学では、「部分的に」異なる状態が混じり込むことがよくあります。
    光による電子分極も、物質中では分極波として伝わります。このとき、光と分極波はエネルギーのキャッチボールをしながら進んでいきます。このため、光は遅くなります。
    別の見方をすると、光の電界を受けてバーチャルに励起状態に遷移し、励起状態が基底状態に混じり込んでくることで電子分極が起きるのです。
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    Date : Tue, 22 Feb 2011 08:25:16 +0900
    AA: 佐藤 勝昭先生
     大変丁寧で明解な解説をいただきありがとうございました。やっと遷移とプラズモンの関係が分かりました。プラズモンと光の相互作用についても理解することができました。どうしても感覚的に納得できず苦しんでいましたので、佐藤先生にご教授いただき大変感謝しております。
     最後まで根気強く教えてくださり本当にありがとうございました。

     今後ともご指導のほどどうぞよろしくお願いいたします。これからもHPで学習させていただきたいと思います。
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    Date : Tue, 22 Feb 2011 20:48:09 +0900
    A4: Aさん、佐藤勝昭です。
    「鉄やニッケル、コバルトなどの普通の卑金属ではLSPRは起きないのですか。」というご質問にお答えしてませんでしたね。
    #1212の質問で硬い金属はプラズモンセンサーに使えないかという質問がありましたが、基本的には、それと同じ回答になります。
    「3d遷移金属における3d電子電子の有効質量は重く、プラズマ振動は赤外領域になります。またプラズマ振動も減衰が激しいので金銀のような明瞭なεのゼロ交差は見られま せん。というわけで、3d遷移金属において自由電子プラズマは期待できません。」
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    Date : Tue, 22 Feb 2011 21:21:54 +0900
    AA2: 佐藤 勝昭先生
     最後の質問まで忘れずに答えてくださり本当にありがとうございます。また、HPに掲載していただきありがとうございました。
     卑金属だと赤外領域でしかもプラズマ減衰も激しいのですか…それで学習していると顕著なプラズモンが見られる貴金属ばかり出てきたのですね。とても分か りやすい説明をいただきどうもありがとうございました。
     私は専攻が化学なのですが、今回の学習事項を自分の研究につなげていけたらいいなと考えております。
     また勉強していて疑問点が出てきて調べてもわからず困ったときには質問させていただこうと思いますので、どうぞご指導のほどよろしくお願いいたします。
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    1231. ZnS:Cu2+の電荷移動による光吸収構造について

    Date : Sun, 20 Feb 2011 12:25:31 +0900
    Q1: 佐藤勝昭先生
    K*大学のS*と申します。(webにアップされる場合は、匿名でお願いします。)こんにちは。
    私は、窒化物半導体の新機能開発の研究をしています。大学では、電子物性の講義を担当しています。
    講義では、できるだけ取っつきやすく、そして興味をもてばさらに深く進めるような内容にと心がけていますが、その際に、物性なんでもQ&Aをたびたび参考 にさせていただいています。webも書籍も講義資料を準備するために開いたのにおもしろくてそのままどんどん読んでしまって、講義の準備が なかなか終わらないとうのが玉にきず、です。。

    今回は、初めて(思い切って)質問メールをお送りいたします。

    半導体物性なんでもQ&Aの137ページの図68(a)に、ZnS:Cu2+の吸収スペクトルが掲載されています。ここで電荷移動バンドとかかれている領域(1.7~3.5eV付近)が フラットになっているのは、なぜかという点をぜひ教えていただきたいです。
    たとえば、パラボリックな価電子帯、伝導帯と局在準位間の吸収構造を議論する際によく適用されるLucovsky-Modelで、価電子帯からギャップ中の局在準位への電子励起で、 これに近い構造が再現できますが、このような遷移とお考えでしょうか。

     (この図と縦軸の単位が一緒かどうかわからないのですが、私が合成している遷移金属添加III族窒化物薄膜で同様のスペクトル構造が見られます。その起源を考える際にぜひ参考にさせていただきたいです。)
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    Date : Sun, 20 Feb 2011 14:55:12 +0900
    A1: S様、佐藤勝昭です。
     物性なんでもQ&Aをご愛読いただきありがとうございます。
    さて、ご質問の電荷移動遷移についてですが、
    一般に電荷移動遷移は局在系における多電子系の遷移ですから、それほど単純ではない(たとえばCuGaS2:Feでは配位子場遷移と電荷移動遷移の配置間相互作用を考えなければなりません)と存じますが、Cu2+はholeが1個なので、あなたのお考えでもよいのではないかと存じます。
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    Date : Mon, 21 Feb 2011 07:26:22 +0900
    Q2: 佐藤先生
    Sです。おはようございます。さっそくのご回答、ありがとうございます。
    佐藤先生のお書きになった「機能性材料のための量子工学」の第4章光機能のイットリウム鉄ガーネットの吸収係数(図4.21)の各ピークの起源と電荷移動 型遷移(図4.22)の図と、配置間相互作用をよく復習してみます。

    Cu2+はZnS中ではholeをひとつ与えることから、Lucovskyモデルをベースに考えてもよい、ということですが、この点について、もうすこし教えていただき たいです。
    Cu2+ではup spinは全部埋まっているので、この配位子場遷移による吸収をほとんど考える必要がなく、down spinの方はひとつだけ空きがあるので、ここへの 電子遷移を単純にとらえる、というふうに解釈しました。
    もしこれがup spinで1つだけ空きがあり、down spinは全部あいている、という場合には、上記の取り扱いはできず、やはり配置間相互作用を考えなければな らないでしょうか。

    お忙しいところを恐縮ですが、お手すきの際にコメントをいただければ幸甚です。
    どうぞよろしくお願いいたします。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 21 Feb 2011 11:16:44 +0900
    A2: 様、佐藤勝昭です。
     常磁性体では、up spinとdown spinは等価なので、いずれも1電子近似の範囲で扱えると思います。
    私は、半導体中の遷移金属イオンのスペクトルや、その磁気光学効果について、ずっと研究してきました。
    Chalcopyriteについては、CuGaS2, CuAlS2にTi, V, Cr, Mn, Fe, Co, Niのすべてについて光スペクトルとESRを測定しています。多くの場合、遷移金属はmultivalentで、固 有のdemarcation levelをもち、フェルミ準位がその準位を通過するとき価数の変化を伴います。たとえば、Cr2+/Cr3+など・・
    Feについては、CuFeS2も含め電荷移動した状態が基底状態に混じり込んでいますので、単純ではありません。
    1) K.Sato and T.Teranishi: Infrared Luminescence of Fe3+ in CuGaS2 and CuAlS2; J. Phys. Soc. Jpn. 37 [2] (1974) 415-422.
    2) T.Teranishi, K.Sato and K.Kondo: Optical Properties of a Magnetic Semi-conductor: Chalcopyrite CuFeS2 I. Absorption Spectra of CuFeS2 and Fe-doped CuAlS2 and CuGaS2; J. Phys. Soc. Jpn. 36 [6] (1974) 1618-1624.
    3) T.Teranishi and K.Sato: Optical, Electrical and Magnetic Properties of Chalcopyrite, CuFeS2; Proc. 2nd Int. Conf. Ternary Compounds, Strasbourg, 1975, J. Phys.(France) 36 Suppl. C3 (1976) C3-149~153.
    4) T.Teranishi, K.Sato and Y.Saito: Delocalization of d-Electrons in CuAl1-xFexS2 System; Proc. 3rd Int. Conf. Ternary Compounds, Edinburgh, 1977, Inst. Phy s. Conf. Ser. 35 (1977) 59-66.
    5) K.Sato and T.Teranishi: Effect of Localization of d-Electrons on the Optical Reflectivity Spectra of CuGa1-xFexS2 and CuAl1-xFexS2; Proc. 4th Int. Conf. Ternary and Multinary Compounds, Tokyo, 1980, Jpn. J. Appl. Phys. 19, Suppl. 19-3 (1980) 101-105.
    6) K.Sato, H.Tsunoda and T.Teranishi: Optical Characterization of Transition Atom Impurities in I-III-VI2 Semiconductors; Proc. 7th Int. Conf. Ternary and M ultinary Compounds, Snowmass 1986 , (Mater. Res. Soc., Pitsburg, 1987) 459-464.
    7) K.Sato, K.Tanaka, K.Ishii and S.Matsuda: Crystal Growth and Photoluminescence Studies in Fe-Doped Single Crystals of CuAl1-xGaxS2; Proc. 9th Internationa l Conf. on Crystal Growth (ICCGー9), Sendai, 1989, J. Cryst. Growth 99 (1990) 772-775.
    8) K.Sato: Optical Characterization of Fe Atoms in CuMS2 (M=Al, Ga and In) Crystals; Proc. 8th Int. Conf. Ternary & Multinary Compounds, Kishinev, Sept. 199 0, eds. S.I. Radautsan and C.Schwab, (Shtiintsa Press, Kishinev, 1990) vol.1 pp.50-57.
    9) I.Aksenov and K.Sato: The Effect of Fermi Level Motion on ESR and Optical Properties of CuAlS2; Jpn. J. Appl. Phys. 31 Part 1 [8] (1992) 2352-2358.
    10) M.Fujisawa, S.Suga, T.Mizoguchi, A.Fujimori and K.Sato: Electronic Structures of CuFeS2 and CuAl0.9Fe0.1S2 Studied by Electron and Optical Spectroscopie s; Phys. Rev. B49 [11] (1994) 7155-7164.
    11) K. Sato, I. Aksenov, N. Nishikawa, T. Shinzato and H. Nakanishi: Optical and ESR Characterization of Iron Impurity in Cu-III-VI2 Semiconductors; Proc. 1 0th Int. Conf. Ternary & Multinary Compounds, Stuttgart 1995 , J. Cryst. Res. & Tech., 31 (1996) Special Issue 1, 593-596.
    12)T. Nishi, G.A. Medvedkin, Y. Katsumata, K. Sato and H. Miyake: EPR and PL Study of Defects in CuGaSe2 Single Crystals Grown by the Travelling Heater Meth od; Jpn. J. Appl. Phys. 40 Part 1 [1] (2001) 59-63.
    13) K. Sato: EPR Studies of Point Defects in Cu-III-VI2 Chalcopyrite Semiconductors; Proc. Int. Symp. Point Defect and Non-stoichiometry 2003, Sendai, March 2003, Mater. Sci. in Semicond. Processing 9 (2003) 335-338.
    14) K. Sato, Y. Harada, M. Taguchi, S. Shin and A. Fujimori: Characterization of Fe 3d states in CuFeS2 by resonant X-ray emission spectroscopy; Proc. 16th Int. Conf. Ternary and Multinary Compounds (ICTMC16), Phys. Stat. Solidi (a) 206 [5] (2009) 1096-1100.

    GaAs:Cr3+のdeep levelについての磁気光学スペクトルは、価電子帯→Crの3dという1電子遷移で、ほぼ説明がついています。(本当は3d準位というより、Cr2+/3+のdemarca tion levelなのでしょうが。)
    K.Sato, T.Iijima, T.Nakajima, K.Yahagi and S.Kobayashi: Characterization of Below-Gap Absorption in Semi-Insulating GaAs:Cr by Magneto-Circular Dichroism Sp ectrum; Jpn. J. Appl. Phys. 27, Part 1 [6] (1988) 979-982.

    いちど、きちんとまとめたものを出版しなければなりませんね。
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    Date : Tue, 22 Feb 2011 16:51:29 +0900
    Q3: 佐藤先生
    K大のSです。こんにちは。
    ご回答いただきありがとうございます。
    論文のリストをありがとうございます。ちょうど再来週、東大物性研に磁化測定をしにいきますので、そこでダウンロードさせてもらって勉強します。楽しみです。

    >いちど、きちんとまとめたものを出版しなければなりませんね。

    佐藤先生の、半導体中の遷移金属の光学的特性、磁気光学特性についてまとめられたものは、絶対に待ち望んでいる人たちがたくさんいます。 (「物性何でもQ&A」にある、
    半導体中の遷移金属に関する手書き日本語解説文を見つけたときはやった、と思いました。)
    出版、ぜひぜひお願いします。
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    1232. MOS容量の計算式の導出法

    Date : Tue, 8 Mar 2011 06:16:02 -0500 (EST)
    Q: 佐藤勝昭先生、初めまして、
    D社で半導体のエンジニアをしている伊藤と申すものです。
    実は、S.M.Szeの『半導体デバイス』(邦訳)を勉強いたしておりますが、テキストの式の導出がわからず、ここ10日程足踏みをしております。
    先生のHPにて、物性関係の質問を受け付けられていることを思い出し、こうしてメールを差し上げた次第です。
    P-sub理想MOSコンデンサーの容量に関する下記の(式1)の導出が解らないので、教えて下さい。

    C/Cox = ((1+(2(εox^2)V)/(qNaεs(d^2)))^1/2)^-1:(式1)

    テキストには、以下の(式A)?(式D)より、Wを消去して(式1)を求めるとあるのですが、自分では導出できませんでした。
    ψs = qNa(W^2)/2εs :(式A)
    V = Vox + ψs  :(式B)
    Vox = Eox d = |Qs| d / εox = |Qs| / Cox :(式C)
    C = Cox Cj / (Cox + Cj ) ; Cj = εs/W : (式D)
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    Date : Wed, 9 Mar 2011 00:32:30 +0900
    A: 伊藤様、佐藤勝昭です。
     
    添付ファイルのように簡単に導出できます。
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    Date : Wed, 9 Mar 2011 05:34:09 -0500 (EST)
    AA: 佐藤先生、伊藤です。
    ご指導、本当に、ありがとうございました。
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    1233. 水蒸気の比誘電率

    Date : Wed, 27 Apr 2011 14:32:38 +0900
    Q: 佐藤先生
    初めまして、K社の小形と申します。私は現在、静電容量を利用したレベルセンサの開発に従事しております。
    先生のHP(物性なんでもQ&A)を拝見し、メールさせて頂いております。よろしくお願い致します。
    空気の湿度による電極間の容量変化を知りたいのですが、理科年表には100℃の飽和水蒸気の比誘電率が「1.0060」であることしか記載がありませんが、この算出方法をご教示お願いいたします。
    100℃/100%の1m3空間には約600gの水が含まれていますが、この水は高さにして0.6mm(1m2で)になります。1m2の電極板を想定して、0.6mm間の水(100℃なので比誘電率≒55.7とし)によるコンデンサCwと、0.9994m間の空気によるコンデンサCaとの直列接続のコンデンサ値を求めて計算して比誘電率を求めると、約1.0006となり一桁小さい値になります。
    また並列接続として考え、Cwを水分が薄まる形にして、55.7に「0.6/1000」を掛けたものにしてCwを求め、CaとCwを並列コンデンサとして比誘電率を求めると約1.033となります。
    いずれも正しくなく、このように単純なものではないと思われます。
    また、そもそも水蒸気の粒子の比誘電率と水の比誘電率は同じ値としてよろしいのでしょうか。
    このあと、これを参考に、プリント基板が吸湿した場合の比誘電率を計算したいと考えております。
    お忙しいところ申し訳ありませんがよろしくお願いいたします。
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    Date : Wed, 27 Apr 2011 23:26:03 +0900
    A: 小形様、佐藤勝昭です。
    (1)水蒸気の比誘電率
     水蒸気(気体の水)の誘電率は液体の水の誘電率から導くことはできません。
    水分子は電気双極子モーメントμをもち、熱的に揺らいでいます。電界を加えないとき、全体の分極は打ち消しあっており、P=0です。
    電界Eを加えたとき、電気双極子モーメントμが電界の方向にすこし回転し、その結果、全体としての電気分極Pが生じます。このPをEでわったものが電気感受率χで、 比誘電率kはk=1+χとなります。
     感受率を計算すると、電界が十分小さいときには、
      χ=4πNμ2/3kT       (1)
    であらわされます。ここにNは電気双極子の密度(cm-3),kはボルツマン定数k=1.38×10-16erg/K、Tは絶対温度です。
    気体中の水分子の電気双極子モーメントμについては、文献(J. D. Stranathan: Phys. Rev. 48, 538-544 (1935))から
      μ=1.83×10-18 esu
    電気双極子密度Nは、1cm-3あたりの空気中の水分子の数なので、100℃における飽和水蒸気量599g/m3=5.99×10-4g・cm-3よりモル数を計算すると3.33×10-5mol・cm-3
    これにアボガドロ数6.02×1023をかけると、N=2.00×1019cm-3となります。
    したがって、(1)は
      χ=4π×2.00×1019×(1.83×10-18)2/(3×1.38×10-16×T)=2.03/T      (2)
    100℃ではT=373.5Kですから、χ=0.0054となり、
      k=1+χ=1.0054 となり、
    ほぼ実験値1.0060を説明できます。

    (2)プリント基板が吸湿した場合の比誘電率
    この問題に水蒸気の比誘電率を使ってよいかどうか疑問です。
    なぜなら、吸湿したときには、基板には液体の水の被膜として付着しているか、水滴として付着しているからです。(もちろん、基板がポーラスなものであれば気体として含まれるかもしれませんが。)
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    Date : Thu, 28 Apr 2011 08:31:39 +0900
    AA1: 佐藤先生
    早々にご返事、ご指導ありがとうございました。
    こんなに早くいただけるとは感激いたします。
    またご丁寧に解説いただき、途中の計算もいただきありがとうございました。
    電気感受率という初めての言葉もありますので、勉強しながら理解を進めたいと 考えます。また理解不足がありましたらよろしくお願いします。

    ともかく、お忙しいところ大変ありがとうございました。
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    Date : Thu, 28 Apr 2011 10:54:37 +0900
    AA2: 佐藤先生
    K社の小形です。
    ご指導ありがとうございます。
    内容は理解できました。電気感受率χの意味も分かりました。
    プリント基板の比誘電率については、「愛媛県工業技術センター」様の実験された実測値をインターネットで見つけましたので、吸収率を参考に水の場合と、水蒸気 の両方で計算してみます。先生がおっしゃるとおりポーラスの部分もあり気体と液体の両方が含まれて中間の値になるかもしれません。
    成功するか失敗するか分かりませんが、またご報告したいと思います。
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    1234. ポリロンフィルムの熱伝導率

    Date : Wed, 18 May 2011 04:27:46 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
    K*大学、機械システム工学専攻2年、Y.Hと申します。
    私は現在、とあるモデルハウスの熱損失計算を行っています。
    しかしながら、ポリロンフィルムについて計算する際、ポリロンの熱伝導率がわからなくて困っています。
    お忙しいところ申し訳ありませんが、ご教授くだされば幸いです。
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    Date : Wed, 18 May 2011 10:54:33 +0900
    A: YH君、佐藤勝昭です。
     ポリロンは商品名で、化学物質としてはLLD-PE (linear low density polyethylene)です。
    熱伝導率のデータベース(http://www.engineeringtoolbox.com/thermal-conductivity-d_429.html)には
    HD-PE(high density polyethylene)の熱伝導率は0.42 - 0.51W/(m.K)というデータが載っていますが、LLD-PEについては載っていません。
    MATBASEというデータベースでは
    HD-PEのデータベースの中に、熱伝導率 0.46 - 0.52 W/m.K と書かれており、
    LD-PEのデータベースの中に、熱伝導率 0.3 - 0.335 W/m.K とあります。
    LLDとLDの違いはそれほど大きくないと思うので、0.3 - 0.335 W/m.K を使っておけばよいのではないでしょうか。
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    Date : Wed, 18 May 2011 15:27:14 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    K大学のHYです。
    お忙しい中ご返答いただき、ありがとうございます。
    商品名と知らずに調べていた自分が恥ずかしい限りです。
    本当にありがとうございました。
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    1235. 超伝導体の高周波特性

    Date : Sun, 22 May 2011 00:40:17
    Q: 初めまして、某私立大学修士1年生のT**と申します。
    お手数をお掛けいたしますが、匿名でよろしくお願いいたします。
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させていただきます。

    超電導体の表面抵抗について質問させて頂きたいのですが、超電導体に直流電流を流すと完全導電性により 抵抗値がゼロになるのは理解出来るのですが、交流電流を超電導体に流すと周波数の二乗に比例して表面抵抗というのが 現れるというのを色々な文献で見かけますが、何故表面抵抗が周波数の二乗に比例して現れるのかが理解できません。 その辺について詳しくご説明頂けると有難いです。

    また、超電導バンドパスフィルタについても一つお聞きしたいのですが、フィルタの中身の構造というのは一般的な バンドパスフィルタと同様のRLC回路なのでしょうか?銅薄膜を超電導薄膜に変えるだけで超電導特性が得られるのか解らなかったので 質問させて頂きました。
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    Date : Sun, 22 May 2011 09:53:06 +0900
    A1: T君、佐藤勝昭です。
     超伝導体の高周波電気抵抗Rsの説明は、それほどシンプルではありません。Rsの発生には,
    (1) 熱的に誘起された常伝導電子が電磁界侵入領域で電界により加速されて発生する損失。
    (2) 結晶粒間などの弱結合部分がジョセフソン接合として振舞うことにより発生する損失。
    (3) 電磁界の周波数がピンニング周波数を超えて磁束フロー状態となることにより発生する損失。
    などが寄与していると考えられています。(http://www.super.eee.tut.ac.jp/labs/microwave/rs.html)
    わかりやすい説明として
    松葉博則:超電導工学: 現象と工学への応用の第8章「超電導体の電気抵抗」をお読みください。
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    Date : Sun, 22 May 2011 11:54:47 +0900
    AA1: 素早いご返答有難うございます。
    超伝導体の表面抵抗というのは簡単に説明できる物では無かったんですね。
    超電導工学:現象と工学への応用を早速借りて勉強したいと思います。
    この度は有難うございました。
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    Date : Sun, 22 May 2011 23:17:09 +0900
    A2: T君、佐藤勝昭です。
    今朝は、ちょっと出かける直前だったので、つれない回答で失礼しました。
    ・熱的に誘起された常伝導電子が電磁界侵入領域で電界により加速されて発生する損失みついて説明します。
    「熱的に誘起された常伝導電子」とは、超伝導体における準粒子のことです。超伝導体の中で電子はクーパー対をつくっていますが、超伝導ギャップを超えた熱励起が起きる と、電子対が壊れて常伝導電子が生じます。この状態を「準粒子」とよびます。
    ロンドンの第1方程式は、ロンドン長λとして、
     E=μo λ^2∂J/∂t   (1)
    とあらわされますが、電流密度Jが、
     J=Joexp(iωt)     (2)
    と表されるならば、(1)は
     E=iωμoλ^2 J したがって、J=-i(1/ωμoλ^2)E
    と書き直すことができます。これを
     J=-iσsE        (3)
    とおけば
     σs=1/ωμoλ^2    (4)
    と書けます。超伝導電流は、Eと位相が90度異なる無効電流なのです。
    準粒子(quasi particle)による伝導を考えますと、これは損失を与えますから、その導 電率は実数部になり、大きさをσqと置くとJとEの関係は(3)式ではなく
     J=(σq-iσs)E=σE   (5)
    となります。
    準粒子の密度は、ある温度Tにおいて超伝導でなくなった状態の密度なので, もともとの常伝導の電子数nに比例します。したがって
     σq=σn(T/Tc)^4    (6)
    と表すことができます。 導体の表面インピーダンスZsは, 表皮効果の進入深さδとして
     Zs=1/σδ=(ωμo/2σ^3)^(1/2)=Rs+iωLs  (7) 
    実数部Rsは、σq<<σsを考慮すると
     Rs=(1/2σq)(ωμo/σs^3)^(1/2)    (8)
    σsとして(4)を代入すると
     Rs∝(ω4)^2
    となって、周波数の2乗に比例することが導かれます。
    -----------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Tue, 24 May 2011 23:39:43 +0900
    AA2: 返信が遅れてすみません。
    佐藤先生が教えて下さった”現象と工学への応用”を早速図書室で借りて勉強しています。
    また、先生のメールの内容と比較して周波数の二乗になる理由がやっと理解できました。
    お忙しい中でも返信頂けたのは本当に感謝しています。
    また何か先生に質問したい事があればさせて頂くつもりです。
    この度は有難うございました。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------------

    1236. フラットバンド条件の導出法

    Date : Sun, 29 May 2011 04:38:16 -0400
    Q:
    以前にご質問した、D社で半導体のエンジニアをしている伊藤と申す者です。
    今日は、MOS構造におけるフラットバンド条件VFBの導出を教えて頂きたく、メールいたしました。
    グローブやジーのテキストに、酸化膜中に任意の密度ρ(x)で電荷が分布するときのフラットバンド条件VFBとして、
     VFB=-([∫0?d:xρ(x) dx]/d)/C:式(1)
    d;酸化膜厚 C;酸化膜の容量
    なる記述がありますが、「式(1)をどのように導出するのか?」お教え下さい。
    ちなみに、電荷密度から電界を求め、電界からVFBを求めるステップで自分でトライしてみましたが、導出できませんでした。
    式(1)の前に、
    酸化膜中の位置 x0 に単位面積当たりQ0 の正のシート電荷がある場合のフラットバンド条件、
     VFB=-(Q0/C)(x0/d :式(0)
    については、自分で導出できましたが、式0を一般化した式1の導出が上手く行きません。
    ご指導の方、よろしくお願いいたします。
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    Date : Sun, 29 May 2011 22:12:38 +0900
    A: 伊藤様、佐藤勝昭です。
    xの位置にある厚みdx電荷シ-トによるVFB貢献ΔVは式(0)から
     ΔV(x)=-(Q0/C)(x0/d)=-(ρdx/C)(x/d)=-(xρdx/C)
    VFBはすべてのΔV(x)をx=0からx=dまで積分して
     VFB=∫(0~d):ΔVd=-∫(0~d):(xρdx)/C
    と書けます。
    -----------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 30 May 2011 05:22:40 -0400
    AA: 佐藤先生、伊藤です。
    式(0)より、△V(x) を定義し、そこから積分で式(1)に至るとは、思いつきませんでした。
    ご指導ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------------------------------------------

    1237. 光の屈折の法則と空間の一様性

    Date : Sat, 11 Jun 2011 11:47:18 +0900
    Q: はじめまして。塾で理科系の講師をしておりますO*と申します。できれば匿名でお願いします。
    光の屈折の法則を教えるとき、屈折率の異なる媒質の界面をx軸として、それに垂直な軸をy軸とし、界面に斜めに光を入射したとき 「y方向成分では空間の一様性が保たれないので、運動量は保存しなくなる」が、「x方向成分では運動量は保存する」ので x方向の運動量の比からスネルの法則を導くようなことをやってみせるのですが、 実は私も生徒もy方向は空間が不連続になるのは理解できるのですが、「x方向に『空間の一様性』が保たれる」、という理屈がよくわかりません。
    光のx方向成分でも明らかに光は別の屈折率媒体へ変わっているのにと考えたりします。
    同じ理屈で空気中から水中へ斜めに弾丸を撃ち込むと、弾丸の軌跡は空気、水界面で屈折するのでしょうか?
    よろしくお願い申し上げます。
    -----------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 12 Jun 2011 00:04:27 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。メールありがとうございました。

    普通は、光の屈折を電磁気学で考え、力学的には考えないので、新鮮に映りました。
    まず、電磁気学ではどのように考えるかを述べましょう。(講談社:機能材料のための量子工学第4章より)
     図のように等方性媒質1から等方性媒質2に向かって,平面波の光が入射するときの反射と屈折を考えます。
    両媒質は均質であり、それぞれの媒質の屈折率はn1,n2であるとします。
     この図では、境界面から媒質2の中に向かう法線方向をy軸にとります。光の入射面はxy面内にあるとします。
    入射光と法線のなす角(入射角)をψ0、反射光の法線となす角をψ1、媒質2へと屈折する光の法線となす角をψ2とします。
     入射光、反射光、屈折光の波動ベクトルをそれぞれK0、K1、K2とすると,
    各媒質内において,波動ベクトルの大きさの間に成り立つ次の関係式を得ます。
    K0=(ω/c)n1、K1=(ω/c)n1、K2=(ω/c)n2   (1)
    境界面内(x軸上)での波動ベクトルの各成分の保存性から、x成分については
     K0x=K1x=K2x                    (2)
    が成り立ちます。一方、
     K0x=K0sinψ0、K1x=K1sinψ1、K2x=K2sinψ2
    でなので、(2)式を使うと  ψ1=ψ0                         (3)
    (これは、反射の法則)および
     sinψ2/sinψ0=K0/K2          (4)
    を得ます。  いま話を簡単にするため媒質1は真空(n1=1)媒体2の屈折率がn(n2=n)であるとします。
    このとき、(4)式は
     sinψ2/sinψ0=1/n          (5)
    となります。これがスネルの法則です。
    -----------------------------------------------------
    次に、力学に翻訳しましょう。
     波の運動量Pは波動ベクトルKに(h/2π)をかけたものです。上に述べた境界での波動ベクトルのx成分の保存性(2)が、あなたのいう 「x方向成分では運動量は保存する」に対応します。すなわち、境界において媒質1と媒質2の境界に平行な運動量成分は保存するのです。

    ---------------------------------------------------------------------------
    Date: Tue, 14 Jun 2011 10:41:27 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
    ご丁寧なお答え、ありがとうございました。御礼が遅くなりまして申し訳ございません。先生からご呈示いただいた図をみて、疑問が氷解しました。波動ベクトルのx成分は境界面上に投影されるため、媒質1,2でも変化はないが、波動ベクトルのy成分は媒質1,2で異なるため不連続になるということで納得いたしました。あくまで運動量にこだわるようですが、媒質1から媒質2に質量mの弾を撃ち込んだときに、先生の図をお借りして、媒質1での運動量をp0, 速度をv0、同様に媒質2でp2、v2とすると、
    sinψ2/sinψ0=p0/p2=mv0/mv2=v0/v2
    媒質1を気体、または真空、媒質2を液体(例えば水)とすると一般的に
    v0>v2と推測されますので、ψ2>ψ0となり、例えば空気中から水中へ弾を撃ち込むとその軌道は光とは逆に水中で界面に近い方へ「屈折」すると考えてよろしいでしょうか?生徒はなんかおかしい、といいますが。
    というのも、x線の波長近くでは、屈折率が1以下になることが観測されており、ドブロイ波で考えると、運動量は弾丸と同じように考えて、屈折率1以下が説明できるのですが、こういう考え方は間違いでしょうか?どうも自信がなく、よろしければご意見をお聞かせ下さい。
    よろしくお願いします。
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    Date: Tue, 14 Jun 2011 12:03:05 +0900
    A2: O様、佐藤勝昭です。
     光波の媒質境界面での屈折と質点の運動を同じように扱うわけにいきません。確かに 、光が媒体2に入ると、速度が変化しますが振動数が一定なのでエネルギーhν が保 存されます。媒体2に光の吸収があるときは、光子数が変化しますが、光子エネルギー は変わりません。
    質点の運動では、媒体2に入るときに速度が変化しますと、運動量にも運動エネルギー にも変化が起きます。運動量だけで考えては間違うのではないでしょうか?
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    Date: Tue, 14 Jun 2011 12:37:58 +0900
    AA:佐藤勝昭先生
    運動エネルギーのことを忘れていました。おっしゃるとおりです。ご丁寧にありがとうございました。
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    Date: Tue, 14 Jun 2011 12:41:55 +0900
    A2':O様、佐藤勝昭です。
     そもそも光では界面との相互作用を考えないのでK_0x=K2xとしましたが、 質点に関しては、水分子との衝突(表面張力を含む)があるので、p0xとp2xは保存し ません。水にトランスファーされた運動量pwaterxまで考えなければなりません。
    この衝突が運動エネルギーを失う原因なのです。
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    1238. 遠赤外線ロングパスフィルタ

    Date : Sat, 9 Jul 2011 10:26:49 +0900
    Q: 佐藤 勝昭 先生、東工大M2の岡本と申します。
    波長が25μmの遠赤外線を透過し、10~15μm程度以下を通さないロングパスフィルターを探しています。
    低温装置の内部に組み込むため、自分で加工できるような材質のものが望ましいです。
    最初、人感センサーに使われているものを取り外して使えないかと思ったのですが、私がインターネットで調べた範囲では、 長波長側で再び透過率が下がるようで断念しました。
    研究室にもこの分野の専門知識を持っている人がいないため、ずうずうしいとは思いながら、お聞きするしだいです。 お知恵を拝借できれば幸いです。
    どうぞよろしくお願い申し上げます。
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    Date : Sat, 9 Jul 2011 18:00:22 +0900
    A: 岡本様、佐藤勝昭です。
     赤外の吸収スペクトルは赤外活性フォノンのいわゆるReststrahlen反射によって決まります。
    25μmを通し、10-15μm以下を通さないものは、私の知る限りありません。
    I.F.Silvera and G. Birnbaum: Far Infrared Spectroscopy; Appl. Optics 9, 617 (1970)によると、サファイヤは,4.2Kにおいて、28μmより長い波長を透過し、10μm~25μmを吸収するようです。(添付図1)
    25μm付近だけの光が欲しいのなら、反射スペクトルを使ってはいかがでしょう。例えばCaF2(フッ化カルシウム)の場合添付図2のように反射率は、20-50μmで高く、10-20μmではゼロ、10μm以下でも5%以下です。
    (工藤恵栄:分光学的性質を主とした基礎物性図表(共立出版昭和47年刊;絶版)参照
    添付図1:サファイヤの透過・反射スペクトル
    クリックで拡大
    添付図2:フッ化カルシウムの透過・反射スペクトル
    クリックで拡大
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    Date : Mon, 11 Jul 2011 14:44:44 +0900
    AA: 佐藤 勝昭 先生、岡本です。
    ご回答いただき誠にありがとうございました。
    大変参考になりました。
    反射スペクトルを用いた方式を検討してみたいと思います。
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    1239. ソフトフォノン

    Date : Thu, 14 Jul 2011 19:12:35 +0900
    Q: 佐藤先生、こんばんは。農工大で教わったC**(韓国)です。
    日本はかなり暑いというニュースを聞きました。ご健康のほうは大丈夫でしょうか?
    韓国は毎日雨が降っており、うっとおしい日々が続いています。
     さて、今日は一つ質問させてください。最近、誘電率とフォノンの関係について勉強をしていますが、ソフトフォノンについてよくわからなくなりました。
     定義としてはフォノンが温度が低くなることで、凍結の状態になることをソフトフォノンというふうに書いてあります。
    そして、誘電率の大小を決めるときに大事になるものがイオン成分であって、そして、それを決めるのがTOフォノンのソフト化であるという論文を読みました。
    (Computational Materials Science 23 (2002) 43-47)
     たとえば、SiO2で結晶状態、詳しくは配位結合の個数の大小で誘電率の大小が決まるようですが、僕の理解ではフォノンが結合の個数が増えることで単純に発生するフォノンの個数を増やして誘電率を大きくするという理解でした。温度の概念が入るソフトフォノンとの関係がよくわかりません。
    僕の質問がよく伝わるのか正直疑問ですが、これについての先生のお考えや良い資料があったら教えてください。
    よろしくお願いします。
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    Date : Sat, 16 Jul 2011 13:00:56 +0900
    A: C様、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。日本は、強烈な猛暑です。私は元気にしています。
    お尋ねの誘電体におけるフォノンのソフトモードについてですが、私は、最近誘電体をやっていないのでSiO2などの誘電率にフォノンがどう寄与するのかわかりません。  私が、大学院生の頃(48年も前)のことですが、強誘電性半導体をやっていました。そのころ、強誘電体の相転移がフォノンのソフトモードによって決まるという話しを聞き、Cochranという人の論文を読んだ覚えがあります。
    (W. Cochran: Phys.Rev.Lett. 3( 1959)412)
    この論文によると、変位型の強誘電体では、格子振動の中で正と負の電荷をもつイオンの振動が、互いに反対で、しかも格子波の伝播する方向に垂直なモード(横型光学的格子振動モード)が誘電率に関与します。
     このモード(TOモード)がTcに近づくにつれ振動数が減少し、ついに0となって格子は不安定となって、相転移を起こします。このとき正負イオンの重心が相対的に変位して、対称性が低下し自発分極を発生させるのです。これをソフトフォノンと呼びます。
     非晶質の酸化ケイ素にこのようなモデルが成立するか、自信がありません。一度、もとの論文にかえって、勉強されてはいかがでしょうか。
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    Date : Mon, 18 Jul 2011 17:54:45 +0900
    AA: 佐藤先生、こんにちは。
    返信ありがとうございます。色々と参考になりました。勉強してみます。
    猛烈な暑さに負けないでください!^
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    1240. ゲート制御型トランジスタの特性

    Date : Sat, 16 Jul 2011 10:10:22 -0400 (EDT)
    Q: 佐藤先生、D社で半導体のエンジニアをしている伊藤です。
    今回で、3回目の質問になります。(
    #1232, #1236)
    いつもありがとうございます。
    現在A.S.Grove著『半導体デバイスの基礎』(邦訳版)を勉強しています。
    Groveを勉強していて疑問に思ったことを質問させて下さい。
    先生の手元にGroveのテキストがあることを前提に質問させて頂く、ご無礼をお許しください。

    ーテキスト10章の図10.12(337頁)についてー
    VG>0でIBが増加しピーク特性を示すのは、これまでの流れで理解できました。 以下2点が解りません。  1.IBが変動しているのに、何故IC=一定になるのか?  2.VG<0でIBが増加しているが、これはどうしてか? テキストには「ゲート電圧が負で大きい場合のベース電流の変動は無視する」とありますが、 VG<0でのIBの増加が気になります。 以上、よろしくお願いします。


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    Date : Tue, 19 Jul 2011 10:37:51 +0900 (JST)
    A: 伊藤様、佐藤勝昭です。
     Gloveの教科書の第10章は、pn接合においてフィールドプレートによってゲート電圧を印加して表面空間電荷領域におけるキャリアの再結合/発生を制御するという内容で、半導体デバイスにおいて表面が非常に重要だということを認識してもらうのがねらいでしょう。
    この目的には図10.11で十分だと思いますが、さらにトランジスタにおいても、再結合電流がベース電流として流れるので、表面再結合が重要だということを示しています。
     さて、お尋ねの件ですが、図10.12の出典になる論文を見ないと実験条件がわからないのでコメントがむずかしいのですが、
    (1)IBが変動しているのに、何故I_C=一定になるのか?
    ですが、V_Gで変化するのはemitter-base間を流れる再結合電流だけなので、n+からpへの注入電流はVBEが一定なら、ICは変化しないのではないかと思います。
    (2)VG<0でIBが増加する理由
    ですが、emitterとgateの間に流れる電流が乗っているのではないかと思いますが、原著を読まないとわかりません。
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    Date : Wed, 20 Jul 2011 05:55:45 -0400 (EDT)
    AA: 佐藤先生、伊藤です。
    お忙しいところ、ご回答ありがとうございました。
    1については、ご教示を踏まえて、もう一度バイポーラを復習します。
    2については、論文にあたって見ます。
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    Date : Sat, 13 Aug 2011 20:26:55 +0900
    伊藤様、佐藤勝昭です。
     前のご質問に対して専門家である「半導体の基礎理論」(技術評論社)の著者堀田厚生先生に伺ったところ、次のように答えていただきました。
    1. コレクタ電流が一定なのは、そのような条件で測定しているからだと思います。エミッタ電流一定で測定してもいいように思います。
    2. ゲートに負電圧をかけるとNチャネルがゲート電極の方に伸び、エミッタ領域が広がり、注入された電子が多くなるが、その電子は表面近くに注入されるので、コレクタ電流に寄与せず、大部分がベース電流になるのでしょう。
     参考にしてください。
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    1241. GaAsのAs空孔の電子描像

    Date : Fri, 12 Aug 2011 16:09:26 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生、F*大学修士1年I*と申します。アップ時は何れも匿名でお願いします。
    先生のHPを拝見させていただいており、とても勉強になります。

    Q&A #1183(酸化物半導体~)を拝見し、質問させていただきたいと思います。
    「GaAsにおいて、正電荷・負電荷が周期的に並んでおり全体としては中性」という部分です。
    Ga、Asともに元々は中性ですよね?なぜ、結晶で見た時Gaが正、Asが負電荷になるのですか?(電気陰性度が関係するのでしょうか)
    仮に、電気陰性度の考えが正しかった場合、As空孔があるとき、中性のAsとしてそこに結合するはずだったAsが存在していないだけで、空孔が正電荷のように振る舞うことについてイメージが浮かびません。これは間違っているのでしょうか?
    もしくは、少なくともAs空孔の周りのGaが正電荷として存在しているので、結晶全体が中性を保つためには、#1183の先生のお答えのように、空孔の位置に正電荷があるかのように振る舞い、電子を束縛することにより中性を保つことができるということでしょうか?
    とても混乱しています。お忙しいとは思いますがご教授お願いします。
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    Date : Fri, 12 Aug 2011 17:52:15 +0900
    A: I君、佐藤勝昭です。
     実際に空孔付近の電荷分布がどうなっているのかは、見てきたわけではないので何ともいえないのですが、私は次のように考えています。

    GaAsの電子密度分布  GaAsはGaの3個の外殻電子を結合に提供し、Asは5個の外殻電子を結合に提供して、トータル8個の電子を2つの原子が共有することによって結合し、結果的にシリコンと同様に4配位の結合になっています。Gaの原子核には3個の正電荷があり、Asの原子核には5個の正電荷がありますが、電子がそのクーロンポテンシャルを遮蔽しているため、電子は結晶全体に広がっています。これで全体としての中性条件を保っています。電子分布のマップを見ると、GaとAsの間に電子分布のピークがあって、共有結合が出来ていることがわかります。

    ZnSの電子密度分布  では、ZnSではどうでしょうか、Znは2個の外殻電子をもち、硫黄は6個の外殻電子持ちます。もしZnが2個の電子を全部Sに上げれば、ZnはZn2+イオン、SはS-2イオンとなってどちらも閉殻構造となり、プラス2価とマイナス2価のイオン同士がクーロン力で引き合って、イオン結合になります。図を見てもZnとSの間には、電子分布のピークが見られません。
     実際は、ZnSでもZnの2個の外殻電子とSの6個の外殻電子が共有結合を作ろうとする性質も持っているので、ZnSにおいては、イオン性が主で共有性が副になって共存しています。
     実は、化合物半導体では、程度の差こそあれ、いずれもイオン性と共有性が共存しています。GaAsおいても図の電子雲の分布を見るとGa3+:As-3というほどでないにせよ、イオン性があってGaはプラスイオン、Asはマイナスイオンとして働きます。AsをNに変えてご覧なさい、GaNではイオン結晶のように分極を持ちます。

    CuInSe2の電子密度分布  CuInSe2では、理論的に計算された電子分布を見るとCu-Se間には電子分布の山があって共有結合性が強く、In-Se間は電子分布の谷になっていてイオン結合性が強いというように1つの結晶で2つの結合性を持つ場合もあります。

     ここで、ご質問のGaAsにいけるAs空孔について考えましょう。共有結合のみで考えると、Ga位置においては、原子核は3+なのに4個の電子があり、Asでは原子核は5+で4個の電子があるのですが、Asがいなくなるとその位置にはあたかも共有結合電子が分布して存在することになります。これは電子をトラップした状態です。このモデルではGa空孔が出来ると、電子分布が少なくなりホールがトラップされたと考えます。
     一方、イオン結合的に考えた場合、Ga3+とAs3-が静電結合していますから+-+-・・となって全体の中性を保っていますが、As3-がいなくなるとあたかも空孔の位置にプラス電荷があるように振る舞い、これに周りの電子が束縛されると考えます。このモデルなら、Ga空孔が出来るとその位置にあたかもマイナス電荷があるように振る舞ってホールがトラップされることになり、理解しやすいと思います。

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    Date : Thu, 18 Aug 2011 12:04:23 +0900
    AA: ご丁寧に教えていただきありがとうございました。また、お礼が大変遅くなり申し訳ございません。
    今後も、HP等を参考にさせていただき、勉強していきたいと思います。ありがとうございました。
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    1242. 熱間押出アルミニウムのスジ状欠陥の色の見え方

    Date : Thu, 25 Aug 2011 16:29:41 +0900
    Q: 東京農工大学名誉教授
    佐藤 勝昭様
    お世話になっております。L*社のK*と申します。(匿名希望です)
    HPを拝見させて頂きましてメールしました。
    弊社では、アルミ(A6063合金)の熱間押出加工を実施しておりまして、 その際に、形材(例えば、幅100mm、肉厚1mmのフラットバー)の表面にベアリングストリークと呼ばれる筋状の不良が発生します。
    具体的には、表面粗さ(Ra)が0~1μm程度だと黒色の光沢があり、約5μmだと白っぽい筋状の線になります。
    なぜその様な色の見え方をするのか教えていただきたいと思い、ご連絡差し上げました。
    何卒、ご教授の程、宜しくお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------------
    Date : Thu, 25 Aug 2011 21:54:26 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     粗さRaだけでは、断面形状がどうなっているのかよくわかりませんが、 Ra=5μmの場合うねりの周期もほぼ同程度と考えられます。山の部分の幅は2.5μm程度 と考えられます。
    可視光の波長より十分広いので、山の部分の反射はアルミニウムの反射そのもので白い です。谷の部分からは、光が反射しないので結局、白いすじと黒いすじが繰り返される(結果的に白いすじが見 える)のです。
    一方、Ra<1μmのとき、おそらく凹凸の山や谷の幅は波長以下となり、凹凸の形状にも よりますが、光が戻ってこない状態になります。太陽電池の表面に「テキスチャー」と 呼ばれるピラミッド形の凹凸をつけて、反射を抑えることが行われています。添付図参 照。つまり、Ra<1μmのとき、反射が抑えられて黒いのではないでしょうか。
    これが正しいかどうかは、凹凸の断面をAFMなどで観察されると確認できるでしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 26 Aug 2011 09:18:27 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    お世話になっております。L社のKです。
    ご回答ありがとうございます。
    凹凸の断面形状については、詳細には確認できておりませんでした。
    一度、ご教授いただいたAFMを使用し、確認してみたいと思います。
    また何かありましたら宜しくお願い致します。
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    1243. シリコンの結晶成長の方位依存性他

    Date : Thu, 1 Sep 2011 14:56:42 +0900
    Q1: 初めまして、D*大学学部4年生のN*と申します。電気科に所属しています。
    どうか匿名でよろしくお願いいたします。
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させていただきます。

    シリコンについて勉強しています。

    (1)エネルギーバンド図についての質問です。
    電子トラップにより、深い準位が禁制帯中にできますが、この深い準位があること により、どのような不具合が起きるのでしょうか?

    (2)もう一つ、シリコンのエピタキシャル成長について質問です。
    「{111}面が最も小さな距離をもつので、シリコンは<110>あるいは<110>方位を 沿るより、<111>方位に沿るほうがより速く成長する。」
    と英語で書いてあったのですが、(111)面が面間隔が狭いので成長が遅いと思うのですが、
    なぜ英語では111が速いとかいているのがわかりません。
    教授に聞いたところ、エピタキシャル成長の時間の割合を考えろと言われましたが、さっぱりわかりません。

    この2つをずっと調べたのですが、混乱し困っています。
    お忙しいとは思いますが御返信の程よろしくお願いいたします。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 2 Sep 2011 12:13:18 +0900
    A1: N君、佐藤勝昭です。
     1つ目の質問ですが、あなたの半導体物性の基礎知識がどのくらいあるのかよくわかりませんが、 「深い準位」というのは、禁制帯の中で伝導帯からも価電子帯からも離れていることを意味します。
    この準位にキャリアが一度捕まると、どちらのバンドにに熱的に励起することが困難な ので、キャリアとして働かなくなります。それで「トラップ」(捕獲準位)というのです。
    2つめの質問ですが、あなたの訳では意味がよくわかりませんので原文をお送りください。
    ----------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 2 Sep 2011 12:30:21 +0900
    Q2: 質問でメールしたNです。
    返事ありがとうございます。
    2つめの質問の原文を送ります。
    Several process parameters and device characteristics are sensitive to wafer orientation.
    For example, the rate of epitaxial growth of silicon depends on its crystallographic orientation.
    Since the {111} planes have the smallest separation, silicon grows faster along a 〈111〉 direction than a 〈110〉 or 〈100〉 direction.
    面間隔が狭い111が成長が速いのがよくわからなく、困ってます。
    お手数ですがよろしくお願い致します。
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    Date : Sat, 3 Sep 2011 12:57:50 +0900
    A2:N君、佐藤勝昭です。  私が研究総括をしているJSTさきがけ「次世代デバイス」のメンバーで、結晶成長の 専門家である九州大学の寒川敏裕准教授に、あなたのメールを転送して、ご意見を伺い ました。寒川先生の見解は以下の通りです。
    =======================================
    Siの場合、(111)面の成長は最も遅いと言われております。(111)面は最安定面で、表面エネルギーが最も低い面ですので、Si融液の中でできた球状のSi結晶を成長さ せると、成長の過程で成長の早い面は消えて行き、最終的にSi結晶は成長速度の遅い(111)面で囲まれた形状となります。
    一般的に表面エネルギーの最も小さい面=成長速度の最も遅い面となります。
    (111)面の表面エネルギーが小さい理由は、表面に出ているダングリングボンドの数が最も少ないからです。
    このため、液相の原子が結晶に取り込まれにくく成長速度が遅くなると考えられます。
    Siでは(111)面だけがファセット面で、それ以外はラフ面になります。
    従いまして、成長モードも(111)面は二次元核形成モード、ラフ面は付着成長モードで成長すると考えられております。
    成長モードは議論の余地がありますが、(111)面が最も成長の遅い面だということは、正しいと思います。
    Siのファセット面とラフ面の成長速度に関しては、ジャクソン達の下記の論文があります。
    K. M. Beatty and K. A. Jackson, "Monte Carlo modeling of silicon crystal growth," Journal of Crystal Growth, vol. 211, no. 1-4, pp. 13-17, 2000.
    ==========================================================
    したがって、あなたの読まれたSemiconductor Crystalの記述
    " silicon grows faster along a 〈111〉 direction than a 〈110〉 or 〈100〉 direction"
    のfasterは間違いです。
    また、面間隔だけでは成長速度は議論できないようです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sat, 3 Sep 2011 13:12:39 +0900
    AA: ありがとうございます。
    混乱が解消しました。お忙しい中、本当にありがとうございました。
    --------------------------------------------------------------------------------

    1244. 金色の物理的起源への質問

    Date : Fri, 2 Sep 2011 05:55:43 +0900
    Q: 元美容師で現在は違う目標(医師)ができたので勉強中のフリーターの青木といいます。
    ”カーボンナノチューブ”から”黒色”についての疑問より検索していて佐藤先生が書かれた
    『金属の色の物理的起源』にたどりつきました。
    そこで質問させて頂きたいのですが、「金色の石(黄鉄鉱)の反射スペクトルの物理的起源」の文章中の
    ”赤から緑にかけて強い吸収帯をもたらす。吸収が非常に強いと反射率も高くなるので、金色に見えるのである”
    の部分がよく理解できていません。
    ひとつのグラフでは赤から緑の反射率が高いこと、もう一つのグラフでは専門用語はうっすらとしか理解できていませんが、 赤から緑のなかのある部分だけ?吸収する帯があることまではたぶん理解できています。
    これは”簡単に考えると表面に層のような部分があってそこでは吸収されるけど結局は反射される”というような認識でいいのでしょうか?
    でもそれなら吸収が強くても弱くても反射率には関わらないような気もします(ある波長の光に増幅されたり変換されたりしない限り)。
    単純にその部分の色の反射率が高いからという結論ではないのはなぜでしょう?
    他のサイトを検索すると反射率+吸収率+(透過率)=100のような簡単な説明がでてきます。
    ”吸収が非常に強いと反射率も高くなる”の部分をもう少しくだいて説明して頂けませんか。

    おそらく無知からの質問だと思いますが、お時間がある時によろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 2 Sep 2011 22:12:45 +0900
    A1: 青木様、佐藤勝昭です。
     「吸収が非常に強いと反射率も高くなるので、金色に見えるのである」ということについて説明します。
    一般に、屈折率n、消光係数kをもった物質に光が垂直入射したときの反射率Rは
     R={(n-1)^2+k^2}/{(n+1)^2+k^2}    (1)
    で表されます。
    消光係数kは光の吸収を表す光学定数です。吸収係数αと消光係数kの間には
     α=4πk/λ
    の関係があります。ここにλは光の波長です。
    式(1)において、吸収が非常に強く消光係数kがnより十分大きいと式(1)の分子、分母ともk^2に近づくのでRは1(つまり100%反射)に近づきます。
    --------------------------------------------------------------------------------------
    以下では、数式を使って式(1)を導きますが、電磁気学に慣れていないと難しいので、「なにかわからんが、根拠があるのだな」と読み飛ばしていただいて結構です。
     反射の現象は、界面での境界条件で決まります。光は電磁波です。光の電界に対する 反射率をr、透過率をtとすると、r+t=1です。電気工学においては、電源と負荷の間の インピーダンスが異なると反射がおきます。電源のインピーダンスZ0、負荷のインピー ダンスZとすると、電界に対する反射率は
     r=(Z-Z0)/(Z+Z0)
    であらわされます。このrは一般に複素数です。rの絶対値の二乗が電力の反射率Rです。
     R=|r|^2
    光は電磁波ですから、同じことが成立し、空間の比誘電率を1、物質の比誘電率εとす ると、電界に対する反射率は
     r=(√ε-1)/(√ε+1)    (2)
    電磁気学の基本方程式であるマクスウェルの方程式によって、ε=(n+ik)^2で表されま す。これを式(2)に代入すると、光の電界に対する振幅反射率rは
     r=(n+ik-1)/(n-ik+1)={(n-1)+ik}/{(n+1)+ik}   (3)
    となります。
    光の強度(パワー)の反射率Rは、電気回路の場合と同様に
     R=|r|^2={(n-1)^2+k^2}/{(n+1)^2+k^2} 
          となって、式(1)が導かれました。
    なお、界面における光の電界の振幅透過率tはrを使って、
     t=1-r=2/{n+1+ik}
    光強度の透過率Tは
     T=|t|^2=4/{(n+1)^2+k^2}          (4)
    で表されます。これはあくまで界面での話です。
    実際に、物質の厚みをdとすると、物質を透過する透過率T'は
     T'=T×exp(-αd)=T×exp(-4πkd/λ)     (5)
    ---------------------------------------------------------
    もし吸収が弱いとき、k→0としてみましょう。式(1)より反射率は
     R=(n-1)^2/(n+1)^2
    透過率は式(5)より
     T=4/(n+1)^2
    となります。
    例えばガラスではn=1.5なので、R=0.04 (=4%), T=4/6.25=64%
    となります。
    いっぽう、n=1.5,k=4としましょう。
     R=(0.5^2+4^2)/(2.5^2+4^2}=16.25/22.25=73%
    となります。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sat, 3 Sep 2011 02:08:29 +0900
    Q2: とてもご丁寧にありがとうございます。一度「なるほど!」となりかけたのですが、またこんがらがりました。
    先生のQ&Aの18. 水分を含んだ物質の分光測定に
    ”「一般に、試料に光があたった場合、その照射された光は、透過光、反射光、吸収される光、にわけられる。」の通りです。従って吸光度をA、透過率をT、反射率をRとすると、A+T+R = 1と表されます。
     もし、すべて吸収されてしまって透過光がないような場合はT=0なので、A=1-Rです。一方、もし、吸収が非常に少ない物質の場合はA=0なのでT=1-Rです。”
    と先ほど頂いたメールのr+t=1はたぶん同じだと思うのですが
    そうすると吸光度が0であると仮定したのに吸光度kを式に当てはめるのは矛盾しないですか?
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    Date : Sat, 3 Sep 2011 08:02:52 +0900
    A2: 青木様、佐藤勝昭です。
     混乱を招いていますが、界面を透過するときの透過率T=|t|^2と物質を透過する透過率T'は異なります。
    界面においてはr+t=1です。物質を透過するとその後の透過率T'は界面の透過率に減衰を表すexp(-4πkd/λ)をかけたものになっています。
    吸収量A=T×{1-exp(-4πkd/λ)}
    です。ここまで考えると、R+T'+A=1となります。
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    Date : Sat, 3 Sep 2011 09:26:52 +0900
    AA: なるほど!やっと得心がいきました!
    ほんとうにありがとうございました。
    土曜日の朝っぱらからお手を煩わせてすみません。
    青木
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    1245. 白金(Pt)の電気抵抗の低温における温度依存性

    Date : Tue, 20 Sep 2011 11:20:48 +0900
    Q: 佐藤先生
    はじめまして、R社のM**と申します。
    HPを拝見して質問させていただいています。
    このたび白金測温抵抗体を使った温度測定について調べておりまして、 JISによると白金の電気抵抗が温度の二次式で近似的に変化するということを知りました。
    そこでなぜ二次式で近似できるのかというのを固体物性の本で調べたところ、 1次項については格子振動によるものでデバイ温度以上ではアインシュタイン・モデルで説明でき、 定数項については温度に依存しない不純物等による抵抗によるものと理解したのですが、 2次項のメカニズムができていません。
    この2次項の導出・メカニズムについてご教授いただけないでしょうか。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Wed, 21 Sep 2011 00:43:26 +0900
    A1:M様、佐藤勝昭です。
     たしかに、固体物理の教科書には、マチーセンの法則
    ρ=ρi+ρL (ρi:不純物による抵抗率、ρL:格子振動による抵抗率)
    が載っており、ρiは定数、ρLは高温では温度Tに対し1次であると書かれていますが、
    低温での式は書いてありません。
     ρ(T)-ρ(0)は一般化したブロッホ・グリュナイゼンの式(添付)で表されます。
    ~"
    ここにnは
    (1)n=5 電子フォノン相互作用による電子の散乱
    (2)n=3 s-d散乱(遷移金属)
    (3)n=2 電子・電子散乱
    通常、ρ(T)-ρ(0)は(T/θD)のべき級数展開できるとされていますが、ほぼ2次関数で近似されるようです。
    最近では超伝導体MgB2の常伝導領域のρ-T曲線がブロッホ・グリュナイゼンの式の数値解析で説明されています。
    Intikhab A. Ansari: Numerical solution of Bloch-Gruneisen function to determin e the contribution of electron-phonon interaction in polycrystalline MgB2 supe rconductor; Physica C, Volume 470, Issue 11-12, pp.508-510.
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 21 Sep 2011 09:17:02 +0900
    A2: 追伸、M様、佐藤勝昭です。
     Ptの電気抵抗の温度変化の研究は1980年代に行われ、ブロッホ・グリュナイゼン の式で解析されています。また、この結果、低温の温度変化が2次関数で表される理由 も説明されているようです。下記論文を参照ください。
    D. B. Poker and C. E. Klabunde:Temperature dependence of electrical resistivity of vanadium, platinum, and co pper;Phys. Rev. B Volume 26, pp.7012-7014 (1982)
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 21 Sep 2011 09:21:36 +0900
    AA: 佐藤先生、R社Mです。
    返信どうもありがとうございます。
    詳細な回答および論文のご紹介いただきまことにありがとうございます。
    ご紹介いただいた論文を読ませていただき勉強いたします。
    不明な場合はまた質問させてください。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 23 Sep 2011 20:10:33 +0900
    A': 前回お答えしたとき、論文(Phys. Rev. B 26,7012 (1982))が手元になかったので、取り寄せて読みました。
    これによれば、電気抵抗率は

    第1項は定数、第2項はT^2に比例する項で、電子・電子相互作用によります。
    第3項は、フォノンによるsバンドとdバンドの間の電子散乱、第4項は、フォノンによるsバンド内の散乱によるものです。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 26 Sep 2011 10:20:04 +0900
    Q3: 佐藤先生、R社Mです。
    わざわざ論文を取り寄せていたき、大変恐縮です。
    ※3連休のため返信がおそくなりました。
     JISC1604測温抵抗体(Pt)の0~850℃での抵抗値は2次式で記載されていますが、Ptのデバイ温度は240Kなので上記の温度範囲ではΘ/T<1 (or Θ<<1)として、Gruneisen式の3項目(n=3)と4項目(n=5)を近似すると1次になるため、結局2次式で表記できると解釈しました。
    ということは、
    抵抗の加算則にのっとって、定数項は温度に依存しない不純物や格子結果などによるもの、T^nはn=5電子フォノン相互作用による電子の散乱と n=3 s-d散乱(遷移金属)によるもの、T^2はn=2の電子・電子散乱によるもの、それぞれの和であると理解しましたが、いかがでしょうか。 よろしくお願い申しあげます。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 26 Sep 2011 10:34:54 +0900
    A3: M様、佐藤勝昭です。
    そのような解釈でよいと思います。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 26 Sep 2011 11:12:18 +0900
    AA: 佐藤先生、R社Mです。
    返信ありがとうございます。
    このたびは的確なご指導いただいたおかげで理論的に理解することができ、大変感謝しております。
    また何かありましたらご質問させてください。
    よろしくお願い申しあげます。
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    1246. 円偏光板の順序

    Date : Fri, 30 Sep 2011 13:29:34 +0900
    Q: 佐藤勝昭先生
    初めまして、P社のK*と申します。(匿名を希望致します。)
    HPで「物性なんでもQ&A」コーナーを拝見致しました。
    早速ですが円偏光フィルターの直線偏光板と位相差板の順序についてお教え願います。

    円偏光フィルターは直線偏光板に1/4位相差フィルムを貼るとありますので、 光は直線偏光板を通過した後に1/4位相差フィルムを通ると思います。

    右回転円偏光板は直線偏光板に対し、右45度に1/4位相差フィルムを貼れば、右回転円偏光板に、
    左回転円偏光板は直線偏光板に対し、左45度に1/4位相差フィルムを貼れば、左回転円偏光板になるとあります。

    外光が右回転円偏光板を通って、右回転円偏光となり、反射して左回転円偏光となって円偏光板に入射する時、 反射光側から見ると、1/4位相差フィルムは左45度なので左回転円偏光板となって透過出来そうですが、 円偏光フィルターの説明にはこの場合でも右回転円偏光板として働き、反射光を遮断するとあります。

    ということは、右か左か、の方向は直線偏光板側から見た方向で決まり、1/4位相差板側からは逆方向、 となりますが、これでよろしいでしょうか?
    よろしく、お願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 2 Oct 2011 10:39:12 +0900
    A: K様
     わかりやすいように三角関数を使って説明します。入射光の進行方向をz軸正の方向 にとります。
    45度傾いた直線偏光子を出た光の電界ベクトルEiは入射光の電界の振幅をE0として、
      Ep=(E0/√2)sin(ωt-kz)(i +j )  (1)
    で表されます。(太字はベクトルを表します。i はx方向、j はy方向の単位ベクト ルです。
    この光がλ/4板を通ると、x軸の振動成分のみがπ/2だけ遅れるので、透過光の電界ベ クトルEqは
      Eq=(E0/√2){sin(ωt-kz-π/2)i +sin(ωt-kz)j }
    =(E0/√2){-cos(ωt-kz)i +sin(ωt-kz)j }     (2)
    となります。この光が鏡で反射すると、振幅反射率をrとして、反射光Erは-z方向に進 むので、
      Er=(rE0/√2){-cos(ωt+kz)i +sin(ωt+kz)j }     (3)
    この光がλ/4を透過すると、x成分のみ位相がπ/2遅れて、出力光Erqは
      Erq=(rE0/√2){-cos(ωt+kz-π/2)i +sin(ωt+kz)j }
        =(rE0/√2){-sin(ωt+kz)i +sin(ωt+kz)j }
        =(rE0/√2)sin(ωt+kz)(-i +j )          (4)
    となり、-45度傾いた直線偏光となるため、偏光子を透過できないのです。
    --------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Mon, 3 Oct 2011 08:55:58 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生、Kです。
    詳細なご説明、ありがとうございます。
    --------------------------------------------------------------------------------------

    1247. GaAsのドーパント

    Date : Thu, 29 Sep 2011 14:23:33 +0900
    Q: D*大学学部4年生のN*と申します。電気科に所属しています。匿名でよろしくお願い致します。
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させていただきます。

    ドーパントについて勉強しています。

    ガリウムヒ素のドーパントについてなんですが、ベリリウムの平衡偏析係数がわかりません。
    硫黄、テルル、亜鉛等は具体的な数字がでてるのですが、ベリリウムだけが空欄でわかりません。
    理由をいろいろ考えてみたのですがわかりません。
    ただわからないのか?意味があって書かれていないのか混乱しています。

    また、クロムはp,n型どちらになるのですか?SIと書いているのですが、わかりません。
    お忙しいとは思いますが御返信の程よろしくお願いいたします。
    -------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Thu, 29 Sep 2011 20:38:55 +0900
    A1: N君、佐藤勝昭@新潟(出張中)です。
     旅先なので、手元にデータがないので、きちんとお応えできません。
    (1)もし、あなたがいうようにベリリウムの偏析係数のデータがないとしたら、ベリリウムは毒性があるので研究があまりされていないからかも知れないですね。
    (2)クロムは、バンドギャップの真ん中に深い準位をつくります。深い準位は、伝導帯の電子や価電子帯のホールを捕まえて、熱的に励起されないので、ドープしたものが活性化せず、半絶縁性(semi-insulating:SI)になるのです。
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    Date : Sun, 2 Oct 2011 18:45:41 +0900
    A2: N君、佐藤勝昭です。
     出張から帰って、資料を見ました。
    (1)Peter Capper:Bulk crystal growth of electronic, optical & optoelectronic materials のp47にある
    GaAs中の偏析係数の表ですが、確かにGaAS中のベリリウムについて偏析係数はでていませんね。GaAsに対するBeのドーピングについてはMBEで行われています。詳細を知りたければ、R.F.C.Farrow: Molecular beam epitaxy: applications to key materialsのp187-188に載っていますから勉強してください。ベリリウムのドーピングは非平衡的なデルタドープで行われているので、平衡偏析係数を出すのは難しいかもしれません。
    (2)深い準位がトラップになることは、拙著「太陽電池のキホン」63項の図2(p143)にある説明をお読みください。
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    1248. 複素透磁率の虚数部のイメージ

    Date : Tue, 18 Oct 2011 13:16:37 +0900
    Q: 佐藤先生、F*社のK*と申します。
    ・・・Webアップ時は社名・氏名ともに匿名でお願いします。
    物性なんでもQ&AのHPを拝見し、メールさせて頂きました。

    複素透磁率について質問させてください。
    実数項は、いわゆる比透磁率であることは理解していますし、比透磁率の考え方、イメージ、磁気回路などにおける実務的な扱い方は広く認知されていると思います。
    一方、虚数項については磁気損失にかかわる部分という認知はされているものの、実務的な扱い方としてはtanδ=虚数項/実数項として広く認知されているだけで、 どのようなイメージで磁気の損失と結びつくのか、実数項との相関はどうなのか、ということについて、教科書にもWebにも明快な(明確な)説明がなされていないように思います。
    私自身も十分に理解できていない一人です。
    以前から何かの機会あるごとに気になっていたのですが、喉元過ぎればと言われる如く、ついつい正しく理解しないまま現在に至っております。
    少なくともイメージとして(定性的に)理解したいと思っています。適切なコメントあるいは参考文献を教えて頂けると幸いです。
    ご多忙とは存じますが、よろしくお願い致します。
    以上です。
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    Date : Tue, 18 Oct 2011 20:54:39 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     複素比透磁率における実数部μ'と虚数部μ"の関係は、複素比誘電率における実数部ε'と虚数部ε"の関係と同様に、クラマースクローニヒの関係式で結びついています。
     比透磁率を角振動数ωに対してプロットすると、実数部μ'が急に落ちてゼロを切るところで、虚数部μ"はピークとなります。
    力学的な系のアナロジーでいえば、振り子を強制振動させたとき、振り子の共振周波数以上になるとついて行けなくなりますが、その周波数で損失もピークになるのと同じです。
    添付図は共立物性物理学講座6「物質の磁性」(昭和33年)の第4章4.11節「動的磁化過程」の図4.88、図4.89、図4.90です。
    図4.88,4.89は、磁壁の共鳴の際の透磁率の実数部と虚数部のスペクトルを表しています。 また、図4.90はフェライトの透磁率の周波数特性で、Snoekの自然共鳴として説明されています。
     この書物は今では絶版ですが、大学の図書館にはあると思いますので、お読みください。
    ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 19 Oct 2011 16:30:39 +0900
    AA: 佐藤先生
    F社のKです。
    この度は、ご丁寧なご回答を頂き、ありがとうございます。
    頂きました資料等を熟読・理解し、あらためて質問させて頂きたく思います。

    今後ともよろしくお願いします。
    ありがとうございました。
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    1249. 炭素を用いたGa2O3中のEuの還元について

    Date : Wed, 2 Nov 2011 19:35:35 +0900
    Q: 初めまして佐藤勝昭先生
    私は、東京理科大学の学部4年の松浦と申します。
    今は薄膜の研究室に在籍していまして、Ga2O3にEuを添加させた赤色蛍光体を開発をしています。
    今直面している問題は、Eu3+ から Eu2+ へ還元する際にCがどのような作用をしているのかです。
    またGa2O3にEuを添加した試料にCを加える事で赤色蛍光の強度は下がるのですが、同時にGa由来のピークが上がってしまいます。
    文献で見ても、どれを参考にしていいのか分からないのでメールをお送りしました。お手数ですが、ご回答宜しくお願い致します。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 2 Nov 2011 23:29:50 +0900
    A: 松浦君、佐藤勝昭です。
     学部4年ということですから、卒業研究でしょうか?
    卒研での疑問は、まずは、指導教員に聞いてください。その上で、指導教員もわからないときには、教員の許可を得てお尋ねください。
    実験の詳細がわからないので、一般的なことでヒントを差し上げます。
     C自身には還元作用はなく、空気中で高温にしたときCOができると、強い還元作用をもちます。
    COは自らが酸化してCO2になるときに周りのものから酸素を引き出します。これが還元作用です。
    Ga2O3にEuを添加すると3価のGaサイトを置換しEuも3価になっています。COはGa2O3からOを奪うので、マイナス電荷が不足します。このためEu3+がEu2+になってプラス電荷を減らして電気的な中性を保とうとします。
    しかし、酸素欠陥ができるのでそれによる発光が生じてしまします。キミが言う「同時にGa由来のピーク」はおそらく酸素欠陥による発光ではないかと思うのですが、・・。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 4 Nov 2011 12:28:53 +0900
    AA: 佐藤様、返信ありがとうございます。

    1250. PMMAの斜め入射反射率

    Date : Sat, 5 Nov 2011 10:26:48 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    初めまして酒井と言います。
     早速ですが、透明アクリル板(PMMA)には界面反射が有る訳ですが、入射角による光の反射率を教えて頂けませんか。
    垂直入射から水平に至るまで、90度有りますが界面反射率がどのように変化していくのか知りたいのです。
    例えばレーザー光の入射角が水平に近い89度の場合、80度、70度、60度~10度、垂直(0度)、媒質が透明アクリル板5tとして教えて頂けませんか?
    出来ればグラフで表現頂ければ幸いです。ご多忙中、恐縮ですがお願い申し上げます。
    ------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 6 Nov 2011 01:42:21 +0900
    A: 酒井様、佐藤勝昭です。
     斜め入射の反射率は、p偏光(電界ベクトルが入射面内で振動)とs偏光(電界ベクトルが入射面に垂直に振動)とで異なります。
    屈折率nの透明物質のp偏光反射率Rp、s偏光反射率Rsは、入射角をθとして次式で表されます。

    Rp=|{n2 cosθ - (n2 - (sinθ)2)1/2}/{n2 cosθ + (n2 - (sinθ)2)1/2}|2
    Rs=|{cosθ - (n2 - (sinθ)2)1/2}/{cosθ + (n2 - (sinθ)2)1/2}|2
     
        PMMAの屈折率n=1.49を代入すると
    入射角θ Rp(%)  Rs(%) 
    03.873.87
    53.833.91
    103.714.03
    153.514.25
    203.234.56
    252.875.01
    302.445.61
    351.936.42
    401.377.51
    450.808.96
    500.3010.94
    550.0113.62
    600.1917.31
    651.3322.41
    704.2929.53
    7510.7339.49
    8023.7353.45
    8549.3672.95
    8986.8793.86
    9099.9699.98
    となっています。
    (π=3.1415で計算したため若干の誤差があります)
    PMMA反射率の角度依存性グラフ グラフを添付します。
    なお、厚さが4tということで、裏面からの反射も無視できないはずですが、ここでは、簡単のために、厚みが十分厚いとして裏面の反射を無視しています。
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 6 Nov 2011 09:48:20 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様
    早速のご回答有り難うございます。
    またご回答頂きました事に、大変感謝致します。
     概ね界面反射がどの様に反射するのか良く解りました。
    文面の中で(厚さが4tということで、裏面からの反射も無視できないはずですが、)と書かれておりますが、裏面の界面反射も有ると言う事で反射率がプラスアルファに成ると理解すれば宜しいか?
     もう一点疑問があります,例えば入射角70°でPMMA内に屈折した光が入ったとします。
    この場合PMMAの裏面側では臨界角を超えているので、PMMA内で全反射して屈折光(p偏光/s偏光)100%が入射面から飛び出ると考えますが間違っておりますか?
    恐縮ですが、ご教授お願いいたします。
             酒井 善弘
    ----------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 6 Nov 2011 10:58:40 +0900
    A2: 酒井様、佐藤勝昭です。
    1)裏面反射の問題
     裏面の反射がある場合、一般にはそれが付け加わると考えられます。
    しかし、レーザのように可干渉の光の場合、光路長によっては、表面反射光と、裏面か らの反射光とが、強め合う場合と、弱め合う場合があるので、単純ではありません。
    斜め入射でレーザスポットが小さい場合は、重なり合わないのでこの心配はありません が・・。
    2)臨界角の問題
     第1の界面を通り抜けたのであれば、臨界角以下と考えられますから、第2の界面も 通り抜けるはずです。
    なぜなら、スネルの法則により、PMMA内に入った光の出射角は、sinθ2=(1/n)sinθ=0 .6307
    θ2=39.10°となります。この角度であれば、PMMAから空気中には十分通り抜けるはず です。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 6 Nov 2011 11:37:53 +0900
    Q3: 佐藤勝昭様
    ありがとうございます。
    θ2=39.10°では臨界角以内で通り抜ける説明有り難うございます。
    例えばθ2=約42°以上になれば臨界角を超える為、全反射すると理解すればよいでしょうか?
    何回も申し訳ありません。
    お手空きの時で結構ですので、ご教授お願いします。
                  酒井 善弘
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    Date : Sun, 6 Nov 2011 12:15:09 +0900
    A3: 酒井様、佐藤勝昭です。
     そもそもPMMA内部への出射角θ2が臨界角θcを超えるような光を入射できません。
    なぜなら、臨界角θcは、空気側の入射角θが90°になるように定義されていますから、
    90°を超えた入射角がない限り(それはあり得ません)θ2>θcにならないのです。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 6 Nov 2011 21:42:45 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    ご回答ありがとうございました。
    ご回答頂いた内容を良く理解し、今後の仕事に役立てて参ります。
    このたびは大変勉強になり、お礼申し上げます。
                    不備
    酒井 善弘 
              -------------------------------------------------------------------------------

    1251. 炭素が蒸気に侵される訳

    Date : Wed, 9 Nov 2011 16:36:41 +0900
    Q: 佐藤先生始めまして。Y社の三武と申します。
    サイトを検索していて貴HPにめぐり合いました。
    表記についてご教授頂きたくメールを送付させて頂きました。
    私の専門は機械関係の開発・設計です。
    このたび燃焼関連の内容が含まれる仕事を行なうことになりました。
    そこで燃料やクリーン燃焼について調べております。
    例えば水の臨界状態で有機物は酸素があると燃焼するという現象は存じております。
    そこでクリーン燃焼をさせるためには水蒸気があればと思い、調べております。
    【炭素が蒸気に侵される】 ことは一般的知識として存じておりますが、何故かは調べているのですが、分かりません。
    お手数をお掛けしますがご教授下さい。
    併せて学術文献若しくは記載されている書籍などがありましたら教えて頂ければ幸いです。
    ------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 9 Nov 2011 17:11:45 +0900
    A: 三武様、佐藤勝昭です。
     私のこの問題の専門外なので、回答に自信がありませんが、知る範囲でお答えします。
    炭素の水蒸気腐食(carbon corrosion)については、燃料電池のセパレータの劣化の問題として研究されています。
    反応は、C+2H2O→CO2+4H+ + 4e- という化学式で表されます。
    高温でのみ起きる現象ではないかと思いますが、・・
    詳細は、Innovations in Fuel Cell Technologies 著者: Robert Steinberger-Wilckens,Werner Lehnertという書物の第8章をお読みください。
    -------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 9 Nov 2011 17:15:06 +0900
    AA: 佐藤先生
    早速のご回答有難う御座いました。
    調べてみます。
    又何かありましたら宜しくお願い致します。
    三武
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    1252. 金属とセラミックスの光反射特性の違い

    Date : Wed, 9 Nov 2011 19:59:00 +0900
    Q: 佐藤 勝昭様
    大阪大学大学院博士前期課程2年の片山と申します。
    私は光反射関連の研究をしており、貴ホームページは材料物性について大変分かりやすく説明がなされており、 参考にさせて頂いております。
    ホームページを拝見させて頂く中で疑問に思うことがありましたので、佐藤先生の御見解を頂ければ幸いです。
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    「物性なんでもQ&A」の
    質問・回答の中に『白金黒は粒子が複雑な形状をしており、白金黒に入射した光は 多重反射されて光反射率が低くなり、黒く見えるという』というような内容の記述がありました。
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    このことに関しての質問があります。
    この複雑な形状を持った物質が、例えばガラスなどの光吸収係数が低い物質であった場合も複雑な形状は光反射率が低くなる方へ寄与するのでしょうか?
    複雑な形状であれば光が多重反射されて光反射率が低くなる気がするのですが、一方で粒界が増えて光がバルクに侵入しにくくなり、反射率が高くなることも考えられます。
    また、表面形状と光反射特性について書かれた文献がありましたら、ご教授頂ければ幸いです。
    御多用中とは存じますが、どうぞ宜しくお願い致します。
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    Date : Thu, 10 Nov 2011 01:11:09 +0900
    A: 片山君、佐藤勝昭です。
     メール有り難う。「この複雑な形状を持った物質が、例えばガラスなどの光吸収係数 が低い物質であった場合も複雑な形状は光反射率が低くなる方へ寄与するのでしょうか ?」ですが、透明物質の場合、吸収が弱いので、散乱光は全部出てきてしまい白くなり ます。色ガラスのように特定の波長に吸収帯があると、吸収される波長帯の補色が散乱 光として見られるはずです。このことを明示的に書いた文献は知りませんが、光学関係 者は自明のことと考えているのではないでしょうか。
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    Date : Thu, 10 Nov 2011 12:11:10 +0900
    Q2: 佐藤 勝昭様
    迅速な御対応に感謝致します。
    お返事の中にまだ少し納得できない部分がありましたので質問させて下さい。

    例えば色ガラスを用いて白金黒のような光を多重反射する構造を持つ粒子の粉末が得られたとします。
    この粉末は、『多重反射する粒子と同じ表面積をもつ色ガラスの球体の粉末』と比較して色に関係する特定の波長における光吸収率が見かけ上高くなり、球体粉末を用いた場合よりも色が濃く見えるのでしょうか?
    それとも光の経路に対して界面が多数導入され、粉末表面層で光が散乱されやすくなり、光吸収率が減少する方へ作用し、球体粉末と比べて色が薄く見えるのでしょうか?
    最初の質問と同様な質問になってしまうかもしれませんが、どうぞ宜しくお願い致します。
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    Date : Thu, 10 Nov 2011 14:30:56 +0900
    A2: 片山君、佐藤勝昭です。
     一般に黒くなるのは光が返ってこなくなる構造をもつ場合です。
     たとえば、直径が20nmで高さが500nmの円錐状のピラーを40nm周期で多数並べたたシ リコン構造は真っ黒になります。シリコンのバンドギャップより高い光子エネルギーを もつ光が入射すると、光は各ピラーの円錐壁にあたり、一部は吸収され、下方に反射さ れ、再び他の円錐壁で反射され奥へと進み、何回かの反射の繰り返しののち、ついにす べて吸収されてしまい、光は戻ってきません。白金黒も同様の円錐状のでこぼこ構造に なっていると考えられます。
     食塩の単結晶は無色透明です。食塩をすりつぶして粉末にした場合、白くなりますが
    、これは、添付図(拙著:理科力を鍛えるQ&A p123)に示すように、繰り返し反射 ・屈折・透過を受け、すべての波長の光が散乱されて目に入るので白く見えるのです。 食塩の粉末粒子が、たとえ、白金黒のような形状であったとしても散乱光は白いでしょ う。
     色ガラスについて、考えてみましょう。赤い色ガラスは、緑・青の波長の光を吸収し 、赤を透過します。このガラスを粉にしても赤く見えます。吸収帯の光は繰り返し反射 ・透過によって強度を失い、赤のみが散乱されてくるので、純度の高い赤になります。 もし、粉末が白金黒のような複雑な形状をもつと、さらに吸収帯の吸収が強くなり、い っそう純度の高い赤になるでしょう。色は濃くなったように感じるはずです。
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    Date : Fri, 11 Nov 2011 19:58:36 +0900
    Q3: 東京農工大学 佐藤 勝昭様
    返信が遅くなり申し訳ありません。
    先生のお返事の中に一つ確かめたいことがあり、確認作業をしておりました。
    御多用中の中、一介の学生のためにお時間を下さり誠に感謝致します。
    ガラス粉末の写真
    物質毎に光吸収の特性を例示して下さり、大変分かりやすかったです。
    私も金属や半導体の凹凸形状が光吸収効率を上昇させる文献に目を通したことがあります。
    ただ、光を透過させるような物質に対して凹凸形状と光吸収について書かれている文献を 見たことがなく、疑問に思いこの度質問させて頂きました次第です。
    物質によらずナノスケールのピラーのような構造を持つ場合には光吸収作用が高まる方へ 作用することが分かりました。

    確認していたのは、色ガラスを粉砕してもその色に見える点についてです。
    例えビール瓶のような黒いガラスでも粉砕すれば光のガラス中での光路が短くなり、 粒径が小さくなるに従って白い粉末になると考えていました。
    そこで確認するために、栄養剤のガラスを粉砕して写真に撮りました。
    粗粉砕の状態では黄色の着色をしていましたが、さらに細かく粉砕するに従って青白くなってきました。
    粒径によって色の変化する理由は私の予想で合っているでしょうか?

    どうぞよろしくお願い致します。
    大阪大学 片山陽平
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    Date : Sat, 12 Nov 2011 09:55:52 +0900
    A3: 片山陽平君、佐藤勝昭です。
    カラーガラスの吸収スペクトル  あなたの探求心はすばらしいと思います。写真は説得力がありますね。
     粒子が細かく複雑な形状を持たない場合、あなたの言うとおり 微粒子を透過するとき光はわずかしか吸収を受けずに透過して、 他の粒子で散乱されて、目に入るので白っぽくなると思います。
     褐色の瓶のガラスはFe3+の配位子場遷移6A1->4T1,4T2による 吸収帯が原因で青が吸収され褐色に着色していると考えられます。
    この遷移はd-d遷移なので基本的に吸収が弱いので、微粒子では 綠から青が透過しかつ、レーリー散乱によって短波長の散乱が 強くなるので、粉末が緑色→青色になったと考えられます。
     添付は、オリーブ油の瓶につかうガラスのスペクトルです。
    参考にしてください。
    http://www.aromadictionary.com/EVOO_blog/?p=357による。
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    Date : Sun, 13 Nov 2011 17:00:29 +0900
    AA: 東京農工大学
    佐藤 勝昭様
    ご返事ありがとうございます。
    ガラスをただ粉砕するだけの簡単な実験の中にも、 様々な物理的現象が起こっていることに驚きました。
    リンク先を拝見させて頂きましたが、確かに紫外付近での吸収が強く、 恐らく今回使用した瓶においても青が吸収されていることが分かりました。
    度々の御質問失礼しました。
    懇切丁寧にご回答下さり誠に感謝致します。
    私は以前固体物理が嫌いでしたが、先生のホームページに出会って以来、 知的好奇心を刺激されてもっと勉強したいと思うようになりました。
    また機会があれば御質問させて頂きますので、御対応頂ければ幸いです。
    先生のさらなるご活躍を願っております。
    大阪大学 片山陽平
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    1253. 比誘電率の小さな物質

    Date : Wed, 23 Nov 2011 17:53:00 +0900
    Q1: F社Uと申します。いくつか調べているうちに、先生のHP「材料・物性関係のご質問」にたどり着きました。
    質問ですが、比誘電率が(正で)1未満の物質というのはあるのでしょうか?
    最近メタマテリアルとして透磁率・誘電率が負の場合が話題にあがりますが、「0より大で1未満」という物質はないと思っていました。
    が、いくつかのwebサイトにある比誘電率の一覧表にネスカフェ粉 0.55-0.7 (振動)といった記載をみかけて驚いています。
    それはさておき、比誘電率が 0.1,0.5といった化合物や状態は存在するのだろうか?
    と改めて疑問を抱いた次第です。
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    Date : Wed, 23 Nov 2011 19:21:12 +0900
    A1: U様、佐藤勝昭です。
     比誘電率εrが1以下の物質はいくらでもあります。
    一般に金属の誘電率はDrudeの式で表される自由電子による成分とバンド間遷移に基づく項のコンビネーションで表されます。後者の寄与を定数と見なすと、
     εr=ε -ωp22 
    で近似できます。例えば、ε=3 ωp=2eV とすると
     ω=ωp'=ωp/√ε=2/√3=1.15eV ではεr=0
     ω=ωp"=ωp/√(ε-1)=2/√2=1.41eV ではεr=1
    なので、1.15eV<ω<1.41eV においては、0<εr<1 となります。
     金属粉末が透明絶縁体に混ぜ込まれた物質でも同じことが起きます。
    また、ローレンツ型の振動子の場合、固有振動数をω0、ダンピング定数をγとすると、
     εr=1-A/(ω2 + iωγ - ω02)
    と表されますが、実数部は
     ε'=1-A(ω202)/{(ω202)22γ2}
    となります。バンド間遷移が加わると第1項の1はε∞とします。
    この式の第2項の分母は正なので、ω<ω0 で(ω202)/{(ω202)22γ2} <0
    なので、A<0とするとεr<1となります。赤外の分子振動などでは、こういうことが起こります。
    ネスカフェ粉の(振動)はそれではないでしょうか?
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    Date : Thu, 24 Nov 2011 00:24:22 +0900
    Q2: 佐藤先生、F社 Uです。
     ご質問させていただいたUです。
     休日ですのに、すばやいお返事、本当に有難うございます。
     不躾な質問に、丁寧なご回答をいただき、有難うございます。
     勉強不足を恥じながら、急いで 
    先生の記事「金属の色の物理的起源」を拝読しました。
     固有振動数(またはプラズマ振動数)の付近で、反射率の急な変化と共に起きる現象として理解いたしました。
     (ω2 > ω02 +A の場合は普段扱う周波数でなさそうなので除外しました)
    この現象は、普段電子回路で扱うような、せいぜいミリ波以下の周波数でも観察されるでしょうか。 ・・と、ここまで書いて、電波吸収体のお話になるのかと思い至りました。 このような理解でよいでしょうか。重ねまして有難うございます。
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    Date : Thu, 24 Nov 2011 00:57:34 +0900
    A2: U様、佐藤勝昭です。
     ご参照された一覧表は、光や高周波の比誘電率ではなく、直流~低周波の誘電率ではないでしょうか。
    ネスカフェの粉のところにわざわざ振動と書いてあるのは、遠赤外域にある分子振動(あるいは分子回転)の振動数の直上ではないかと推察します。
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    Date : Thu, 24 Nov 2011 02:42:34 +0900
    AA: 佐藤先生、Uです。
     深夜にもかかわらず、ありがとうございます。
       私もそのように考え、ここだけ赤外領域?のデータが混ざっているのは理解出来ないでおりました。いずれにせよ得心がいきました。
     「ネスカフェ粉」については、MHzオーダで自分なりに実測してみようと思っております。 
     本当に有難うございました。
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    1254. 単層カーボンナノチューブの磁気光学特性

    Date : Tue, 29 Nov 2011 16:36:40 +0900
    Q: 佐藤 勝昭様、HPを拝見させていただきました。
    私C*大学修士2年のI*と申します。匿名希望で御願い致します。
    私は現在、単層カーボンナノチューブの磁気光学特性について学んでいます。
    励起子発光について質問させていただきます。
    単層カーボンナノチューブにレーザーと磁場を印加する事で、フォトルミネッセンスを観測する、という京都大学の論文を読んでいるのですが、brightとdarkにPLピークが分裂するという結果になっています。
    何故そうなるのか、という原理が理解できませんでした。
    是非御教授御願い致します。
    御忙しい中大変申し訳ありません。
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    Date : Tue, 29 Nov 2011 20:18:14 +0900
    A: I君、佐藤勝昭です。
     メールありがとう。私は、CNTの専門家ではないので、光学の立場からお答えします。
    この論文の最初のパラグラフの7行目以降に、2つの縮退したKバレーとK'バレーにおいて励起子の多重項が存在し、奇パリティ、角運動量ゼロの1重項励起子が基底状態に光 学遷移するときは許容遷移となって発光は明るいが、その他の場合は、禁止遷移となって発光は暗いと書かれています。
     文献[9,10]を読まないとわかりませんが、1重項というのは1つのスピンが↑でもう1つのスピンが↓のためにS=0になっている状態です。(全スピンS=0なので、磁界を印 加してもこの状態は分裂しません。)
     基底状態は、丸い状態(偶パリティ)で角運動量はゼロでしょうから、奇パリティをもつ電気双極子qrによる光学遷移は∫ψ(励起状態)*×qr×ψ(基底状態)drは、奇×奇 ×偶=偶を全空間で積分するので、ゼロになりません。一方、励起状態が偶パリティであれば、偶×奇×偶=奇を全空間で積分するとゼロになってしまいますから、発光は暗 いはずです。
     SWCNTの場合、磁界をかけたとき、磁界がCNT筒を貫くと、励起子を構成する電子やホールの波動関数の位相に影響を与え、アハラノフボーム(AB)効果が現れるというのです 。特に光の進行方向に垂直に磁界を加えた場合(フォークト配置)では、元々同じエネルギー位置に縮退してしていたはずの暗い遷移(禁止遷移)が、上記の一重項による許 容遷移より低エネルギー側に現れるというのです。実は、ゼロ磁界でも完全には縮退せず結合軌道と反結合軌道のエネルギー差Δbdだけ低いエネルギー位置におりますが、発 光は弱いので図2のH=0では見えていませんね。磁界を加えると、アハラノフボーム効果によって式(2)で表されるエネルギーだけ下に暗い励起子発光が現れ、さらに、磁界と ともに奇パリティの状態が偶パリティの状態に混じってくるため、発光強度が増えるのです。これが図2(a)でH=7Tで元々弱かったはずの励起子発光が強く観測される理由で す。
     AB効果によって分裂Δbd(B)が(2)式で増加する理由は、文献[17]に書いてあるはずです。
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    Date : Wed, 30 Nov 2011 17:10:22 +0900
    Q2: 佐藤 勝昭様。
    迅速な対応ありがとうございます。
    スピンに関するお話、非常に分かりやすかったです。ありがとうございました。
    Kバレー、K'バレーの違いが曖昧なのですが、波動関数の位相が180°ズレているという認識でよろしいのでしょうか?
    文献に関しては私の方で読んで理解しようと思います。
    返信ありがとうございます。
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    A2: I君、佐藤勝昭です。
     添付の論文のp2,line18によれば、K点とK'点は時間反転変換によって結びついていると書かれています。
    量子系の運動は, 本質的に複素量に関する「運動方程式」であるシュレディンガー方程式に従いますが、
    スピンを持たない粒子系に関してはその波動関数の複素共役をとることで、「時間反転対称操作」は与えられます。
    (あなたの言うように波動関数の位相の反転と見てもよいでしょう)
     磁場の存在はこの時間反転対称性を破ります。
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    Date : Fri, 02 Dec 2011 14:42:35 +0900
    AA: 佐藤勝昭様、C大学Iです。(匿名で御願い致します。)
    度々ありがとうございます。
    非常に分かりやすかったです!
    ありがとうございました。
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    1255. 赤外透過光学材料

    Date : Tue, 29 Nov 2011 20:09:53 +0900
    Q: 佐藤先生
    はじめまして、旭化成の加々尾と申します。
    先生のHPを拝見させていただき、お知恵をお借りしたくメール致します。
    現在、5μm~8μmの赤外線を透過し、それ以外の赤外線を吸収するガラスもしくはアクリル素材を探しております。
    主に携帯電話やタブレットPCで主流となっている、ガラスやアクリル素材の下に人感センサーを搭載し、検知する用途を検討しております。
    調べたところ、サファイアグラスはガラスの中で最も長波長まで透過し、7μm程度まで透過するようですがコストが高く、採用困難と思われます。
    それ以外に上述した波長帯の赤外を透過可能な特殊なガラスもしくはアクリルをご存知でしたらご教示頂ければ幸いです。
    当社内にこの分野に精通した者がおらず、先生にアドバイスをお願いした次第です。
    何卒よろしくお願いいたします
    旭化成エレクトロニクス 加々尾
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    Date : Tue, 29 Nov 2011 20:35:50 +0900
    A: 加々尾様、佐藤勝昭です。
     赤外線を通す合成光学結晶は
    http://www.okenshoji.co.jp/optical.htmに載っています。
    このうちフッ化カルシウム、フッ化リチウムは紫外から赤外まで広く使われます。これらは、サファイヤと同程度の値段になります。
    赤外域の分光器の窓にはKRS(臭化タリウム)が、潮解性があまりありませんし、堅牢で価格も安いのでよく使われています。
    プラスチックにも赤外透明なものがあります。なんでもQ&A#1126に書いたのでお読みください。
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    Date : Tue, 29 Nov 2011 20:48:41 +0900
    AA: 佐藤先生
    早速のご返信、誠にありがとうございました。
    大変参考になりました。
    取り急ぎお礼まで
    旭化成 加々尾
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    1256. 光生成したキャリアの計測が太陽電池設計に役立つ理由

    Date : Wed, 30 Nov 2011 22:49:42 +0900
    Q: 夜分遅くに申し訳ありません、O*大学M1のY*と申します。Webアップの際は匿名にして頂けると幸いです。
    さて、質問ですが、私は今、Si結晶に光(可視)を照射した際に、生成されたキャリアがどのように結晶内に空間分布するか、また、キャリアはどのくらいの時間で散乱過程により消滅するか、という情報を取り出す実験を行なっています。
    この様なファクターは太陽電池の設計の上で役立つと言われているのですが、太陽電池は専門外であり、具体的にどのように役立つのか理解できません。ご教授お願いします。
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    Date : Thu, 1 Dec 2011 00:29:06 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     修士論文の研究での疑問は、原則として指導教員にたずねるべきものですよ。
    ヒントだけ差し上げます。添付は佐藤勝昭著
    「太陽電池のキホン」の第6章077項です。
    引用しますと、
    結晶系シリコン太陽電池は少数キャリアが発電に寄与するデバイスです。このために、
    少数キャリアの移動量である拡散長および寿命(多数キャリアと再結合して失われるま
    での時間)が重要な意味をもってきます。・・・
     太陽電池の原理を知らずにあなたの言う研究しても意味がありません。わかりやすく書いてありますから「太陽電池のキホン」をお買い求めください。アマゾンで買えます。
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    Date : Thu, 1 Dec 2011 00:31:16 +0900
    AA: ありがとうございました。本を参考に努力していきます。
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    1257. ガリウム金属の保存

    Date : Tue, 20 Dec 2011 23:57:25 +0900
    Q1: 佐藤勝昭先生
    HPをみて大変興味深い議論がされていましたので質問させて頂きました。
    現在会社員をしているN*と申します。
    大学時代は計算での解析をしていて、実験に関しては学生実験レベルの経験しかありません。
    Webに掲載する際は匿名でお願いします。
    私は趣味で鉱物を集めており、最近元素標本も集めたいと思っています。
    先日、個人でもガリウムを入手できることを知りました。
    ただ、調べてみると液体のガリウムは濡れ性が高く、ガラスや一部のプラスチックにも付着しやすいそうです。
    最近自分が見たのはポリマー容器の壁に付着して固まったものでした。
    プラスチック製(ポリスチレン製あたり?)の試薬瓶などが一般に入手できるようなので、 そのような容器での保管を考えていますが、ガリウム融液は付着しにくいのでしょうか?
    また、それ以外だとどのような材質のプラスチックだと付着しにくいでしょうか?(できるだけ透明で中が透けて見えるもので) ここで質問するのが適当な内容かどうかわかりませんが、差し支えがなければご返答頂けたらと思います。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Wed, 21 Dec 2011 01:08:01 +0900
    A1: N様、佐藤勝昭です。
     ガリウムは29.8℃で融解し、表面張力が小さいので、金属にもプラスチックにも濡れ ます。瓶の内側に酸化ガリウムをスパッタするとか、alkyl silaneでコートすると濡れ にくいという報告がありますが、一般向きではありませんね。
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    Date : Wed, 21 Dec 2011 23:50:42 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
    返信有難うございます。
    結局のところ、金属だというだけで表面張力の小さな液体と見たほうが良いのでしょうか?
    ということは濡れにくい容器という観点だと入手性のいいプラスチックで透明性に目をつむると、 表面自由エネルギーの小さなポリプロピレン、ポリメチルペンテン、テフロンなどになるのでしょうか?
    ガラス表面を酸化ガリウム処理できれば候補に上がるのでしょうが、個人では難しそうですね。
    こちらの方は、変に浸透とか固溶体を形成しにくいからなのでしょうか?
    度々の質問で申し訳ありませんが、よろしくおねがいします。
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    Date : Thu, 22 Dec 2011 00:07:44 +0900
    A2: N様、佐藤勝昭です。
    おっしゃるとおり、表面自由エネルギーの低い物質がよいので、テフロンをお試しに なってはいかがでしょうか。
     なお、ガラス表面を酸化ガリウム処理するとGa2O3がGaと結合しないからよいということです。
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    Date : Thu, 22 Dec 2011 20:40:13 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    回答ありがとございました。
    参考にしたいと思います。
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    1258. 銅とエポキシの比誘電率と比透磁率

    Date : Sat, 7 Jan 2012 15:54:51 +0900
    Q1: 初めまして、S*大学機械科4年生Y*と申します。
    WEB上では匿名でお願いします。

    HPを拝見させていただきまして、佐藤様なら、知識不足のわたしにも呆れることなく回答していただけるかと思いメールを送らせていただきました。

    電磁波解析を行う上で、銅粒子とエポキシ樹脂の比誘電率・比透磁率を入力する必要があるのですが、どんな値を入力したらいいのかが分かりません。
    銅の比透磁率やエポキシの誘電率はネットでもでてきますが。
    金属は形状などに左右され、一義的ではないのはわかりますが、上の4つの値はだいたいどれくらいの値が一般的なのでしょうか。
    また、その理由も簡単に教えてください。

    担当教授や周りの方に聞いても納得が得られる返答はいただけませんでした。

    何卒ご返答よろしくお願いします。
    -------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 8 Jan 2012 00:29:09 +0900
    A1: Y君、佐藤勝昭です。
     機械科で電磁界解析をしておられるのですか。電磁気の基礎がないと大変ですね。
    お尋ねの比誘電率、比透磁率ですが、正確にはお使いになる周波数で異なります。(これを周波数分散といいます。)
    金属の比誘電率の実数部ε'は負です。これは自由電子のプラズマ振動によるDrude則に従います。
     ε'(ω)=ε-ωp2/(ω22)
    一方虚数部ε"は次式で表されます。  ε"(ω)=ωp2 ・γ/ω(ω22)
    ここにγは、電子の散乱の緩和時間をτとするとγ=1/τで与えられ、電子のプラズマ振動のダンピングを表す定数です。
    εは金属のフェルミ準位以下の満ちたバンドからフェルミ準位の上の空いたバンドへの光学遷移に基づく比誘電率ですがこれを定数で近似することには問題があります。。
     銅の、Landolt Boernstein New Ser. III 15 bによれば(h/2π)ωp~8.7eV, (h/2π)γ~0.2eVですが、εの記述はありません。
    実験データとしては、この書物に下記の値が載っています。
    (h/2π)ω [eV]f[THz]ε'ε"
    0.0020.484測定不能613000
    0.0051.209-13700159000
    0.0102.418-1060079200
    0.05012.090- 674013000
    0.10024.179- 308 4250
    ------------------------------------------
     銅の磁性は反磁性です。銅の磁化率は
    物理データ事典(朝倉)によれば、-0.86×10-6 cm3/gです。
    これに密度8.93 g/cm3をかけるとvolumetricな磁化率は
    χv=-7.6×10-6 [無名数]
    従ってμは1より小さいです。
    銅の比透磁率は、従って
     μ'=1-0.0000076=0.9999924
    です。μ'=1としてよいでしょう。
    銅の磁化率の周波数依存性は見当たりません。
    =============================
     エポキシに関しては
    Dielectric Properties of Epoxy Nanocomposites;IEEE Transactions on Dielectrics and Electrical Insulation Vol. 15, No. 1; February 2008
    pdfファイル
    という文献が役に立ちます。これにはTiO2, ZnO and Al2O3微粒子を分散させたものおよび無添加のエポキシの比誘電率の実数部の周波数依存性が出ています。
     グラフから読み取った無添加のエポキシの比誘電率の実数部は
    周波数[Hz]ε'
    10^34.4
    10^44.25
    10^53.9
    10^63.7
    虚数部ε"は0とおいて差し支えないでしょう
    -----------------------------------------------------
    エポキシの磁化率は, 特許 にのっており、反磁性であり、
     χ=-1.478×10-6 [cm3/g]
    密度は1.85なので, volumetricな磁化率は
     χv=-2.6×10-6
    従って
     μ'=1-2.6×10-6=0.9999974
    なので、これもμ'=1としてよいでしょう。
    --------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 8 Jan 2012 13:52:03 +0900
    Q2: 佐藤様、信州大学 Yです。
    素早く丁寧な解説をしていただきありがとうございました。
    ようやく理解することが出来ました。
    また、あと2点ほど質問させていただいてもよろしいでしょうか。
    佐藤様に教えていただいた銅の比誘電率は粒子の場合の話になると思うのですが、これが銅板になると比誘電率は大きく変わってくるのでしょうか。
    あともう1つは、電磁波を物に透過させることで電場の値が小さくなるということは、電磁波を遮蔽している、という考えは適切なのでしょうか。
    佐藤様は忙しいと思うのですが、他に頼れる人もいないので、お聞きしてしまいました。
    何卒ご回答のほどお願い致します。
    --------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 8 Jan 2012 15:18:31 +0900
    A2: Y君.佐藤勝昭です。
    (1)比誘電率は物質固有の量なので、板であろうが粒子であろうが変わりません。
    もっとも微粒子では、表面が酸化していることでバルクの値と変わることがあります。
    (2)物質を透過した電磁波の電界や磁界が反射や吸収によって減衰するなら遮蔽されたと言えるでしょう。
    ---------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 8 Jan 2012 21:31:39 +0900
    AA: 佐藤様
    S大学Yです。
    丁寧な解説をしていただきありがとうございました。
    これで卒業研究も進みます。
    また何か分からないことがあったらお聞きしてしまうかもしれませんが、その際はよろしくお願いします。
    本当にありがとうございました。
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    1259. 銀鏡反応で作製した銀ミラーの裏表の色の違い

    Date : Mon, 9 Jan 2012 11:26:04 +0900
    Q: 東京農工大 佐藤教授殿
    大変お世話になっております 。
    H*社のF*です。
     下記件に関しまして、ご回答頂ければ幸いです。
    ガラスに銀鏡反応を行うと、銀鏡面側から見ると黄色く見え、ガラス側から見ると、シルバー色に見えます。
     銀のナノ粒子が、プラズモン吸収により、黄色く見える事は理解できますが、 同じ反応でのナノ粒子が、ガラス側から見るとバルクと同じ銀色に見える事が疑問です。
    なぜ、鏡では可視光線領域でプラズモン吸収が発生せずに、全反射による白色になるのか教えて頂きますようお願いします。
    お忙しい所申し訳有りませんが、よろしくお願い致します。
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    Date : Mon, 9 Jan 2012 20:02:49 +0900
    A: 藤野様、佐藤勝昭です。
     銀鏡面側はナノ粒子なので、表面プラズモンのサイズ効果による着色があるのに対し、ガラス面側は平坦で、 かつ、銀鏡反応をする前に銀がよく濡れるようにガラス面はよく清浄しますから、バルクの銀の鏡面反射が見られるのでしょう。
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    Date : Wed, 11 Jan 2012 06:55:18 +0900
    AA: 佐藤様
    おはようございます。
    お忙しい中、ご丁寧なご返事を頂きまして、本当にありがとうございます。
    考えていた通りのご回答で、頭の中がすっきり致しました。
    ありがとうございました。
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    1260. カーボンブラックの金属不純物除去

    Date : Tue, 31 Jan 2012 22:36:09 +0900
    Q: 佐藤先生
    ホームページを見て質問しています。R社Kです。
    弊社の顧客で、廃タイヤを乾留してカーボンブラックを製造しようとしている会社があります。
    実際に実験してみると、タイや成分由来と思われる金属成分が多く含まれていて、市販のカーボンブラックの品質からすると大変見劣りします。
    例えば、市販のカーボンブラックと比べた分析結果は以下の通りです。
    ・亜鉛:市販品には1ppm程度含まれているが、廃タイヤからのカーボンブラックには数百ppm含まれている。
    ・チタン:市販品には1ppm以下だが、廃タイヤからのカーボンブラックには数ppm含まれている。
    ・鉛:市販品には1ppm以下だが、廃タイヤからのカーボンブラックには数十ppm含まれている。

    日本特許を調べると、亜鉛や鉛は、塩素を吹き込んで塩化物とすることで揮発させることができて、除去可能とあります。
    チタンについては、鉛よりも毒性がないためか、除去については情報がありません。
    もしこの分野が先生のご専門の一部であればご相談する機会をいただくことは可能でしょうか?
    もし専門外の場合は、専門の先生がおられるかご存じありませんか?
    以上、十分な説明になっていないかもしれませんがご検討いただけますか?
    なお、webにアップされる場合は匿名でお願いします。
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    Date : Wed, 1 Feb 2012 14:07:28 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     私は、この方面の土地勘がないので、Waste tyre recycling carbon black としてGoogleで検索してみました。
    Waste tyre recyclingからcarbon blackを回収するのは、海外で広く行われている技術のようですね。
    またdemineralization(金属除去)にもいくつかの論文が引っかかりました。
    中国の化学会誌に載った論文ですが、それにacid demineralization (酸を使った金属除去)のことが出ています。
    なお、その論文には、1990年代の論文が引用されていますので、参考にされるとよいのではないでしょうか。
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    Date : Thu, 2 Feb 2012 07:33:09 +0900
    AA: 佐藤先生
    お忙しい中文献調査をしていただきありがとうございます。酸洗浄については工業的 操作としては大変かもしれませんが、純度アップが確実に可能という印象です。大変 参考になりました。
    ありがとうございました。
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    1261. 電荷移動型吸収におけるバンドギャップの求め方

    Date : Wed, 01 Feb 2012 20:52:57 +0900
    Q1:佐藤勝昭様
    本サイトや「光と磁気」などを参考にさせていただいてます。
    N社のS(研究員)と申します。(掲載時は、所属/名前は伏せてください。)

    典型的な半導体(GaAs,Si,Geなど)のバンド(エネルギー)ギャップを吸収係数から求める際に、
      (αhν)^n = A(Eg - hν) (Eq.1)
    α:吸収係数、h:プランク定数、ν:光の振動数、A:定数、Eg:バンドギャップnは、直接遷移型(ex. GaAs)なら、n=2、間接遷移型(ex. Si, Ge)なら、n=1/2という式が用いられますが、この式が適用できるのは、
    1. 電気双極子遷移許容
    2. 波動関数がBloch関数で表わすことができるような広がった1電子系
    3. エネルギーの分散関係(E-k曲線)が、放物線で近似できる(有効質量近似が成り立つ)バンド端近傍
    での話であると理解しています。
    しかし論文を読んでいると、その近似が成り立っていないような場合にも、しばしば上記の式が用いられるのを見かけます。
    例えば、CeO2の場合[1,2]、
    紫外-可視域の吸収は、酸素の2p軌道からセリウムの4f軌道への電荷移動(Charge Transfer;CT)遷移であるとされています[3]。このようなCT遷移だと「仮定」すると

    1. O(2p)->Ce(4f)の遷移は、そもそも電気双極子遷移許容ではない。
    2. 希土類の4f準位のような局在した準位に、いわゆるバンド描像は適切ではない。
    3.系を4f軌道と2p軌道からなる多電子系として扱わなくてはならない。
    4.Ce4+では、f電子の数は、0ですが、0でない(価数が変わるなど)場合は、4f電子系の局在性が強さゆえ、on-siteのクーロン反発も考慮しなくてはならない。

    の理由から、上記の式を使うことは適切ではないと思います。それとも、ある程度の制限(仮定)を設ければ適用してもよいものなのでしょうか?ZrO2についても同様な疑 問を持っています。
    (この場合、O(2p)->Zr(4d)の遷移と考えれば、電気双極子遷移は許容ですが。)

    (Eq.1)の式の適用範囲(criteria)は、どのように考えればよいのか?
    また(Eq.1)を用いてEgを求める際の注意点などがあれば、教えていただければと思います。

    お忙しいところ恐れ入りますが、よろしくお願いします。

    [1] Toshio Suzuki et al. J. Appl. Phys., Vol. 91, No. 4, p2308 (2002)
    [2] Z. CRNJAKO and B. OREL Phys. Stat. Sol. (b) 186, K33 (1994)
    [3] Liu Fangxin et al. Appl. Opt. Vol.36, No.13, p2796 (1997)
    ---------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Thu, 2 Feb 2012 00:31:58 +0900
    A1: S様、佐藤勝昭です。
     あなたのお考えに全く同感です。(Eq.1)が成立するのはバンド間遷移の場合です。
     そもそも電荷移動型吸収は、ローレンツ型吸収で近似できますから、吸収端はローレ ンツ曲線のすそを見ており、たとえ(Eq.1)が成立するとしても、狭い吸収係数の範囲の みで、直線にならないと思います。多くの場合無理に直線を引っ張ってEgを求めていま す。
     ただし、水素化アモルファスシリコンでは(Eq.1)でn=1/2としたプロットがタウツプ ロットと呼ばれ、これからEgopt(光学的バンドギャップ)を求めるのが普通です。こ の場合は、格子の乱れが大きくて、k選択則が成り立たず、結合状態密度だけを使って 説明しています。
    Tauc, J. (1968). "Optical properties and electronic structure of amorphous Ge and Si". Materials Research Bulletin 3: 37-46.
     なお、Ce化合物のような価数揺動系の場合、4f準位は5dバンドと仮想共鳴状態にある と考えられ、フェルミ準位の位置によっては、バンド的な振る舞いをする可能性があり ます。このような場合にどうやってバンドギャップを求めるかは、難しい問題です。逆 に、もし、広い範囲で(Eq.1)が成立するならば、バンド的な状態であると判断出来るの かもしれません。
     また、吸収スペクトルがきちんと評価できないが、励起子発光のゼロフォノン線が見 られる系では、励起子発光エネルギーに励起子束縛エネルギーを加えた値をバンドギャ ップとすることもあります。
     ---------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 03 Feb 2012 20:35:51 +0900
    Q2: 佐藤勝昭様
    迅速なご返答、ありがとうございます。
    質問した内容は、私自身も当然のことだと思っていたのですが、引用した論文のほかにも、 しばしば同様な解析をしている論文を見かけるので、自分の理解がおかしいのか、あるい は拡張した解釈があるのか、疑問に思い、いろいろ調べてみたのですが明確な答えが得ら れなかったので質問させていただきました。
    基本的な内容でお手数をおかけしました。

    最後にもう一つだけ教えていただきたいことがあります。
    回答の中に
    > なお、Ce化合物のような価数揺動系の場合、4f準位は5dバンドと仮想共鳴状態にある
    >と考えられ、フェルミ準位の位置によっては、バンド的な振る舞いをする可能性があり
    とありましたが、この仮想共鳴状態というのは、2次摂動を考えるときに出てくる「中間
    状態」のようなもの介して、考えている遷移と共鳴状態にあるというような描像でしょうか?
    具体的な描像がよくわからないので、参考文献を教えていただけると幸いです。
    (文献検索をしてみたのですが、該当するような論文が見つからなかったので。)
    よろしくお願いします。
    ----------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 3 Feb 2012 21:39:10 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
     Ce,Yb, Uなどと他の金属等との化合物の中には、f電子系は価数揺動を与えるだけで なく、遍歴性をもって結晶中を移動することが出来る物があります。高濃度化合物にお けるdense Kondo stateにおいて低温では全f電子のモーメントが消滅し遍歴電子の挙動 に移ることができます。
    このときの遍歴f電子状態の有効質量は通常金属の100倍から10 00倍の重いフェルミ粒子となります。Kondo状態というのは局在性の3d電子と遍歴性の 伝導電子が結合してスピンシングレットを作る状態で、フェルミ準位付近に状態密度の ピークを作り、近藤共鳴と呼ばれています。
    4f電子系でも5dバンドとこのような近藤共 鳴状態を作っていると考えられます。こういう状態では、f電子もあるときは遍歴電子 となりあるときは局在電子となり、両状態の間を行き来するのです。
    これを私は仮想共 鳴状態と述べたのです。
    半導体の場合フェルミ準位がどこに来るかによって変わると思 います。
    参考書:安達健五「化合物磁性 遍歴電子系」(裳華房、1996)p394
    解説:日本物理学会誌42 No.8 (1987) 重い電子系特集
       上田和夫:固体物理26 (1991) p101
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    Date : Sun, 05 Feb 2012 11:34:12 +0900
    AA1: Sです。詳しい解説、大変勉強になりました。
    また、ご紹介いただいた文献は、早速読んでみたいと思います。
    ありがとうございました。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Fri, 3 Feb 2012 22:28:57 +0900
    A2':S様、佐藤勝昭です。
     私は、あなたと同じ疑問を抱いていて、1985年に書いたPyriteについてのレビュー論 文で、通常の半導体のEgの求め方を使うことを批判しております。
    K.Sato: Pyrite Type Compounds - with Particular Reference to Optical Character ization; Prog. Crystal Growth and Characterization Vol.11 (1985) pp.109-154.
    該当部分(pp.137-139)をpdf化したものを添付します。お読みください。
    ------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 05 Feb 2012 11:38:00 +0900
    AA2: まさに知りたかったことが書いてあり大変参考になりました。紹介していただいたレビュー の掲載されている文献は、当方の図書館に蔵書があることを確認したので、全文を読んで みたいと思います。
    本当にありがとうございました。
    今後ともよろしくお願いします。
    ------------------------------------------------------------------------------------

    1262. PZTのMPB(相境界)の結晶構造と物性

    Date : Sun, 12 Feb 2012 18:32:01 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    「物性なんでもQ&A」のHPでいつも勉強させていただいております。
    K**大学学部4年生で、強誘電体材料勉強しているY*と申します。
    (webにupする際は匿名でお願いします)
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させていただきます。

    PZTのMPB組成に関する質問です。
    ①結晶系に関する質問
    MPB組成における結晶系を正方晶と菱面体晶の混晶であると考える場合と単斜晶であると考える場合で、MPB組成におけるPZTの特性を議論する上での差はあるのでしょうか?

    ②特性に関する質問
    MPB組成でなぜ電気特性(残留分極、誘電率、圧電特性)が最大値になるのか教えてください。
    -----------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 12 Feb 2012 21:32:10 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     私は、1964-1966年頃(大学院修士課程時代)に強誘電体を研究していた経験があり ますが、MPBについては1971年のJaffeの教科書で初めて出てきたので、私はすでにNHK 技研で磁性体を研究していたため、ちゃんとフォローしていません。MPBにおいて何が 起きているかは、学部4年生には、難しすぎる内容ですね。卒論生は、知らないのは当 たり前ですから、指導教員や大学院の先輩にバンバン聞きましょう。
    また、ギョーカイ語の解説については、
    http://www.geocities.jp/kusumotokeiji/yougo.htm のサイトを参考にしてください。
     さて、ご質問①の相境界(MPB)付近の結晶構造についてですが、添付の論文(B. Nobeda et al., in Proc. workshop on Fundamental Physics of Ferroelectrics, 2000)を読んでいただきたいと存じます。
    この論文によれば、MPB付近では正方晶相、菱面体晶相とも純粋の単一相ではなく、局所的な結晶構造は変形を受けて、単斜晶的になっており、全体が単斜晶相になるための前駆体となっていると言うのです。
    このようなことは、大変高品質の単結晶において突き止められたものですから、普通のセラミクスのような多結晶体では、混相状態が現れて、単斜相ははっきりしません。単斜相を取り出して物性値をきちんと測定すれば、正方晶相、菱面体晶相の混相との物性の違いははっきりするのでしょうが、今のところ、そのような研究はなさそうですね。
     ご質問②ですが、そもそもMPBで誘電率、圧電係数が最大値になるということは、実験から得られた経験則なのです。
    なぜ最大値をとるかという理由は、おそらくご質問①と関係しているのではないかと思われます。そもそも変位型の強誘電体の強誘電相は、対称性が低くなったことによって生じています。相境界付近の結晶相が局所的に、より低対称になっていることが、誘電率や圧電係数を大きくしているのではないかと推察します。
    以上は、あくまで、私の推察に過ぎません。あなたの指導教員なら、もっと最近の進展をご存じかもしれません。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 12 Feb 2012 23:01:50 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生、MPB組成について質問させていただいたY*です。
    早速の返信ありがとうございます。
    MPB付近の結晶構造に関する論文をありがとうございます。
    自分では見つけられなかったのでとてもうれしいです。
    また、特性についても分かりやすい説明をありがとうございました。
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------

    1263. 縮退半導体は光るか

    Date : Sat, 17 Mar 2012 23:40:52 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    初めてメールいたします。A社Oと申します。webへアップの場合、匿名を希望します。
    物性なんでもQ&AのHPを拝見し、お伺いしたいことがありメールいたしました。
    縮退半導体についてです。
    縮退半導体を光励起した場合、一般的には発光は観測されないものなのでしょうか?
    例えば、縮退していない状態では、光励起による発光が観測される物質が、縮退することで発光がなくなるというようなことはあるのでしょうか?
    縮退半導体を光励起した際の電子の振る舞いのイメージがわかりません。
    曖昧な質問で恐縮ですが、アドバイスいただければ幸いです。
    以上、よろしくお願いいたします
    -------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sun, 18 Mar 2012 21:17:41 +0900
    A: O様、佐藤勝昭です。
     縮退半導体の縮退とは、必ずしもフェルミ準位が伝導帯の中にある必要はありません。フェルミ分布
        f(E)=1/{1+exp((Ef-E)/kT)}
    の分母の1が無視できない場合を言うのです。
    (私の論文 
    K. Sato et al.: Effect of Fermi Level Motion on the Optical, ESR and Transport Properties of CuInSe2; Jpn. J. Appl. Phys. 35, Part 1, [4] (1996) 2061-2067  のFig.3(c)のケースがそれにあたります。)
     さて、お尋ねの「縮退半導体はフォトルミを示すか」ですが、縮退半導体は、電気的には金属的ですが、光学的には半導体です。
    光吸収の始まるエネルギー(光学吸収端)が非縮退の場合より高くなります。これをバーステイン・モス シフトといいます。この場合にもEg からEfの幅の広いフォトルミネッセンスが観測されています。
    くわしくは、添付の宮崎大学の碇(いかり)教授の解説およびその引用文献をお読み下さい。
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    Date : Sun, 18 Mar 2012 21:40:35 +0900
    AA: 佐藤勝昭様、Oです。
    ご返信ありがとうございます。
    非常に参考になりました。頂いた文献をもと縮退半導体についての知識を深めたいと思います。
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    Date : Sun, 18 Mar 2012 22:25:35 +0900
    A': O様、佐藤勝昭です。
    「縮退していない状態では、光励起による発光が観測される物質が、 縮退することで発光がなくなるというようなことはあるのでしょうか?」 というご質問にお答えしていませんでしたね。たしかに発光はなくなり ませんが、発光はかなり弱くなるようです。
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    Date : Wed, 21 Mar 2012 20:59:38 +0900
    Q2:佐藤勝昭様、Oです。
    追加でのご回答ありがとうございます。
    恐縮ですが、発光が弱くなるということに関して、また質問させてください。
    まず、私は、光励起をすると、光があたったすべての電子が励起状態に遷移するという認識を持っています。(これが間違いかもしれませんが)
    価電子帯から、バンドギャップ内の発光準位に電子が励起され、価電子帯に落ちると いう発光機構を考えますと縮退してすでにその発光準位に電子が占められていようと、 光励起の際に、発光準位の電子は上の準位へ、価電子帯の電子は発光準位へと 繰り上がって遷移し、縮退していない状態(発光準位が元から占められていない) と同様の発光強度が観測されるのでは?と考えています。
    もしかしたら、とても幼稚な質問なのかも知れませんが何かお教えいただければと思います。
    以上、よろしくお願いいたします。
    --------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 21 Mar 2012 21:43:11 +0900
    A2: 様、佐藤勝昭です。
     いま、n型縮退半導体の場合を考えますと、価電子帯の電子が伝導帯に励起されて価電 子帯にできたホールを不純物準位の電子が埋めてしまうと考えられます。この再結合は 、不純物中心付近で局所的に起きますからバンド間遷移ではありません。配位座標モデ ルが適用され、非発光再結合することが多いのです。ホールが不純物準位の電子で埋め られると、伝導帯に励起された電子が再結合する相手のホールが少なくなっているので 、発光が弱くなるのです。
    --------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Sat, 24 Mar 2012 00:44:58 +0900
    AA2: 佐藤様, Oです。
    ご回答ありがとうございます。
    電子の動きのイメージが出来ました。
    また、困ったときに頼らせてください。
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    1264. 誘電体の吸収の原因

    Date: Sat, 07 Apr 2012 19:01:24 +0900
    Q: 誘電体の吸収はミクロ的にみて、どのような現象が起きているのでしょうか?
    大抵の教科書は電気伝導度が十分小さいからとか、電子が移動する際に「摩擦のようなもの」が生じるなどが述べてあります。
    しかし私は、誘電体中の伝導度は0だと思っており、さらに電子の「摩擦のようなもの」というのが全く想像できません。
    誘電体の吸収についてどのような物理現象が生じているかご教授願えませんでしょうか。
    K大学3回生K
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    Date : Sat, 7 Apr 2012 21:32:15 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     誘電体の「吸収」とは、高周波の吸収ですか?光の吸収ですか?
    あなたの文脈から診て、高周波の吸収だとしてお答えします。
    誘電体の複素誘電率εは実数部ε'と虚数部ε"を使って、
     ε=ε'+iε"
    と表すことができます。実数部が普通のキャパシタのCに寄与する誘電率です。
    一方、虚数部が誘電損失と呼ばれ、高周波の「吸収」のもととなります。
    この誘電損失には、あなたのいうように直流伝導度がゼロでも起きます。
    例えば、電子レンジ(マイクロ波オーブン)では、直流的な電気伝導度がゼロであっても 誘電損失で食品が暖まりますよね。
    佐藤勝昭:理科力をきたえるQ&A p.10 参照)
    これは、食品中の分子のもつ電気双極子がマイクロ波で強制振動しようとしても、振動について行けなくなって、 双極子の+電荷と-電荷の相対運動の位相がマイクロ波の位相より90度遅れます。
    これにより食品を流れる変位電流とマイクロ波の電界が同位相になり、損失を生じるのです。
    教科書は、この双極子の運動の位相の遅れのことを、摩擦のようなものと表現したのでしょう。
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    1265. シリカのエネルギー準位図

    Date : Tue, 8 May 2012 11:13:04 +0900
    Q: 佐藤勝昭様、S社松本です。
    突然のメールで大変申し訳ございません。
    シリカ(SiO2)のエネルギー準位図を探していたところ、 インターネット上でケイ素のエネルギー準位図を見つけました。
     
    太陽電池のための半導体入門(P.139)
    シリカ(SiO2)のエネルギー準位図を持っている機関など、もしご存知でしたら教えていただくことはできませんでしょうか。
    大変お忙しいとは存じますが、もしお心当たりがございましたら、是非、お知らせいただきたくお願い申し上げます。
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    Date: Tuesday, May 08, 2012 18:10 +0900
    A: 松本様、佐藤勝昭です。
     シリカとは溶融石英(石英ガラス)のことです。アモルファスなので、水晶(結晶石英)のような明瞭なバンド構造はもちません。
    バンドギャップは、不純物によって異なるようですが、8.9eVとされています。 詳細は、添付の論文をお読みください。
    R.H.French, R.Abou-Rahme, D.J.Jones, L.E.McNeil: Absorption edge and band gap of SiO2 fused silica; Ceramics Trans vol.28, p63 (1992)
    SiO2に埋め込んだSiのドットのバンド構造については
    North Carolina Univ. のサイトに示されています。
     このご質問は、佐藤勝昭の「物性なんでもQ&A」への質問として扱うことをご了承ください。
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    Date : Wed, 9 May 2012 09:24:54 +0900
    AA: 佐藤勝昭様。S社松本です。
    対応、誠にありがとうございます。
    即答いただきまして感謝申し上げます。
    ご提示頂きました情報をよく確認してみます。
    今回は「物性なんでもQ&A」のコーナーがあることを知らずしての照会でした。
    もちろん、公開は問題ありません。
    重ねて御礼申し上げます。
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    1266. ニオブ酸リチウム(LiNbO3), タンタル酸リチウム(LiTaO3)の仕事関数

    Date : Thu, 10 May 2012 12:00:23 +0900
    Q: 物性なんでもQ&A御中、京都医療科学大学 林茂樹です。
     LiNbO3(ニオブ酸リチウム),LiTaO3(タンタル酸リチウム)の仕事関数を調べましたが分かりません。
    室温での仕事関数が分かりましたらお教え下さい。
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    Date : Fri, 11 May 2012 00:46:15 +0900
    A: 林茂樹様、佐藤勝昭です。
     LiNbO3(LN)やLiTaO3(LT)のような強誘電性絶縁体については、そのままでは、Kelvin Probe法のような直接仕事関数を
    測定する方法では困難です。光電子分光も帯電の問題があり、信頼性のあるデータを得ることが難しいと考えられます。
    そのため、ハンドブックなどに仕事関数が載っていないのでしょう。
     間接的な方法として、接合を作ってその整流特性から判断するやり方があります。
    S. M. Guo, Y. G. Zhao, C. M. Xiong, and P. L. Lang: Rectifying I-V characteristic of LiNbO3/Nb-doped SrTiO3
    heterojunction; Appl. Phys. Lett. 89, 223506 (2006)
    これによれば、Li 欠損のため、LNはp型になる、と書いています。Fig.3(左図)の上の方に、このp型になった
    バルクLNのバンド模式図が出ていて、フェルミ準位はVBM(価電子帯頂)のすぐ近くなので、CBM(伝導帯底)から
    バンドギャップ分丸々下の、1.1+3.9=5 eV 程度の仕事関数、という想定で図が描かれています。
     従って、Li欠損のせいでフェルミ準位が価電子帯の頭に来ると、仕事関数は5 eV 程度になると考えられます。
    LNの電子親和力に関しては、PEEMによる研究があり、分極によって親和力が大きく変化することが報告されています。
    W.-C. Yang, B. J. Rodriguez, A. Gruverman, and R.J. Nemanicha: Polarization-dependent electron affinity of LiNbO3 surfaces; Appl. Phys. Lett. 85, 2316 (2004)
     なお、LTについては、適切な論文が見当たりませんでした。
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    Date : Fri, 11 May 2012 09:45:30 +0900
    AA: (独)科学技術振興機構(JST)佐藤勝昭 先生
     ご丁寧な回答いただき有り難うございます。
    我々は強誘電体材料として使っているだけなので、仕事関数の測定がかくも面倒なものとは知りませんでした。
    LNに関してはロシアの論文で仕事関数の温度依存性を見た程度でしたので助かります。
     LTに付いては最近電子材料として注目されてきていますが、未だ一般的には使われていないようで論文も少ないようです。
    また、何か情報がございましたら教えていただければ幸いです。
     有り難うございました。
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    1267. 酸化スズ(SnO2)ナノワイヤの電極への移送方法

    Date : Mon, 21 May 2012 00:22:39 +0900
    Q: 佐藤 勝昭様
    はじめまして。
    私、E*大学博士前期課程のK*と申します。
    (WEBに記載時は、大学名及び名前は匿名でお願いします)

    私は、大気圧CVD法によってSi基板上にSnO2ナノワイヤー(NWs)を作製し、 比表面積を増大させことによるガスセンサの高感度化を目指す研究を行っています。
    今までは、NWsを高密度に成長させることに研究の重きを置いていましたが、 今後は、実際にガスセンサとしての応答評価を検討中です。

    そこで、Si基板上に作製したSnO2NWsを、Pt電極をプリントしたセラミックス基板上に 移し替えたいと考えているのですが、何か良い方法はないでしょうか。
    現在、無理やりSi基板上からNWsを剥がしたものを、揮発性の溶媒を介して滴下する方法を検討中です。

    よろしければご回答お願いいたします。
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    Date : Mon, 21 May 2012 11:16:46 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     私が研究総括をしているJSTさきがけプロジェクト「次世代デバイス」第1期生の深田 直樹さん(NIMS)はSiの縦型トランジスタを目指してSiナノワイヤを研究され、現在はFI RSTプログラムで研究しておられますので、メールで問い合わせたところ、次のような 回答がありました。
    「ナノワイヤの移送方法ですが、E大の人とおそらくほぼ同じ方法だと思います。
    ナノワイヤが成長した基板をアルコールの入った容器に入れ、超音波をかけています。
    そうすると、一部のナノワイヤを基板から取り除くことができます。
    私の場合、1本1本のナノワイヤにきれいに電極付けを行う必要があるため、
    1)予め番地を付けた基板上に低密度でナノワイヤを塗布し、
    2)CADで電極をデザイン、
    その後EBリソにてパターンを作製しています。」
    とのことです。
     指導教員を通じて、深田さんに直接尋ねられてはいかがですか。
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    Date : Mon, 21 May 2012 11:57:48 +0900
    AA: 佐藤 勝昭様
    E大学のKです。
    お忙しい中、SnO2NWsのガスセンサ応用の件に関しての 丁寧なご返答をありがとうございます。

    SnO2NWsに移送に関して、早速アルコールの入った容器に作製した試料を入れ、 超音波をかける方法を試してみたいと思います。
    また、場合によっては指導教員を通じて深田直樹様に直接 尋ねることを検討してみます。
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    1268. ZnMn2O4は正スピネルか逆スピネルか

    Date : Tue, 22 May 2012 15:03:41 +0900
    Q: 佐藤様
    突然のメール失礼します。 K*大学の理学部に所属しているO*と申します。
    大学院入試の勉強のため専門とは幾分違った分野の勉強をしていて調べてもわからなかったため質問させていただきます。

    ZnMn2O4等の結晶のMnイオンはスピネル型かもしくは逆スピネル型をとるのかという問題です。

    結晶場分裂においてMnイオンが四面体をとるか八面体をとるかで安定性は変わってくると思いますが、今回のMnイオンは三価であるため(3d)4の配置であり、強い結晶場か弱い結晶場でフントの規則に従うかどうかがで安定化が変わります。
    錯体の場合は分光化学系列で配位子を見ればだいたい高スピンか低スピン(強い結晶場か弱い結晶場)かわかるのですが、このような結晶(ZnMn2O4)ではどのように区別すればいいのでしょうか。
    三価のマンガンはヤンテラーのひずみもあるため少し複雑と思います。
    また、ZnFe2O4 になれば結晶系が変わるというのも3dの電子配置から予測できるのでしょうか。
    勉強不足で申し訳ないですが、よろしくお願いします。
    また、この範囲の良い参考書があれば教えていただきたいです。いまのところ、シュライバー無機化学、基礎固体化学、錯体化学の基礎は見ております。
    掲示板へのアップは匿名でお願いします。
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    Date : Wed, 23 May 2012 01:35:19 +0900
    A: O君、佐藤勝昭です。
     ご質問は「ZnMn2O4は正スピネルか逆スピネルか」および、「配位子場・ヤンテラーの観点からZnMn2O4が正スピネルか逆スピネルかを判定できるか」でしょうか?
    「ZnMn2O4は正スピネルか逆スピネルか」に関しては、「正スピネルである」というのが回答です。
    「配位子場の観点」では、酸化物のほとんどは高スピンです。Mn^3+(3d^4)は正八面体中でt2g軌道に3個、eg軌道に1個入り、基底状態は5Eです。
    従って、ヤンテラーひずみを受け低温相では正方晶でc/a=1.14と書かれています。1200K以上では立方晶になります。(安達健五「化合物磁性 局在スピン系」p.150)
    四面体配位ではMn3+はe軌道に2個、t2軌道に2個入り、5T2が基底状態です。基底状態の軌道の対称性が異なるので、逆スピネルになりにくいのかもしれません。
    なお、CuFe2O4は典型的な逆スピネルです。Fe3+(3d5)の基底状態は6A1なのでヤンテラーひずみを受けずc/a~1です。
    Fe3+は四面体配位でも高スピンで基底状態は6A1ですから、どちらのサイトにも入りやすいからでしょう。
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    Date: Mon, 28 May 2012 09:44:47 +0900
    AA: 佐藤様
    返信がおそくなってしまい申し訳ございません。
    お返事ありがとうございます。
    基本的に、スピネル型等の酸化物は高スピンと考えていていいのでしょうか。
    やはり、このような、酸化物も錯体と同様にd軌道のエネルギーから安定性を予測できるというのがわかりました。
    ありがとうございました。
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    1269. GaN LEDをフォトダイオードとして使用したとき600nm光に感度があるか

    Date : Mon, 28 May 2012 17:21:08 +0900
    Q1: 佐藤勝昭様
    初めまして。いつも物性Q&Aを拝見しております。
    P*株式会社 S*と申します。Web掲載時は匿名を希望します。

    LEDに光を照射すると,フォトダイオードのようにふるまい,センサとして利用できると思います。

    いま,機器の構造上やむを得ない事情により,GaN青色/紫外LEDを,上記のようにセンサとして利用し,波長600nm程度の光を受光したいと考えております。
    しかし,GaNのLEDは,この波長の光に感度を持たないのではないかと想像しています(試したわけではありません)。

    発光波長と,受光感度の長波長側は,材料のバンドギャップで決まるもので,『LEDを受光素子として使う場合,発光波長よりも短波長の光にしか感度がない』 という理解です。この理解は正しいでしょうか。
    これが正しいとして,しかし,どうにかして,600nmの光に感度を持たせたいのですが,不可能でしょうか。
    例えば,順方向降下電圧ぎりぎりの順バイアスを加える,など。
    もちろん,本来のフォトダイオードのような高感度を期待しているわけではなく,多少なりともセンサとして動作してくれれば良いのです。
    ご教示いただくたく,よろしくお願いいたします。
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    Date : Mon, 28 May 2012 19:19:04 +0900
    A1: S様、佐藤勝昭です。
     InGan/GaN pn接合の分光感度曲線は添付図1の通りで500nmより短波長にしか感度がありません。
    (出典:Wang ei al.: High Detectivity InGaN/GaN Multiquantum Well p/n Junction Photodiodes;
    Chin.phys.lett.26, 107302(2009))
    なお、InGaN/GaN MQWの分光感度曲線は添付図2のようにバイアス依存で、逆バイアス印加によって
    長波長側の応答が上がっていますから、
    MQW構造のLEDであれば、逆バイアス印加で弱い応答が得られる可能性があります。
    (出典:Chiou et al.:High Detectivity InGaN?GaN Multiquantum Well pin Junction Photodiodes;
    IEEE J. Quantum Electronics 39, 681 (2003))
    GaInN/GaN MQW 構造では2光子吸収が起きているのではないでしょうか。
    おそらくピークは800nm位にあるのではないかと存じます。
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    Date : Tue, 29 May 2012 11:56:29 +0900
    Q2: MQW構造のLEDを逆バイアスで使うということをヒントに,実験で確認してみます。
    また,GaNのバンドギャップである3.4eV,またはInGaNの3.0eVよりも低エネルギな光に対して応答を持つのは,どのような理由でしょうか。
    バンドギャップを境に,すとんと感度がなくなるというものだと考えておりました。
    お手数ですが,回答いただければ幸いです。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Tue, 29 May 2012 22:21:40 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
     本来のバンド間遷移では、バンドギャップ以下のエネルギーの光子では吸収がないはずですが、 below-gap absorptionが見られる場合があります。これには、いくつかのケースが考えられます。
    (1)2光子吸収 2つの光子のエネルギーの和がバンドギャップ以上のとき吸収がおきます。
     弱い吸収ですから、通常レーザ光の場合でないと観測できません。光強度の2乗に比例します。
    (2)ギャップ内準位を通してbelow-gapの光子エネルギーで吸収が起きます。光強度に比例します。
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    Date : Thu, 31 May 2012 09:01:19 +0900
    AA: 佐藤様 Sです。
    ご回答ありがとうございます。
    below-gapという言葉は初めて接しましたが,よく調べてみたいと思います。
    たいへんお手数をおかけしました。ありがとうございました。
    今後ともよろしくお願いいたします。
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    1270. ルビーのR1線の圧力効果の配位子場理論による説明

    Date : Wed, 27 Jun 2012 22:03:00 +0900
    Q: 佐藤勝昭様
    はじめまして、O*大学修士2年のT*と申します。(Web上では匿名でお願いします)
    ルビーの蛍光スペクトルについての配位子場理論を調べていたところ、佐藤様のHPを知りました。
    さっそくですが、「ルビー蛍光のR線が圧力印加によってなぜ長波長側にシフトするか」について教えていただきたいです。
    ・R線は2E→4A2 の遷移時に余分なエネルギーを光で放出したもので、R線のピークの波長位置は2Eと4A2とのエネルギー差に対応すること ・田辺・菅野ダイヤグラムを見ると、配位子場の強さDqの増加に伴って2Eと4A2とのエネルギー差が増加すること。
    この2点まで理解できたのですが、ルビーに圧力をかける(原子間距離を縮める)とDqが増加し、2Eと4A2とのエネルギー差も増加しR線の波長はエネルギーの高い短波長側にシフトするように直感的には思えます。
    しかし実際のR線は圧力印加により長波長側にシフトします。
    田辺・菅野ダイヤグラムにおいて横軸縦軸共にラカーパラメータBで規格化されており、Bも圧力印加により変化することが原因だろうと私は考えました。そこで以下の2つの論文を読んでみました。
    (Stephens and Drickamer, 1961 Effect of pressure on the spectrum of ruby)
    (Langer and euwema, 1966 Pressure shift of the Cr levels in Al2O3)
    これらによると圧力上昇に伴いDqの値は上昇、Bの値は減少する方向に進むらしいです。
    従って、田辺・菅野ダイヤグラムの横軸Dq/Bは圧力上昇に伴って増加するので、やはりエネルギー差が広がる方向に進むとしか考えられず混乱してしまいました。
    長くなりましたが、圧力印加によってR線が長波長側に移動する理由をご教授いただきますようよろしくお願い致します。
    また可能でしたらラカーパラメータBの物理的意味とBで規格化する理由も簡単に教えていただければ幸いです。
    よろしくお願い致します。
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    Date : Thu, 28 Jun 2012 01:17:16 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。私は、これまで、ルビーのR1線の圧力効果について、疑問を抱いたことがありませんでした。
    なぜなら、2E準位と4A2準位のエネルギー差は、わずかながらDq/Bの増加関数になっており、加圧するとO2の8面体が縮むためDqは当然増えますが、Bの増加がDqのそれを上回るためDq/Bは減少し2E準位と4A2準位のエネルギー差もわずかに減少し、結果としてR線の波長が長波長側へ(フォトン・エネルギーが減少する方向へ)シフトするという説明を、アプリオリに受け入れていたからです。
    原論文On the Absorption Spectra of Complex Ions II" by Y. Tanabe and S. SuganoJ. Phys. Soc. Jpn. 9 (1954) 766-779
    あなたの調べた実験結果に従えばDqは増えBは下がるのですからこの説明は間違いということになりますね。
    配位子場理論はあくまでパラメータ理論なので、もう少し原理に帰って考え直す必要がありそうです。
     実は、以前。私たちはルビーのR線の磁気光学効果を測定し、磁界中でのline shapeが非対称になること、MCPL(magneto-circular photoluminescence)の積分強度が有限の値をもつことなどの異常を発見し、単純な配位子場理論では説明できないことを報告し ています。K.Sato et al.:J.Phys.Soc.Jpn.61,3803(1992)
    基底状態の分裂の圧力依存性なども考慮する必要があるかもしれません。
    ラカーパラメータBの意味ですが、クーロン相互作用の強さを表すといってよいでしょう。遷移金属イオンと配位子の距離が近づくと、遮蔽が進んでクーロン相互作用は弱くなるので、小さくなるのが自然です。
    半導体中の3d遷移金属イオンの場合、Bはかなり小さくなっているとされています。
    Dq/Bを使う理由については、上村・菅野・田辺「配位子場理論とその応用」の§10.1 p223の下の方に書いてありますが、かいつまんで言うと、B,Cパラメータが多いとグラフに表しにくいので、C/B=γを固定すると、E/B対Dq/Bのグラフに単純化できるということです。 あなたの質問は、本来理論家にすべきものですから、しかるべき理論の先生にに尋ねておきたいと思います。
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    Date : Thu, 28 Jun 2012 15:00:23 +0900
    Q2: 佐藤様
    昨日メールしました大阪大学のTです。
    早速の回答ありがとうございます。
    ラカーパラメータについてご丁寧に解説していただいてありがとうございました。
    Bの減少は遮蔽の効果が効いてくるのですね。他に足りない部分は教科書を読んで勉強してみます。
    R線の圧力シフトについて理論家にお尋ねいただけるとのことで、佐藤様のご厚意に大変感謝いたします。
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    Date : Fri, 29 Jun 2012 17:51:58 +0900
    A2: 君、佐藤勝昭です。
     菅野先生の愛弟子の理論家である日大の里子教授から以下のような回答がありました。
    要するに、R1線(2E→4A2)の縦軸のE/Bが一定なので、Bが減少するとEも減るというのが回答です。
    =================================================
     まじめに考える若い方?が少ないなか、T君立派です。今後もしっかり勉強してくださいね。
    ルビーのスペクトル、14,400cm-1あたりのR線は4A2->2E、2T1状態、18,000cm-1あたり のU帯は4A2->4T2状態への遷移に対応しています。圧力をかけると、R線は長波長側に 、U帯は短波長側にシフトします。
      なぜかをまず、説明しましょう。
      (1)基底状態の4A2状態は、T2軌道の3つの軌道に同じ向きスピンがそれぞれに一つずつ入った状態でCrイオンの周りを運動しています。
      (2)2E、2T1状態は、T2軌道の3つの軌道に、2つが同じ向きに、一つだけ反対の向きに入った状態でCrイオンの周りを運動しています。
      したがって2E状態の方が、反対向きの電子間にはパウリの禁制律がないため、近寄る傾向があるため、電子間クーロンエネルギーが大きくなります。 2Eと4A2状態間のエネルギー差は配位子場理論とその応用p379から、9B+3C=B(9+3γ)=22.5程度です。10Dqは同じt2軌道3個ですから、あまり関係ありません。
      (3)4T2状態はt2軌道に2個、e軌道に1個、同じ向きスピンの入った状態です。したがって、4A2状態とのエネルギー差は同じくp379より12B+10Dq 程度です。
      圧力をかけると、Crと酸素間の距離が短くなり、Crのt2軌道、e軌道は周りの酸素領域へと軌道が広がり、その結果、t2、e軌道間のクーロン相互作用は減少します(B,Cは減少)。
      一方、10Dqは周りのOイオンの負電荷が近づくため増加します。 よって、R線は長波長側へ、U帯は短波長側にシフトします。
      お尋ねの、田辺・菅野ダイヤグラムから見てみましょう。2E、2Tはほとんど10Dq/B依存はなく水平です。縦軸がE/B=22.5程度ですから、E=22.5B。圧力でBの減少により 、長波長側にシフトします
    (ダイヤグラムの2E状態エネルギーはE=22.5BにDqの影響がプラスされるが、Dqの係数は小さい。その原因は同じくp379ページから2E状態にe軌道が少し混じるため)。
      それに対しU帯はのエネルギーE=B(12+10Dq/B)で、田辺・菅野ダイヤグラムでは傾き10の直線です。E=12B+10Dqで、圧力をかけたとき、Bの減少より10Dqの増加がまさり(Dqの係数が10と大きい)、Eは増加し、短波長側にシフトすることになります。
      Rubyの圧力効果の電子状態計算がDV-Xα法でされており
        Ohnishi &Sugano: Theoretical studies of high-pressure effects on optical properties of ruby; Japanese Journal of Applied Physics 1982,21,309-311
      にありますので参照ください。
      配位子場理論にラカーパラメータA,B,Cを使う理由は歴史的なことが原因でしょう。コンドンパラメータF0、F2、F4でも同じです。クーロン相互作用を原子のように1/rと すると、クーロンパラメータが3つ必要です。
      その当時、電子間相互作用の見積もりが難しいため、研究者によりA,B,C,あるいはF0,F2,F4,あるいはE0、E1,E2が用いられていました。田辺・菅野ダイヤグラムはエネル ギーがDq,B,Cで描かれるため、C/B=γ一定として縦軸E/B,横軸Dq/Bとして整理し、ダイヤグラムにしたのだと思います(詳細は聞いておりません)。しかし、一般には、クー ロン相互作用パラメータは3つでは正しくなく、詳細にみると実際のスペクトルと定量的に合わないことも多々ありますが、そのあたりは、
     拙著 新しい配位子場科学 物理学・化学・生物学の多電子論 第2章 講談社サイエンテフィック 1998年10月発行 を参照ください。
      ちなみに、田辺・菅野ダイヤグラムの出発は、田辺先生、菅野先生、学部の高学年で何か研究したいと学生達で小谷先生に押しかけ、テーマを貰い、じゃんけんでテーマ を分けたことから始まったそうです。そして田辺先生、菅野先生二人で計算をはじめ、それぞれ計算をした結果を比べあい、一致するとそのたびに祝杯をあげたそうです。物 理の良き時代だったと思います。
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    Date : Sun, 1 Jul 2012 21:26:29 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    ルビー蛍光について質問させていただいたO大学のTです。返信が遅くなりまし て申し訳ありません。

    2Eと4A2状態間のエネルギー差に10Dqがあまり関係しないことが完全に盲点でした。
    わかりやすく解説していただきとても参考になりました。
    佐藤先生、里子先生のお二方に厚く御礼申し上げます。

    以下は全く以て余談ですが、私は大学院で地球科学を専攻しておりまして地球内部状 態に相当する超高圧実験を行っています。
    試料にかかる圧力を測定する際に、圧力によるルビー蛍光のR線の波長シフトを用い て測定しています(ルビー蛍光法)。
    恥ずかしながら、私の中では今までこのルビー蛍光法が”圧力という信号を入力すれ ば波長シフトという信号を出力するブラックボックス”になっていました。
    私の研究の主題は地球科学であり、ルビーの性質について深く知らなくても研究を進 められたためです。
    しかし理学部で物理を学んだ学生に求められていることを就職活動を通じて考えるよ うになり、物事の原理原則から考えることのできる人間になりたいと思うようになり ました。
    それがきっかけで身近に使っているルビーの性質を調べてみたところ、自分の無知・ 無勉強を知らしめられる結果となりまして、先生のお力をお借りした次第です。

    Q&Aのコーナーを通じて今まで自分が疑問だったことを論理的に物理的に理解できる ようになり物理の面白さを再認識しました。
    この度はありがとうございました。
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    1271. パワー半導体における伝導度変調

    Date : Sun, 01 Jul 2012 00:56:32 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
     初めてメールいたします。H*社のY*と申します(HPでは、匿名でお願い致します)。
    物性なんでもQ&AのHPを拝見し、お伺いしたいことがありメールいたしました。

     私は、現在パワーデバイスの設計部署に勤務しております。以前は、弱電の通信・計測分野でGHz帯のアナログカスタムICを設計(回路設計・レイアウト手配置設計)していたのですが、業務命令で1年ほど前に転勤しパワー半 導体を手掛けるようになりました。パワー半導体は初めての分野なので、教科書を読んで勉強をしているのですが、同じ半導体でも微妙に考え方が違うらしく、いまいち分からない部分が出てきて、悩んでいます。

    1)伝導度変調はどのような現象かが良く分かりません。
     パワー半導体の教科書に出てくる『伝導度変調』という現象が、どのようなものなのかが、いまいち理解できずにいます。教科書によると、現象としては、電子とホールがベース領域に注入され、ベース領域でプラズマ状態 (これも良くわからないのですが)が起き、オン抵抗値が下がると書いてあります。この場合、電子とホールは再結合して、無くなってしまわないのでしょうか。(教科書には、ただ伝導度変調が起こるとしか書いてありません)また、「変調」という言葉の意味は、どのようなものなのでしょうか。通信分野の用語である、AM変調とかデジタル変調とは意味あいが違うような気がしております。

    2)パワー半導体IGBTと、高周波用バイポーラトランジスタのベース構造の違い、耐圧持たせ方の違いについて
     パワー半導体IGBTは、MOSFETとPNPトランジスタの等価回路で表すことが出来、そして、パワー半導体IGBTでは、PNPトランジスタのN部分であるベースが厚いことによって耐圧 数1000V程度を実現出来ると教科書 に書いてありました。
     しかし、私が大学の電子通信工学科で受けた講義では、トランジスタはコレクタから電子が注入され、注入された電子のほとんどは、『薄い』ベース領域を突き抜けてエミッタに電子が到達することでCE間に電流が流れると教 わり、今までそのように理解していました。また、弱電分野では、トランジスタの耐圧はコレクタの厚み(空乏層)で持っているものと理解しておりました。
     パワートランジスタと高周波用トランジスタとでは、電流が流れる仕組み耐圧の持たせ方の仕組みが根本的に違うように思います。どのように考えれば良いのでしょうか。

    お忙しい所申し訳有りませんが、差し支えなければ、アドバイスいただければ幸いです。
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    Date : Sun, 1 Jul 2012 07:19:37 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
     伝導度変調のメカニズムについては、JSTが出しているWeb-learningが役立ちます。
    Web Learning plazaのURLは
    http://weblearningplaza.jst.go.jp/です。
    このページから 電気電子→パワーエレクトロニクス→IGBTとすすみ、ここの第7章にアクセスしてください。
    アニメーションを使ってやさしく解説されていますので一度お読みください。
    あるいは直接下記にアクセスしてください
    IGBT
    これを受講されてわからなければ再度お尋ねください。
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    Date : Mon, 02 Jul 2012 22:44:39 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    お忙しい中、メールに返信いただきましてありがとうございます。
    また、Web-learningのページを教えて頂きまして、ありがとうございます。
    Web-learningは、アニメーションでとても分かりやすく解説がされており、とても有益でした。おかげさまで、今まで書籍ではイメージが湧かなかったIGBTについて、だいぶ理解を進めることが出来ました。
    特に、IGBTでは電子とホールの両方の振る舞いが大事だということが、なんとなくですが理解できました。まだまだ消化できてはいませんが、この点に注意しながら、教科書などで勉強を進めていきたいと考えています。
    それと、Web-learningにはIGBT以外にも、色々と面白そうなトピックがあるので、参考にさせて頂こうと思います。 この度はどうもありがとうございました。
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    1272. ルビー・サファイアの電気伝導

    Date : Tue, 31 Jul 2012 16:47:11 +0900
    Q: 佐藤勝昭様  初めまして。K*社 H*と申します。Web掲載時は匿名でお願い致します。

     表題の件についてご教授頂きたく、メールさせて頂きました。
     ルビーを作るにはアルミナに酸化クロムを固溶させ、サファイアを作るにはアルミナに酸化チタンを固溶させ、工業用サファイアは高純度アルミナが一般的です。
     上記のいわゆるインクルージョンの添加により、電気伝導度に変化が現れると思うのですが、Web等を調べましても、それぞれについて調査したデータがみつかりません。
     何卒ご回答の程、よろしくお願い致します。
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    Date : Tue, 31 Jul 2012 18:00:30 +0900
    A: H様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。
    ルビーやチタンサファイアに含まれている不純物が電気伝導に影響するかというご質問ですが、結論的には、通常の数ppmオーダーの不純物では、ルビーは高純度Al2O3(コランダム)と同程度の絶縁物です。
    ルビーAl2O3:Cr3+において、Cr3+はAl3+を置換するため電荷のバランスは変わりません。
    Crは4s23d4という電子配置ですが、Cr3+になると、4s電子を2個、3d電子を1個失って、3d3+という電子配置になっています。3d準位は配位子場によって3重(スピンも含めると6重)縮退のt2g軌道と2重(スピンも含めると4重)縮退のeg軌道のエネルギーに差が生じ、t2g軌道が低く、eg軌道が高くなっています。Cr3+の3個のd電子はスピンをそろえてt2g軌道に入ります。
    そのままでは、t2g軌道は半分しか満ちていないように思えますが、もし近くのCr3+の3d電子がこのCr3+に来ると、同じt2g軌道にスピンを逆にして入らなければなりませんが、同じ軌道に2つの電子が入るとクーロン力のためにエネルギーが高くなりますから、電子が飛び移ってこれないのです。すなわちモット絶縁状態にあるのです。多電子系の電子準位は、普通のバンド図の中に書き込むことができません。
    Al2O3:Ti3+の場合は3d1なので上の話は通じないので、ちょっと、微妙ですね。ひょっとすると導電率が高くなるかもしれません。
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    Date : Wed, 01 Aug 2012 09:51:13 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
     ご多忙の中、ご返信ありがとうございます。
     まずは電荷のバランスを変える必要があり、その添加物はppmオーダー以上の添加が必要ということが分かりました。
     大変お手数をお掛け致しました。今後ともよろしくお願い致します。
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    1273. NaClの価電子帯と分子軌道

    Date : Sat, 18 Aug 2012 04:53:20 +0900
    Q: 佐藤先生
     M*社のK*と申します。HPを見てメールをしました。
    基本的な質問で恐縮です。イオン結合の解釈に関し下記二点ご教授いただきたく、よろしくお願いいたします。
    1.ウィキペディアでイオン結合を調べますと、「結合性軌道が電気陰性度の高い方の原子に局在化した極限であると解釈することもできる」とあります。この解釈は正しいでしょうか? 典型的なイオン結晶であるNaClを例にとりますと、Na-3s軌道とCl-3p軌道が相互作用して分子軌道(結合性/反結合性軌道)を形成することになります。色々調べましたがそのような解釈をしている参考書は見つかりませんでした。
    2.NaCl結晶の価電子帯上端および伝導帯下端はそれぞれCl-3pおよびNa-3s軌道からなっていると思います。質問1の解釈が正しい場合、NaCl結晶の価電子帯上端および伝導帯下端は、それぞれ前述の結合性軌道および反結合性軌道に対応する、という理解でよろしいでしょうか? そうすると結局、結合性軌道がCl-3p、反結合性軌道がNa-3sの各軌道と同等とみなせる、ということなのかもしれませんが。
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    Date : Sat, 18 Aug 2012 09:16:42 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     メールありがとうございます。イオン結合に関するご質問にお答えします。
    添付の図は、NaClおよび半導体のSi,Ge,CuInSe2(CIS)の価電子帯電子密度分布図です。
      図をクリックすると別ウィンドウで開きます。
      佐藤勝昭編著「応用物性」第1章より
    NaClでは、ナトリウムイオンNa+の周りに高い山が局在していますがこれはNeとおなじ2s22p6閉殻によるものです。一方、塩化物イオンCl-の周りの電子密度は第2隣接の塩化物 イオンにまで広がってつながっています。従って価電子帯は主としてCl-の3p電子(多少はNa+の3sが混成しているでしょうが・・)からなることがわかります。
    一方、Si,GeではSi-Si間、Ge-Ge間に電子がいて、明確に共有結合を作っていることが見て取れます。
    イオン結晶NaClと共有結晶Si,Geの中間にあるのがCISです。インジウムとセレンの間はイオン結合的で、銅とセレンの間は共有結合的です。CISの特徴は、価電子帯がCuの3d 電子とSeの4p電子が混成した「反結合軌道」から成り立っていることです。
    ご質問(1)ですが、電子密度分布図から見る限り、Wikipedia の解釈は正しいと思います。
    ご質問(2)ですが、価電子帯は主として塩化物イオンの3pからなる結合軌道、伝導帯は主としてナトリウムイオンの3sからなる反結合軌道ということができます。
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    1274. 高分子材料の電気伝導の界面支配とバルク支配

    Date : Fri, 31 Aug 2012 17:23:39 -0500
    Q: 佐藤勝昭先生
    はじめまして。HPを拝見し、メールを送付させていただきました。
    T*大学博士2年のT*と申します。匿名でよろしくお願いします。
    絶縁性高分子薄膜の電気伝導機構について疑問に思うことがありましたので、佐藤先生のご見解を頂ければ幸いです。

      高分子薄膜(厚さ数μ~数十μm)の電気伝導性の温度変化に関する文献(G.M.Sessler, B.Hahn, and D.Y.Yoon: J.Appl.Phys.60 318 (1986) を調査したところ、室温付近では電極金属-バルク界面のエネルギー障壁を電荷が乗り越えることが出来ないために電気伝導は界面支配(注入律速)となり、 一方でサンプルを加熱し、金属-バルク界面のエネルギー障壁を乗り越える十分なエネルギーを電荷に与えた際には バルク支配(移動度律速)になるという記述を見つけました。

    この説明が正しければ、仕事関数の異なる電極金属を用いて電流を測定した際に、 低温領域(界面支配):エネルギー障壁の大きさが異なるために電流の大きさが電極金属によって異なる 十分な高温領域(バルク支配):電極金属に依存しない一定の電流値が得られる と考えたのですが、このような考えは適当でしょうか。
    お教え願いたくお願いいたします。
    また、参考となる学術論文・専門書などがありましたらご助言いただければ幸いです。

    私の研究室での研究はこれまで高分子の光物性・熱物性やNMR測定が主であり、 指導教員も含めて電気物性は専門外であったためご相談させていただきました。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Sun, 2 Sep 2012 14:17:15 +0900
    A: T様、佐藤勝昭@Budapestです。
     論文に目をとおしました。高抵抗(絶縁性)物質に電界をかけた場合、空間電荷の蓄積のために電極付近のみに電圧がかかる現象が知られており、1960年代から研究されていました。引用文献は全て古いですよね。
    有機物質に限らず高絶縁性の物質の電気伝導評価の標準的手法で、実験自体はしっかりしていると思いました。
    著者も指摘しているように、これは厚さが数ミクロン以上のカプトンの場合であり、他の物質もやっていないし電極もいろいろ変えて実験しているわけではないので、一般的にいつもこうなるとは言えないと思います。
    ただ、このコンセプトは、ある程度適用できると思います。高温音/低温、低電圧/高電圧をどこで線引きするかは、高分子材料・電極によって変わってくると思います。
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    Date : Sun, 02 Sep 2012 15:02:37 -0500
    AA: 佐藤勝昭先生
    コンセプトが適用できるかは高分子材料・電極に応じて都度検討する必要がありそうですね。
    ご助言どうもありがとうございました。
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    1275. LED照明された透明アクリル板の表面温度測定

    Date : Thu, 20 Sep 2012 11:32:13 +0900
    Q: 佐藤勝昭 様
     はじめまして。いつも物性なんでもQ&Aを拝見しております。
    M*社K*と申します。Web掲載時は匿名でお願い致します。

     白色LEDで垂直に照射されている透明なアクリル表面の温度を正確に測定したいと考えております。
    透明アクリルの厚みは2mmです。LEDとアクリルの距離は10mmです。アクリルの赤外透過率にも寄りますが、 裏表面ならばサーモグラフィで測定可能と思います。
     しかし照射面の場合は、サーモグラフィでの測定が困難で、その他の方法となると、熱電対を透明アクリル表面に 埋め込んで測定する方法が一番精度が良いだろうと考えますが、熱電対が光を蓄熱するという意見があります。
     そこで、まず熱電対の可視吸収率を概算してみました。
    熱電対は、K熱電対(φ0.1mm、金属露出長さ3mm)で、下記組成の金属からなるので、ほとんどNiの影響だろうと考え、 PalikのHandbook of Optical Constants in Solidsを参考に反射率を計算しました。やや荒っぽいですが、 100%からその反射率を引いて吸収率を求めますと、確かに可視領域に30%~60%ほどある事が分かりました。

    ・アルメル(Alumel) : Ni94% + Mn3% + Al2% + Si1%
    ・クロメル(Chromel): Ni90% + Cr10% 

    ●この吸収率からK熱電対の感温部(先端)が何度上昇するのか(精度を悪くするのか)を見積る事は可能でしょうか?
    ●可能ならば、他にどのようなパラメータ(データ)が必要でしょうか?
    ●また熱電対以外に、上記のような透明アクリルの表面温度を正確に測定する他の方法を御存知ならば、  御教示いただけないでしょうか?

    非常に漠然とした質問で申し訳ありませんが、御意見いただきますよう、よろしくお願い致します。
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    Date : Thu, 20 Sep 2012 13:55:00 +0900
    A: K様、佐藤勝昭です。
     サーモグラフィは、3-14μmの赤外光のみを検出するので、可視光のLED照射面で も測定できるはずです。心配なら、赤外線のみを透過するフィルタを使えば、LEDの光 を感じることはないはずです。
     熱電対が光照射でどのくらい温度上昇するかは、受けた熱量から放射する熱量を引い たものを熱容量で割れば求められます。おそらく直接吸収による温度上昇は無視できる と思いますが、熱電対にLED光を当てて実験してみればよいのではないでしょうか。
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    Date : Fri, 21 Sep 2012 12:45:46 +0900
    AA: 佐藤勝昭先生
    お忙しい中、メールに返信いただき有難うございます。
    今回の場合、LEDとアクリル間はほぼ密閉状態のため、サーモグラフィでの測定は困難な構造でした。(図参照)
    説明が不十分で申し訳ありませんでした。
    ただ、先生の御回答から、LEDの可視光による影響は、赤外線のみを透過するフィルターを使う事によって、実験で確認できそうだと分かりました。 助言いただき有難うございました。
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    1276. 炭素繊維の比誘電率と比透磁率

    Date : Fri, 19 Oct 2012 13:33:11 +0900
    Q: お久しぶりです.
    S*大学大学院機械・ロボット学専攻1年Y*と申します.
    去年一度だけ佐藤様にこのようにメールで質問させていただき, 回答していただいた者です.
    その節は、お忙しい中丁寧な回答をいただきまして大変ありがとうございました.
    今回も1つ質問させて下さい.また勝手ではありますが,WEB上では匿名でお願いします.
    今回は炭素繊維の比誘電率,比透磁率を調べていますが,誠に恥ずかしいことに,自分では納得いく数値を見つけることができませんでした.
    もし佐藤様が何かご存じでしたら教えていただけると幸いです.
    また炭素繊維は大きく分けて,ピッチ系・PAN系・レーヨン系があると思います.この3つにおいて,比誘電率,比透磁率が大きく違うならば,3つ個々に比誘電率,比透磁率を教えて下さい.
    何卒,ご回答よろしくお願い致します.
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    Date : Fri, 19 Oct 2012 15:20:25 +0900
    A: Y君、佐藤勝昭です。
     炭素繊維は基本的にはグラファイトを主成分とする結晶粒が不規則にならんだ多結晶体です。グラファイトはc面内は金属的、c面に垂直の方向には半導体的な電気伝導性を有するのですが、炭素繊維では方向がランダムなので全体として金属的であろうと考えられます。
    金属の直流での比誘電率は-∞に発散します。なぜなら、εr=1-σ/ωε0 なので、ω→0ではεr→-∞になるからです。
    一方、磁気的にグラファイトは反磁性です。グラファイトの磁化率はχv=-1.6×10-5, ピロリティックカーボンの磁化率は、χv =-4.00×10-4で、いずれにせよ小さな値で、比透磁率μv=1+χvは1と考えてもよいでしょう。
     炭素繊維についてピッチ系・PAN系・レーヨン系に分けたようなデータは見当たりません。
    あなたの大学には、カーボン科学の専門家がおられるので、カーボンに関するさまざまなデータは、そこに行けば入手できると存じます。その先生に聞いてご覧なさい。
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    Date : Fri, 19 Oct 2012 15:46:27 +0900
    AA: 佐藤様
    ご丁寧な回答ありがとうございます.
    こんなことも知らない自分が恥ずかしいです.恥ずかしくない質問ができるように頑張ります.
    カーボン科学の先生にもコンタクトをとってみたいと思います.
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    1277. CdS, SrTiO3, KTaO3, LiTaO3のバンド端の電子軌道

    Date : Wed, 24 Oct 2012 23:00:53 +0900
    Q1: T大学物理学科3年のYと申します。
    この度は、この後に挙げる4つの物質の光吸収過程において、バンド間遷移がどの状態からどの状態への電子の遷移なのかを知りたくて、おたずねさせていただきました。結合性軌道だとか、反結合性軌道が関わってくるのだと思うのですが、いったいどの軌道からどの軌道に遷移しているのか、詳しく知りたいです。お願いいたします。また、分子軌道がどのようになっているのかも合わせてお答え頂ければ幸いです。
    4つの物質は CdS, SrTiO3, KTaO3, LiTaO3 です。
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    Date : Wed, 24 Oct 2012 23:31:51 +0900
    A1: Y君、どういういきさつで、CdS, SrTiO3, KTaO3, LiTaO3に興味を持たれたのでしょうか?
    宿題でしょうか?宿題の場合は、何を調べればよいかというヒントしか差し上げられません。
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    Date : Wed, 24 Oct 2012 23:42:11 +0900
    Q2: 情報不足で失礼いたしました。
    学生実験で、光吸収についての実験を行いました。
    自動式の分光光度計を用いて、4つの試料の吸収係数のhν依存性を調べ、そのデータから4つの試料のエネルギーギャップを求める、というような実験です。
    その実験の課題の中で、4つの試料の価電子帯及び伝導帯が、主にどの元素のどのような軌道状態により作られているか、またバンド間遷移がどの状態からどの状態への遷移なのかを調べる、というものがあって、なにを調べれば良いかがわかりません。
    ヒントをいただければ幸いです。
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    Date : Thu, 25 Oct 2012 01:56:29 +0900
    A2: Y君、佐藤勝昭です。
     学部3年では、基礎を学んでいないでしょうから、バンド図を見てバンド端を構成する電子軌道がどの元素のどの軌道からできているかを理解するのは、若干無理がありますね。
    ただ、イオン性の強い化合物の場合、一部の例外を除いて、伝導帯の底はカチオン(陽イオン)のs軌道、価電子帯はアニオン(陰イオン)のp軌道から生じていると考えて間違いありません。NaClであれば、伝導帯の底はNaの3s, 価電子帯の頂はClの3pと考えられます。CdSも細かいことを言わなければ伝導帯の底はCdの5s, 価電子帯の頂はSの3pです。(正確には、CdSは共有性をもちますから、混成軌道となっているはずです。最近、第1原理計算が行われ、70個もの波動関数の混成を使わないと正確なバンドギャップが出ないという論文が出ています。E. C. Ekuma et al.:Local Density Approximation Description of Electronic Properties of Wurtzite Cadmium Sulfide (w-CdS): Canadian Journal of Physics, 89(3): 319-324, (2011))
     遷移金属イオンを含むものは単純ではありません。しかし、SrTiO3は単純で、価電子帯の頂はOの2pから成り、伝導帯の底はTiの3dから成ると考えられます。バンド計算と実験の対応は、van Benthem et al. Journal of Applied Physics, 90, 6156-6164 (2001).を参照して下さい。この論文では、Fig.4のVUVスペクトルに現れたA1-A4の構造は、Table2に掲げてあるようにO2p→Ti3dにアサインされています。
     KTaO3については、図書館に行って、K Kuepper et al "The electronic structure of KTaO3: a combined x-ray spectroscopic investigation"; J. Phys.: Condens. Matter 16 8213 (2004) を読んで下さい。価電子帯はTa5dとO2pの混成した状態、伝導帯はTa5dとなっています。
     LiTaO3については、Iris Inbar and R. E. Cohen:Comparison of the electronic structures and energetics of ferroelectric LiNbO3 and LiTaO3;Phys. Rev. B 53, 1193?1204 (1996) を読んで下さい。バンド端の電子状態はKTaO3とほぼ同じと考えられます。
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    Date : Thu, 25 Oct 2012 12:33:00 +0900
    Q3: ご丁寧にありがとうございます。
    大部分について理解することができました。

    少々疑問点があります。
    今回の4つの試料は、全て半導体か絶縁体ですから、基底状態では、伝導帯は空っぽで、価電子帯が完全に満席の状態ですよね。
    ということは、
    光吸収が起きることで、元々価電子帯のカチオンのs軌道にいた電子が、伝導帯に励起される、ということなのでしょうか?
    この際、結合性軌道だとか、反結合性軌道の話はどうなるのでしょうか。
    自分で調べた文献では、
    π軌道からπ*軌道だとか、σからσ*への遷移がある、
    などと書いてありました。
    今回の4つの試料の中で一番わかりやすいもので構いませんので、光吸収の際にどの軌道間を遷移したのかのヒントを頂戴してもよろしいでしょうか。
    ご迷惑おかけして申し訳ございません。
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    Date : Thu, 25 Oct 2012 17:53:41 +0900
    A3: Y君、佐藤勝昭です。
     あなたは勉強熱心ですね。
    (Q1)光吸収が起きることで、元々価電子帯のカチオンのs軌道にいた電子が、伝導帯に励起される、ということなのでしょうか?
    (A1)CdSの場合、光吸収は価電子帯を構成するSイオンの3p軌道から、伝導帯を構成するCdの5s軌道に励起されると考えられます。
    なぜなら、バンド間遷移の電気双極子遷移の遷移確率Pvcは、価電子帯の波動関数ψv、伝導帯の波動関数ψcとすると、電気双極子exとして、1次元モデルでは
     Pvcv=|∫ψv(x)*exψv(x)dx|2 となりますが、ψvがp軌道なので奇関数、ψcはs軌道なので偶関数、電気双極子exは奇関数、Pcvは0でない値をとることができます。これをパリティ許容遷移と呼びます。

    (Q2)結合軌道・反結合軌道というのはどうなるのですか
    (A2)バンドを構成する軌道は、結晶全体に広がっているので、分子軌道のモデルでは正確には説明できませんが、近似的に価電子帯の波動関数ψvはSイオンの3p軌道にわず かにCdの5s軌道が混成した結合軌道になっており、伝導帯の波動関数ψcはCdイオンの5s軌道に、わずかにSの3p軌道が混成した反結合軌道になっていると考えられます。バン ドギャップは、結合軌道と反結合軌道の間に開いていると考えられます。
     このことが成り立たない半導体もあります。太陽電池に使うCuInSe2では価電子帯の頂の波動関数はCuの3dとSeの4pが混成した反結合軌道になっており、伝導帯はInの4sに Seの4pが混成した反結合軌道なので、バンドギャップは、反結合軌道同士の間に開いています。
     SrTiO3の場合、価電子帯の波動関数はOの2p軌道にわずかにSrやTiの軌道が混じった結合軌道で、伝導帯はTiの3d軌道にわずかにOの2p軌道が混成した反結合軌道であろう と思います。
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    Date : Thu, 25 Oct 2012 22:03:19 +0900
    Q4: ありがとうございます!
    Cdの最外殻の5sとSの最外殻の3pが相互作用して、3pメインの結合性軌道と5sメインの反結合性軌道が生じ、その間が今回の場合エネルギーギャップとなっていて、 基底状態では反結合性軌道には電子は入っていないが、光励起によって結合性軌道から反結合性軌道に電子が遷移する、ということですよね?
    つまりバンドギャップを考える際は両原子の最外殻の軌道のみの相互作用を考えればいいということでしょうか?
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    Date : Thu, 25 Oct 2012 23:36:22 +0900
    A4: Y君、佐藤勝昭です。
     あなたの考えで良いでしょう。内殻電子は、バンドギャップにほとんど関係しません。
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    1278. GaAsのホール伝導の異方性

    Date : Thu, 1 Nov 2012 18:15:06 +0900
    Q: T**大学3年I**です。(匿名希望)
    HPをみての質問です。よろしくお願いいたします。
    「GaAsにおいては電子伝導には異方性がなく、ホール伝導には異方性がある」と のことですが、ホールには重いホールと軽いホールがあり、結晶のひずみにより 縮退度が変化するためホール伝導に異方性がでると解釈しましたが、全く自信がありません。
    ホール伝導に異方性がある理由をお聞かせください。
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    Date : Wed, 7 Nov 2012 02:00:08 +0900
    A: I君、佐藤勝昭です。 返事が遅くなり申し訳ありません。学部3年生でむずかしいことをやっているのですね。
    バルクのGaAsの価電子帯の重いホールバンドをよく見ると、<111>方向と、<100>方向とでは、バンドの曲率が若干違うので、 有効質量の異方性が多少あるようですが、あまり大きなものではありませんね。
     MOS界面の反転層に閉じ込められた2次元ホールガスにおいては、結晶表面にあるステップによって異方性が誘起されて いるという報告(R. Hey, K.J. Friedland, H. Kostial, K.H. Ploog:Physica E 21 (2004) 737-741)があります。
    おそらく2次元系に特有の現象だと思いますが、ひずみの効果による重いホールと軽いホールの分裂が関係しているかどうか、私にはよく分かりません。
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    Date : Wed, 7 Nov 2012 18:59:09 +0900
    AA: いろいろ調べていただいてありがとうございます。
    修士課程を含めた3~4年間一生懸命勉強して参りたいと思います。
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    1279. 鉄単結晶の磁気異方性の図の出典

    Date : Tue, 4 Dec 2012 20:38:46 +0900
    Q: 東京農工大学名誉教授 佐藤勝昭先生
    私は,K社Nと申します.
    突然のメール,ご容赦ください. ご教示いただきたいことがあり,メール差し上げました.
    下記の「第9回スピンエレクトロニクス入門セミナー資料」を拝見させていただきました.
    http://home.sato-gallery.com/education/kouza/jisei_kiso.pdf
    お教えいただきたいのは,結晶磁気異方性のページ(56/116)に掲載されている鉄単結晶の磁化曲線の出典です.
    可能であれば,知財の参考文献として引用させていただきたいと考えております.
    お忙しいところ,大変申し訳ございませんが,よろしくお願い申し上げます.
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    Date : Tue, 4 Dec 2012 23:25:45 +0900
    A: N様、佐藤勝昭です。
     本多・茅による有名なお仕事ですが、査読のある学術雑誌に掲載された論文は見つかりませんでした。
    近角先生の強磁性体の物理では、下記の東北大の紀要が引用されています。
    K. Honda, S. Kaya: Sci. Rep. Tohoku Univ. 15 (1936) 721
    なお、下記書物がよく引用されます。
    茅誠司:強磁性、岩波書店(1952)
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    Date : Thu, 6 Dec 2012 09:13:31 +0900
    AA: 佐藤先生、K社Nです.
    ご回答いただき,誠にありがとうございました.
    早速,書籍を探してみます.
    取り急ぎ,お礼まで.
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    1280. シマウマの皮膚の導電率と誘電率を知りたい

    Date : Wed, 5 Dec 2012 18:01:44 +0900
    Q: ホームページを拝見させていただきました.
    私はS*大学工学部4年のK*です.
    現在, 卒業研究で「自然エネルギー有効利用のための輻射解析プログラムの構築」というテーマで研究を行っています.
    シマウマの白と黒の皮膚の温度差による対流を研究しているのですが, そのためにはシマウマの白と黒の皮膚の 透電率と導電率の値が必要になります. 私の検索力不足かもしれませんが見つけることができませんでした.
    そこで, 佐藤先生にシマウマの物性値, また調べるにはどのような方法があるのかを教えていただきたく, 今回質問させていただきました.
    シマウマは輻射解析の一例として挙げています.
    先生の専門である半導体ではありませんが教えていただければ幸いです.
    よろしくお願いいたします.
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    Date : Thu, 6 Dec 2012 00:14:57 +0900
    A: K君、佐藤勝昭です。
     シマウマの皮膚の色はしましまではなく黒っぽい灰色のようです。
    http://okwave.jp/qa/q192711.htmlによる。)
    従って、白黒は毛の色ということになります。黒はメラニン色素だそうです。
    「動物の被毛」はケラチンというタンパク質でできていて、そのタンパク質は「アミノ酸システインからの ジスルフィド結合によって互いに結びついている」ということです。
    従って、被毛は絶縁体なので導電率はほとんどゼロでしょう。誘電率は2~2.5程度ではないでしょうか?
     黒い部分はメラニン色素が多いのでしょうが、導電率や誘電率には影響を及ぼさないと思います。
    むしろ黒い毛は光を吸収しやすくその結果、光のエネルギーが熱に変換され、その部分の温度が白い毛の部分より 若干高くなっているのではないかと推定されます。したがって、電気的な性質を調べても、温度差による対流の解析の役に立たないと思います。
    指導教官とよく話し合ってください。
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    Date : Thu, 6 Dec 2012 17:29:59 +0900
    AA: 佐藤勝昭様
    お忙しい中ご返答いただき,ありがとうございました.
    教授には,「シマウマの毛も人間の皮膚と同じタンパク質から構成されているため,
    シマウマの毛においても人間の皮膚における物性値を代用すればよい」と指導を受けました.
    それでは毛の黒と白においての物性値を別々に算出できないということで今回質問させていただきました.
    また教授とよく話し合ってみます.
    ありがとうございました.
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    1281. 半導体の光学遷移確率の式

    Date: Sat 29 2012 18:58 (Facebook messageから)
    Q: お初にお目にかかります、私はT大学3年に所属するAと申します。
    先日佐藤様がお書きになられた論文「応用物理学会結晶工学分科会結晶工学スクールテキスト第6版(2002年)」の
    「結晶の格子と電子状態」において 4.1 バンド電子系の光学遷移の(2) 反射スペクトルとバンド構造につきまして疑問に思った点がありましたので僭越ながら質問をすることを願います。
    (1)式にJvc・Fvcとなる部分がありましたがFvcと言う部分はお書きになられた論文の前にも後にも見つからないように思えるのですが、私の見落としでしょうか?
    そして(5)式にEc-Evとありましたが、c、vはそれぞれ真空中の、結晶中の光速度ととらえて宜しいのでしょうか?
    年末のお忙しい時期に連絡申し訳ありません。お返事は急がなくても構いません。初めての挨拶にしては図々しいですが、ご教授お願いします。
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    Date: Sun 30 2012 10:20 (mobileからFacebook message)
    A1: A君.佐藤勝昭です。
    vはvalence band(価電子帯)を、cはconduction band(伝導帯)を意味します。Fvcは価電子帯・伝導帯間の遷移の振動子強度を表しています。このあたりのことは、固体物理学をきちんと勉強しなければ理解できないかも知れませんね。
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    Date: Sun 30 2012 15:10 (Facebook message)
    A2: A君、佐藤勝昭です。先ほどは電車の中から返事したので十分説明できませんでした。
    詳細は、「機能材料のための量子工学(講談社)」第4章の佐藤勝昭執筆部分の4.2.3節をお読みください。絶版ですが、テキストが、Webにありますので12ページ目からお読みください。第4章テキスト(pdf)
    A君、キミの質問を、私のWebでの「物性なんでもQ&A]に収録してもよいでしょうか。匿名(T大のAさん)として扱います。
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    Date: Mon 31 2012 20:02 (Facebook message)
    AA: お返事ありがとうございます。匿名なら構いません。
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    1282. ステンレス球の酸化方法

    Date : Mon, 7 Jan 2013 18:42:00 +0900
    Q: 佐藤先生、初めまして。日本原子力研究開発機構の劉維と申します。
    うちのグループは、福島原発の現状把握に資するため、溶融燃料デブリベッドにおける伝熱流動実験を実施しようとしています。
    実験では磁性のあるステンレス球を誘導発熱で発熱し、溶融燃料デブリを模擬します。
    そこで、ステンレス球に電気絶縁膜をつけたいです。
    専門分野ではなく、いろいろ調べてみましたのですが、わかりませんでした。
    そこで、佐藤先生にご助言を頂けたらと思いましてメールさせて頂きました。
    高温熱処理で酸化膜を形成することはその方法でしょうか?
    その場合、どのような条件で、どれぐらいの酸化膜をつければ確実に絶縁膜が形成できるでしょうか?
    お忙しいとは思いますが、よろしかったら返信お願い申し上げます。
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    Date : Mon, 7 Jan 2013 21:13:19 +0900
    A: 劉維様、佐藤勝昭です。
     私は、デブリ床については、全くの素人です。
    メルトダウンした核燃料のデブリ床のシミュレーションとしてにステンレス粒子(1-6mm )の誘導加熱による伝熱を行うことは、スリーマイル島の原発事故の直後に行われまし た。ご質問はおそらく、
     V.X. TUNG and V.K. DHIR: Nuclear Engineering and Design 99 (1987) 275-284
    など当時の文献を参考にされたのではないかと拝察します。
     ステンレス粒子の誘導加熱の際に粒子同士をどの程度電気的に絶縁しておけばよいの かはよくわかりません。そもそもステンレス表面は数Åの絶縁体のCr-Oであると考えら れています。これが不動態となって、さらなる酸化を防いでいるのです。従って、ステ ンレスを酸化して表面絶縁層を増やすのは簡単ではありません。
     私は専門でないので詳細はわからないのですが、高温のプラズマの中を通すことで酸 化することができるようです。
     Helene Ageorges, Pierre Fauchais: OXIDATION OF STAINLESS STEEL PARTICLES WIT H AND WITHOUT AN ALUMINA SHELL DURING THEIR FLIGHT IN A PLASMA JET; "High Temp erature Material Processes Vol.4 Issue 3 p.152 (2000)
     また、この論文にあるようにmechanofusionによってステンレスコアをアルミナシェ ルでクラッディングする方法が知られています。
     R. Cuenca-Alvarez, H. Ageorges, P. Fauchais:"Stainless Steel Coatings Alumi na Reinforced by Plasma Spraying Mechanofused Particles" in "Thermal Spray 200 3: Advancing the Science and Applying the Technology" (ASM International) Pub lished: 2003 Pages: 707-712
     このあたりを手がかりに、調査をされるとよいのではないかと存じます。
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    1283. PEMを用いた縦カー効果測定のセットアップ

    (
    Research Gateの質問より)
    Date: Fri, 18 Jan 2013
    Q1: My name is Ravindranath Viswan and I am a post-doc in the dept. mat.sci and engg, Virginia Tech. I am trying to setup a MOKE measurement using PEM in our lab and I would greatly appreciate if you would provide me some tips to improve sensitivity. I am planning to use p-polarized light to do longitudinal MOKE. Basically is there any specific configuration in terms of the angles of the polarizer and analyser and the retardation setting on the PEM that can give maximum sensitivity? What is the most important factor to improve the S/N ratio?
    It will be great if you could provide some tips. Thank you in advance for your help.
    best regards,
    Ravi
    (バージニア工科大材料工学科のポスドクR.ビスワンです。私は、研究室にPEM(光弾性変調器)を用いたMOKE(磁気光学カー効果)の測定装置を作ろうとしていますが、感度を上げるにはどうしたらよいのかについての情報を教えていただければ幸いです。
    私はp偏光を用いて縦カー効果を図ろうと思っています。感度を最大にするための偏光子・検光子の角度、さらにはPEMのリターデーション(光学遅延)に特別の配置はあるのでしょうか?
    S/Nを上げるための一番重要な因子はなんですか。何らかの情報をいただけたら有り難いです。よろしくお願いします。)
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    Date: Fri, 18 Jan 2013, 23:00
    A1: Dear Ravindranath
    For longitudinal MO measurement for p-polarization, a polarizer angle is set at parallel to the horizontal plane, and a PEM should be placed after the reflection followed by an analyzer with an angle 45 degree to the horizontal. In this case the output light intensity is proportional to rpp rps cos (delta sin pt) +(1/2)(rpp2). Ratio of 2p frequency component and DC component give r_ps/r_pp from which arc tangent give Kerr angle.
    (p偏光に対する縦カー効果の測定の場合、まず偏光子の角度を反射面(水平面)に平行にします。次に反射した光をPEMで受け、その後ろに偏光の角度45度にとった検光子を置きます。このときの出力光強度は、rpp rps cos (δsin pt) +(1/2)(rpp2)で与えられます。出力の角周波数が2pの成分(第1項)と直流成分(第2項)の比をとると、rps/rppとなりこの逆正接(アークタンジェント)を計算すれば、縦カー回転角が得られます。)
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    Date: Fri, 18 Jan 2013, 23:10
    Q2:Dear Prof. Sato,
    Thank you very much for the reply. How about the retardation of the PEM? Does this have any dependence on the signal?
    I am using a laser line polarizing beam splitter from Newport (http://search.newport.com/?q=05BC16PC.4) for the polarizer and analyser. Is this OK ? Does the beam need to be at normal incidence to all the optical components to minimize noise?
    Thanks very much for the help.
    best regards,
    Ravi
    (PEMのリターデーションについてはどうなるのですか?それが信号に影響しますか?また、私はNew Port社のLaser Line ビームスプリッターを偏光子・検光子に使いたいと思いますが、OKですか?ノイズを最小限にするには、光部品は光に直入射しなければなりませんか?よろしく)
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    Date: Sat, 19 Jan 2013, 1615
    A2: Dear Ravindranath,
    Sorry for incomplete explanation in the previous answer. The "delta sin pt " means the retadatuon modulated by PEM with angular frequency p. cos (delta sin pt) can be expanded by Bessel function and approxinmately equal to 2J2(delta) cos 2pt. Therefore you should choose proper retadation amplitude delta so as the Bessel function of 2nd order takes maximum value.
    Concerning the beam splitter you should choose a broadband type from the Newport List for ease of spectroscopic measurements.
    The optical components should be set normalto the light beam. Especially PEM should be carefully treated so as the quarz bar inside the PEM be normal to the beam. Otherwise sometimes erroneous signal appears.
    Regards, Katsuaki
    (前の回答できちんと説明しないでごめんなさい。δsipn pt はPEMのリターデーションが角周波数pで変調されることを意味しています。cos(δsipn pt)はベッセル関数を使って展開でき、近似的に2J2(δ)cos2ptとなります。従って、2次のベッセル関数J_2(δ)が最大になるようリターデーションの振幅δを注意深く選ぶ必要があります。 ビームスプリッターについてはNew Port社の一覧から、ブロードバンドタイプを選ぶと分光測定がやりやすいでしょう。光部品は光に対して面直になるよう配置する必要があります。特にPEMについては、中の溶融石英の板に面直に入射する必要があります。そうしないと間違った信号が出る場合があります。)
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    Date: Sun, 20 Jan 2013, 01:20
    AA: Dear Prof. Sato,
    Thank you very much for the help. Hopefully, I will be able to set it up with the great insights you have given me. I will get back to you if I have any further questions.
    best regards,
    Ravi
    (助言ありがとうございます。頂いた知見をもとにMOKE装置をセットアップできると思います。また、分からないことがあれば、お教え下さい。)
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    1284. 3d2のLS多重項に1F、1Pが現れないわけ

    Date : Sat, 19 Jan 2013 02:23:35 +0900
    Q1: 東京工科大学3年の横山です。
    磁性の、LS多重項についての質問です。
    3d軌道に二つの電子を配置するときに、LS多重項がでてくると思うんですけど、1Fとか1Pはなぜでてこないんでしょうか?
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    Date : Sat, 19 Jan 2013 09:32:53 +0900
    A1: 横山君、佐藤勝昭です。
     (1)l =2を↑電子が占め、l =1を↓電子が占めれば1Fに、(2)l =2を↑電子が占め、l =-1を↓電子が占めれば1Pになるはずですが、いずれもHundの規則からは、エネルギー的に起こりにくいのです。
     Hundの規則では、全軌道角運動量L と全スピンS が大きくなるように配置します。従って、基底状態では、(1)l =2を↑電子が占め、l =1を↑電子が占めた状態3Fになります。( 1)では全軌道角運動量Lは2と大きいですが、スピンSが0と小さくなりますし、(2)ではLSも小さいので、いずれもHundの規則を満たさず、基底状態にはなりません。
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    Date : Sat, 19 Jan 2013 09:52:29 +0900
    Q2: ご解答ありがとうございます!
    フント則による実現可能性の低さについては理解できました!
    ある教科書には、鉄族元素(3dに電子2個)は
    1S, 3P, 1D, 3F, 1G
    のLS多重項に分かれると書いてあるのですが、
    それぞれの多重項ごとに(2L+1)(2S+1)通りの状態の数があるので、上の5個の多重項に含まれる状態の数を足すと、1+9+5+21+9=45となって、
    たしかに、d軌道は、スピンも含めて10個の状態があるから、そこに2つの電子を収容するなら、そのやり方は、102=45
    となるのは明らかなんですが、
    では、先ほど質問いたしました1Fとか1Pとかの電子の詰め方は、この45通りの中に数え上げられていない、ということなんでしょうか??
    この配置も10個の状態から2個を選ぶという操作に含まれていそうと思ってしまいます。
    またパウリ原理的にあり得ないのはわかりきっているのですが、3G,3D,3Sなどの多重項も、102=45通りの中には含まれていない、ということなのでしょうか?
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    Date : Sat, 19 Jan 2013 15:29:36 +0900
    A2: 横山君、佐藤勝昭です。
     先ほどは電車の中からモバイルから回答したので、1Fが高いエネルギーに来ると書きましたが不正確でした。
    スピンを考慮した多電子系の波動関数はスレ-ターの行列式で表さなければなりません。そのような扱いにはウィグナー係数、クレブシュゴルダン係数など面倒な数学を使わなければなりません。
    その結果、固有状態はL+S=偶数の場合のみが0でない値をもつので、L+S=奇数となる3S, 1P, 3D, 1Fなどが排除されるのです。
     詳細は、しかるべき教科書を読んで下さい。
    名古屋大学学術機関レポジトリーにある教材「量子力学の基礎事項」(川邊岩夫著)の §11-12に多電子系のエネルギー準位に関するわかりやすい記述がありますので、ダウンロードして勉強してください。
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    Date : Sun, 20 Jan 2013 00:51:31 +0900
    AA: そうだったんですね!!
    疑問が解消されました!ありがとうございました!!
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    1285. フェリ磁性体の磁化率

    Date : Sun, 20 Jan 2013 17:55:55 +0900
    Q: 東京工科大学3年の横山です
    フェリ磁性の磁化率の逆数の温度依存性について質問なんですが、Tc以下の低温で、磁化率の逆数がある温度βで負の∞に発散して、正の∞から連続的に減少して、T=0で一定値λ/2になる という挙動は正しいでしょうか??

    λは分子場係数です。
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    Date : Sun, 20 Jan 2013 21:27:52 +0900
    A: 横山君、佐藤勝昭です。
     フェリ磁性体はTc以下で自発磁化をもちます。自発磁化を持つと言うことは外部磁界 H=0でも磁化Mをもつのですからχ=M/H→∞となりますから、帯磁率は定義できません。 定義できないのに、T=0での磁化率が分子場係数できまるというのはおかしいと思いま す。
     もちろんN型といって補償温度Tcompをもつ場合があり、補償点では自 発磁化は零になる場合があり、ここでは、1/χ=H/Mが発散します。しかしこの場合補償 温度Tcompは2つの副格子の磁化のバランスで決まります。この場合もT=0では自発磁化 がありますから、帯磁率は定義できません。
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    Date : Tue, 22 Jan 2013 00:58:32 +0900
    AA: 先生のおっしゃる通り、おかしいということがわかりました!
    キュリーワイス則で求めた磁化率をTc以下にまで適用してしまっていました。ご解答ありがとうございます。
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    1286. 青銅の相と光学的性質

    Date : Tue, 29 Jan 2013 21:45:11 +0900
    Q: こんばんは、初めまして。
    高校2年生のA*と申します。(匿名でお願いします)
    物性なんでもQ&AのHPを見て質問させて頂きます。

    部活で青銅の研究をしています。
    錫と銅の割合を変えて反射度などの測定をしているのですが、うまく結論に持っていくことができずに悩んでいます。
    そこで質問があります。
    ・合金の組織のδ相、ε相、η相などと反射率に関係はあるのか
    ・(関係がある場合)それぞれの相がどのように反射率に関わっているのか
    ・間隙の出来やすさとしてソリダスとリキダスの温度差は考えられるのか

    お忙しいとは思いますが、よろしくお願いします。
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    Date : Wed, 30 Jan 2013 00:54:34 +0900
    A: Aさん、佐藤勝昭です。  面白い研究をしているのですね。
    ・合金の組織のδ相、ε相、η相などと反射率に関係はあるのか、それぞれの相がどのように反射率に関わっているのか
    本来の青銅は光沢ある金属で、青銅色という青白色はCuの酸化物の色です。Cu-Snの色はSnの量によって変わります。添加するSnの量が少なければ十円硬貨のように純銅に近 い赤銅色に、多くなると次第に黄色味を増して黄金色となり、ある一定量以上の添加では白銀色となるそうです。金属・合金の色は、自由電子の密度だけでなく、電子が光を 吸って高いエネルギーの電子状態に励起されるために必要なエネルギーによっても決まります。
    このあたりのことは、大学で固体物理学を勉強しないと、完全には理解できないと思います。
    (佐藤勝昭:
    金属の色と金属光沢;トライボロジスト53巻5号p287(2008)参照)

    ・間隙の出来やすさとしてソリダスとリキダスの温度差は考えられるのか
    間隙が出来るのは均一に固化しないためです。これは、Cu-Sn系合金が「包晶相図」を示すことと関係しているのではないでしょうか?
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    Date : Wed, 30 Jan 2013 12:13:55 +0900
    AA: 素早いお返事ありがとうございます。
    また何かあったら質問させて頂くのでよろしくお願いします。
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    Date: Date : Thu, 14 Mar 2013 19:27:07 +0900
    Q2: 佐藤先生こんばんは。
    Y高校のAです。(匿名でお願いします)
    物性Q&Aのコーナーに質問します。
    あれから青銅の研究をまとめています。
    作った青銅をよく見てみると黄色がかかっているものがありました。他のものは銀白色~暗灰色です。
    しかし分光光度計の結果ではどの試料も傾きが一緒で急落が見られません。
    (添付した画像の色がついているものが黄色に見えたものです)このスペクトルから色の変化について言える事はあるのでしょうか。
    よろしくお願いします。
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    Date : Thu, 14 Mar 2013 21:05:07 +0900
    A2: A様、佐藤勝昭です。
     赤の波長650nmの反射率と青450nmの反射率の比r=R(450)/R(650)を測ってみました。
    金ではr=39/96=0.41と小さく、銀ではr=97/98=0.99とほぼ1と大きいのです。
    図のように曲線(1)ではr=0.78,(2)ではr=0.83, (3)ではr=0.84ですが、(4)ではr=0.65, (5)ではr=0.63なのです。おそらく(4)と(5)はrが小さく、金色っぽく見え、(1)~(3)はrが1に近く銀色っぽく見えるはずです。
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    Date : Thu, 14 Mar 2013 21:31:00 +0900
    AA2: 迅速なお返事ありがとうございます。
    悩んでいた事が分かってスッキリしました。
    発表に向けてうまくまとめられるよう頑張ります。
    また分からない事があったらよろしくお願いします。
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    1287. 二酸化バナジウムの相転移と光学的性質の変化

    Date : Tue, 29 Jan 2013 14:49:40 +0900
    Q:東京農工大学名誉教授 佐藤勝昭先生
    私、N*社のY*と申しまして、先生のQ&A HPを拝見しメールを送らせて頂きました。
    WEBアップの際は匿名でお願いいたします。
    現在、遮熱というキーワードで、可視光を透過し近赤外を反射する材料について調査しております。
    (専門ではありませんので的外れなことを書いているかもしれませんがご容赦ください。)
    その中で、二酸化バナジウムの薄膜が室温付近で相転移して、近赤外付近の反射率に関して温度依存性を示すというものがありました。
    分光光度計による透過スペクトルが示され、確かに温度が高くなるにつれて近赤外域の透過率が低くなっておりました。
    吸収を考えると「透過率が低くなる=反射率が高くなる」とは安易に言い切れないとは思いますが、気になるのはこの測定方法です。
    サンプルをある温度にする手段はいろいろと考えられますが、この時の透過率には、その温度におけるサンプルからの近赤外域放射上昇分は含まれないのでしょうか。
    (質問①)温調ユニットを用いた分光測定の結果は、その温度におけるサンプルの真の透過率と、サンプルからの放射の“合わせ技”になるのでしょうか。
    相転移による効果を考えたときに、サンプルからの放射のことが気になり、若干頭が混乱しております。


    上記は無機系薄膜での話ですが、(質問②)相転移、結晶性変化などはポリマーでも起こりますが、同じような効果は期待できるでしょうか。
    お時間があるときにでもお返事いただけると幸いです。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Thu, 31 Jan 2013 00:55:01 +0900
    A: Y様、佐藤勝昭です。
    質問① 温調ユニットを用いた分光測定の結果は、その温度におけるサンプルの真の透 過率と、サンプルからの放射の“合わせ技”になるのでしょうか。
    相転移による効果を考えたときに、サンプルからの放射のことが気になり、若干頭が混乱しております。

    ---------------------------------
    回答:V2O3はMott-transitionによる絶縁体・金属転移が起きることで有名な物質です。
    高温相が金属で、自由電子が存在するため、Drude則によって、近赤外の反射率およびFree carrier absorptionと呼ばれる光吸収が増加します。
    スペクトルの測定法としては、分光器からの単色光を用いて試料を透過させ、検出器で受光します。
    このとき光源側にチョッパーを置いて、光を断続し、それに同期した成分のみをロックインアンプで検出すれば、試料からの熱放射の成分は検出されません。

    質問② 相転移、結晶性変化などはポリマーでも起こりますが、同じような効果は期待できるでしょうか。
    --------------------------------
    回答:Mott-transitionのような絶縁体・金属転移がおきれば同様のことが観測されるはずです。
    例えば、(BEDT-TTF)2Cu[N(CN)2]Brでは、低温でMott-transitionが起きることが知られていますから、光学的な測定をすれば、同様の現象が見られるかもしれません。
    結晶性の変化くらいでは、金属・絶縁体転移ほど大きな光学的な変化は見られないのではないでしょうか?
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    Date: Mon, 4 Feb 2013 11:28:45 +0900
    AA: 東京農工大学名誉教授 佐藤勝昭先生
    N社のYです。
    先週は出張で不在にしておりまして、お返事が遅くなり申し訳ありませんでした。
    測定方法など大変参考になりました。ありがとうございました。
    また質問させて頂くこともあるかと思いますが、その際はよろしくお願いいたします。
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    1288. 物質が同じでも条件によって物性値を変化できるか

    Date : Mon, 11 Feb 2013 16:49:52 +0900
    Q:
    以前も質問させていただいたK*(S*大学工学部4年)と申します.

    現在,以前同様「自然エネルギー有効利用のための輻射遮蔽プログラムの構築」という卒業研究を行っています.
    シマウマの白と黒の皮膚の輻射吸収電力の違いによる温度差によって,対流が生じることで体内の温度上昇を防いでいるということを 建物に応用できないかという方向に研究内容を変更しました.

    研究においてはプログラミングにおける解析を行っているので,実際に存在する物質の誘電率,導電率を使用せず, 吸収電力に差が生じるように物性値を仮定しています.本研究で作成したプログラムを使用すれば,物性値を与えることで吸収電力を計算できます.
    そこで, お聞きしたいのが, 物質が同じでも条件を変えることで物性値を変えることは可能なのかということです.その際, 条件をどのように与えれば物性値が変化するのかを教えていただきたいです.
    誠に勝手ではありますが, よろしくお願いします
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    Date : Tue, 12 Feb 2013 12:07:18 +0900
    A: 様、佐藤勝昭です。
     シマウマから建物に方向転換ですか?
    ・同じ物質を使いながら物性値を変えられるかというご質問ですが、建築に使う材料と いうことでなければ、いくらでもありますよ。
     たとえば、半導体のシリコンは、現在テン・ナイン(純度99.99・・・9と9が10個な らぶ)とかイレブン・ナインとかの高純度のものが得られますが、これは絶縁体です。 これにppmオーダーのリンを添加(ドーピング)するとトランジスタなどに使う半導体 になります。さらにリンを100ppm程度に増やすと、自由電子が増えて金属のような導電 性を示します。
     また、シリコンのバルク材料は紫外線を当てても可視光線の発光は見られませんが、 ナノサイズのシリコン(たとえば、多孔質シリコン)では、粒子サイズをかえれば赤、 緑、青と発光波長を変えることもできます。
     誘電体でも密度を変えれば、光の屈折率をコントロールできます。
     これらは、いずれもエレクトロニクスに使うようなよく組成や純度が制御された物質 の場合です。
    ・一方、建材に使うセメントのような純度の低い材料の場合は、そう簡単ではありませ ん。比較的簡単にできるのが、複合材料とか傾斜材料とかを使って、組成比・配合比を 変えたり、あるいは、多孔質化して空気をたくさん含ませたりして、物性値をコントロ ールします。
    ・比較的簡単なのが塗料を使って光吸収をコントロールすることによって熱的な性質を 制御する方法です。
    ・また、実際の建物では、ガラス窓とコンクリートなどの建材とでシマウマになってい ると思います。ガラスも赤外線反射コーティングなどによって熱的性質をコントロール しています。全面ガラスの建物で、赤外線や紫外線の反射コーティングが施されている 例はたくさんあると思います。コーティングのあるなしで、シマウマにしてみてはいか がですか?
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    Date : Tue, 12 Feb 2013 13:09:19 +0900
    AA: 佐藤勝昭 様
    お忙しい中ご返答いただきありがとうございました.
    建築資材における物性値のコントロール方法を知ることができ,大変感謝しております.
    この度は本当にありがとうございました.
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    1289. GaAs, Siの複素屈折率

    Date : Tue, 12 Feb 2013 15:44:14 +0900
    Q1: 佐藤 研究室 御中
      今日は,電気通信大学の冨田ともうします.
    早速ですが,GaAsの太陽光に対する屈折率の表に n,kなどの数値が各波長ごとに与えられていますが, n,kはそれぞれ,複素屈折率の実数部,虚数部のことでしょうかお尋ねします.例えば,複素屈折率をm とした場合,
        m=n-ik
    であらわされるのでn,kは複素屈折率の実数部と虚数部のことであると考えられるのですが,ご教示ください.
    また,上記のkのことを消衰係数と呼ぶのではないでしょうか.
        以上,お尋ね致します.
    電気通信大学  冨田 正治
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    Date : Tue, 12 Feb 2013 16:09:23 +0900
    A1: 富田先生、佐藤勝昭です。
     あなたのご理解の通り、複素屈折率mは、屈折率nを実数部、消光(消衰ともいう)係数κを虚数部とする物理量です。
    電磁波の時間・空間変化をexp{iω(t-mx/c)}で表すときは,m=n-iκ、
    exp{-iω(t-mx/c)}で表すときはm=n+iκと書くことになっています。
    なぜ、前者で虚数部にマイナスを着けるかというと、
    exp{iω(t-mx/c)}にm=n-iκを代入するとexp{iω(t-nx/c)}exp(-ωκx/c)
    となり、exp(-ωκx/c)がxとともに減衰することを表すことになるからです。
    一方、後者では、exp{-iω(t-mx/c)}にm=n+iκを代入すると、
    exp{-iω(t-nx/c)}exp(-ωκx/c)となり、やはり、減衰項の形は同じになります。
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    Date : Tue, 12 Feb 2013 17:48:38 +0900
    Q2: 佐藤勝昭先生
     早速,ご返事下さいましてありがとうございました.
    安心致しました.フィルメトリクス社の太陽光スペクトルの各波長に対するn,kの数値表を参考に致しましたが,n,kの意味が判然としません.
    つきましては,GaAsやシリコン結晶などの太陽光スペクトルの各波長に対する複素屈折率のn,kの数値が知りたいのですが,もし,先生がその表をお持ちならば,メールに添付して頂けないでしょうか.
    誠に勝手なお願いを申しあげて,申し訳ございません.または,その数値表が掲載されているURLを教えて下さい.以上,宜しくお願い致します.
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    Date : Tue, 12 Feb 2013 20:01:07 +0900
    A2: 富田先生、佐藤勝昭です。
     半導体の光学定数の値は、Palik:Optical Constants of Solids Vol.1にあります。
    貴大学の図書館にあるはずです。農工大工学部図書館にありますので、問い合わせ下さい。
    GaAsのデータは、p429-444にあります, また、Siのデータは、p547-570にあります。
    お急ぎのようですので、主な波長に対する光学定数(n,κ)の値を下記に与えます。
            
    光子エネルギー(eV)波長(nm)GaAs nGaAs κ Si nSi κ
     6.0 206.61.2642.4721.0102.909
     5.0 248.02.2734.0841.5703.565
     4.0 314.73.6011.9205.0103.587
     3.5 354.23.5312.0135.6103.014
     3.0 413.34.5091.9485.2220.269
     2.5 495.94.3330.4414.3200.073
     2.2 563.64.0130.2764.0420.032
     2.0 619.93.8780.2113.9060.022
     1.9 652.63.8260.1793.8470.016
     1.8 688.83.7850.1513.7960.013
     1.7 729.33.7420.1123.7520.010
     1.6 774.93.7000.0913.7140.008
     1.5 826.63.6660.0803.6730.005
     1.4 885.63.614 1.69x10^-3記載なし7.75x10^-3
     1.3 953.73.539記載なし記載なし2.26x10^-3
     1.2 1033.03.492記載なし記載なし1.07x10^-4
     1.1 1127.03.455記載なし3.5301.3 x10^-4
     1.0 1239.83.423記載なし3.519記載なし
     
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    1290. ITO/PET基板の酸による劣化の評価にシート抵抗を使うわけ

    Date : Wed, 13 Feb 2013 18:09:05 +0900
    Q: 佐藤先生:
    はじめまして 
    私はX工大3年の宮本と申します。
    早速質問させていただきます。

    わたしは現在DSCに関して研究を行っています。
    そのなかでも、ITO-PET基板の表面抵抗に関して質問があります。
    実験過程で基板が酸で劣化した際、シート抵抗を比較して劣化を評価しています。
    そこで、抵抗を比較するときなぜシート抵抗を比較するのでしょうか
    なぜ抵抗率ではないのでしょうか?

    自分の解釈としては、
    同じ材料の基板の抵抗が変化したとき、抵抗率を測定し比較を行っても 同じ物質であるため抵抗率は同じであり、変化がわからない。
    しかし、厚みを含むシート抵抗を比較すれば、基板表面の劣化(膜厚が薄くなる?) ため、シートの本質的な比較が可能になる。
    と考えています。
    この解釈が正しいのかどうか疑問を持っています。

    お答えいただければ幸いです。よろしくお願いします。
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    Date : Wed, 13 Feb 2013 19:25:38 +0900
    A: 宮本君、佐藤勝昭です。
     シート抵抗については、
    なんでもQ&Aの120に記載しましたように、ウェハーや薄いドープ層の評価のために用いられる便宜上の概念です。
     材料のシート抵抗は、4端子法で測定して、ある係数をかけるだけで求められます。

    ・抵抗率が試料全体にわたって均一な値ρをもつとき、厚さtの層のシート抵抗Rsは、Rs=ρ/tで定義されますから、厚みtさえわかればρがわかるはずですが、薄いドープ層 などでは、抵抗率が厚み方向に均一ではありませんし、ドープ層の厚みもわかりませんから、抵抗が測れても抵抗率に換算するのは難しいのです。
    シート抵抗の単位はΩ/□(正方形当たりΩ)と書きます。こう書くのは、Rsが与えられたとき、長さL、幅Wの長方形の抵抗値Rが、R=Rs×L/Wですぐに計算できるからです。
    ・もちろん、あなたの指摘するように、表面の劣化があると、バルクの値が変わらなくてもシート抵抗は変わります。シート抵抗を使うのは、それだけのメリットではなく、 上に述べたような事情があるからです。
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    Date : Fri, 15 Feb 2013 09:17:43 +0900
    AA: 佐藤先生:
    答えていただきありがとうございます。
    答えていただいた内容を深く理解し人に質問されても説明できるように努めていきたいと思います。
    ありがとうございました。
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    1291. UV-LEDの分光測定の問題

    Date : Mon, 18 Mar 2013 11:54:02 +0900
    Q1: 東京農工大学、佐藤先生
    初めまして、V*社N*と申します。
    LEDの分光特性について質問させてください。

    UV-LEDの分光特性について質問です。
    現在、UV領域の光を出すUV-LED基板の分光特性を測定する実験をやっております。
    LED基板を分光器の受光部に対して傾けた場合、傾けていない場合に比べて、分光スペクトルの波長分布が平らになることがわかっています。これはなぜでしょうか?
    LEDには元々方向によって光量が変わるという指向性があり、波長分布があるのだからLEDチップが傾けば分光スペクトルの波長分布が変わるのは当然、と考えて良いのでしょうか?
    公開は匿名でお願いします。
    説明不足なところがあるかとおもいますが、回答の方、よろしくお願いします。
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    Date : Mon, 18 Mar 2013 14:34:53 +0900
    A1: N様、佐藤勝昭です。分光器の偏光特性によると思います。LEDからの光を紫外線 用の偏光子を通して分光器のスリットに導けば解決すると思います。
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    Date : Mon, 18 Mar 2013 15:31:47 +0900
    Q2: 佐藤先生、こんにちわ、Nです。
    早速のご回答、ありがとうございます。
    つまり、特定方向に振動する光を強く検知(受光)するという特性を分光器自体が持っているということでしょうか。
    当初は、LED自体の光の性質(指向性)から波長分布が変わるものと思っていました。
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    Date : Mon, 18 Mar 2013 23:21:27 +0900
    A2: N様、佐藤勝昭です。
     回折格子型の分光器はかなりの偏光依存性があり、特に、回折格子のブレーズ波長のあたりで、変化します。
    ekouhounet
    「・・、従来の反射型ブレーズ回折格子では、回折格子の溝方向と入射光の電場振動方向が平行であるS偏光(TE波)に対してはブレーズ波長λB近傍の波長域で高い+1 次回折効率が得られるが、回折格子の溝方向と入射光の電場振動方向が垂直であるP偏光(TM波)に対しては+1次回折効率の波長依存性が大きく波長損失特性が安定しな い問題があった。その結果、偏光依存損失(PDL)が少ない高い+1次回折効率を実現できる反射型回折格子が得られていない。・・」とあります。
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    1292. 物性なんでもQ&A#482「ステンレスの屈折率」へのコメント

    Date : Sat, 30 Mar 2013 21:08:53 +0900
    C: 佐藤勝昭 先生
    お久ぶりです。
    2007年金属学会セミナー 色彩と質感の科学と工学 で先生と共に講師を務めさせて頂いた 元N社の竹田誠一です。
    その節は有益なお話をお聞かせ頂き、ありがとうございました。
    私は、リーマンショックのあおりを受け、4年前に退社しましたが、孫の世話などしております。
    本日、佐藤先生のホームページを見ていて、次の
    ご回答に気付きました。
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    Date: Sat, 27 Nov 2004 23:56:26 +0900
    A: T君、佐藤勝昭です。
     ステンレス鋼は基本的にはFe-Cr合金で、SUS304の組成はモノによって違いますがFe70Cr18Ni10Mn2付近の組成です。製品毎に合金比に幅がありますから、比抵抗、反射率、熱伝導率など「物性値」は製品に依存します。従って、普通のハンドブックのtableに載っていないのだと思います。また、屈折率を求めるには、反射スペクトルのクラマースクローニヒ解析をするか、エリプソメトリを行えばよいのですが、表面には不動態であるCr2O3層が被覆しており、ステンレスのみの正確な値が出るか疑問です。
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    ステンレスの光学定数  実はステンレスの光学定数は不完全ながら測定されており、私の解説記事竹田:金属表面の薄膜厚さの光学的測定方法;熱処理28 [6] pp379-383の2ページ目にデータがあります。
    このデータはハンドブックなどに載せるべきとは思いますが、マイナーな雑誌の記事のため、埋もれているものと思います。
    解説記事を添付致しますので、ご覧いただければ幸いです。
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    Date : Sun, 31 Mar 2013 00:27:38 +0900
    A: 竹田様、佐藤勝昭です。
     ステンレスの光学定数についてご教示いただき恐縮です。私の調査不足でした。
    これから検索される方もあろうかと思いますので、貴著のtable 2をQ&A#482の回答に註記として掲載させていただきました。 ありがとうございました。
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    1293. エポキシ樹脂のAC絶縁耐圧がDCより低いわけ

    Date : Mon, 22 Apr 2013 18:37:59 +0900
    Q: 佐藤先生
    初めてメールいたします。
    先生のHPはいつも見させていただいております。
    S社技術本部開発部のKと申します。製品開発の仕事をしております。
    --------------------------
    質問ですが、
    エポキシ樹脂の絶縁耐圧についての質問です。あるいは誘電体の絶縁耐圧についての質問です。
    教科書的な本には、AC印加に比べるとDC印加する方が寿命(絶縁破壊するまでの 時間)が何倍にもなる、とあるのですがその物性的な理由が記載無く理解できません。
    もし、分かればお教え願いたく、または良い文献がありましたら紹介していただければ幸いです。
    --------------------------
    以上よろしくお願いいたします。
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    Date: Tue, 23 Apr 2013 11:32:50 +0900
    A1: K様、佐藤勝昭です。 エポキシ樹脂の絶縁耐圧がDCよりACで低下する理由についてのご質問ですが、私にとって誘電体の絶縁耐性は専門外なので、下記の考えが、その業界で正しいかどうか自 信がありませんが、私見を述べさせていただきます。
     私の考えでは、交流の場合は、直流にはない誘電損失が発生するため、熱破壊などによって絶縁耐性が落ちるのではないかと推論します。
     ご存じと思いますが、一般に誘電率εは交流においては複素数で表され、ε=ε'-jε"と書かれます。
    実数部が電気分極による誘電率で、虚数部は電気分極が電界に追従できないことによる誘電損失を表します。
    tanδ=ε"/ε'を誘電正接と呼び、誘電体の性能を表す尺度(小さい程良質)となっています。
     電子レンジで食品が加熱されるのは、マイクロ波領域の電界に対して水分子の分子回転振動にともなう誘電損失があるためです。
    エポキシのtanδは、8x10^-3 @100MHzと書かれております。アルミナでは1x10^-4ですから、余りよくないですね。
    低周波では1桁くらいは小さいと思いますが、誘電損失> があることは確かです。
     なお、DCを印加した場合、時間とともに電極界面付近に空間電荷の蓄積が起き、電界のほとんどは電極界面付近にかかり、内部にはあまりかかりませんから、内部が破壊 されることはなく、DCでの絶縁破壊はほとんどが電極界面でおきると思います。このことも、DCでの絶縁耐圧が高い原因ではないかと思います。
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    Date : Tue, 23 Apr 2013 13:04:49 +0900
    Q2: 佐藤先生, ご回答ありがとうございます。
    説明が不足していました。交流の耐圧試験では、通常50Hzで行いますので、誘電損は考えなくて良いと思います。

    空間電荷が電極界面に集まり電界が上がり絶縁が破壊すると界面層の少し内側に空間電荷が再び集まり絶縁が破壊し、 更に奥へと破壊が進む。結局全て絶縁が破壊するまで時間が掛かる、と言う筋道なのでしょうか?
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    Date : Tue, 23 Apr 2013 14:57:17 +0900
    A2: K様、佐藤勝昭です。
     低周波の場合は、そのようなご理解でよいのではないかと存じます。最近は複合材料・傾斜材料でこのあたりのことを防いでいるのではないでしょうか。
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    Date : Tue, 23 Apr 2013 16:06:04 +0900
    AA: 佐藤先生、S社Kです。
    また、疑問がありましたら質問させていただきたいと思います。
    ありがとうございました。
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    1294. 粗さのある金属表面における反射の偏光性

    Date : Thu, 23 May 2013 15:45:51 +0900
    Q: 佐藤先生,いつもお世話になっております。私はS所のRと申します。(匿名希望)  佐藤先生のQ&AのHPを見て、いつも勉強させて頂いております。
    現在、金属表面の反射光について実験しています。粗さ(ランダム)を持つ金属表面にS偏光を入射して、反射光と散乱光からS(強)とP(弱)偏光成分を検出しました。表面粗さは1nm~1μm(RMS)で、P偏光成分は粗さに従って増えます。その理論はまたよくわかりません。
    WEBから先生の講義資料(基礎から学ぶ光物性_補助資料:金属の色の物理的起源(pdf))を勉強しました。金属による光の吸収→放出する際に、”光の電界→電気分極+金属の表面形状→S偏光からP偏光に変換”と考えますが、基本的な考え方として成り立つでしょうか?また、それを理解するため、参考書、資料を薦めていただきませんか?
    お忙しいところ恐縮致します。私の稚拙な質問にお答えいただければ幸いです。
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    Date : Thu, 23 May 2013 19:00:26 +0900
    A: R様、佐藤勝昭です。
     rough surfaceの偏光依存反射に関する電子分極から説き起こした理論の論文は、わたしは知りません。
    一般には、現象論的に、表面状態をパラメータとして通常のジョーンズ解析などが行われています。
    例えば、
    Thomas A. Germer: Polarized light diffusely scattered under smooth and rough interfaces:Polarization Science and Remote Sensing, J. A. Shaw and J. S. Tyo, Eds., Proc. SPIE 5158, 193?204 (2003)
    ナノスケールでの反射はMie散乱の理論、さらにマクロスケールへの接続はアンギュラースペクトル展開が行われています。
    わたしは勉強不足で式をきちんとフォローしていません。また、あなたの案件に適用できるかわかりません。
    例えば、
     堀裕和、井上哲也:ナノスケールの光学(オーム社、2006)
    をお読みください。
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    Date : Thu, 23 May 2013 22:20:42 +0900
    AA: 佐藤先生
    お忙しい中、返信ありがとうございます。いろいろ参考文献を教えて頂いて、元に基本的な理論を勉強してみます。
    重ねてお礼申し上げます。
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    1295. 電圧印加によるナノ粒子の堆積

    Date : Sat, 25 May 2013 14:03:27 +0900
    Q: 佐藤先生初めてメールします。宜しくお願いします。
    HPは興味深く、様々な知識取得のため拝見させて頂いております。
    岐阜県在住Sです。ただ今無職中です。匿名でおねがいします。
     要領を得ない質問かもしれませんが、宜しくお願いします。
    この技術を人に伝えて評価してもらおうと思っていますが、的を得た説明が相手方に出来なくて本当に困っています。
     以下説明申し上げます。
    2次電池(FC含む)が高価で性能がが上がらないのは「セル原料にバインダーを加え、溶かして、塗って、乾かして」
     私は、自動車生産の生産技術屋でしたが、2次電池に興味を引かれ製造プロセスを調べるうちに、このプロセスを簡略化しないとイケナイと 考え、自分自身では理論考証が出来ないので現実的な現象を起こして攻めてみました。

    結果、以下の状況が得られましたが、人に説明が付きません。
    実験に使った微粒子:・二酸化鉄 ・アルミナ ・カーボン
    母材とした板:・紙 ・樹脂プレート(自動車部品) ・サランラップ ・アルミ箔 ・鉄板・Libセル原板(A4サイズ)
    (簡単な現象説明)
    ナノ粒子(5ナノ程度)に高電圧(DC)を加えマイナス電極側に置いた母材に飛ばしてやると、母材にくっつきます。
    1.接着剤など不用で、微粒子自身が相手に直接くっつきます。
    2.実験では、微粒子、母材共に材質を選びません。
    3.対象面に、ビッシリつきます。
    4.重ね塗りも出来ます。(微粒子材質を変え2度付着させました)
    5.微粒子の自然凝集は、微粒子の溜まりの中に大きめの微粒子(数ミクロン)を少量混ぜてやることで、大きめの微粒子運動で凝集分解します。(実験ではセラミックビーズを使用)
    6.常圧下では”フンワリ:ケーキのティラミスのよう”に付着します。強く振っても、口で吹いても剥がれませんが、指先で擦ると剥がれます。
    7.減圧下では"硬く付着”:減圧値を変えれば付着硬度が変化するみたい指先で擦っても剥がれませんが、とがった爪先でひっかけば、剥がれます。
    8.シャーレに一緒に入れた大粒の粒子を、微粒子が包込む(チャイナマーブル)状態の現象も得られます。

    (実験方法は以下です)
    下側に+電極板、その上に微粒子を入れたシャーレを置き、シャーレの上側に母材となる、板を置き、さらに母材の上側にマイナス電極板を置きます。
    (つまりシャーレに微粒子を入れ、母材で蓋をし印加するとシャレーの形状どうりに微粒子が付着した母財が得られる:Φ50程度のシャーレでは10~20秒程必要です)

    (人様に”何で付くの??”と、問われても・・・・・・・?説明できません)
    微粒子が帯電し、マイナス極に向かって飛んでいくのでプリンターの静電付着みたいですが、印加を解いても、"フンワリ付着”したものでも、付着状態は保持しています。(硬質型のモノは、全く微粒子は落ちません)
    分極とか分子間力の情報も閲覧しましたが私には良く理解できません。

    記載のような状況が説明できる記事がないかと、Q%Aを眺めていましたが困り果てメールさせて頂きました。
    どうか宜しくお願い申し上げます。
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    Date : Sat, 25 May 2013 20:54:58 +0900
    A1:S様、佐藤勝昭です。
     電界で粉体を基板に付着させる方法としてElectroplatingという方法があります。
    帯電した粒子が電界で加速され、運動エネルギーを得ますが、基板に衝突したとき、 その運動エネルギーは基板に伝達され最終的には加熱したのと同じ効果を持ちます。
    微粒子も基板上をmigrateして、どこか基板のキンクや凹凸に引っかかって付着します。
    時には衝突の際に基板にめり込むこともあるでしょう。
     ただ、これがS様の実験に相当するかは、実験条件が曖昧なので何とも云えません。
    DC高電圧は何ボルト?電極間距離はいくら?
    常圧は空気中?
    減圧は何Pa?放電は起きない? 
    などなどです。
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    Date : Sat, 25 May 2013 23:28:01 +0900
    Q2: 早いですね、
    電圧は3000V以上
    常圧が基本です’フンワリ”空気中です(事務所の卓上です)
    電極間距離は10mm程度、放電は起きません
    硬質方法は減圧10-4Pa程度
    以上です。
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    Date : Sat, 25 May 2013 23:50:35 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。
    卓上で3000Vですか。危険な実験ですね(笑)。おそらく微粒子は空気の酸素や窒素分 子と衝突して運動エネルギーを失っているので、ふんわりと付くのでしょうね。
    減圧すると気体分子との衝突がないので、勢いよく基板に衝突してしっかりと付くのでしょうね。
    この実験は、エレクトロプレーティングというよりスパッタリングでしょう。
    これが2次電池や燃料電池に使えるかは、疑問ですが。
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    1296. 比誘電率・比透磁率と電磁波遮蔽効果の関係性

    Date : Tue, 28 May 2013 19:22:06 +0900
    Q1: 佐藤 勝昭 様
    お久しぶりです.S大学大学院修士課程2年Y*と申します.
    佐藤様のHPを拝見させていただきまして何度か佐藤様にこのようにメールで質問させていただき,回答していただいた者です.
    その節はお忙しい中とは思いますが,丁寧な回答をいただきまして大変ありがとうございました.

    今回も質問させて下さい.また勝手ではありますが,WEB上では匿名でお願いします.

    今回は
    ①比誘電率と電磁波遮蔽効果の関係性
    ②比透磁率と電磁波遮蔽高価の関係性
    について教えていただけないでしょうか。
    大学院生にもかかわらずこのような知識もなく大変お恥ずかしいかぎりです。

    今までは単純に比誘電率の絶対値が高ければ高いほど遮蔽効果が高いと考えていましたが、最近になり間違いであることに気付きました。

    今まで色々な本を読んだり知識のある方にお伺いしましたが、いまいち理解ができませんでした。

    佐藤様にこのような質問をすること自体ご迷惑かと思いますが、何卒,回答よろしくお願い致します.
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    Date : Tue, 4 Jun 2013 22:23:17 +0900
    A1: ご質問の遮蔽効果ですが、対象となる周波数帯はどのあたりでしょうか?
    一般的に言って、高周波電界を遮蔽するには、比誘電率の虚数部εr"が大きいほど誘電損失が大きくなります。
    同様に、高周波磁界を遮蔽するには、比透磁率の虚数部μr"が大きい程、電波吸収が大きいということになります。
    多くの場合、比誘電率の実数部や比透磁率の実数部のスペクトルが何らかの共振によってN字型の変化をするとき、虚数部のスペクトルは(クラマースクローニヒの関係により)ベル型のカーブとなって、吸収のピークを示します。
    電磁気学的には極めて一般的なことなので、機械系のかたでも、知っておかれるとよいと思います。
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    Date : Tue, 4 Jun 2013 23:53:24 +0900
    Q2: 佐藤 勝昭 様
    S大学大学院2年Yです.
    丁寧にご回答いただき誠にありがとうございます。

    対象とする周波数帯は1GHzあたりを考えていました。
    実数部と虚数部の比で決まると思っていましたが、一般的なことはきちんと把握できました。ありがとうございます。

    しかし、ご回答の内容の細部(実数部のスペクトルのお話のあたり)は、正直現在の私の知識ではわからない部分もあるのでまた自分自身で調べてみたいと思います。
    それでもわからない部分はまたお聞きしてもよろしいでしょうか。お手数ですが、聞いていただければ幸いです。

    また私ごとですが、4月の上旬に就職先が決まりました。佐藤様にご指導いただいたおかげだと存じています。重ねて御礼申し上げます。
    来年からは関東で働く可能性が高いのでいつの日か、一度佐藤様に直にお礼を申し上げる機会があればと思っています。

    それでは今後ともよろしくお願い申し上げます。
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    Date : Wed, 5 Jun 2013 02:02:02 +0900
    A2: Y君、佐藤勝昭@福岡(国際会議で出張中)です。
     就職が決まってよかったですね。おめでとう。出張先でたまっていたメールを見ていてあなたの投稿に気づきました。
    低周波では、むしろ金属における負の比誘電率の方が問題かも。金蔵においては自由電子のために、比誘電率の実数部が負になっています。
    このとき電磁波の電界が金属に入ろうとすると、直ちに逆向きの電子分極によって打ち消され、電磁波は金属中に入り込めなくなります。
    この場合は、比誘電率の絶対値が大きい程、遮蔽効果は大きいと考えられます。
    参考:
    物性工学概論2006.4.25のパワポ
     なお、誘電率や透磁率における実数部と虚数部の関係(クラマースクローニヒの関係)については、私の解説をお読みください。
    (「機能材料のための量子工学」(講談社)第4章光機能)
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    Date : Fri, 7 Jun 2013 11:33:13 +0900
    AA: 佐藤勝昭様、S大学大学院Yです.
    詳しい資料も添付していただき大変ありがとうございます。
    拝見させていただき、忘れてしまっていたこと、初めて知ったことも多く勉強不足を痛感しました。
    また一から勉強し直します。

    私の持つ浅はかな考えなのですが電磁波遮蔽は考える要素がとても多く、自分が考えているシチュエーションではどんな要素が重要なのか。
    まずここの見極めが出来てないのだと思っています。
    今後ともよろしくお願い申し上げます。
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    1297. 強磁性体に関する質問

    Date : Sat, 8 Jun 2013 23:39:19 +0900
    Q1: 佐藤先生
     はじめまして、特許についての弁理士をしております特許事務所に勤めますM*と申します。
    お忙しいところ、申し訳ございませんが、教えて頂きたいことがございまして、メールさせて頂きました。
     強磁性体の特許出願(すでに公報で公開されておりますの)で、特許庁の審判官に理解して頂けない部分があり、困っていることがございます。
     出願人の技術が正当に評価されることを願って、先生の教えを頂ければありがたいです。

    強磁性体に外部磁場をかけずに、その強磁性体のキュリー温度以上に加熱した後に、そのキュリー温度以上の温度で外部磁場をかけると、自発磁化が発生するということを理解して頂けません。
    審判官は、キュリー温度以上になれば常磁性体になるのだから、外部磁界をかけて、強磁性体になるはずはないと主張されて、おしかりを受けました。

     上記のように自発磁化が発生することは理論として間違いないのでしょうか。もし、間違いでなければ、上記の審判官に上記理論を理解して頂くために、適切な書籍がございますでしょうか。
    初歩的な内容かもしれませんが、期限が迫っており、先生のご助力を頂ければありがたいです。よろしくお願いいたします。
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    Date : Mon, 10 Jun 2013 09:01:40 +0900
    A1: M様、佐藤勝昭です。
     強磁性体のTc以上での磁化についての質問ですが、近距離秩序による局所的な磁化が残る可能性があります。
    私の経験ですが、CdCr2Se4という磁性半導体において、添付図のように、Tc=130Kを超えて150Kくらいまで磁気光学効果が観測されていました。
    (ただし、磁界をかけています)Tc以上では揺らぎが大きくなっているのでわずかな磁界でも近距離的には磁気モーメントがそろうのではないかと思います。
    光で見ていると近距離秩序でも磁化があるように見えます。これを「自発磁化がある」と表現してよいのかどうかわかりませんが・・。
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    Date : Tue, 11 Jun 2013 00:43:23 +0900
    Q2: 佐藤先生
    早速、ご返事を頂き感謝致します。先生の丁寧なご検討に感謝致します。
     もう1つお伺いさせてください。
     低温からキュリー点の近傍へ温度を上げてから(IーT曲線上でIは小さくなる)、温度を再び、低温に戻した場合に、前記IーT曲線上で一旦小さくなったIは、初期の低温時の大きさには戻らないでよろしい でしょうか。
    初歩的な質問かもしれませんが、ご教示頂ければありがたいです。
     よろしくお願い申し上げます。
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    Date : Tue, 11 Jun 2013 07:40:46 +0900
    A2: M様、佐藤勝昭です。
     均質な強磁性体をキュリー温度以上に昇温し、再び低温に戻した場合、飽和磁化Isは、元に戻るべきものです。もし、同じ磁界をかけても元に戻らないとすれば、飽和磁界が変化して、飽和磁化に達しなくなったと考えられます。
    また、不均質な超微粒子から構成されている場合では、磁界中冷却と無磁界冷却とで、Iが変化することがあります。お尋ねの実験結果が、どの場合に当たるかは、ご質問だけからはわかりません。
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    Date : Wed, 12 Jun 2013 23:38:34 +0900
    AA: 佐藤先生
    ご連絡が遅れ失礼致しました。真摯にご回答を頂き、ありがとうございます。感謝しております。
    急な仕事が入り、今、ご質問をまとめさせて頂くことができない状態です。週末に先生からのご教示を参考に、依頼人の発明のご説明をさせて頂きたく思っております。
    どうかよろしくお願い申し上げます。
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    1298. 樹脂の蛍光に関する質問

    Date : Wed, 19 Jun 2013 08:37:57 +0000
    Q1: 佐藤勝昭先生
    はじめまして。HPを拝見し、質問のメールを送らせていただきます。
    F*社のS**と申します。匿名でお願いいたします。

    現在、樹脂の蛍光強度を測定する実験をしています。
    励起はUV-LEDで行っており、検知は、高感度CCDカメラを用いています。
    励起光の照射時間およびカメラの露光時間は数百ms、測定間隔は10秒程度で繰り返し測定を行ったところ、実験中に蛍光強度が10%程度低下します。
    この蛍光強度低下の理由として、考えられることは何でしょうか?

    ご多忙中恐縮ですが、ご教授いただけますよう、お願いいたします。

    日常でも当たり前に起こっているような気がするのですが、原因が説明できません。
    よろしくお願いいたします。

    補足:
  • 樹脂は、可視光域では透明に見える樹脂です。
  • 時間が経過すると、かなり蛍光強度が復活します。(元に戻るとは言い切れません。)
  • 繰り返し実験自体を何度も繰り返すと、その低下率がだんだん小さくなります。
  • しかし、時間が経過したのちに行うと、低下率も復活します。(大きく低下する)
  • 他の樹脂でも低下します。
  • 他のセンサ(紫外光を当てて、強度を出力表示してくれる市販品)でも低下します。
  • 蛍光強度計測中の温度上昇は見られません。(誤差±0.5度の誤差内の変動)
  • 温度計測は、放射温度計にて樹脂表面の温度を計測しました。
  • 測定中のUV-LED自体の強度低下は、最大の時で3%以内です。(これよりも大きな低下なので、困っています)
  • -----------------------------------------------------------------------------------------------------------------
    Date : Wed, 19 Jun 2013 20:34:30 +0900
    A1: S様、佐藤勝昭です。樹脂というだけではお答えしようがありません。樹脂には蛍光体は入っているのですか?
    樹脂そのままですか?もう少し詳しい情報をいただければ幸いです。
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    Date : Thu, 20 Jun 2013 00:27:25 +0000
    Q2: 佐藤勝昭様
    F社のSです。匿名でお願いいたします。
    まずはメールを早速ご覧いただき、ありがとうございます。

    少々伏せたい部分もありますので、失礼ながら小出ししている雰囲気もあるかと思いますが..
    . 調べている樹脂は、紫外線硬化樹脂です。

    樹脂の詳細な成分はわかりませんが、蛍光を発生させることを目的とした成分としての「蛍光体」は入っていません。
    また、他の情報としては、「UV硬化プロセスの最適化 2」サイエンス&テクノロジー社の中で、
    (株)センテックの中宗憲一様が、紫外線硬化樹脂と蛍光の関係について、
    「光重合開始剤は紫外線を受けて、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは2つまたはそれ以上の分子に分裂した状態で、 ポリマーの末端に結合する。我々はこの末端に結合した分子が蛍光発光することをつきとめた」
    とおっしゃっており、そのような話であろうかと思っております。

    以上。
    よろしくお願いいたします。
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    Date : Thu, 20 Jun 2013 12:01:13 +0900
    A2: S様、佐藤勝昭です。(つくばに外勤するため、TXの電車の中です。資料がないので、私の思いつく範囲でお答えします。)
     UV光を分子に照射すると、電子が基底状態から励起状態に遷移します。
    高分子の場合、HOMOからLUMOに電子が飛び移るのですが、励起状態にある電子のエネルギーが、 高分子に付着した重合開始剤にトランスファーされて、ラジカルとなって、架橋の引き金になるものと考えられます。
    ラジカルがそのエネルギーを分子に渡して架橋反応が進めば発光は起きないはずですが、一部は光のエネルギーに変わるので、 発光が見られるのでしょう。
     フォトルミネッセンスには、応答の速い「蛍光」と応答の遅い「燐光」があります。
    あなたの測定では、遅い応答は検出できないので、もし、例えば三重項状態を介して燐光に寄与していたら、蛍光は減少するでしょう。
    また、重合が進んでラジカルの量が減少すれば、蛍光も燐光も減少するでしょうね。(よくわかりませんが)
     このように構造変化を伴う分子の励起状態の再結合過程は複雑なので、時間分解スペクトルなどの測定をしないと原因を特定できないと思います。
     お答えになっていないかも知れませんが、・・・
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    Date : Thu, 20 Jun 2013 06:01:52 +0000
    Q3: 佐藤勝昭様
    まずは早速ご回答いただき、ありがとうございます。
    最初に、情報を渋って「樹脂」という話で始めたために大事な情報を抜かした気がしております。
    対象は、「紫外線硬化樹脂を紫外線にて【十分硬化させた】もの」です。重合が完全に進みきる ことはないでしょうが、メーカ指定照射量の何倍も光を当てており、硬さとしては完全硬化 といっていい硬さになっているものです。

    回答を読ませていただきました。しかしながら、小生の不勉強にて解釈できておりません。
    申し訳ないですが、もう少々お付き合い願えませんでしょうか?

    私は、紫外線硬化樹脂の硬化にあたって、紫外光は重合開始剤を分解してラジカルを発生 させており、そのラジカルが重合を開始させるという理解でおりました。もっと言えば、 対象としている紫外線硬化樹脂の硬化に対して、光は、重合開始剤を分解する他に役割が ないと思っておりました。
    しかしながら、先生曰く「架橋の引き金」は、一旦は重合停止した高分子に対して、光 が働きかけて架橋のためのラジカルを発生させるという解釈でよろしいのでしょうか? (最初の質問からはずれたような質問となっている感がございますが、重合、架橋につい ての理解に自信がございませんので、どうかお許しください。)

    後段で「重合が進んでラジカルの量が減少すれば、蛍光も燐光も減少するでしょうね。」 といただいておりますが、私の最初のメールにおける補足の項目中の 「・時間が経過すると、かなり蛍光強度が復活します。(元に戻るとは言い切れません。)」 と矛盾すると思われます。ということは、今回の現象は重合が進行したために蛍光強度が 低下したわけではないと解釈できると思いますが、いかがでしょうか?

    三重項状態が寄与している現象であるとしたら、先生のおっしゃる通り、現状の測定系で は手が出ませんので、その他の回答を期待しておりました。
    しかし、三重項状態の寄与を排除できないが、特定もできないということで、 「 このように構造変化を伴う分子の励起状態の再結合過程は複雑なので、時間分解 スペクトルなどの測定」
    ができる環境が作れたらいいなと思いますが、この不景気の折、ちょっと難しそうです。
    三重項状態が寄与していると仮定した場合でも、励起光を遮断して10分も待てば、 皆、元の状態に戻ってくれているということはないでしょうか?やはり、時間分解の 情報がないと言えないものでしょうか?数秒に対してかなり長い時間を三重項状態の 寄与で説明できるのでしょうか?「蓄光」のようなイメージでしょうか?
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    Date : Thu, 20 Jun 2013 20:22:06 +0900
    A3: S様、佐藤勝昭(帰宅途中の電車の中)です。
    すでに重合が終わっているポリマーなのですか?
    その場合は、発光が重合開始剤によるというのは無理がありますね。
     私は、有機物の発光については専門外なので、無機物質の場合について述べますと、
    無機材料においても一般に蛍光には疲労現象(fatigue)が見られます。
    励起された電子がトラップ準位に捕まり発光が抑制されますが、捕まった電子は熱的に再び励起準位に戻るので、 ある時間経つと発光が回復することがあります。
    光照射によって結合が切れて、トラップ準位ができる場合もあります。このトラップは、暗所に置いておくと修復されることが知られます。
    このように無機材料でも、発光の劣化現象が見られるのですから、高分子なら、もっといろんな劣化があっても不思議はありません。
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    Date : Thu, 20 Jun 2013 22:49:38 +0900
    A3': S様、佐藤勝昭です(帰宅しました)。  本日の何回かのメールはすべて電車の中から携帯でご回答したものです。
    私は無機材料を専門としており、有機高分子についての知識はほとんどない上、光硬化樹脂の経験はなく、 資料もなく回答したことで却って混乱させたのではないかとお詫びします。
     光硬化樹脂の硬化度のモニターとしてUV照射による発光をモニターすることは、確立した技術のようです。
    月刊トライボロジー2010.2号の関口らの
    記事によれば
    「ラジカル重合型UV硬化樹脂の硬化反応課程においては、モノマー、オリゴマーに不飽和C=Cが存在し、UV照射により光重合開始剤から発生する フリーラジカルによる連鎖反応が引き起こされると、C=Cの結合は減少する。
    ・・(中略)・・我々は、ナノインプリント中の樹脂の重合の度合いを調べられるように、蛍光測定を用いた重合度の評価装置を検討した。
    芳香族化合物が光を吸収すると、光のエネルギー分だけエネルギーの高い状態になる。これを励起状態という。
    一方、光を吸収する前の状態を基底状態という。励起状態では、余分なエネルギーを持っているため、不安定な状態であり、 余分なエネルギーを外部に放出して安定な基底状態に戻ろうとする。この時のエネルギーの放出の方法は3通りある。
    ①エネルギーを利用して化学反応を起こし、別の化合物の基底状態に戻る
    ②エネルギーを熱として放出する
    ③エネルギーを光として放出する
    UV硬化樹脂は①の反応により、架橋反応を起こして樹脂が硬化すると同時に、③の反応により蛍光を発する。
    すなわち、光重合開始剤は、UV光を受けて、ほぼ当初の分子の大きさを保持したまま、あるいは二つ、または それ以上の分子に開裂した状態で、ポリマーの端末に結合する。この端末に結合した分子が蛍光発光するのである。
    放射される蛍光強度は、UV硬化樹脂の架橋反応(重合反応)の反応度合いを表していると考えられる。
    そこで、検出された蛍光強度の時間的変化のうち、蛍光強度の反応前後での変化量に基づいて、 UV硬化樹脂の重合度合いを推定することが可能である。」と記述されております。

     なお、ポリマーの蛍光の消滅については、Phys. Rev. Lett. 73, 744 (1994) が参考になります。
     また、Shigeo Tazuke, Correlation of fluorescence quenching and photopolymerizability of N-vinylcarbazole in the presence of electron acceptors, J. Phys. Chem., 1970, 74 (11), pp 2390-2397
    も参考になるかもしれませんね。

    三重項の燐光寿命について探していましたら、最近出た論文に
    Duygu Sevinc Esen, et al., Benzoin Type Photoinitiator for Free Radical Polymerization,
    J. Polymer Sci, Part A: Polymer Chem. 51,1865 (2013)
    にベンゾイン誘導体MTBの励起三重項の燐光寿命が66msであると書いてあります。
    ご参考まで
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    Date : Fri, 21 Jun 2013 04:29:21 +0000
    AA: 佐藤勝昭様
    まずはご回答いただき、ありがとうございます。

    私も情報が小出しにして重要事項を漏らしてしまい、混乱を招きまして、申し訳ないです。
    それにもかかわらず、多く調べていただき、ありがとうございます。
    資料もご紹介いただきましたので、その資料を読むところから始めようと思います。
    また、私が何か理解できるようになりましたら、相談させていただきたいと思います。
    ありがとうございました。
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    1299. ドルーデモデルにおける定数項

    Date : Sun, 11 Aug 2013 23:46:12 +0900
    Q: 佐藤先生
    慶応義塾大学の後藤 (D2) と申します。ICTMC@Saltzburg (2012) では同じホステルに宿泊というご縁もあり大変お世話になりました。
    HPの物性なんでもQ&Aを見て質問させて頂きます。

    ドルーデモデルのε_infという項についてです。
    ドルーデモデルによれば複素誘電率εは
    ε = 1 - w_p^2/w(w+i/t)
    ですが、論文ではしばしば
    ε= ε_inf - w_p^2/w(w+i/t)
    と書かれています(一例としてBi系銅酸化物の論文を添付します)。
    (I. Terasaki el al. Physica C 165, 152 (1990): 5ページ目, 式(1))

    質問は第一項のε_inf についてです。
    "the contribution of the high energy transition"とのことですが、この項の意味がわかりません。

    光物性の教科書(C. F. Bohren and D. R. huffman, Absorption and Scattering of Light by Small Particles, p. 245)によれば
    " ε_inf represents the effect of all oscillators well removed to higher frequencies. This is a division for convenience; if all oscillators are included in the summation, then ε_inf = 1."
    とありますが、やはりわかりません。
    ε_inf の物理的意味についてご教示頂ければ幸いです。

    どうぞよろしお願いします。
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    Date : Mon, 12 Aug 2013 08:38:10 +0900
    A: 後藤様、佐藤勝昭です。
     お久しぶりです。的場先生には、JST-CRDSでお世話になっています。
    誘電率って何でしょう。
    D=εE=ε_0E+P=ε_0(1+χ)Eですから、電子分極Pの出来やすさを表しています。
    電子分極には、自由電子のプラズマ振動によるものと、固体一般がもつ普通の電子分極 とがあります。
    普通の誘電率ですが、光の電界の摂動を受けて、バーチャルに励起状態が基底状態に混 じってくることで、基底状態の波動関数が変形し、電子分極が出来るのです。固体であ る限り、バンド構造が有り、バンドギャップ以下の光子エネルギーの光でも、光電界の 摂動により、バーチャルにバンド間遷移が取り込まれてくるのです。これをきちんと計 算することも出来ますが、ドルーデ項が問題になる低い光子エネルギーにおいては、そ の和をε_infに押し込めているのです。
    添付のファイルをご参照ください。
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    Date : Mon, 12 Aug 2013 09:08:32 +0900
    Q2: 佐藤先生

    ご丁寧にご教示頂きありがとうございます。
    バンドギャップ以下のエネルギーの光でもバンド間遷移に影響するというのは、 例えば反射 or 吸収測定から直接遷移確率として(αhν)^2 をプロットしたときに、 低エネルギー側でも有限の値を持つことに対応していると考えます。

    ε_inf ですが、高エネルギー側の極限、つまりローレンツ振動子の和をとるときに、 高エネルギー側まで全て summation をとることは現実的ではないから、適当なところで区切って、 それ以上の項を ε_inf に押し込めている
    (= バンド間遷移が始まって、さらにずっと高いエネルギーの部分 = Ef付近のキャリアがすべて励起されているような状態) と理解したのですがいかがでしょうか。

    よろしくお願いします。
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    Date : Mon, 12 Aug 2013 09:21:10 +0900
    A2: 後藤様、佐藤勝昭です。
     あなたの理解でよいと思います。量子論については、私のWeb教科書「基礎から学ぶ光物性」第8回のスライドもご参照ください。
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    質問はE-mailで katsuaki.sato@nifty.comまで
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